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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A23L
管理番号 1356563
審判番号 不服2018-16213  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-05 
確定日 2019-11-13 
事件の表示 特願2017- 60377「海苔製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月18日出願公開、特開2018-161091、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成29年3月27日を出願日とする出願であって、平成30年2月27日付けで拒絶理由が通知され、同年5月14日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月16日付けで拒絶査定がされ、同年12月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶の理由は、平成30年2月27日付け拒絶理由通知における理由1であり、その理由1の概要は、この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1?4、7?8に記載された発明又は、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的技術情報5、6の発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1:特開2004-65060号公報
引用文献2:特開2015-226510号公報
引用文献3:特開平9-271370号公報
引用文献4:特開昭58-98067号公報
電子的技術情報5:"「Meister Visualizer Suite for O&」の提供開始について"、[online]、2016年10月27日、[2018年2月26日検索]、インターネット<URL:http://www.toshiba.co.jp/cl/news20161027>
電子的技術情報6:"ファシリティ・モニタリングサービス:株式会社日立システムズ"、[online]、2016年10月 5日、[2018年2月26日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20161005233525/htts://www.hitachi-systems.com/solution/s0303/fms>
引用文献7:特開2003-144105号公報
引用文献8:特開2003-144104号公報

第3 特許請求の範囲の記載
この出願の特許請求の範囲の記載は、平成30年12月5日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項によって特定された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
海苔簀を保持したホルダを循環搬送することにより、前記海苔簀に抄き上げられた生海苔を乾燥させて乾海苔を製造する海苔製造装置であって、
前記ホルダは、一対の横桿と縦桿を枠型に組立てた形状であり、前記海苔簀の一端側は一方の前記横桿に保持されるとともに他端側には前記横桿と平行な棒部材が結合されており、前記棒部材は前記ホルダに固定されたバネ部材によって前記横桿に設けられたストッパに押し当てられて海苔簀が展張された展張位置に固定される構成となっており、
無端チェンを搬送路に沿って所定ピッチで間歇走行させることにより前記ホルダを循環搬送するホルダ搬送手段と、
前記ホルダに保持された海苔簀上に生海苔を抄き上げる抄き部と、
前記抄き部によって抄き上げられた海苔簀上の生海苔を脱水する脱水部と、
前記ホルダ搬送手段から受け渡されたホルダを搬送しながら海苔簀上の生海苔を乾燥させて乾海苔とする乾燥室と、
前記乾燥室から送り出されて前記ホルダ搬送手段に受け渡された前記ホルダの海苔簀に付着する前記乾海苔を海苔簀から剥ぎ取る剥離部とを備え、
さらに前記剥離部は、
前記海苔簀の下面側に付着する前記乾海苔を吸引する吸引面が設けられたベルトを有し、乾海苔を吸引した状態の前記ベルトを回動させることにより乾海苔を搬出する吸引回動ベルトと、
前記吸引回動ベルトを昇降させて前記吸引面を前記海苔簀の下面に接離させるベルト昇降手段と、
前記バネ部材の自由端部を下方に押圧することにより前記展張位置に位置する前記棒部材のストッパへの押し当てを解除する押圧手段と、
前記棒部材の保持および保持解除を行うチャック部と、
前記棒部材を保持した前記チャック部を所定の剥離動作軌跡で移動させることにより、前記吸引面に吸引された乾海苔が前記海苔簀から剥ぎ取られるように、前記ホルダにおいて前記海苔簀に折り返し動作を行わせるチャック移動手段と、
前記折り返し動作後に前記展張位置に戻った前記棒部材を検出するセンサとを備え、
前記センサは、前記剥離部において乾海苔の剥離動作が行われるホルダ停止位置又は前記ホルダ停止位置よりも下流側のホルダ停止位置に位置する前記ホルダにおいて、前記展張位置に相当する位置の下方に配設され、
前記折り返し動作後に前記棒部材が前記展張位置に正しく戻っているか否かを、前記センサによって検出することを特徴とする海苔製造装置。
【請求項2】
前記センサからの照射された検査光の反射光を前記センサが検出し、その検出信号を検出処理部によって処理することにより、前記展張位置における前記棒部材の存否を判定することを特徴とする請求項1に記載の海苔製造装置。
【請求項3】
前記チャック移動手段は、前記展張位置に位置する前記棒部材に対して前記チャック部を昇降させるチャック昇降機構と、
前記海苔簀に折り返し動作を行わせ、さらに折り返し動作後に前記棒部材を前記展張位置に戻すために、前記棒部材を保持した前記チャック部に水平方向の移動を含む動作を行わせるチャック水平移動機構とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の海苔製造装置。
【請求項4】
