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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1356458
審判番号 不服2018-6339  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-09 
確定日 2019-10-23 
事件の表示 特願2015-515112「マイクロレンズを形成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 5日国際公開、WO2013/181140、平成27年 6月25日国内公表、特表2015-518288〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年(2013年)5月28日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年5月30日 米国,以下,「本願優先日」という。)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 1月27日 翻訳文提出
平成29年 2月20日付け 拒絶理由通知
平成29年 5月19日 意見書・手続補正
平成29年 8月 3日付け 最後の拒絶理由通知
平成29年10月20日 意見書・手続補正
平成29年12月28日付け 補正却下決定・拒絶査定
平成30年 5月 9日 審判請求
平成31年 1月25日付け 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)
平成31年 3月20日 意見書・手続補正

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成31年3月20日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項で特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
基板上にマイクロレンズを形成する方法であって,
誘導結合プラズマ処理装置のプロセスチャンバの内部に,レンズ形状を有する複数のマイクロレンズ体を有している基板を配置するステップであって,前記誘導結合プラズマ処理装置は,少なくとも1つの誘導エレメント,および,前記少なくとも1つの誘導エレメントと前記プロセスチャンバの内部との間に配置された,接地されたファラデー遮蔽を備えている,ステップと,
前記プロセスチャンバの内部にプロセスガスを供給するステップであって,前記プロセスガスは,CF_(4)とCHF_(3)との混合物を含む,ステップと,
前記プロセスチャンバの内部に,実質的に誘導性のプラズマを生成するために,前記少なくとも1つの誘導エレメントにエネルギーを加えるステップと,
前記基板上の前記マイクロレンズ体の前記レンズ形状を修正するために,前記基板上で前記プロセスガスを用いて,プラズマエッチングプロセスを実行するステップと,
を含み,
前記プラズマエッチングプロセスを実行するステップによって,前記複数のマイクロレンズ体の各々の長さは,Lだけ増加し,
前記プラズマエッチングプロセス中のCHF_(3)の流量は,CF_(4)の流量より高い,
方法。」

第3 当審拒絶理由
本願発明についての当審拒絶理由は,本願発明は,本願優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
<引用文献等一覧>
1.特開2005-019573号公報
2.特開平10-074600号公報

第4 引用文献及び引用発明
1 引用文献1の記載
(1)引用文献1
当審拒絶理由で引用された特開2005-019573号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,固体撮像装置および固体撮像装置の製造方法に関し,特に,入射光を光電変換機能を有する受光部へ集光するためのレンズを備えた固体撮像装置および固体撮像装置の製造方法に関する。」
「【0006】
この発明は,上記のような課題を解決するためになされたものであり,この発明の1つの目的は,高い集光能力を有する固体撮像装置を提供することである。」
「【0047】
図7?図14は,図1に示した第1実施形態による固体撮像装置に用いるCCDイメージセンサ8の製造プロセスを説明するための断面図である。なお,図11?図13は,マイクロレンズを形成するためのエッチング方法を説明するために拡大した断面図を示している。また,図15は,図1に示した第1実施形態による固体撮像装置に用いるCCDイメージセンサのマイクロレンズを形成するためのエッチング条件を説明するための図であり,図16?図18は,図15に基づいてエッチング条件を変化させた場合のエッチング後の形状の顕微鏡写真を模式的に示した平面図である。次に,図2,図5および図7?図18を参照して,第1実施形態による固体撮像装置に用いるCCDイメージセンサ8の製造プロセスについて説明する。
