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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61B
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61B
管理番号 1359540
異議申立番号 異議2019-700176  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-04 
確定日 2019-12-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6386582号発明「生体電極および衣類」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6386582号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6386582号の請求項3ないし6に係る特許を維持する。 特許第6386582号の請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6386582号の請求項1?6に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)12月7日(優先権主張 平成26年12月8日)を国際出願日とする出願であって、平成30年8月17日にその特許権の設定登録がされ、同年9月5日に特許掲載公報が発行された。その後、全請求項に係る特許に対し、平成31年3月4日に特許異議申立人 谷川 康治 により特許異議の申立てがされ、令和元年5月9日付けで取消理由が通知され、同年7月16日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年8月27日に同特許異議申立人により意見書が提出され、さらに、同年9月27日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年11月27日に意見書の提出及び訂正請求がされたものである。
(なお、令和元年11月27日にした訂正請求による訂正は、審判便覧67-05.5の「4.」に記載の特別の事情に当たると判断し、同特許異議申立人に再度の意見書を提出する機会を与えなかった。)

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

(1)特許権者が令和元年11月27日にした訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、請求項1?6を一群の請求項として訂正することを求めるものであり、その具体的内容は、以下の訂正事項1?12のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す(訂正事項に係る記載において以下同様。)。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を独立形式に改めるとともに、独立形式に改めるにあたり、「第2の絶縁部材」について、請求項1において「前記コネクタと前記衣類との間を絶縁する電気絶縁性の第2の絶縁部材」と記載されているのを、請求項3において「前記第2の絶縁部材は、前記コネクタと前記衣類との間、および前記配線と前記衣類との間を絶縁し、」との記載に基づき「前記コネクタと前記衣類との間、および前記配線と前記衣類との間を絶縁する電気絶縁性の第2の絶縁部材」に訂正し、請求項3の「前記第2の絶縁部材は、前記コネクタと前記衣類との間、および前記配線と前記衣類との間を絶縁し、」を削除する(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4?6も同様に訂正する。)。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を独立形式に改めるにあたり、請求項1において「前記コネクタと前記配線の表面のうち、生体と接触する部分を被覆する電気絶縁性の第1の絶縁部材」と記載されているのを、「前記コネクタと前記配線の表面のうち、前記衣類の生体と接触する側を被覆する電気絶縁性の第1の絶縁部材」に訂正(以下「訂正事項4-1」という。)し、
請求項3において「前記配線は、前記衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側と反対側に引き出され、前記コネクタの前記生体と接触する側と反対側と、前記電極部とを電気的に接続する」と記載されているのを、「前記配線は、前記衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側の反対側に引き出され、前記コネクタにおける前記衣類の生体と接触する側の反対側と、前記電極部とを電気的に接続する」に訂正(以下「訂正事項4-2」という。)する(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4?6も同様に訂正する。)。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4において「請求項1乃至3のいずれか1項に」と記載されているのを、「請求項3に」に訂正する(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5及び6も同様に訂正する。)。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6において「請求項1乃至5のいずれか1項に」と記載されているのを、「請求項3乃至5のいずれか1項に」に訂正する。

キ 訂正事項7
明細書の段落【0006】に「前記コネクタと前記配線の表面のうち、生体と接触する部分を被覆する電気絶縁性の第1の絶縁部材と、前記コネクタと前記衣類との間を絶縁する電気絶縁性の第2の絶縁部材とを備え、前記コネクタは、生体電気信号測定装置との接続用の導電部を含み、この導電部が前記衣類の生体と接触する面と反対側の面に露出するように前記取り付け部材に固定されることを特徴とするものである。」と記載されているのを、「前記コネクタと前記配線の表面のうち、前記衣類の生体と接触する側を被覆する電気絶縁性の第1の絶縁部材と、前記コネクタと前記衣類との間、および前記配線と前記衣類との間を絶縁する電気絶縁性の第2の絶縁部材とを備え、前記コネクタは、生体電気信号測定装置との接続用の導電部を含み、この導電部が前記衣類の生体と接触する面と反対側の面に露出するように前記取り付け部材に固定され、前記配線は、前記衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側の反対側に引き出され、前記コネクタにおける前記衣類の生体と接触する側の反対側と、前記電極部とを電気的に接続することを特徴とするものである。」に訂正する。

ク 訂正事項8
明細書の段落【0007】に「配線の表面のうち、生体と接触する部分」と記載されているのを、「配線の表面のうち、前記衣類の生体と接触する側」に訂正する。

ケ 訂正事項9
明細書の段落【0008】、【0039】、【0059】、【0060】【0061】、【0062】、【0064】及び【0066】に「第1実施例」と記載されているのを、「第2参考例」に訂正する。

コ 訂正事項10
明細書の段落【0040】、【0041】、【0055】及び【0056】に「本実施例」と記載されているのを、「本参考例」に訂正する。

サ 訂正事項11
明細書の段落【0008】及び【0057】に「第2実施例」と記載されているのを、「実施例」に訂正し、【0066】に「第2実施例」と記載されているのを、「本実施例」に訂正する。

シ 訂正事項12
明細書の段落【0067】に「第2参考例」と記載されているのを、「第3参考例」に訂正する。

(2)訂正の単位について
特許請求の範囲に係る訂正事項1?6は、一群の請求項〔1?6〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正事項7?12は、一群の請求項〔1?6〕の全てについてされたものである。
よって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1及び2について
訂正事項1及び2は、それぞれ、請求項1及び2を削除するという訂正であるから、いずれも、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項4について

ア 訂正事項4-1について

(ア)訂正の目的の適否
コネクタと配線を被覆した生体電極において、「前記コネクタと前記配線の表面のうち、生体と接触する部分」は存在しないことから、当該部分を明確には特定できないところ、訂正事項4-1は、「前記コネクタと前記配線の表面のうち、生体と接触する部分」を「前記コネクタと前記配線の表面のうち、前記衣類の生体と接触する側」とすることで、第1の絶縁部材で被覆する部分が、「前記コネクタと前記配線の表面のうち、前記衣類の生体と接触する側」であることを特定する訂正であるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無
本件特許明細書及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)の段落【0021】の「図2に示すように配線1103a,1103bを絶縁部材1105で覆い、生体1000と接触しないようにするとよい。」、段落【0054】の「図5?図7のようにコネクタ1102c,1102dの一部が生体1000と接触する側に露出する場合、コネクタ1102c,1102dの生体1000と接触する部分を絶縁部材1105で覆う必要がある。コネクタ1102c,1102dに金属製ドットボタンボタンを用いる場合、取り付け金具の生体1000と接触する側が予め絶縁性の樹脂で被覆されているものを用いれば、コネクタ部の絶縁部材1105の代わりとして用いることができる。」との記載、及び、図5?図7の生体電極において、コネクタと配線の表面のうち、衣類の生体と接触する側を絶縁部材で被覆していることが見て取れることに基づくと、訂正事項4-1は、本件特許明細書等のすべての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項4-2について

(ア)訂正の目的の適否
コネクタと配線を被覆した生体電極において、「前記コネクタの前記生体と接触する側」は存在しないことから、当該側を明確には特定できないところ、訂正事項4-2は、「前記コネクタの前記生体と接触する側と反対側」を「前記コネクタにおける前記衣類の生体と接触する側の反対側」とすることで、電極部と電気的に接続するコネクタの側が、「前記コネクタにおける前記衣類の生体と接触する側の反対側」であることを特定する訂正であるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無
本件特許明細書等の段落【0064】の「コネクタ1102c,1102dを取り付けるためには、第1実施例と同様に、着衣1100に取り付け部材1106aを固定し、取り付け部材1106aに電極部1101a,1101bと配線1103c,1103dとを固定した後で、配線1103c,1103dを貫通孔1201から着衣1100の生体1000と接触する側と反対側に引き出し、着衣1100の貫通孔1200,1201に差し込むように絶縁部材1107aを装着する。」、段落【0065】の「そして、絶縁部材1107aの上に配線1103c,1103dを沿わせるように配置した後、配線1103c,1103dと絶縁部材1107aとの貫通孔にコネクタ1102c,1102dを挿入し、コネクタ1102c,1102dの表裏をかしめる。これにより、コネクタ1102c,1102dと配線1103c,1103dと絶縁部材1107aの固定と、コネクタ1102c,1102dの絶縁被覆と、コネクタ1102c,1102dと配線1103c,1103dとの電気的接続を同時に達成することができる。」との記載、及び、図9の生体電極において、配線は、衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側の反対側に引き出され、コネクタにおける前記衣類の生体と接触する側の反対側と、電極部とを接続していることが見て取れることに基づくと、訂正事項4-2は、本件特許明細書等のすべての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項5及び6について
訂正事項5及び6は、それぞれ、択一的に引用する請求項を削除する訂正であるから、いずれも、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項7?12について
訂正事項7?12は、訂正事項1?6に係る特許請求の範囲についての訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための明細書についての訂正であるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
上記2のとおり、訂正事項1?12に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記のとおり訂正が認められるから、本件特許の請求項3?6に係る発明(以下「本件発明3」?「本件発明6」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項3?6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(請求項1及び2に係る発明は、本件訂正により削除されている。)。

(本件発明3)
「【請求項3】
衣類の生体と接触する面に固定された電気絶縁性の部材からなる取り付け部材と、
この取り付け部材の生体と接触する面に固定された導電性の部材からなる電極部と、
前記取り付け部材に固定された、生体電気信号測定装置との接続のためのコネクタと、
前記取り付け部材に固定され、前記コネクタと前記電極部とを電気的に接続する配線と、
前記コネクタと前記配線の表面のうち、前記衣類の生体と接触する側を被覆する電気絶縁性の第1の絶縁部材と、
前記コネクタと前記衣類との間、および前記配線と前記衣類との間を絶縁する電気絶縁性の第2の絶縁部材とを備え、
前記コネクタは、生体電気信号測定装置との接続用の導電部を含み、この導電部が前記衣類の生体と接触する面と反対側の面に露出するように前記取り付け部材に固定され、
前記配線は、前記衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側の反対側に引き出され、前記コネクタにおける前記衣類の生体と接触する側の反対側と、前記電極部とを電気的に接続することを特徴とする生体電極。」

(本件発明4)
「【請求項4】
請求項3に記載の生体電極において、
さらに、前記取り付け部材と前記衣類との間に設けられた固定補助布を備えることを特徴とする生体電極。」

(本件発明5)
「【請求項5】
請求項4記載の生体電極において、
前記固定補助布は、前記取り付け部材の固定に接着剤を用いる場合に、前記接着剤との接着力が前記衣類と前記接着剤との接着力よりも大きいものであり、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ウレタンの少なくとも1つを含む織物、編物、不織布のうちのいずれか1つであることを特徴とする生体電極。」

(本件発明6)
「【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の生体電極を備え、前記生体電極は、前記電極部が生体と接触するように固定されたことを特徴とする衣類。」

第4 特許異議申立人が提出した証拠
特許異議申立人が提出した証拠は、以下の甲第1号証?甲第3号証(以下「甲1」?「甲3」という。)である。

甲1:欧州特許出願公開第2803315号明細書
甲2:米国特許出願公開第2013/0041272号明細書
甲3:米国特許出願公開第2013/0338472号明細書

第5 甲号証の記載

1 甲1について

(1)甲1の記載
本件特許出願の優先権主張日前に頒布された甲1には、以下の記載がある。なお、原文に続き日本語訳を示す。また、下線は当審で付加した。以下同様。
(甲1ア)
「[0011] With reference to an embodiment shown in Figures 1A and 1B , let us consider an embodiment of a heart activity sensor structure 100 to which embodiments of the invention may be applied. The heart activity sensor structure 100 may be attached to, e.g., a strap 10, which the exerciser 60 may wear around his/her body, such as chest, in order to hold electrodes, which are comprised in the heart activity sensor structure 100, firmly against the skin 32 during the exercise. The exerciser 60 is the user of the heart activity sensor structure 100. The heart activity sensor structure 100 may comprise fastening elements 11A and 11C for detachably fastening/connecting the heart activity sensor structure 100 to fastening elements 11B and 11D of the strap 10, respectively. The strap 10 may comprise a length adjustment portion 10A adjusting the length of the strap by the exerciser 60. In an embodiment, the heart activity sensor structure 100 comprises the strap 10. It should be noted that the heart activity sensor structure 100 may alternatively be attached to a garment, such as a shirt, a top, a bra, a wristband or trousers, instead of the strap 10. In an embodiment, the garment is a glove, sock, a shirt arm, or a trouser leg.」
「[0011] 図1Aおよび図1Bに示される実施形態に関して、本発明の実施形態を適用し得る心臓活動量センサ構造100の実施形態について検討する。当該心臓活動量センサ構造100は、例えばストラップ10に取り付けて、運動者60がこのストラップ10を胸部など体の周りに着用して、心臓活動量センサ構造100に含まれる電極を運動中に皮膚32に対して強固に保持できるようにしてもよい。運動者60は心臓活動量センサ構造100のユーザである。心臓活動量センサ構造100は、締結要素11Aおよびl1Cを備えていてもよく、これらの締結要素は、それぞれ心臓活動量センサ構造100をストラップ10の締結要素11Bおよび11Dに着脱自在に締結/連結する。ストラップ10は、運動者60がストラップの長さを調節する長さ調節部分10Aを備えていてもよい。一実施形態において、心臓活動量センサ構造100はストラップ10を備える。なお、心臓活動量センサ構造100は代替的に、ストラップ10の代わりに、シャツ、トップ、ブラジャー、リストバンドあるいはズボンなどの衣服に取り付けてもよい。一実施形態において、当該衣服は、手袋、靴下、シャツの袖、またはズボンの股下である。」

