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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
管理番号 1357971
審判番号 不服2018-6331  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-09 
確定日 2019-12-18 
事件の表示 特願2016-529441「アレイ基板及び該アレイ基板を用いる液晶表示パネル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日国際公開、WO2015/096219、平成28年12月28日国内公表、特表2016-541013〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)1月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年12月27日、中国(CN))を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年 4月28日:拒絶理由通知書
平成29年 8月 3日:意見書、手続補正書の提出
平成30年 1月16日:拒絶査定(同年 1月19日送達)
平成30年 5月 9日:審判請求書、手続補正書の提出
平成31年 3月 1日:拒絶理由通知書
令和 元年 6月 6日:意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、令和元年6月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
アレイ基板であって、ガラス基板と、ガラス基板上に形成されているゲート電極と、ゲート電極及びガラス基板上に形成されているゲート電極絶縁層と、ゲート電極絶縁層上に形成されているソース電極/ドレイン電極と、ソース電極/ドレイン電極及びゲート電極絶縁層上に形成されている酸化物半導体層と、酸化物半導体層、ソース電極/ドレイン電極及びゲート電極絶縁層上に形成されている保護層と、保護層上に形成されているカラーフィルタと、カラーフィルタ及び保護層上に形成されている平坦化層と、平坦化層上に形成されている画素電極と、を備え、
前記カラーフィルタは前記アレイ基板上に配置され、前記画素電極はソース電極/ドレイン電極に電気接続され、該画素電極は線の形状に配布されるとともに「十」字構造を中心とする放射状構造となり、
前記ゲート電極絶縁層の酸化物半導体層と対応する位置、すなわちソース電極とドレイン電極の間には凹部が設けられており、前記酸化物半導体層は前記ソース電極/ドレイン電極及び凹部を覆い、
前記画素電極はナノインジウム・スズ酸化物で形成され、
前記酸化物半導体層はインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物層であることを特徴とするアレイ基板。」

第3 拒絶の理由
平成31年3月1日付けで当審が通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

[理由1](進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[理由2](委任省令要件)本件出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
[理由3](明確性)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



●理由1(進歩性)について
・請求項 1-12
・引用文献等 1-8

●理由2(委任省令要件)について
・請求項 3-12

●理由3(明確性)について
・請求項 1-12

<引用文献等一覧>
1.特開2011-113085号公報
2.特開2012-244145号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2010-135772号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2010-135778号公報(周知技術を示す文献)
5.国際公開第2011/058859号(周知技術を示す文献)
6.特開2012-209465号公報(周知技術を示す文献)
7.特開平8-179379号公報(周知技術を示す文献)
8.国際公開第2009/154031号(周知技術を示す文献)

第4 当審の判断
1 特許法第36条第6項第2号(明確性要件違反)について
(1)請求項1には「保護層上に形成されているカラーフィルタと、カラーフィルタ及び保護層上に形成されている平坦化層と、」「を備え、」「アレイ基板」と記載されている。
そうすると、アレイ基板に備えられているカラーフィルタは、保護層と平坦化層との間に形成されているものである。

(2)請求項1には「前記カラーフィルタは前記アレイ基板上に配置され、」「アレイ基板」と記載されている。
そうすると、アレイ基板上にカラーフィルタが配置されていることが把握される。
しかしながら、「前記カラーフィルタ」として把握される「カラーフィルタ」は、(1)で説示した「カラーフィルタ」であり、アレイ基板の保護層と平坦化層との間に形成されているものであるから、どのようにすれば、そのようなカラーフィルタがアレイ基板上に配置されたカラーフィルタになるのか不明確であり、発明の構成が不明確となっている。

