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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B |
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管理番号 | 1358220 |
審判番号 | 不服2019-4700 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-08 |
確定日 | 2020-01-09 |
事件の表示 | 特願2016- 16218「三次元座標測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月 3日出願公開、特開2017-134025、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年1月29日の特許出願であって、平成30年7月26日に特許請求の範囲についての補正がなされ、同年8月30日付けで拒絶理由が通知され、同年11月1日に特許請求の範囲についての補正がなされ、同年12月27日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、平成31年1月8日に査定の謄本が送達された。 これに対して、平成31年4月8日に拒絶査定不服審判が請求され、それと同時に特許請求の範囲についての補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1-2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定されるものであり、そのうちの本願発明1は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 上下面と側面を有し、測定対象物を載置する定盤と、 測定プローブを支持し、前記定盤を跨いで前記定盤のY軸方向に移動自在な門型のYキャリッジであって、二つの支柱部材により定盤に支持されるYキャリッジと、 前記二つの支柱部材は、前記Yキャリッジを前記Y軸方向に駆動する駆動機構をもつ第1の支柱部材と、前記第1の支柱部材に追従移動する第2の支柱部材とを有し、 前記定盤は、前記第1の支柱部材側で、前記定盤の上面に垂直な2側面を有するガイドであって且つ前記Y軸方向に延びるガイドを有し、 前記第1の支柱部材は、前記ガイドの上面に摺動自在に支持され、且つ前記第1の支柱部材は前記Y軸方向に沿った2箇所において前記ガイドの前記2側面を左右から挟み込む2対の側面支持部材を有し、 前記2側面の一方に当接する前記駆動機構及び前記Yキャリッジの前記Y軸方向の位置は、前記2対の側面支持部の間にある三次元座標測定装置。」 なお、請求項1の「前記2対の側面支持部」との記載は、前記されているのが「2対の側面支持部」ではなく「2対の側面支持部材」であることから、「前記2対の側面支持部材」の誤記と認める。 また、本願発明2は、本願発明1に係る構成を全て包含するものである。 第3 原査定の概要 本願の請求項1-2に係る発明は、以下の引用文献1-2に記載された発明及び引用文献3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開平7-167641号公報 引用文献2:特開平7-139936号公報 引用文献3:特開平5-312556号公報(周知技術を示す文献) 第4 引用文献に記載された発明 1.引用文献1 (1)引用文献1には、次の記載がある(下線は、当審で付した。)。 「【0018】図2はこの発明の一実施例に係る直線案内装置を備えた三次元座標測定機の斜視図、図1は図2のA-A線に沿う断面図である。 【0019】図示しない測定対象物を載せる定盤1上には門型構造体2が取り付けられる。門型構造体2は、支柱3と支柱4と両支柱3,4の上部に架け渡されたX軸ビーム5とで構成されている。定盤1上の片側にはY軸ガイドレール(案内部材)6が敷設されている。 【0020】X軸ビーム5にはX軸キャリッジ30が図示しないエアベアリングを介してX軸方向にスライド可能に取り付けられ、X軸キャリッジ30はZ軸スピンドル31を図示しないエアベアリングを介してZ軸方向にスライド可能に支持している。Z軸スピンドル31の先端には測定子32が設けられている。 【0021】支柱3の下部にはY軸ガイドレール6に沿って移動するキャリッジ(移動体本体)7が設けられ、キャリッジ7と支柱3とはセラミックスで一体に成型されている。 