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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1357709
異議申立番号 異議2019-700206  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-15 
確定日 2019-12-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第6391327号発明「サポニンを含有するビールテイスト飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6391327号の請求項1ないし30に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6391327号の請求項1?30に係る特許についての出願は、2012年8月27日(優先権主張2011年9月2日(JP)日本国)を国際出願日として特許出願した特願2013-531296号の一部を平成26年7月3日に新たな特許出願としたものであって、平成30年8月31日に特許権の設定登録がされ、平成30年9月19日にその特許公報が発行され、平成31年3月13日に、その請求項1?30に係る発明の特許に対し、浜俊彦(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年 7月22日付け 取消理由通知
同年 9月24日 意見書(特許権者)

第2 本件発明
特許第6391327号の請求項1?30に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明30」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1?30に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
キラヤサポニン及びカラメル色素を含み、キラヤサポニンの含有量が1mg/l以上、30mg/l以下であり、カラメル色素の含有量が10mg/l以上、2000mg/l以下である、ビールテイスト飲料。
【請求項2】
キラヤサポニンの含有量が1mg/l以上、20mg/l以下である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
キラヤサポニンの含有量が2mg/l以上、20mg/l以下である、請求項2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
カラメル色素の含有量が100mg/l以上、2000mg/l以下である、請求項1?3のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
カラメル色素の含有量が100mg/l以上、1000mg/l以下である、請求項1?4のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項6】
カラメル色素を、飲料の色度(EBC)を1以上、37以下上昇させる量で含有する、請求項1?5のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項7】
カラメル色素を、飲料の色度(EBC)を2以上、37以下上昇させる量で含有する、請求項1?6のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項8】
カロリーが1kcal/100ml以上、8kcal/100ml以下である、請求項1?7のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項9】
糖質量が0.2g/100ml以上、2g/100ml以下である、請求項1?8のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項10】
エキス分の総量が、0.2重量%以上、2.1重量%以下である、請求項1?9のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項11】
ビールテイスト飲料が、ノンアルコールビールテイスト飲料である、請求項1?10のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項12】
ノンアルコールビールテイスト飲料が、非発酵のビールテイスト飲料である、請求項11に記載のビールテイスト飲料。
【請求項13】
麦芽使用比率が50%以下である、請求項1?12のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項14】
原料に麦芽を用いないことを特徴とする、請求項1?13のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項15】
麦芽を含めた麦由来の原料を用いないことを特徴とする、請求項1?14のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項16】
カラメル色素を含有するビールテイスト飲料における泡の白色化方法であって、当該飲料中のキラヤサポニンの含有量が1mg/l以上、30mg/l以下となるよう、当該飲料にキラヤサポニンを含有させることを特徴とし、当該飲料中のカラメル色素の含有量が10mg/l以上、2000mg/l以下である、前記方法。
【請求項17】
当該飲料中のキラヤサポニンの含有量が1mg/l以上、20mg/l以下となるよう、当該飲料にキラヤサポニンを含有させることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
当該飲料中のキラヤサポニンの含有量が2mg/l以上、20mg/l以下となるよう、当該飲料にキラヤサポニンを含有させることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
当該飲料中のカラメル色素の含有量が100mg/l以上、2000mg/l以下である、請求項16?18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
当該飲料中のカラメル色素の含有量が100mg/l以上、1000mg/l以下である、請求項16?19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
当該飲料が、カラメル色素を、飲料の色度(EBC)を1以上、37以下上昇させる量で含有する、請求項16?20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
当該飲料が、カラメル色素を、飲料の色度(EBC)を2以上、37以下上昇させる量で含有する、請求項16?21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
当該飲料のカロリーが1kcal/100ml以上、8kcal/100ml以下である、請求項16?22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
当該飲料の糖質量が0.2g/100ml以上、2g/100ml以下である、請求項16?23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
当該飲料のエキス分の総量が、0.2重量%以上、2.1重量%以下である、請求項16?24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
ビールテイスト飲料が、ノンアルコールビールテイスト飲料である、請求項16?25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
ノンアルコールビールテイスト飲料が、非発酵のビールテイスト飲料である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
当該飲料の麦芽使用比率が50%以下である、請求項16?27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
当該飲料の原料に麦芽を用いないことを特徴とする、請求項16?28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
当該飲料の原料として、麦芽を含めた麦由来の原料を用いないことを特徴とする、請求項16?29のいずれか1項に記載の方法。」

第3 取消理由通知に記載した取消理由について

I 取消理由の概要
本件発明1?4、6?19、21?30に対して、令和1年7月22日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

理由1:特許請求の範囲の記載が、下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものでないから、請求項1?4、6?19、21?30に係る発明は、同法第36条第6項の規定に違反してなされたものである(以下、「取消理由1」という。)。

発明の詳細な説明の段落【0049】?【0072】に記載された実施例1?7の結果を示す【表1】?【表6】(【0055】、【0061】、【0064】、【0066】、【0068】、【0072】)の「泡の色」の欄において、「白」以外の記載については、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料における泡を白色化したものとして評価できるものか、発明の詳細な説明の記載によっては当業者には不明であり、出願時の技術常識に照らしても当業者には不明である。
したがって、本件特許発明1?4、6?19、21?30は、その範囲全体にわたって前記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものではない。

理由2:この出願は、発明の詳細な説明が、下記に示すとおり、当業者が請求項1?4、6?19、21?30に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない(以下、「取消理由2」という。)。

本件特許発明1?4、6?19、21?30において、カラメル色素の添加量を1000mg/Lを超えて2000mg/Lで実施する場合、どのように実施すれば泡の色が「白」となるのか不明であり、該実施の方法が自明であるとも認められないので、本件特許発明1?4、6?19、21?30の実施は、当業者に通常期待する程度を超える過度の試行錯誤を強いるものであり、当業者がその実施をすることができるものとはいえない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明1?4、6?19、21?30の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

II 当審の判断

1 取消理由1について

(1)特許法第36条第6項第1号の解釈について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、判断する。

(2)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、請求項の内容の実質的な繰り返し記載の他、以下の記載がある。

ア 背景技術に関する記載
「【背景技術】
【0002】
カラメル色素等の色素は、食品においてよく用いられる。ビールテイスト飲料においては麦芽の使用比率を低くすることがあり、そのため、麦芽を使用した場合に生じる独特の色が十分に得られない場合がある。このために、ビールテイスト飲料に色素を添加することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明者は、カラメル色素等の色素を添加したビールテイスト飲料においては、色素が当該飲料の泡に独特の色(カラメル色素であれば黄色?黄土色)を付与してしまうことを見出した。泡はビールテイスト飲料における重要な要素であるが、通常のビールは白い泡を生じるため、このような特性は、外観上必ずしも好ましくない。」

