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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02M
管理番号 1358254
審判番号 不服2019-234  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-09 
確定日 2020-01-17 
事件の表示 特願2014-228467「ガソリン直噴エンジン用燃料レール」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月23日出願公開、特開2016-89790、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年11月10日の出願であって、平成30年6月27日付け(発送日:同年6月29日)で拒絶の理由が通知され、平成30年7月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年10月29日付け(発送日:同年10月31日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して平成31年1月9日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

請求項1及び2に対して:引用文献1ないし4
請求項3及び4に対して:引用文献1ないし5

引用文献等一覧
1.特開2005-9672号公報
2.特開2010-133323号公報(周知技術を示す文献)
3.国際公開第2007/105659号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2010-242712号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2007-85245号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし請求項4に係る発明(以下「本願発明1」ないし「「本願発明4」という。)は、平成30年7月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された事項により特定された、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
鋼製又はステンレス製の管体からなる主管に、枝管を連設する外方への開口する受圧座面を形成した分岐接続体を設けるガソリン直噴エンジン用燃料レールにおいて、前記主管に当該主管に形成された貫孔に通じる通孔が形成された凹形接続部材を介して分岐接続体を取着する方式であって、前記凹形接続部材は主管にろう付け又は溶接により固着され、該凹形接続部材に分岐接続体の下端部が凹凸嵌合しかつねじ締結方式にて着脱可能に締結されるとともに、分岐接続体の締め付けにより発生する軸力により、前記凹形接続部材と分岐接続体との間に介在させたOリングが締付けられて凹形接続部材と分岐接続体間がシールされる構造となし、前記分岐接続体の硬度を対向する前記枝管よりも低くしたことを特徴とするガソリン直噴エンジン用燃料レール。」

「【請求項2】
鋼製又はステンレス製の管体からなる主管に、枝管を連設する外方への開口する受圧座面を形成した分岐接続体を設けるガソリン直噴エンジン用燃料レールにおいて、前記主管に当該主管に形成された貫孔に通じる通孔が形成された凹形接続部材を介して分岐接続体を取着する方式であって、前記凹形接続部材は主管にろう付け又は溶接により固着され、該凹形接続部材に分岐接続体の下端部が凹凸嵌合しかつボルト締結方式により着脱可能に締結されるとともに、分岐接続体の締め付けにより発生する軸力により、前記凹形接続部材と分岐接続体との間に介在させたOリングが締付けられて凹形接続部材と分岐接続体間がシールされる構造となし、前記分岐接続体の硬度を対向する前記枝管よりも低くしたことを特徴とするガソリン直噴エンジン用燃料レール。」

「【請求項3】
前記請求項1に記載のねじ締結方式の凹形接続部材は、主管の外周部を囲繞して装着する方式のリング状(環状)の凹形接続部材とすることを特徴とする請求項1に記載のガソリン直噴エンジン用燃料レール。」

「【請求項4】
前記請求項2に記載のボルト締結方式の凹形接続部材は、主管の外周部を囲繞して装着する方式のリング状(環状)の凹形接続部材とすることを特徴とする請求項2に記載のガソリン直噴エンジン用燃料レール。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-9672号公報(以下「引用文献1」という。)には、「配管継手装置およびその組付方法」に関して、図面(特に図10)とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)。

(1)引用文献1の記載事項
ア 「【0001】
本発明は、流体を蓄えることのできる容器と配管を接続する配管継手装置およびその組付方法に関するものであり、特に高圧流体の接続に用いて好適な技術であり、例えば蓄圧式燃料噴射装置のコモンレール本体と配管の接続に用いて好適な技術である。」

イ 「【0021】
この実施例1では、まず、蓄圧式燃料噴射装置のシステム構成を図3を参照して説明し、その後で本発明が適用された配管継手装置を図1、図2を参照して説明する。
図3に示す蓄圧式燃料噴射装置は、4気筒のエンジン(例えばディーゼルエンジン:図示しない)に燃料噴射を行うシステムであり、コモンレール1、インジェクタ2、サプライポンプ3、ECU4(エンジン制御ユニット)、EDU5(駆動ユニット)等から構成される。
【0022】
コモンレール1は、インジェクタ2に供給する高圧燃料を蓄圧する蓄圧容器であり、燃料噴射圧に相当するコモンレール圧が蓄圧されるように高圧ポンプ配管6を介して高圧燃料を圧送するサプライポンプ3の吐出口と接続されるとともに、各インジェクタ2へ高圧燃料を供給する複数のインジェクタ配管7が接続されている。なお、コモンレール1と高圧ポンプ配管6の接続構造、およびコモンレール1とインジェクタ配管7の接続構造の詳細は後述する。」

