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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B09B |
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管理番号 | 1356659 |
審判番号 | 不服2018-12907 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-09-28 |
確定日 | 2019-11-26 |
事件の表示 | 特願2014-257284「金属汚染物質の原位置での化学固定化処理」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月27日出願公開、特開2015-134343、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 本願は、平成26年12月19日(パリ条約による優先権主張 2013年(平成25年)12月30日 アメリカ合衆国(US))に出願された特許出願であって、平成30年1月17日付けで拒絶理由が通知され、同年4月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月21日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対して、同年9月28日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 原査定の理由の概要 原査定(平成30年5月21日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。 この出願の請求項1ないし18に係る発明は、以下の引用文献1に記載の発明並びに引用文献2及び3に記載の周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特表2003-503197号公報 2.特開2012-40544号公報 3.特開昭61-68191号公報 第3 本願発明の認定 本願の請求項1ないし18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明18」という。)は、平成30年4月23日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定される発明であり、そのうちの本願発明1は以下のとおりの発明である。 「原位置環境中のヒ素汚染物質を処理する方法であって、 キレート鉄水溶液を調製する工程と、 過酸化物、並びに、酸、塩、及び酸と塩からなる群から選ばれる安定化剤に水を加えて調製した安定化酸化剤源を前記原位置環境中に加えるとともに、前記安定化酸化剤源の存在下、前記キレート鉄水溶液を前記原位置環境中に加えて鉄-ヒ素オキシ水酸化物を共沈させる工程と、 前記原位置環境中でヒ素を酸化するとともに、前記原位置環境中で鉄を酸化する工程を有する、原位置環境中でヒ素汚染物質を処理する方法。」 なお、本願発明2ないし18は、何れも請求項1の記載を直接又は間接的に引用することで、それぞれの請求項で特定する事項で本願発明1をさらに限定するヒ素汚染物質を処理する方法の発明である。 第4 当審の判断 1 引用文献の記載 (1) 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線については当審において付与した。以下同じ。 ア 「【請求項7】 原位置環境で汚染物質を処理する方法であって、 Fe(II)塩、Fe(III)塩、Fe(II)キレ-ト、Fe(III)キレ-ト、及びそれらの組み合わせの少なくとも1つから選択される効果的な量の金属触媒を含有する水溶液を調製すること、 反応体のpHを約5?8にするのに十分な量のpH調節剤を、前記水溶液に随意に加えること、 前記汚染物質を処理するのに十分な量の酸化剤の供給源を、前記原位置環境に提供すること、並びに 前記汚染物質の処理に十分な量の酸化剤の生成を促進するために十分な量で、前記酸化剤源の存在下において、前記触媒水溶液を前記原位置環境に提供すること、 を含む、原位置環境で汚染物質を処理する方法。 【請求項8】 前記酸化剤源が過酸化物である、請求項7に記載の方法。 【請求項9】 前記pH調節剤が水及び塩基から選択される、請求項7に記載の方法。 ・・・ 【請求項12】 前記酸化剤源を安定化することを更に含む、請求項7に記載の方法。 【請求項13】 前記過酸化物源を、酸、塩及びそれらの混合物からなる群より選択される安定化剤で安定化することを含む、請求項12に記載の方法。 ・・・ 【請求項16】 前記原位置環境に、前記酸化剤と前記触媒水溶液とを連続的に提供することを含む、請求項7に記載の方法。 ・・・ 【請求項20】 前記原位置環境に前記酸化剤源を初めに提供し、その後で前記触媒水溶液を提供する、請求項16に記載の方法。」 イ 「【0011】 土壌及び/又は地下水からの汚染物質の除去の分野では、金属触媒及び酸化剤源を注入箇所から汚染物質が広がる範囲全体に移動させ、それによって地下の酸性化又は得られる土壌の鉱物化なしで、汚染物質の効果的な破壊を促進できる系を提供することが非常に有意である。酸化剤源が安定で汚染範囲(plume)全体に分散させることが可能であり、また金属触媒の触媒回転回数を適当で汚染物質の比較的効率的な破壊を促進する系を提供することが更に有利である。また、特定の箇所での汚染物質の効率的な転化のために最も適当な時間、濃度及び位置で反応体を注入する注入方法を提供することは更なる利益を与える。当該技術分野では、反応性種、例えばヒドロキシルラジカルを効率的に発生させる系を提供して、土壌及び/又は地下水中の汚染物質を酸化させる費用対効果が良好で効率的な方法を提供することは更に有利である。 【0012】 [発明の概略] 本発明は、原位置環境において汚染物質を処理する反応体及び方法に関する。ここでは、pHが約5?8で効果的な量の金属触媒を含有する水溶液に含まれる反応体及び酸化剤を原位置環境に提供して、単純で費用対効果が良好な効果的な様式で、環境の自然な特徴を有意に変化させること又は破壊することなしに、そこに存在している汚染物質を除去又は減少させる。 【0013】 本発明の1つの面では、少なくとも1種の汚染物質を酸化させることができる酸化剤の供給源、好ましくは安定化した酸化剤源と、pHが約5?8の又はpH調節剤によってpHを5?8に調節した金属触媒水溶液を含有する効果的な量の反応体とを、別個に又は一緒に原位置環境に提供して、原位置環境の少なくとも1種の汚染物質の濃度を少なくとも低下させることを含む、原位置環境において汚染物質を処理する方法を提供する。酸化剤源及び触媒反応体の使用は、酸化プロセスの時間的及び空間的制御を可能にし、それによって汚染物質が存在する領域において酸化剤を発生させることを可能にする。結果として、注入箇所での活性な/激しい反応が最少化され、酸化剤が比較的浪費されない。更にここでは、汚染領域(plume)全体でのヒドロキシルラジカルの発生及び他の反応性種の存在によって、他の新しい酸化処理では通常扱いにくい汚染物質を、無害な副生成物に転化させることができる。本発明の方法は、原位置環境の全ての領域、特に地下領域に適用可能である。」 ウ 「【0018】 [発明の詳細な説明] 本発明は一般に、汚染物質を無害な副生成物に転化させることによって、土壌及び/又は地下水から汚染物質を除去する方法及び系に関する。そのような汚染物質は一般に、原油貯蔵タンクの漏れ、又は液体炭化水素、滑剤、塩素化溶媒及び金属、シアン化物等の意図的な若しくは意図しない放出からもたらされる。ここで、液体炭化水素としては、限定するわけではないが、ガソリン、燃料油、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、(BTEX)ナフタレン、殺虫剤、除草剤、及び他の有機化合物を挙げることができ、塩素化溶媒としては、ポリ塩化ビフェニル(PCB)及びペンタ塩化フェノ-ル(PCP)を挙げることができる。ここで示された汚染物質は単なる例示である。また、二酸化炭素及び水のような無害な化合物に酸化させることができる他の汚染物質も、本発明の意図する範囲に含まれる。」 エ 「【0022】 本発明で使用される酸化剤源は、典型的に遊離ラジカル(例えばヒドロキシルラジカル)を発生させ、且つ過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化ナトリウム、及び過マンガン酸塩、例えばカリウム過マンガン酸等のような過酸化物を含む。過酸化カルシウムは、鉄(II)塩の存在下において酸性条件でヒドロキシルラジカルを発生させる。過酸化カルシウムは、非常にわずかに水溶性であり、一般に過酸化水素よりも高価である。しかしながら過酸化カルシウムは、炭化水素によって汚染された箇所での有効な酸化剤源として使用することができる。