イ サポニン、色素及びビールテイスト飲料に関する記載
「【0007】
(サポニン)
サポニンとは、植物に広く分布する、ステロイドやトリテルペンに糖が結合した配糖体であって、石鹸のように著しく泡立つコロイド水溶液を作る化合物の総称である。例えば、起源に基づいて分類すると、キラヤサポニン、知母サポニン、ダイズサポニン、ニンジンサポニン、キキヨウサポニン、セネガサポニン等が挙げられる。本発明においては、いずれのサポニンを単独で、又は組み合わせて用いてもよい。好ましくは、キラヤサポニンを単独で、又は他のサポニンと組み合わせて用いる。キラヤサポニンは、商品名「キラヤニンC-100」(丸善製薬株式会社)等として商業的に利用可能である。尚、本発明において用いられるサポニンには、サポニンが部分的に加水分解された部分加水分解サポニンも含まれる。
【0008】
本発明のビールテイスト飲料中のサポニンの含有量は、色素由来の泡の色を抑制して白色化できる限り限定されないが、好ましくは、1mg/l以上、好ましくは、2mg/l以上、更に好ましくは4mg/l以上が望ましい。また、上限については、白色化できる量よりも多ければ、特に限定されないが、コストや香味への影響の観点から、1000mg/l以下、より好ましくは50mg/l以下、最も好ましくは、20mg/l以下である。或いは、8mg/l以下、又は7mg/l以下であってもよい。なお、ここで示した上限や下限を満たす数値範囲は全て採用し得る。したがって、例えば、1mg/l以上1000mg/l以下とすることができ、また1mg/l以上50mg/l以下、あるいは、1mg/l以上20mg/L以下、などの範囲とすることができる。或いは、1mg/l以上8mg/l以下、又は2mg/l以上7mg/l以下の範囲であってもよい。
【0009】
サポニンの含有量を測定する方法は特に限定されないが、例えば、ガスクロマトグラフィー、HPLCを用いて測定することができる。例えば、キラヤサポニンの定量は、「第8版 食品添加物公定書(2007)」の第305?307頁に記載の方法に従って行うことができる。
【0010】
(色素)
本発明においては、食品に添加することが認められているいずれの色素を用いてもよい。中でも、飲料に添加することから、水溶性の色素や親水性の高い色素を好適に用いることができる。また、ビール様の色調を得るために奏功する色素を好適に用いることが出来る。なかでも、それらの条件がそろったカラメル色素を好適に用いることができる。
【0011】
本発明においては、カラメル色素として知られているいずれのものも用いることができる。例えば、カラメル色素は、製法によりクラスI、II、III、IVに分類されるが、そのいずれの物を用いてもよい。
【0012】
以下に各クラスのカラメルについて、食品添加物公定書(1999年)における定義を示す。カラメルI:本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物を、熱処理して得られたもの、又は酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、亜硫酸化合物およびアンモニウム化合物を使用していないものである。カラメルII:本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物に、亜硫酸化合物を加えて、又はこれに酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、アンモニウム化合物を使用していないものである。カラメルIII:本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物に、アンモニウム化合物を加えて、又はこれに酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、亜硫酸化合物を使用していないものである。カラメルIV:本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物に、亜硫酸化合物およびアンモニウム化合物を加えて、又はこれに酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたものである。
【0013】
本発明において、カラメル色素のタイプはいずれでも良いが、ビール様の色合いの付与の観点や、コスト、入手の容易性および効果の顕著さの観点から、好ましくはクラスI、クラスII、またはクラスIVのカラメル色素を用いることができ、更に好ましくは、クラスIまたはクラスIVのカラメル色素を用いることができ、最も好ましくはクラスIのカラメル色素を用いることができる。また、カラメルの色力については各種の色力のものを用いることができる。
【0014】
本発明においては、ビールテイスト飲料中のカラメル色素等の色素の含有量は特に限定されないが、下限については、好ましくは、10mg/l以上、より好ましくは100mg/l以上、更により好ましくは200mg/l以上、より好ましくは300mg/l以上である。上限値については、20000mg/l以下が好ましく、より好ましくは、2000mg/l以下、更により好ましくは1000mg/l以下である。なお、ここで示した上限や下限を有する数値範囲は全て採用し得る。したがって、例えば、10mg/l以上20000mg/l以下とすることができ、また、100mg/l以上2000mg/l以下、100mg/l以上1000mg/l以下、200mg/l以上1000mg/L以下、又は300mg/l以上1000mg/L以下の範囲とすることができる。
【0015】
また、本発明においては、ビールテイスト飲料中のカラメル色素等の色素の使用量は特に限定されないが、本発明のビールテイスト飲料は、色素を、飲料の色度(EBC)を一定程度上昇させる量で含有することができる。その際の色度(EBC)の上昇幅の下限に関しては、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、上限に関しては、好ましくは400以下、より好ましくは、40以下、さらにより好ましくは37以下、より好ましくは18以下である。ここで示した上限や下限を有する数値範囲は全て採用し得る。したがって、例えば、その上昇幅は、好ましくは1以上400以下、より好ましくは、1以上40以下、更により好ましくは2以上37以下、より好ましくは2以上18以下の範囲に調整することができる。
【0016】
なお、色度の測定は、例えば、European Brewery Convention(略称:EBC)で定められた方法で行うことができる。
【0017】
カラメル色素等の色素の使用の有無や含有量を測定する方法は特に限定されないが、例えば、ガスクロマトグラフィー、HPLCを用いて測定することができる。各種公定書に記載されている定量法、定性法、確認試験法または純度試験法などの方法を適宜応用して用いてもよく、また、文献公知の方法を改良して用いてもよい。また、製品や製品パンフレットなどの表示・記載や、製造指図書、製造記録、許認可に掛かる書類などから判断することもできる。
【0018】
(ビールテイスト飲料)
本明細書における「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ炭酸飲料をいう。つまり、本明細書のビールテイスト飲料は、特に断わりがない場合、酵母による発酵工程の有無に拘わらず、ビール風味の炭酸飲料を全て包含する。本発明のビールテイスト飲料は、アルコールを含むもの(以下、「アルコールビールテイスト飲料」又は「アルコール飲料」とも記載する)と、アルコールを実質的に含まないもの(以下、「ノンアルコールビールテイスト飲料」又は「ノンアルコール飲料」とも記載する)とを包含する。本発明のノンアルコールビールテイスト飲料には、例えば、ビールテイストの清涼飲料などが含まれる。
【0019】
本発明のビールテイスト飲料のアルコール度数は特に限定されないが、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、更に好ましくは、3%以上、7%以下である。ビールテイスト飲料が低アルコール又はノンアルコール飲料である場合には、アルコール度数は、典型的には1.0%以下、0.5%以下、又は0.005%以下であり、アルコールを実質的に含まないこともある。ここで、本発明の飲料がアルコールを実質的に含まない場合(ノンアルコール飲料)は、検出できない程度の極く微量のアルコールを含有する飲料を除くものではない。アルコール度数が四捨五入により0.0%となる飲料、中でも、アルコール度数が四捨五入により0.00%となる飲料は、本発明のノンアルコール飲料に包含される。
【0020】
本発明のビールテイスト飲料のアルコール度数は、飲料中のアルコール分の含有量(v/v%)を意味し、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、飲料から濾過又は超音波によって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めることができる。アルコール度が1.0%未満の低濃度の場合は、市販のアルコール測定装置や、ガスクロマトグラフィーを用いても良い。
【0021】
本発明のビールテイスト飲料は、当業者に知られる通常の方法で製造することができる。例えば、麦芽等の麦、他の穀物、でんぷん及び糖類の少なくとも1種に加え、苦味料、色素などの原料を、仕込釜又は仕込槽に投入し、必要に応じてアミラーゼなどの酵素を添加し、糊化、糖化を行なわせ、ろ過し、必要に応じてホップなどを加えて煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパク質などの固形分を取り除く。糖化工程、煮沸工程、固形分除去工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。
【0022】
アルコール飲料の場合には、次いで酵母を添加して発酵を行なわせ、ろ過機などで酵母を取り除いて製造することができる。発酵条件は、知られている条件を用いればよい。必要であれば、膜処理や希釈などの公知の方法によりアルコール濃度を低減させる。あるいは、発酵工程を経る代わりに、スピリッツなどアルコール分を有する原料を添加してもよい。更に、貯蔵、必要により炭酸ガス添加、濾過、容器詰め、必要により殺菌の工程を経て、アルコールビールテイスト飲料を得ることができる。
【0023】
酵母による発酵工程を経た飲料からアルコールを完全に除去することは難しいため、ノンアルコール飲料、特にアルコール度数が四捨五入により0.00%となる飲料は、アルコールが生成しない非発酵性の方法によって製造することが好ましい。例えば、発酵工程を経ることなく、上記固形分除去工程に次いで、貯蔵、炭酸ガス添加、濾過、容器詰め、必要により殺菌の工程を経て、非発酵のノンアルコールビールテイスト飲料を得ることができる。
【0024】
サポニン及び色素は、上記の工程のいずれにおいて加えてもよい。」

ウ 泡の白色化法に関する記載
「【0043】
(泡の白色化法)
本発明においては、色素を含有するビールテイスト飲料にサポニンを含有させることによって、当該ビールテイスト飲料の泡を白色化する。
【0044】
ここで、泡を白色化することには、泡の着色を抑制すること、及び泡の生成中又は泡の生成後に白色化することが含まれる。
【0045】
本発明においては、ビールテイスト飲料中のサポニンの含有量は、色素由来の泡の色を抑制等して白色化できる限り限定されない。ビールテイスト飲料中のサポニンの含有量は、好ましくは、1mg/l以上、好ましくは、2mg/l以上、更に好ましくは4mg/l以上が望ましい。また、上限については、白色化できる量よりも多ければ、特に限定されないが、コストや香味への影響の観点から、1000mg/l以下、より好ましくは50mg/l以下、最も好ましくは、20mg/l以下である。或いは、8mg/l以下、又は7mg/l以下であってもよい。なお、ここで示した上限や下限を満たす数値範囲は全て採用し得る。したがって、例えば、1mg/l以上1000mg/l以下とすることができ、また1mg/l以上50mg/l以下、あるいは、1mg/l以上20mg/L以下、などの範囲とすることができる。或いは、1mg/l以上8mg/l以下、又は2mg/l以上7mg/l以下の範囲であってもよい。また、ビールテイスト飲料中のカラメル色素等の色素の含有量は、下限については、好ましくは、10mg/l以上、より好ましくは100mg/l以上、更に好ましくは200mg/l以上、さらに好ましくは300mg/l以上である。上限値については、20000mg/l以下が好ましく、より好ましくは、2000mg/l以下、更に好ましくは1000mg/l以下である。なお、ここで示した上限や下限を有する数値範囲は全て採用し得る。したがって、例えば、10mg/l以上20000mg/l以下とすることができ、また、100mg/l以上2000mg/l以下、100mg/l以上1000mg/l以下、200mg/l以上1000mg/L以下、300mg/l以上1000mg/L以下の範囲とすることができる。また、ビールテイスト飲料は、カラメル色素等の色素を、飲料の色度(EBC)を一定程度上昇させる量で含有することができる。その際の色度(EBC)の上昇幅の下限に関しては、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、上限に関しては、好ましくは400以下、より好ましくは、40以下、さらにより好ましくは37以下、より好ましくは18以下である。ここで示した上限や下限を有する数値範囲は全て採用し得る。したがって、例えば、その上昇幅は、好ましくは1以上400以下、より好ましくは、1以上40以下、更により好ましくは2以上37以下、より好ましくは2以上18以下の範囲に調整することができる。
【0046】
ここで、泡の色は、実施例におけるように、例えば、JIS色名帳を用いて、泡の色に最も近い色を決定し、比較することにより評価できる。」