【0048】
まず,図7に示すように,画素分離部21および受光部22が形成されたSi基板20上に,約0.24μmの厚みを有する層間絶縁膜23を形成する。そして,層間絶縁膜23上の所定領域に,約1.0μmの厚みと約0.2μm?約0.4μmの幅とを有するとともに,W(タングステン)およびポリシリコン膜からなる遮光膜24を形成する。その後,遮光膜24および層間絶縁膜23を覆うように,約1.5μmの厚みを有するシリコン酸化膜からなる層間絶縁膜25を形成する。この後,CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて,層間絶縁膜25上に約1.3μmの厚みを有するSiN膜26bを形成する。このSiN膜26は,本発明の「無機絶縁体からなる層」の一例である。
【0049】
次に,図8に示すように,SiN膜26b上に約2μmの厚みを有するレジスト27を塗布する。
【0050】
次に,図9に示すように,リソグラフィ技術を用いてレジスト27を,約2.7μmの幅にするとともに,隣接するレジスト27間の距離を約0.4μmの間隔にする。なお,隣接するレジスト27間に約0.4μmの間隔を設けるのは,後に行う熱処理によってレジスト27が流動化することにより隣接するレジスト27同志が接触するのを抑制するためである。この後,アッシングを行うことによって,隣接するレジスト27間のSiN膜26b上に薄く残ったレジスト部分(図示せず)を除去する。このアッシングは,O_(3)ガスを用いて,約1気圧で約200℃?約400℃の温度で,約5秒?約30秒間行う。なお,アッシングの前に行ったリソグラフィ技術の処理条件を制御することにより,隣接するレジスト27間のSiN膜26b上にレジストが残らないようにすることも可能である。この場合には,アッシングの工程を省略することができる。この後,約150℃で約30分間の熱処理を行うことによって,レジスト27の流動性を向上させる。これにより,レジスト27は,図10に示すように,表面張力により上に凸の曲面形状に形成される。そして,この上に凸の曲面形状の複数のレジスト27とSiN膜26bとを同時にエッチングする。
【0051】
この際,第1実施形態では,デポジション性のCHF_(3)ガスを含むエッチングガスを用いてエッチングを行う。具体的なエッチング条件としては,ガス圧力:約37.0Pa?約43.0Pa,エッチングガス:CHF_(3)ガス(約5ml/s?約15ml/s),CF_(4)ガス(約60ml/s?約100ml/s),Arガス(約600ml/s?約900ml/s)およびO_(2)ガス(約25ml/s?約35ml/s),高周波電力:約120W?約200Wである。
【0052】
具体的なエッチング方法としては,まず,図11に示すように,隣接するレジスト27間のSiN膜26b(図11中の破線部分)が除去されることにより,凹部26cが形成される。そして,エッチングガスにデポジション性のCHF_(3)ガスを添加していることにより,除去されたSiN膜26bの一部が凹部26cの側面26dに堆積される。このため,図12に示すように,エッチングが進行するにしたがって,凹部26cの深さが大きくなるとともに,凹部26cの幅が狭くなる。その結果,隣接するマイクロレンズ26の境界部26aが,図13に示すように,実質的に平坦な部分を含まないように形成される。以上のようなエッチングを行うことにより,隣接するレジスト27(図10参照)間に約0.4μmの隙間を設けた場合にも,エッチング後には,図14に示すように,マイクロレンズ26は,上に凸の曲面形状に形成されるとともに,隣接するマイクロレンズ26は,境界部26aに実質的に平坦な部分を含まないように接続される。」
「【0057】
図15?図18に示した実験結果より,図11?図13のエッチング工程においては,図15中のAの範囲(ガス圧力:約37.0Pa?約43.0Pa,CHF_(3)ガスの流量:約5ml/s?約15ml/s)のエッチング条件を用いるのが好ましいことが判明した。」
(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「マイクロレンズを形成するためのエッチング方法であって,Si基板上に,レジストを塗布し,レジストを上に凸の曲面形状に形成し,レジストとSiN膜とを同時にエッチングし,この際,デポジション性のCHF_(3)ガスを含むエッチングガスを用いてエッチングを行い,具体的なエッチング条件としては,ガス圧力:約37.0Pa?約43.0Pa,エッチングガス:CHF_(3)ガス(約5ml/s?約15ml/s),CF_(4)ガス(約60ml/s?約100ml/s),Arガス(約600ml/s?約900ml/s)およびO_(2)ガス(約25ml/s?約35ml/s),高周波電力:約120W?約200Wであり,