したがって、本願発明は明確でない。

(3)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和元年6月6日付けの意見書において、「(3)明確性について」、「当業者は本願の補正後の技術的事項により、『アレイ基板は、ガラス基板と、ゲート電極と、ゲート電極絶縁層と、ソース電極/ドレイン電極と、酸化物半導体層と、保護層と、カラーフィルタと、平坦化層と、画素電極とを備え、前記カラーフィルタは保護層上に形成され、前記カラーフィルタはアレイ基板の構成要素である』ということと、『液晶表示パネルは、アレイ基板と、カラーフィルム基板と、液晶層とを備え、前記アレイ基板は、アレイ基板は、ガラス基板と、ゲート電極と、ゲート電極絶縁層と、ソース電極/ドレイン電極と、酸化物半導体層と、保護層と、カラーフィルタと、平坦化層と、画素電極を備え、前記カラーフィルム基板はアレイ基板上に設けられ、前記カラーフィルム基板は液晶表示パネルの構成要素であり、前記カラーフィルタはアレイ基板の構成要素であり、前記カラーフィルタと前記カラーフィルム基板は別体のものである』ということを容易に理解することができます。
前記補正は、出願当初の明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項から自明な事項であり、出願当初の明細書、特許請求の範囲または図面においてしたものであります。」、「上述した補正により請求項の事項は特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていないというご指摘を解消することができると考えます。したがって、本願の発明は明確であり、特許請求の範囲の記載も明確であると考えます。」と主張している。

しなしながら、請求項1については補正はされておらず、「前記カラーフィルタは前記アレイ基板上に配置され」ていると依然として記載されているから、「前記カラーフィルタはアレイ基板の構成要素である」かどうかは、依然として不明確な記載であると言わざるをえない。
以上のとおりであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。

2 特許法第29条第2項(進歩性)について
上記1で検討したように、本願発明は不明確であるが、「前記カラーフィルタは前記アレイ基板上に配置され、」についても、カラーフィルタはアレイ基板の保護層と平坦化層との間に形成されていると解して、進歩性を検討する。

(1)引用文献について
ア 当審における拒絶の理由に引用された特開2011-113085号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

(ア)「【0001】
本発明は、液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)は、現在最も広く使用されているフラットパネルディスプレイ(flat panel display:FPD)のうちの一つであって、電極が形成されている二枚のディスプレイパネルとその間に挿入されている液晶層からなり、電極に電圧を印加して液晶層の液晶分子を再配列させることによって、透過する光の量を調節するディスプレイパネルである。
【0003】
広く使用されている液晶表示装置は電場生成電極(field generating electrode)が二つのディスプレイパネルに各々備えられている構造である。この中でも、一つのディスプレイパネル(以下、「薄膜アレイパネル」という)には複数の薄膜トランジスタと画素電極が行列状に配列されており、他のディスプレイパネル(以下、「共通電極パネル」という)には赤色、緑色、及び青色の色フィルタが形成されており、その全面を一つの共通電極が覆っている構造が主流である。
【0004】
しかし、このような液晶ディスプレイパネルは、画素電極とカラーフィルタが異なるディスプレイパネルに形成されるため、画素電極とカラーフィルタの間で正確な整列(align)が難しく整列誤差が発生する恐れがある。これを解決するため、カラーフィルタと画素電極を同一のディスプレイパネルに形成する構造であるアレイ状カラーフィルタ(color filter on array:COA)が提案されている。」

(イ)「【0027】
液晶パネルアセンブリ300は、下部ディスプレイパネル100及び上部ディスプレイパネル200とその間に配置される液晶層3を含む。図1に示すように、液晶パネルアセンブリ300は、行方向に延在した複数のゲート線121、列方向に延在した複数のデータ線171、このゲート線121とデータ線171に接続されており、行列状に配列された複数の画素(pixel)を含む。また、液晶パネルアセンブリ300の外郭部には封止剤310が形成され、封止剤310は液晶層3の液晶分子を密封させる。」