前記横桿をガイドすることにより、前記剥離部に位置するホルダの搬送方向の位置を固定するガイド機構を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の海苔製造装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。
(1-1)
「【請求項1】
横杆と縦杆を枠型に組立て、且つその自由端部により簀の端部が保持された横棒を上方へ押圧するばね材を設けるとともに、このばね材で上方へ押圧された横棒が押し付けられるストッパを設けたホルダーがあり、
前記ホルダーを吸引回動ベルトの上方で停止させる工程と、吸引回動ベルトを上昇させて前記簀の下面に展着した乾海苔をこの吸引回動ベルトに吸着する工程と、チャック手段により前記横棒をチャックする工程と、押圧手段を下降させて前記ばね材の自由端部を下方へ押圧することにより前記横棒の前記ストッパへの押し付け状態を解除する工程と、この解除を行った後、チャック手段を水平方向へ移動させることにより簀を前記吸引回動ベルト上で折り返して、前記吸引回動ベルトに吸着された乾海苔を簀から剥ぎ取る工程と、前記吸引回動ベルトを回動させることにより剥ぎ取られた乾海苔を搬出する工程と、前記チャック手段を前記とは逆方向へ水平移動させて前記横棒を前記ストッパの下方位置へ復帰させる工程と、前記押圧手段を上昇させる工程と、その後で前記チャック手段による前記横棒のチャック状態を解除して前記チャック手段を退避位置に移動させる工程とを含むことを特徴とする乾海苔の剥離方法。」
(1-2)
「【0002】
【従来の技術】
シート状乾海苔を製造する乾海苔製造装置は、簀を保持したホルダーを抄き部、脱水部、乾燥室、剥ぎ部を循環させ、簀上への生海苔の抄き上げ、抄き上げられた生海苔の脱水、脱水された生海苔の乾燥、乾燥された乾海苔の簀からの剥離を行うようになっている(例えば特開平9-271371号公報)。」
(1-3)
「【0007】
図1および図2において、1は横棒であり、複数枚の簀2の端部が止具3により取り付けられている。」
(1-4)
「【0008】
ホルダー10は、長尺の互いに平行な横杆11、12と複数本の縦杆13を枠型に組立てて構成されている。簀2の他端部は止具5により一方の横杆12に取り付けられている。」
(1-5)
「【0009】
縦杆13の略々中央部にはピン状の止具15が設けられており、この止具15に線状のばね材16が巻き付けるなどして取り付けられている。ばね材16の先端の自由端部は横杆11の下方まで延出している。ばね材16の自由端部は自身のばね力により上方へ弾発されており、そのばね力により横棒1は上方へ押圧されて横杆11に固着された棒状のストッパ17に下方から押し付けられている。ストッパは縦杆13に設けてもよい。この場合、ストッパは縦杆13から横杆11に沿って延出させ、その先端部を屈曲させて屈曲した部分に横棒1を下方から押し付けるなどすればよい。」
(1-6)
「【0010】
図1および図3において、20は搬出コンベアであり、ホルダー10の搬送路の下方に設けられている。搬出コンベア20は、プーリ21に吸引回動ベルト22を調帯して成っている。吸引回動ベルト22には吸引孔23が多数形成されている。また吸引回動ベルト22の上側走行路の下方には吸引ドラム24が設けられている。吸引ドラム24は管路25を通じて真空ポンプ26に接続されている。吸引ドラム24の上面は吸引回動ベルト22の上側走行路の下面に当接している。吸引ドラム24を含む搬出コンベア20は、上下動機構(図外)により上下動する。」
(1-7)
「【0011】
図3において、ホルダー10の上方には押圧手段30とチャック手段40が設けられている。押圧手段30は上下動機構(図外)により上下動し、ばね材16の先端の自由端部を下方に押圧し、また押圧状態を解除する。チャック手段40は開閉自在なチャック爪41、42を有している。チャック手段40は上下動機構(図外)により上下動し、またチャック爪41、42は開閉機構(図外)により開閉する。なお上下動機構としては、クランク機構、リンク機構、カム機構などの周知機構が適用でき、また開閉機構としてはソレノイドなどのアクチュエータが適用できる。
【0012】
次に、図3?図10を参照してシート状乾海苔の剥離方法を説明する。図3?図10は、剥離方法を工程順に示している。抄き、脱水、乾燥の各工程が終了したホルダー10は、コンベア(図示せず)に間欠搬送されながら、搬出コンベア20上で停止する(図3)。すると、まずチャック手段40は下降し、チャック爪41,42は閉じて横棒1をチャックする(図4)。次に押圧手段30が下降し、ばね材16の先端の自由端部を下方へ押圧し、横棒1をストッパ17の下面に押し付けていた状態を解除する(図5)。またこれと前後して搬出コンベア20は上昇し(図5の矢印A)、吸引回動ベルト22は簀2の下面に貼着する乾海苔を真空吸着する。なお、チャック手段40が下降して横棒1をチャック爪41,42でチャックするタイミングは、押圧手段30が下降してばね材16の自由端部を下方へ押圧する前であるが、搬出コンベア20が上昇して吸引回動ベルト22に乾海苔を真空吸着するタイミングは、チャック手段40や押圧手段30が下降するタイミングの前後付近であればいつでもよい。
【0013】
次にチャック手段40は反対側の横杆12側へ向って水平方向へ移動することにより、簀2を吸引回動ベルト22上で折り返し、乾海苔4を吸引回動ベルト22で真空吸着して簀2から剥ぎ取る(図6)。なお本発明で水平方向は、略水平方向を含む。
【0014】
次に搬出コンベア20は下降し(図7の矢印B)、吸引回動ベルト22がプーリ21に沿って回動することにより、乾海苔4を次の工程へ向かって搬出する。次にチャック手段40は前記とは逆方向すなわち横杆11へ向って水平移動して横棒1をストッパ17の下方位置に復帰させる(図8)。次いで押圧手段30は上昇してばね材16の押圧状態を解除する(図9)。
【0015】
その後で、チャック爪41,42は開いて横棒1のチャック状態を解除し、上方の退避位置へ移動・復帰する(図10)。以上により、ばね材16の自由端部は自身のばね力により上昇し、横棒1を再びストッパ17の下面に押し付けて横棒1を固定する。なお搬出コンベア20の下降タイミングや、乾海苔4の搬出タイミングは、乾海苔4を簀2から剥ぎ取って吸引回動ベルト22に吸着した後であれば、いつでもよい。次にホルダー10は再び抄き部(図示せず)へ向って搬送される。」
(1-8)
「【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】