ウ 「【0030】
[実施例1の特徴]
コモンレール1は、内部に超高圧の燃料を蓄えるパイプ形状を呈するコモンレール本体20に、高圧ポンプ配管6およびインジェクタ配管7等を接続するための配管継手装置21を設けたものである。また、コモンレール本体20には、配管継手装置21の他に、プレッシャリミッタ10、減圧弁11、圧力センサ15等を取り付けるための機能部品接続部22が設けられている。
なお、コモンレール本体20は、図3に示すものではなく、安価なパイプ材で構成し、そのパイプ材の軸方向に多数の配管継手装置21を設けて低コスト化を図ったものであっても良い。
【0031】
本実施例の配管継手装置21を図1、図2を参照して説明する。
配管継手装置21は、コモンレール本体20(容器に相当する)に溶接によって固定される接合ネジ部材23と、この接合ネジ部材23にねじ込まれて固定される継手部材24とを備えるものであり、継手部材24に配管(高圧ポンプ配管6、インジェクタ配管7等:以下、配管6、7と称す)が取り付けられる構造を採用している。
【0032】
コモンレール本体20には、中心孔25の径方向に複数の内外貫通孔26が形成されている。この複数の内外貫通孔26は、コモンレール本体20の軸方向に適切な間隔を隔てて穴開け加工されたものである。各内外貫通孔26の外側は、コモンレール本体20の側面に形成された第1平面27において開口する。
【0033】
接合ネジ部材23は、内外貫通孔26より大径の挿入穴28を有したリング形状を呈するものであり、その内周面に第1ネジ29(雌ネジ)が形成されている。この接合ネジ部材23は、挿入穴28の中心と、内外貫通孔26とがほぼ一致する位置で、コモンレール本体20の第1平面27に抵抗溶接によって固定されたものである。
【0034】
継手部材24は、一端に接合ネジ部材23の挿入穴28内にねじ込まれる挿入部31が形成され、他端に配管(高圧ポンプ配管6、インジェクタ配管7)が取り付けられる配管接続部32が形成されたものであり、挿入部31と配管接続部32の中間部に挿入部31を挿入穴28の内部にネジ込むための大径の六角ボルト部33が形成されている。
また、継手部材24の中心には、内外貫通孔26と、配管6、7の管内通路(高圧ポンプ配管6の管内通路6a、インジェクタ配管7の管内通路7a)とを連通させるための流体通路孔34が貫通して形成されている。
【0035】
挿入部31の外周面には、接合ネジ部材23の第1ネジ29に螺合する第2ネジ35(雄ネジ)が形成されており、第2ネジ35を第1ネジ29にねじ込むことにより、挿入部31が挿入穴28の奥方へ進入する。
挿入部31の挿入先端面には、コモンレール本体20の第1平面27に一致する第2平面36が形成されている。即ち、挿入部31の先端面には、流体通路孔34の周囲に第2平面36が形成されている。
そして、第2ネジ35を第1ネジ29にねじ込んで挿入部31の先端を挿入穴28の奥方まで押し込むことによって、第2平面36に開口した流体通路孔34と、コモンレール本体20の第1平面27に開口した内外貫通孔26とが連通するとともに、流体通路孔34の周囲の第2平面36が、内外貫通孔26の周囲の第1平面27に押し付けられて本体シール面37(油密面)を形成する。
【0036】
配管接続部32の先端面には、配管6、7の先端に形成された円錐部38が差し込まれる円錐テーパ形状を呈した受圧座面39が形成されており、この受圧座面39の底部で流体通路孔34が開口する。
配管接続部32の外周面には、配管締結ネジ部材41の内周面に形成された雌ネジ41aが螺合する配管取付ネジ42が形成されている。
この配管締結ネジ部材41は、配管6、7の円錐部38の背部の段差43に係止した状態で、配管締結ネジ部材41の雌ネジ41aを配管取付ネジ42にねじ込むことで、配管6、7の円錐部38が、配管接続部32の受圧座面39に押し付けられて配管シール面40(油密面)を形成する。」