(ウ)「【0036】
次に、図3乃至図6を参照して、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置についてより詳細に説明する。
【0037】
図3は、図1のA領域を示す配置図である。図4は、図3のIV-IV’線に沿って切断した断面図である。
【0038】
図3及び図4を参照すれば、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置は、互いに対向する下部ディスプレイパネル100と上部ディスプレイパネル200、及びこれら二つのディスプレイパネル100、200の間に配置されている液晶層3を含む。
【0039】
まず、下部ディスプレイパネル100について説明する。
【0040】
絶縁基板110の上に複数のゲート線(gate line)121及び複数の蓄積電極線(storage electrode line)131、135が形成されている。
【0041】
ゲート線121はゲート信号を伝達し、横方向に伸びている。各ゲート線121は、上に突出した複数の第1及び第2ゲート電極(gate electrode)124a、124bを含む。
【0042】
蓄積電極線は、ゲート線121と実質的に並んで伸びた幹線(stem)131とこれから伸び出した複数の蓄積電極135を含む。
【0043】
蓄積電極線131、135の形状及び配置は多様な形態に変更してもよい。
【0044】
ゲート線121及び蓄積電極線131、135の上にはゲート絶縁膜(gate insulating layer)140が形成されており、ゲート絶縁膜140の上には、アモルファスシリコンまたは結晶シリコンなどからなる複数の半導体154a、154bが形成されている。
【0045】
半導体154a、154bの上には、各々複数の対のオーミックコンタクト部(ohmic contact)163b、165bが形成されており、オーミックコンタクト部163b、165bはシリサイド(silicide)またはn型不純物が高濃度にドーピングされているn^(+)水素化アモルファスシリコンなどの物質から形成されることができる。
【0046】
オーミックコンタクト部163b、165b及びゲート絶縁膜140の上には、複数の対のデータ線(data line)171a、171bと複数の対の第1及び第2ドレイン電極(drain electrode)175a、175bが形成されている。
【0047】
データ線171a、171bはデータ信号を伝達し、主に縦方向に伸びてゲート線121及び蓄積電極線の幹線131と交差する。データ線171a、171bは第1、第2ゲート電極124a、124bに向かって伸びて、U字型に曲がった第1及び第2ソース電極(source electrode)173a、173bを含み、第1及び第2ソース電極173a、173bは、第1、第2ゲート電極124a、124bを中心に第1及び第2ドレイン電極175a、175bと対向する。
【0048】
第1及び第2ドレイン電極175a、175bは、各々、第1及び第2ソース電極173a、173bによって一部囲まれた一側末端からの上に伸びており、反対側末端は、他の層との接続のためにその面積が広くてもよい。
【0049】
しかしながら、第1及び第2ドレイン電極175a、175bを始めとしたデータ線171a、171bの形状及び配置は多様な形態に変更してもよい。
【0050】
第1及び第2ゲート電極124a、124b、第1及び第2ソース電極173a、173b、及び第1及び第2ドレイン電極175a、175bは、第1及び第2半導体154a、154bと共に第1及び第2薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)Qa、Qbを構成し、第1及び第2薄膜トランジスタQa、Qbのチャネル(channel)は、第1及び第2ソース電極173a、173bと第1及び第2ドレイン電極175a、175bの間の第1及び第2半導体154a、154bに形成される。
【0051】
オーミックコンタクト部163b、165bはその下の半導体154a、154bとその上のデータ線171a、171b、ドレイン電極175a、175bの間に存在し、それらの間の接触抵抗を低くする。半導体154a、154bには、ソース電極173a、173bとドレイン電極175a、175bの間を始めとして、データ線171a、171b及びドレイン電極175a、175bで遮らずに露出された部分が存在する。
【0052】
データ線171a、171b、ドレイン電極175a、175b、及び露出された半導体154a、154b部分の上には、窒化シリコンまたは酸化シリコンなどを用いた下部保護膜180pが形成されている。
【0053】
下部保護膜180pの上には、リソグラフィ工程で形成されたカラーフィルタ230が形成されている。カラーフィルタ230は、ゲート線121とデータ線171a、171bが交差して定義される画素領域に形成してもよく、各カラーフィルタ230は、赤色、緑色、及び青色の三原色(primary color)のうち一つを表示してもよい。カラーフィルタ230の左右境界はデータ線171a、171bの上に配置し、データ線171a、171bに沿って縦に長く伸びることができる。この場合、カラーフィルタ230は帯状であってもよい。同一色のカラーフィルタ230は隣接しなくてもよい。
【0054】
カラーフィルタ230は、感光性有機組成物に色を実現するための顔料が含まれている構造を有してもよい。例えば、カラーフィルタ230は、感光性有機組成物に赤色、緑色または青色の顔料が各々含まれている赤色、緑色、及び青色カラーフィルタを含んでもよい。
【0055】
特に、カラーフィルタ230は、開口部G1と溝(groove)G2を有してもよい。開口部G1は、第1及び第2ドレイン電極175a、175bと画素電極191が接触する領域で下部保護膜180pを露出する。溝G2は、隣接する画素領域の間で互いに隣接したデータ線171a、171bの間に形成されている。他の実施形態では、隣接する画素領域の間で互いに隣接したデータ線171a、171bの間に互いに異なる色を表示するカラーフィルタ230が重なっており、溝G2が形成されない。
【0056】
下部保護膜180p及びカラーフィルタ230の上には、有機物質または無機物質から形成された上部保護膜180qが形成されている。上部保護膜180qは、カラーフィルタ230を保護すると同時に下端に形成された層を平坦化させる役割を果たす。
【0057】
下部保護膜180pは、カラーフィルタ230の顔料が露出された半導体154a、154b部分へ流入するのを防止してもよい。
【0058】
上部保護膜180qは、ドレイン電極175a、175bを露出するコンタクトホール185a、185bを有する。コンタクトホール185a、185bは、カラーフィルタ230が有する開口部G1に接続されて重なっている。
【0059】
上部保護膜180qの上に複数の画素電極(pixel electrode)191が形成されている。画素電極191はITO(Indium Tin Oxide)またはIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明な導電物質から形成してもよい。画素電極191はギャップ91によって互いに分離されている第1及び第2副画素電極191a、191bを含む。第2副画素電極191bは、データ線171に沿って伸びた一対のブランチ(branche)195を含む。ブランチ195は、第1副画素電極191aとデータ線171a、171bの間に配置し、第1副画素電極191aの下端で接続される。第1及び第2副画素電極191a、191bは、コンタクトホール185a、185bを介して、第1及び第2ドレイン電極175a、175bと電気的に接続されており、第1及び第2ドレイン電極175a、175bからデータ電圧を印加する。
【0060】
上部保護膜180qの上に遮光部220、画素電極191の上にメインスペーサ363Mが形成されている。遮光部220は、画素領域の境界と第1及び第2薄膜トランジスタQa、Qbに対応する部分に形成する。しかし、画素電極191とドレイン電極175a、175bが接触するコンタクトホール185a、185bには、遮光部220でないメインスペーサ363Mを形成してもよい。
【0061】
メインスペーサ363Mはコンタクトホール185a、185bに接触し、上部ディスプレイパネル200に向かって突出している。メインスペーサ363Mは上部ディスプレイパネル200と下部ディスプレイパネル100の間の間隔を維持する役割を果たす。メインスペーサ363Mは上部ディスプレイパネル200と接触してもよい。」

