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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G08C 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G08C |
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管理番号 | 1358625 |
異議申立番号 | 異議2018-700834 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-10-11 |
確定日 | 2019-12-03 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6311903号発明「液分析用スマートセンサにおけるインテリジェンス部の再利用方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6311903号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、〔5-8〕について訂正することを認める。 特許第6311903号の請求項1-8に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第6311903号の請求項1-8に係る特許についての出願は、平成24年1月10日にされた特許出願(特願2012-2129)の一部を平成29年2月8日に新たな特許出願(特願2017-20819)としたものであって、平成30年3月30日にその特許権の設定登録がされ、平成30年4月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年10月11日に特許異議申立人根本利三郎より請求項1-8に対して特許異議の申立てがされ、平成30年12月20日付けで取消理由が通知され、平成31年3月5日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成31年4月25日に特許異議申立人から意見書が提出され、令和元年6月28日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、令和元年8月30日に意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、令和元年10月9日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。 2 訂正の適否 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。 訂正事項1 特許権者は、特許請求の範囲の請求項1における「液分析用スマートセンサ」を、「運用状態においてケーブル手段を介して分散型制御システムに接続される液分析用スマートセンサ」(下線は訂正箇所。以下同様。)に訂正する。また、請求項2-4も同様に訂正する。 訂正事項2 特許権者は、特許請求の範囲の請求項1における「前記第1の液分析センサから取得した測定結果をディジタル信号に変換するデータ変換部とこのディジタル信号を演算処理する制御部と前記第1の液分析センサの校正値を格納するメモリとを備え、前記インテリジェンス部に形成され」を、「前記第1の液分析センサから取得した測定結果をディジタル信号に変換するデータ変換部とこのディジタル信号を演算処理する制御部と前記第1の液分析センサの校正値を格納するメモリとインターフェイス部と前記ケーブル手段を介して給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部とを備える前記インテリジェンス部に形成され」に訂正する。また、請求項2-4も同様に訂正する。 訂正事項3 特許権者は、特許請求の範囲の請求項1における「第4のステップと、を含む」を、「第4のステップと、前記インターフェイス部が、前記第4のステップにおいて演算処理された前記測定結果に基づくディジタル信号を、前記ケーブル手段を介して前記分散型制御システムへと出力する第5のステップと、を含む」に訂正する。また、請求項2-4も同様に訂正する。 訂正事項4 特許権者は、特許請求の範囲の請求項4における「変換器側から給電されるエレクトロニクス」を、「変換器側から給電される前記電源部から電源電圧が供給される前記エレクトロニクス」に訂正する。 訂正事項5 特許権者は、特許請求の範囲の請求項5における「単一の液分析センサから構成されるセンサ部から取得した測定結果に基づいてディジタル信号を出力する液分析用スマートセンサ」を、「運用状態においてケーブル手段を介して分散型制御システムに接続されて単一の液分析センサから構成されるセンサ部から取得した測定結果に基づいてディジタル信号を出力する液分析用スマートセンサ」に訂正する。また、請求項6-8も同様に訂正する。 訂正事項6 特許権者は、特許請求の範囲の請求項5における「コネクタ手段と、を備え、」を、「コネクタ手段と、インターフェイス部と、前記ケーブル手段を介して給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部とを備え、」に訂正する。また、請求項6-8も同様に訂正する。 訂正事項7 特許権者は、特許請求の範囲の請求項5における「前記インテリジェンス部の前記データ変換部がディジタル信号として変換し、新たに結合された前記第2の液分析センサから前記コネクタ手段を介して取得した測定結果」を、「校正された前記インテリジェンス部の前記データ変換部がディジタル信号として変換し、新たに結合された前記第2の液分析センサから前記コネクタ手段を介して取得した測定結果」に訂正する。また、請求項6-8も同様に訂正する。 訂正事項8 特許権者は、特許請求の範囲の請求項5における「演算処理し、」を、「演算処理し、 前記インターフェイス部は、前記制御部によって演算処理された前記測定結果に基づくディジタル信号を、前記ケーブル手段を介して前記分散型制御システムへと出力し、」に訂正する。また、請求項6-8も同様に訂正する。 訂正事項9 特許権者は、特許請求の範囲の請求項8における「ケーブル手段」を、「前記ケーブル手段」に訂正する。 訂正事項10 特許権者は、特許請求の範囲の請求項8における「この変換器側から給電されるエレクトロニクス」を、「この変換器側から給電される前記電源部から電源電圧が供給される前記エレクトロニクス」に訂正する。 また、訂正前の請求項1-4は、請求項2-4が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあり、また訂正前の請求項5-8は、請求項6-8が、訂正の請求の対象である請求項5の記載を引用する関係にあるから、訂正前においてそれぞれ一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1,5はいずれも、訂正前の「液分析用スマートセンサ」を「運用状態においてケーブル手段を介して分散型制御システムに接続され」るものに限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 次に、明細書の発明の詳細な説明には、 「【0002】 図3は、従来の液分析用スマートセンサの構成例を示す機能ブロック図である。