エ 実施例1?7に関する記載
「【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
実施例1
<本発明のノンアルコールビールテイスト飲料の製造>
本発明のビールテイスト飲料を、以下の方法により製造した。麦芽20kg(全麦芽のうち色麦芽であるカラメル麦芽の占める割合が60重量%)を用いた。麦芽を適当な粒度に粉砕して仕込槽に入れ、これに120Lの温水を加え、約50℃のマッシュを作った。50℃で30分保持後、徐々に昇温して65℃?72℃で60分間、糖化を行った。糖化が完了したマッシュを77℃まで昇温後、麦汁濾過槽に移し濾過を行い、濾液を得た。
【0051】
得られた濾液の一部をとり、温水を加え、その際、濾液と温水の混合割合は、煮沸完了時のエキス分の量が目標とする値になるよう調整した。製造スケールを100Lとし、ホップを約100g、市販のカラメル色素(クラスI)約40gを添加し撹拌した。この時、色度(EBC)は8上昇した。次いで、100℃で80分間煮沸をした。煮沸後の液からオリを分離し、約2℃に冷却後、酸化防止剤、香料、酸味料(pHが4未満となる量を添加)、甘味料を各々適量加え、さらに市販のサポニンを製品あたり約5mg/lとなるよう加えて約24時間貯蔵した。その間、炭酸ガスを適量添加した。濾過・瓶詰め・殺菌(65℃以上で10分間加熱)の工程を経て、本発明のノンアルコールビールテイスト飲料(発明品1)を得た。尚、飲料中のカラメル色素の含有量は約400mg/l程度であった。また、発明品1の飲料中にアルコールは含まれず、カロリーは2kcal/100ml、糖質量は0.4g/100ml、エキス分の総量は0.4重量%であった。
【0052】
同様にして、サポニンを添加しないノンアルコールビールテイスト飲料(比較例)を製造した。
【0053】
また、参考例として、市販のビール(サントリー ザ・プレミアム・モルツ。麦芽使用率100%。色素添加なし。)についても評価した。
【0054】
<泡の色の評価方法>
適温(約8℃)に冷やしたサンプル(ビール用大瓶 633ml)を開栓し、500mlの円筒ガラス容器に、ガラス容器の口から約10cmの高さから約6秒で500mlのところまで泡がくるようにサンプルを注ぎ入れる。注ぎ終わってから5分後に、シリンダー内に残った泡を肉眼で観察し、JIS色名帳(JIS Z8102準拠)を用いて、泡の色に最も近い色を記録した。結果を以下の表1に示す。比較例1の泡の色はごくうすい黄色であったのに対し、発明品の泡の色は参考品と同程度の白色であり、サポニンの添加により泡の色が著しく改善された。また、香味においても好ましい飲料であった。
【0055】
【表1】

【0056】
実施例2
<ビールテイスト発酵飲料>
仕込み水85kgに対して、糖シロップ(加藤化学社製)を7kg、とうもろこしタンパク質分解物70g、酵母エキス70g、カラメル色素40g、ホップ100g及び所定量の水溶性植物繊維を加え、これを50分間煮沸した後、静置して浮遊物を除き、発酵原液を得た。発酵原液に甘味料(アセスルファムK、スクラロース)、酸味料(クエン酸)、クエン酸三カリウム、原料アルコール、香料を加え、さらにサポニンを製品あたり約5mg/lになるように添加し、酵母(Weihenstephan-34株)を、生菌数10×106cells/mLになるよう添加し、温度20℃で8日間発酵を行った。炭素源の資化終了後、濾過により酵母を取り除き、アルコール度5%のビールテイスト発酵飲料を得た。発明品2の飲料中の麦芽使用比率、及び麦芽を含めた麦の使用比率は0であった。
【0057】
得られた飲料の泡の色を実施例1と同様に評価した結果、泡の色は参考品と同程度の白色であり、問題のないものであった。また、香味においても好ましい飲料であった。
【0058】
実施例3
<ノンアルコールビールテイスト飲料の製造>
市販のサポニンを製品あたり1?50mg/Lとなるよう8種類の本発明のノンアルコールビールテイスト飲料(発明品3?10)を調製した。製造法は、サポニンの添加量が異なる他は実施例1の方法に準じた。尚、これらの飲料中のカラメル色素の含有量は約400mg/l程度(色度(EBC)は8上昇)であった。また、これらの飲料中にアルコールは含まれず、カロリーは2kcal/100ml、糖質量は0.4g/100ml、エキス分の総量は0.4重量%であった。
【0059】
同様にして、サポニンを添加しないノンアルコールビールテイスト飲料(比較例2)を製造した。
【0060】
<泡の色の評価方法>
実施例1と同様の方法で泡の色を評価した。結果を以下の表2に示す。比較例2の泡の色はごくうすい黄色であったのに対し、発明品3から10の泡の色は白色であった。
【0061】
【表2】

【0062】
実施例4
<ビールテイスト発酵飲料の製造>
サポニンを添加しないこと、およびカラメル色素として、タイプIVを用いたこと以外は実施例2の方法に準じ、比較例3のビールテイスト飲料を製造した。比較例3に、サポニンを製品あたり1mg/l、5mg/l、または20mg/lになるように添加し静かに撹拌し、発明品11-13を得た。
【0063】
得られた飲料の泡の色を実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。比較例3の泡の色はごくうすい黄色であったのに対し、発明品11から13の泡の色は白色であった。また、香味においてもいずれも好ましい飲料であった。
【0064】
【表3】

【0065】
実施例5
<カラメルタイプの検討>
カラメル色素として、タイプIIまたはタイプIVを用いたこと以外は実施例1に準じて、本発明のノンアルコール飲料(発明品14及び15)を製造した。同様にして、サポニンを添加しないノンアルコールビールテイスト飲料(比較例4及び5)を製造した。得られた飲料の泡の色を実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。カラメル色素として、タイプIIまたはタイプIVを用いた場合においても、比較例の泡の色はごくうすい黄色であったのに対し、発明品の泡の色は白色であった。
【0066】
【表4】

【0067】
実施例6
<ノンアルコールビールテイスト飲料の製造>
カラメル色素(タイプI)の添加量を0mg/lから2000mg/lの範囲で段階的に変えて、ノンアルコールビールテイスト飲料である比較例6(0mg/l)と、発明品16?19(100mg/l、400mg/l、1000mg/l、及び2000mg/l)を製造した。すなわち、カラメル色素(タイプI)の添加量を段階的に変えたこと、及び、サポニンの量が20mgであること以外は、実施例1の方法に準じてこれらのノンアルコールビールテイスト飲料を製造した。得られた飲料の泡の色を実施例1と同様に評価した。結果を表5に示す。発明品16ないし18については、泡の色は白色であり、カラメル色素を添加しない比較例6の泡の色(白色)と同等であった。また、発明品19については泡の色は黄みがかった白であったが、サポニン未添加の場合、例えば、実施例1の比較例1に比較して、あきらかに白くなる傾向を示した。このように、発明品16から発明品19についてはいずれも、白色系の好ましい泡を示し、香味についても、ビールテイスト飲料として良好なものであることが確認できた。尚、各飲料の色度(EBC)と、カラメル色素添加前後の色度の違い(色度の上昇)も、表5に示した。
【0068】
【表5】

【0069】
実施例7
<低エキス、低カロリー、低糖質のノンアルコールビールテイスト飲料>
エキス分の異なる本発明の飲料5種類を製造した。麦芽を適当な粒度に粉砕したものを仕込槽に入れ、これに120Lの温水を加え、約50℃のマッシュを作った。50℃で30分保持後、徐々に昇温して65℃?72℃で60分間、糖化を行った。糖化が完了したマッシュを77℃まで昇温後、麦汁濾過槽に移し濾過を行い、濾液を得た。
【0070】
得られた濾液の一部をとり、温水を加え、その際、濾液と温水の混合割合は、煮沸完了時のエキス分の量が目標とする値になるよう調節した。製造スケールを100Lとし、ホップを約100g添加し、100℃で80分間煮沸をした。煮沸後の液からオリを分離し、約2℃に冷却後、酸化防止剤、香料、酸味料、甘味料、各々適量加えて、それぞれにカラメル色素(タイプI)を製品あたり200mg/Lとなる量で加え、更にサポニンを製品当たり10mg/Lとなる量で加えた。約24時間貯蔵した。その間、炭酸ガスを適量添加した。その後、濾過・瓶詰め・殺菌(65℃以上で10分間加熱)の工程を経て、本発明のノンアルコールビールテイスト飲料1?5を得た。
【0071】
得られた飲料の泡の色を実施例1と同様に評価した。表6に示すように、いずれの飲料においても、色素を用いたにもかからず、泡の色は白色であった。また、香味についても、ビールテイスト飲料として良好なものであった。
【0072】
【表6】



(3)本件発明1?4、6?19、21?30の解決しようとする課題について
発明の詳細な説明の、特に、背景技術の記載(【0002】)、発明が解決しようとする課題の記載(【0003】)等からみて、本件発明1?4、6?15が解決しようとする課題は、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料の泡を白色化したビールテイスト飲料を提供すること、及び、本件発明16?19、21?30が解決しようとする課題は、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料の泡を白色化したビールテイスト飲料の製造方法を提供することであると認める。

(4)判断
発明の詳細な説明には、本件発明1?30の具体例として、実施例1?7(【0049】?【0072】)が記載されている。
実施例1?6には、サポニンの含有量を1mg/l?30mg/l及びカラメル色素の含有量を100mg/l?2000mg/l含有するビールテイスト飲料を製造し(実施例1?6における発明品1?19)、泡の色を検討したところ、その結果が示されている【表1】?【表6】(【0055】、【0061】、【0064】、【0066】、【0068】、【0072】)の「泡の色」の欄には、「白」(発明品1?18)及び「黄みの白」(発明品19)と記載されている。
「白」(1?18)という結果は、泡を白色化したものと認められる。
また、「黄みの白」(発明品19)という結果については、本件明細書(【0044】)に、「泡を白色化すること」には、泡の生成中又は泡の生成後に白色化することのみならず、泡の着色を抑制することも含まれることが記載されており、この「黄みの白」とは、カラメル色素由来の黄色が、黄みである白と変化したことが示されていると理解でき、泡の着色が抑制されているといえ、この「黄みの白」という結果についても、泡を白色化することに該当するといえる。
それ故、実施例1?6には、サポニンの含有量を1mg/l?30mg/l及びカラメル色素の含有量を100mg/l?2000mg/l含有するビールテイスト飲料は、その泡を白色化できることが客観的に確認されているといえる。