【0022】Y軸ガイドレール6の互いに平行な案内面(第1及び第2の案内面)6a,6bには、エアベアリング(第1及び第2のエアベアリング)8,9がそれぞれ設けられている。また、定盤1上にもエアベアリング10が設けられている。定盤1の上面1a及びキャリッジ7の底面7aの間には、エアベアリング10を傾動自在に支持するボール11が挟持されている。 【0023】キャリッジ7及び案内面6aの間には、エアベアリング7を傾動自在に支持するボール(第1の支持部材)12が挟持されている。 【0024】キャリッジ7には、コの字状の連結部材15の一端部15aがボルト16で固定されている。連結部材15はY軸ガイドレール6を跨いでいる(図1参照)。連結部材15の他端部15bにはビス14がねじ込まれている。連結部材15の他端部15bのビス14及び案内面6bの間には、エアベアリング9を傾動自在に支持するボール(第2の支持部材)13が挟持されている。連結部材15の一端部15aの固定箇所は、図1に示すように、両ボール12,13の中心を通る仮想直線(軸線)L1 上に位置する。 【0025】キャリッジ7と連結部材15とは、エアベアリング8,9を介してY軸ガイドレール6の案内面6a,6bに案内される。」 「【図1】 」 「【図2】 」 (2)上記記載によれば、引用文献1には次の事項が認められる。 ア 三次元座標測定機は、定盤1と門型構造体2を有し、定盤1は、上下面と側面を有する(【0018】-【0019】、【図2】)。 イ 測定対象物を載せる定盤1上には門型構造体2が取り付けられる(【0019】)。 ウ 門型構造体2は、支柱3と支柱4と両支柱3,4の上部に架け渡されたX軸ビーム5とで構成され、X軸ビーム5にはX軸キャリッジ30が取り付けられ、X軸キャリッジ30はZ軸スピンドル31を支持し、Z軸スピンドル31の先端には測定子32が設けられており、支柱3の下部にはY軸ガイドレール6に沿って移動するキャリッジ(移動体本体)7が設けられている(【0019】-【0021】)。 エ 定盤1上の片側にはY軸ガイドレール(案内部材)6が敷設されており、Y軸ガイドレール6は、互いに平行な案内面(第1及び第2の案内面)6a,6bを備えている(【0019】、【0022】)。 オ 定盤1は、定盤1上の支柱3側で、Y軸方向に伸びるY軸ガイドレール6を備えており(【0019】、【図2】)、Y軸ガイドレール6の互いに平行な案内面(第1及び第2の案内面)6a,6bは、定盤1の上面に略垂直である(【0019】、【図2】)。 カ 支柱3の下部のキャリッジ7には、コの字状の連結部材15の一端部15aがボルト16で固定されており、連結部材15はY軸ガイドレール6を跨いでいる(【0019】、【0024】。 キ 支柱3の下部のキャリッジ7と連結部材15とは、エアベアリング8,9を介してY軸ガイドレール6の案内面6a,6bに案内され、定盤1の上面1aと支柱3の下部のキャリッジ7の底面の間にもエアベアリング10が設けられている(【0019】、【0022】、【0024】-【0025】)。 ク エアベアリング8,9は、Y軸方向に沿った2箇所に設けられており、門型構造体2のY軸方向の位置は、Y軸方向に沿った2個所のエアベアリングの間である(【0022】、【図2】)。 (3)したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「上下面と側面を有し、測定対象物を載せる定盤1と、定盤1上に取り付けられた門型構造体2とを有する三次元座標測定機であって、(上記ア、イ参照。) 門型構造体2は、支柱3と支柱4と両支柱3,4の上部に架け渡されたX軸ビーム5とで構成され、測定子32が設けられ、支柱3の下部には、Y軸方向に伸びるY軸ガイドレール6に沿って移動するキャリッジ(移動体本体)7が設けられており、(上記ウ参照。) 定盤1は、定盤1上の支柱3側で、定盤1の上面に略垂直で互いに平行な案内面(第1及び第2の案内面)6a,6bを有するY軸ガイドレール6であって、Y軸方向に伸びるY軸ガイドレール6を備えており、(上記エ、オ参照。) 支柱3の下部のキャリッジ7には、コの字状の連結部材15の一端部15aがボルト16で固定されており、連結部材15はY軸ガイドレール6を跨いでおり、(上記カ参照。) 支柱3の下部のキャリッジ7と連結部材15とは、エアベアリング8,9を介してY軸ガイドレール6の案内面6a,6bに案内され、定盤1の上面1aと支柱3の下部のキャリッジ7の底面の間にもエアベアリング10が設けられており、(上記キ参照。) エアベアリング8,9は、Y軸方向に沿った2箇所に設けられており、門型構造体2のY軸方向の位置は、Y軸方向に沿った2個所のエアベアリングの間である、(上記ク参照。) 