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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1357575
審判番号 不服2018-11851  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-04 
確定日 2019-12-27 
事件の表示 特願2015- 31194「物品排出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日出願公開,特開2015-120011,請求項の数(3)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年10月8日(以下,「原出願日」という。)に出願された特願2013-211476号の一部を,新たな特許出願として平成27年2月20日に出願され,平成28年10月14日に手続補正書が提出され,平成29年10月18日付け拒絶理由が通知され,同年12月22日に意見書及び手続補正書が提出され,平成30年5月24日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,それに対して,同年9月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され,その後,当審において,令和1年5月30日に拒絶理由が通知され,同年7月29日に意見書及び手続補正書が提出され,同年11月13日付けで拒絶理由が通知され,同月15日に意見書及び手続補正書(以下,当該手続補正書により補正を,「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 原査定の概要
請求項1ないし6,9及び10に係る発明は,以下の引用文献A及びBに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2002-153675号公報
B.特開2006-409号公報

第3 当審拒絶理由の概要
1 令和1年5月30日付け拒絶理由
(1)請求項1ないし9に係る発明は,明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでないため,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2)請求項6ないし9に係る発明は,明確でないため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(3)請求項9に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
(4)請求項1ないし5及び9に係る発明は,以下の引用文献1ないし4に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2002-153675号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2006-409号公報(拒絶査定時の引用文献B)
3.特開2006-122670号公報(当審において新たに引用した文献)
4.特開平7-178238号公報(当審において新たに引用した文献)

2 令和1年11月13日付け拒絶理由
(1)本願請求項1ないし4に係る発明は,明確でないため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)本願請求項4に係る発明は,明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでないため,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

3 上記1(3)の拒絶理由については,令和1年7月29日に提出された手続補正書により,請求項9が削除される補正がされたことで解消している。
また,上記1(4)の拒絶理由については,以下の第4ないし第6において検討する。
そして,上記1(1)及び同(2)並びに上記2の拒絶理由については,後の第7において述べる。

第4 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下,それぞれを「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は,本件補正後の特許請求の範囲に記載される請求項1ないし3により特定される,以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
抽選にかかるゲームを実行可能な物品排出装置であって,
物品に保持されたデータであって,該物品毎に付与された固有の識別情報を含む該データを読み取る読取部と,
前記読取部で読み取った前記データの前記識別情報を記憶する記憶部と,
前記読取部が読み取った前記データを用いて前記抽選を実行する実行部と,
前記実行部で実行された前記抽選の結果に基づいて前記物品を排出可能な物品排出部と,
を備え,
前記実行部は,
前記物品の前記識別情報を含む前記データを読み取る前記ゲームの第1の段階において,読み取った該データの該識別情報に前記記憶部に記憶されていないものが含まれていることを条件として,前記抽選が可能と判定し,
複数の前記物品の前記識別情報を含む前記データを読み取って前記抽選を実行する前記ゲームの第2の段階において,読み取った複数の該物品毎に保持された該データの組み合わせに応じて当選確率を変動させる,
物品排出装置。
【請求項2】
請求項1において,
前記物品排出部は,排出操作部と,該排出操作部をロックするロック部とを有し,
前記抽選の結果に基づいて前記ロック部による前記排出操作部のロックを解除する,物品排出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において,
前記物品を販売可能な物品販売装置をさらに備える,物品排出装置。」