(甲1イ)
「[0012] The heart activity sensor structure 100 may comprise one or more skin electrodes used to receive a physiological signal from the skin of the user 60, and an electronic circuit may be used to process and measure the physiological signal. The electronic circuit may be installed to an electronics module 16 which may be fixed or detachably attached to the strap 10 through instant connectors 12, 14, such as press stud connectors. The electronics module 16 may further comprise a battery for powering the heart activity sensor structure 100, wherein the battery may be rechargeable or disposable.」
「[0012] 心臓活動量センサ構造100は、ユーザ60の皮膚から生理信号を受信するために使用される1つまたは複数の皮膚電極を備えていてもよい。また、電子回路を用いて、生理信号の処理および測定を行ってもよい。当該電子回路は、スナップ式コネクタなどの簡易コネクタ12,14によってストラップ10に固定または着脱自在に取り付けられた電子機器モジュール16に組み込んでもよい。電子機器モジュール16は、心臓活動量センサ構造100に動力を供給するためのバッテリをさらに備えていてもよく、当該バッテリは再充電可能なものであっても、使い捨てのものであってもよい。」

(甲1ウ)
「[0014] Let us now consider the structure of the heart activity sensor structure 100 in greater detail with reference to an embodiment illustrated in Figures 2 and 3. Figures 2 and 3 illustrate different explosion views of the components of the heart activity sensor structure 100, wherein Figure 2 is a side view, and Figure 3 is a perspective view. Referring to Figures 2 and 3 , the heart activity sensor structure 100 comprises the flexible textile substrate 20, also known as a base layer or a supporting layer. The flexible textile substrate 20 may form the base of the heart activity sensor structure 100, and the flexible textile substrate 20 may comprise textile that supports the heart activity sensor structure 100. The flexible textile substrate 20 may comprise woven or knitted textile with elastic components, such as rubber and/or thermoplastic. The flexible textile substrate 20 may form a substrate for mounting at least the electrodes 24, 26. The physical dimensions of the flexible textile substrate 20 may be in the order of 15 cm times 2 cm (length x width).」
「[0014] 次に、図2および図3に示された実施形態を参照しながら、心臓活動量センサ構造100の構造についてより詳細に検討する。図2および図3には、心臓活動量センサ構造100の部品の異なる拡大図が示されている。図2は側面図であり、図3は斜視図である。図2および図3を参照すると、心臓活動量センサ構造100は、ベース層または支持層としても知られる可撓性布地基材20を備える。可撓性布地基材20は、心臓活動量センサ構造100のベースを形成してもよく、可撓性布地基材20は、心臓活動量センサ構造100を支持する布地を含んでいてもよい。可視性布地基材20は、ゴムおよび/または熱可塑性プラスチックなどの弾性要素と共に織られた布または編まれた布地を含んでいてもよい。可撓性布地基材20は、少なくとも電極24,26を取り付けるための基材を形成していてもよい。可撓性布地基材20の物理的寸法は、15cm×2cm(長さ×幅)程度であってもよい。」

(甲1エ)
「[0015] In an embodiment, the flexible textile substrate 20 is bendably flexible (e.g. flexible so that the textile substrate 20 may be bent, flexed or twisted without breaking). In an embodiment, the flexible textile substrate 20 is stretchably flexible (e.g. flexible so that it may be stretched in longitudinal and/or transversal direction).」
「[0015] 一実施形態において、可撓性布地基材20は屈曲自在な柔軟性(例えば、布地基材20を破断させることなく、屈曲させたり、曲げたり、捩ったりできる柔軟性)を有する。一実施形態において、可撓性布地基材20は伸縮自在な柔軟性(例えば、長手方向および/または横方向に伸長させることができる柔軟性)を有する。」

(甲1オ)
「[0016] The heart activity sensor structure may further comprise an electrode layer 30 comprising one or more electrodes 24, 26. The at least two electrodes 24, 26 may be applied on one side of the flexible textile substrate 20 and configured to be placed against (contact) the skin 32 of the exerciser 60 either directly or indirectly. The electrodes 24, 26 may measure biosignals related to heart activity, such as ECG signals, from the skin 32 of the exerciser 60 and convey the detected electric signals to the electronics module 16 connected to the connectors 12, 14. The electrodes 24, 26 may be made at least partially of a conductive material, e.g. conductive silicon, conductive thermoplastic and/or conductive yarn. The connectors 12, 14 may be disposed to penetrate the flexible textile substrate 20 and any layer between the flexible textile substrate 20 and the electrode layer 30 to provide a galvanic connection between the electrodes 24, 26 and the electronics module 16 disposed on opposite sides of the flexible textile substrate 20. In the embodiment shown in Figures 2 and 3 , the connectors 12, 14 penetrate also the electrode layer 30, e.g. each electrode 24, 26.」
「[0016] 心臓活動量センサ構造は、1つまたは複数の電極24,26を備える電極層30をさらに備えていてもよい。前記少なくとも2つの電極24,26は可撓性布地基材20の一方の面に取り付けてもよく、直接または間接的に運動者60の皮膚32に配置される(接触する)ように構成されていてもよい。電極24,26は、運動者60の皮膚32からECG信号などの心臓活動量と関係する生体信号を測定して、検出された電気信号をコネクタ12,14に接続された電子機器モジュール16に伝達してもよい。電極24,26は、少なくとも部分的に導電性材料(例えば、導電性シリコン、導電性の熱可塑性プラスチックおよび/または導電性の糸)から形成されていてもよい。コネクタ12,14は、可撓性布地基材20と、可撓性布地基材20および電極層30の間の任意の層とを貫通するように配置されて、電極24,26と、可撓性布地基材20の両側に配置された電子機器モジュール16との間にガルバニック接続を形成してもよい。図2および3に示される実施形態において、コネクタ12,14は、電極層30(例えば、各電極24,26)も貫通している。」

(甲1カ)
「[0017] An intermediate insulation layer 22 may be provided as an intermediate layer between the flexible textile substrate 20 and the electrode layer 30. The intermediate insulation layer 22 functions as an electric insulation layer insulating the electrode layer 30 from the flexible textile substrate 20. However in an embodiment, there is no need for the intermediate insulation layer 22 in case the flexible textile substrate 20 is not electrically conductive or is not directly contacting the electrodes. It should be noted though that the flexible textile substrate 20 may become electrically conducting after absorbing moisture during the exercise.」
「[0017] 可撓性布地基材20と電極層30との間の中間層として、中間絶縁層22を設けてもよい。当該中間絶縁層22は、電極層30を可撓性布地基材20から絶縁する電気絶縁層として機能する。しかしながら、一実施形態において、可撓性布地基材20が導電性を有していない場合、または電極と直接接触していない場合、中間絶縁層22は不要である。なお、可撓性布地基材20は、運動中に水分を吸収した後、導電性を有するようになる可能性がある。」

(甲1キ)
「[0019] When the number of electrodes 24, 26 is higher than one, the electrodes 24, 26 may be electrically isolated/insulated from each other. The electrical isolation from a surface contacting the skin 32 of the exerciser 60 may be achieved by providing a skin insulation layer 28 such that the electrodes 24, 26 are at least partially disposed between the skin isolation layer 28 and the flexible textile substrate 20. The skin isolation layer 28 reduces a short circuit between the electrodes 24, 26 through the skin 32 of the exerciser 60. The skin insulation layer 28 comprises insulating material, such as thermoplastic material, to carry out the isolation. In the case the number of electrodes 24, 26 is higher than two, the skin insulation layer 28 may in some embodiments comprise a plurality of separate insulating portions to insulate the different electrodes 24, 26 from each other.」
「[0019] 電極24,26の数が1つよりも多い場合、電極24,26は互いに電気的に分離/絶縁されていてもよい。運動者60の皮膚32と接触する表面からの電気的な絶縁は、電極24,26が少なくとも部分的に皮膚絶縁層28と可撓性布地基材20との間に配置されるように皮膚絶縁層28を設けることによって達成してもよい。皮膚絶縁層28により、運動者60の皮膚32を介した電極24,26間の短絡が抑えられる。皮膚絶縁層28は、絶縁を実現するために熱可塑性材料などの絶縁材料を含む。電極24,26の数が2つよりも多い場合、皮膚絶縁層28は、いくつかの実施形態において、異なる電極24,26を互いに絶縁するために複数の個別の絶縁部を備えていてもよい。」

(甲1ク)
「[0020] As said earlier, the environmental conditions affect the success of the heart activity measurement, which may be based on detecting millivolt-range signals on the skin 32 of the person 60. These environmental conditions may include static electricity and voltage generation from external sources, such as from the clothes or textiles of the exerciser 60. Accordingly, the heart activity sensor structure 100, as shown in Figures 4A and 4B , further comprises an electrostatic discharge (ESD) shield 40 applied on one side of the textile substrate 20 for protecting the at least two electrodes 24, 26 from static electricity. The intermediate insulation layer 22, the skin insulation layer 28, the instant connectors 12, 14, and other through-hole related elements shown in Figures 1 to 3 are not depicted in all of the Figures for reasons of simplicity. However, in an embodiment, at least some or all of the omitted elements are comprised in the various embodiments of the heart activity sensor structure 100.」
「[0020] 上述したように、環境条件は、心臓活性測定の成功に影響する。それは、人60の皮膚32上のミリボルト範囲信号の検知に基づいてもよい。これらの環境条件は、運動者60の衣服または布地のような外部ソースからの静電気および電圧生成を含んでいてもよい。従って、心臓活性センサ構造100は、図4Aおよび4Bに示されるように、静電気から、少なくとも2つの電極24および26を保護するために、布地基材20の一方の上に静電放電(ESD)シールド40を適用してさらに含んでいる。中間絶縁層22、皮膚絶縁層28、インスタントコネクタ12、14、および図1?3に示される他の貫通孔に関連する構成要素は、単純化のために図のすべてで図示されていない。しかしながら、一実施態様では、省略された構成要素のうちの少なくともいくつかまたはすべては、心臓活性センサ構造100の様々な実施態様に含まれる。」

(甲1ケ)
「[0028] In Figures 4A to 5C , dashed lines show how the electrical connection between the electrodes 24, 26 and the electronics module16 is provided. The electrical connection, such as an electrically conducting wire, may penetrate the flexible textile substrate 20, the ESD shield 40 and/or the insulation layer(s) 42A, 42B. The penetration may be provided with through-holes in the flexible textile substrate 20, in the ESD shield 40 and/or in the insulation layer(s) 42A, 42B. The through-holes may be electrically insulated from the corresponding layer to which they are formed, e.g. from the flexible textile substrate 20, the ESD shield 40 and/or the insulation layer(s) 42A, 42B. This may be beneficial so as conduct the measured ECG signals only to the electronics module 16 and not to the layers of the heart activity sensor structure 100.」
「[0028] 図4Aから図5Cにおいて、破線は、どのように電極24,26と電子機器モジュール16との間の電気的接続が提供されるかを示している。電気的に導電するワイヤなどの電気的接続は、可撓性布地基材20、ESDシールド40、および/または絶縁層42 A,42Bを貫通していてもよい。このような貫通は、可撓性布地基材20、ESDシールド40、および/または絶縁層42A,42Bにおける貫通孔によって実現されていてもよい。当該貫通孔は、それらが形成された対応の層から(例えば、可撓性布地基材20、ESDシールド40、および/または絶縁層42A,42Bから)電気的に絶縁されていてもよい。この構成は、測定されたECG信号を電子機器モジュール16のみへと伝達し、心臓活動量センサ構造100の層には伝達しないようにできるので、有益であろう。」

(甲1コ)FIG1?3


(甲1サ)FIG4


(2)甲1発明

ア 段落[0011]の「一実施形態において、心臓活動量センサ構造100はストラップ10を備える。なお、心臓活動量センサ構造100は代替的に、ストラップ10の代わりに、シャツ、トップ、ブラジャー、リストバンドあるいはズボンなどの衣服に取り付けてもよい。」という記載、及びFIG4をみると、心臓活動量センサ構造100は、ストラップ10の代わりに、衣服(シャツやブラジャー)の内面に取り付けることが理解できる。

イ 段落[0016]の「コネクタ12,14は、可撓性布地基材20と、可撓性布地基材20および電極層30の間の任意の層とを貫通するように配置されて」という記載、及びFIG1?3をみても、心臓活動量センサ構造100は、コネクタ12,14を備えることは明らかである。

ウ 段落[0016]の「コネクタ12,14は、可撓性布地基材20と、可撓性布地基材20および電極層30の間の任意の層とを貫通するように配置されて」という記載、及びFIG1?3をみると、コネクタ12,14は、可撓性布地基材20に取り付けられることが見て取れる。

エ 段落[0017]の「可撓性布地基材20が導電性を有していない場合、・・・中間絶縁層22は不要である」という記載によれば、中間絶縁層22を備えず、可撓性布地基材20は、電気絶縁性材料から形成されることも理解できる。

オ 段落[0019]の「運動者60の皮膚32と接触する表面からの電気的な絶縁は、電極24,26が少なくとも部分的に皮膚絶縁層28と可撓性布地基材20との間に配置されるように皮膚絶縁層28を設けることによって達成」するという記載、及びFIG3をみると、コネクタ12,14における運動者60の皮膚32側と、電極24,26における運動者60の皮膚32側の一部分とに、皮膚絶縁層28を設けることが見て取れる。