(エ)「【0072】
補助スペーサ363Sはメインスペーサ363Mと共に形成してもよく、メインスペーサ363Mより上部表示板200から遠く離れている。しかし、遮光部220より上部表示板200との距離がより近くに形成してもよい。補助スペーサ363Sは、メインスペーサ363Mと共にセルギャップの高さを維持する機能がある。」

(オ)図3の記載から、第1及び第2副画素電極191a、191bは、線の形状であり、十字構造を中心とした放射状に配置された形状であることが見て取れる。

(カ)図4の記載から、第2ゲート電極124b及び絶縁基板110上に形成されているゲート絶縁膜140が見て取れ、第2ドレイン電極175b、第2ソース電極173b、第2半導体154b及びゲート絶縁膜140の上に形成されている下部保護膜180pが見て取れる。
そして、図4は、図3のIV-IV’線に沿って切断した断面図であるので、図3及び図4の記載から、第1及び第2ゲート電極124a、124b及び絶縁基板110上に形成されているゲート絶縁膜140が見て取れ、第1及び第2ドレイン電極175a、175b、第1及び第2ゲート電極124a、124b、第1及び第2ソース電極173a、173b、第1及び第2半導体154a、154b及びゲート絶縁膜140の上に形成されている下部保護膜180pが見て取れる。