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1) 令和1年5月30日付け拒絶理由で引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0006】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照しつゝ本発明の構成を具体的に説明する。図1は,本発明に係るゲームシステムの一実施例を示す外観斜視図,図2は,ゲームを行うために本発明で用いられる立体的物品の一実施例を示す外観斜視図である。図中,1はカプセルベンダー,2はゲーム機,3は,カプセルベンダー1で販売され,ゲーム機2でゲームを行うために用いられる立体的物品,4は,立体的物品3を入れたカプセルである。
【0007】ゲームを行おうとするプレイヤーは,先ずカプセルベンダー1で,カプセル4に入った立体的物品3を購入する。カプセルベンダー1は,それぞれに立体的物品3が入れられた多数のカプセル4を収納するカプセルストッカー11と,料金投入口12と,操作レバー13と,カプセル払出し口14等々を備え,プレイヤーが料金投入口12にコインを投入し,操作レバー13を押し下げると,カプセル払出し口14に任意の1個のカプセル4が無作為に払い出されるようになっている。図示したカプセルベンダー1は,操作レバー13を押し下げることによりカプセルが払い出される手動式のものであるが,電動式でコイン投入後にスイッチを押せばカプセルが払い出されるようなものとしてもよい。
【0008】このようにしてプレイヤーが購入したカプセル4内には,それを用いてゲームを行うことが可能な立体的物品3が1個入っており,プレイヤーはカプセルから取り出した立体的物品3を,カプセルベンダー1の横に設けられているゲーム機2のデータ読取り/書込み口21にセットすることによって,ゲームを開始できるようになっている。
【0009】立体的物品3は,例えば図2に示すように,ゲーム機2で行われるゲームに登場するキャラクターを模したフィギュア部31と,これを取り付ける台座部32とから成り,台座部32内には,ゲーム機2によりゲームを行うために必要なデータが記録されたメモリ33が封入されている。立体的物品3の形態に特別の制限はなく,カプセルに入れて販売でき,且つ,ゲーム機にセットしてメモリ33のデータの授受を行い得るものであれば,任意の形態でよい。カプセルから取り出したあと,組み立てる形式のものであってもよく,また,メモリ33を収容する台座部32を設けることなく,フィギュア部31内に直接メモリを封入するようにしてもよい。
【0010】メモリ33としては,不揮発性のメモリが用いられ,接触式又は非接触式のいずれでもよく,例えばICカード等に用いられているものなどを好適に利用できる。読取り専用の最も簡易なものとしては,バーコードを印刷したラベルのようなものも含まれる。なお,メモリ33は,読取り及び書込みが可能なものが推奨され,ゲーム開始時には,予め記録されたデータが読み出されると共に,それらのデータは,プレイ中及び/又はプレイ終了時に変更され,或いは,更に新たなデータが書き込まれる。
【0011】また,プレイ中,データはゲーム機内にストアされ,ゲーム途中でゲーム機から立体的物品3を取り外す不正行為に対しても整合を取ることができる。即ち,1個の立体的物品3でゲーム可能な時間又はゲーム回数等の許容範囲を定めると共に,各立体的物品のメモリ33に予めその物品に固有の識別コードを記録しておき,特定の1個の立体的物品では上記許容範囲を超えてゲームをすることはできないように構成することが望ましい。例えば,上記許容範囲に達した場合には,メモリ33にその旨を書き込んだり,ゲーム機内にその旨を記録しておき,次回同じ立体的物品3をセットして再度初期状態からゲームを行おうとしても,それを拒否するようにする。」

(2) 上記(1)の摘記事項から,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ゲーム機2で行われるゲームに登場するキャラクターを模したフィギュア部31と,これを取り付ける台座部32とから成り,台座部32内には,ゲーム機2によりゲームを行うために必要なデータが記録されたメモリ33が封入されている立体的物品3がセットされることで,セットされたメモリ33のデータの授受を行い得るデータ読取り/書込み口21を備え,
ゲーム開始時には,予めメモリ33に記録された前記データを読み出すと共に,それらのデータを,プレイ中及び/又はプレイ終了時に変更し,或いは,更に新たなデータを書き込み,
1個の立体的物品3でゲーム可能なゲーム回数の許容範囲を定めると共に,各立体的物品3のメモリ33に予めその物品に固有の識別コードを記録しておき,上記許容範囲に達した場合には,ゲーム機内にその旨を記録しておき,次回同じ立体的物品3をセットして再度初期状態からゲームを行おうとしても,それを拒否するゲーム機2。」