過酸化ナトリウムは、過酸化カルシウムと同様に振る舞いうことが見出されており、同様に使用することができる。過酸化水素は、本発明で使用するのに好ましい過酸化物である。」 オ 「【0025】 注入の前に、酸化剤源(例えば過酸化物)は好ましくは安定化する。安定化は、注入箇所のすぐ近くで元々存在する鉄又はカタラ-ゼによって、過酸化物がヒドロキシルラジカル又は酸素にすぐに転化することを防ぐ。安定化した後で、典型的に水中で約35wt%までの濃度にして、原位置環境に過酸化物を注入する。原位置環境の過酸化物の濃度は、過酸化物が土壌及び/又は地下水に拡がるにつれて有意に低下することが理解される。原位置環境への好ましい注入様式では,10%未満の濃度で安定化過酸化物を使用する。適当な安定化剤としては、酸及びその塩を挙げることができる。最も好ましい酸はリン酸であり、最も好ましい塩はリン酸一カリウムである。 【0026】 本発明で使用する触媒反応体は、周囲温度において水中で効果的な量の金属触媒を混合して溶解を促進し、それによって金属触媒水溶液のpHが約5?8になるようにして得る。必要であれば、pH調節剤によって得られた溶液を中性化して、pHを約5?8にする。適当な触媒としては、金属塩、酸水酸化鉄、鉄キレ-ト、酸水酸化マンガン、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。好ましい金属塩としては、鉄(II)及び鉄(III)塩、銅(II)塩、並びにマンガン(II)塩を挙げることができる。好ましい鉄塩としては、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、過塩素酸鉄(II)、過塩素酸鉄(III)、硝酸鉄(II)、及び硝酸鉄(III)からなる群より選択される鉄塩をあげることができる。 【0027】 好ましい酸水酸化鉄としては、針鉄鉱、褐鉄鉱及び磁鉄鉱を挙げることができる。鉄キレ-トとしては例えば、Fe(II/III)-EDTA、Fe(II/III)-NTA、Fe(II/III)-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HEIDA)、Fe(II/III)-粘液酸、Fe(II/III)-マロン酸、Fe(II/III)-ケトマロン酸、Fe(II/III)-DL-酒石酸、Fe(II/III)-クエン酸、Fe(II/III)-シュウ酸、Fe(II/III)-没食子酸、Fe(II/III)-ピコリン酸、Fe(II/III)-ジピコリン酸、Fe(II/III)-カテコール、Fe(II/III)-1,2-ジヒドロキシ安息香酸、Fe(II/III)-クエルセチン、Fe(II/III)-ピロカテコールバイオレット、Fe(II/III)-アリザリンレッド、Fe(II/III)-ロジゾニン酸、Fe(II/III)-テトラヒドロキシ-1,4-キノン、Fe(II/III)-アスコルビン酸、及びFe(II/III)-ヘキサケトシクロヘキサン(HKCH)を挙げることができる。最も好ましい触媒は、硫酸鉄又はFe(II/III)EDTAである。」 (2) 引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、以下の事項が記載されている。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ヒ素で汚染された土壌を収集する収集段階と、 酸性の、前記土壌に還元条件を提供する洗浄液に前記土壌を投入して、前記土壌からヒ素を除去して前記洗浄液に移動させる洗浄段階と、 前記洗浄段階後、前記土壌と洗浄液とを互いに分離する固液分離段階と、 前記固液分離段階で分離された洗浄液と土壌とを処理する後処理段階と、を備えることを特徴とするヒ素汚染土壌の復元方法。」 イ 「【0003】 韓国は、土壌汚染が人類と生態系に及ぶ悪影響の深刻性を認識して、土壌環境保全法を制定して施している。土壌環境保全法に16個の項目(Cd、Cu、As、Hg、Pb、Cr^(6+)、Zn、Ni、F、有機リン化合物、CN、BTEX、TPH、TCE、PCE)に対する基準値を定めて管理している。」 ウ 「【0059】 固液分離された洗浄液に対する後処理は、洗浄液から再びヒ素を除去することである。本発明では、固液分離された洗浄液に酸化剤を添加してヒ素を除去し、本実施形態では過酸化水素を酸化剤として使用する。 