カ 上記ア?オを含め上記(1)の記載を総合すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「衣服(シャツやブラジャー)の内面に取り付ける心臓活動量センサ構造100であって、
可撓性布地基材20を備え、可撓性布地基材20は、心臓活動量センサ構造100のベースを形成し、電気絶縁性材料から形成され、
コネクタ12,14を備え、コネクタ12,14は、可撓性布地基材20に取り付けられ、可撓性布地基材20を貫通するように配置され、
コネクタ12,14に接続される電極24,26を備え、電極24,26は、導電性材料から形成され、可撓性布地基材20の一方の面に取り付けられ、運動者60の皮膚32に配置される(接触する)ように構成され、運動者60の皮膚32からECG信号を測定して、測定されたECG信号をコネクタ12,14に接続された電子機器モジュール16に伝達し、
電極24,26と電子機器モジュール16との間の電気的接続は、可撓性布地基材20における貫通孔によって実現され、当該貫通孔は、可撓性布地基材20から電気的に絶縁されていて、測定されたECG信号を電子機器モジュール16のみへと伝達し、
運動者60の皮膚32と接触する表面からの電気的な絶縁は、コネクタ12,14における運動者60の皮膚32側と、電極24,26における運動者60の皮膚32側の一部分とに、皮膚絶縁層28を設けることによって達成する、
心臓活動量センサ構造100。」

2 甲2について
本件特許出願の優先権主張日前に頒布された甲2には、以下の記載がある。

(甲2ア)
「[0034] A sensor apparatus (in this embodiment shaped like a textile tube) comprises a first textile layer 11 , which in use is in contact with the user's skin 1 . The apparatus further comprises a second textile layer 13 (which in use is on the outside of a garment) and an intermediate third layer 12 .」
「[0034] センサ装置(当該実施形態においては、テキスタイルチューブのような形状である)は、使用時にユーザの皮膚1に接触する第1の布地層11を備える。当該装置は、(使用時に衣服の外側にある)第2の布地層13と、中間の第3の層12とをさらに備える。」

(甲2イ)
「[0037] Further in the embodiment of FIG. 1 , electrical paths or "tracks" 15 are provided in the second textile layer 13 to electrically connect the ECG sensors 14 to fasteners 16 . In this embodiment, the fasteners are press studs. The female parts of the press studs 16 comprise top part 16 a provided in second textile layer 13 , and bottom part 16 b provided below intermediate textile layer 12 . The male parts 21 of the press studs are provided on an electronic device 20 which may be attached to the sensor apparatus and garment. 」
「[0037] さらに、図1の実施形態において、第2の布地層13に電気的な経路または「トラック」15を配設してECGセンサ14を留め具16に電気的に接続する。この実施形態において、留め具はスナップボタンである。スナップボタン16のメス部材は、第2の布地層13に設けられた上部16aと、中間の布地層12よりも下方に設けられた底部16bとを備える。スナップボタンの雄部材21は電子機器20に設けられており、電子機器20は、前記センサ装置および衣服に取り付けられていてもよい。」

(甲2ウ)Figure1


3 甲3について

(1)甲3の記載
本件特許出願の優先権主張日前に頒布された甲3には、以下の記載がある。

(甲3ア)
「[0028] 20. A sensor which comprises an electrode, a track and an electrical connector, wherein, the track is comprising an electrically conductive flexible and elastic material that comprises an electrically conductive material that is non-continguous that when stretched is able to transmit a signal from an electrode to an electrical connector and from an electrical connector to an electrode.」
「[0028] 20.電極、トラック、及び電気コネクタを備えるセンサであって、前記トラックが、引き伸ばされるときに不連続である導電性材料を含む導電性の可撓性及び弾性材料を含み、信号を電極から電気コネクタに及び電気コネクタから電極に伝送することができる、センサ。」

(甲3イ)
「[0158] FIG. 2 shows an exploded perspective view of a sensor 1 wherein a conductive layer comprises electrode 3 and track 4 . In an embodiment, electrode 3 comprises one or more orifices 6 of any shape and size filled with a flexible non-coductive, semi-conductive or conductive material, including, without limitation, silicone rubber and/or fluorosilicone rubber that, without limitation, may include an electrically conductive material. Electrical connector 5 is in contact with track 4 of a conductive layer and track 4 can be covered with insulating material 8 . Electrical connector 5 comprises a first and a second portion, wherein the first portion comprise female-type clip portion 9 and the connector second portion may comprise male-type stud portion 10 , which portions mate with each other. Electrical connector 5 can, without limitation, include any type of connectors 9 and 10 , including where 9 constitutes a male type connector and 10 constitutes a female type connector, which portions mate with each other.
[0159] As depicted in FIG. 2 , sensor 1 of the present invention allows measuring the electrical physiological signals during physical activity. As mentioned above, a first aspect of the invention relates to sensor 1 to be placed in contact with skin 12 of an individual for acquiring physiological signals which comprises: a) conductive layer 2 comprising at least conductive fibers to be placed in contact with skin 12 for receiving physiological signals; b) electrical connector 5 connected to the conductive layer; characterized in that the conductive layer comprises a plurality of orificies 6 filled with a silicone rubber and/or fluorosilicone rubber throughout the conductive area.
[0160] In an embodiment, as depicted in FIG. 2 , the conductive layer 2 is made of conductive material, selected from conductive fabric. In another embodiment, it is provided a sensor 1 adapted to be integrated in a garment 7 so as to be placed in contact with skin 12 of a user during the use of the garment 7 , wherein said sensor 1 comprises a conductive layer 2 to be placed in contact with the skin 12 for receiving physiological signals comprising at least: an electrode 3 ; a track 4 ; and an electrical connector 5 connected with the track 4 ; wherein the electrode 3 of the conductive layer 2 comprises a plurality of orificies 6 or grooves 11 in a predefined pattern filled with an anti-slip material. In an embodiment, the electrode 3 of the conductive layer 2 comprises a plurality of orificies.
[0161] According to an embodiment, electrode 3 and track 4 are made of the same or different material. In an embodiment, electrode 3 and track 4 independently from each other is a conductive fabric comprising a conductive fiber and a non-conductive fiber. In another embodiment, electrode 3 and track 4 refer to a conductive fabric made of a conductive fiber. In another embodiment, electrode 3 and track 4 refer to a conductive fabric made of a conductive fiber and a non-conductive fiber. When orificies 6 or grooves 11 are filled with a flexible, semi-conductive or conductive material, for instance, without limitation, a silicone rubber, such flexible semi-conductive or conductive material presents a flat or relief profile. In an embodiment, without limitation, a silicone rubber and/or a fluorosilicone rubber shows a relief profile. In an embodiment, an electrode is placed in a fabric in such a way that it is electrically in contact with a track.
[0162] FIG. 3A depicts a cross-section of sensor 1 . The cross-section of sensor 1 shows an electrode area 3 and orifice 6 filled with a flexible non-conductive, semi-conductive or a conductive material, including, without limitation, a silicone rubber and/or a fluorosilicone rubber that, without limitation, may include an electrically conductive material. Track 4 is made of the same material as electrode 3 . In an embodiment, a track and an electrode are made of a conductive fabric. In an embodiment, a sensor is in contact with skin 12 .
[0163] FIG. 3B depicts a cross-section of an embodiment of a sensor 1 . In this embodiment an electrode is made of a conductive fabric and a track 4 is made of a flexible non-conductive, semi-conductive or a conductive material, including, without limitation, silicone rubber and/or a fluorosilicone rubber that, without limitation, may include an electrically conductive material.
[0164] As illustrated, FIGS. 3A and 3B may comprise a male and a female portion of an electrical connector that are placed on the opposite face of a garment in juxtaposition with each other. Thus, a male or a female portion which is placed in the inner face, which will be in contact with skin 12 of an individual, is covered with insulating material 8 , which also covers track 4 of conductive layer 2 . As depicted in FIGS. 3A and 3B , a sensor 1 is integrated in garment 7 .
[0165] In an embodiment, as depicted in FIGS. 3A and 3B , electrode 2 comprises a conductive fabric made of conductive fibers and non-conductive fibers. In another embodiment, electrode 2 refers to a conductive fabric made of conductive fibers. In an embodiment, a conductive fiber is made of silver coated nylon (such as X-STATIC(R); yarns from Laird Sauquoit Industries) and a non-conductive fiber is made of nylon. In an embodiment, and without limitation, examples of conductive fibers include fibers made of silver, copper, nickel, stainless steel, gold, non-conductive fibers coated with a conductive material or mixtures thereof. In another embodiment, without limitation, examples of non-conductive fibers include wool, silk, cotton, flax, jute, acrylic fiber, polyamide polyester, nylon and/or with elastic yarns (such as LYCRA(R); branded spandex from INVISTA^(TM); S.a.r.l).」
「[0158] 図2は、導電層が電極3及びトラック4を含むセンサ1の分解斜視図を示す。一実施形態では、電極3は、限定ではなしに導電性材料を含み得る限定ではなしにシリコーンゴム及び/又はフルオロシリコーンゴムを含む可撓性の非導電性、半導電性、又は導電性材料が充填される任意の形状及びサイズの1つ以上のオリフィス6を備える。電気コネクタ5は導電層のトラック4と接触し、トラック4は絶縁材8で覆うことができる。電気コネクタ5は第1の部分及び第2の部分を備え、第1の部分は雌型クリップ部分9を含み、コネクタの第2の部分は雄型スタッド部分10を備えてもよく、これらの部分は互いに合致する。電気コネクタ5は、限定ではなしに、9が雄型コネクタを構成し、且つ10が雌型コネクタを構成し、これらの部分が互いに合致するものを含む、あらゆるタイプのコネクタ9及び10を含むことができる。
[0159] 図2に示すように、本発明のセンサ1は、物理的活動中の電気生理学的信号の測定を可能にする。前述のように、本発明の第1の態様は、a)生理学的信号を受信するための皮膚12と接触する状態で配置される少なくとも導電性繊維を含む導電層2と、b)導電層に接続される電気コネクタ5とを備える、生理学的信号を取得するための個体の皮膚12と接触する状態で配置されるセンサ1であって、導電層が導電性領域全体にわたってシリコーンゴム及び/又はフルオロシリコーンゴムが充填される複数のオリフィス6を備えることを特徴とするセンサ1に関する。
[0160] 一実施形態では、図2に示すように、導電層2は、導電布から選択される導電性材料で作製される。別の実施形態では、衣類7の使用中にユーザの皮膚12と接触する状態で配置されるように衣類7に一体化されるように適合されるセンサ1が提供され、前記センサ1は、少なくとも電極3、トラック4、及びトラック4と接続される電気コネクタ5を備える、生理学的信号を受信するための皮膚12と接触する状態で配置される導電層2を備え、導電層2の電極3は滑り止め材料が充填される所定パターンの複数のオリフィス6又は溝11を備える。一実施形態では、導電層2の電極3は複数のオリフィスを備える。
[0161] 一実施形態によれば、電極3とトラック4は同じ又は異なる材料で作製される。一実施形態では、電極3及びトラック4は、互いに独立して、導電性繊維及び非導電性繊維を含む導電布である。別の実施形態では、電極3及びトラック4は導電性繊維で作製された導電布を指す。別の実施形態では、電極3及びトラック4は導電性繊維及び非導電性繊維で作製された導電布を指す。オリフィス6又は溝11に可撓性、半導電性、又は導電性材料、例えば、限定ではなしにシリコーンゴムが充填されるとき、こうした可撓性の半導電性又は導電性材料は、平坦な又はレリーフの外形を与える。一実施形態では、限定ではなしにシリコーンゴム及び/又はフルオロシリコーンゴムは、レリーフの外形を呈する。一実施形態では、電極は、トラックと電気的に接触する状態でファブリックに配置される。
[0162] 図3Aは、センサ1の断面を示す。センサ1の断面は、電極領域3と、限定ではなしに導電性材料を含み得る限定ではなしにシリコーンゴム及び/又はフルオロシリコーンゴムを含む可撓性の非導電性、半導電性、又は導電性材料が充填されたオリフィス6とを示す。トラック4は、電極3と同じ材料で作製される。一実施形態では、トラック及び電極は導電布で作製される。一実施形態では、センサは皮膚12と接触している。
[0163] 図3Bは、センサ1の実施形態の断面を示す。この実施形態では、電極は、導電布で作製され、トラック4は、限定ではなしに導電性材料を含み得る限定ではなしにシリコーンゴム及び/又はフルオロシリコーンゴムを含む可撓性の非導電性、半導電性、又は導電性材料で作製される。
[0164] 示されるように、図3A及び図3Bは、衣類の反対の面上に互いと並列に配置される電気コネクタの雄雌部分を備えることができる。したがって、個体の皮膚12と接触する内面に配置される雄又は雌部分は、絶縁材8で覆われ、これは導電層2のトラック4も覆う。図3A及び図3Bに示すように、センサ1は衣類7に一体化される。
[0165] 一実施形態では、図3A及び図3Bに示すように、電極2は、導電性繊維及び非導電性繊維で作製された導電布を含む。別の実施形態では、電極2は導電性繊維で作製された導電布を指す。一実施形態では、導電性繊維は、銀被覆ナイロン(Laird Sauquoit IndustriesからのX-STATIC(登録商標)ヤーンなど)で作製され、非導電性繊維は、ナイロンで作製される。一実施形態では、限定ではなしに、導電性繊維の例は、銀、銅、ニッケル、ステンレス鋼、金で作製された繊維、導電性材料で被覆された非導電性繊維、又はそれらの混合物を含む。別の実施形態では、限定ではなしに、非導電性繊維の例は、ウール、絹、綿、亜麻、ジュート、アクリル繊維、ポリアミドポリエステル、ナイロンを含む、及び/又は弾性ヤーン(INVISTA(商標)S.a.r.lからのLYCRA(登録商標)の商標のついたスパンデックスなど)を伴う。」