エ 「【0037】
[実施例1の効果]
コモンレール1に適用された配管継手装置21は、上述したように、接合ネジ部材23の第1ネジ29に継手部材24の第2ネジ35をねじ込んで、挿入部31の先端を挿入穴28の奥方まで押し込むことによって、第2平面36に開口した流体通路孔34と第1平面27に開口した内外貫通孔26が連通するとともに、流体通路孔34の周囲の第2平面36が、内外貫通孔26の周囲の第1平面27と一致して本体シール面37を形成するものである。
このように、コモンレール本体20における本体シール面37は、コモンレール本体20の第1平面27と、挿入部31の第2平面36とが押し付けられて形成される構造であるため、接合ネジ部材23とコモンレール本体20の取付位置が多少ずれても、本体シール面37において高いシール性を保持できる。
【0038】
このため、コモンレール1に適用された配管継手装置21は次の効果を得ることができる。
(1)コモンレール本体20と接合ネジ部材23のそれぞれの部品精度を上げる必要がない。言い換えると、コモンレール本体20と接合ネジ部材23の部品精度を下げることができる。この結果、コモンレール本体20と接合ネジ部材23の部品コストを下げることができる。
(2)コモンレール本体20と接合ネジ部材23の取付位置の精度を上げる必要がない。このため、高価なレーザ溶接を用いる必要がなく、安価な抵抗溶接でコモンレール本体20と接合ネジ部材23を溶接できる。この結果、コモンレール本体20と接合ネジ部材23の接合に要するコストを下げることができる。
【0039】
(3)コモンレール本体20は、超高耐圧が要求されるために中炭素鋼以上の硬度の材料によって構成される要求がある。中炭素鋼以上の硬度の材料では抵抗溶接はできるがレーザ溶接は困難である。しかし、本発明によって抵抗溶接でコモンレール本体20と接合ネジ部材23の溶接ができるため、超高耐圧に適した中炭素鋼以上の硬度の材料を用いることができる。
(4)接合ネジ部材23の内部には、流体通路孔34が形成されるのみで、従来技術のように配管J3 や配管延長筒J5 (符号、図14?図16参照)が挿通されない構造である。このため、配管締結ネジ部材41のサイズを小さくできる。このため、配管締結ネジ部材41のサイズを、例えばM12のネジサイズにしても、接合ネジ部材23の肉厚を十分に確保でき、接合ネジ部材23の強度低下を招かない。」

オ 「【0062】
図10を参照して実施例6を説明する。
上記の実施例4、5では、継手部材24にオリフィス45を設ける例を示した。
これに対し、この実施例6は、コモンレール本体20の第1平面27と、継手部材24の第2平面36との間にオリフィスプレート61(パッキングプレートに相当する)を挟み付けたものである。このオリフィスプレート61は、中央に貫通穴が形成された円板部材であり、この実施例の貫通穴は、継手部材24の流体通路孔34と、コモンレール本体20の内外連通孔26の連通機能の他に、この実施例ではオリフィス45の機能を果たすように小径に設けられている。このように、オリフィス45が継手部材24とは別体のオリフィスプレート61に形成されることにより、オリフィス45の加工が容易になり、生産性が向上する。
【0063】
また、オリフィスプレート61は、第1平面27と第2平面36の間のシールリングの機能を果たすものであり、強い力が加わると変形可能な材料(例えば、銅など組成変形が容易な金属)より設けられるのが好ましい。オリフィスプレート61は、コモンレール本体20に接合された接合ネジ部材23の内部に組み付けられた後、継手部材24の第2ネジ35が接合ネジ部材23の第1ネジ29にねじ込まれて、第1平面27とオリフィスプレート61の一方の面(図10中、下面)とが押し付けられるとともに、第2平面36とオリフィスプレート61の他方の面(図10中、上面)とが押し付けられることにより、コモンレール本体20と継手部材24の間を確実にシールすることができる。
このようなシール構造を採用することにより、第1平面27と、第2平面36の平面精度が低くても、コモンレール本体20と継手部材24の間において高いシール性を確保でき、上記「実施例1の効果」で説明した(1)?(4)と同様の効果を得ることができる。」