・・・ 【0003】 インテリジェンス部20で処理されたディジタルデータは、ケーブル手段30を介して変換器40に入力され・・・。変換器40は、・・・DCS(分散型制御システム)50と通信する。」 「【0027】 図2は、コネクタ手段107および108を、コネクタ手段11および31に係合させた液分析用スマートセンサの運用状態を示す機能ブロック図である。この運用状態では、図3に示した従来構成の液分析用スマートセンサの構成と同一構成となる。」 とあり、「運用状態においてケーブル手段を介して分散型制御システムに接続され」る「液分析用スマートセンサ」は明細書に記載されているものであって、当該訂正事項は新規事項の追加に該当せず、また訂正後の発明が訂正前の発明の課題に含まれない新たな課題を解決するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項2は、訂正前の請求項1において、何が「データ変換部」、「制御部」、及び「メモリ」を備えているのかが不明瞭であった記載について、「インテリジェンス部」がこれらを備えていることを明確にし、さらに、「インテリジェンス部」が「インターフェイス部」と「前記ケーブル手段を介して給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部」とを備えることを限定する訂正であるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 次に、明細書の発明の詳細な説明には、 「【0005】 図3(B)は、エレクトロニクスで実現されるインテリジェンス部20内部の機能構成を示している。液分析センサ10の測定結果は、・・・データ変換部22でディジタル信号に変換される。 【0006】 変換されたディジタル信号は、CPUによる制御・データ処理部23で演算処理等が実行され、インターフェイス部24を介して変換器40に出力する。制御・データ処理部23が利用するアプリケーションプログラムや液分析センサ10の校正値は、メモリ25に保持される。変換器40側から給電される電源部26は、インテリジェンス部20を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する。」 「【0025】 図1(A)は、基本的なシステム構成を示している。本発明におけるインテリジェンス部100の機能構成は、図1(B)に示す機能ブロック101乃至106よりなる。これら要素は、図3(B)に示した要素21乃至26に対応し、同一機能を備える。」 とあり、「インテリジェンス部」が「データ変換部」、「制御部」、「メモリ」、「インターフェイス部」及び「前記ケーブル手段を介して給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部」を備えることは明細書に記載されているものであって、当該訂正事項は新規事項の追加に該当せず、また訂正後の発明が訂正前の発明の課題に含まれない新たな課題を解決するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 訂正事項3,8は、「前記インターフェイス部が、前記第4のステップにおいて演算処理された前記測定結果に基づくディジタル信号を、前記ケーブル手段を介して前記分散型制御システムへと出力する第5のステップ」を含むこと、もしくは「前記インターフェイス部」が「前記制御部によって演算処理された前記測定結果に基づくディジタル信号を、前記ケーブル手段を介して前記分散型制御システムへと出力」するものであることを限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 次に、明細書の発明の詳細な説明には、 「【0003】 インテリジェンス部20で処理されたディジタルデータは、ケーブル手段30を介して変換器40に入力され・・・。変換器40は、・・・DCS(分散型制御システム)50と通信する。」 「【0006】 変換されたディジタル信号は、CPUによる制御・データ処理部23で演算処理等が実行され、インターフェイス部24を介して変換器40に出力する。・・・」 とあり、「インターフェイス部」が、「ディジタル信号を、」「ケーブル手段を介して」「分散型制御システムへと出力する」ことは明細書に記載されているものであって、当該訂正事項は新規事項の追加に該当せず、また訂正後の発明が訂正前の発明の課題に含まれない新たな課題を解決するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 訂正事項4,10は、「変換器側から給電されるエレクトロニクス」を「前記電源部から電源電圧が供給される」ものに限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 次に、明細書の発明の詳細な説明には、 「【0006】 ・・・変換器40側から給電される電源部26は、インテリジェンス部20を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する。」 とあり、「エレクトロニクス」に「前記電源部から電源電圧が供給される」ことは明細書に記載されているものであって、当該訂正事項は新規事項の追加に該当せず、また訂正後の発明が訂正前の発明の課題に含まれない新たな課題を解決するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 オ 訂正事項6は、「インテリジェンス部」が「インターフェイス部」と「前記ケーブル手段を介して給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部」とを備えることを限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 次に、上記イで述べたように、「インテリジェンス部」が「インターフェイス部」及び「前記ケーブル手段を介して給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部」を備えることは明細書に記載されているものであって、当該訂正事項は新規事項の追加に該当せず、また訂正後の発明が訂正前の発明の課題に含まれない新たな課題を解決するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 カ 訂正事項7は、制御部の演算処理に関し、訂正前に「前記インテリジェンス部の前記データ変換部がディジタル信号として変換し、新たに結合された前記第2の液分析センサから前記コネクタ手段を介して取得した測定結果」に基づくとされていたのを、「校正された」「前記インテリジェンス部の前記データ変換部がディジタル信号として変換し、新たに結合された前記第2の液分析センサから前記コネクタ手段を介して取得した測定結果」に基づくと限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 