【図8】

【図9】

【図10】



2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2-1)
「【0009】
本発明の海苔製造装置は、海苔簀ホルダを構成する平行な2本の桿部の間に海苔簀を展張して保持させ、前記海苔簀ホルダを無端チェンによって循環搬送することにより、前記海苔簀に抄き上げられた生海苔を乾燥させて乾海苔を製造する海苔製造装置であって、無端チェンを下段搬送路および上段搬送路に沿って所定ピッチで間歇走行させることにより前記海苔簀ホルダの下面側に所定ピッチで形成された係合部に搬送方向における下流側の第1の桿部を係合させて循環搬送するホルダ搬送手段と、前記上段搬送路に配設されて前記海苔簀ホルダに保持された海苔簀上に生海苔を抄き上げる抄き部と、前記上段搬送路に配設されて前記抄き部によって抄き上げられた海苔簀上の生海苔を脱水する脱水部と、前記ホルダ搬送手段から受け渡された海苔簀ホルダを搬送しながら海苔簀上の生海苔を乾燥させて乾海苔とする乾燥室と、前記下段搬送路に配設されて前記乾燥室から送り出されて前記ホルダ搬送手段に受け渡された前記海苔簀ホルダの海苔簀に付着する前記乾海苔を海苔簀から剥ぎ取る剥ぎ部と、前記下段搬送路に配設されて前記海苔簀ホルダを反転するホルダ反転機構とを備え、前記ホルダ反転機構は、前記下段搬送路の一部を構成する位置に搬送方向における上流側に設けられた支点廻りに回動自在に配設され、前記無端チェンの下面側に保持された海苔簀ホルダを下面側から支持する支持部材と、前記支持部材を前記支点廻りに前記搬送方向における下流側が下垂する方向に回動させることにより前記支持された海苔簀ホルダを前記支持部材とともに下垂させる下垂機構と、前記支持部材の下垂動作と同期して動作し、海苔簀ホルダの搬送方向における上流側の第2の桿部を下面側から保持して所定軌跡で移動させ1つ下流側の前記係合部に係合させるホルダ係合替え機構と、前記下垂動作後の海苔簀ホルダにおいて前記第2の桿部と反対側の第1の桿部と当接することにより、前記無端チェンの走行に伴う海苔簀ホルダの移動に際して当該桿部を前記下段搬送路に導くガイド部材とを備えた。」
(2-2)
「【0013】
生海苔を抄き上げて乾燥するために用いられる海苔簀ホルダ5は、図2に示すように、海苔簀ホルダ5を構成する2本の平行な桿部6a(第1の桿部)、桿部6b(第2の桿部)の間に、複数の海苔簀9を展張して保持金具8を介して保持させた構成となっている。海苔製造装置1における搬送時には、海苔簀ホルダ5は桿部6a、6bの両端部を下面側から支持された状態で搬送される。桿部6a、6bの間には複数の連結部材7が張り渡されており、これにより海苔簀9を保持するための矩形枠が形成される。ホルダ搬送手段2によって海苔簀ホルダ5を循環搬送する際には、図1に示すように、無端チェン3に所定ピッチで下方に突出して設けられた係合部4に、搬送方向における下流側の桿部6aを係合させる。そしてこの状態で無端チェン3を間歇走行させることにより、海苔簀ホルダ5はホルダ搬送手段2に沿って循環搬送される。」
(2-3)
「【0016】
脱水後の海苔簀ホルダ5は乾燥室15に搬入される。乾燥室15は上段コンベア16U、下段コンベア16Lの2段の乾燥コンベアを備えておいる。脱水後の海苔簀ホルダ5はまず上段コンベア16Uに所定間隔で設けられた複数の保持部材17の間に立て姿勢で保持された状態で、乾燥室15内を移動する。次いで乾燥途中の海苔簀ホルダ5は下段コンベア16Lに受け渡されて、さらに乾燥室15内を移動する。この間に海苔簀ホルダ5に展張された海苔簀9の生海苔は乾燥して乾海苔となり、下段コンベア16Lからホルダ搬送手段2の下段搬送路2Lに受け渡される。下段搬送路2Lには剥ぎ部13が配設されており、剥ぎ部13に到達した海苔簀ホルダ5の海苔簀9からは乾海苔が剥ぎ取られ、製品として回収される。これにより、乾海苔の製造の1サイクルが完了する。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、次の事項が記載されている。