2 引用文献2について
(1) 令和1年5月30日付け拒絶理由で引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0011】
以下,本発明の実施の形態を図面を参照にして説明する。
先ず,本実施の形態のカプセル排出装置の概要について言えば,遊技メダル又は硬貨などのコインを投入すると,スロットゲームが開始され,スロットゲームでの獲得点数(クレジットの数)に応じて,フィギュアが入ったカプセルが排出される。
【0012】
図1は,本実施の形態のカプセル排出装置の斜視図である。図1に示すように,本実施の形態のカプセル排出装置1では,本体101の上方において,複数のカプセルCを収納することができるカプセル収納部103が設けられている。このカプセル収納部103は,側面がガラスやプラスチック製の透明なカバー104で形成されており,さらに,上面がカプセルCを補充するための蓋105で形成されている。さらに,このカプセル収納部103の内部は,ガラスやプラスチック製の透明な仕切板106により,2つの収納部に区別されている。一方,本体2の前面には,ハンドル102や,コイン投入口6,カプセル排出口9などが設けられている。
【0013】
尚,この実施の形態では,カプセル収納部103で区別された2つの収納部に収納されている複数のカプセルCのそれぞれには,9種類のフィギュアのうちいずれか一つが封入されている。従って,カプセル収納部103の2つの収納部を合わせると,カプセル収納部103の全体に収納されている複数のカプセルCのそれぞれには,18種類のフィギュアのうちいずれか一つが封入されている。
そして,この実施の形態では,カプセル排出装置1に付加されたスロットゲームを利用して,カプセル収納部103で区別された2つの収納部のうち,左側に収納されたカプセルC(内のフィギュア)は排出頻度を相対的に低くし,右側に収納されたカプセルC(内のフィギュア)は排出頻度を相対的に高くしているが,この点については,後述する。
【0014】
さらに,本実施の形態のカプセル排出装置1では,本体101の前面において,テーブル4が突設されている。
【0015】
そして,テーブル4を構成しているキャビネット2には,図2に示すように,略水平面としてのパネル表示部2aと,液晶表示部2b(後述の液晶表示装置31から構成される)とが形成されている。この点,キャビネット2の液晶表示部2bの上方には,複数種類の図柄(シンボル)によって構成された3個のビデオリール(仮想リール)がそれぞれ変動表示・停止表示される図柄表示領域21L,21C,21Rが設けられている。また,キャビネット2の液晶表示部2bの下方には,左側表示領域23Lと右側表示領域23Rとに分割されている。
尚,パネル表示部2aについては,後述する。
【0016】
図1に戻り,テーブル4の右側には,押ボタン操作よりクレジットから点数を賭けるための1-BETボタン5a,2-BETボタン5b,最大BETボタン5cが設けられている。また,これらのボタン5a,5b,5cの上方には,カプセル排出口9が設けられている。一方,テーブル4の左側には,遊技者がゲームで獲得した点数が貯留されたクレジットを押ボタン操作で清算するクレジット清算ボタン7が設けられている。
このクレジット清算ボタン7を押下すると,その時点のクレジットの点数に応じて選択された収納部(カプセル収納部103で区別された2つの収納部のいずれか)からカプセルCがカプセル排出口9に排出される。」

(2) 上記(1)の摘記事項から,引用文献2には,
「カプセル排出装置に遊技メダル又は硬貨などのコインを投入すると,スロットゲームが開始され,遊技者がゲームで獲得した点数が貯留されたクレジットを押ボタン操作で清算するクレジット清算ボタン7を押下すると,その時点のクレジットの点数に応じて選択された収納部からカプセルCがカプセル排出口9に排出される。」
という技術的事項が記載されているものと認められる。