次に、明細書の発明の詳細な説明には、 「【0013】 ・・・前記第3のステップにて校正された前記インテリジェンス部の前記データ変換部がディジタル信号として変換した前記第2の液分析センサから前記コネクタ手段を介して取得した測定結果に基づき、・・・」 とあり、「校正された」「インテリジェンス部」が用いられることは明細書に記載されているものであって、当該訂正事項は新規事項の追加に該当せず、また訂正後の発明が訂正前の発明の課題に含まれない新たな課題を解決するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 キ 訂正事項9は、訂正前のディジタル信号を変換器に送信する「ケーブル手段」を「前記ケーブル手段」として、引用する請求項5のケーブル手段に限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 次に、上記ウで述べたように、請求項5の「ケーブル手段を介して」「ディジタル信号」が「変換器40に入力され」ることは明細書に記載されているものであって、当該訂正事項は新規事項の追加に該当せず、また訂正後の発明が訂正前の発明の課題に含まれない新たな課題を解決するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)小括 したがって、本件訂正請求による訂正事項1ないし訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1,3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。また、訂正後の請求項2,3,6,7は請求項1もしくは5を引用するものであって、それ自体の記載は訂正されていない。 なお、本件異議申立事件においては訂正前の請求項1-8について特許異議申立ての対象とされていることから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 したがって、訂正後の請求項〔1-4〕、〔5-8〕について訂正を認める。 3 訂正後の請求項1-8に係る発明 本件訂正請求による訂正後の請求項1-8に係る発明(以下、それぞれを請求項の番号にしたがって「本件訂正発明1」のようにいう。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 運用状態においてケーブル手段を介して分散型制御システムに接続される液分析用スマートセンサにおけるインテリジェンス部の再利用方法において、 劣化により第1の液分析センサを廃棄する場合、前記第1の液分析センサから取得した測定結果をディジタル信号に変換するデータ変換部とこのディジタル信号を演算処理する制御部と前記第1の液分析センサの校正値を格納するメモリとインターフェイス部と前記ケーブル手段を介して給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部とを備える前記インテリジェンス部に形成されこのインテリジェンス部と前記第1の液分析センサとの結合部を着脱可能にするコネクタ手段を介して、前記インテリジェンス部と前記第1の液分析センサとが着脱可能に一体結合される第1の液分析用スマートセンサにおける、前記コネクタ手段と前記第1の液分析センサの係合を分離し、前記第1の液分析用スマートセンサから前記第1の液分析センサを取り外す第1のステップと、 この第1の液分析センサの代わりに、前記取り外されたインテリジェンス部の前記コネクタ手段と電気的仕様が同一仕様である第2の液分析センサを前記コネクタ手段に係合させ、前記第2の液分析センサと前記インテリジェンス部とを一体結合させて新たに第2の液分析用スマートセンサを形成する第2のステップと、 前記第2のステップにて新たに形成された第2の液分析用スマートセンサにおける前記第2の液分析センサの校正を実行し、前記インテリジェンス部の前記メモリに格納されていた、前記第1のステップにて分離された前記第1の液分析センサの校正値を、前記第2のステップにて新たに結合された前記第2の液分析センサの校正値に更新する第3のステップと、 前記第3のステップにて校正された前記インテリジェンス部の前記データ変換部がディジタル信号として変換した前記第2の液分析センサから前記コネクタ手段を介して取得した測定結果に基づき、前記インテリジェンス部の前記制御部が演算処理する第4のステップと、 前記インターフェイス部が、前記第4のステップにおいて演算処理された前記測定結果に基づくディジタル信号を、前記ケーブル手段を介して前記分散型制御システムへと出力する第5のステップと、 を含むことを特徴とする液分析用スマートセンサにおけるインテリジェンス部の再利用方法。 【請求項2】 前記第1の液分析センサと前記第2の液分析センサとは互いに同じ種類の液分析センサであることを特徴とする、 請求項1記載の液分析用スマートセンサのインテリジェンス部の再利用方法。 【請求項3】 前記第1の液分析センサと前記第2の液分析センサとは互いに種類の異なる液分析センサであることを特徴とする、 請求項1記載の液分析用スマートセンサのインテリジェンス部の再利用方法。 【請求項4】 前記インテリジェンス部は、前記ケーブル手段を介し、前記制御部により演算処理された前記センサ部の測定結果に基づくディジタル信号が送信される変換器側から給電される前記電源部から電源電圧が供給される前記エレクトロニクスにより構成されることを特徴とする、 請求項1?3のいずれかに記載の液分析用スマートセンサのインテリジェンス部の再利用方法。 【請求項5】 運用状態においてケーブル手段を介して分散型制御システムに接続されて単一の液分析センサから構成されるセンサ部から取得した測定結果に基づいてディジタル信号を出力する液分析用スマートセンサにおける、前記センサ部との結合部を着脱可能にするコネクタ手段を介して一体結合して構成する、スマートセンサ用のインテリジェンス部であって、 前記センサ部を構成する第1の液分析センサから取得した測定結果を前記ディジタル信号に変換するデータ変換部と、 前記ディジタル信号に基づき演算処理する制御部と、 前記第1の液分析センサの校正値を格納するメモリと、 前記第1の液分析センサとの係合に基づき前記センサ部と自機とを着脱可能に一体結合して第1の液分析スマートセンサを形成するコネクタ手段と、 インターフェイス部と、 前記ケーブル手段を介して給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部と を備え、 廃棄される前記第1の液分析センサに代わり、新たに前記センサ部を構成する第2の液分析センサが前記コネクタ手段に係合される場合、前記コネクタ手段と前記第1の液分析センサの係合が分離されて前記第1の液分析用スマートセンサから前記センサ部が取り外され、前記コネクタ手段とこのコネクタ手段の電気的仕様と同一仕様である前記第2の液分析センサのコネクタ手段との係合に基づき、自機と前記センサ部とが着脱可能に結合されて第2の液分析用スマートセンサが構成され、 前記制御部は、前記センサ部を構成する前記第2の液分析センサの校正を実行して前記メモリに格納されている、分離された前記第1の液分析センサの校正値を新たに結合された前記第2の液分析センサの校正値に更新し、 前記制御部は、さらに、校正された前記インテリジェンス部の前記データ変換部がディジタル信号として変換し、新たに結合された前記第2の液分析センサから前記コネクタ手段を介して取得した測定結果に基づいて演算処理し、 前記インターフェイス部は、前記制御部によって演算処理された前記測定結果に基づくディジタル信号を、前記ケーブル手段を介して前記分散型制御システムへと出力し、 前記第2の液分析用スマートセンサを構成する自機と前記センサ部との結合部が前記コネクタ手段により着脱可能であることを特徴とするスマートセンサ用のインテリジェンス部。 