(甲3ウ)
「[0171] FIG. 5 depicts a cross-section elevation view of a connection between an embodiment of sensor 1 and electronic instrument 14 . Sensor 1 is connected, for illustrative purposes only, and without limitation, to electronic connector 5 using female-type clip portion 9 and male-type stud portion 10 . Electronic instrument 14 may be directly attached to an electrical connector directly through a coupling, through attachment by a wire between electronic instrument 14 and the electronic connector and/or through a wireless connection.
[0172] In an embodiment, a device as depicted in FIG. 5 comprises at least one sensor 1 and an electronic instrument 14 for receiving and collecting and/or storing and/or processing, and/or transmitting data from said sensor. Using the sensor of the invention, the physiological signals detected can be at least one of the following data: cardiac pulse, respiratory frequency, electrodermal response (EDR), measures electrical skin conductivity, electrocardiography (ECG), electromyography (EMG). These signals refer to electrical signals produced in the body.
[0173] In an embodiment, a garment is, without limitation, a shirt, a coat, a top, a girdle, underwear, suspenders, a wrist strip, a headband, a belt, a band, a sock, a pair of trousers, a glove, a t-shirt with long sleeves, a t-shirt with short sleeves, a tank top, a leotard, a bra, a sleeveless top, a halter top, a spaghetti-strapped shirt, a singlet, an A-shirt, a tube top and/or any other article that an individual can wear.」
「[0171] 図5は、センサ1の実施形態と電子機器14との間の接続の断面立面図を示す。センサ1は、単に例証する目的で、限定ではなしに、雌型クリップ部分9及び雄型スタッド部分10を用いて電子コネクタ5(当審注:電子コネクタ5は、電子機器14の誤記と認める。)に接続される。電子機器14は、電気コネクタに、直接結合を通じて直接、電子機器14と電子コネクタとの間のワイヤによる接続を通じて、及び/又は無線接続を通じて接続されてもよい。
[0172] 一実施形態では、図5に示すデバイスは、少なくとも1つのセンサ1と、前記センサからのデータを受信及び収集及び/又は記憶及び/又は処理及び/又は伝送するための電子機器14とを備える。本発明のセンサを用いて、検出される生理学的信号は、以下のデータ、すなわち、心臓のパルス、呼吸頻度、皮膚電気反応(EDR)、電気皮膚伝導度、心電図記録法(ECG)、筋電図検査(EMG)の測定値のうちの少なくとも1つとすることができる。これらの信号は、体内で生じた電気信号を指す。
[0173] 一実施形態では、衣類は、限定ではなしに、シャツ、コート、上衣、ガードル、下着、サスペンダー、リストストリップ、ヘッドバンド、ベルト、バンド、靴下、ズボン、手袋、長袖のTシャツ、半袖のTシャツ、タンクトップ、レオタード、ブラ、ノースリーブの上衣、ホルターネックの上衣、スパゲティストラップのシャツ、袖なしアンダーシャツ、A-シャツ、チューブトップ、及び/又は個体が着用できる任意の他の物品である。」

(甲3エ)
「[0179] In another embodiment, as depicted in FIG. 2 , the track 4 and the electric connector 5 are covered with an insulating material 8 . In an embodiment, for a sensor in contact with the skin of an individual, the electrode/skin impedance is an element to determine the noise of a signal.・・・
・・・
[0181] In another embodiment, as depicted in FIG. 4 , the outer layer 13 comprises a system to regulate the pressure. In a further embodiment, the inner layer has low elasticity and the outer layer 13 has high elasticity. The inner layer is comprising a blend of synthetic fiber and spandex, wherein the synthetic fiber comprises 85% to 90% by weight of the composite elastic material and in a further embodiment, 87% to 89%, and wherein the spandex comprises 10% to 15% by weight of the composite elastic material, and in a further embodiment 11% to 13%. In another embodiment, the outer layer 13 is comprised of a blend of synthetic fiber and spandex, wherein the synthetic fiber comprises 92% to 97% by weight of the composite elastic material and in a further embodiment, 94% to 96%, and wherein the spandex comprises 3% to 8% by weight of the composite elastic material, and in a further embodiment, 4% to 6%. The outer layer 13 compresses the sensor to the skin, and the stability and fixation of the sensor 1 are improved.
・・・
[0183] As depicted in FIGS. 2 , 3 A, 3 B and 4 , track 4 of conductive layer 2 of sensor 1 is placed between inner and outer layer 13 of the garment, and electrode 3 is over the inner layer of the garment, electrode 3 being able to be in contact with skin 12 of the user of garment 7 . The sensor 1 as depicted in FIG. 2 can be prepared by a process comprising the steps of: a) die cutting a conductive layer of conductive fabric; b) adding a hot melt adhesive on one surface of the conductive layer; c) screen printing with an anti-slip flexible semi-conductive or conductive material, including, without limitation, silicone rubber on the orificies 6 or grooves 11 of the electrode 3 , at a temperature comprise between 10-30℃.; and d) curing the silicone, and in an embodiment, without limitation, for up two minutes at a temperature comprised between 130-190℃. The process can further comprise the step of screen printing with a flexible and/or elastic semi-conductive or conductive material, including, without limitation, silicone rubber loaded with a conductive material to form track 4 .
・・・
[0196] In another embodiment, an electrical conductive area, including, without limitation, a track, is not printed directly into a fabric. In this embodiment, there is a second layer of a flexible and/or elastic material, including, without limitation, a silicone layer and/or a fluorosilicone between a fabric and a conductive area and a second layer of a flexible and/or elastic material, including, without limitation, a silicone and/or a fluorosilicone that is printed into a fabric and is integrated into the fabric as, without limitation, it is able to penetrate the orifices of the fabric and anchor the electronically conductive area in the fibers of the fabric. In an embodiment, a flexible material, including, without limitation, a silicone and/or a fluorosilicone that is loaded with an electrically conductive material is printed over the second flexible and/or elastic material, including, without limitation, a silicone and integrated into a molecular structure of the second flexible material, including, without limitation, a silicone and/or a fluorosilicone by means of chemical bonds. In either case the fabric cohesive strength is improved and a situation where a flexible and/or elastic material, including, without limitation, a silicone and/or a fluorosilicone that is loaded with an electrically conductive material and the second flexible and/or elastic material, including, without limitation, a silicone and/or a fluorosilicone are jointly integrated into the fabric.」
「[0179] 別の実施形態では、図2に示すように、トラック4及び電気コネクタ5は絶縁材8で覆われる。一実施形態では、個体の皮膚と接触するセンサに関して、電極/皮膚インピーダンスは、信号のノイズを判定するための要素である。・・・
・・・
[0181] 別の実施形態では、図4に示すように、外側層13は、圧力を調整するシステムを備える。さらなる実施形態では、内側層は低い弾性を有し、外側層13は高い弾性を有する。内側層は、合成繊維とスパンデックスとのブレンドを含んでおり、合成繊維は、複合弾性材料の重量の85%?90%、さらなる実施形態では87%?89%を構成し、スパンデックスは、複合弾性材料の重量の10%?15%、さらなる実施形態では11%?13%を構成する。別の実施形態では、外側層13は、合成繊維とスパンデックスとのブレンドからなり、合成繊維は、複合弾性材料の重量の92%?97%、さらなる実施形態では94%?96%を構成し、スパンデックスは、複合弾性材料の重量の3%?8%、さらなる実施形態では4%?6%を構成する。外側層13は、センサを皮膚に圧迫し、センサ1の安定性及び固定が改善される。
・・・
[0183] 図2、図3A、図3B、及び図4に示すように、センサ1の導電層2のトラック4は、衣類の内側層と外側層13との間に配置され、電極3は衣類の内側層の上にあり、電極3は衣類7のユーザの皮膚12と接触することができる。図2に示すセンサ1は、a)導電布の導電層をダイカットするステップと、b)導電層の1つの表面上にホットメルト接着剤を付加するステップと、c)10?30℃を含む温度で電極3のオリフィス6又は溝11上に、限定ではなしにシリコーンゴムを含む滑り止めの可撓性の半導電性又は導電性材料をスクリーン印刷するステップと、d)一実施形態では限定ではなしに130?190℃を含む温度で2分間、シリコーンを硬化させるステップとを含むプロセスによって用意することができる。プロセスは、トラック4を形成するために導電性材料に装填される、限定ではなしにシリコーンゴムを含む可撓性及び/又は弾性の半導電性又は導電性材料をスクリーン印刷するステップをさらに含むことができる。
・・・
[0196] 別の実施形態では、限定ではなしにトラックを含む導電性領域は、ファブリックに直接印刷されない。この実施形態では、ファブリックと導電性領域との間に、限定ではなしにシリコーン層及び/又はフルオロシリコーンを含む可撓性及び/又は弾性材料の第2の層が存在し、限定ではなしにシリコーン及び/又はフルオロシリコーンを含む可撓性及び/又は弾性材料の第2の層は、限定ではなしにファブリックのオリフィスに入り込み、ファブリックの繊維の中に導電性領域を固定することができるので、ファブリックに印刷され、ファブリックに一体化される。一実施形態では、導電性材料に装填される、限定ではなしにシリコーン及び/又はフルオロシリコーンを含む可撓性材料は、限定ではなしにシリコーンを含む第2の可撓性及び/又は弾性材料の上に印刷され、化学結合によって限定ではなしにシリコーン及び/又はフルオロシリコーンを含む第2の可撓性材料の分子構造に一体化される。いずれの場合にも、導電性材料に装填される限定ではなしにシリコーン及び/又はフルオロシリコーンを含む可撓性及び/又は弾性材料と、限定ではなしにシリコーン及び/又はフルオロシリコーンを含む第2の可撓性及び/又は弾性材料が一緒にファブリックに一体化される状態で、ファブリックの凝集力が改善される。」

(甲3オ)
「[0199] In another embodiment, as depicted in FIGS. 15A and 15B , the fabric further comprises a coating of an insulating material covering a sensor, including, without limitiation, silicone rubber and/or fluorsilicone rubber that, without limitation, may, but is not required to be loaded with an electrically conductive material. In another embodiment, an insulating material covers a track and/or an electrode. In an embodiment, an insulating material is an anti-slip material, including, without limitation, silicone rubber and/or fluorosilicone rubber. In an embodiment, a fabric of the invention acquires a physiological signal when electrode 3 is placed in contact with the skin of an individual. In another embodiment, a fabric comprises electrode 3 that is placed in contact with the skin of an individual and further wherein, without limitation, an electrical contact is located in track 4 .」
「[0199] 別の実施形態では、図15A及び図15Bに示すように、ファブリックは、センサを覆う、限定ではなしに導電性材料に装填され得るが装填される必要はない限定ではなしにシリコーンゴム及び/又はフルオロシリコーンゴムを含む絶縁材のコーティングをさらに含む。別の実施形態では、絶縁材はトラック及び/又は電極を覆う。一実施形態では、絶縁材は、限定ではなしにシリコーンゴム及び/又はフルオロシリコーンゴムを含む滑り止め材料である。一実施形態では、本発明のファブリックは、電極3が個体の皮膚と接触する状態で配置されるときに生理学的信号を取得する。別の実施形態では、ファブリックは、個体の皮膚と接触する状態で配置される電極3を備え、さらに、限定ではなしに、トラック4に電気接触が存在する。」

(甲3カ)FIG2,3


(甲3キ)FIG5


(2)甲3発明
上記(1)の記載を総合すると、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

「衣類7の使用中にユーザの皮膚12と接触する状態で配置されるように衣類7に一体化されるように適合されるセンサ1であって、
生理学的信号を受信するための皮膚12と接触する状態で配置される導電層2と、導電層2に接続される電気コネクタ5とを備え、
導電層2が電極3及びトラック4を含み、
電気コネクタ5は導電層2のトラック4と接触し、電気コネクタ5は雌型クリップ部分9及び雄型スタッド部分10を備え、これらの部分は衣類7を挟んで互いに合致し、電気コネクタ5は、衣類7の外側から電子機器14に接続され、
トラック4及び電気コネクタ5の雄型スタッド部分10は絶縁材8で覆われる、
センサ1。」

第6 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1?6(特許掲載公報の特許請求の範囲に記載されたもの)に係る特許に対して、当審が令和元年5月9日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

理由1 (進歩性)請求項1、2、4?6に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された技術事項、甲3に記載された技術事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、4?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

理由2 (明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

請求項1に記載の「前記コネクタと前記配線の表面のうち、生体と接触する部分を被覆する電気絶縁性の第1の絶縁部材」における「前記コネクタと前記配線の表面のうち、生体と接触する部分」は、「第1の絶縁部材」を備えた「生体電極」(完成後の請求項1の生体電極)において、存在しないことから、上記記載は、明確であるとはいえない。
また、請求項2に記載の「前記配線は、前記コネクタの前記生体と接触する側と前記電極部とを電気的に接続する」における「前記コネクタの前記生体と接触する側」は、「第1の絶縁部材」を備えた「生体電極」(完成後の請求項2の生体電極)において、存在しないことから、上記記載は、明確であるとはいえない。
また、請求項3に記載の「前記配線は、前記衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側と反対側に引き出され、前記コネクタの前記生体と接触する側と反対側と、前記電極部とを電気的に接続する」における「前記コネクタの前記生体と接触する側」は、「第1の絶縁部材」を備えた「生体電極」(完成後の請求項3の生体電極)において、存在しないことから、上記記載は、明確であるとはいえない。
したがって、請求項1?3に係る発明1?3は、明確であるとはいえない。また、請求項1?3を直接又は間接的に引用する請求項4?6に係る発明も、同様の理由で明確であるとはいえない。

第7 取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1?6(令和元年7月16日提出の訂正請求書に添付された特許請求の範囲に記載されたもの)に係る特許に対して、当審が令和元年9月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(進歩性)請求項1、2、4?6に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、4?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

