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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F |
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管理番号 | 1359901 |
審判番号 | 不服2019-9710 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-07-22 |
確定日 | 2020-02-10 |
事件の表示 | 特願2019-503592「調光部材、サンバイザ及び移動体」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月 3日国際公開、WO2019/004160〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)6月26日(優先権主張 平成29年6月26日、平成29年7月10日、平成30年3月9日)を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。 平成31年 1月28日 :手続補正書の提出 平成31年 3月 1日付け:拒絶理由の通知 平成31年 4月 8日 :意見書、手続補正書の提出 平成31年 4月19日付け:拒絶査定 令和 元年 7月22日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 元年 9月10日付け:拒絶理由の通知 令和 元年11月11日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和元年11月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 樹脂によって形成された一対の透明基材と、 前記一対の透明基材の間に配置された調光セルと、 前記透明基材と前記調光セルとの間に配置され、前記透明基材と前記調光セルとを接合する2つの接合層と、を備え、 前記一対の透明基材の厚みは、1mm以上5mm以下であり、 前記調光セルは、電子制御により可視光透過率を調節可能であり、 前記接合層の貯蔵弾性率は、室温環境において、3×10^(4)Pa以上6×10^(6)Pa以下であり、 前記接合層の少なくとも一方の厚さは、50μm以上であり、 前記調光セルの厚みは、100μm以上800μm以下であり、 前記調光セルは、液晶セルを含み、 前記液晶セルには、VA方式、TN方式、IPS方式、FFS方式またはGH方式の液晶が用いられる、調光部材。」 第3 拒絶の理由 令和元年9月10日付けで当審が通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 [理由1](新規性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その最先の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 [理由2](進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その最先の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 [理由3](サポート要件)本件出願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1(新規性)について ・請求項 1-4 ・引用文献等 1 ●理由2(進歩性)について ・請求項 1-8 ・引用文献等 1-4 ●理由3(サポート要件)について ・請求項 1-8 <引用文献等一覧> 引用文献1.特開2009-242786号公報 引用文献2.特開2009-83713号公報 引用文献3.特開2010-184643号公報 引用文献4.特開平6-340218号公報 第4 引用文献について 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。 「【請求項6】 前記光学部材用粘着剤層は、23℃における貯蔵弾性率(G’)が20000?500000Paであることを特徴とする請求項5記載の光学部材用粘着剤層。」 「【0001】 本発明は、光学部材用粘着剤組成物及び当該粘着剤組成物により形成された光学部材用粘着剤層に関する。また本発明は、光学部材の少なくとも片面に前記光学部材用粘着剤層が形成されている粘着型光学部材に関する。粘着型光学部材としては、例えば、粘着剤層付き透明導電性フィルムがあげられ、当該粘着剤層付き透明導電性フィルムは、適宜加工処理がなされた後に、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどの新しいディスプレイ方式やタッチパネルなどにおける透明電極に用いられる。