【請求項6】 前記第1の液分析センサと前記第2の液分析センサとは、互いに同じ種類の液分析センサであることを特徴とする 請求項5に記載のスマートセンサ用のインテリジェンス部。 【請求項7】 前記第1の液分析センサと前記第2の液分析センサとは、互いに種類の異なる液分析センサであることを特徴とする、 請求項5に記載のスマートセンサ用のインテリジェンス部。 【請求項8】 前記制御部により演算処理された前記センサ部の測定結果に基づくディジタル信号は前記ケーブル手段を介して変換器に送信され、この変換器側から給電される前記電源部から電源電圧が供給される前記エレクトロニクスにより構成されることを特徴とする、 請求項5?7のいずれかに記載のスマートセンサ用のインテリジェンス部」 4 当審の判断 (1)取消理由について ア 取消理由の概要 当審が平成30年12月20日付けの取消理由書、及び令和元年6月28日付けの取消理由書(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 取消理由1:本件特許は、特許請求の範囲の請求項1,4及び請求項1を引用する請求項2,3の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由2:本件特許の請求項1-8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 引用文献一覧 甲第3号証:株式会社堀場製作所、「マルチプローブ W-20シリーズ W22.23 取扱説明書」、第1版、2000年10月発行(以下、「甲3」という。) 甲第1号証:特開2010-151729号公報(以下、「甲1」という。) イ 取消理由1についての判断 上記取消理由1は、具体的には訂正前の特許請求の範囲の記載に関し、 a.請求項1において、「メモリ」、「データ変換部」及び「制御部」を備えるのが何であるのか(「インテリジェンス部」が備えるのか、それ以外のものが備えるのか)が不明である。 b.請求項4において、 「前記インテリジェンス部は、前記ケーブル手段を介し、・・・」 とあるが、引用する請求項1-3には「ケーブル手段」の記載は無く、上記の「前記ケーブル手段」が何を指すのかが不明確である。 というものであるが、訂正によって、請求項1の記載は「データ変換部」と「制御部」と「メモリ」と「を備える前記インテリジェンス部」とされ、また請求項1に「ケーブル手段」が追加されたことにより、上記理由a,bはいずれも解消された。 ウ 取消理由2についての判断 (ア)引用発明 a 甲3の記載(第6ページ「1.2システム構成」、第10-11ページ「2.2.2センサプローブの名称」、第18ページ「センサの取り付け位置」、第19ページ「4.」、第22ページ「センサプローブ(メモリバックアップ用)」、第32ページ「データの測定」)から、甲3のpH/ORPセンサやDOセンサなどのセンサと、センサが着脱自在に一体結合されるコネクタを備えるセンサプローブと、計器本体とを含むシステムにおいて、センサプローブが計器本体から分離した状態でデータの測定が可能なものであることが読み取れる。 b 甲3の記載(第93ページ「●DOセンサのメンテナンス」)から、(センサプローブに取り付けられている)センサが寿命を超えた時に、新しいセンサに交換する方法が読み取れる。 c 甲3の第43ページ「参考」には、メモリされた測定データの呼び出しに関し、「・データの呼び出しは、センサプローブと通信することにより呼び出しているため…」とあり、センサプローブ側からメモリに保存されたデータが呼び出されていることが読み取れる。ここで技術常識をふまえると、データをメモリに保存するためには通常、データのディジタル信号への変換が行われ、また呼び出し(送信)の際には、そのための演算処理が行われるものであるから、甲3のセンサまたはセンサプローブが、データをディジタル信号に変換するデータ変換部、及びディジタル信号を演算処理する制御部を備え、またセンサプローブが上記演算処理されたディジタル信号を出力するインターフェイス部を備えることは明らかといえる。 d 甲3の第22ページ「センサプローブ(メモリバックアップ用)」には、「注意」として「・計器本体接続時は本体側の電池を消費します。」と記載されており、センサプローブが、給電されてセンサプローブに電源電圧を供給する電源部を備えることは明らかといえる。 e 甲3の第51ページ「参考」には、「…校正できないとき、現在の校正データを削除し校正をやりなおしてください。」等とあり、甲3のシステムにおいて校正が実行されると校正データが作成、保存され、また校正のやりなおしの際には現在の校正データが削除されることが読み取れる。 上記aないしeから、甲3には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「pH/ORPセンサやDOセンサなどのセンサと、センサが着脱自在に一体結合されるコネクタを備え、計器本体から分離した状態でデータの測定が可能なセンサプローブと、計器本体とを含むシステムの、センサが寿命を超えた時に、新しいセンサに交換する方法において、 センサまたはセンサプローブが、センサから取得した測定結果をディジタル信号に変換するデータ変換部、及びこのディジタル信号を演算処理する制御部を備え、またセンサプローブがインターフェイス部と、給電されてセンサプローブに電源電圧を供給する電源部とを備え、 校正が実行されると校正データが作成、保存され、また校正のやりなおしの際には現在の校正データが削除され、 インターフェイス部が、上記演算処理されたディジタル信号を出力する方法。」 (イ)対比・検討 a 本件訂正発明1について 上記引用発明と本件訂正発明1とを対比する。 (a)引用発明のシステムは「pH/ORPセンサやDOセンサなどのセンサ」を備えるものであり、また、その「センサプローブ」は「計器本体から分離した状態でデータの測定が可能な」ものであるから、引用発明の「pH/ORPセンサやDOセンサなどのセンサと、センサが着脱自在に一体結合されるコネクタを備え、計器本体から分離した状態でデータの測定が可能なセンサプローブ」は、本件訂正発明1の「液分析用スマートセンサ」に相当する。また、このうち引用発明の「センサが着脱自在に一体結合されるコネクタを備え、計器本体から分離した状態でデータの測定が可能なセンサプローブ」は、本件訂正発明1の「インテリジェンス部」に相当する。 また、引用発明の「センサが寿命を超えた時に、新しいセンサに交換する方法」は、現在のセンサプローブに新しいセンサを結合させて再使用する方法であるともいえるから、本件訂正発明1の「インテリジェンス部の再利用方法」に相当する。 