三次元座標測定機。」 2.引用文献2 (1)引用文献2には、次の記載がある(下線は、当審で付した。)。 「【0012】 【実施例】以下添付図面に従って本発明を3次元座標測定機に適用した実施例1の3次元座標測定機について詳説する。図1は本発明に係る実施例1の3次元座標測定機の斜視図、図2はその平面図、図3はその背面図を示している。3次元座標測定機10はYキャリッジ12を有していて、Yキャリッジ12は一対の脚部12A、12Bと、脚部12A、12Bの上端部を連結しているXガイド12Cとで門型構造に構成されている。脚部12A、12Bは基台14の両側に配置されていて、案内面14A、14B、14C、14Dに沿って、対向するエアパッド31A、31B、31C、31DによりY軸方向に移動自在に支持されている(図3参照)。Xガイド12CにはXキャリッジ18がXガイド12Cに沿ってX軸方向に移動自在に支持されている。」 「【0015】また、3次元座標測定機10は駆動キャリッジ26、継手28及び駆動機構30を備えている。駆動キャリッジ26は脚部26Aと、脚部26Aに連結された梁部26Bとで略L字形に構成されている。駆動キャリッジ26はYキャリッジ12に併設されていている。この駆動キャリッジ26は、基台14に設けられた案内面14A、14Bに沿ってY軸方向に移動自在に支持されている。図3上で梁部26Bの右端部にはエアパッド29が設けられていて、エアパッド29はYキャリッジ12の脚部12Bの段部12B′上に載置されている。さらに、脚部26Aの下端部は脚部12Aの下端部を収納するように形成されていて、脚部26Aの下端部にエアパッド31A、31B、31Dが設けられている。エアパッド31A、31B、31Dは夫々案内面14A、14B、14Dに対向するように配置されている(図4参照)。 【0016】脚部26Aの下端部内には駆動機構30の駆動モータ32が配設されている。駆動機構30は駆動モータを含む駆動ユニット32、駆動ローラ34及びガイドレール36から構成されていて、駆動ユニット32から駆動ローラ34が出ている。また、駆動ローラ34の外周はガイドレール36の側面に当接していて、ガイドレール36はY軸方向に平行に配置された状態で基台14に固定されている。従って、駆動ユニット32が内蔵されたモータで駆動されると駆動ローラ34が回転して、駆動キャリッジ26はガイドレール36に沿ってY軸方向に移動する。 【0017】図2に示すように、脚部12A、12Bには横板35の両端部が固定されていて、横板35には継手28の球体38が固定されている。球体38は、移動体25のX軸方向重心位置Gに位置決めされている。移動体25のX軸方向重心位置Gは、電子プローブ24がX座標の略中央に配置されたときの重心位置である。球体38はブロック40の凹部内に回動自在に嵌入されていて、ブロック40は梁部26Bに固定されている。従って、駆動ユニット32が駆動されて駆動キャリッジ26はガイドレール36に沿ってY軸方向に移動すると、駆動ユニット32の駆動力が継手28を介して移動体25のX軸方向重心位置Gに伝達されるので、門型構造のYキャリッジ12の脚部12A、12Bが均等にY軸方向に移動する。」 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図3】 」 「【図4】 」 (2)上記記載によれば、引用文献2には次の事項が認められる。 ア 3次元座標測定機10のYキャリッジ12は、一対の脚部12A、12Bと、脚部12A、12Bの上端部を連結しているXガイド12Cとで門型構造に構成されており、Yキャリッジ12の脚部12A、12Bは、基台14の両側に配置されていて、案内面14A、14B、14C、14Dに沿って、対向するエアパッド31A、31B、31C、31DによりY軸方向に移動自在に支持されている(【0012】)。 イ Yキャリッジ12に併設された駆動キャリッジ26は、脚部26Aと、脚部26Aに連結された梁部26Bとで略L字形に構成されており、脚部26Aの下端部にエアパッド31A、31B、31Dが設けられている(【0015】)。 ウ 脚部26Aの下端部内に、駆動機構30の駆動モータ32が配設されており、駆動機構30は駆動モータを含む駆動ユニット32、駆動ローラ34及びガイドレール36から構成されていて、駆動ローラ34の外周はガイドレール36の側面に当接していて、駆動ユニット32が内蔵されたモータで駆動されると駆動ローラ34が回転して、駆動キャリッジ26はガイドレール36に沿ってY軸方向に移動する(【0016】)。 エ 駆動ユニット32が駆動されて、駆動キャリッジ26がガイドレール36に沿ってY軸方向に移動すると、門型構造のYキャリッジ12の脚部12A、12Bが均等にY軸方向に移動する(【0017】)。 