そうすると、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料の泡の白色化法における、ビールテイスト飲料中のサポニンの含有量、カラメル色素の含有量及び色素の含有方法についての実施の態様の上記記載及び実施例の上記記載に基づき、本件明細書の記載に接した当業者であれば、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料の泡を白色化したビールテイスト飲料及びその製造方法を提供し得ると理解できるといえ、本件発明1?4、6?19、21?30の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。
したがって、本件発明1?4、6?19、21?30は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

(5)まとめ
したがって、本件発明1?4、6?19、21?30に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すことができない。

2 取消理由2について

(1)本件発明に関する特許法第36条第4項第1号の判断の前提
明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、物の発明にあっては、当業者に期待し得る程度を超える過度の試行錯誤なく、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基いて、その物を生産でき、かつ、使用できるように、方法の発明にあたっては、その方法を使用できるように、それぞれ記載されていることが必要と解される。

(2)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明の記載は、前記1(2)に記載したとおりである。

(3)判断
本件発明1?4、6?19、21?30の、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料の泡を白色化したビールテイスト飲料及びその製造方法について、前記1に記載したように、発明の詳細な説明には、実施例6において、カラメル色素の添加量を0mg/Lから2000mg/Lの範囲で段階的(0mg/L、100mg/L、400mg/L、1000mg/L、2000mg/L)に変えた場合、カラメル色素の添加量が100mg/L、400mg/L、1000mg/Lの場合は、泡の色がそれぞれ「白」であり、カラメル色素の添加量が2000mg/Lの場合は、泡の色が「黄みの白」と記載されている(【表6】【0068】)。
このカラメル色素の添加量が2000mg/Lの場合は、前記1(4)に記載したように、カラメル色素由来の黄色が、黄みである白と変化したことが示されていると理解でき、泡の着色が抑制されているといえ、泡を白色化しているといえる。

そうすると、実施例1?7で実施された方法(【0049】?【0072】)及びその結果を示す【表1】?【表6】(【0055】、【0061】、【0064】、【0066】、【0068】、【0072】)における、サポニンの含有量及びカラメル色素の含有量と、泡の色の着色との関連を参考にしながら、ビールテイスト飲料中のサポニンの含有量及びカラメル色素の含有量についての実施の態様の記載(【0045】)に基づき、該サポニンの含有量及びカラメル色素の含有量のそれぞれを適宜調整することにより、当業者は、泡が白色化したビールテイスト飲料を、当業者に期待し得る程度を超える過度の試行錯誤なく製造できかつ使用できるといえる。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?4、6?19、21?30を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

(4)まとめ
したがって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?4、6?19、21?30を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものといえ、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すことができない。

第4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由について

I 特許異議申立の理由の概要

理由1:本件発明1?30は、下記の点で、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件発明1?30に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(1)請求項1及び16に記載の「カラメル色素」について、カラメル色素は製法によりクラスI?IVに分類され、クラスが異なれば物性が異なる上、同じクラスでも物性が異なるものであり、カラメル色素の物性が異なれば泡の色に与える影響も異なることから、任意のカラメル色素を用いた場合であっても、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料の泡を白色化したビールテイスト飲料及びその製造方法を提供するという各課題を解決できるとはいえないから、請求項1及び16に係る発明、並びに、これらを技術的に限定した請求項2?15及び17?30に係る発明は、本件明細書の発明の詳細な説明において、課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超えるものであり、サポート要件を満たしていない。

(2)請求項1及び16に記載の、「キラヤサポニンの含有量が1mg/l以上、30mg/l以下」及び「カラメル色素の含有量が10mg/l以上、2000mg/l以下」について、本件明細書の実施例には、キラヤサポニン及びカラメル色素の各含有量が上記範囲内であるにもかかわらず、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料における泡の白色化が難しくなると理解されるものがあり、カラメル色素の含有量が上記上限値(2000mg/l)に近い場合は、キラヤサポニンの含有量が上記下限値(1mg/l)付近では、泡を白色化することはできないと理解されるので、請求項1及び16に係る発明は、課題を解決できないものを包含していることが明らかであり、請求項2?4、6?19及び21?30に係る発明についても同様である。また、請求項5及び20に係る発明についても、キラヤサポニンの含有量が上記下限値(1mg/l)付近にある場合は、同じく泡を白色化することはできないと理解され、サポート要件を満たしていない。

理由2:本件発明1?30については、下記の点で、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?30の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本件発明1?30に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(1)前記理由1(1)で説明したとおり、本件発明は、「カラメル色素を含有するビールテイスト飲料の泡を白色化すること」ができないものが含まれてくるため、本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者であっても、本件発明の目的を達成するような方法で、本件発明に係る物乃至方法を使用することはできないので、本件明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件を満たしていない。

(2)前記理由1(2)で説明したとおり、本件発明は、「カラメル色素を含有するピールテイスト飲料の泡を白色化すること」ができないものが含まれてくるため、本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者であっても、本件発明の目的を達成するような方法で、本件発明に係る物乃至方法を使用することはできないので、本件明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件を満たしていない。

理由3:本件発明1?30は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第5又は11号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件発明1?30に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第5号証:特開2006-191934号公報(以下「甲5」という。)
甲第11号証:特開2007-82538号公報(以下「甲11」という。)

理由4:本件発明1?30は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第5号証に記載された発明及び甲第4、6?10号証に記載の技術的事項に基いて、又は、甲第11号証に記載された発明及び甲第4号証に記載の技術的事項に基いて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件発明1?30に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第4号証:日本石鹸洗剤工業会の公式ホームページ,「B4緑やピンクの石けんでも泡が白いのはどうして?」[online],2002年12月15日,[2019年3月7日検索],インターネットURL:https://jsda.org/w/k_kids/k_kids-naze09.html (以下「甲4」という。)
甲第5号証:理由3で示したとおりである。
甲第6号証:特開2007-181427号公報(以下「甲6」という。)
甲第7号証:特開2004-81171号公報(以下「甲7」という。)
甲第8号証:特開2006-314282号公報(以下「甲8」という。)
甲第9号証:「キラヤニンC-100製品規格」丸善製薬株式会社、(2008年10月1日)(以下「甲9」という。)
甲第10号証:「キラヤニンS-100製品規格」丸善製薬株式会社、(2008年10月1日)(以下「甲10」という。)
甲第11号証:理由3で示したとおりである。

II 当審の判断

1 理由1(特許法第36条第6項第1号)について

(1)「カラメル色素」について
発明の詳細な説明には、カラメル色素は、製法によりクラスI?IVに分類され、そのいずれを用いても良いこと(【0011】?【0012】)、その中でも、ビール様の色合いの付与かの観点や、コスト、入手の容易性及び効果の顕著さの観点からクラスI、II、IVを用いることができること(【0013】)、ビールテイスト飲料中のカラメル色素等の含有量や色度の測定方法等が記載されている(【0014】?【0017】)。
そして、実施例1?7(【0049】?【0072】)には、実施例1、6、7では市販のカラメル色素(クラスI)、実施例4ではカラメル色素(クラスIV)、実施例5ではカラメル色素(クラスII及びクラスIV)を、ぞれぞれ用いてビールテイスト飲料を製造し、泡の色を白色化する又は泡の着色を抑制することを客観的に確認している。

上述のように、本件明細書の発明の詳細な説明には、色素についての実施の態様として、カラメル色素としてクラスI?IVのいずれを用いてもよく、その中でもビール様の色合いの付与かの観点や、コスト、入手の容易性及び効果の顕著さの観点からクラスI、II、IVを用いるられること、ビールテイスト飲料中のカラメル色素の含有量や色度の測定方法が記載され、実際に実施例1?7で様々なクラスのカラメル色素を用いて実施し、それぞれの実施例で泡の色を白色化する又は泡の着色を抑制することが客観的に確認されている以上、それらの記載を知見した当業者であれば、カラメル色素を適宜選択しその含有量を適宜調整し、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料を製造することにより、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料の泡を白色化したビールテイスト飲料及びその製造方法を提供し得ると理解できるといえ、前記第3 II 1(3)に記載した本件発明1及び16の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。

したがって、本件発明1及び16は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえ、本件発明1をさらに技術的に限定した本件発明2?15、並びに、本件発明16をさらに技術的に限定した本件発明17?30も、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

(2)「キラヤサポニン」「カラメル色素」の含有量について
本件発明1?4、6?19及び21?30については、第3 II 1にすでに記載したとおりである。
本件発明5及び20について更に検討すると、本件発明5は「カラメル色素の含有量が100mg/l以上、1000mg/l以下」のビールテイスト飲料、及び、本件発明20は「カラメル色素の含有量が100mg/l以上、1000mg/l以下のるビールテイスト飲料における泡の白色化方法であり、第3 II 1に記載したように、実施例1?6には、サポニンの含有量を1mg/l?30mg/l及びカラメル色素の含有量を100mg/l?2000mg/l含有するビールテイスト飲料は、その泡を白色化できることが客観的に確認されているといえることから、当業者であれば、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料の泡を白色化したビールテイスト飲料及びその製造方法を提供し得ると理解できるといえ、本件発明5及び20の課題を解決し得ると認識できるといえる。
したがって、本件発明5及び20も、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
なお、特許異議申立人は、「請求項5及び20に係る発明についても、キラヤサポニンの含有量が上記下限値(1mg/l)付近にある場合は、同じく泡を白色化することはできないと理解され、サポート要件を満たしていない。」と主張するが、「キラヤサポニンの含有量が上記下限値(1mg/l)付近にある場合」は、本件発明5及び20の範囲外であり、本件発明5及び20がサポート要件を満たさないという根拠にはならない。