3 引用文献3について
(1) 令和1年5月30日付け拒絶理由で引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0104】
以上で詳細に説明したゲームマシン1の動作中において,メインCPU32は,迷宮対戦ゲームのゲーム進行における所定条件(フィギア40をフィギア供給装置6Bに排出させる排出条件)が成立したタイミングで(排出条件が迷宮対戦ゲームの進行中に成立している),フィギア40の供給指示を示す指示情報を通信処理部22に入力する。通信処理部22に,この指示情報が入力されると,通信処理部22は,指示情報が入力されたタイミングで,フィギア供給装置6Bに対してフィギア40の排出指示を送信する。ここで,ゲーム進行における所定条件とは,例えば,特定の戦闘相手に勝利したり,所定個数の宝珠を入手したり,ゲームで得た得点やゲームの達成度等のゲーム進行度が一定以上になったりすること等である。なお,フィギア40の供給指示を示す指示情報には,上述したグループコードが格納部識別情報として含まれており,そのグループコードを含む排出指示が,ゲームマシン1からフィギア供給装置6Bに送られる。
【0105】
そして,メインCPU32は,迷宮対戦ゲームの進行中に特定排出条件(排出条件よりも成立し難く,レアフィギアを排出させるための条件)が成立したときにフィギアグループHのグループコードを含む排出指示をフィギア供給装置6Bに対して送信する。ここで,特定排出条件は,遊技者が最終目標となるキャラクタをごく短時間で倒した場合(例えば3分以内),遊技者の持点(ライフ)が,獲得が極めて困難とされる特定の点数(例えば1000点)に到達した場合,最終目標となるキャラクタを倒すまでに繰り返したゲームの実行回数が極めて少ない場合(例えば3回)に成立するようになっている。
【0106】
(フィギア供給装置の動作内容)
フィギア供給装置6Bがゲームマシン1から排出指示を受信すると,メインCPU121は,排出ユニット54から1個のカプセル57を排出させる。」

(2) 上記(1)の摘記事項から,引用文献3には,
「ゲームマシン1の動作中において,特定の戦闘相手に勝利したり,所定個数の宝珠を入手したり,ゲームで得た得点やゲームの達成度等のゲーム進行度が一定以上になったりすること等のゲーム進行における所定条件が成立したタイミングで,フィギア40の供給指示を示す指示情報が通信処理部22に入力され,通信処理部22に,この指示情報が入力されると,通信処理部22から,指示情報が入力されたタイミングで,フィギア供給装置6Bに対してフィギア40の排出指示が送信され,フィギア供給装置6Bがゲームマシン1から排出指示を受信すると,排出ユニット54から1個のカプセル57が排出される。」
という技術的事項が記載されているものと認められる。

4 引用文献4について
(1) 令和1年5月30日付け拒絶理由で引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0026】図6乃至図9により,具体的なゲームを例に動作を説明する。図6は,周知の所謂,黒ひげゲームと称されるものである。このゲームは,樽20内にキャラクター(ここでは,はりねずみ)22がおり,樽20の周囲に多数の差し込み穴21を有する。そして,利用者は,差し込み穴21を選択し,選択した差し込み穴21に短剣を挿入する。その穴21が所定の当たり穴なら,キャラクター22が樽20から飛び出すというゲームである。
【0027】図6に示すように,初期状態では,表示部2には,樽20とキャラクター22とが表示されている。次に,コインを挿入すると,図7に示すように,CPU40の制御により,樽20の近傍に,短剣23が表示される。利用者が,入力パネル3のジョイスティック30を操作して,画面上で短剣23を移動させて,差し込み穴21を選択する。
【0028】そして,図8に示すように,短剣23を挿入した差し込み穴21が,当たり穴であると,樽20からキャラクター22が飛び出す画面となる。この時,CPU40は賞品排出条件が成立したと判定しており,賞品排出指令を排出機構6,7に与える。
【0029】これにより,モータ60により回転円盤62を回転させて,プライズ収容部61の取り出し位置に位置決めすることにより,プライズ収容部61から所望のプライズ(はりねずみのぬいぐるみ)63を回転円盤62の穴を通って,放出する。この放出されたプライズ63は,プライズ飛び出し機構7の排出筒71内の発射台73上に送られる。そして,モータ70の回転により発射台73が上下動して,プライズ63を筒71内で,上方に発射する。
【0030】図9に示すように,これにより,はりねずみのぬいぐるみ63が,排出口5より上方に排出され,利用者は,これをキャッチする。
【0031】このように,賞品としてのプライズが,飛び出すため,これをキャッチするという楽しみを利用者に与えることができる。このため,画面上のゲームのみならず,動的なゲームの楽しみを与えることができる。