なお、当審が令和元年5月9日付けで通知した取消理由の理由2(明確性)は、令和元年7月16日提出の訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項の記載について、請求項1の「前記コネクタと前記配線の表面のうち、生体と接触する部分」を「前記コネクタと前記配線の表面のうち、前記衣類の生体と接触する側を被覆する電気絶縁性の第1の絶縁部材」、請求項2の「前記配線は、前記コネクタの前記生体と接触する側と前記電極部とを電気的に接続する」を「前記配線は、前記コネクタにおける前記衣類の生体と接触する側と、前記電極部とを電気的に接続する」、請求項3の「前記配線は、前記衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側と反対側に引き出され、前記コネクタの前記生体と接触する側と反対側と、前記電極部とを電気的に接続する」を「前記配線は、前記衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側の反対側に引き出され、前記コネクタにおける前記衣類の生体と接触する側の反対側と、前記電極部とを電気的に接続する」と訂正することにより解消されており、本件訂正でも同様の訂正がされていることが確認された。

第8 新規性及び進歩性に係る特許異議申立理由の概要
特許異議申立書において、特許異議申立人が申立てた理由のうち、訂正前の請求項3(特許掲載公報の特許請求の範囲に記載されたもの)に係る特許に対する新規性及び進歩性に係る理由の要旨は、次のとおりである。

理由1 請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明であるか、又は、甲1に記載された発明及び甲3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第1項又は同条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

理由2 請求項3に係る発明は、甲3に記載された発明であるか、又は、甲3に記載された発明及び甲1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第1項又は同条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

第9 当審の判断

1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
請求項に係る発明は、本件訂正により、取消理由を通知していない本件発明3及び請求項3の記載を直接又は間接的に引用する本件発明4?6のみになったことから、本件発明3?6に係る特許は、当該取消理由によって取り消すことはできない。

2 新規性及び進歩性に係る特許異議申立理由について

(1)理由1について

ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「衣服(シャツやブラジャー)の内面に取り付け」、「電気絶縁性材料から形成され」る「可撓性布地基材20」は、本件発明3の「衣類の生体と接触する面に固定された電気絶縁性の部材からなる取り付け部材」に相当する。

(イ)甲1発明の「導電性材料から形成され、可撓性布地基材20の一方の面に取り付けられ」る「電極24,26」のうち、「皮膚絶縁層28を設け」ていない電極部分は、本件発明3の「この取り付け部材の生体と接触する面に固定された導電性の部材からなる電極部」に相当する。

(ウ)甲1発明の「電子機器モジュール16」は、本件発明3の「生体電気信号測定装置」に相当するところ、甲1発明の「可撓性布地基材20に取り付けられ」、「測定されたECG信号を」「電子機器モジュール16に伝達」するために「接続された」「コネクタ12,14」は、本件発明3の「前記取り付け部材に固定された、生体電気信号測定装置との接続のためのコネクタ」に相当する。

(エ)甲1発明の「導電性材料から形成され、可撓性布地基材20の一方の面に取り付けられ」る「コネクタ12,14に接続される電極24,26」のうち、「皮膚絶縁層28を設け」ている「一部分」は、本件発明3の「前記取り付け部材に固定され、前記コネクタと前記電極部とを電気的に接続する配線」に相当する。

(オ)甲1発明の「コネクタ12,14における運動者60の皮膚32側と、電極24,26における運動者60の皮膚32側の一部分とに」「設ける」「皮膚絶縁層28」は、本件発明3の「前記コネクタと前記配線の表面のうち、前記衣類の生体と接触する側を被覆する電気絶縁性の第1の絶縁部材」に相当する。

(カ)そして、甲1発明の「コネクタ12,14」が、「電子機器モジュール16」との接続用の導電部を含み、この導電部が「電子機器モジュール16」との接続のために露出することは明らかであるから、上記(ウ)を踏まえると、甲1発明の「コネクタ12,14は、可撓性布地基材20に取り付けられ」ることと、本件発明3の「前記コネクタは、生体電気信号測定装置との接続用の導電部を含み、この導電部が前記衣類の生体と接触する面と反対側の面に露出するように前記取り付け部材に固定され」ることとは、「前記コネクタは、生体電気信号測定装置との接続用の導電部を含み、この導電部が露出するように前記取り付け部材に固定され」ることで共通する。

(キ)甲1発明の「電極24,26を備え」た「心臓活動量センサ構造100」は、本件発明3の「生体電極」に相当する。

イ 一致点・相違点
してみると、本件発明3と甲1発明とは、次の点で一致し、次の各点で相違する。

(一致点)
「衣類の生体と接触する面に固定された電気絶縁性の部材からなる取り付け部材と、
この取り付け部材の生体と接触する面に固定された導電性の部材からなる電極部と、
前記取り付け部材に固定された、生体電気信号測定装置との接続のためのコネクタと、
前記取り付け部材に固定され、前記コネクタと前記電極部とを電気的に接続する配線と、
前記コネクタと前記配線の表面のうち、前記衣類の生体と接触する側を被覆する電気絶縁性の第1の絶縁部材と、
を備え、
前記コネクタは、生体電気信号測定装置との接続用の導電部を含み、この導電部が露出するように前記取り付け部材に固定される、生体電極。」

(相違点1)
取り付け部材に固定されるコネクタにおける導電部が露出する面が、本件発明3では、「前記衣類の生体と接触する面と反対側の面」、すなわち、衣類の外側であるのに対し、甲1発明では、「衣服(シャツやブラジャー)の内面」、すなわち、衣類の内側である点。

(相違点2)
本件発明3では、「前記コネクタと前記衣類との間、および前記配線と前記衣類との間を絶縁する電気絶縁性の第2の絶縁部材」を備えるのに対し、甲1発明では、この点の特定がない点。

(相違点3)
コネクタと電極部とを電気的に接続する配線について、本件発明3では、「前記配線は、前記衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側の反対側に引き出され、前記コネクタにおける前記衣類の生体と接触する側の反対側と、前記電極部とを電気的に接続する」のに対し、甲1発明では、「可撓性布地基材20の一方の面に取り付けられ」る「電極24,26」のうち、「皮膚絶縁層28を設け」ている「一部分」(本件発明3の「配線」に相当する。)が、「コネクタ12,14における運動者60の皮膚32側」と電気的に「接続」する点。

ウ 判断
事案に鑑み上記相違点3について検討する。

甲1?3は、いずれも本件発明3と同じ「生体電極」の技術分野に関するものであるが、上記相違点3に係る本件発明3の構成について記載も示唆もされていない。また、上記相違点3に係る本件発明3の構成が周知であるという証拠もない。そして、上記ア(エ)で述べたように、本件発明3の「前記コネクタと前記電極部とを電気的に接続する配線」に相当するものは、甲1発明の「コネクタ12,14に接続される電極24,26」のうち「皮膚絶縁層28を設け」ている「一部分」であるところ、甲1において、「コネクタ12,14に接続される電極24,26」は、Fig1?3にみられるとおり電極として平板状のものであるから、平板状「電極24,26」の「一部分」のみを、「衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側の反対側に引き出」し、「コネクタにおける前記衣類の生体と接触する側の反対側と」「電気的に接続」させることは、設計上想定しておらず、そのように設計変更することの動機は存在しないといえる。
よって、上記相違点3は、実質的な相違点であり、また、上記相違点3に係る本件発明3の構成は、甲1発明及び甲3に基づいて当業者が容易に想到し得ることでない。

エ 特許異議申立人の主張について
令和元年8月27日に提出された意見書において、特許異議申立人は、「(9)本件発明3の進歩性の欠如について
さらに、上記(6)で述べたように、甲1の段落[0016]には、「電極24,26は、少なくとも部分的に導電性材料(例えば、導電性シリコン、導電性の熱可塑性プラスチックおよび/または導電性の糸)から形成されていてもよい」と記載され、甲1の段落[0028]には、「図4Aから図5Cにおいて、破線は、どのように電極24,26と電子機器モジュール16との間の電気的接続が提供されるかを示している。電気的に導電するワイヤなどの電気的接続は、可撓性布地基材20、ESDシールド40、および/または絶縁層42 A,42Bを貫通していてもよい」と記載されており、また、コネクタの内部に配線を取り込み、両者をかしめて一体化することは、当業者の一般的な技術常識にすぎません。」と主張しているが、本件発明3では、コネクタと電極部とを接続する配線は、コネクタと異なる位置の「衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側の反対側に引き出され」ることが理解できるから、上記主張は採用できない。

オ 小括
以上のとおり、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明3及び請求項3の記載を直接又は間接的に引用する本件発明4?6は、甲1発明でも、甲1発明及び甲3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明3?6に係る特許は、特許法第29条第1項又は同条第2項の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものである、とはいえない。

(2)理由2について

ア 対比
本件発明3と甲3発明とを対比する。

(ア)甲3発明の「衣類7の使用中にユーザの皮膚12と接触する状態で配置されるように衣類7に一体化される」「電極3」と、本件発明3の「衣類の生体と接触する面に固定された電気絶縁性の部材からなる取り付け部材」「の生体と接触する面に固定された導電性の部材からなる電極部」とは、「衣類の生体と接触する面に固定された導電性の部材からなる電極部」の点で共通する。

(イ)甲3発明の「電子機器14」は、本件発明3の「生体電気信号測定装置」に相当するところ、甲3発明の「衣類7に一体化される」、「電子機器14に接続され」る「電気コネクタ5」と、本件発明3の「衣類の生体と接触する面に固定された電気絶縁性の部材からなる取り付け部材」「に固定された、生体電気信号測定装置との接続のためのコネクタ」とは、「前記衣類に固定された、生体電気信号測定装置との接続のためのコネクタ」の点で共通する。

(ウ)甲3発明の「衣類7に一体化され」、「電極3」と「電気コネクタ5」とを「接続」する「トラック4」と、本件発明3の「衣類の生体と接触する面に固定された電気絶縁性の部材からなる取り付け部材」「に固定され、前記コネクタと前記電極部とを電気的に接続する配線」とは、「前記衣類に固定され、前記コネクタと前記電極部とを電気的に接続する配線」の点で共通する。

(エ)甲3発明の「トラック4及び電気コネクタ5の雄型スタッド部分10」を「覆」う「絶縁材8」は、本件発明3の「前記コネクタと前記配線の表面のうち、前記衣類の生体と接触する側を被覆する電気絶縁性の第1の絶縁部材」に相当する。

(オ)そして、甲3発明の「電気コネクタ5は、衣類7の外側から電子機器14に接続され」ることから、「電気コネクタ5」の導電部が「衣類7の外側」に露出していることは明らかである。よって、上記(イ)を踏まえると、甲3発明の「電気コネクタ5は雌型クリップ部分9及び雄型スタッド部分10を備え、これらの部分は衣類7を挟んで互いに合致し、電気コネクタ5は、衣類7の外側から電子機器14に接続され」ることと、本件発明3の「前記コネクタは、生体電気信号測定装置との接続用の導電部を含み、この導電部が前記衣類の生体と接触する面と反対側の面に露出するように前記取り付け部材に固定され」ることとは、「前記コネクタは、生体電気信号測定装置との接続用の導電部を含み、この導電部が前記衣類の生体と接触する面と反対側の面に露出するように前記衣類に固定され」る点で共通する。

(キ)甲3発明の「生理学的信号を受信するための」「電極3」「を備える」「センサ1」は、本件発明3の「生体電極」に相当する。

イ 一致点・相違点
してみると、本件発明3と甲3発明とは、次の点で一致し、次の各点で相違する。

(一致点)
「衣類の生体と接触する面に固定された導電性の部材からなる電極部と、
前記衣類に固定された、生体電気信号測定装置との接続のためのコネクタと、
前記衣類に固定され、前記コネクタと前記電極部とを電気的に接続する配線と、
前記コネクタと前記配線の表面のうち、前記衣類の生体と接触する側を被覆する電気絶縁性の第1の絶縁部材と、
を備え、
前記コネクタは、生体電気信号測定装置との接続用の導電部を含み、この導電部が前記衣類の生体と接触する面と反対側の面に露出するように前記衣類に固定される、生体電極。」

(相違点4)
本件発明3では、衣類の生体と接触する面に固定された「電気絶縁性の部材からなる取り付け部材」を備え、「この取り付け部材」に電極部、コネクタ、及び配線が「固定され」ているのに対し、甲3発明では、この点の特定がない点。

(相違点5)
本件発明3では、「前記コネクタと前記衣類との間、および前記配線と前記衣類との間を絶縁する電気絶縁性の第2の絶縁部材」を備えるのに対し、甲3発明では、この点の特定がない点。

(相違点6)
コネクタと電極部とを電気的に接続する配線について、本件発明3では、「前記配線は、前記衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側の反対側に引き出され、前記コネクタにおける前記衣類の生体と接触する側の反対側と、前記電極部とを電気的に接続する」のに対し、甲3発明では、「電極3及びトラック4」を含む「導電層2のトラック4」(本件発明3の「配線」に相当する。)が、「電気コネクタ5」に接続する点。

ウ 判断
事案に鑑み上記相違点6について検討する。

甲1?3は、いずれも本件発明3と同じ「生体電極」の技術分野に関するものであるが、上記相違点6に係る本件発明3の構成について記載も示唆もされていない。また、上記相違点6に係る本件発明3の構成が周知であるという証拠もない。そして、上記ア(ウ)で述べたように、本件発明3の「前記コネクタと前記電極部とを電気的に接続する配線」に相当するものは、甲3発明の「電極3」と「電気コネクタ5」とを「接続」する「トラック4」であるところ、甲3において、「トラック4」は、Fig2?3Bにみられるとおり「導電層2」を形成する「電極3」と一体の平板状のもので皮膚側に設けるものであるから、平板状「トラック4」のみを、「衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側の反対側に引き出」し、「コネクタにおける前記衣類の生体と接触する側の反対側と」「電気的に接続」させることは、設計上想定しておらず、そのように設計変更することの動機は存在しないといえる。
よって、上記相違点6は、実質的な相違点であり、また、上記相違点6に係る本件発明3の構成は、甲3発明及び甲1に基づいて当業者が容易に想到し得ることでない。