そうすると、引用発明の上記方法と、本件訂正発明1の 「運用状態においてケーブル手段を介して分散型制御システムに接続される液分析用スマートセンサにおけるインテリジェンス部の再利用方法」 とは、 「液分析用スマートセンサにおけるインテリジェンス部の再利用方法」 である点で共通するといえる。 (b)引用発明の「センサが寿命を超えた時」は、「新しいセンサに交換する」時でもあるから、本件訂正発明1の「劣化により第1の液分析センサを廃棄する場合」に相当する。 また、引用発明において「センサまたはセンサプローブが、センサから取得した測定結果をディジタル信号に変換するデータ変換部、及びこのディジタル信号を演算処理する制御部を備え」る点と、本件訂正発明1において「前記インテリジェンス部」が「前記第1の液分析センサから取得した測定結果をディジタル信号に変換するデータ変換部とこのディジタル信号を演算処理する制御部と」「を備える」点とは、「液分析用スマートセンサ」が「前記第1の液分析センサから取得した測定結果をディジタル信号に変換するデータ変換部とこのディジタル信号を演算処理する制御部と」「を備える」点で共通する。 次に、引用発明においては「校正が実行されると校正データが作成、保存され」るのであるから、校正データを格納するメモリが備えられていることは明らかであり、この点と、本件訂正発明1において「前記インテリジェンス部」が「前記第1の液分析センサの校正値を格納するメモリとを備える」点とは、「液分析用スマートセンサ」を含む分析装置が「前記第1の液分析センサの校正値を格納するメモリとを備える」点で共通する。 さらに、引用発明において「センサプローブがインターフェイス部と、給電されてセンサプローブに電源電圧を供給する電源部とを備え」る点と、本件訂正発明1において「インテリジェンス部」が「インターフェイス部と前記ケーブル手段を介して給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部とを備える」点とは、「インテリジェンス部」が「インターフェイス部と給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部とを備える」点で共通する。 ここで、引用発明において「センサが寿命を超えた時に、新しいセンサに交換する」際には、「センサプローブ」が備える「センサが着脱自在に一体結合されるコネクタ」により結合されている現在のセンサをセンサプローブから取り外し、この現在のセンサの代わりに、新しいセンサをコネクタにより一体結合させる工程が生じることは明らかであり、また上記工程は寿命を終えたセンサの交換であり、新旧のセンサ及びコネクタの電気的仕様が同一仕様であることは当然であることから、上記工程は、本件訂正発明1の「前記インテリジェンス部に形成されこのインテリジェンス部と前記第1の液分析センサとの結合部を着脱可能にするコネクタ手段を介して、前記インテリジェンス部と前記第1の液分析センサとが着脱可能に一体結合される第1の液分析用スマートセンサにおける、前記コネクタ手段と前記第1の液分析センサの係合を分離し、前記第1の液分析用スマートセンサから前記第1の液分析センサを取り外す第1のステップと、この第1の液分析センサの代わりに、前記取り外されたインテリジェンス部の前記コネクタ手段と電気的仕様が同一仕様である第2の液分析センサを前記コネクタ手段に係合させ、前記第2の液分析センサと前記インテリジェンス部とを一体結合させて新たに第2の液分析用スマートセンサを形成する第2のステップ」に相当するといえる。 そうすると、引用発明の上記工程と、本件訂正発明1の 「劣化により第1の液分析センサを廃棄する場合、前記第1の液分析センサから取得した測定結果をディジタル信号に変換するデータ変換部とこのディジタル信号を演算処理する制御部と前記第1の液分析センサの校正値を格納するメモリとインターフェイス部と前記ケーブル手段を介して給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部とを備える前記インテリジェンス部に形成されこのインテリジェンス部と前記第1の液分析センサとの結合部を着脱可能にするコネクタ手段を介して、前記インテリジェンス部と前記第1の液分析センサとが着脱可能に一体結合される第1の液分析用スマートセンサにおける、前記コネクタ手段と前記第1の液分析センサの係合を分離し、前記第1の液分析用スマートセンサから前記第1の液分析センサを取り外す第1のステップ」 及び 「この第1の液分析センサの代わりに、前記取り外されたインテリジェンス部の前記コネクタ手段と電気的仕様が同一仕様である第2の液分析センサを前記コネクタ手段に係合させ、前記第2の液分析センサと前記インテリジェンス部とを一体結合させて新たに第2の液分析用スマートセンサを形成する第2のステップ」 とは、 「劣化により第1の液分析センサを廃棄する場合、前記第1の液分析センサから取得した測定結果をディジタル信号に変換するデータ変換部とこのディジタル信号を演算処理する制御部とを液分析用スマートセンサが備え、前記第1の液分析センサの校正値を格納するメモリを液分析用スマートセンサを含む分析装置が備え、インターフェイス部と給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部とを前記インテリジェンス部が備え、前記インテリジェンス部に形成されこのインテリジェンス部と前記第1の液分析センサとの結合部を着脱可能にするコネクタ手段を介して、前記インテリジェンス部と前記第1の液分析センサとが着脱可能に一体結合される第1の液分析用スマートセンサにおける、前記コネクタ手段と前記第1の液分析センサの係合を分離し、前記第1の液分析用スマートセンサから前記第1の液分析センサを取り外す第1のステップ」 及び 「この第1の液分析センサの代わりに、前記取り外されたインテリジェンス部の前記コネクタ手段と電気的仕様が同一仕様である第2の液分析センサを前記コネクタ手段に係合させ、前記第2の液分析センサと前記インテリジェンス部とを一体結合させて新たに第2の液分析用スマートセンサを形成する第2のステップ」 である点で共通する。 (c)引用発明において「センサが寿命を超えた時に、新しいセンサに交換」した際に新しいセンサについて校正を実行する工程を含むことは明らかであり、該工程と本件訂正発明1の 「前記第2のステップにて新たに形成された第2の液分析用スマートセンサにおける前記第2の液分析センサの校正を実行し、前記インテリジェンス部の前記メモリに格納されていた、前記第1のステップにて分離された前記第1の液分析センサの校正値を、前記第2のステップにて新たに結合された前記第2の液分析センサの校正値に更新する第3のステップ」 とは、 「前記第2のステップにて新たに形成された第2の液分析用スマートセンサにおける前記第2の液分析センサの校正を実行する第3のステップ」 である点で共通する。 (d)引用発明において、新しいセンサへの交換と校正が行われた後に、該新しいセンサによる測定工程が実施されることも明らかであって、該工程と本件訂正発明1の 「前記第3のステップにて校正された前記インテリジェンス部の前記データ変換部がディジタル信号として変換した前記第2の液分析センサから前記コネクタ手段を介して取得した測定結果に基づき、前記インテリジェンス部の前記制御部が演算処理する第4のステップ」 とは、 「前記第3のステップにて校正された前記データ変換部がディジタル信号として変換した前記第2の液分析センサから前記コネクタ手段を介して取得した測定結果に基づき、前記制御部が演算処理する第4のステップ」 である点で共通する。 (e)引用発明において、「インターフェイス部が、上記演算処理されたディジタル信号を出力する」工程と、本件訂正発明1の 「前記インターフェイス部が、前記第4のステップにおいて演算処理された前記測定結果に基づくディジタル信号を、前記ケーブル手段を介して前記分散型制御システムへと出力する第5のステップ」 とは、 「前記インターフェイス部が、前記第4のステップにおいて演算処理された前記測定結果に基づくディジタル信号を出力する第5のステップ」 である点で共通する。 そうすると、上記引用発明と本件訂正発明1との実質的な一致点及び相違点は以下のとおりである。 一致点 「液分析用スマートセンサにおけるインテリジェンス部の再利用方法において、 劣化により第1の液分析センサを廃棄する場合、前記第1の液分析センサから取得した測定結果をディジタル信号に変換するデータ変換部とこのディジタル信号を演算処理する制御部とを液分析用スマートセンサが備え、前記第1の液分析センサの校正値を格納するメモリを液分析用スマートセンサを含む分析装置が備え、インターフェイス部と給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部とを前記インテリジェンス部が備え、前記インテリジェンス部に形成されこのインテリジェンス部と前記第1の液分析センサとの結合部を着脱可能にするコネクタ手段を介して、前記インテリジェンス部と前記第1の液分析センサとが着脱可能に一体結合される第1の液分析用スマートセンサにおける、前記コネクタ手段と前記第1の液分析センサの係合を分離し、前記第1の液分析用スマートセンサから前記第1の液分析センサを取り外す第1のステップと、 この第1の液分析センサの代わりに、前記取り外されたインテリジェンス部の前記コネクタ手段と電気的仕様が同一仕様である第2の液分析センサを前記コネクタ手段に係合させ、前記第2の液分析センサと前記インテリジェンス部とを一体結合させて新たに第2の液分析用スマートセンサを形成する第2のステップと、 前記第2のステップにて新たに形成された第2の液分析用スマートセンサにおける前記第2の液分析センサの校正を実行する第3のステップと、 前記第3のステップにて校正された前記データ変換部がディジタル信号として変換した前記第2の液分析センサから前記コネクタ手段を介して取得した測定結果に基づき、前記制御部が演算処理する第4のステップと 前記インターフェイス部が、前記第4のステップにおいて演算処理された前記測定結果に基づくディジタル信号を出力する第5のステップと、 を含むことを特徴とする液分析用スマートセンサにおけるインテリジェンス部の再利用方法。」 相違点 相違点1:本件訂正発明1は、「液分析用スマートセンサ」が「運用状態においてケーブル手段を介して分散型制御システムに接続される」のに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。 また、電源部への給電、及びインターフェイス部の出力が上記「分散型制御システムに接続される」「ケーブル手段」を介して行われる点。 相違点2:本件訂正発明1は、「前記第1の液分析センサから取得した測定結果をディジタル信号に変換するデータ変換部とこのディジタル信号を演算処理する制御部と」「を備え」る「前記インテリジェンス部」を有し、第4のステップにおいて「前記第3のステップにて校正された前記インテリジェンス部の前記データ変換部がディジタル信号として変換した前記第2の液分析センサから前記コネクタ手段を介して取得した測定結果に基づき、前記インテリジェンス部の前記制御部が演算処理する」のに対し、引用発明は「センサまたはセンサプローブが、センサから取得した測定結果をディジタル信号に変換するデータ変換部、及びこのディジタル信号を演算処理する制御部を備え」てはいるものの、上記データ変換部及び制御部が「センサプローブ」(本件訂正発明1の「インテリジェンス部」に相当。)に設けられているか否かは不明である点。 相違点3:本件訂正発明1は、「前記第1の液分析センサの校正値を格納するメモリとを備え」る「前記インテリジェンス部」を有し、第3のステップにおいて「前記インテリジェンス部の前記メモリに格納されていた、前記第1のステップにて分離された前記第1の液分析センサの校正値を、前記第2のステップにて新たに結合された前記第2の液分析センサの校正値に更新する」のに対し、引用発明においては校正データを格納するメモリが「センサプローブ」(本件訂正発明1の「インテリジェンス部」に相当。)に設けられているか否かは不明である点。 上記相違点1ないし3について検討する。 相違点1について 甲3において、単にデータ取込のために、パソコンを計器本体を介してセンサプローブに接続すること(甲3の第31ページ「測定データの整理」)は想定されているといえる。しかしながら、甲3には分散型制御システムに関する記載はなく、そもそもセンサプローブによる測定結果を用いて何らかの制御を行うことに関し、何らの記載も示唆もされていない。 特許異議申立人は、令和元年10月9日提出の意見書において、 「甲3に記載の水質計測システムは、計器本体とパソコンとを接続した状態で被検液の測定を行って、計測値を設定した周期でパソコンに取り込むことができることが明らかである。・・・そして、分散型制御システム(DCS)がパソコンを含むコンピュータで実現されるものであることは技術常識である」(第6ページ第13行?第20行) 「甲3に記載の水質計測システムなどのセンサ類が接続され得るコンピュータで分散型制御システムを実現することは、当業者が適宜行う設計事項に過ぎない。」(第7ページ第1行?第3行) 「また、甲3に記載されるような水質計測システムから出発して制御システムに接続する液分析用スマートセンサを発想することは、当業者が通常行うことである。」(第7ページ第18行?第20行) と主張している。 しかし、「分散型制御システム(DCS)がパソコンを含むコンピュータで実現されるものであることは技術常識」であったとしても、そのことが引用発明の液分析用スマートセンサが接続されたパソコンによって分散型制御システムを構築しようとする動機になるとはいえない。また、引用発明のようなインテリジェンス部を備えた液分析用スマートセンサからなる分散型制御システムが周知であると認めるに足りる証拠はないから、その実現が設計事項であるとも、当業者が通常行うことであるともいえない。 したがって、本件訂正発明1は、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 相違点2について 引用発明においては、上記データ変換部及び制御部がセンサまたはセンサプローブのいずれかに設けられており、例えばこれらをセンサプローブに設けることにより、センサに設ける場合と比較して設置容積に余裕が得られ、またセンサが寿命を迎えた際にもデータ変換部及び制御部を廃棄せず使用を続けることができる、といった利点が得られることは明らかであり、データ変換部及び制御部をセンサまたはセンサプローブのいずれに設けるかは、上記のような利点などを比較検討して適宜選択すべき設計事項に過ぎない。 