(2) 上記(1)の摘記事項から,引用文献4には,
「表示部に,多数の差し込み穴21を有する樽20と,樽20内にいるキャラクター22とを表示し,利用者は,差し込み穴21を選択し,選択した差し込み穴21に短剣を挿入し,その穴21が所定の当たり穴なら,キャラクター22が樽20から飛び出す画面となり,
この時,CPU40は賞品排出条件が成立したと判定しており,賞品排出指令を排出機構6,7に与え,
これにより,プライズ収容部61から所望のプライズ(はりねずみのぬいぐるみ)63が放出され,この放出されたプライズ63は筒71内で,上方に発射され,
これにより,はりねずみのぬいぐるみ63が,排出口5より上方に排出され,利用者は,これをキャッチする。」
という技術的事項が記載されている。

第6 当審における判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,以下のことがいえる。

ア 本願発明1の「物品排出装置」はゲームを実行可能なものであるから,本願発明1の「物品排出装置」と,引用発明の「ゲーム機」とは,「ゲームを実行可能な」「装置」である点で共通する。

イ 引用発明の「立体的物品3」は,メモリ33を封入し,当該メモリ33には,ゲーム機2によりゲームを行うために必要なデータと,その物品に固有の識別コードが記録されているので,「立体的物品3」が,前記データと前記識別コードを記録しているといえる。
そうすると,引用発明の「立体的物品3」は,本願発明1の「物品」に相当する。
また,本願発明1の「データ」と,引用発明の「データ」とは,「物品に保持され」る点で共通する。

ウ 引用発明の「識別コード」は,その物品に固有のものであり,1個の立体的物品3でゲーム可能なゲーム回数の許容範囲に達した場合には,ゲーム機内にその旨を記録しておき,次回同じ立体的物品3をセットして再度初期状態からゲームを行おうとしても,それを拒否するために用いられるものである。
そうすると,引用発明の「識別コード」は,ゲーム機2でゲームを実行するために必要なものであるといえるから,「識別コード」は,「データ」に含まれるものと認められる。
してみると,引用発明の「識別コード」は,本願発明1の「該物品毎に付与された固有の識別情報」に相当し,本願発明1の「データ」と,引用発明「データ」とは,「該物品毎に付与された固有の識別情報を含む」点でも共通する。

エ 引用発明の「データ読取り/書込み口21」は,立体的物品3がセットされることで,セットされたメモリ33のデータの授受を行い得るものであるから,本願発明1の「読取部」に相当する。

オ 引用発明においては,1個の立体的物品3でゲーム可能なゲーム回数の許容範囲に達した場合には,ゲーム機内にその旨を記録しておき,次回同じ立体的物品3をセットして再度初期状態からゲームを行おうとしても,それを拒否することから,「識別コード」が,データ読取り/書込み口21で読み取られて,ゲーム機2に記憶されているものと認められる。
そうすると,本願発明1と引用発明とは,「前記読取部で読み取った前記データの前記識別情報を記憶する記憶部」を備える点で共通する。

カ 引用発明においては,ゲーム開始時には,予め記録されたデータが読み出されると共に,それらのデータは,プレイ中及び/又はプレイ終了時に変更され,或いは,更に新たなデータが書き込まれることから,本願発明1の「抽選」と引用発明の「ゲーム」とは,「前記読取部で読み取った前記データを用いて」行われる点で共通し,引用発明は,ゲームを実行するものであるから,本願発明1の「実行部」に相当する機能を果たす部材を備えるものと認められる。

キ 引用発明においては,1個の立体的物品3でゲーム可能なゲーム回数の許容範囲に達した場合には,ゲーム機内にその旨を記録しておき,次回同じ立体的物品3をセットして再度初期状態からゲームを行おうとしても,それを拒否するが,このような判定は,ゲームの最初に立体的物品を読み取らせた段階で行っているものと解され,また,ゲーム回数の許容範囲に達していない立体的物品3であれば,ゲームが可能と判定しているものと認められる。
そして,このような判定も,ゲームの実行における一部と解されるので,当該判定は,上記カで検討した「実行部」で行っているものと認められる。
また,本願発明において,「読み取った該データの該識別情報に前記記憶部に記憶されていないものが含まれていること」も,引用発明において,1個の立体的物品3が,ゲーム回数の許容範囲に達していないということも,「識別情報」が所定の条件を満たしているものといえる。
そうすると,本願発明1と引用発明とは,「前記実行部」が,「前記物品の前記識別情報を含む前記データを読み取る前記ゲームの第1の段階において,読み取った該データの識別情報」が所定の条件を満たすことを「条件として,」ゲームが「可能と判定」する点で共通する。