隣接するレジスト間に約0.4μmの隙間を設けた場合にも,エッチング後には,隣接するマイクロレンズは,境界部に実質的に平坦な部分を含まないこと。」
2 引用文献2の記載
(1)引用文献2
当審拒絶理由で引用された特開平10-074600号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに次の記載がある。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,高周波放電により発生させたプラズマにより半導体ウエハやLCD基板にエッチングやデポジション等の所定の処理を行なうプラズマ処理装置に係り,特にプロセスガスの過剰な解離を抑えて安定した処理を行なうことができるプラズマ処理装置に関する。」
イ 「【0003】このような高微細化の要請と同時に,被処理体である半導体デバイスにおいては,平面方向の集積化,微細化の要求と平行して,キャパシタ素子の静電容量の確保のため,キャパシタ素子を実現する構造が垂直方向に拡大し,また,配線抵抗を低減する要求からも配線が縦方向に寸法が大きくなるなどの立体化が進むためにエッチング処理の加工寸法が深くなる。このため,この加工寸法とレジスト厚との比が大きくなるために,寸法シフトを避けるためにより高いレジスト選択比が要求される。かかる要求に応えるため,高密度のプラズマを発生させるためのプラズマソースについて開発が進められ,最近では,ヘリコン波,ECR(ElectornCyclotron Rosonance),TCP(Transformer Coupled Plasma),ICP(Inductively Coupled Plasma)などによる高密度プラズマを用いて,例えば半導体ウエハの酸化膜を高選択比でエッチング処理することが試みられている。
(中略)
【0006】このような問題は,プロセスガスが過度に解離することに起因して生ずる。図17は,従来のTCP,ICP等の誘導結合方式のプラズマ処理装置において生成される高密度プラズマ中の電子のエネルギー分布の概略を示す図である。このような電子の内,低エネルギー領域LEの電子は処理ガスの解離に寄与し,高エネルギー領域HEの電子は処理ガスの電離に寄与すると考えられる。すなわち,同図に示すように,このプラズマ処理装置においては,高密度プラズマを生成するため,低エネルギー側LEの電子を高密度に生成している。例えばTCP,ICPなどの誘導結合方式では,電界は,処理容器壁に対して平行に振動するので電子は処理容器内壁に衝突することなく往復運動する。この時,電界がプラズマ中に浸透する深さはスキンデプスとして定義されており,例えば直径300mmの処理容器において5mTorrでのプラズマ密度5×10^(11)/cm^(3)の条件では,スキンデプスの厚さは約17mmである。このスキンデプスの領域では電子は低エネルギーに効率よく加速されている。加速された電子は,スキンデプス領域の内側のバルクプラズマ領域に拡散する。
【0007】このように,処理ガスの解離を進行させるエネルギーに相当する低エネルギー電子が多く生成されると,これら電子により励起されるプラズマ内では,例えば平行平板方式のプラズマと比較すると,ラジカルの解離が進む。この現象をプラズマからの発光スペクトルにより確認したデータを図16に示す。図16に示すデータは,同じ処理容器で,真空度,ガス種,ガス流量,プラズマ密度を同じにし,平行平板方式のプラズマと従来の誘導結合方式のプラズマの発光を比較したものである。図中,特性Aは平行平板方式を示し,特性Bは誘導結合方式を示す。平行平板方式と比較して誘導結合方式の場合には,CF_(2)の発光が減少し,Fの発光が強くなっていることがわかり,解離がはるかに進んでいるのが判明する。
【0008】例えば,CF系ガスによるシリコン酸化膜エッチングの場合では,FラジカルとCFxラジカルでの吸着係数を比較するとFラジカルの方が吸着係数が小さいために,Fラジカルがプラズマ中に残留し,プラズマ中のFラジカル濃度が増加する。その結果,被加工物である半導体ウエハ表面に堆積する膜F/C比が,平行平板方式の場合0.8程度のものが1.8前後まで上昇する。これが原因となって,前述のようにレジストのエッチングレートが速くなり,対レジスト選択比が低下する。」
ウ 「【0015】
【発明の実施の形態】以下に,本発明に係るプラズマ処理装置の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。図1は本発明に係るプラズマ処理装置の一例を示す断面図,図2は図1に示す装置の天井部の水平断面を模式的に示す図である。本実施例では,プラズマ処理装置をプラズマエッチング装置に適用した場合を例にとって説明する。このプラズマエッチング装置2は,例えば内壁表面がアルマイト処理されたアルミニウムなどからなる円筒形状に加工された処理容器4を有しており,この処理容器4は接地されている。