(3)まとめ
したがって、本件発明1?30に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すことができない。

2 理由2(特許法第36条第4項第1号)について

(1)「カラメル色素」に関連した「カラメル色素を含有するビールテイスト飲料の泡を白色化すること」について
前記1(1)で述べたように、本件明細書の発明の詳細な説明には、カラメル色素についての実施の態様として、クラスI?IVのいずれを用いてもよく、その中でもビール様の色合いの付与の観点や、コスト、入手の容易性及び効果の顕著さの観点からクラスI、II、IVを用いるられること、ビールテイスト飲料中のカラメル色素の含有量や色度の測定方法が記載され、実際に実施例1?7で様々なクラスのカラメル色素を用いて実施し、それぞれの実施例で泡の色を白色化する又は泡の着色を抑制することが客観的に確認されている以上、それらの記載を知見した当業者であれば、カラメル色素を適宜選択しその含有量を適宜調整し、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料を、当業者に通常期待する程度を超える過度の試行錯誤なく製造できかつ使用できるといえる。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?30を当業者が実施できる程度に明確括十分に記載したものであるといえる。

(2)「キラヤサポニン」「カラメル色素」の含有量に関連した「カラメル色素を含有するビールテイスト飲料の泡を白色化すること」について
本件発明1?4、6?19及び21?30については、第3 II 2にすでに記載したとおりである。
本件発明5及び20について更に検討すると、前記1(2)に記載したように、実施例1?6には、サポニンの含有量を1mg/l?30mg/l及びカラメル色素の含有量を100mg/l?2000mg/l含有するビールテイスト飲料を製造し、その泡を白色化できることが客観的に確認されていることから、当業者は、本件発明5及び20を当業者に通常期待する程度を超える過度の試行錯誤なく実施し得るといえる。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?30を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

(3)まとめ
したがって、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているから、同法第113条第4号の規定により取り消すことができない。

3 理由3(特許法第29条第1項第3号)及び4(同法同条第2項)について

(1)刊行物の記載について

ア 甲4
4a「B4 緑やピンクの石けんでも泡が白いのはどうして?
一つ一つの泡はとっても薄い水の膜でできているんだ。一つの泡は透き通って見えるよね。透き通った泡がたくさん集まると、光が当たったとき乱反射(らんはんしゃ)というのが起こるんだ。光があっちこっちたくさんはねかえるんだけど、こんな乱反射の光は白く見えるんだ。だから泡じゃないときの色は関係ないんだね。海の水が波になってくだけるときに白くみえるのも同じことだよ。」(1行?9行)

イ 甲5
5a「【請求項1】
炭素源を含有するシロップ、窒素源、ホップ、色素、起泡・泡持ち向上物質及び水を原料として発酵前液を製造し、該発酵前液を酵母を使用して発酵させることにより発泡性アルコール飲料を得るビール様アルコール飲料の製造方法。
・・・・・
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の方法により製造したビール様アルコール飲料。」

5b「【0007】
したがって、本発明は、大麦、小麦、麦芽を一切使用することなく、また、従来のビールや発泡酒の製造において必要とされる穀物などのデンプン質の液化・糖化工程を必要とせず、しかも、香味や泡立ち・泡持ちも通常のビールと遜色のないビール様アルコール飲料及びその製造方法を提供することを課題とするものである。」

5c「【0028】
[起泡物質、泡持ち向上物質]
起泡・泡持ち向上物質は、大豆サポニン、ユッカサポニン、キラヤサポニン、茶サポニン高麗人参サポニン等の植物抽出サポニン系物質、卵白ペプタイド、牛血清アルブミン等のタンパク質系物質、キサンタンガム、プルラン、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、タマリンド種子多糖類、寒天、タラガム、ジェランガム等の増粘剤及びアルギン酸エステル等を単独または複数同時に使用する。
【0029】
なお、ホップ、起泡物質、泡持ち向上物質は相互に影響するが、起泡物質、泡持ち向上物質は使用されるホップの量を考慮して結果としてビール並の泡持ちを実現できる添加量とすればよい。」

5d「【実施例】
【0034】
以下、本発明の製法に従って実施した具体例について述べる。
【0035】
本実施例は、400Lスケールの醸造設備において試験的に実施したものである。
【0036】
シロップ50kg(水分含量75%、DE50の製品で商業的に入手可能である),アミノ酸粉末400g(アミノ酸含有量0.2%、商業的に入手可能)、カラメル色素140g,ホップペレット400g及び気泡物質として植物抽出キラヤサポニン70mlを加え、これに300-350Lのお湯を加え、60-90分間煮沸する。その後、ワールプールと呼ばれる沈殿槽でホップ粕などを除去し、10℃までプレートクーラーで冷却し、発酵前液を得る。
【0037】
この発酵前液にビール酵母を添加し、6-15℃で5日-15日間発酵させる。その後、-1℃で貯酒を行った。発酵液は珪藻土を利用して濾過して酵母を取り除き、アルコール5%程度のビールと同様の酒類Aを製造した。
【0038】
この酒類Aに香料会社Tのホップの特徴を有するビールフレーバーを100ppmを添加して酒類Bを得た。
【0039】
更に、比較として酒類Aの配合から植物抽出サポニンだけを除いて酒類Cを得た。
【0040】
この製品A,B及びCを市販のビール・発泡酒と比較して、10名のパネルで官能評価を行った結果、いずれの製品もビールと遜色なく、満足な香味を有することが確認された。
【0041】
また、製品A,B、Cについて、泡特性について調べた。この泡特性は泡持ちシグマ値(Σ)を測定することにより行った。シグマ値が高い値を示せば、泡持ちがよいと評価できる。
【0042】
表1は泡持ちシグマ値(Σ)の調査結果を市販ビールD及び市販発泡酒Eと対比して示すものである。
【0043】
【表1】

表1に示したデータから、本実施例で得られた製品A,Bは、いずれも、市販のビール・発泡酒と比較して遜色のない泡特性を有することが確認された。
【0044】
また、植物抽出サポニンを含まない酒類Cでは、シグマ値を測定できず、目視でも泡立ち・泡持ちが明らかに劣った。
【0045】
以上本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。」

ウ 甲6
6a「【0014】サポニンとしては、トリテルペンやステロイドに糖が結合した配糖体であれば特に限定されるものではないが、例えば、バラ科キラヤ(Quillaja saponaria MOLINA)の樹皮より抽出されたキラヤサポニンが好適である。キラヤサポニンは、例えば、キラヤニンC-100(商品名、丸善製薬株式会社製)等として商業的に入手することができる。」

エ 甲7
7a「【0030】
【実施例1】
100ml用の透明ガラス瓶中に、オレンジ果汁6g、グラニュー糖4.8部、「TK-16」(商品名、松谷化学工業製でDE18のマルトデキストリン)5g、クエン酸0.18g、クエン酸ナトリウム0.02gと参考例1?参考例2のオクテニルコハク酸澱粉や「キラヤニンC-100」(商品名、丸善化成製のキラヤサポニン)を表1に記載した割合で投入し、水を加えて全量を20gとし、十分に混合して溶解後4℃以下に冷却し、「SUNTORY SODA」(商品名、サントリー株式会社製の炭酸水)80gをゆっくり添加して、直ちに打栓し、充分に混合してから4℃に調製してある冷蔵庫に保存した。」

オ 甲8
8a「【0024】
[実験例3]-他起源サポニンとの比較-
大豆サポニン含有組成物(ソイヘルスSA:不二製油株式会社製、大豆サポニン含量66%、グループAサポニン存在比67%)とキラヤサポニン含有組成物「キラヤニン-S」(丸善製薬社製、サポニン含量10%)を、サポニンとして0.0025%となるように市販のビール風飲料(雑酒2に分類されるアルコール飲料)に添加し泡状態の評価行った。」

カ 甲9
9a「



キ 甲10
10a「



ク 甲11
11a「【請求項1】
ガラナの種実から抽出されたガラナ抽出液と、起泡剤と、着色料と、を含有したビール様清涼飲料であって、
前記ガラナ抽出液100重量部に対し、前記起泡剤を0.5?7重量部含有していることを特徴とするビール様清涼飲料。」