(3-1)
「【請求項1】 ホルダーを搬送するコンベヤと、このコンベヤにより搬送されるホルダーに横方向に複数枚保持された海苔簀上に生海苔をすき上げるすき部と、海苔簀上にすき上げられた生海苔を脱水する脱水部と、ホルダーを無端チェンにより搬送しながら海苔簀に展着した生海苔を乾燥させる乾燥室と、乾燥が終了して海苔簀に展着する乾海苔を海苔簀からはぎ取るはぎ部とを備えた乾海苔製造装置において、
前記無端チェンが前記乾燥室内に少なくとも3本平行に配設され、またこの3本の無端チェンに前記ホルダーの両側部と中央部の縦棒に当接する支骨が突設されており、かつ中央の無端チェンの上面と下面に当接してこの中央の無端チェンの直進走行を案内することにより前記支骨のふらつきを防止する上面ガイドレールと下面ガイドレールを設けたことを特徴とする乾海苔製造装置。」
(3-2)
「【0011】図1において、1は無端チェンから成るコンベヤであり、海苔簀を保持するホルダー20を矢印N1方向へピッチ搬送する。2はコンベヤ1が調帯されたスプロケットである。コンベヤ1の上側走行部にはすき部3と脱水部4が設けられており、また下側走行部にははぎ部5と洗浄部6が設けられている。」
(3-3)
「【0019】この乾海苔製造装置は上記のような構成より成り、次に全体の動作を説明する。図1において、ホルダー20はすき部3で停止し、海苔簀25上に生海苔27がシート状にすき上げられる。次にホルダー20は脱水部4へ送られ、生海苔27はプレス脱水される。次にホルダー20は乾燥室10の上段の無端チェン11の支骨14の間へ送り込まれる。そして無端チェン11がピッチ回動することにより、ホルダー20は矢印N2,N3方向へピッチ搬送され、生海苔27は徐々に乾燥される。
【0020】次にホルダー20は上段の無端チェン11の下側走行部の終端部まで送られてくると、回転車15を介して下段の無端チェン11へ受け渡される。そして下段の無端チェン11がピッチ回動することにより、ホルダー20は矢印N4,N5方向へピッチ搬送され、生海苔27は更に乾燥される。そしてホルダー20は下段の無端チェン11の下側走行部の終端部まで送られてくると、コンベヤ1へ受け渡される。そしてはぎ部5まで送られてくると、乾燥が終了した乾海苔は、海苔簀25からはぎ取られて回収される。次いでホルダー20は洗浄部6へ送られて海苔簀25は水洗浄された後、すき部3へ送られ、以下上述した動作が繰り返される。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、次の事項が記載されている。
(4-1)
「本発明は、ホルダーに保持された簀に展着する海苔の剥離装置に関する。
近年、簀をホルダーに取付けて抄部、脱水部、乾燥部などの諸順路を循環させる形式の海苔製造機が普及してきた。ところで、この種海苔製造機の場合、海苔の簀からの剥取りは、簀を押材により編糸方向に強制的に引伸ばすことにより行われていたが、かかる手段においては海苔が破れやすく、且つ簀が痛みやすい欠点があった。
そこで、本発明はかかる従来のものの欠点を解消した海苔剥離装置を提供する目的でなされたものであって、簀の一端をホルダーに着脱自在に取付けておき、簀に展着する海苔に吸引ベルトを当接して海苔を吸引するとともに、ホルダーに着脱自在に取付けられた簀の一端を保持部材にて保持し、この保持部材を駆動してそのまま簀を他端方向に折返すことにより海苔を簀から剥取り、剥取られた海苔を確実に次工程へ送り出すようにしたものである。」(第1頁左下欄下から6行?右下欄下から7行)