【0060】 すなわち、洗浄液に酸化剤を添加して酸化環境を組成すれば、2価鉄イオンFe^(2+)は沈殿されやすいFe^(3+)に酸化され、2価マンガンイオンMn^(2+)は沈殿されやすい4価マンガンイオンMn^(4+)に酸化されて、再び第1形態や第2形態のヒ素汚染物のように、ヒ素を共沈するか、またはヒ素を吸着した形態に沈殿される。反応式は下記の通りである。 【0061】 3Fe^(2+)+AsO_(4)^(3-)+4H_(2)O_(2)--->Fe_(3)O_(4)・AsO_(4)^(3-)(吸着あるいは共沈)+8H^(+)+2O_(2)」 (3) 引用文献3の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、以下の事項が記載されている。 ア 「【特許請求の範囲】 (1)ヒ素及び有機物を含む廃水に第一鉄塩及び過酸化水素を添加し、同時にアルカリ剤又は酸により廃水のpHを3?4に調整する酸化工程、アルカリ剤を添加してpHを6?8に調整する中和工程及び固形物を固液分離する固液分離工程からなることを特徴とするヒ素及び有機物を含む廃水の処理方法。」 イ 「この酸化工程においては、下記の反応が行われる: As(III)→As(V)・・・(1) 有機As化合物→無機As化合物・・・(2) 一般有機物→CO_(2)+H_(2)O・・・(3) 第一鉄塩の添加量は、Asに対して重量比で5倍以上、又は過酸化水素中の酸素に対する重量比で6倍以上であるのが好ましい。 酸化工程において、pH調整のためアルカリ剤として添加するカルシウム化合物は、次の中和工程においてAsの除去を促進する。 前記のように酸化処理を行った後、中和処理を行うが、中和剤として添加するアルカリは、生石灰又は消石灰のカルシウム化合物であるのが好ましい。 中和工程においては、次の反応が行われる: Fe^(2+)+(O)→Fe^(3+)・・・(4) Fe^(3+)+AsO_(4)^(3-)→FeAsO_(4)↓・・・(5) Fe^(3+)+3OH-→Fe(OH)_(3)↓・・・(6) 即ち、第一鉄が第二鉄に酸化され、その第二鉄はAs(V)と反応してAs化合物の沈澱を生成し、更に第二鉄は水酸化第二鉄の沈澱を生成し、この沈澱物にAs(V)が吸着されると考えられる。」(2頁左下欄10行?右下欄12行) 2 引用文献1に記載された発明 引用文献1の上記1(1)アの請求項7を引用する請求項16を引用する請求項20及び上記1(1)アの請求項7を引用する請求項8、12及び13の記載から、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認める。 「原位置環境で汚染物質を処理する方法であって、 Fe(II)塩、Fe(III)塩、Fe(II)キレ-ト、Fe(III)キレ-ト、及びそれらの組み合わせの少なくとも1つから選択される効果的な量の金属触媒を含有する水溶液を調製すること、 反応体のpHを約5?8にするのに十分な量のpH調節剤を、前記水溶液に随意に加えること、 酸化剤源が過酸化物であり、さらに、酸、塩及びそれらの混合物からなる群より選択される安定化剤で酸化剤源を安定化することを含み、 前記汚染物質を処理するのに十分な量の酸化剤の供給源を、前記原位置環境に初めに連続的に提供すること、並びに、 その後で前記汚染物質の処理に十分な量の酸化剤の生成を促進するために十分な量で、前記酸化剤源の存在下において、前記触媒水溶液を前記原位置環境に連続的に提供すること、 を含む、原位置環境で汚染物質を処理する方法。」(以下、「引用発明」という。) 3 本願発明1について (1)本願発明1と引用発明との対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「原位置環境で汚染物質を処理する方法」は、「ヒ素」は汚染物質であることから、本願発明1の「原位置環境中のヒ素汚染物質を処理する方法」と「原位置環境中の汚染物質を処理する方法」の限りにおいて一致する。 引用発明の「Fe(II)塩、Fe(III)塩、Fe(II)キレ-ト、Fe(III)キレ-ト、及びそれらの組み合わせの少なくとも1つから選択される効果的な量の金属触媒を含有する水溶液を調製すること」は、本願発明1の「キレート鉄水溶液を調製する工程」に相当する。 引用発明の「酸化剤源が過酸化物であり、さらに、酸、塩及びそれらの混合物からなる群より選択される安定化剤で酸化剤源を安定化」した酸化剤源は、上記1(1)オの記載から、本願発明1の「過酸化物、並びに、酸、塩、及び酸と塩からなる群から選ばれる安定化剤に水を加えて調製した安定化酸化剤源」に相当する。 