【0016】この処理容器4内に形成される処理室の底部にはセラミック等の絶縁板6を介して,被処理体,例えば半導体ウエハWを載置するための略円柱状のサセプタ8が設けられている。前記サセプタ8の内部には,冷媒室10が設けられており,この冷媒室10には例えば液体フロロカーボンなどの温度調整用の冷媒が冷媒導入管12を介して導入可能であり,導入された冷媒はこの冷媒室10内を循環し,この冷媒の冷熱は冷媒室10から前記サセプタ8を介して前記ウエハWに対して伝熱され,このウエハWの処理面を所望する温度まで冷却することが可能である。熱交換を行なった冷媒は冷媒排出管14より処理室外へと排出されるようになっている。
【0017】そして前記絶縁板6,サセプタ8の内部には,後述の静電チャック16を通して被処理体であるウエハWの裏面に,伝熱媒体,例えばHeガスなどを供給するためのガス通路18が形成されており,このウエハWは所定の温度に維持されるようになっている。前記サセプタ8は,その上面中央部が凸状の円盤状に成形され,その上にウエハWと略同径の静電チャック16が設けられている。この静電チャック16は,2枚の高分子ポリイミドフィルムによって導電層(図示せず)が挟持された構成を有しており,この導電層に対して,処理容器4の外部に配置されている直流高圧電源20から,例えば1.5kVの直流電圧を印加することによって,この静電チャック16上面に載置されたウエハWは,クーロン力によってその位置で吸着保持されるようになっている。ここで,高分子ポリイミドフィルムの代わりに2層のアルミナセラミックにより導電層を挟持した構造を用いると静電チャック16の耐圧不良などによる寿命を延ばすことができる。
【0018】前記サセプタ8は,その上端周辺部には,静電チャック16上に載置されたウエハWを囲むように,環状のフォーカスリング22が配置されている。このフォーカスリング22は電界を遮断する絶縁体の材質からなりフォーカスリング22上では反応性イオンを加速しないので,プラズマによって発生した反応性イオンを,その内側のウエハWにだけ効果的に入射せしめるように構成されている。
【0019】処理容器4の側壁は,その上部の一部分が例えば石英等の絶縁体よりなる高周波透過窓24で構成されており,その外側に高周波誘導手段として,例えばリング状に巻回されたソレノイド形コイル部材26が配置されて,アンテナ部材を構成している。図示例では1ターンのコイルであるが,このターン数は複数でもよい。ソレノイド形コイル部材26の外側は接地された例えばアルミニウムなどの導電体からなる外側シールド28で囲まれており,高周波を外へ漏らさないようにしている。ソレノイド形コイル部材26の一端は図示しない絶縁された接続孔により外部に取り出され,後で述べるRF電力供給系に接続される。このソレノイド形コイル部材26は管状になっており,その内側に冷却のための冷却水を循環させる様になっている。ソレノイド形コイル部材26は,間隔を置いて配置された図示しない絶縁体のスペーサにより外側シールド28に固定されている。
【0020】コイル部材26にはそのリアクタンスを減少させるために,外側シールド28との間に分散的に図示しないコンデンサを挟むことができる。また,外側シールド28の内部を図示しない液体誘電体で満たすことにより,グランドとの間に分布的にキャパシタンスを与えることができ,コイル部材26のリアクタンスを減少させることが可能である。また,液体誘電体には冷媒を用いることも可能であり,コイル部材26の冷却を兼ねることができる。このコイル部材26には,例えばデカップリングコンデンサを含んだ整合器30を介して例えば13.56MHzの高周波を出力する高周波電源31が接続されており,コイル部材26より高周波透過窓24を介して処理容器4内にプラズマ発生用の高周波磁界を導入し得るようになっている。」
エ 「【0033】そして,処理容器4内の圧力を,例えば1Pa程度に設定,維持した後,プラズマ発生用の高周波電力をソレノイド形コイル部材26に印加し,他方,自己バイアス用の高周波電力をサセプタ8へと印加することにより,ガスがプラズマ化されてウエハ表面に所定のエッチング処理を実施する。このようにソレノイド形コイル部材26に高周波電力を印加することにより,高周波誘導磁界によって処理室内に高密度のプラズマが立つことになる。また,この時,容器周方向に沿って発生する交番高周波誘導電界によって,電界の浸透するスキンデプスの領域P2に存在する電子は高エネルギー化して電界の振動に追従して往復振動し,プロセスガスと衝突して活性種を発生させる。しかしながら,図2及び図3にも示すようにこのリング状のスキンデプスの領域P2には所定の間隔で障壁部材32Aを分散させて設けてあるので,この高エネルギー電子Eは障壁部材32Aと衝突する場合が多く生じ,そのエネルギーが減じられる。図3の白抜きの矢印はある瞬時の高周波誘導電界の方向を示す。また,この場合,2次電子を放出する場合もあるが,結果的にこの電子もそのエネルギーレベルが低下する。高周波電界の半周期の間に電子が加速され移動する距離は,電界が強いと長くなり,周波数が高いと短くなる。障壁部材32A間の間隔はこれらの条件に対して最適化される。