5 電子的技術情報5について
原査定の拒絶の理由に引用された上記電子的技術情報5には、次の事項が記載されている。
(5-1)
「製造現場では、稼働中の製造装置に故障や異常が発生し、装置や関連する製造ラインが停止した場合、停止した装置を早期に復旧することが求められます。本ソリューションは、製造工程における各装置の稼働状況や、仕様・部品構成、保守履歴などの装置に関連する情報を集約してワンストップで装置管理者に提供し、装置の遠隔監視をサポートします、これにより、故障の予兆を検知し、異常発生時には迅速な関連情報を収集することで、早期復旧を可能にします。」(1頁本文5行?8行)

6 電子的技術情報6について
原査定の拒絶の理由に引用された上記電子的技術情報6には、次の事項が記載されている。
(6-1)
「ファシリティ・モニタリングサービスは、これまでデータ化されていなかった産業機器など施設内のさまざまな設備・機器の稼働情報を一括で収集・蓄積することで「見える化」を実現し、機器保全業務の高度化や生産効率の改善に貢献するサービスです。
作業工数のかかる点検やレポート作成業務をシステム化することで、業務効率を大幅に改善することができます。
・・・
導入効果
稼働状況をリアルタイムに「見える化」し、異常検知・原因究明が早期に判明するため、予防保守や障害対応を迅速化できます。」(3頁)

7 引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献7には、次の事項が記載されている。
(7-1)
「【請求項1】 横杆と縦杆を枠型に組み立てて横杆と横杆の間に簀を張設して成る簀ホルダーを抄きチェンにより抄き部、脱水部を搬送した後、乾燥室へ送り込んで乾燥室内を搬送しながらシート状の乾海苔を製造する乾海苔製造装置において、
前記抄きチェンが左右一対の無端回動チェンから成り、この無端回動チェンの内側に前記横杆の端部を支持する支持部と、前記横杆の長手方向への位置ずれを防止する位置ずれ防止部を設けたことを特徴とする乾海苔製造装置。
【請求項2】 前記支持部に、横杆の前後方向への位置ずれを防止する位置ずれ防止部を設けたことを特徴とする請求項1記載の乾海苔製造装置。」
(7-2)
「【0015】簀ホルダー40の横杆41の両端部は台部51上に載せられているが、その長手方向(矢印b方向)の位置ずれは第2の起立部53により規制される。したがって抄きチェン12により搬送される簀ホルダー40の横杆41が台部51から(すなわち抄きチェン12から)脱落するのは第2の起立部53により防止される。すなわち第2の起立部53は、横杆41の長手方向bの位置ずれ防止部となっている。また横杆41の端部は左右一対の第1の起立部52a,52bの間に挟まれており、横杆41が前後方向(上記長手方向bと直交する方向)aに位置ずれするのを防止する。すなわち第1の起立部52a,52bは、横杆41の前後方向aへの位置ずれ防止部となっている。
【0016】図3において、鎖線で示す横杆41’は従来の簀ホルダーの横杆を示している。従来装置の抄きチェン12には支持部50は存在しない。したがって横杆41’はその端部を抄きチェン12に載せられている。そしてその長手方向bの位置ずれを防止するために、抄きチェン12の外側に沿うように細長い固定ガイド部100が配設されている。従来はこのような構造であったため、抄きチェン12の回動により簀ホルダーが矢印N1方向へ搬送される際に、横杆41’の側端面が固定ガイド部100の内側面に摺接し、作業者にとって不快な摺接音(キーン音、ガー音)を発していたものである。」