11b「【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、起泡剤の苦味や特有の味を打ち消し、さらにグラス等に注いだ際、起泡剤によって液面に泡部が形成され、泡持ちが良いため泡部がすぐに消えることなく長く持続させることができるので、飲用したときには泡部によってソフトな口当たりとまろやかな刺激感を得ることができ嗜好性に優れ、またビールや発泡酒等の苦味が苦手な人,アルコール飲料を飲めない人,未成年者等も酒席等の楽しい雰囲気を満喫できるビール様清涼飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の課題を解決するために本発明のビール様清涼飲料は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の発明は、ガラナの種実から抽出されたガラナ抽出液と、起泡剤と、着色料と、を含有したビール様清涼飲料であって、前記ガラナ抽出液100重量部に対し、前記起泡剤を0.5?7重量部好ましくは3?5重量部含有した構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)ガラナの種実はカフェインを含み苦味と刺激性があるので、ガラナ抽出液が起泡剤の苦味や特有の味を打ち消し、さらにグラス等に注いだ際、起泡剤によって液面に泡部が形成され、泡持ちが良いため泡部がすぐに消えることなく長く持続させることができる。このため飲用したときには、泡部によってソフトな口当たりとまろやかな刺激感を得ることができる。
(2)グラスに注いだときにビールと同様の外観、色、泡持ちが得られ、アルコール飲料を飲めない人,未成年者等が酒席等の楽しい雰囲気を満喫できる。
(3)ガラナ抽出液100重量部に対し起泡剤を0.5?7重量部含有しているので、適度な粘度で喉ごしもよく、さらに豊かな泡立ちと泡保持性を得ることができる。
・・・・・
【0008】
起泡剤としては、大豆サポニン,ユッカサポニン,キラヤサポニン等の植物から抽出した配糖体であるサポニン、卵白タンパク質,血清アルブミン,カゼインタンパク質,ホエータンパク質等の起泡性動物性タンパク質、グルテン分解物等の起泡性植物性タンパク質、キサンタンガム,プルラン,グアーガム,ローカストビーンガム,カラギナン,ペクチン,アラビアガム,タマリンド種子多糖類,寒天,タラガム,ジェランガム等の増粘剤、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸エステル等が用いられる。複数種を混合して用いることもできる。なかでも、サポニン、アルギン酸エステルが好適に用いられる。起泡性に優れるとともにクセが少ないからである。
【0009】
起泡剤の含有量が、ガラナ抽出液100重量部に対し3重量部より少なくなるにつれ起泡性や起泡安定性が低下する傾向がみられ、5重量部より多くなるにつれ粘度が高くなり喉ごしが悪くなるとともに、製造ライン中でのフォーミング(泡立ち)により製造効率が悪化する傾向がみられる。特に、0.5重量部より少なくなるか7重量部より多くなると、これらの傾向が著しくなるためいずれも好ましくない。
なお、抽出液を濃縮乾燥して粉末等に固形化したガラナ抽出液を用いる場合は、固形化する前のガラナ抽出液100重量部に対する起泡剤の割合を示す。」

11c「【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実験例1)
異性化糖の果糖ぶどう糖液糖(果糖分55%、濃度75%)1000重量部、グラニュー糖1100重量部、ぶどう糖100重量部を甘味料として、水25600重量部に溶解しシロップを作製した。このシロップに、ガラナ抽出液100重量部、酸味料のクエン酸20重量部、キラヤサポニン等を主成分とする起泡剤3重量部、りんご香料6重量部、カラメル色素からなる着色料4重量部を混合し、溶液を作製した。
溶液を濾過後98℃で殺菌した後、5?8℃に冷却し、冷却した溶液に炭酸ガスを0.7重量%の割合で圧入した。次いで、容器に充填し打栓して実験例1のビール様清涼飲料を得た。
なお、実験例1のビール様清涼飲料のブリックスは8.5(アタゴ製のデジタル糖度計で測定)であり、酸度(クエン酸換算)は0.07%(フェノールフタレイン試薬による滴定法で測定)であった。
【0034】
(実験例2)
気泡剤の配合量を0.05重量部とした以外は実験例1と同様にして、実験例2のビール様清涼飲料を得た。」

(2)甲5又は甲11に記載された発明

ア 甲5に記載された発明
甲5は、「炭素源を含有するシロップ、窒素源、ホップ、色素、起泡・泡持ち向上物質及び水を原料として発酵前液を製造し、該発酵前液を酵母を使用して発酵させることにより発泡性アルコール飲料を得るビール様アルコール飲料の製造方法」(5a請求項1)及び該製造「方法により製造したビール様アルコール飲料」(5a請求項11)に関し記載するものであって、該ビール様アルコール飲料の製造方法の具体例として、実施例(5d)には、「シロップ50kg(水分含量75%、DE50の製品で商業的に入手可能である),アミノ酸粉末400g(アミノ酸含有量0.2%、商業的に入手可能)、カラメル色素140g,ホップペレット400g及び気泡物質として植物抽出キラヤサポニン70mlを加え、これに300-350Lのお湯を加え、60-90分間煮沸する。その後、ワールプールと呼ばれる沈殿槽でホップ粕などを除去し、10℃までプレートクーラーで冷却し、発酵前液を得る。この発酵前液にビール酵母を添加し、6-15℃で5日-15日間発酵させる。その後、-1℃で貯酒を行った。発酵液は珪藻土を利用して濾過して酵母を取り除き、アルコール5%程度のビールと同様の酒類Aを製造した」(5d【0036】?【0037】)ことが記載され、当該方法により、アルコール5%程度のビールと同様の酒類Aを得たものといえる。

そうすると、甲5には、
「シロップ50kg(水分含量75%、DE50の製品で商業的に入手可能である)、アミノ酸粉末400g(アミノ酸含有量0.2%、商業的に入手可能)、カラメル色素140g,ホップペレット400g及び気泡物質として植物抽出キラヤサポニン70mlを加え、これに300-350Lのお湯を加え、60-90分間煮沸し、その後、ワールプールと呼ばれる沈殿槽でホップ粕などを除去し、10℃までプレートクーラーで冷却し、発酵前液を得、この発酵前液にビール酵母を添加し、6-15℃で5日-15日間発酵させ、その後、-1℃で貯酒を行い、発酵液は珪藻土を利用して濾過して酵母を取り除いて製造した、アルコール5%程度のビールと同様の酒類A」
の発明(以下「甲5発明1」という。)が記載されていると認められる。

さらに、甲5には、当該酒類Aの製造方法として
「シロップ50kg(水分含量75%、DE50の製品で商業的に入手可能である)、アミノ酸粉末400g(アミノ酸含有量0.2%、商業的に入手可能)、カラメル色素140g,ホップペレット400g及び気泡物質として植物抽出キラヤサポニン70mlを加え、これに300-350Lのお湯を加え、60-90分間煮沸し、その後、ワールプールと呼ばれる沈殿槽でホップ粕などを除去し、10℃までプレートクーラーで冷却し、発酵前液を得、この発酵前液にビール酵母を添加し、6-15℃で5日-15日間発酵させ、その後、-1℃で貯酒を行い、発酵液は珪藻土を利用して濾過して酵母を取り除く、アルコール5%程度のビールと同様の酒類Aの製造方法」
の発明(以下「甲5発明2」という。)が記載されていると認められる。

イ 甲11に記載された発明
甲11は、「ガラナの種実から抽出されたガラナ抽出液と、起泡剤と、着色料と、を含有したビール様清涼飲料であって、前記ガラナ抽出液100重量部に対し、前記起泡剤を0.5?7重量部含有していることを特徴とするビール様清涼飲料」(11a請求項1)に関し記載するものであって、該ビール様清涼飲料の具体例として、実験例2(11c)には、「(実験例2)気泡剤の配合量を0.05重量部とした以外は実験例1と同様にして、実験例2のビール様清涼飲料を得た」(11c【0034】)と記載され、「実験例1」には「(実験例1)異性化糖の果糖ぶどう糖液糖(果糖分55%、濃度75%)1000重量部、グラニュー糖1100重量部、ぶどう糖100重量部を甘味料として、水25600重量部に溶解しシロップを作製した。このシロップに、ガラナ抽出液100重量部、酸味料のクエン酸20重量部、キラヤサポニン等を主成分とする起泡剤3重量部、りんご香料6重量部、カラメル色素からなる着色料4重量部を混合し、溶液を作製した。溶液を濾過後98℃で殺菌した後、5?8℃に冷却し、冷却した溶液に炭酸ガスを0.7重量%の割合で圧入した。次いで、容器に充填し打栓して実験例1のビール様清涼飲料を得た。なお、実験例1のビール様清涼飲料のブリックスは8.5(アタゴ製のデジタル糖度計で測定)であり、酸度(クエン酸換算)は0.07%(フェノールフタレイン試薬による滴定法で測定)であった」(11c【0033】)と記載されている。

実験例2に着目し、実施例2の記載を、実験例1の記載を用いて書き下すと、実験例2には、
「異性化糖の果糖ぶどう糖液糖(果糖分55%、濃度75%)1000重量部、グラニュー糖1100重量部、ぶどう糖100重量部を甘味料として、水25600重量部に溶解しシロップを作製し、このシロップに、ガラナ抽出液100重量部、酸味料のクエン酸20重量部、キラヤサポニン等を主成分とする起泡剤0.05重量部、りんご香料6重量部、カラメル色素からなる着色料4重量部を混合し、溶液を作製し、溶液を濾過後98℃で殺菌した後、5?8℃に冷却し、冷却した溶液に炭酸ガスを0.7重量%の割合で圧入し、次いで、容器に充填し打栓して得られたビール様清涼飲料」
の発明(以下「甲11発明1」という。)が記載されていると認められる。

さらに、甲11には、当該ビール様清涼飲料の製造方法として
「異性化糖の果糖ぶどう糖液糖(果糖分55%、濃度75%)1000重量部、グラニュー糖1100重量部、ぶどう糖100重量部を甘味料として、水25600重量部に溶解しシロップを作製し、このシロップに、ガラナ抽出液100重量部、酸味料のクエン酸20重量部、キラヤサポニン等を主成分とする起泡剤0.05重量部、りんご香料6重量部、カラメル色素からなる着色料4重量部を混合し、溶液を作製し、溶液を濾過後98℃で殺菌した後、5?8℃に冷却し、冷却した溶液に炭酸ガスを0.7重量%の割合で圧入し、次いで、容器に充填し打栓する、ビール様清涼飲料の製造方法」
の発明(以下「甲11発明2」という。)が記載されていると認められる。