オ 「【0036】尚,上記実施例ではソレノイド形コイル部材26と高周波透過窓24との間には何ら設けていないが,図4に示すようにここに静電シールド78を設けるようにしてもよい。図5はこの静電シールド78を示す斜視図であり,このシールド78は例えばリング状に形成した銅板等よりなる導電板80に,その周方向に沿って所定の等間隔で多数のスリット82を設けて構成されており,これを接地した状態でコイル部材26と高周波透過窓24との間に配置している。これにより,静電シールド78はプラズマ表面に対して平行な電場は遮蔽し,プラズマ表面に対して垂直な電場のみを通すようになっている。このため,プラズマシースに電圧がかかることを避けることができ,高周波透過窓24の内面がプラズマにスパッタされることを抑制することができる。この時,スリット82の幅及びピッチはコイル部材26に印加される高周波の周波数等に依存して設定され,これが実施例のように13.56MHzの場合には上記幅及びピッチはそれぞれ2mmと20mm程度に設定される。」
(2)公知技術2
前記(1)より,引用文献2には次の技術的事項(以下,「公知技術2」という。)が記載されていると認められる。
「半導体ウエハにエッチング処理を行うプラズマ処理装置に係り,プラズマエッチング装置は,処理容器を有し,処理容器内に半導体ウエハを載置するためのサセプタが設けられており,処理容器の側壁の上部は高周波透過窓で構成されており,その外側に高周波誘導手段として,ソレノイド型コイル部材が配置され,静電シールドを接地した状態でコイル部材と高周波透過窓との間に配置し,
プラズマ発生用の高周波電力をソレノイド型コイル部材に印加し,ガスがプラズマ化されてウエハ表面に所定のエッチング処理を実施すること。」

第5 対比及び判断
1 本願発明について
(1)本願発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「マイクロレンズを形成するためのエッチング方法であって,Si基板上に,レジストを塗布」は,本願発明の「基板上にマイクロレンズを形成する方法」に相当する。
イ 引用発明では,「エッチングガスを用いてエッチングを行」うから,「処理装置のプロセスチャンバ」で行うことは自明であり,するとその「内部にレンズ形状を有する複数のマイクロレンズ体を有している基板を配置するステップ」を含むことも自明である。そして,引用発明の「デポジション性のCHF_(3)ガスを含むエッチングガスを用いてエッチングを行い,具体的なエッチング条件としては」「エッチングガス:CHF_(3)ガス(約5ml/s?約15ml/s),CF_(4)ガス(約60ml/s?約100ml/s),Arガス(約600ml/s?約900ml/s)およびO_(2)ガス(約25ml/s?約35ml/s)」は,本願発明の「前記プロセスチャンバの内部にプロセスガスを供給するステップであって,前記プロセスガスは,CF_(4)とCHF_(3)との混合物を含む,ステップ」に相当する。
ウ 引用発明において「高周波電力:約120W?約200W」の「エッチング条件」であるから「プラズマエッチング」であることは明らかであり,引用発明の「Si基板上に,レジストを塗布し,レジストは上に凸の曲面形状に形成され,レジストとSiN膜とを同時にエッチング」は,本願発明の「前記基板上の前記マイクロレンズ体の前記レンズ形状を修正するために,前記基板上で前記プロセスガスを用いて,プラズマエッチングプロセスを実行するステップ」に相当する。
エ 引用発明において「隣接するレジスト間に約0.4μmの隙間を設けた場合にも,エッチング後には,隣接するマイクロレンズは,境界部に実質的に平坦な部分を含まない」から,「前記プラズマエッチングプロセスを実行するステップによって,前記複数のマイクロレンズ体の各々の長さは,Lだけ増加」するといえる。
オ すると,本願発明と引用発明とは下記カの点で一致し,下記キの点で相違する。
カ 一致点
「基板上にマイクロレンズを形成する方法であって,
プラズマ処理装置のプロセスチャンバの内部に,レンズ形状を有する複数のマイクロレンズ体を有している基板を配置するステップと,
前記プロセスチャンバの内部にプロセスガスを供給するステップであって,前記プロセスガスは,CF_(4)とCHF_(3)との混合物を含む,ステップと,
前記基板上の前記マイクロレンズ体の前記レンズ形状を修正するために,前記基板上で前記プロセスガスを用いて,プラズマエッチングプロセスを実行するステップと,