イ 引用発明
したがって、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。

「絶縁基板110と、
絶縁基板110の上のゲート線121に含まれる第1及び第2ゲート電極124a、124bと、
第1及び第2ゲート電極124a、124b及び絶縁基板110上に形成されているゲート絶縁膜140と、
ゲート絶縁膜140の上のアモルファスシリコンまたは結晶シリコンなどからなる第1及び第2半導体154a、154bと、
第1及び第2ドレイン電極175a、175b、第1及び第2ソース電極173a、173bと、
第1及び第2ドレイン電極175a、175b、第1及び第2ゲート電極124a、124b、第1及び第2ソース電極173a、173b、第1及び第2半導体154a、154b及びゲート絶縁膜140の上に形成されている下部保護膜180pと、
下部保護膜180pの上には、カラーフィルタ230が形成され、
下部保護膜180p及びカラーフィルタ230の上には、上部保護膜180qが形成され、
上部保護膜180qの上に画素電極191が形成され、
画素電極191は第1及び第2副画素電極191a、191bを含み、第1及び第2副画素電極191a、191bは、コンタクトホール185a、185bを介して、第1及び第2ドレイン電極175a、175bと電気的に接続され、第1及び第2副画素電極191a、191bは、線の形状であり、十字構造を中心とした放射状に配置され、
第1及び第2ゲート電極124a、124b、第1及び第2ソース電極173a、173b、及び第1及び第2ドレイン電極175a、175bは、第1及び第2半導体154a、154bと共に第1及び第2薄膜トランジスタQa、Qbを構成し、第1及び第2薄膜トランジスタQa、Qbのチャネルは、第1及び第2ソース電極173a、173bと第1及び第2ドレイン電極175a、175bの間の第1及び第2半導体154a、154bに形成され、
画素電極191はITOから形成された、
下部ディスプレイパネル100。」

(2)対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「下部ディスプレイパネル100」は、本願発明の「アレイ基板」に、
引用発明の「絶縁基板110の上のゲート線121に含まれる第1及び第2ゲート電極124a、124b」は、本願発明の「基板上に形成されているゲート電極」に、
引用発明の「第1及び第2ゲート電極124a、124b及び絶縁基板110上に形成されているゲート絶縁膜140」は、本願発明の「『ゲート電極及び』『基板上に形成されているゲート電極絶縁層』」に、
引用発明の「第1及び第2ドレイン電極175a、175b、第1及び第2ソース電極173a、173b」は、本願発明の「ソース電極/ドレイン電極」に、
引用発明の「第1及び第2ドレイン電極175a、175b、第1及び第2ゲート電極124a、124b、第1及び第2ソース電極173a、173b、第1及び第2半導体154a、154b及びゲート絶縁膜140の上に形成されている下部保護膜180p」は、本願発明の「半導体層、ソース電極/ドレイン電極及びゲート電極絶縁層上に形成されている保護層」に、
引用発明の「下部保護膜180pの上には、カラーフィルタ230」は、本願発明の「保護層上に形成されているカラーフィルタ」に、
引用発明の「下部保護膜180p及びカラーフィルタ230の上には、上部保護膜180q」は、本願発明の「カラーフィルタ及び保護層上に形成されている平坦化層」に、
引用発明の「上部保護膜180qの上に画素電極191」は、本願発明の「平坦化層上に形成されている画素電極」に、
引用発明の「画素電極191は第1及び第2副画素電極191a、191bを含み、第1及び第2副画素電極191a、191bは、コンタクトホール185a、185bを介して、第1及び第2ドレイン電極175a、175bと電気的に接続され、」は、本願発明の「画素電極はソース電極/ドレイン電極に電気接続され、」に、
引用発明の「第1及び第2副画素電極191a、191bは、線の形状であり、十字構造を中心とした放射状に配置され、」は、本願発明の「画素電極は線の形状に配布されるとともに「十」字構造を中心とする放射状構造となり、」に、それぞれ相当する。

イ 引用発明の「絶縁基板110」と、本願発明の「ガラス基板」とは、「基板」である点で一致する。

ウ 引用発明の「第1及び第2半導体154a、154b」と、本願発明の「酸化物半導体層」とは、「半導体層」である点で一致する。

エ 引用発明の「画素電極191はITOから形成され」と、本願発明の「画素電極はナノインジウム・スズ酸化物で形成され」とは、「画素電極はインジウム・スズ酸化物で形成され」である点で一致する。