カ 「【0067】
[変形例]
上記の実施例では、インジェクタ配管7に接続される継手部材24にオリフィス45を設ける例を示したが、インジェクタ配管7に接続される継手部材24であってもオリフィス45を設けなくても良い。
上記の実施例では、コモンレール本体20(容器)と接合ネジ部材23の接合手段として抵抗溶接を例に示したが、接合手段は限定されるものではなく、コモンレール本体20(容器)と接合ネジ部材23を接合可能であれば、他の接合手段(例えば、ろう付け等)を用いても良い。
【0068】
上記の実施例では、コモンレール本体20と配管6、7との接続を行う配管継手装置21に本発明を適用する例を示したが、他の容器(例えば、冷凍サイクルを構成する構成部品)と配管(例えば、冷媒配管)との接続箇所に本発明を適用しても良い。もちろん、配管を流れる流体は、液体燃料に限定されるものではなく、他の液体や気体であっても良い。
コモンレール本体20(容器)と継手部材24との間にパッキング等のシール部材を配置して、コモンレール本体20(容器)と継手部材24との間をシールするように設けても良い。」

キ 上記オ及び図10から、実施例6においては、コモンレール本体20の第1平面27と、継手部材24の第2平面36との間にオリフィスプレート61が挟み付けられていることが分かる。そして、コモンレール本体20に当該コモンレール本体20に形成された内外貫通孔26に通じるオリフィス45が形成されたオリフィスプレート61を挟み接合ネジ部材23を介して継手部材24が取り付けられていることが分かる。

(2)引用発明
上記記載及び認定事項並びに図面(特に図10)の図示内容からみて、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「鋼製の管体からなるコモンレール本体20に、インジェクタ配管7を連設する外方への開口する受圧座面39を形成した継手部材24を設けるディーゼルエンジン用コモンレール1において、前記コモンレール本体20に当該コモンレール本体20に形成された内外貫通孔26に通じるオリフィス45が形成されたオリフィスプレート61を挟み接合ネジ部材23を介して継手部材24を取着する方式であって、前記接合ネジ部材23はコモンレール本体20にろう付け又は抵抗溶接により接合され、該接合ネジ部材23に継手部材24がねじ締結方式にて着脱可能に締結される構造となしたディーゼルエンジン用コモンレール1。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-133323号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面(特に、図9を参照。)とともに次の事項が記載されている。

(1)引用文献2の記載

「【0042】
分岐流路115pとインジェクタ流路415pの接続は、カシメ加工によって分岐流路115pの端部に形成された受圧座面126に対して、インジェクタパイプ410の端部に形成された押圧座面416を押し付けることによって実現されている。さらに、この接続は、受圧座面126と押圧座面416の少なくとも一方を塑性変形させることによって外部から封止されている。
【0043】
ただし、インジェクタパイプ410の端部に形成された押圧座面416の側が主として塑性変形を起こし、コモンレール本体110の側が殆ど塑性変形を起こさないようにインジェクタパイプ410とコモンレール本体110の材質を選択することが好ましい。こうすれば、インジェクタパイプ410を交換しても、コモンレール本体110は、再利用可能だからである。」

(2)引用文献2記載事項
上記記載及び図面(特に図9)の図示内容からみて、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

「コモンレール本体110の側がほとんど塑性変形を起こさないようにインジェクタパイプ410とコモンレール本体110の材質を選択すること。」

3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2007/105659号(以下「引用文献3」という。)には、図面(特に図3)とともに次の事項が記載されている。

(1)引用文献3の記載

「[0052] 管径Dが9.0mm、管内径Dinが4.0mm、肉厚tが2.5mmの厚肉細径鋼管(t/D=0.278)(材質:EN E355)を用い、該鋼管の開口端部を面取り加工した後、図15に示す頭部成形方法により芯金11-4の付け根部をテーパー状に大径としたパンチ部材11を採用して図3に示す断面構造の接続頭部を成形した。本実施例における厚肉細径鋼管の管径D、肉厚tに対し、得られた接続頭部の接続頭部端末から前記環状フランジ部背面までの軸方向距離L1、シート面の球体半径R、環状フランジ部外径D1、円錐面の頂角の角度θおよび円錐面の最大径D3はそれぞれL1=4.5mm、R=4.75mm、D1=12mm、θ=56度、D3=9.4mmであって、シート面付近の硬さはHv320であった。
この接続頭部を有する噴射管をシート面付近の硬さがHv280の相手部品に組付けした後に解除した際の相手部品のシート面(受圧座面)の変形を調査するため、締付け荷重25kNで該噴射管を相手部品に締結し、その後解除したところ、シート面に残留する当り深さhは図1に示す接続頭部の場合は25μmであったのに対し、本実施例の接続頭部の場合は15μmと、相手部品のシート面に残留する変形量を40%改善することができた。」