エ 小括
以上のとおり、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明3及び請求項3の記載を直接又は間接的に引用する本件発明4?6は、甲3発明でも、甲3発明及び甲1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明3?6に係る特許は、特許法第29条第1項又は同条第2項の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものである、とはいえない。

3 その他の特許異議申立理由について

(1)特許異議申立書において、特許異議申立人は、電極部が生体と接触すること、衣類の反対側に引き出された配線が絶縁されることを規定していない本件発明3?6、衣類の素材が、綿、レーヨン、毛の混紡品であることを規定していない本件発明5及び6は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載したものでない旨のサポート要件違反を主張する。
しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された、発明の課題は、「生体電極を着衣に取り付けた後で、着衣が汗等で濡れた状態になったとしても、所望の生体電気信号を取得可能とすること」(【0005】)、すなわち、衣類と電極部、コネクタ、配線間の短絡を防止することにあり、このために、実施例(【0057】?【0066】、図8,9)のごとく、本件発明3?6では、「電気絶縁性の部材からなる取り付け部材」、「第2の絶縁部材」が、発明の課題を解決するための手段として特定されているので、本件発明3?6は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。
よって、上記主張は採用できない。

(2)特許異議申立書において、特許異議申立人は、本件発明2は明確でない旨の明確性違反を主張するが、本件補正により請求項2は削除されたので、上記主張は採用できない。

(3)特許異議申立書において、特許異議申立人は、請求項5の「固定補助布は、前記取り付け部材の固定に接着剤を用いる場合に、前記接着剤との接着力が前記衣類と前記接着剤との接着力よりも大きいものであ」るという記載は不明確である旨の明確性違反を主張するが、当該記載から、衣類と取り付け部材との間に設けられる固定補助布は、固定補助布と取り付け部材の間で用いられる接着剤の接着力が、衣類と取り付け部材の間で用いられる接着剤の接着力よりも大きいものであることが理解でき、このことは、本件特許明細書の【0029】及び【0030】の記載とも符合することから、本件発明5は、不明確であるとはいえない。
よって、上記主張は採用できない。