オ そうすると、本願発明と引用発明は、以下の構成において一致し、相違する。

(一致点)
「アレイ基板であって、基板と、基板上に形成されているゲート電極と、ゲート電極及び基板上に形成されているゲート電極絶縁層と、ソース電極/ドレイン電極と、半導体層と、半導体層、ソース電極/ドレイン電極及びゲート電極絶縁層上に形成されている保護層と、保護層上に形成されているカラーフィルタと、カラーフィルタ及び保護層上に形成されている平坦化層と、平坦化層上に形成されている画素電極と、を備え、
前記画素電極はソース電極/ドレイン電極に電気接続され、該画素電極は線の形状に配布されるとともに「十」字構造を中心とする放射状構造となり、
前記画素電極はインジウム・スズ酸化物で形成されるアレイ基板。」

(相違点1)薄膜トランジスタについて、本願発明では、ソース電極/ドレイン電極がゲート電極絶縁層上に形成されており、半導体層が酸化物で形成され、ソース電極/ドレイン電極及びゲート電極絶縁層上に形成されており、ゲート電極絶縁層の酸化物半導体層と対応する位置、すなわちソース電極とドレイン電極の間には凹部が設けられており、前記酸化物半導体層は前記ソース電極/ドレイン電極及び凹部を覆うのに対し、引用発明では、第1及び第2ゲート電極124a、124b、第1及び第2ソース電極173a、173b、第1及び第2ドレイン電極175a、175b、第1及び第2半導体154a、154b、及び、絶縁基板110上に形成されているゲート絶縁膜140を備える点。

(相違点2)本願発明では、ガラス基板であるのに対し、引用発明では、絶縁基板である点。

(相違点3)インジウム・スズ酸化物で形成されている画素電極が、本願発明では、ナノインジウム・スズ酸化物で形成されているのに対し、引用発明では、そのようなものか明らかでない点。

(相違点4)半導体層が、本願発明では、酸化物半導体層で、インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物層であるのに対し、引用発明では、そのようなものか明らかでない点。

(相違点5)カラーフィルタが、本願発明では、アレイ基板上に配置されているのに対し、引用発明では、そのようなものか明らかでない点。

(3)判断
ア 相違点1、相違点4について
(ア)表示装置に関する技術において、ゲート電極と、ゲート電極上に形成されているゲート電極絶縁層と、ゲート電極絶縁層上に形成されているソース電極/ドレイン電極と、ソース電極/ドレイン電極及びゲート電極絶縁層上に形成されるインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物層とを備え、前記ゲート電極絶縁層のインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物層と対応する位置、すなわちソース電極とドレイン電極の間には凹部が設けられており、前記インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物層は前記ソース電極/ドレイン電極及び凹部を覆う構造の薄膜トランジスタは、本願の優先日前に周知技術(必要ならば、特開2012-244145号公報(特に、【0003】、【0032】-【0057】、図1参照、

また、【0054】には、アクティブパターン30はインジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)を含む旨記載されている。)、
特開2010-135772号公報(特に、【0132】-【0157】、図9、10参照。

また、【0045】には、酸化物半導体層209は、In-Ga-Zn-O系非単結晶膜で形成することができる旨記載されている。)、
特開2010-135778号公報(特に、【0002】、【0003】、【0010】、【0028】-【0030】、図36参照。

また、【0010】には、酸化物半導体層について、In-Ga-Zn-O系非単結晶層である旨記載されている。)を参照されたい。)である。

(イ)そして、液晶表示素子の薄膜トランジスタの半導体において、アモルファスシリコンは電子移動度が低いことや結晶シリコンはレーザアニール等の工程が必要なことは一般的に知られている課題であり、当該一般的に知られている課題を解決するために、アモルファスシリコンに比べ電子移動度が高く、レーザアニール等の工程が不要なインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物を半導体として用いて薄膜トランジスタを作製することも一般的に知られている(例えば、特開2010-135778号公報の背景技術(【0002】、【0003】)を参照されたい。)。

(ウ)そうすると、当該一般的に知られている課題を解決するために、引用発明の薄膜トランジスタに換えて、上記IGZOを半導体としたものとして周知の薄膜トランジスタを用いることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