(2)引用文献3記載事項
上記記載及び図面(特に図3)の図示内容からみて、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

「噴射管の硬度を相手部品の硬度よりも大きくすること。」

4 引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-242712号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)引用文献4の記載

ア 「【0002】
従来、車両内において、燃料タンクから供給される燃料を分岐させてエンジンの各筒内に供給するためのフューエルデリバリパイプのシール構造としては、フューエルデリバリパイプと、これに取り付けられる相手側部品(例えば、インジェクタ)との間にOリングを取り付けることによって、フューエルデリバリパイプと相手側部品とのシールをする構成が知られている(特許文献1)。」

イ 「【0028】
中継部品130は、例えばステンレス製で全体として略円筒状をなし、導入部112に接続される第1の端部131と、導入用配管200に接続される第2の端部132と、を備えている。なお、本実施例では、導入部112は特許請求の範囲に記載の「少なくとも一つの接続部」の一例である。
【0029】
中継部品130には、軸方向に沿って内部を貫通する中継流路133が形成されている。また、中継流路133は燃料流路230及び導入路111Aに比べて、小径に設定されている。
【0030】
第1の端部131の外周には、導入部112の内周に形成された導入部雌ねじ112Bと螺合可能な第1の端部側雄ねじ131Aが形成されている。第1の端部131と隣接して、導入部112の外径より一回り小さい径のフランジ部134が形成されている。
【0031】
また、第1の端部131には、例えば金属製のガスケット150が外挿されるようになっており、第1の端部131を導入部112に接続したときに、対向するフランジ部134のフランジ面134Aと導入部112の端面112Aによって、ガスケット150が挟持されることで、中継部品130と、導入部112とのシールがされる構成となっている。なお、本実施例では、フランジ面134A及び端面112Aは特許請求の範囲に記載の「接触面」の一例である。」

(2)引用文献4記載事項1及び2
上記記載からみて、引用文献4には次の事項が記載されている。

「フューエルデリバリパイプと、これに取り付けられる相手側部品との間にOリングを取り付けることによって、フューエルデリバリパイプと相手側部品とのシールをすること。」(以下「引用文献4記載事項1」という。)

「中継部品130と導入部112との間にガスケット150を挟持してシールをすること。」(以下「引用文献4記載事項2」という。)

5 引用文献5
原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-85245号公報(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)引用文献5の記載

「【0019】
図7に示すコモンレール17は、前記図5に示すコモンレール15における筒状スリーブニップル15-3に替えて、本管レール17-1の外周部を囲繞するリング状の継手金具17-3を用いた以外は、図5に示すコモンレール15と実質的に同じ構成となしたもので、本管レール17-1は同じく変態誘起塑性型強度鋼製であって、熱処理により残留オーステナイトを生ぜしめたt/dが0.2?0.35の薄肉細径の本管レール17-1の流通路17-1aの軸方向の周壁部に間隔を保持して外方に開口する周面を受圧座面17-1cとなす分岐孔17-1bを前記流通路17-1aに連通して設け、噴射管17-2側の押圧座面17-2cを本管レール17-1側の受圧座面17-1cに当接係合せしめ、前記本管レール17-1の外嵌固定したリング状の継手金具17-3に螺合するナット17-4を締付けて接続構成したものである。17-2aは流路、17-2bは接続頭部である。」

(2)引用文献5記載事項
上記記載からみて、引用文献5には次の事項(以下「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。

「主管の外周部を囲繞するリング状の継手金具を接続構成に用いること。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「鋼製」は、その機能、構成または技術的意義から見て、本願発明1における「鋼製又はステンレス製」に相当し、以下同様に、「コモンレール本体20」は「主管」に、「インジェクタ配管7」は「枝管」に、「受圧座面39」は「受圧座面」に、「継手部材24」は「分岐接続体」に、「内外貫通孔26」は「貫孔」に、「オリフィス45」は「通孔」に、「抵抗溶接」は「溶接」に、「接合」は「固着」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「ディーゼルエンジン用コモンレール1」と、本願発明1における「ガソリン直噴エンジン用燃料レール」とは、「内燃機関用燃料レール」という限りにおいて一致する。
また、引用発明における「接合ネジ部材23」と、本願発明1における「凹形接続部材」とは、「接続部材」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
〔一致点〕
「鋼製又はステンレス製の管体からなる主管に、枝管を連設する外方への開口する受圧座面を形成した分岐接続体を設ける内燃機関用燃料レールにおいて、前記主管に接続部材を介して分岐接続体を取着する方式であって、前記接続部材は主管にろう付け又は溶接により固着され、該接続部材に分岐接続体がねじ締結方式にて着脱可能に締結される構造となした内燃機関用燃料レール。」