ク 上記アないしキから,本願発明1と引用発明とは,以下の点で一致する。

[一致点]
「ゲームを実行可能な装置であって,
物品に保持されたデータであって,該物品毎に付与された固有の識別情報を含む該データを読み取る読取部と,
前記読取部で読み取った前記データの前記識別情報を記憶する記憶部と,
前記読取部が読み取った前記データを用いて前記ゲームを実行する実行部と,
を備え,
前記実行部は,
前記物品の前記識別情報を含む前記データを読み取る前記ゲームの第1の段階において,読み取った該データの該識別情報が所定の条件を満たすことを条件として,前記ゲームが可能と判定する,
装置。」

ケ そして,両者の発明は,以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1の「ゲーム」は,「抽選にかかる」ものであるのに対して,引用発明の「ゲーム」は,どのようなゲームであるのか特定されていない点。

[相違点2]
本願発明は,「物品排出装置」であって,「前記実行部で実行された前記抽選の結果に基づいて前記物品を排出可能な物品排出部」を備えるのに対して,引用発明は,ゲームの結果に基づいて物品を排出するものではない点。

[相違点3]
本願発明においては,「複数の前記物品の前記識別情報を含む前記データを読み取って前記抽選を実行する前記ゲームの第2の段階において,読み取った複数の該物品毎に保持された該データの組み合わせに応じて当選確率を変動させる」のに対して,引用発明においては,そのような特定がない点。

(2) 相違点に対する判断
事案に鑑みて,相違点3について判断する。
引用文献2ないし4には,それぞれ,上記第5の2(2),同3(2)及び同4(2)に記載したとおりの技術的事項が記載されているが,いずれの文献にも,「複数の前記物品の前記識別情報を含む前記データを読み取って前記抽選を実行する前記ゲームの第2の段階において,読み取った複数の該物品毎に保持された該データの組み合わせに応じて当選確率を変動させる」ことは記載されていない。
また,「複数の前記物品の前記識別情報を含む前記データを読み取って前記抽選を実行する前記ゲームの第2の段階において,読み取った複数の該物品毎に保持された該データの組み合わせに応じて当選確率を変動させる」ことが,本願の原出願日において周知技術であったことを示す証拠もない
そして,「複数の前記物品の前記識別情報を含む前記データを読み取って前記抽選を実行する前記ゲームの第2の段階において,読み取った複数の該物品毎に保持された該データの組み合わせに応じて当選確率を変動させる」ことで,当選確率の決定に用いることのできる物品2の組み合わせを検討する楽しみを遊戯者に与えることができるという,顕著な効果が奏されるから,「複数の前記物品の前記識別情報を含む前記データを読み取って前記抽選を実行する前記ゲームの第2の段階において,読み取った複数の該物品毎に保持された該データの組み合わせに応じて当選確率を変動させる」ことが,当業者が適宜なし得る設計変更であるということはできない。

(3) 小括
以上のとおりであるから,相違点1及び2について検討するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は,本願発明1を直接又は間接に引用し,本願発明1をさらに限定するものである。
したがって,本願発明2及び3は,本願発明1と同様の理由により,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

第7 当審拒絶理由について
1 令和1年5月30日付け拒絶理由
(1) 当審においては,平成30年9月4日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲に対して,以下の拒絶理由を通知した。

ア 特許法第36条第6項第1号について
(ア) 請求項1の記載において,「データ」と「保持体」との関係が特定されていないので,当該記載には,いくつかの保持体でデータが共通である態様も含まれるものと解され,このようないくつかの保持体で共通のデータを用いて,データが記憶部に記憶されている物品排出装置においてデータを用いたゲームの実行を不可能とする態様は,明細書の発明の詳細な説明に記載されていない点。