その他、粘着剤層付き透明導電性フィルムは、透明物品の帯電防止や電磁波遮断、液晶調光ガラス、透明ヒーターに用いられる。また、粘着型光学部材としては、例えば、粘着剤層付き光学フィルムがあげられ、当該粘着剤層付き光学フィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置に用いられる。前記光学フィルムとしては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものを用いることができる。」 「【0008】 本発明は、高温及び高温多湿環境下における黄変を抑えることができ、かつ、高温及び高温高湿環境下での発泡、剥がれ等を抑えることができる粘着剤層を形成できる光学部材用粘着剤組成物を提供することを目的とする。また本発明は、当該光学部材用粘着剤組成物により形成された光学部材用粘着剤層を提供することを目的とする。」 「【0067】 粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1?100μm程度である。好ましくは、5?50μmであり、より好ましくは10?30μmである。」 「【0093】 以下に、図を参照しながら、本発明の粘着型光学部材を説明する。図1は、本発明の粘着型光学部材の一例を示す断面図である。図1の粘着型光学部材は、光学部材1の片面に、光学部材用粘着剤層3を介して、離型フィルム4が設けられている。図2に示すように、光学部材1の他の片面には、他の層2を設けることができる。他の層2は、粘着剤層3であってもよい。また、図3に示すように、粘着剤層3と光学部材1は、アンカー層aを介して積層されていてもよい。 【0094】 以下では、図4、5を参照しながら本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムを説明する。図4は、本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。図4の粘着剤層付き透明導電性フィルムは、光学部材である、第一の透明プラスチックフィルム基材11の一方の面に透明導電性薄膜12を有し、第一の透明プラスチックフィルム基材11の他方の面には粘着剤層13を介して、離型フィルム14が設けられている。図5は、図4の粘着剤層付き透明導電性フィルムにおいて、第一の透明プラスチックフィルム基材11の一方の面に、アンダーコート層15を介して透明導電性薄膜12が設けられている場合である。なお、図5ではアンダーコート層15が1層記載されているが、アンダーコート層15は複数層設けることができる。前記透明導電性薄膜12が形成されたフィルム基材11の他方の面には、粘着剤層13を介して離型フィルム14が設けられている。」 「【0097】 前記フィルム基材11の厚みは、15?200μmであることが好ましく、25?188μmであることがより好ましい。フィルム基材11の厚みが15μm未満であると、フィルム基材11の機械的強度が不足し、このフィルム基材11をロール状にして、透明導電性薄膜12を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚みが200μmを超えると、透明導電性薄膜12の製膜加工において投入量を低減させ、またガスや水分の除去工程に弊害を生じ、生産性を損なうおそれがある。」 「【0110】 本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造方法は、前記構成のものが得られるので方法であれば特に制限はない。通常は、前記粘着剤層13は、第一の透明プラスチックフィルム基材11の一方の面に透明導電性薄膜12(アンダーコート層15を含む場合あり)を形成して透明導電性フィルムを製造した後、当該透明導電性フィルムの他方の面に形成される。粘着剤層13は前述の通りフィルム基材11に直接形成してもよく、離型フィルム14に粘着剤層13を設けておき、これを前記フィルム基材11に貼り合わせてもよい。後者の方法では、粘着剤層13の形成を、フィルム基材11をロール状にして連続的に行なうことができるので、生産性の面で一層有利である。 【0111】 前記粘着剤層付き透明導電性フィルムは、粘着剤層13に、さらに、第二の透明プラスチックフィルム基材11´を貼り合せて、図6に示すように、透明導電性積層体とすることができる。」 「【0114】 前記第二の透明プラスチックフィルム基材11´として単層構造を採用する場合について説明する。単層構造の第二の透明プラスチックフィルム基材11´を貼り合わせたのちでも透明導電性積層体が、可撓性であることが要求される場合は、第二の透明プラスチックフィルム基材11´の厚さは、通常、6?300μm程度のプラスチックフィルムが用いられる。