引用発明においても安定化した酸化剤源を「原位置環境に初めに連続的に提供」し、「その後で」「触媒水溶液を前記原位置環境に連続的に提供する」から、引用発明も、本願発明1の「前記安定化酸化剤源の存在下、前記キレート鉄水溶液を前記原位置環境中に加えて」いる「工程」を有しているといえる。 引用発明の「原位置環境で汚染物質を処理する方法」は、上記1(1)イの記載から、本願発明1の「原位置環境中でヒ素を酸化するとともに、前記原位置環境中で鉄を酸化する工程を有する、原位置環境中でヒ素汚染物質を処理する方法」と「原位置環境中で汚染物質を酸化する、原位置環境中で汚染物質を処理する方法」の限りで一致する。 そうすると、本願発明1と引用発明とは、 「原位置環境中の汚染物質を処理する方法であって、 キレート鉄水溶液を調製する工程と、 過酸化物、並びに、酸、塩、及び酸と塩からなる群から選ばれる安定化剤に水を加えて調製した安定化酸化剤源を前記原位置環境中に加えるとともに、前記安定化酸化剤源の存在下、前記キレート鉄水溶液を前記原位置環境中に加える工程と、 前記原位置環境中で汚染物質を酸化する、原位置環境中で汚染物質を処理する方法。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1> 「原位置環境中の汚染物質を処理する方法」に関し、本願発明1は、汚染物質として「ヒ素」を特定するのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。 <相違点2> 「前記安定化酸化剤源の存在下、キレート鉄水溶液を前記原位置環境中に加える工程」に関し、本願発明1は、「鉄-ヒ素オキシ水酸化物を共沈させ」る工程を加えて特定するとともに、「前記原位置環境中でヒ素を酸化するとともに、前記原位置環境中で鉄を酸化する工程を有する」と特定するのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (2)相違点の判断 引用文献1には、汚染物質がヒ素であることについて記載ないし示唆はなく、汚染物質の一例として金属が例示されているのみであって、除去する汚染物質を「ヒ素」とする動機はない。 そうすると、相違点1は容易でない。 仮に、汚染物質に「ヒ素」を含みうるとして、相違点1が相違点でない場合には、引用発明の本願発明1における「前記安定化酸化剤源の存在下、キレート鉄水溶液を前記原位置環境中に加える工程」に相当する工程は、原位置環境中で当該汚染物質であるヒ素を酸化する工程を有するといえるが、引用発明の「鉄キレート」を含有する水溶液はあくまで触媒水溶液であるから、「鉄-ヒ素オキシ水酸化物を共沈させ」る工程ということはできず、引用発明の当該工程と、本願発明1の当該工程は、全く異なる工程といえる。 そして、引用文献2及び3において開示されている、ヒ素を含む洗浄液に酸化剤を添加して酸化環境を組成すれば、2価鉄イオンFe^(2+)は沈殿されやすいFe^(3+)に酸化されて、ヒ素を共沈するか、またはヒ素を吸着した形態に沈殿されることが周知技術であることを踏まえても、相違点2に係る工程を、全く別の作用機序の工程とする動機はなく、相違点2は想到容易でない。 したがって、本願発明1は、引用発明並びに引用文献2及び3に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 本願発明2ないし18について 本願発明2ないし18は、本願発明1を直接又は間接的に引用し、本願発明1を更に限定した発明であるから、上記3と同様に、引用発明並びに引用文献2及び3に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明1ないし18は、当業者が引用発明、すなわち、引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載の周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-11-12 |
出願番号 | 特願2014-257284(P2014-257284) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B09B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 青鹿 喜芳、三須 大樹、大島 彰公 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 植前 充司 |
発明の名称 | 金属汚染物質の原位置での化学固定化処理 |
代理人 | 特許業務法人磯野国際特許商標事務所 |