〔相違点〕
〔相違点1〕
本願発明1は「ガソリン直噴エンジン用燃料レール」であるのに対し、引用発明は「ディーゼルエンジン用コモンレール1」である点。

〔相違点2〕
本願発明1は、「当該主管に形成された貫孔に通じる通孔が形成された凹形接続部材を介して分岐接続体を取着する方式であり、該凹形接続部材に分岐接続体の下端部が凹凸嵌合しかつねじ締結方式にて着脱可能に締結される」ものであるのに対し、引用発明は、コモンレール本体20に形成された内外貫通孔26「に通じるオリフィス45が形成されたオリフィスプレート61を挟み」「接合ネジ部材23」を介して継手部材24を取着する方式であり、「該接合ネジ部材23」に「継手部材24」がねじ締結方式にて着脱可能に締結されるものである点。

〔相違点3〕
本願発明1は「分岐接続体の締め付けにより発生する軸力により、前記凹形接続部材と分岐接続体との間に介在させたOリングが締付けられて凹形接続部材と分岐接続体間がシールされる構造となし」たものであるのに対し、引用発明はOリングを備えていない点。

〔相違点4〕
本願発明1は「前記分岐接続体の硬度を対向する前記枝管よりも低くした」ものであるのに対し、引用発明はそのように特定されていない点。

事案に鑑みて、上記相違点2について検討する。
引用発明の「当該コモンレール本体20に形成された内外貫通孔26に通じるオリフィス45が形成されたオリフィスプレート61を挟み接合ネジ部材23を介して継手部材24を取着する方式であって」、「該接合ネジ部材23に継手部材24がねじ締結方式にて着脱可能に締結される構造となした」ものを、本願発明1のように、「当該主管に形成された貫孔に通じる通孔が形成された凹形接続部材」を介して分岐接続体を取着する方式であり、「該凹形接続部材」に「分岐接続体の下端部が凹凸嵌合し」かつねじ締結方式にて着脱可能に締結されるものとすることには動機付けがなく、このようにすることは当業者といえども容易とはいえない。
予備的に、引用発明の「オリフィスプレート61」と「接合ネジ部材23」とを一体化して、「主管に形成された貫孔に通じる通孔が形成された凹形接続部材」とすることができるかどうかについて検討する。引用発明の接合ネジ部材23は、中炭素鋼以上の硬度の材料からなるコモンレール本体に溶接(抵抗溶接)によって固定されるものであるから、技術常識に鑑みれば、コモンレール本体と同様に中炭素鋼以上の硬度の材料からなるものである(引用文献1の段落【0031】及び【0039】を参照。)が、引用発明のオリフィスプレート61は、第1平面27と第2平面36の間のシールリングの機能を果たすものであり、強い力が加わると変形可能な材料(例えば、銅など組成変形(審決注:「塑性変形」の誤記と認める。)が容易な金属)より設けられるのが好ましいものである(引用文献1の段落【0063】を参照。)。
そうすると、中炭素鋼以上の硬度の材料からなる接合ネジ部材23と、強い力が加わると変形可能な銅などの材料からなるオリフィスプレート61は異なる材料からなるものであるから、材料が異なる両者を一体とする動機付けがあるとはいえない。
したがって、引用発明に基いて相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは当業者といえども困難である。
また、引用発明において、引用文献2記載事項ないし引用文献5記載事項を適用しても、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を得ることはできない。
また、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は、本願の出願時において周知の技術でもない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本願発明1は、原査定の引用文献1ないし5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2について
本願発明2と引用発明とを対比すると、引用発明における「鋼製」は、その機能、構成または技術的意義から見て、本願発明2における「鋼製又はステンレス製」に相当し、以下同様に、「コモンレール本体20」は「主管」に、「インジェクタ配管7」は「枝管」に、「受圧座面39」は「受圧座面」に、「継手部材24」は「分岐接続体」に、「内外貫通孔26」は「貫孔」に、「オリフィス45」は「通孔」に、「抵抗溶接」は「溶接」に、「接合」は「固着」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「ディーゼルエンジン用コモンレール1」と、本願発明2における「ガソリン直噴エンジン用燃料レール」とは、「内燃機関用燃料レール」という限りにおいて一致する。
また、引用発明における「接合ネジ部材23」と、本願発明2における「凹形接続部材」とは、「接続部材」という限りにおいて一致する。
また、引用発明における「ねじ締結方式」と、本願発明2における「ボルト締結方式」とは、「ねじを利用した締結方式」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
〔一致点〕
「鋼製又はステンレス製の管体からなる主管に、枝管を連設する外方への開口する受圧座面を形成した分岐接続体を設ける内燃機関用燃料レールにおいて、前記主管に接続部材を介して分岐接続体を取着する方式であって、前記接続部材は主管にろう付け又は溶接により固着され、該接続部材に分岐接続体がねじを利用した締結方式にて着脱可能に締結される構造となした内燃機関用燃料レール。」