可撓性が特に要求されない場合は、透明基体の厚さは、通常、0.05?10mm程度のガラス板やフィルム状ないし板状のプラスチックが用いられる。プラスチックの材質としては、前記フィルム基材11と同様のものが挙げられる。前記第二の透明プラスチックフィルム基材11´として複数構造を採用する場合にも、前記同様の厚さとするのが好ましい。 【0115】 前記透明導電性積層体において第二の透明プラスチックフィルム基材の片面または両面にハードコート層を設けることができる。図7では、第二の透明プラスチックフィルム基材11´の片面(粘着剤層13に貼り合せない面)にハードコート層6が設けられている。前記ハードコート層は、第二の透明プラスチックフィルム基材にハードコート処理を施すことにより得られる。ハードコート処理は、例えばアクリル・ウレタン系樹脂やシロキサン系樹脂などの硬質樹脂を塗布して硬化処理する方法などにより行うことができる。ハードコート処理に際しては、前記アクリル・ウレタン系樹脂やシロキサン系樹脂などの硬質樹脂にシリコーン樹脂等を配合して表面を粗面化して、タッチパネル等として実用した際に鏡作用による写り込みを防止しうるノングレア面を同時に形成することもできる。」 「【0121】 また、本発明の粘着型光学部材は、図1における、光学部材1として、画像表示装置用の光学フィルムを用いた、粘着剤層付き光学フィルムとして用いることができる。」 「【0128】 本発明の粘着剤層付き光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着剤層付き光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着剤層付き光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプのものを用いうる。 【0129】 液晶セルの片側又は両側に粘着剤層付き光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。」 「【0148】 <耐ペン打痕性> 粘着剤層付き透明導電性フィルムの粘着剤層に、ハードコート層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(G1SPU,きもと(株)製)を、ハードコート層が外側になるように貼り合せて、透明導電性積層体(図7と同様の構成。但し、図7にはアンダーコート層は示されていない。)を作成した。当該透明導電性積層体をハードコート層側が上側になるように、ガラス板上に、スペーサ(180μm)を介して配置した。ハードコート層側からペン(ポリアセタール製)に一定荷重(250g×30分間)をかけ、荷重解放後に1日放置後、ペン痕をITO膜側から、下記基準で目視評価した。 ○:ペン痕跡を確認できない。 ×:ペン痕跡を確認できる。」 図1は、以下のとおりである。 したがって、引用文献1には、次の発明及び技術的事項が記載されていると認められる。 「粘着型光学部材は、光学部材の片面に、粘着剤層が設けられ、 粘着型光学部材は、粘着剤層付き光学フィルムとして用いることができ、 液晶セルの両側に同じものである粘着剤層付き光学フィルムを配置し、 粘着剤層は23℃における貯蔵弾性率(G’)が20000?500000Paであり、 粘着剤層の厚さは、1?100μm程度であり、 液晶セルについても、TN型、VA型、IPS型などの任意なタイプのものを用いうる、液晶表示装置。」 (以下「引用発明」という。) 「粘着剤層付き透明導電性フィルムは、第一の透明プラスチックフィルム基材11の一方の面に透明導電性薄膜12を有し、 第一の透明プラスチックフィルム基材11の厚みは、15?200μmであり、 粘着剤層は、第一の透明プラスチックフィルム基材11の一方の面の透明導電性薄膜12の他方の面に形成され、 粘着剤層付き透明導電性フィルムは、粘着剤層に、第二の透明プラスチックフィルム基材11´を貼り合せ、 第二の透明プラスチックフィルム基材11´の厚さは、0.05?10mm程度の板状のプラスチックが用いられ、 第二の透明プラスチックフィルム基材の片面に外側になるハードコート層を設け、 粘着剤層は23℃における貯蔵弾性率(G’)が20000?500000Paであり、 粘着剤層の厚さは、1?100μm程度である、透明導電性積層体。」 (以下「技術的事項」という。) 第5 対比 1 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「光学フィルム」は、本願発明の「基材」に、 引用発明の「液晶セル」は、本願発明の「液晶セル」に、 引用発明の「粘着剤層」は、本願発明の「接合層」に、 それぞれ相当する。 (2)本願発明の「調光セルは、液晶セルを含」んでいるので、引用発明の「液晶セル」と、本願発明の「調光セル」は、「セル」の点で一致する。 また、引用発明の「液晶表示装置」と、本願発明の「調光部材」は、「部材」の点で一致する。 (3)引用発明は「粘着型光学部材は、粘着剤層付き光学フィルムとして用いることができ、液晶セルの両側に同じものである粘着剤層付き光学フィルムを配置し」と特定していることから、光学フィルムは透明で一対であり、粘着剤層は2つある。 そうすると、引用発明の「粘着型光学部材は、光学部材の片面に、粘着剤層が設けられ、粘着型光学部材は、粘着剤層付き光学フィルムとして用いることができ、液晶セルの両側に同じものである粘着剤層付き光学フィルムを配置し」は、本願発明の「一対の透明基材と、前記一対の透明基材の間に配置されたセルと、前記透明基材と前記セルとの間に配置され、前記透明基材と前記セルとを接合する2つの接合層と、を備え」に相当する。 (4)液晶セルは、電子制御により可視光透過率を調節可能であることは技術常識であるので、引用発明の「液晶セル」と、本願発明の「『電子制御により可視光透過率を調節可能であ』る『調光セル』」は、「『電子制御により可視光透過率を調節可能であ』る『セル』」の点で一致する。 (5)引用発明の「粘着剤層は23℃における貯蔵弾性率(G’)が20000?500000Paであり」は、本願発明の「接合層の貯蔵弾性率は、室温環境において、3×10^(4)Pa以上6×10^(6)Pa以下であり」と、「接合層の貯蔵弾性率は、23℃で、3×10^(4)Pa以上5×10^(5)Pa以下であり」の点で一致する。 (6)引用発明の「粘着剤層の厚さは、1?100μm程度であり」は、本願発明の「接合層の少なくとも一方の厚さは、50μm以上であり」と、「接合層の少なくとも一方の厚さは、50?100μmであり」の点で一致する。 (7)引用発明の「液晶セルについても、TN型、VA型、IPS型などの任意なタイプのものを用い」は、本願発明の「液晶セルには、VA方式、TN方式、IPS方式、FFS方式またはGH方式の液晶が用いられる」と、「液晶セルには、VA方式、TN方式、IPS方式の液晶が用いられる」点で一致する。 2 そうすると、本願発明と引用発明は、以下の構成において一致し、また、相違する。 (一致点) 「一対の透明基材と、 前記一対の透明基材の間に配置されたセルと、 前記透明基材と前記セルとの間に配置され、前記透明基材と前記セルとを接合する2つの接合層と、を備え、 前記セルは、電子制御により可視光透過率を調節可能であり、 前記接合層の貯蔵弾性率は、室温環境において、3×10^(4)Pa以上5×10^(5)Pa以下であり、 前記接合層の少なくとも一方の厚さは、50?100μmであり、 前記セルは、液晶セルを含み、 前記液晶セルには、VA方式、TN方式、IPS方式の液晶が用いられる、部材。」 (相違点1) 透明基材は、本願発明では「樹脂によって形成された」ものであり、厚みが「1mm以上5mm以下であ」るのに対して、引用発明ではそのようなものか明らかでない点で相違する。 (相違点2) 本願発明は「調光部材」であるのに対して、引用発明では「液晶表示装置」である点で相違する。 (相違点3) 本願発明では「調光セルの厚みは、100μm以上800μm以下であ」る「調光セル」のに対して、引用発明では「液晶セル」を含むセルがそのようなものか明らかでない点で相違する。 第6 判断 1 相違点1について (1)粘着剤層付き光学フィルムの配置について 液晶セルの両側に同じものである粘着剤層付き光学フィルムを配置した場合には、光学フィルムの片面に設けられた粘着剤層を液晶セルに貼り合わせて、光学フィルムの粘着剤層の設けられていない片面を外側に配置すると考えるのが自然である。 (2)そして、引用文献1の上記技術的事項には、粘着剤層の片面に設けられ、粘着剤層の設けられていない片面に、外側になるハードコート層が設けられるフィルムとして、第二の透明プラスチックフィルム基材11´が記載され、第二の透明プラスチックフィルム基材11´の厚さは、0.05?10mm程度の板状のプラスチックが用いられていることが記載されている。したがって、引用文献1には、粘着剤層の片面に設けられ、粘着剤層の設けられていない片面が外側になるようなフィルムとして、0.05?10mm程度の板状のプラスチックを用いることが示唆されている。 (3)また、液晶に関する技術において、液晶セルの外側に設けられた樹脂製基板の厚みを、1mm以上5mm以下とすることは、 周知技術(必要であれば、国際公開第2009/005133号(特に、[0012]参照。)、特開2005-17860号公報(特に、【0085】参照。)、特開平7-294911号公報(特に、【0009】参照。)を参照されたい。)である。 (4)そうすると、上記(1)の光学フィルムの粘着層を設けられていない片面を外側に配置することと、上記(2)の示唆、上記(3)の周知技術を考え合わせれば、引用発明の粘着層を設けられていない片面を外側に配置する「光学フィルム」を、厚さが1mm以上5mm以下の樹脂から形成されたものから選択することは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。 2 相違点2について (1)引用文献1には、粘着型光学部材は、液晶ディスプレイ、液晶調光ガラスに用いられることが記載され、粘着剤層付き光学フィルムは、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置以外の液晶表示装置に用いられることも示唆されている。したがって、引用文献1は、液晶を調光に用いることも示唆されている。また、液晶を調光部材に用いることは、一般的に行われていることにすぎない。 (2)そうすると、引用発明の「液晶表示装置」を調光部材として用いることは、当業者が容易に想到する事項にすぎない。 3 相違点3について (1)液晶に関する技術において、調光セルの厚みを、100μm以上800μm以下とすることは、 周知技術(必要であれば、特開平1-186911号公報(特に、第7頁左上欄第5-11行参照。)、特開2011-232626号公報(特に、【0071】参照。)、国際公開第2009/005133号(特に、[0015]、[0041]、[0042]、[0064]参照。)を参照されたい。)である。 (2)したがって、引用発明において、上記周知技術を考慮し、液晶セルの厚みを100μm以上800μm以下とした調光セルを用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。 4 効果について そして、相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 5 まとめ 以上のとおりであるから、引用発明に上記周知技術を適用して、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 第7 審判請求人の主張について 審判請求人は、令和元年11月11日付けの意見書において、「一方、引用文献1-4は、特徴(a)-(c)の組み合わせを開示しておりません。 引用文献1において、その段落0094に記載されているように、光学部材である透明導電性フィルムは、透明な基材フィルム11を有しています。この基材フィルム11の厚みは、段落0097に記載されているように、15?200μmです。したがって、引用文献1は、特徴(b)を開示していません。また、引用文献1には、段落0097に記載されているように、基材フィルム11の厚みを15?200μmとする動機付けがあります。このことからも、引用文献1の基材フィルム11の厚みを特徴(b)のようにすることはあり得ません。 また、引用文献1では、調光部材について段落0001に記載されているのみであり、その調光部材の調光セルについては何ら開示しておりません。したがって、引用文献1は、特徴(c)を開示おらず、また引用文献1から特徴(c)を想到することもありません。」と主張している。 しかしながら、引用文献1の【0097】には「前記フィルム基材11の厚みは、15?200μmであることが好ましく、25?188μmであることがより好ましい。」、「一方、厚みが200μmを超えると、透明導電性薄膜12の製膜加工において投入量を低減させ、またガスや水分の除去工程に弊害を生じ、生産性を損なうおそれがある。」と記載されており、フィルム基材の厚さを200μm以下とする動機があるのは、あくまで、フィルム基材に透明導電性薄膜を形成している場合であるというべきである。そして、引用発明で認定した光学フィルムは、一方の面に透明導電性薄膜を有していないものなので、上記厚みを200μm以下とする動機はない。 また、光学フィルムの厚み及び調光セルについては上記第6で検討したとおりである。 以上のとおりであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-12-12 |
結審通知日 | 2019-12-13 |
審決日 | 2019-12-25 |
出願番号 | 特願2019-503592(P2019-503592) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G02F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小濱 健太 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 野村 伸雄 |
発明の名称 | 調光部材、サンバイザ及び移動体 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 堀田 幸裕 |