(3)本件発明1について

ア 甲5を主引用文献とする場合

(ア)甲5発明1との対比

a 本件発明1の「ビールテイスト飲料」とは、本件明細書の「【0018】(ビールテイスト飲料)本明細書における「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ炭酸飲料をいう。つまり、本明細書のビールテイスト飲料は、特に断わりがない場合、酵母による発酵工程の有無に拘わらず、ビール風味の炭酸飲料を全て包含する。本発明のビールテイスト飲料は、アルコールを含むもの(以下、「アルコールビールテイスト飲料」又は「アルコール飲料」とも記載する)と、アルコールを実質的に含まないもの(以下、「ノンアルコールビールテイスト飲料」又は「ノンアルコール飲料」とも記載する)とを包含する。本発明のノンアルコールビールテイスト飲料には、例えば、ビールテイストの清涼飲料などが含まれる。【0019】本発明のビールテイスト飲料のアルコール度数は特に限定されないが、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、更に好ましくは、3%以上、7%以下である。ビールテイスト飲料が低アルコール又はノンアルコール飲料である場合には、アルコール度数は、典型的には1.0%以下、0.5%以下、又は0.005%以下であり、アルコールを実質的に含まないこともある。ここで、本発明の飲料がアルコールを実質的に含まない場合(ノンアルコール飲料)は、検出できない程度の極く微量のアルコールを含有する飲料を除くものではない。アルコール度数が四捨五入により0.0%となる飲料、中でも、アルコール度数が四捨五入により0.00%となる飲料は、本発明のノンアルコール飲料に包含される。」と記載されている。
そうすると、甲5発明1の「アルコール5%程度のビールと同様の酒類A」は、本件発明1の「ビールテイスト飲料」に相当する。

b 甲5発明1の「カラメル色素」及び「植物抽出キラヤサポニン」は、本件発明1の「キラヤサポニン及びカラメル色素」に相当する。

c 甲5発明1の「植物抽出キラヤサポニン70ml」と、本件発明1の「キラヤサポニン」「キラヤサポニンの含有量が1mg/l以上、30mg以下」とは、キラヤサポニンである点で共通する。

d 甲5発明1の「カラメル色素140g」について、カラメル色素の含有量を濃度(mg/L)で表すと、以下のとおりである。
酒類Aの水分量は、337.57?387.57L[=お湯300?350L+シロップの水分37.5L(=50kg×0.75、1kg=1L)+キラヤサポニン0.07L]。
カラメル色素の含有量を濃度(mg/L)で表すと、361.2?414.7mg/L[=140×1000mg/(337.57?387.57L)]。
そうすると、甲5発明1の「カラメル色素140g」は、本件発明1の「カラメル色素の含有量が10mg/l以上、2000mg/l以下」に含まれる。

そうすると、本件発明1と甲5発明1とは、
「キラヤサポニン及びカラメル色素を含み、カラメル色素の含有量が361.2?414.7mg/lである、ビールテイスト飲料」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲5A:本件発明1では、キラヤサポニンの含有量が1mg/l以上、30mg/l以下であるのに対し、甲5発明1では、植物抽出キラヤサポニン70mlである点

(イ)判断

a 新規性について
相違点甲5Aについて、甲5発明1の「植物抽出キラヤサポニン70ml」は、その添加量が70mlであることが理解できるにとどまり、その「植物抽出キラヤサポニン」の濃度が明らかでない。
そうすると、甲5発明1の「アルコール5%程度のビールと同様の酒類A」中の「植物抽出キラヤサポニン」の含有量を特定することができないから、相違点甲5Aは、実質的な相違点である。

b 進歩性について

(a)相違点甲5Aについて
甲6には、キラヤサポニンとして「キラヤニンC-100」(商品名、丸善製薬株式会社製)(6a)等を商業的に入手ですることができること、甲7には、「キラヤニンC-100」(商品名、丸善化成製のキラヤサポニン)を含む発泡性飲料(7a)が、甲8には、「キラヤニン-S」(丸善製薬社製、サポニン含量10%)を含むビール風飲料(8a)が、それぞれ記載されている。
また、甲9には、丸善製薬株式会社が作成した「キラヤニンC-100製品規格」及び「キラヤニンC-100」のサポニン含量が9.0?10.0%の範囲であること(9a)、並びに、甲10には、丸善製薬株式会社が作成した「キラヤニンS-100製品規格」及び「キラヤニンS-100」のサポニン含量が9.0?10.0%の範囲であること(10a)が、それぞれ記載されている。

甲6?甲8には、「キラヤニンC-100」や「キラヤニンS」で示されるキラヤサポニンを発泡性飲料やビール風飲料に含むことが記載されているが、甲6?甲8のキラヤサポニンは、いずれも飲料において、サポニンの起泡剤あるいは泡保持剤として添加しているに過ぎず、本件発明1の課題である、カラメル色素を有するビールテイスト飲料にキラヤサポニンを添加して泡を白色化することについては、何ら記載も示唆もされていない。
また、甲9及び甲10は、単に「キラヤニンC-100」及び「キラヤニンS-100」の製品規格が記載されているにすぎず、甲6?甲8と同様である。

そうすると、甲5発明1は、単に、「植物抽出キラヤサポニン70ml」との記載があるのみで、その濃度については、何ら記載されておらず、また、甲6?甲10には、キラヤサポニン濃度が10%程度のものを飲料に起泡剤あるい泡保持剤として添加することが記載されているに過ぎないから、甲5発明1において、カラメル色素を有するビールテイスト飲料の泡を白色化するために「植物抽出キラヤサポニン70ml」を添加すること、及び、その際の「植物抽出キラヤサポニン」の添加濃度として、甲6?甲10に記載の技術的事項を組み合わせる動機付けを認めることができない。
したがって、甲5発明1において、カラメル色素を有するビールテイスト飲料の泡を白色化するために、キラヤサポニンの濃度を所定の範囲に特定することは、当業者が容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない。

(b)本件発明1の効果について
本件発明1の効果は、本件明細書の段落【0004】の記載及び実施例1?7の結果を示す【表1】?【表6】(【0055】、【0061】、【0064】、【0066】、【0068】、【0072】)の客観的な実験データにより裏付けられているとおり、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料において、泡が白色化したものを提供できることであると認められる。
甲4には、一般に、泡の色は、光の乱反射が多い程白く見えるものであることが技術常識であること(4a)が記載されていたとしても、本件発明1は、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料に1mg/l以上30mg/l以下のキラヤサポニンを含有させることにより、泡を白色化できることを見出したものであり、本件発明1の上記効果は甲4?10の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

c したがって、本件発明1は、本件優先日前に頒布された甲5に記載された発明とはいえないし、また、甲5に記載された発明及び甲4、6?10に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

イ 甲11を主引用文献とする場合

(ア)甲11発明1との対比

a 甲11発明1の「ビール様清涼飲料」について、この飲料は本件発明1の「ビールテイスト」を有するかどうかを理解するため、当該飲料の原材料を検討すると、異性化糖の果糖ぶどう糖液糖、グラニュー糖、ぶどう糖、水、ガラナ抽出液、クエン酸、キラヤサポニン、りんご香料、カラメル色素、炭酸ガスであり、これらの成分には、ビールテイスト飲料の特有の味、特にホップにもたらされる苦味の成分は含まれていない。
ガラナ抽出液はカフェインを含み苦味と刺激性がある(11b【0005】)が、この苦味と刺激性は、ビールテイストの苦みや刺激性とは異なるものといえる。
そうすると、本件発明1の「ビールテイスト飲料」と甲11発明1の「ビール様清涼飲料」とは、飲料である点で共通する。

b 甲11発明1の「キラヤサポニン等を主成分とする起泡剤」及び「カラメル色素からなる着色料」は、本件発明1の「キラヤサポニン及びカラメル色素を含」むものに相当する。

c 甲11発明1の「キラヤサポニン等を主成分とする起泡剤0.05重量部」について、この起泡剤0.05重量部中に、キラヤサポニンがどのくらいの重量部含まれているのか明らかでない。それ故、甲11発明1の「ビール様清涼飲料」における、キラヤサポニンの含有量は、算出することはできず、明らかでない。
そうすると、甲11発明1の「キラヤサポニン等を主成分とする起泡剤0.05重量部」と、本件発明1の「キラヤサポニン」「キラヤサポニンの含有量が1mg/l以上、30mg以下」とは、キラヤサポニンである点で共通する。

d 本件発明1の「カラメル色素の含有量が10mg/l以上、2000mg/l以下」と、甲11発明1の「カラメル色素からなる着色料4重量部」とは、カラメル色素である点で共通する。

そうすると、本件発明1と甲11発明1とは、
「キラヤサポニン及びカラメル色素を含む、飲料」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲11A-1:飲料が、本件発明1では、ビールテイスト飲料であるのに対し、甲11明1では、ビール様清涼飲料である点

相違点甲11A-2:本件発明1では、キラヤサポニンの含有量が1mg/l以上、30mg/l以下であるのに対し、甲11明1では、キラヤサポニン等を主成分とする起泡剤0.05重量部である点