8 引用文献8について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献8には、次の事項が記載されている。
(8-1)
「【請求項1】 左右一対の抄きチェンにより簀ホルダーを搬送しながら、簀ホルダーに保持された簀に抄き部において生海苔を抄き上げ、次いで抄き上げられた生海苔を脱水部において脱水するようにした前段部と、前段部に隣設された乾燥室を備え、この乾燥室の内部に上段搬送路と下段搬送路を設け、上段搬送路を搬送された簀ホルダーを下降手段により下段搬送路へ下降させ、下段搬送路を搬送した後、前記抄きチェンへ受け渡すようにした乾海苔製造装置において、前記下降手段が、前記上段搬送路の下側走行部を搬送されてきた簀ホルダーを下方へ案内する第1のガイドと、この第1のガイドの下部にあって、簀ホルダーの下降を案内するわん曲ガイドと、このわん曲ガイドの下方に配設されてこのわん曲ガイドに沿って下降してきた簀ホルダーの下降を案内する第2のガイドと、この第2のガイドの下方にあってこの第2のガイドに沿って下降してきた簀ホルダーが移乗する第3のガイドとを備え、前記第2のガイドと前記第3のガイドが左方へ向って下り勾配で斜設されており、且つ前記抄きチェンが前記わん曲ガイドの周囲を回動し、更に前記第2のガイドおよび前記第3のガイドの上部を右方へ走行した後、前記下段搬送路の左端部に沿って走行するようにし、前記上段搬送路から前記下段搬送路へ簀ホルダーを下降・移動させる間に、簀ホルダーの姿勢を直立姿勢から水平姿勢へ次第に変えるようにしたことを特徴とする乾海苔製造装置。
・・・
【請求項5】 前記抄きチェンと前記上段搬送路と前記下段搬送路がいずれも左右一対の無端回動チェンから成っており、これらの無端回動チェンのうちの少なくとも何れかの無端回動チェンの内側に簀ホルダーの横杆の端部を支持する支持部を突設し、かつこの支持部に前記横杆がその長手方向に位置ずれするのを阻止する位置ずれ防止部を設けたことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の乾海苔製造装置。」
(8-2)
「【0019】図3は、前段部Aにおける簀ホルダー40の横杆41の支持状態を示す抄きチェン2の部分平面図、図4は同側面図である。抄きチェン2の内側にはピッチをおいて支持部50が設けられている。支持部50は、台部51と、台部上の第1の起立部52a,52bおよび第2の起立部53から成っている。
【0020】簀ホルダー40の横杆41の両端部は台部51上に載せられているが、その長手方向(矢印b方向)の位置ずれは第2の起立部53により規制される。したがって抄きチェン2により搬送される簀ホルダー40の横杆41が台部51(すなわち抄きチェン2)から脱落するのは第2の起立部53により防止される。すなわち第2の起立部53は、横杆41の長手方向bの位置ずれ防止部となっている。また横杆41の端部は左右一対の第1の起立部52a,52bの間に挟まれており、横杆41が前後方向(上記長手方向bと直交する方向)aに位置ずれするのを防止する。すなわち第1の起立部52a,52bは、横杆41の前後方向aへの位置ずれ防止部となっている。」
(8-3)
「【0022】これに対し本実施の形態では、抄きチェン2の内側にピッチをおいて支持部50を設け、この支持部50に第2の起立部53を設けることにより、横杆41の長手方向bへの位置ずれを防止するようにしているので、横杆41の側端面と第2の起立部53の内側面の間で摺接音(キーン音、ガー音)を発することはない。何故ならば、抄きチェン2の回動により、横杆41と支持部50は一緒に矢印N1方向へ移動するからである。また第1の起立部52a,52bにより、横杆41が前後方向aへ不要にふらつくのを防止する。なお乾燥室10内の上段搬送路11と下段搬送路12を構成する無端回動チェン14にも、抄きチェン2と同様に図3、図4に示す支持部50を設けてもよく、そのようにすれば同様の作用効果が得られる。」

9 引用文献1に記載された発明について
上記記載事項(1-2)によると、引用文献1に記載された海苔製造装置は、簀を保持したホルダーを抄き部、脱水部、乾燥室、剥ぎ部を循環させる乾海苔を製造することが前提技術となっているものである。また、上記記載事項(1-2)には、簀上へ抄き上げられた生海苔を乾燥させて乾海苔を製造することが記載され、上記記載事項(1-4)には、ホルダーは、互いに平行な横杆11、12と複数本の縦杆を枠型に組み立てて構成されていることが記載されていることから、横杆は一対であるといえる。さらに、上記記載事項(1-4)には、簀の端部は止具により一方の横杆に取り付けられていること、すなわち、保持されていることが記載され、上記記載事項(1-3)には、簀の他端部には棒部材が取り付けられていることが記載され、上記記載事項(1-4)には、横棒は、横杆と平行であることが記載され、上記記載事項(1-1)には、ホルダーにはばね材が設けてあることが記載され、上記記載事項(1-5)には、横杆にストッパが固着されることが記載され、前記横棒は、ばね材によってストッパに押し付けられていることが記載され、簀の上でシート状の乾海苔を製造することから、前記横棒は、簀が展張された位置に固定される構成となっているといえる。そして、上記記載事項(1-1)には、簀の下面に展着した乾海苔を吸着する吸引する吸引回動ベルトが記載され、吸引回動ベルトには、吸引面が存在するといえ、吸引回動ベルトを回動させることにより乾海苔を搬出することが記載され、上記記載事項(1-6)には、吸引回動ベルトを設けた搬出コンベアは、上下動機構により上下動することが記載され、吸引回動ベルトは簀の下面の乾海苔を真空吸着することから(上記記載事項(1-7)の【0012】)、吸引回動ベルトは簀の下面に接したり離れたりするものといえる。上記記載事項(1-1)には、ばね材の自由端部を下方に押圧することにより、前記横棒の前記ストッパへの押し付け状態を解除する押圧手段が記載され、上記記載事項(1-1)には、前記横棒をチャックしたり、チャック状態を解除したりするチャック手段及び、前記チャック手段を水平方向へ移動させることにより、簀を折り返して、前記吸引回動ベルトに吸着された乾海苔を簀から剥ぎ取ることが記載されている。チャック手段を水平方向へ移動させることが記載されているから、チャック移動手段が記載されているに等しいといえる。