〔相違点〕
〔相違点5〕
本願発明2は「ガソリン直噴エンジン用燃料レール」であるのに対し、引用発明は「ディーゼルエンジン用コモンレール1」である点。

〔相違点6〕
本願発明2は「前記主管に当該主管に形成された貫孔に通じる通孔が形成された凹形接続部材を介して分岐接続体を取着する方式」であって、「該凹形接続部材に分岐接続体の下端部が凹凸嵌合しかつボルト締結方式により着脱可能に締結される」ものであるのに対し、引用発明は、前記コモンレール本体20に「当該コモンレール本体20に形成された内外貫通孔26に通じるオリフィス45が形成されたオリフィスプレート61を挟み」「接合ネジ部材23」を介して継手部材24を取着する方式であって、「該接合ネジ部材23」に「継手部材24」が「ねじ締結方式」にて着脱可能に締結されるものである点。

〔相違点7〕
本願発明2は「分岐接続体の締め付けにより発生する軸力により、前記凹形接続部材と分岐接続体との間に介在させたOリングが締付けられて凹形接続部材と分岐接続体間がシールされる構造となし」たものであるのに対し、引用発明はOリングを備えていない点。

〔相違点8〕
本願発明2は「前記分岐接続体の硬度を対向する前記枝管よりも低くした」ものであるのに対し、引用発明はそのように特定されていない点。

事案に鑑みて、上記相違点6について検討する。
引用発明の「前記コモンレール本体20に当該コモンレール本体20に形成された内外貫通孔26に通じるオリフィス45が形成されたオリフィスプレート61を挟み接合ネジ部材23を介して継手部材24を取着する方式」であって、「該接合ネジ部材23に継手部材24がねじ締結方式にて着脱可能に締結される」ものを、本願発明2のように、前記主管に「当該主管に形成された貫孔に通じる通孔が形成された凹形接続部材」を介して分岐接続体を取着する方式であって、「該凹形接続部材」に「分岐接続体の下端部が凹凸嵌合」しかつ「ボルト締結方式」により着脱可能に締結されるものとすることには動機付けがなく、このようにすることは当業者といえども容易とはいえない。
したがって、引用発明に基いて相違点6に係る本願発明2の発明特定事項とすることは当業者といえども困難である。
また、引用発明において、引用文献2記載事項ないし引用文献5記載事項を適用しても、相違点6に係る本願発明2の発明特定事項を得ることはできない。
また、上記相違点6に係る本願発明2の発明特定事項は、本願の出願時において周知の技術でもない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明2は、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本願発明2は、原査定の引用文献1ないし5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明3について
本願発明3は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものである。
したがって、本願発明3は、本願発明1と同様に、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、本願発明3は、原査定の引用文献1ないし5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本願発明4について
本願発明4は、本願発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものである。
したがって、本願発明4は、本願発明2と同様に、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、本願発明4は、原査定の引用文献1ないし5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 まとめ
以上のように、本願発明1ないし本願発明4は、原査定の引用文献1ないし5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。














 
審決日 2020-01-07 
出願番号 特願2014-228467(P2014-228467)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 麻乃  
特許庁審判長 渋谷 善弘
特許庁審判官 金澤 俊郎
鈴木 充
発明の名称 ガソリン直噴エンジン用燃料レール  
代理人 押田 良隆  

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