イ 相違点2について
表示装置の絶縁基板をガラスにより形成することは、本願の優先日前に周知技術(必要ならば、特開2010-135772号公報(特に、【0026】参照。)、特開2010-135778号公報(特に、【0024】参照。)を参照されたい。)である。
そして、引用発明の絶縁基板として、上記周知技術を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について
ITO(インジウム・スズ酸化物)の電極を、ナノインジウム・スズ酸化物で形成することは、本願の優先日前に周知技術(必要ならば、国際公開第2011/058859号(特に、[0082]「画素電極Ebの形成工程として、ITOナノインク」参照。)、特開2012-209465号公報(特に、【0026】「電極の印刷用インキに・・・酸化インジウムスズ(ITO)・・・のナノ粒子」参照。)、特開平8-179379号公報(特に、【0214】「第1の電極・・・膜厚100ナノメートルの酸化インジウムスズ(ITO)膜を全面に・・・形成する。」参照。)を参照されたい。)である。
そして、引用発明は画素電極をITOで形成しており、引用発明のITOの電極を形成する際に上記周知技術を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

エ 相違点5について
本願発明の「前記カラーフィルタは前記アレイ基板上に配置され、」は、上記のように保護層と平坦化層との間に形成されたカラーフィルタはアレイ基板に配置されると解するので、引用発明の「下部保護膜180pの上には、カラーフィルタ230が形成され、下部保護膜180p及びカラーフィルタ230の上には、上部保護膜180qが形成され、」は、本願発明の「前記カラーフィルタは前記アレイ基板上に配置され、」に相当する。
そうすると、相違点5は、実質的な相違点ではない。

オ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

カ まとめ
以上のとおりであるから、引用発明に上記周知技術を適用して、相違点1ないし5に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、令和元年6月6日付けの意見書において、
(ア)「引用文献には『画素電極はナノインジウム・スズ酸化物で形成され、かつ酸化物半導体層はインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物層である』という技術的事項と、それに類似する技術的事項と、それを容易に想到できる技術的示唆とが開示されていないと考えます。」、
(イ)「また、引用文献には新請求項の『カラーフィルタはアレイ基板上に配置される』という技術的事項と『画素電極はソース電極/ドレイン電極に電気接続され、該画素電極は線の形状に配布されるとともに「十」字構造を中心とする放射状構造に形成される』という技術的事項とが同時存在する技術的事項と、それらに類似する技術的事項と、それらを容易に想到できる技術的示唆とが開示されていないと考えます。したがって、新請求項1、2および6の技術的事項と引用文献の技術的事項は明らかに相違しており、本願の新請求項1、2および6に係る発明は新規性を有していると考えます。」
と主張している。

イ しかしながら、画素電極をナノインジウム・スズ酸化物で形成することについては、上記(3)ウにも記載し、平成31年3月1日付けで当審が通知した拒絶の理由にも記載したように、周知技術であり、半導体層をインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物層で形成することは、上記(3)アにも記載し、平成31年3月1日付けで当審が通知した拒絶の理由にも記載したように、周知技術である。
さらに、両者を同時に用いることについて、相乗的な効果があるとはいえず、また、上記周知技術(上記拒絶理由)で提示した特開2012-209465号公報には、【0026】「電極の印刷用インキに・・・酸化インジウムスズ(ITO)・・・のナノ粒子」、【0029】「半導体には・・・IGZO」と同時に用いることも示唆されているように、同時に用いることに阻害要因があるとは考えられない。

上記(2)ア、オ及び(3)エに記載したように、引用文献1には、上記ア(イ)の技術的事項が同時に存在する点が実質的に開示されている。
なお、仮に、「カラーフィルタはアレイ基板上に配置される」ことが他のカラーフィルタを意味しており、カラーフィルタとアレイ基板とは別体であるとの意味であるとしても、本願発明はアレイ基板に関する発明であるので、そのようなアレイ基板と別体のカラーフィルタは本願発明の発明特定事項ではないから、上記進歩性の判断に影響を与えるものではない。

以上のとおりであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲(請求項1)の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-07-18 
結審通知日 2019-07-23 
審決日 2019-08-06 
出願番号 特願2016-529441(P2016-529441)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G02F)
P 1 8・ 121- WZ (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三笠 雄司横井 亜矢子  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 野村 伸雄
近藤 幸浩
発明の名称 アレイ基板及び該アレイ基板を用いる液晶表示パネル  
代理人 大槻 聡  

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