したがって、引用文献1には、「簀を保持したホルダーを循環搬送することにより、簀に抄き上げられた生海苔を乾燥させて乾海苔を製造する海苔製造装置であって、前記ホルダーは、一対の横杆と縦杆を枠型に組み立てた形状であり、前記簀の一端側は一方の横杆に保持されるとともに他端側には、前記横杆と平行な横棒が結合されており、前記横棒は前記ホルダーに固定されたばね材によって前記横杆に設けられたストッパに押し付けられて簀が展張された展張位置に固定される構成となっており、前記ホルダーに保持された簀上に生海苔を抄き上げる抄き部と、前記抄き部によって抄き上げられた簀上の生海苔を脱水する脱水部と、簀上の生海苔を乾燥させて乾海苔とする乾燥室と、前記ホルダーの簀に付着する前記乾海苔を簀から剥ぎ取る剥ぎ部を備え、さらに前記剥ぎ部は、前記簀の下面側に展着する前記乾海苔を吸引する吸引面が設けられたベルトを有し、乾海苔を吸引した状態の前記ベルトを回動させることにより乾海苔を搬出する吸引回動ベルトと、前記吸引回動ベルトを上昇又は下降させて前記吸引面を前記簀の下面に接離させる上下動機構と、前記ばね材の自由端部を下方に押圧することにより前記展張位置に位置する前記横棒のストッパへの押し付けを解除する押圧手段と、前記横棒の保持および保持解除を行うチャック手段と、前記横棒を保持した前記チャック手段を水平方向に移動させることにより、前記吸引面に吸引された乾海苔が前記簀から剥ぎ取られるように、前記ホルダーにおいて前記簀に折り返し動作を行わせるチャック移動手段とを備えた海苔製造装置」(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1との対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「簀」、「ホルダー」、「横杆」、「縦杆」、「横棒」、「ばね材」、「剥ぎ部」、「チャック手段」は、それぞれ、本願発明1の「海苔簀」、「ホルダ」、「横桿」、「縦桿」、「棒部材」、「バネ部材」、「剥離部」、「チャック部」に相当する。
また、引用発明1における「上下動機構」は、吸引回動ベルトを上昇又は下降させるものであることから、本願発明1の「ベルト昇降手段」に相当する。
そして、引用発明1の「チャック手段を水平方向に移動させること」は、本願発明1の「チャック部を所定の剥離動作軌跡で移動させること」に相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
「海苔簀を保持したホルダを循環搬送することにより、前記海苔簀に抄き上げられた生海苔を乾燥させて乾海苔を製造する海苔製造装置であって、
前記ホルダは、一対の横桿と縦桿を枠型に組立てた形状であり、前記海苔簀の一端側は一方の前記横桿に保持されるとともに他端側には前記横桿と平行な棒部材が結合されており、前記棒部材は前記ホルダに固定されたバネ部材によって前記横桿に設けられたストッパに押し当てられて海苔簀が展張された展張位置に固定される構成となっており、
前記ホルダに保持された海苔簀上に生海苔を抄き上げる抄き部と、
前記抄き部によって抄き上げられた海苔簀上の生海苔を脱水する脱水部と、
前記海苔簀上の生海苔を乾燥させて乾海苔とする乾燥室と、
前記ホルダの海苔簀に付着する前記乾海苔を海苔簀から剥ぎ取る剥離部とを備え、
さらに前記剥離部は、
前記海苔簀の下面側に付着する前記乾海苔を吸引する吸引面が設けられたベルトを有し、乾海苔を吸引した状態の前記ベルトを回動させることにより乾海苔を搬出する吸引回動ベルトと、
前記吸引回動ベルトを昇降させて前記吸引面を前記海苔簀の下面に接離させるベルト昇降手段と、
前記バネ部材の自由端部を下方に押圧することにより前記展張位置に位置する前記棒部材のストッパへの押し当てを解除する押圧手段と、
前記棒部材の保持および保持解除を行うチャック部と、
前記棒部材を保持した前記チャック部を所定の剥離動作軌跡で移動させることにより、前記吸引面に吸引された乾海苔が前記海苔簀から剥ぎ取られるように、前記ホルダにおいて前記海苔簀に折り返し動作を行わせるチャック移動手段とを備えた海苔製造装置。」