第10 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明3?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明3?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1及び2に係る特許は、本件訂正により削除されたので、本件特許の請求項1及び2に対してなされた特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
生体電極および衣類
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電図をはじめとする生体電気信号を測定するための生体電極、および生体電極が固定された衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳波、事象関連電位、誘発電位、筋電位、心電位等の生体電気信号の記録、及び生体に対する電気刺激のために、体表面に装着する生体電極が広く使用されている。近年、個人の健康管理の手法の一つとして、長期間にわたって心電波形を記録し、その波形の変化を解析することで、自律神経の乱れや心臓病の兆候を早期に発見することができ、予防医学において有効であることが知られている。長期間にわたって心電波形を取得するため、生体電極の取り付けられた着衣(ウェアラブル電極)が注目されている(文献「David M.D.Ribeiro,et al.,“A Real time,Wearable ECG and Continous Blood Pressure Monitoring System for First Responders”,33rd Annual International Conference of the IEEE EMBS,pp.6894-6898,2011」参照)。
【0003】
一般に、ウェアラブル電極は、生体に接触する電極部、生体電気信号を測定する端末を取り付けるコネクタ、電極部とコネクタを接続する配線、電極部とコネクタと配線とを取り付けるベースとなる身生地部分とに分けられ、電極部とコネクタと配線のみに導電性が付与され、身生地は電気絶縁体で形成される。このような構成とすることで、電極部のみから所望の生体電気信号を取得することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に着衣の素材は、着用時の快適さを確保するために汗や雨などの水分を吸収する素材が用いられる。電解液を含んだ着衣は電気絶縁性が失われる。このため、関連するウェアラブル電極は、着用者が発汗した時や雨天での使用時において、電極部、コネクタ、配線などの導電体と着衣との電気的な絶縁が確保できず、電極部以外の着衣部分で検出された生体電気信号が電極部から取得した生体電気信号に混入することで所望の生体電気信号を取得できなくなったり、複数の電極間が電気的に短絡することにより生体電気信号が劣化したりするといった問題点があった。なお、本来、雨は電解液ではないが、酸性雨等の影響により雨が電解液として作用する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、生体電極を着衣に取り付けた後で、着衣が汗等で濡れた状態になったとしても、所望の生体電気信号を取得可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の生体電極は、衣類の生体と接触する面に固定された電気絶縁性の部材からなる取り付け部材と、この取り付け部材の生体と接触する面に固定された導電性の部材からなる電極部と、前記取り付け部材に固定された、生体電気信号測定装置との接続のためのコネクタと、前記取り付け部材に固定され、前記コネクタと前記電極部とを電気的に接続する配線と、前記コネクタと前記配線の表面のうち、前記衣類の生体と接触する側を被覆する電気絶縁性の第1の絶縁部材と、前記コネクタと前記衣類との間、および前記配線と前記衣類との間を絶縁する電気絶縁性の第2の絶縁部材とを備え、前記コネクタは、生体電気信号測定装置との接続用の導電部を含み、この導電部が前記衣類の生体と接触する面と反対側の面に露出するように前記取り付け部材に固定され、前記配線は、前記衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側の反対側に引き出され、前記コネクタにおける前記衣類の生体と接触する側の反対側と、前記電極部とを電気的に接続することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、電気絶縁性の取り付け部材に電極部とコネクタと配線とを取り付け、配線の表面のうち、前記衣類の生体と接触する側を電気絶縁性の第1の絶縁部材で覆う。これにより、本発明では、取り付け部材を衣類に取り付けた後で、衣類が汗等で濡れた状態になったとしても、配線と生体との間の短絡、あるいは複数の電極部間の短絡を防ぐことができ、所望の生体電気信号を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の第1参考例に係るウェアラブル電極を生体に装着した様子を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の第1参考例に係るウェアラブル電極の断面図である。
【図3】図3は、本発明の第1参考例に係るウェアラブル電極の他の例を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の第2参考例に係るウェアラブル電極を生体に装着した様子を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の第2参考例に係るウェアラブル電極の断面図である。
【図6】図6は、本発明の第2参考例に係るウェアラブル電極の他の例を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の第2参考例に係るウェアラブル電極の他の例を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施例に係るウェアラブル電極を生体に装着した様子を示す模式図である。
【図9】図9は、本発明の実施例に係るウェアラブル電極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1参考例]
以下、本発明の参考例および実施例に係るウェアラブル電極(生体電極)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の参考例および実施例により本発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は本発明の第1参考例に係るウェアラブル電極を生体に装着した様子を示す模式図、図2は図1のウェアラブル電極のA-A’線断面図である。なお、図2では、1組の電極部と配線とコネクタのみについて記載している。
本参考例のウェアラブル電極は、生体1000(着用者)に接触する導電性繊維構造物からなる2つの電極部1101a,1101bと、電極部1101a,1101bが取得した生体電気信号を検出処理する生体電気信号測定装置を接続するためのコネクタ1102a,1102bと、電極部1101a,1101bとコネクタ1102a,1102bとを電気的に接続する配線1103a,1103bと、配線1103a,1103bの表面のうち、生体1000と接触する部分を被覆する防水性かつ電気絶縁性の絶縁部材1105と、電極部1101a,1101bとコネクタ1102a,1102bと配線1103a,1103bとを固定するための防水性かつ電気絶縁性の部材からなる取り付け部材1106と、取り付け部材1106が固定される着衣1100とから構成される。
【0011】
電極部1101a,1101bの数は、1つ以上であれば特に限定されない。電極部1101a,1101bの位置は、本発明においては特に限定されず、検出対象とする生体電気信号の種類に応じて変えればよい。例えば、検出対象が心電波形であれば、生体1000の心臓を挟んだ左右に1つずつ電極部1101a,1101bを設置すればよく、検出対象が筋電位であれば、生体1000の対象とする筋肉上に2つの電極部1101a,1101bを設置すればよいが、電極部1101a,1101bの配置及び数は本発明を規定するものではない。
【0012】
電極部1101a,1101bを構成する導電性繊維構造物は、特に限定されないが、銀、銅、金、ステンレス等の金属を細線に加工して柔軟性を付与し、布帛として構成したものや、上記金属を繊維素材にメッキしたもの、カーボンファイバー、導電性高分子を繊維素材に含浸したものなどを用いることができる。特に、導電性高分子としてポリ3、4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)にポリスチレンスルホン酸(ポリ4-スチレンサルフォネート;PSS)をドープしたPEDOT/PSSを用い、この導電性高分子を繊維素材に含浸したものは、安全性、加工性の観点から電極部として特に好適である。
【0013】
電極部1101a,1101bは、取り付け部材1106の生体1000と接触する面に固定される。電極部1101a,1101bの取り付け部材1106への固定方法としては、電解液を含んだ際に導電体となる着衣1100と電極1101a,1101bとが電気的に短絡することを防止するため、取り付け部材1106の表裏を貫通する孔を開けない手法を取ることが望ましい。具体的には、電極部1101a,1101bの外周部の少なくとも一部を粘着テープで押さえて固定する方法、接着で固定する方法などがある。
【0014】
電極部1101a,1101bの接着に用いる接着剤としては、特に限定されないが、100?180℃で融着可能な樹脂を用いることができる。この樹脂の種類はポリエステル、ナイロン、ポリウレタンまたはこれらの混合物が挙げられるが、これらの樹脂に限定されるものではない。
【0015】
電極部1101a,1101bの固定に使用される粘着テープとしては、厚みが10?100μmのポリウレタン、ポリエステル、ナイロン等の合成樹脂からなる無孔フィルム、気孔周辺が撥水化された微多孔フィルム、あるいは繊維間の空隙をポリウレタン、ポリエステル、ナイロン等の防水性かつ絶縁性の樹脂で予め埋めたフィルムを基材とするものが使用される。この基材の少なくとも片面にホットメルト等の接着材層を積層した防水テープが粘着テープとして特に好適である。
【0016】
配線1103a,1103bとしては、取り付け部材1106に導電性樹脂を印刷したものや、取り付け部材1106に導電性樹脂のフィルムを貼り付けたもの、導電性繊維構造物からなる配線1103a,1103bの外周部の少なくとも一部を粘着テープで押さえて取り付け部材1106に固定したもの、あるいは導電性繊維構造物を取り付け部材1106に接着したものを用いることができる。
【0017】
配線1103a,1103bとして導電性樹脂を印刷する場合には、取り付け部材1106に電極部1101a,1101bを固定した後で、電極部1101a,1101bとの電気的接続が得られるように導電性樹脂を印刷してもよいし、導電性樹脂を印刷した後で、この導電性樹脂との電気的接続が得られるように電極部1101a,1101bを取り付け部材1106に固定してもよい。
【0018】
配線1103a,1103bとして導電性樹脂のフィルムを用いる場合には、取り付け部材1106に電極部1101a,1101bを固定した後で、電極部1101a,1101bとの電気的接続が得られるように導電性樹脂のフィルムを取り付け部材1106に貼り付けてもよいし、導電性樹脂のフィルムを貼り付けた後で、この導電性樹脂のフィルムとの電気的接続が得られるように電極部1101a,1101bを取り付け部材1106に固定してもよい。
【0019】
配線1103a,1103bとして導電性繊維構造物を用いる場合も同様に、電極部1101a,1101bの後に配線1103a,1103bを固定してもよいし、電極部1101a,1101bよりも前に配線1103a,1103bを固定してもよいが、導電性繊維構造物を用いる場合には、電極部1101a,1101bと配線1103a,1103bとを一体成形することも可能である。
【0020】
配線1103a,1103bの固定に使用される粘着テープとしては、上記と同様にポリウレタン、ポリエステル、ナイロン等の合成樹脂からなる無孔フィルム、気孔周辺が撥水化された微多孔フィルム、あるいは繊維間の空隙をポリウレタン、ポリエステル、ナイロン等の防水性かつ絶縁性の樹脂で予め埋めたフィルムを基材とするものが使用される。この基材の少なくとも片面にホットメルト等の接着材層を積層した防水テープが粘着テープとして特に好適である。
【0021】
配線1103a,1103bが生体1000と接触すると、電極部1101a,1101bで取得する生体電気信号の信号経路に対してシャント抵抗が挿入されることとなり、測定装置に入力される所望の生体電気信号が減衰してしまう。そのため、図2に示すように配線1103a,1103bを絶縁部材1105で覆い、生体1000と接触しないようにするとよい。ここで、絶縁部材1105として上記の粘着テープを用い、配線1103a,1103bの固定と絶縁被覆とを同時に達成してもよい。
【0022】
本参考例では、コネクタ1102a,1102bは、生体電気信号測定装置との接続用の導電部が生体1000と接触する面に露出するように取り付け部材1106に固定される。コネクタ1102a,1102bとしては、着用者に違和感を与えないため、金属製ドットボタンや導電性を有する線ファスナー、導電性面ファスナー等、従来、着衣の脱着部に用いられる部材を用いることが好ましい。
【0023】
本参考例では、電解液を含んだ際に導電体となる着衣1100とコネクタ1102a,1102b及び配線1103a,1103bとが電気的に短絡することを防止するため、コネクタ1102a,1102bの固定方法として、取り付け部材1106の表裏を貫通する孔を空けない方法を採ることが望ましい。具体的には、コネクタ1102a,1102bとして導電性面ファスナーを用いる場合には、導電性面ファスナーを粘着テープで押さえて固定する方法、あるいは接着で固定する方法などがある。導電性面ファスナーの固定に使用される粘着テープとしては、上記の防水テープが特に好適である。
【0024】
一方、金属製ドットボタンのように、基材を貫通したボタンの表裏をかしめることで固定されることを前提とした形態のコネクタの場合、その本来の固定方法を採ることはできない。したがって、導電性面ファスナーと同様に、粘着テープで押さえて固定するか、接着で固定することになる。なお、金属製ドットボタンの場合は、導電性面ファスナーよりも面積が小さいので、十分な固定強度を得られない可能性がある。
【0025】
取り付け部材1106は、防水性かつ電気絶縁性の部材であれば特に限定されず、例えばポリウレタン、ポリエステル、ナイロン等の合成樹脂素材を用いることができる。ただし、取り付け部材1106が繊維素材の織物や編物といった形態であると、多量の水分に暴露された際に、織り込まれた繊維と繊維の間隙に水分が担持され水滴となり、担持された水滴同士が数珠繋ぎに連結されることで、複数の電極部の間が電気的に短絡する恐れがある。
【0026】
そのため、取り付け部材1106は、フッ素樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等の樹脂からなる無孔フィルム、気孔周辺が撥水化された微多孔フィルム、あるいは繊維間の空隙をポリエステル、ナイロン等の防水性かつ電気絶縁性の樹脂で予め埋めたフィルムであることが望ましい。また、取り付け部材1106は、多量の水分に暴露された際にも、電気絶縁性を維持できる部材であってもよいし、半透膜であってもよい。
【0027】
取り付け部材1106の大きさは、電極部1101a,1101bとコネクタ1102a,1102bと配線1103a,1103bとを含む大きさであれば良い。ただし、取り付け部材1106表面に担持された水分同士が数珠繋ぎに連結されることで、ウェアラブル電極の導電性を有する部分(電極部1101a,1101b、コネクタ1102a,1102b、配線1103a,1103b)と着衣1100とが電気的に連結されることを防ぐため、図2に示すように、生体1000の皮膚表面に沿って取り付け部材1106の外縁がウェアラブル電極の導電性を有する部分の外縁よりも外側に距離d以上張り出すようにすることが望ましい。
【0028】
距離dは、取り付け部材1106の材質や表面形状によって設計すべき値であり、本発明を規定するものではないが、例えば取り付け部材1106としてポリウレタン無孔膜を用いた場合には、距離dを3mm以上とすることで所期の目的を達成することができる。
また、着用者が着衣1100を着た際に防水性の取り付け部材1106が肌に触れると、汗が吸収されず不快感が生じる恐れがあるため、取り付け部材1106の大きさは上記の条件を満たし、かつなるべく小さくなるように設計することが望ましい。
【0029】
取り付け部材1106の着衣1100への固定方法としては、取り付け部材1106の外縁部を着衣1100に縫い付ける方法、あるいは接着で固定する方法などがある。取り付け部材1106を接着剤によって着衣1100に固定する場合、着衣1100の素材(例えば綿、レーヨン、毛などの混紡品)と接着剤との組み合わせによっては接着力が小さく、容易に取り付け部材1106が剥離してしまうことがある。そのため、図3に示すように、取り付け部材1106と着衣1100との間に、着衣1100よりも接着材との接着力が大きい固定補助布1110を備えるとよい。
【0030】
固定補助布1110は、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ウレタンの少なくとも1つを含む織物、編物、不織布のうちのいずれか1つであり、特にポリエステル、ナイロン等の合成繊維を好適に用いることができる。固定補助布1110は、着衣1100に縫い付けることで固定することができる。固定補助布1110として、接着剤との接着力が着衣1100と接着剤との接着力よりも大きいものを用いることにより、着衣1100に使用する素材を快適性や機能性を考慮して選択することができ、着衣1100と接着剤との接着力が小さい場合でも、洗濯などによる剥離耐久性を維持する効果が得られる。
【0031】
絶縁部材1105は、防水性かつ電気絶縁性の部材であれば特に限定されず、例えばポリエステル、ナイロン等の合成樹脂素材を用いることができる。取り付け部材1106の場合と同様に、絶縁部材1105が繊維素材の織物や編物といった形態であると、多量の水分に暴露された際に、織り込まれた繊維と繊維の間隙に水分が担持され水滴となり、水に含まれるイオン分を通して複数の電極部の間が電気的に短絡する恐れがある。
【0032】
そのため、絶縁部材1105は、フッ素樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン等の樹脂からなる無孔フィルム、気孔周辺が撥水化された微多孔フィルム、あるいは繊維間の空隙をポリエステル、ナイロン等の防水性かつ電気絶縁性の樹脂で予め埋めたフィルムであることが望ましい。また、絶縁部材1105は、多量の水分に暴露された際にも、電気絶縁性を維持できる部材であってもよいし、半透膜であってもよい。
【0033】
絶縁部材1105の大きさは、電気的に絶縁したい配線1103a,1103bを含む大きさであればよい。ただし、取り付け部材1106の場合と同様に、着用者が着衣1100を着た際に防水性の部材が肌に触れると、汗が吸収されず不快感が生じる恐れがあるため、絶縁部材1105はなるべく小さいことが望ましい。
【0034】
絶縁部材1105の取り付け部材1106への固定方法としては、絶縁部材1105を縫い付ける方法、あるいは接着で固定する方法などがある。上記のとおり、絶縁部材1105として粘着テープを使用すれば、配線1103a,1103bの固定と絶縁被覆とを同時に達成することができる。
【0035】
着衣1100の素材及び形状は特に限定されず、検出対象とする生体電気信号の種類に応じて変えればよい。例えば、心電位の取得を目的とする場合は生体1000の心臓に近い胸部を含む着衣形状が望ましく、例えばシャツやブラジャー、腹巻きといった形状が望ましい。下肢部の筋電位の取得を目的とする場合はスパッツやパンツ、ズボンといった形状が望ましいが、本発明はかかる着衣の形状に限定されるものではない。なお、電極部1101a,1101bが0.1kPa以上2.0kPa以下の圧力で生体1000の皮膚に密着することが望ましく、外部からベルトなどを用いて密着させてもよい。
【0036】
以上のように、本参考例では、防水性かつ電気絶縁性の取り付け部材1106に電極部1101a,1101bとコネクタ1102a,1102bと配線1103a,1103bとを取り付け、配線1103a,1103bの表面のうち、生体1000と接触する部分を防水性かつ電気絶縁性の絶縁部材1105で覆うことにより、着衣1100が汗等で濡れた状態であっても、配線1103a,1103bと生体1000との間の短絡、あるいは複数の電極部1101a,1101b間の短絡を防ぐことができ、所望の生体電気信号を取得することができる。
【0037】
また、本参考例では、電極部1101a,1101bとコネクタ1102a,1102bと配線1103a,1103bよりも取り付け部材1106の面積を大きくし、生体1000の皮膚表面に沿って取り付け部材1106の外縁が電極部1101a,1101bとコネクタ1102a,1102bと配線1103a,1103bの外縁よりも外側に所定の距離d以上張り出すようにしたので、着衣1100が汗等で濡れたときに、着衣1100の部分で検出された生体電気信号が、電極部1101a,1101bで取得する生体電気信号に混入することを防ぐことができる。
【0038】
なお、本参考例では、取り付け部材1106の生体1000と接触する面にコネクタ1102a,1102bを配置するため、コネクタ1102a,1102bと接続される生体電気信号測定装置側のコネクタは、生体1000と接触しないようにコネクタ1102a,1102bを絶縁部材で覆う形態であることが望ましい。
【0039】
[第2参考例]
次に、本発明の第2参考例について説明する。図4は本発明の第2参考例に係るウェアラブル電極を生体に装着した様子を示す模式図、図5は図4のウェアラブル電極のB-B’線断面図であり、図1、図2と同様の構成には同一の符号を付してある。なお、図5では、1組の電極部と配線とコネクタのみについて記載している。