オ 駆動ユニット32及び駆動ローラ34は、駆動キャリッジ26の脚部26Aの下部に設けられている(【0016】、【図1】、【図3】)。 3.引用文献3 (1)引用文献3には、次の記載がある(下線は、当審で付した。)。 「【0002】 【従来の技術】3次元座標測定機はX、Y、Z軸の3軸方向にプローブを移動して被測定物の形状を測定する。図5及び図6に示すように、3次元座標測定機はYキャリッジ10を備えていて、Yキャリッジ10はガイド12に沿ってY軸方向に移動する。すなわち、ガイド12は定盤14の表面や側面にボルト16、16…を介して取り付けられていて、ガイド12の両側部にはYキャリッジ10の一方の脚部10Aのエアパッド18、18が摺動自在に支持されている。この場合、定盤14にはボルト16、16…が螺合するねじ穴14A、14A…が加工されている。」 「【図7】 」 (2)上記記載によれば、引用文献3には、次の事項が認められる。 ア 3次元座標測定機のYキャリッジ10は、ガイド12に沿ってY軸方向に移動し、ガイド12の両側部にはYキャリッジ10の一方の脚部10Aのエアパッド18、18が摺動自在に支持されている(【0002】)。 イ ガイド12の上面にもエアパッド18が設けられており、Yキャリッジ10の一方の脚部10Aが、ガイド12の上面を摺動自在である(【0003】、【図7】)。 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「上下面と側面を有し、測定対象物を載せる定盤1」は、本願発明1の「上下面と側面を有し、測定対象物を載置する定盤」に相当する。 イ 引用発明の「門型構造体2」は、「支柱3と支柱4と両支柱3,4の上部に架け渡されたX軸ビーム5とで構成され、測定子32が設けられて」「定盤1上に取り付けられた」ものであって、「支柱3の下部には、Y軸方向に伸びるY軸ガイドレール6に沿って移動するキャリッジ(移動体本体)7が設けられ」たものであるから、本願発明1の「測定プローブを支持し、定盤を跨いで定盤のY軸方向に移動自在な門型のYキャリッジ」に相当する。 ウ 引用発明の「支柱3」は本願発明1の「第1の支柱部材」に、「支柱4」は、「第2の支柱部材」に、「Y軸ガイドレール6」は「ガイド」に、それぞれ相当するから、全体として、引用発明の「定盤1は、定盤1上の支柱3側で、定盤1の上面に略垂直で互いに平行な案内面(第1及び第2の案内面)6a,6bを有するY軸ガイドレール6であって、Y軸方向に伸びるY軸ガイドレール6を備えており」は、本願発明1の「定盤は、第1の支柱部材側で、定盤の上面に垂直な2側面を有するガイドであって且つY軸方向に延びるガイドを有し」に相当する。 エ 引用発明の「定盤1の上面1aと支柱3の下部のキャリッジ7の底面の間にもエアベアリング10が設けられ」と本願発明1の「第1の支柱部材は、ガイドの上面に摺動自在に支持され」とは、ともに「第1の支柱部材は、平面の上面に摺動自在に支持され」る点で共通する。 オ 引用発明の「エアベアリング8,9」は、「Y軸ガイドレール6の互いに平行な案内面(第1及び第2の案内面)6a,6bに」「設けられており、」かつ「Y軸方向に沿った2箇所に設けられて」いるから、引用発明の「Y軸方向に沿った2箇所においてガイドの2側面を左右から挟み込む2対の側面支持部材」に相当する。 カ 引用発明の「支柱3の下部のキャリッジ7には、コの字状の連結部材15の一端部15aがボルト16で固定されており、連結部材15はY軸ガイドレール6を跨いでおり、支柱3の下部のキャリッジ7と連結部材15とは、エアベアリング8,9を介してY軸ガイドレール6の案内面6a,6bに案内され、」「エアベアリング8,9は、Y軸方向に沿った2箇所に設けられており、」は、本願発明1の「第1の支柱部材はY軸方向に沿った2箇所においてガイドの2側面を左右から挟み込む2対の側面支持部材を有し、」に相当する。 キ 引用発明の「門型構造体2のY軸方向の位置は、Y軸方向に沿った2個所のエアベアリングの間である」は、本願発明1の「YキャリッジのY軸方向の位置は、2対の側面支持部の間にある」に相当する。 (2)一致点及び相違点 本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「上下面と側面を有し、測定対象物を載置する定盤と、 測定プローブを支持し、定盤を跨いで定盤のY軸方向に移動自在な門型のYキャリッジであって、二つの支柱部材により定盤に支持されるYキャリッジと、 二つの支柱部材は、第1の支柱部材と、第2の支柱部材とを有し、 定盤は、第1の支柱部材側で、定盤の上面に垂直な2側面を有するガイドであって且つY軸方向に延びるガイドを有し、 第1の支柱部材は、平面の上面に摺動自在に支持され、且つ第1の支柱部材はY軸方向に沿った2箇所においてガイドの2側面を左右から挟み込む2対の側面支持部材を有し、 YキャリッジのY軸方向の位置は、2対の側面支持部の間にある三次元座標測定装置。」 <相違点1> 本願発明1は「二つの支柱部材」が、「YキャリッジをY軸方向に駆動する駆動機構をもつ第1の支柱部材と、第1の支柱部材に追従移動する第2の支柱部材」であって、「ガイドの」「2側面の一方に当接する駆動機構のY軸方向の位置は、2対の側面支持部の間にある」構成であるのに対し、引用発明は、そもそも支柱の駆動機構の有無が不明であるから、駆動機構の設置位置も不明である点。 <相違点2> 「第1の支柱部材」が「摺動自在に支持され」る「平面」が、本願発明1は「ガイドの上面」であるのに対し、引用発明は「定盤1の上面1a」である点。 (3)相違点1についての判断 引用文献2には、「Yキャリッジ12」の駆動手段として、「Yキャリッジ12に併設された駆動キャリッジ26」の「脚部26Aの下端部内に、駆動機構30の駆動モータ32が配設されており、駆動機構30は駆動モータを含む駆動ユニット32、駆動ローラ34及びガイドレール36から構成されて」いること(引用文献2の記載事項イ、ウ参照。)、「駆動ローラ34の外周はガイドレール36の側面に当接していて、駆動ユニット32が内蔵されたモータで駆動されると駆動ローラ34が回転して、駆動キャリッジ26はガイドレール36に沿ってY軸方向に移動」すること(引用文献2の記載事項ウ参照。)、は記載されている。 しかしながら、引用文献2には、「Yキャリッジ12の脚部12A、12B」の「エアパッド31A、31B、31C、31D」(本願発明1の「2対の側面支持部材」に対応。)と、「駆動ユニット32及び駆動ローラ34」(本願発明1の「駆動機構」に対応。)との、Y軸方向の位置関係については記載がないため、引用文献2には、本願発明1の「駆動機構のY軸方向の位置は、2対の側面支持部の間にある」に対応する構成が、明示的には記載されていない。 むしろ、引用文献2の「駆動ユニット32及び駆動ローラ34」(本願発明1の「駆動機構」に対応。)のY軸方向の位置は、「エアパッド31A、31B、31C、31D」(本願発明1の「2対の側面支持部材」に対応。)と、重ならない位置にあると考えるのが自然である。 なぜなら、引用文献2の図2、4には、駆動キャリッジ26の脚部26Aが、Yキャリッジ12の脚部12Aをコ字型に囲むこと、が示されており、駆動ユニット32及び駆動ローラ34(本願発明1の「駆動機構」に対応。)のY軸方向の位置が、エアパッド31A、31B、31C、31D(本願発明1の「2対の側面支持部材」に対応。)により支持されるYキャリッジ12の脚部12Aと重なる位置にあると、駆動ローラ34がガイドレール36の側面に当接することができず、駆動されなくなるからである。 また、引用文献3には「駆動機構」についての記載や示唆がないから、引用文献3にも、本願発明1の「駆動機構のY軸方向の位置は、2対の側面支持部の間にある」に対応する構成が記載されていない。 そして、本願発明1は、「駆動機構のY軸方向の位置は、2対の側面支持部の間にある」という構成を備えることにより、全体として、Yキャリッジの振れを抑止することができ、測定精度の向上を図ることができるという効果を奏するものである。 (4)本願発明1のまとめ したがって、相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2-3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 2.本願発明2について 本願発明2は、本願発明1に係る構成を全て包含するものであるから、本願発明1の上記相違点1、2に係る構成と同一の構成を備えるものである。 したがって、本願発明2は、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2-3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-12-23 |
出願番号 | 特願2016-16218(P2016-16218) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 國田 正久 |
特許庁審判長 |
小林 紀史 |
特許庁審判官 |
関根 裕 梶田 真也 |
発明の名称 | 三次元座標測定装置 |
代理人 | 松浦 憲三 |