また、上記データ変換部及び制御部をセンサプローブに設けることにより、当業者の容易に予想し得ない効果が生じているとも認められない。 相違点3について 甲1において、 「【0001】 本発明は、センサと、センサの校正情報を記憶する記憶媒体と、センサおよび記憶媒体が接続され、計測に必要な機能を備える計測器本体と、を備える計測システムに関する。 【背景技術】 【0002】 工業用途で使用されるPH計測システムとして、ガラスPH変換器が一般的に用いられている。しかし、ガラスPH変換器は経時変化が大きく定期的に標準液を用いた校正を行う必要がある。 【特許文献1】実公平7-23737号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 しかし、ガラスPH変換器の設置場所が危険な場所、あるいは屋外の場合等には、校正作業に大きな負担がかかる。 【0004】 校正作業の負担を軽減できるシステムとして、PHセンサ自体に校正情報を保持させるものも開発されている。このようなシステムでは、作業し易い環境下で校正作業を行うことができ、校正作業により得た校正情報をセンサ内部に格納することができる。しかし、PH電極の消耗によりPHセンサを交換する際にはPHセンサに内蔵された電子回路ごと廃棄するしかなく、コスト増を招く。また、一般的なPHセンサをシステムに適用することもできない。」(下線は当審による。) と記載されているように、PH計測システムにおいて、校正作業の負担を軽減できるように、PHセンサ自体に校正情報を保持させることは周知技術である。 引用発明のセンサプローブシステムにおいても、校正作業の負担を軽減するという課題が存在することは明らかであるから、引用発明に上記周知技術を採用し、計器本体ではなく「センサ」や「センサプローブ」の側に校正データ(校正値)を保持させるためのメモリを設けるようにすることは、当業者が容易になし得たものである。 そして、例えば上記メモリを「センサ」ではなく「センサプローブ」に設けることにより、設置容積に余裕が得られ、またセンサが寿命を迎えた際にもメモリを廃棄せず使用を続けることができる、といった利点が得られることは明らかであり、上記メモリをセンサ及びセンサプローブ(液分析センサとインテリジェンス部に相当。)のいずれに設けるかは、上記のような利点などを比較検討して適宜選択すべき設計事項に過ぎない。 また、上記メモリをセンサプローブに設けることにより、当業者の容易に予想し得ない効果が生じているとも認められない。 そして、引用発明において上記メモリがセンサプローブに設けられた場合、本願発明1の「前記インテリジェンス部の前記メモリに格納されていた、前記第1のステップにて分離された前記第1の液分析センサの校正値を、前記第2のステップにて新たに結合された前記第2の液分析センサの校正値に更新する」に相当する工程を備えることとなるのは当然である。 b 本件訂正発明2-4について 本件訂正発明2-4は、本件訂正発明1の相違点1に係る構成を有している。 したがって、本件訂正発明2-4は、本件訂正発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 c 本件訂正発明5-8について 本件訂正発明5-8は、「インテリジェンス部の再利用方法」の発明である本件訂正発明1-4にそれぞれ対応する「インテリジェンス部」の発明であって、上記a,bと同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 (2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について ア 特許異議申立理由の概要 本件特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 申立理由1 本件の訂正前の請求項1-8に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明と、甲第2号証に記載された事項、あるいは甲第3,4号証に記載の周知技術とから、当業者が容易に発明をすることができたものである。 甲第1号証:特開2010-151729号公報(取消理由の甲1) 甲第2号証:特開昭60-186751号公報(以下、「甲2」という。) 甲第3号証:株式会社堀場製作所、「マルチプローブ W-20シリーズ W22.23 取扱説明書」、第1版、2000年10月発行(取消理由の甲3) 甲第4号証:東亜ディーケーケー株式会社、「WQC-24 ポータブル多項目水質計 製品カタログ」、発行日2004-2-20(以下、「甲4」という。) 申立理由2 本件特許の明細書には「インテリジェンス部」が「変換器」から引き出された「ケーブル手段」に対して着脱可能なものしか記載されておらず、この点が記載されていない請求項1-8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 イ 判断 a 申立理由1について 上記「(1)取消理由について」、「ウ 取消理由2についての判断」、「(イ)対比・検討」、「a 本件発明1について」において検討した「相違点1」に係る構成は、上記甲2,4にも記載も示唆もされていない。 したがって、上記「(イ)対比・検討」において示したと同様の理由により、本件訂正発明1-8は、甲1-4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 b 申立理由2について 特許異議申立人は特許異議申立書において、 「しかしながら、本件特許発明1?8においては、インテリジェンス部が変換器から引き出されたケーブル手段に対して着脱可能であることが特定されていない。また、・・・着脱可能でなくてもよいことは何ら記載も示唆もされていない。」(第50頁第27行?第51ページ第3行) と主張している。 しかしながら、本件訂正発明1-8が、上記のような着脱可能となる構成を備えずとも、 「インテリジェンス部を再利用することにより資源の効率的な利用を可能とした液分析用スマートセンサを実現する」(本件特許明細書の段落【0011】) 「インテリジェンス部を持たない一般的な液分析センサに対しても、簡単にスマートセンサ化でき、システムのコストダウンに貢献できる液分析用スマートセンサを実現する」(本件特許明細書の段落【0012】) といった課題を解決しうるものであることは明らかである。 そうすると、上記のような着脱可能となる構成が本件訂正発明1-8において特定されていないことをもって、それらが発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。 したがって、特許異議申立人の主張は採用することができない。 