相違点甲11A-3:カラメル色素の含有量が、本件発明1では、10mg/l以上、2000mg/l以下であるのに対し、甲11発明1では、4重量部である点

(イ)判断

a 新規性について
事案に鑑み、相違点甲11A-2について検討する。
甲11発明1の「キラヤサポニン等を主成分とする起泡剤0.05重量部」は、「起泡剤」の添加量が0.05重量部であることが理解できるにとどまり、その「起泡剤」中のキラヤサポニンの割合が明らかでない。
そうすると、甲11発明1の「ビール様清涼飲料」中の「キラヤサポニン」の含有量を特定することができないから、相違点甲11A-2は、実質的な相違点である。

b 進歩性について

(a)相違点甲11A-2について
甲11発明1において、起泡剤の主成分であるキラヤサポニンを、ビールテイスト飲料における泡を白色化できる物質としてとらえ、泡を白色化し得る量としてどのくらい添加すれば良いのかについては、甲11及び甲4に記載も示唆もない。
また、本願優先日当時の技術常識を参酌しても、キラヤサポニンを、ビールテイスト飲料における泡を白色化できる物質としてとらえ、泡を白色化し得るキラヤサポニンの添加量が知られていたとも認められない。
したがって、甲11発明1において、「キラヤサポニン等を主成分とする起泡剤0.05重量部」に代えて、本件発明1の技術的特徴である「キラヤサポニンの含有量が1mg/l以上、30mg/l以下」とすることも、当業者といえども、容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない。

(b)本件発明1の効果について
本件発明1の効果は、前記ア(イ)b(b)で述べたとおりであり、本件発明1の効果は、甲11及び4の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

c したがって、相違点甲11A-1及び相違点甲11A-3を検討するまでもなく、本件発明1は、本件優先日前に頒布された甲11に記載された発明とはいえないし、また、甲11に記載された発明及び甲4に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(4)本件発明2?15について

新規性について
本件発明2?15は、本件発明1においてさらに技術的に限定した発明である。
そうすると、本件発明1が、本件優先日前に頒布された甲5又は11に記載された発明とはいえない以上、さらに特定事項を含んだ本件発明2?15は、甲5又は11に記載された発明とはいえない。

進歩性について
本件発明1が、甲5に記載された発明及び甲4、6?10に記載の技術的事項に基いて、又は、甲11に記載された発明及び甲4に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、さらに特定事項を含んだ本件発明2?15についても、甲5に記載された発明及び甲4、6?10に記載の技術的事項に基いて、又は、甲11に記載された発明及び甲4に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明16について

ア 甲5を主引用文献とする場合

(ア)甲5発明2との対比

a 甲5発明2の「アルコール5%程度のビールと同様の酒類A」は、前記(3)ア(ア)aで述べた通り、本件発明16の「ビールテイスト飲料」に相当する。

b 甲5発明2の「カラメル色素」及び「植物抽出キラヤサポニン」は、本件発明16の「カラメル色素」及び「キラヤサポニン」にそれぞれ相当する。

c 甲5発明2の「植物抽出キラヤサポニン70ml」と、本件発明16の「キラヤサポニン」「キラヤサポニンの含有量が1mg/l以上、30mg以下」とは、キラヤサポニンである点で共通する。

d 甲5発明2の「カラメル色素140g」は、前記(3)ア(ア)dで述べた通り、本件発明16の「カラメル色素の含有量が10mg/l以上、2000mg/l以下」に相当する。

e 甲5発明2の「アルコール5%程度のビールと同様の酒類Aの製造方法」と、本件発明16の「ビールテイスト飲料における泡の白色化方法」とは、前記aで述べたことを踏まえると、ビールテイスト飲料における方法である点で共通する。

そうすると、本件発明16と甲5発明2とは、
「カラメル色素を含有するビールテイスト飲料における方法であって、当該飲料にキラヤサポニンを含有させることを特徴とし、当該飲料中のカラメル色素の含有量が10mg/l以上、2000mg/l以下である、方法」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲5B-1:本件発明16では、キラヤサポニンの含有量が1mg/l以上、30mg/l以下であるのに対し、甲5発明2では、植物抽出キラヤサポニン70mlである点

相違点甲5B-2:ビールテイスト飲料における方法が、本件発明16では、泡の白色化方法であるのに対し、甲5発明2では、ビールテイスト飲料の製造方法である点

(イ)判断

a 新規性について
相違点甲5B-1は、前記(3)ア(ア)の相違点甲5Aと同じであるから、前記(3)ア(イ)aで述べたとおりである。

b 進歩性について

(a)相違点甲5B-1について
相違点甲5B-1は相違点甲5Aと同じであるから、前記(3)ア(イ)b(a)で述べたとおりである。

(b)本件発明16の効果について
本件発明16の効果は、本件明細書の段落【0004】の記載及び実施例1?7の結果を示す【表1】?【表6】(【0055】、【0061】、【0064】、【0066】、【0068】、【0072】)の客観的な実験データにより裏付けられているとおり、カラメル色素を含有するビールテイスト飲料において、泡を白色化する方法を提供できることであると認められる。
そして、この効果は、本件発明1と実質的に同様の効果であり、前記(3)ア(イ)bで述べたとおりであるから、本件発明16の上記効果は甲4?10の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

c したがって、相違点甲5B-2を検討するまでもなく、本件発明16は、本件優先日前に頒布された甲5に記載された発明とはいえないし、また、甲5に記載された発明及び甲4、6?10に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

イ 甲11を主引用文献とする場合

(ア)甲11発明2との対比

a 本件発明16の「ビールテイスト飲料」と甲11発明2の「ビール様清涼飲料」とは、前記(3)イ(ア)aで述べたとおり、飲料である点で共通する。

b 甲11発明2の「キラヤサポニン等を主成分とする起泡剤」及び「カラメル色素からなる着色料」は、本件発明16の「キラヤサポニン」及び「カラメル色素」にそれぞれ相当する。

c 本件発明16の「キラヤサポニン」「キラヤサポニンの含有量が1mg/l以上、30mg以下」と、甲11発明2の「キラヤサポニン等を主成分とする起泡剤0.05重量部」とは、前記(3)イ(ア)cで述べたとおり、キラヤサポニンである点で共通する。

d 本件発明16の「カラメル色素の含有量が10mg/l以上、2000mg/l以下」と、甲11発明2の「カラメル色素からなる着色料4重量部」とは、前記(3)イ(ア)dで述べたとおり、カラメル色素である点で共通する。

e 甲11発明2の「ビール様清涼飲料の製造方法」と、本件発明16の「ビールテイスト飲料における泡の白色化方法」とは、前記(5)ア(ア)eで述べたとおり、飲料における方法である点で共通する。

そうすると、本件発明16と甲11発明2とは、
「カラメル色素を含有する飲料における方法であって、当該飲料にキラヤサポニンを含有させることを特徴とする、方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲11B-1:飲料が、本件発明16では、ビールテイスト飲料であるのに対し、甲11明2では、ビール様清涼飲料である点

相違点甲11B-2:本件発明1では、キラヤサポニンの含有量が1mg/l以上、30mg/l以下であるのに対し、甲11明2では、キラヤサポニン等を主成分とする起泡剤が0.05重量部である点

相違点甲11B-3:カラメル色素の含有量が、本件発明1では、10mg/l以上、2000mg/l以下であるのに対し、甲11発明2では、4重量部である点

相違点甲11B-4:ビールテイスト飲料における方法が、本件発明16では、泡の白色化方法であるのに対し、甲11発明2では、ビールテイスト飲料の製造方法である点

(イ)判断

a 新規性について
事案に鑑み、相違点甲11B-2について検討する。
相違点甲11B-2は、前記(3)イ(ア)の相違点甲11A-2と同じであるから、前記(3)イ(イ)aで述べたとおりであるから、相違点甲11B-2は、実質的な相違点である。

b 進歩性について

(a)相違点甲11B-2について
相違点甲11B-2は、前記(3)イ(ア)の相違点甲11A-2と同じであるから、前記(3)イ(イ)b(a)で述べたとおりである。

(b)本件発明16の効果について
本件発明16の効果は、前記ア(イ)b(b)で述べたとおりであるから、本件発明16の上記効果は、甲11及び4の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

c したがって、相違点甲11B-1、相違点甲11B-3及び相違点甲11B-4を検討するまでもなく、本件発明16は、本件優先日前に頒布された甲11に記載された発明とはいえないし、また、甲11に記載された発明及び甲4に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(6)本件発明17?30について

新規性について
本件発明17?30は、本件発明16においてさらに技術的に限定した発明である。
そうすると、本件発明16が、本件優先日前に頒布された甲5又は11に記載された発明とはいえない以上、さらに特定事項を含んだ本件発明17?30は、甲5又は11に記載された発明とはいえない。

進歩性について
本件発明16が、甲5に記載された発明及び甲4、6?10に記載の技術的事項に基いて、又は、甲11に記載された発明及び甲4に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、さらに特定事項を含んだ本件発明17?30についても、甲5に記載された発明及び甲4、6?10に記載の技術的事項に基いて、又は、甲11に記載された発明及び甲4に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(7)まとめ
したがって、本件発明1?30は、本件優先日前に頒布された甲5又は甲11に記載された発明とはいえないし、また、本件発明1?30は、甲5に記載された発明及び甲4、6?10に記載された技術的事項に基いて、又は、甲第11号証に記載された発明及び甲第4号証に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
よって、本件発明1?30に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当しなされたものではなく、かつ、本件発明1?30に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1?30に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?30に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-12-06 
出願番号 特願2014-137326(P2014-137326)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (A23L)
P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 536- Y (A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 太田 雄三  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 齊藤 真由美
村上 騎見高
登録日 2018-08-31 
登録番号 特許第6391327号(P6391327)
権利者 サントリーホールディングス株式会社
発明の名称 サポニンを含有するビールテイスト飲料  
代理人 宮前 徹  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 梶田 剛  
代理人 中西 基晴  

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