(相違点1)
本願発明1は、「無端チェンを搬送路に沿って所定ピッチで間歇走行させることにより前記ホルダを循環搬送するホルダ搬送手段」を備えているのに対し、引用発明1はそのような特定がない点。
(相違点2)
乾燥室において、本願発明1では、「前記ホルダ搬送手段から受け渡されたホルダを搬送しながら海苔簀上の生海苔を乾燥させて乾海苔とする」ものであるのに対し、引用発明1はそのような特定がない点。
(相違点3)
剥離部において、ホルダは、本願発明1では、「前記乾燥室から送り出されて前記ホルダ搬送手段に受け渡された」ものであるのに対し、引用発明1はそのような特定がない点。
(相違点4)
本願発明1は、「前記折り返し動作後に前記展張位置に戻った前記棒部材を検出するセンサとを備え、前記センサは、前記剥離部において乾海苔の剥離動作が行われるホルダ停止位置又は前記ホルダ停止位置よりも下流側のホルダ停止位置に位置する前記ホルダにおいて、前記展張位置に相当する位置の下方に配設され、前記折り返し動作後に前記棒部材が前記展張位置に正しく戻っているか否かを、前記センサによって検出する」ものであるのに対し、引用発明1はそのような特定がない点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑み、まず、相違点4について検討する。
(ア)相違点4について
一般に、連続製造ラインにおいて、製造にあたって移動する部材が所定の求める位置に存在することを検出するセンサを設けること自体は周知技術であるとしても、引用発明1において、棒部材が正しい位置に戻らないままホルダが下流側へ送られるという問題があることは、引用文献1の全記載を参酌しても認められないし、多数の構成部材からなる引用発明1の海苔製造装置において、とりわけ上記棒部材に着目して、これが所定の位置に戻ったことを検出するセンサを設けることを当業者に動機付ける記載は、引用文献1には見当たらない。
また、引用文献2?4は、無端チェンを搬送路に沿って所定ピッチで間歇走行させること、乾燥室において、ホルダ搬送手段から受け渡されたホルダを搬送しながら海苔を乾燥すること、及び剥離部に受け渡されるホルダが、乾燥室から送り出されてホルダ搬送手段に受け渡されたものであることを示すための文献であって、センサに関する記載は一切ないものであるし、引用文献7、8は、ホルダを搬送するチェンにおいて、横桿がふらつくのを防止するための起立部を設けることを示すための文献であって、センサに関する記載は一切ないものである。そして、電子的技術情報5及び6は、製造ラインの各工程をモニタリングして異常を検知することは通常行われることであることを示すだけであるから、これらの引用文献の記載を参酌しても、引用発明1において、展張位置に戻った棒部材を検出するセンサを備えて、棒部材が展張位置に正しく戻っているか否かをセンサによって検出することは当業者に動機付けられるものではなく、当業者といえども相違点4の構成を容易に想到することはできない。

そして、本願発明1は、相違点4に係る構成を採用することにより、剥離作業後に棒部材を正しい位置に戻して、誤動作による作業停止を防止することができるという効果を奏するものであって、この効果は、いずれの引用文献の記載からも当業者が予測できるものではない。

したがって、上記相違点1?3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1及び引用文献2?8に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2?4について
本願発明2は、本願発明1を引用して、「前記センサからの照射された検査光の反射光を前記センサが検出し、その検出信号を検出処理部によって処理することにより、前記展張位置における前記棒部材の存否を判定すること」をさらに限定した発明であり、本願発明3は、本願発明1又は2を引用して、「前記チャック移動手段は、前記展張位置に位置する前記棒部材に対して前記チャック部を昇降させるチャック昇降機構と、前記海苔簀に折り返し動作を行わせ、さらに折り返し動作後に前記棒部材を前記展張位置に戻すために、前記棒部材を保持した前記チャック部に水平方向の移動を含む動作を行わせるチャック水平移動機構とを含むこと」をさらに限定した発明であり、本願発明4は、「前記横桿をガイドすることにより、前記剥離部に位置するホルダの搬送方向の位置を固定するガイド機構を備えたこと」をさらに限定した発明である。
このように、本願発明2?4は本願発明1を引用した上で、さらに技術的に限定した発明であるから、本願発明1の「前記折り返し動作後に前記展張位置に戻った前記棒部材を検出するセンサとを備え、前記センサは、前記剥離部において乾海苔の剥離動作が行われるホルダ停止位置又は前記ホルダ停止位置よりも下流側のホルダ停止位置に位置する前記ホルダにおいて、前記展張位置に相当する位置の下方に配設され、前記折り返し動作後に前記棒部材が前記展張位置に正しく戻っているか否かを、前記センサによって検出する」との特定事項を備えており、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定について
1.理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1?4は「前記折り返し動作後に前記棒部材が前記展張位置に正しく戻っているか否かを、前記センサによって検出する」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?4、7?8及び電子的技術情報5、6に基いて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?4は、引用文献1?4、7?8及び電子的技術情報5、6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-21 
出願番号 特願2017-60377(P2017-60377)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 堂畑 厚志飯室 里美  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 中島 芳人
冨永 みどり
発明の名称 海苔製造装置  
代理人 高松 宏行  

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