(イ) 請求項1の記載において,「複数の物品排出装置」とあるが,これら複数の物品排出装置は,単に複数存在することが特定されているだけあって,複数の物品排出装置間に,何ら有機的なつながりが特定されておらず,1つの保持体を用いて,複数の物品排出装置のうちの第1の物品排出装置でゲームを実行させた後に,同一の保持体を用いて,複数の物品排出装置のうちの第2の物品排出装置でゲームを実行できるような態様も含まれるものと解されるが,このような態様は,明細書の発明の詳細な説明に記載されていない点。

(ウ) 請求項及び発明の詳細な説明に記載された「物品」なる用語が対象とするものが不統一であり,その結果,本願の物品排出装置が,物品排出部から排出された物品は,ゲームの実行に用いるものに限られるのか,対応関係が不明瞭となる点。

(エ) 請求項6,8の記載において,いかなる期間において読み取った保持体のデータの数に応じて,抽選回数を変動させるのか特定されていないので,本願発明6,8は,物品排出装置の設置時点から現在までの期間に読み取った保持体のデータの数によって,抽選回数を変動させる態様も含みうる記載となっているが,このような態様は,明細書の発明の詳細な説明に記載されていない点。

(オ) 請求項7,8の記載において,いかなる期間において読み取った保持体のデータの組み合わせに応じて,抽選確率を変動させるのか特定されていないので,本願発明7,8は,例えば,物品排出装置の設置時点から現在までの期間に読み取った保持体のデータの組み合わせによって,抽選確率を変動させる態様も含みうる記載となっているが,このような態様は,明細書の発明の詳細な説明に記載されていない点。

(カ) 請求項1の記載と,請求項7,8の記載からは,抽選確率を変動させるために用いられた保持体のデータも,記憶部に記憶され,ゲームの実行が可能か不可能かの判断に用いられるものと解されるが,このようなことは明細書の発明の詳細な説明に記載されていない点。

(キ) 請求項6,8には,「前記読取部で読み取った前記保持体のデータの数に応じて抽選回数が変動」する旨の記載があり,当該記載からは,「保持体のデータの数」が複数となり得ることが想定されていると解され,「保持体のデータの数」が複数となる場合には,保持体自体が複数ある場合と,一つの保持体が複数のデータを保持する場合とが考えられるが,抽選回数の決定に際して,1つの物品が保持する第1データ部と第2データ部を用いることは,明細書の発明の詳細な説明に記載されていない点。

(ク) 請求項7,8には,「前記読取部で読み取った前記保持体のデータの組み合わせに応じて抽選確率が変動」する旨の記載があり,当該記載からは,「保持体のデータ」は複数存在することが前提であると解されるが,抽選確率の決定に際して,1つの物品が保持する第1データ部と第2データ部を用いることは,明細書の発明の詳細な説明に記載されていない点。

(ケ) 請求項7には,「前記読取部で読み取った前記保持体のデータの組み合わせに応じて抽選確率が変動する」という記載があり,当該記載から,「読取部で読み取った」「保持体のデータ」は,複数存在することが前提であると解されるが,読取部で読み取った保持体が一つであれば,保持体毎に固有の識別情報も一つしかなく,抽選確率を決定する「保持体のデータの組み合わせ」を想定することができない点。

イ 特許法第36条第6項第2号について
(ア) 請求項8には,「前記抽選回数の決定に用いられる前記保持体のデータと,前記抽選確率の決定に用いられる前記保持体のデータとは,互いに独立である」という記載が,多義的に解釈でき,明確でない点。

(イ) 請求項6には,「前記読み取り部」なる記載があるが,当該記載以前に,「読み取り部」という記載はなく,「前記」の受けるべき用語が明確でない点。

(ウ) 請求項7及び8の「抽選確率」なる用語の意味が明確でない点。

(エ) 請求項9は,「請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の複数の物品排出装置に用いられる」という記載があるが,当該記載によって,「保持体」がどのように特定されるのか,明確でない点。