5 むすび 以上のとおり、本件訂正発明1-8に係る特許については、取消理由通知書に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件訂正発明1-8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 運用状態においてケーブル手段を介して分散型制御システムに接続される液分析用スマートセンサにおけるインテリジェンス部の再利用方法において、 劣化により第1の液分析センサを廃棄する場合、前記第1の液分析センサから取得した測定結果をディジタル信号に変換するデータ変換部とこのディジタル信号を演算処理する制御部と前記第1の液分析センサの校正値を格納するメモリとインターフェイス部と前記ケーブル手段を介して給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部とを備える前記インテリジェンス部に形成されこのインテリジェンス部と前記第1の液分析センサとの結合部を着脱可能にするコネクタ手段を介して、前記インテリジェンス部と前記第1の液分析センサとが着脱可能に一体結合される第1の液分析用スマートセンサにおける、前記コネクタ手段と前記第1の液分析センサの係合を分離し、前記第1の液分析用スマートセンサから前記第1の液分析センサを取り外す第1のステップと、 この第1の液分析センサの代わりに、前記取り外されたインテリジェンス部の前記コネクタ手段と電気的仕様が同一仕様である第2の液分析センサを前記コネクタ手段に係合させ、前記第2の液分析センサと前記インテリジェンス部とを一体結合させて新たに第2の液分析用スマートセンサを形成する第2のステップと、 前記第2のステップにて新たに形成された第2の液分析用スマートセンサにおける前記第2の液分析センサの校正を実行し、前記インテリジェンス部の前記メモリに格納されていた、前記第1のステップにて分離された前記第1の液分析センサの校正値を、前記第2のステップにて新たに結合された前記第2の液分析センサの校正値に更新する第3のステップと、 前記第3のステップにて校正された前記インテリジェンス部の前記データ変換部がディジタル信号として変換した前記第2の液分析センサから前記コネクタ手段を介して取得した測定結果に基づき、前記インテリジェンス部の前記制御部が演算処理する第4のステップと、 前記インターフェイス部が、前記第4のステップにおいて演算処理された前記測定結果に基づくディジタル信号を、前記ケーブル手段を介して前記分散型制御システムヘと出力する第5のステップと、 を含むことを特徴とする液分析用スマートセンサにおけるインテリジェンス部の再利用方法。 【請求項2】 前記第1の液分析センサと前記第2の液分析センサとは互いに同じ種類の液分析センサであることを特徴とする、 請求項1記載の液分析用スマートセンサのインテリジェンス部の再利用方法。 【請求項3】 前記第1の液分析センサと前記第2の液分析センサとは互いに種類の異なる液分析センサであることを特徴とする、 請求項1記載の液分析用スマートセンサのインテリジェンス部の再利用方法。 【請求項4】 前記インテリジェンス部は、前記ケーブル手段を介し、前記制御部により演算処理された前記センサ部の測定結果に基づくディジタル信号が送信される変換器側から給電される前記電源部から電源電圧が供給される前記エレクトロニクスにより構成されることを特徴とする、 請求項1?3のいずれかに記載の液分析用スマートセンサのインテリジェンス部の再利用方法。 【請求項5】 運用状態においてケーブル手段を介して分散型制御システムに接続されて単一の液分析センサから構成されるセンサ部から取得した測定結果に基づいてディジタル信号を出力する液分析用スマートセンサにおける、前記センサ部との結合部を着脱可能にするコネクタ手段を介して一体結合して構成する、スマートセンサ用のインテリジェンス部であって、 前記センサ部を構成する第1の液分析センサから取得した測定結果を前記ディジタル信号に変換するデータ変換部と、 前記ディジタル信号に基づき演算処理する制御部と、 前記第1の液分析センサの校正値を格納するメモリと、 前記第1の液分析センサとの係合に基づき前記センサ部と自機とを着脱可能に一体結合して第1の液分析スマートセンサを形成するコネクタ手段と、 インターフェイス部と、 前記ケーブル手段を介して給電されて前記インテリジェンス部を構成するエレクトロニクスに電源電圧を供給する電源部と を備え、 廃棄される前記第1の液分析センサに代わり、新たに前記センサ部を構成する第2の液分析センサが前記コネクタ手段に係合される場合、前記コネクタ手段と前記第1の液分析センサの係合が分離されて前記第1の液分析用スマートセンサから前記センサ部が取り外され、前記コネクタ手段とこのコネクタ手段の電気的仕様と同一仕様である前記第2の液分析センサのコネクタ手段との係合に基づき、自機と前記センサ部とが着脱可能に結合されて第2の液分析用スマートセンサが構成され、 前記制御部は、前記センサ部を構成する前記第2の液分析センサの校正を実行して前記メモリに格納されている、分離された前記第1の液分析センサの校正値を新たに結合された前記第2の液分析センサの校正値に更新し、 前記制御部は、さらに、校正された前記インテリジェンス部の前記データ変換部がディジタル信号として変換し、新たに結合された前記第2の液分析センサから前記コネクタ手段を介して取得した測定結果に基づいて演算処理し、 前記インターフェイス部は、前記制御部によって演算処理された前記測定結果に基づくディジタル信号を、前記ケーブル手段を介して前記分散型制御システムへと出力し、 前記第2の液分析用スマートセンサを構成する自機と前記センサ部との結合部が前記コネクタ手段により着脱可能であることを特徴とするスマートセンサ用のインテリジェンス部。 【請求項6】 前記第1の液分析センサと前記第2の液分析センサとは、互いに同じ種類の液分析センサであることを特徴とする 請求項5に記載のスマートセンサ用のインテリジェンス部。 【請求項7】 前記第1の液分析センサと前記第2の液分析センサとは、互いに種類の異なる液分析センサであることを特徴とする、 請求項5に記載のスマートセンサ用のインテリジェンス部。 【請求項8】 前記制御部により演算処理された前記センサ部の測定結果に基づくディジタル信号は前記ケーブル手段を介して変換器に送信され、この変換器側から給電される前記電源部から電源電圧が供給される前記エレクトロニクスにより構成されることを特徴とする、 請求項5?7のいずれかに記載のスマートセンサ用のインテリジェンス部。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-11-22 |
出願番号 | 特願2017-20819(P2017-20819) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(G08C)
P 1 651・ 121- YAA (G08C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 深田 高義 |
特許庁審判長 |
小林 紀史 |
特許庁審判官 |
梶田 真也 中塚 直樹 |
登録日 | 2018-03-30 |
登録番号 | 特許第6311903号(P6311903) |
権利者 | 横河電機株式会社 |
発明の名称 | 液分析用スマートセンサにおけるインテリジェンス部の再利用方法 |
代理人 | 龍華国際特許業務法人 |
代理人 | 龍華国際特許業務法人 |