【0040】
本参考例のウェアラブル電極は、電極部1101a,1101bと、コネクタ1102c,1102dと、配線1103a,1103bと、絶縁部材1105と、取り付け部材1106と、コネクタ1102c,1102dと着衣1100との間を絶縁する防水性かつ電気絶縁性の絶縁部材1107と、取り付け部材1106が固定される着衣1100とから構成される。
【0041】
電極部1101a,1101bと配線1103a,1103bについては、第1参考例と同じにすればよい。
本参考例では、コネクタ1102c,1102dは、生体電気信号測定装置との接続用の導電部が、着衣1100の生体1000と接触する面と反対側の面に露出するように配置される。コネクタ1102c,1102dの素材については第1参考例のコネクタ1102a,1102bと同等である。
【0042】
金属製ドットボタンのように、基材を貫通したボタンの表裏をかしめることで固定されることを前提とした形態のコネクタ1102c,1102dを用いる場合、少なくとも着衣1100の表面(生体1000と接触する面と反対側の面)とコネクタ1102c,1102dとの間、およびコネクタ1102c,1102dを設けるために着衣1100に形成された貫通孔1200の側面とコネクタ1102c,1102dとの間を電気的に絶縁する防水性かつ電気絶縁性の絶縁部材1107を設ける。
【0043】
絶縁部材1107は、防水性かつ電気絶縁性の部材であれば特に限定されず、例えばポリエステル、ナイロン等の合成樹脂素材を用いることができる。絶縁部材1105の場合と同様に、絶縁部材1107が繊維素材の織物や編物といった形態であると、多量の水分に暴露された際に、織り込まれた繊維と繊維の間隙に水分が担持され、水に含まれるイオン分を通して複数の電極部の間が電気的に短絡する恐れがある。
【0044】
そのため、絶縁部材1107は、フッ素樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン等の樹脂からなる無孔フィルム、気孔周辺が撥水化された微多孔フィルム、あるいは繊維間の空隙をポリエステル、ナイロン等の防水性かつ電気絶縁性の樹脂で予め埋めたフィルムであることが望ましい。また、絶縁部材1107は、多量の水分に暴露された際にも、電気絶縁性を維持できる部材であってもよいし、半透膜であってもよい。
【0045】
絶縁部材1107には、コネクタ1102c,1102dが通る貫通孔が予め形成されている。着衣1100に取り付け部材1106を固定し、取り付け部材1106に電極部1101a,1101bと配線1103a,1103bとを固定した後で、着衣1100と取り付け部材1106と配線1103a,1103bとに貫通孔を空ける。このとき、少なくとも着衣1100に設けられる貫通孔1200については、コネクタ1102c,1102dの着衣1100を貫通する部分よりも大きな径の孔となるようにする。
【0046】
そして、貫通孔1200に差し込むように絶縁部材1107を装着した後で、絶縁部材1107と取り付け部材1106と配線1103a,1103bとの貫通孔にコネクタ1102c,1102dを挿入し、コネクタ1102c,1102dの表裏をかしめる。これにより、コネクタ1102c,1102dおよび絶縁部材1107の固定と、コネクタ1102c,1102dの絶縁被覆と、コネクタ1102c,1102dと配線1103a,1103bとの電気的接続を同時に達成することができる。
【0047】
また、着衣1100と取り付け部材1106と配線1103a,1103bとに事前に貫通孔を設けずに、着衣1100の生体1000と接触する面と反対側の面にシート状の絶縁部材1107を載せた状態で、着衣1100と取り付け部材1106と配線1103a,1103bとを一度に貫通するようにコネクタ1102c,1102dを設置してもよい。この場合、コネクタ1102c,1102dの取り付け時の摩擦力によって取り付け部材1106及び絶縁部材1107が、コネクタ1102c,1102dの取り付けで出来た着衣1100の貫通孔の中に引き込まれるので、コネクタ1102c,1102dと着衣1100とが接触しないようにすることができ、図2の場合と同等の構造を実現することができる。
【0048】
また、図6に示すように、生体電気信号測定装置との接続用の導電部を除く、コネクタ1102c,1102dの着衣1100と接触する部分の表面に絶縁部材1107を予め形成しておいてもよい。この場合、絶縁部材1107としては、上記の素材の他、ポリエステル系、ウレタン系、アクリレート系の絶縁材料を用いることができる。絶縁部材1107の形成方法としては、塗布や電着等といった方法がある。絶縁部材1107を予め形成しておくことにより、絶縁部材1107を固定する工程を簡略化することができる。
【0049】
また、金属製ドットボタンのように、基材を貫通したボタンの表裏をかしめることで固定されることを前提とした形態のコネクタ1102c,1102dを用いる場合、コネクタ1102c,1102dに接続する生体電気信号測定装置を脱着する際の力によってコネクタ1102c,1102dが着衣1100から外れる可能性がある。そこで、図7に示すように、着衣1100よりもヤング率の大きい補強部材1108を、コネクタ1102c,1102dと着衣1100との間に設けるようにするとよい。
【0050】
補強部材1108の着衣1100への固定方法としては、補強部材1108の外周部の少なくとも一部を粘着テープで押さえて固定する方法、接着で固定する方法などがある。補強部材1108の固定に使用される粘着テープとしては、上記の防水テープが特に好適である。また、補強部材1108を着衣1100に掛止するための爪1400を補強部材1108に設けるようにしてもよい。
【0051】
補強部材1108が爪1400を備え、かつコネクタ1102c,1102dと接するように配置される場合、補強部材1108は防水性かつ電気絶縁性の素材からなる。この補強部材1108の素材としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート等の公知の有機樹脂を用いることができる。
【0052】
絶縁部材1107と同様に、補強部材1108には、コネクタ1102c,1102dが通る貫通孔が予め形成されている。上記と同様に、着衣1100の貫通孔1200に差し込むように絶縁部材1107を装着した後で、絶縁部材1107の上から補強部材1108を上記のように着衣1100に固定する。そして、補強部材1108と絶縁部材1107と取り付け部材1106と配線1103a,1103bとの貫通孔にコネクタ1102c,1102dを挿入し、コネクタ1102c,1102dの表裏をかしめる。これにより、コネクタ1102c,1102dと絶縁部材1107と補強部材1108の固定と、コネクタ1102c,1102dの固定の補強と、コネクタ1102c,1102dの絶縁被覆と、コネクタ1102c,1102dと配線1103a,1103bとの電気的接続を同時に達成することができる。
【0053】
なお、補強部材1108を絶縁部材1107と着衣1100との間に配置することも可能である。この場合、補強部材1108がコネクタ1102c,1102dと接することはないので、補強部材1108を導電性を持つ素材から形成してもよく、ステンレス、アルミ、真鍮等の公知の金属素材を用いることができる。また、補強部材1108として、着衣1100よりもヤング率の大きい布生地を用いてもよい。
【0054】
絶縁部材1105の素材は第1参考例と同じである。ただし、図5?図7のようにコネクタ1102c,1102dの一部が生体1000と接触する側に露出する場合、コネクタ1102c,1102dの生体1000と接触する部分を絶縁部材1105で覆う必要がある。コネクタ1102c,1102dに金属製ドットボタンボタンを用いる場合、取り付け金具の生体1000と接触する側が予め絶縁性の樹脂で被覆されているものを用いれば、コネクタ部の絶縁部材1105の代わりとして用いることができる。
取り付け部材1106と着衣1100については、第1参考例と同じにすればよい。
【0055】
以上のように、本参考例では、防水性かつ電気絶縁性の取り付け部材1106に電極部1101a,1101bと配線1103a,1103bとを取り付けると共に、着衣1100にコネクタ1102c,1102dを取り付け、コネクタ1102c,1102dと配線1103a,1103bの表面のうち、生体1000と接触する部分を防水性かつ電気絶縁性の絶縁部材1105で覆い、着衣1100とコネクタ1102c,1102dとの間を防水性かつ電気絶縁性の絶縁部材1107で絶縁することにより、着衣1100が汗等で濡れた状態であっても、配線1103a,1103bと生体1000との間の短絡、複数の電極部1101a,1101b間の短絡、あるいは着衣1100とコネクタ1102c,1102dとの間の短絡を防ぐことができ、所望の生体電気信号を取得することができる。また、本参考例では、コネクタ1102c,1102dが着衣1100の表側に取り付けられるため、着用者にとって生体電気信号測定装置の取り付け/取り外しが容易になる。
【0056】
また、本参考例では、補強部材1108を設けることにより、コネクタ1102c,1102dの固定を補強することができる。本参考例では、伸縮性のある着衣1100を用いた場合でも、生体電気信号測定装置をコネクタ1102c,1102dから脱着する際の力によってコネクタ1102c,1102dが着衣1100から外れてしまう事象を防止することができ、生体電極の耐久性を向上させることができる。また、本参考例では、着衣1100に伸縮性のある素材を用いることができるので、電極部1101a,1101bの生体の皮膚への接触を安定させることができ、所望の生体電気信号を長期間安定して取得することができる。
【0057】
[実施例]
次に、本発明の実施例について説明する。図8は本発明の実施例に係るウェアラブル電極を生体に装着した様子を示す模式図、図9は図8のウェアラブル電極のC-C’線断面図であり、図1?図7と同様の構成には同一の符号を付してある。なお、図9では、1組の電極部と配線とコネクタのみについて記載している。
【0058】
本実施例のウェアラブル電極は、電極部1101a,1101bと、コネクタ1102c,1102dと、配線1103c,1103dと、絶縁部材1105と、取り付け部材1106と、絶縁部材1107aと、着衣1100とから構成される。
【0059】
電極部1101a,1101bについては、第1参考例および第2参考例と同じにすればよい。
第2参考例と同様に、コネクタ1102c,1102dは、生体電気信号測定装置との接続用の導電部が、着衣1100の生体1000と接触する面と反対側の面に露出するように配置される。
【0060】
配線1103c,1103dの素材については、第1参考例および第2参考例の配線1103a,1103bと同じでよいが、本実施例では、図9に示すように、電極部1101a,1101bとコネクタ1102c,1102dとの間の着衣1100に形成された貫通孔1201を通して配線1103c,1103dを、着衣1100の生体1000と接触する側と反対側に引き出すようにしている。
【0061】
取り付け部材1106aの大きさと素材については、第1参考例および第2参考例の取り付け部材1106と同じでよいが、取り付け部材1106aは、着衣1100の生体1000と接触する面と配線1103c,1103dとの間を電気的に絶縁するだけでなく、配線1103c,1103dを通すために着衣1100に形成された貫通孔1201の側面と配線1103c,1103dとの間を電気的に絶縁するように設けられる。これにより、着衣1100と配線1103c,1103dとが接触しないようにすることができる。
【0062】
絶縁部材1107aの素材については、第1参考例および第2参考例の絶縁部材1107と同じでよいが、絶縁部材1107aは、少なくとも着衣1100の表面(生体1000と接触する面と反対側の面)とコネクタ1102c,1102dとの間、コネクタ1102c,1102dを設けるために着衣1100に形成された貫通孔1200の側面とコネクタ1102c,1102dとの間、および配線1103c,1103dを通すために着衣1100に形成された貫通孔1201の側面と配線1103c,1103dとの間を電気的に絶縁するように設けられる。
【0063】
なお、図9の例では、貫通孔1201の側面のうち電極部1101a,1101b側の側面を取り付け部材1106aで被覆し、コネクタ1102c,1102d側の側面を絶縁部材1107aで被覆しているが、これに限るものではなく、貫通孔1200の場合と同様に、貫通孔1201の側面を全て絶縁部材1107aで被覆してもよい。
また、取り付け部材1106aが配線1103c,1103dの表裏両面を被覆するようにしてもよい。
【0064】
コネクタ1102c,1102dを取り付けるためには、第2参考例と同様に、着衣1100に取り付け部材1106aを固定し、取り付け部材1106aに電極部1101a,1101bと配線1103c,1103dとを固定した後で、配線1103c,1103dを貫通孔1201から着衣1100の生体1000と接触する側と反対側に引き出し、着衣1100の貫通孔1200,1201に差し込むように絶縁部材1107aを装着する。
【0065】
そして、絶縁部材1107aの上に配線1103c,1103dを沿わせるように配置した後、配線1103c,1103dと絶縁部材1107aとの貫通孔にコネクタ1102c,1102dを挿入し、コネクタ1102c,1102dの表裏をかしめる。これにより、コネクタ1102c,1102dと配線1103c,1103dと絶縁部材1107aの固定と、コネクタ1102c,1102dの絶縁被覆と、コネクタ1102c,1102dと配線1103c,1103dとの電気的接続を同時に達成することができる。
【0066】
絶縁部材1105の素材は第1参考例と同じであるが、第2参考例と同様に、コネクタ1102c,1102dの生体1000と接触する部分を絶縁部材1105で覆う必要がある。
着衣1100については、第1参考例と同じにすればよい。なお、第1参考例で説明した固定補助布1110を第2参考例および本実施例に適用してもよい。また、第2参考例で説明した補強部材1108を本実施例に適用してもよい。
【0067】
[第3参考例]
次に、本発明の第3参考例について説明する。本参考例は、第1参考例の具体例を示すものである。なお、本発明が以下の例に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0068】
[サンプル1]
図1、図2に示した構造のウェアラブル電極を次に示す部材で作製した。電極部1101a,1101bは、導電成分としてPEDOT/PSSを1wt%、バインダーとしてアクリル系熱硬化性樹脂5wt%を分散した分散液を、ポリエステルナノファイバーのスムース組織の丸編物に対してグラビアコーティング法で薬剤塗布量が15g/m^(2)になるように塗布して作製した。
【0069】
着衣1100には、84T-36Fのポリエステル仮撚り加工糸と33Tのポリウレタン弾性糸を引きそろえたものを32ゲージ丸編み機で作製したベア天生地を使用した。配線1103a,1103bとしては、三ツ冨士繊維工業(株)製の銀メッキ糸「AGposs」の110T-34をリボン状にしたものを使用した。絶縁部材1105としては、東レコーテックス(株)製のポリウレタン防水シームテープ「αE-110」を使用した。取り付け部材1106としては、絶縁部材1105と同じ防水シームテープの接着面でない面にホットメルト接着剤を用いて使用した。
【0070】
[サンプル2]
上記のサンプル1と同じ部材を用いて、図3に示した構造のウェアラブル電極を作製した。電極部1101a,1101bとコネクタ1102a,1102bと配線1103a,1103bとを取り付け部材1106を介して固定補助布1110に取り付けた後、固定補助布1110をホットメルト接着剤により着衣1100に固定した。固定補助布1110には、着衣1100と同じ素材を用いた。
【0071】
[サンプル3]
上記のサンプル2と同じ構造で、着衣1100のみ天然素材である40番手の綿紡績と33Tのポリウレタン弾性糸を引きそろえたものを32ゲージ丸編み機で作製したベア天生地を使用した。固定補助布1110は、縫い付けることにより着衣1100に固定した。
【0072】
[比較例]
上記のサンプル1と同じ部材を用いて、電極部1101a,1101bを取り付け部材1106を用いずに着衣1100にホットメルト接着剤により固定したウェアラブル電極を作製した。
【0073】
サンプル1?3と比較例のウェアラブル電極を酸性人工汗液に24時間浸漬した後、以下の通電部と絶縁部の電気抵抗及び着用時の心電図波形を測定した。その結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
通電部A抵抗は電極部1101aとコネクタ1102a間の電気抵抗、通電部B抵抗は電極部1101bとコネクタ1102b間の電気抵抗、絶縁部A抵抗は電極部1101aと電極部1101b間の電気抵抗、絶縁部B抵抗は電極部1101aと着衣1100間の電気抵抗、絶縁部C抵抗は電極部1101bと着衣1100間の電気抵抗である。心電図波形の減衰の数値は、ウェアラブル電極を酸性人工汗液に浸す前の心電図波形のピーク・トゥ・ピーク(Peak to Peak)の振幅値を基準としたときの値を示している。
【0076】
測定に使用した人工汗については、JIS L 0848(2004年)で規定された酸性人工汗液を次のとおり調整した。具体的には、酸性人工汗液は、L-ヒスチジン塩酸塩一水和物0.5g、塩化ナトリウム5g及びりん酸二水素ナトリウム二水和物2.2gを水に溶かし、これに0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液約15mlと水を加えてpHが5.5で全容が約1Lになるように調整した。
【0077】
表1によると、関連するウェアラブル電極と同様の構造を有する比較例では、絶縁部の抵抗値が低下し、絶縁部としての機能が損なわれており、心電図波形も約90%減衰した。これに対して本参考例に係るサンプル1?3では、絶縁部の絶縁性が維持されており、良好な心電図波形を示した。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、着衣が汗などの水分を含有する状態であっても、所望の生体電気信号を取得可能とする技術に関するものである。本発明は、日常生活の健康管理、ジョギング、マラソンやその他スポーツ時の生体データの把握、建設現場や道路工事、架線保全などの屋外作業での労務管理、バスやトラックの運転手、炭鉱労働者、消防士、救助隊員などの労務管理に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1000…生体、1101a,1101b…電極部、1102a,1102b,1102c,1102d…コネクタ、1103a,1103b,1103c,1103d…配線、1105,1107,1107a…絶縁部材、1106,1106a…取り付け部材、1108…補強部材、1100…着衣、1110…固定補助布、1200,1201…貫通孔、1400…爪。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
衣類の生体と接触する面に固定された電気絶縁性の部材からなる取り付け部材と、
この取り付け部材の生体と接触する面に固定された導電性の部材からなる電極部と、
前記取り付け部材に固定された、生体電気信号測定装置との接続のためのコネクタと、
前記取り付け部材に固定され、前記コネクタと前記電極部とを電気的に接続する配線と、
前記コネクタと前記配線の表面のうち、前記衣類の生体と接触する側を被覆する電気絶縁性の第1の絶縁部材と、
前記コネクタと前記衣類との間、および前記配線と前記衣類との罰を絶縁する電気絶縁性の第2の絶縁部材とを備え、
前記コネクタは、生体電気信号測定装置との接続用の導電部を含み、この導電部が前記衣類の生体と接触する面と反対側の面に露出するように前記取り付け部材に固定され、
前記配線は、前記衣類に形成された貫通孔を通って前記衣類の生体と接触する側の反対側に引き出され、前記コネクタにおける前記衣類の生体と接触する側の反対側と、前記電極部とを電気的に接続することを特徴とする生体電極。
【請求項4】
請求項3に記載の生体電極において、
さらに、前記取り付け部材と前記衣類との間に設けられた固定補助布を備えることを特徴とする生体電極。
【請求項5】
請求項4記載の生体電極において、
前記固定補助布は、前記取り付け部材の固定に接着剤を用いる場合に、前記接着剤との接着力が前記衣類と前記接着剤との接着力よりも大きいものであり、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ウレタンの少なくとも1つを含む織物、編物、不織布のうちのいずれか1つであることを特徴とする生体電極。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の生体電極を備え、前記生体電極は、前記電極部が生体と接触するように固定されたことを特徴とする衣類。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-12-10 
出願番号 特願2016-563668(P2016-563668)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A61B)
P 1 651・ 537- YAA (A61B)
P 1 651・ 121- YAA (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 永田 浩司  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
渡戸 正義
登録日 2018-08-17 
登録番号 特許第6386582号(P6386582)
権利者 日本電信電話株式会社 東レ株式会社
発明の名称 生体電極および衣類  
代理人 山川 茂樹  
代理人 本山 泰  
代理人 山川 茂樹  
代理人 山川 政樹  
代理人 本山 泰  
代理人 小池 勇三  
代理人 山川 茂樹  
代理人 山川 政樹  
代理人 小池 勇三  
代理人 本山 泰  
代理人 山川 政樹  
代理人 小池 勇三  

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