を含み,
前記プラズマエッチングプロセスを実行するステップによって,前記複数のマイクロレンズ体の各々の長さは,Lだけ増加する,
方法。」
キ 相違点
(ア)相違点1
本願発明では,「プラズマ処理装置」が「誘導結合プラズマ処理装置」であって,「前記誘導結合プラズマ処理装置は,少なくとも1つの誘導エレメント,および,前記少なくとも1つの誘導エレメントと前記プロセスチャンバの内部との間に配置された,接地されたファラデー遮蔽を備えている,ステップと,」「前記プロセスチャンバの内部に,実質的に誘導性のプラズマを生成するために,前記少なくとも1つの誘導エレメントにエネルギーを加えるステップ」を含むのに対して,引用発明ではこれらのステップが明示されない点。
(イ)相違点2
本願発明では「前記プラズマエッチングプロセス中のCHF_(3)の流量は,CF_(4)の流量より高い」のに対し,引用発明では「CHF_(3)ガス(約5ml/s?約15ml/s),CF_(4)ガス(約60ml/s?約100ml/s)」である点。
(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
引用発明では「高周波電力:約120W?約200W」でエッチングガスをプラズマ化していることは明らかである(前記(1)ウ参照)から,その高周波電力をエッチングガスに与える手段として,公知技術2に開示されたプラズマ処理装置を採用することは,当業者が容易になし得ることである。
イ 相違点2について
引用文献2には,平行平板方式のプラズマと誘導結合方式のプラズマを比較すると,誘導結合方式の場合には解離がはるかに進んでプラズマ中のFラジカル濃度が増加し,半導体ウエハ表面に堆積する膜F/C比が,平行平板方式の場合よりも上昇することが記載されている(前記第4の2(1)イ)。すると,引用発明に誘導結合方式の公知技術2を採用する際に,F/C比が上昇しすぎないように,1分子中に4つのF原子を有するCF_(4)の流量を下げてF/C比を調整することは,当業者が具体的技術の適用にあたって容易になしうる設計的事項である。
一方で,本願明細書を精査しても,「例えば,CF_(4)の流量は,10sccmから80sccmの範囲である。CHF_(3)の流量は,120sccmから300sccmの範囲である。」(本願明細書段落【0036】)としか記載されておらず,「CHF_(3)の流量」を「CF_(4)の流量より高」くすることについての技術的意義や効果は記載されていないから,本願発明について格別の効果は認められない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。
2 請求人の主張について
請求人は,平成31年3月20日付け意見書において,引用文献1の段落【0053】?【0055】の記載及び同図15?18を根拠に,「引例1では,CHF_(3)ガスの流量を約15ml/sより大きくすることには阻害要因があるといえます。それゆえ,引例1において,CHF_(3)の流量をCF_(4)の流量より高くする構成に変更するとは考えられません。」と主張している。
しかし,CF_(4)の流量を下げてF/C比を調整することにより,相違点2に係る構成を得ることが容易であることは,前記1(2)イで述べたとおりであり,「CHF_(3)ガスの流量を約15ml/sより大きくすることには阻害要因がある」としても,そのこととは関係なく,相違点2に係る構成を得ることは容易といえる。
そもそも,引用文献1で開示されているのは,「(ガス圧力:約37.0Pa?約43.0Pa,CHF_(3)ガスの流量:約5ml/s?約15ml/s)のエッチング条件を用いるのが好ましいこと」(引用文献1の【0057】)であり,「CHF_(3)の流量」と「CF_(4)の流量」との関係についていうものではないから,相違点2に関して阻害要因になるものではない。

第6 結言
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明については,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-05-24 
結審通知日 2019-05-27 
審決日 2019-06-07 
出願番号 特願2015-515112(P2015-515112)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 聡一郎齊田 寛史  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 鈴木 和樹
深沢 正志
発明の名称 マイクロレンズを形成する方法  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  

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