(2) これらの拒絶理由に対して,令和1年7月29日にされた手続補正により特許請求の範囲が補正され,
ア 請求項1の記載において,抽選の実行に用いられる「データ」について,「該物品毎に付与された固有の識別情報を含む」ことが特定されたことで,上記(1)ア(ア),同(キ)及び同(ク)の拒絶理由が解消され,
イ 請求項1ないし4の記載において,「複数の物品排出装置」が,「物品排出装置」と補正されたことで,上記(1)ア(イ)の拒絶理由が解消され,
ウ 請求項1及び3の記載において,「保持体」が「物品」に統一されたことで,上記(1)ア(ウ)の拒絶理由が解消され,
エ 請求項1の記載において,「前記抽選は,前記実行部で実行する1回の抽選において前記読取部で読み取った複数の前記物品毎に保持された前記データの組み合わせに応じて当選確率が変動する」と補正されたことで,上記(1)ア(オ),同(ケ)及び上記(1)イ(ウ)の拒絶理由が解消され,
オ 請求項4の記載において,「前記読み取り部」が,「前記読取部」と補正されたことで,上記(1)イ(イ)の拒絶理由が解消され,
カ 請求項4の記載において,「前記抽選は,前記実行部で実行する1回の抽選において前記読取部で読み取った複数の前記物品毎に保持された前記データの数に応じて抽選回数が変動する」と補正されたことで,上記(1)ア(エ)の拒絶理由が解消され,
キ 請求項8が削除されたことで,上記(1)イ(ア)の拒絶理由が解消され,
ク 請求項9が削除されたことで,上記(1)イ(エ)の拒絶理由が解消された。

2 令和1年11月13日付け拒絶理由
(1) 当審においては,令和1年7月29日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲に対して,以下の拒絶理由を通知した。

ア 特許法第36条第6項第2号について
(ア) 請求項1の記載において,2つの「実行部」の関係が明確でない点。

(イ) 請求項1の記載において,
「前記読取部が読み取った前記識別情報が前記記憶部に記憶されていないことを条件として,前記読取部で読み取った前記物品のデータを用いた抽選を実行し」
という記載における,「前記読取部が読み取った前記物品のデータ」と,
「前記抽選は,前記実行部で実行する1回の抽選において前記読取部で読み取った複数の前記物品毎に保持された前記データの組み合わせに応じて当選確率が変動する」
という記載における,「前記読取部で読み取った複数の前記物品毎に保持された前記データ」との関係が明確でない点。

イ 特許法第36条第6項第1号について
請求項4の
「前記抽選は,前記実行部で実行する1回の抽選において前記読取部で読み取った複数の前記物品毎に保持された前記データの数に応じて抽選回数が変動する」
という記載は,データを読み取って,抽選を不可と判定されたデータの数によって抽選回数が変動する態様も含み得るものであり,このような態様は,同一の物品排出装置において,一つの物品で複数回の抽選を防止するという本願の課題(段落【0043】)の解決につながらないので,発明の詳細な説明に記載したものでない点。

(2) これらの拒絶理由に対して,本件補正がなされ,
ア 請求項1の記載において,
「物品に保持されたデータであって,該物品毎に付与された固有の識別情報を含む該データを読み取る読取部と,
・・・
前記読取部が読み取った前記データを用いて前記抽選を実行する実行部と,」
と補正されたことで,上記(1)ア(ア)の拒絶理由が解消され,
イ 請求項1の記載において,
「前記物品の前記識別情報を含む前記データを読み取る前記ゲームの第1の段階において,
読み取った該データの該識別情報に前記記憶部に記憶されていないものが含まれていることを条件として,前記抽選が可能と判定し,
複数の前記物品の前記識別情報を含む前記データを読み取って前記抽選を実行する前記ゲームの第2の段階において,読み取った複数の該物品毎に保持された該データの組み合わせに応じて当選確率を変動させる」
と補正されたことで,上記1(1)ア(カ)及び上記(1)ア(イ)の拒絶理由が解消され,
ウ 請求項4が削除されたことで,上記(1)イの拒絶理由が解消され,
全ての拒絶理由が解消された。

第8 むすび
以上のとおり,本願発明1ないし3は,当業者が引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願は拒絶することはできない。 また,当審において通知した拒絶の理由によっても,本願は拒絶することはできない。
そして,ほかに本願を拒絶すべき理由は発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-12-17 
出願番号 特願2015-31194(P2015-31194)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A63F)
P 1 8・ 113- WY (A63F)
P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宇佐田 健二  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 藤本 義仁
塚本 丈二
発明の名称 物品排出装置  

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