• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1360145
審判番号 不服2018-13756  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-17 
確定日 2020-02-26 
事件の表示 特願2016-554332「データ伝送・データ受信の検出方法及び基地局及びUE」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月 3日国際公開,WO2015/127885,平成29年 5月18日国内公表,特表2017-512425〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明

本願は,2015年2月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年2月26日,中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって,平成28年8月31日に手続補正がなされ,平成29年9月22日付けで拒絶理由が通知され,平成30年1月4日に手続補正がなされ,平成30年6月11日付けで拒絶査定がされ,平成30年10月17日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がなされたものである。


2.平成30年10月17日の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成30年10月17日の手続補正を却下する。

[理由]

(1)本件補正の目的

平成30年10月17日の手続補正(以下,「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,

「複数のデータを前記データ数より多くない物理リソースにマッピングし,かつ前記複数のデータのうちの各々データを,加重値掛け及び/または共役することにより,少なくとも1個の物理リソースにマッピングするステップであって,各々データがマッピングされた物理リソース数が完全に同一ではない前記マッピングするステップと,
前記物理リソースにおけるデータを送信するステップとを備え,
前記複数のデータは複数の層に分割され,直前の層における各々データがマッピングされた物理リソース数は,直後の層における各々データがマッピングされた物理リソース数より大きく,
異なる層のデータに異なる加重値を掛け,直前の層の加重値は直後の層の加重値より大きく,同一の層における異なるデータに掛ける加重値が同一であることを特徴とするデータ伝送方法。」(以下,「本願補正発明」という。)

と補正された。

上記補正は,平成30年1月4日の手続補正書に記載された請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数のデータ」について

「前記複数のデータは複数の層に分割され,直前の層における各々データがマッピングされた物理リソース数は,直後の層における各々データがマッピングされた物理リソース数より大きく,
異なる層のデータに異なる加重値を掛け,直前の層の加重値は直後の層の加重値より大きく,同一の層における異なるデータに掛ける加重値が同一である」

と限定するものであるから,本件補正は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例記載の発明

これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願の優先権主張日前である平成25年12月9日に頒布された特開2013-247513号公報(以下,「引用例1」という。)には,

「【0048】
(第1の実施形態)
本実施形態では,通信回線はダウンリンク(下り回線,downlink)の場合について説明を行う。以下,同一の無線リソースを用いて通信を行う受信局の数が2として説明するが,本実施形態ではこれに限られず,受信局数が3以上であってもよい。また,1ヶ所の送信局から送信するとして説明するが,2ヶ所以上の送信局から同一の無線リソースを用いて通信を行ってもよい。なお,この場合は複数の送信局が異なる送信位置から送信を行うので送信局が用いる空間リソースは異なるが,受信局が用いる空間リソースが同一であれば,同一の無線リソースを用いる事になる。従って,「2ヶ所以上の送信局から同一の無線リソース」は,受信局が2ヶ所以上の送信局からの搬送波の受信時において同一の無線リソースであるという意味になる。
【0049】
ここで,送信局側における事前分離処理を行わずに,送信局が同一の無線リソースを用いて複数の受信局に対するデータ信号を送信する,多重アクセス方式を用いた通信システムは,非直交多元接続方式と呼称する。非直交多元接続方式が対応する送信方法は複数ある。非直交多元接続方式が対応する送信方法の一つは,一部空間直交多重方式である。一部空間直交多重方式では,複数の受信局間チャネル行列を上三角行列となるマルチユーザプリコーディング行列を送信データ信号に対して乗算を行い,複数のアンテナからプリコーディング後の信号を送信する送信方式である。非直交多元接続方式が対応する送信方法の別の一つは,非直交多重方式である。非直交多重方式では,多重される受信局のうちの複数の受信局宛に対するデータ信号を重畳符号(Superposition coding)化や階層変調(Hierarchal modulation)等の技術を用いて一つの変調後シンボルとして合成し,一つ又は複数のアンテナから合成信号を送信する送信方式である。」

「【0053】
図2,図3,図4は,本実施形態に係る受信局の無線リソース割当の一例を示す図である。
【0054】
図2で示す非直交多元接続方式では,受信局UE1と受信局UE2が同一の無線リソースを共有し,非直交多重方式で多重されている。また,受信局UE1宛の信号と受信局UE2宛の信号は各々の送信電力が異なるように送信される。すなわち,受信局UE1宛の信号電力は,受信局UE2宛の信号電力よりも高くする。これにより,非直交多元接続方式における各々の受信局は,自受信局宛のデータ信号を取得することができる。例えば,受信局UE1において,受信局UE2宛の信号電力が雑音電力と同程度かそれよりも小さい場合,受信局UE1は,受信局UE1宛の信号が受信局UE2宛の信号と比較して大きな電力で送信されているため,受信局UE2宛の信号を意識せずに受信処理を行うことができる。すなわち,受信局UE1は,従来と同様の受信方法で受信局UE1宛のデータ信号を取得することができる。一方,受信局UE2は,受信局UE1宛の信号が大きな干渉となるため,受信局UE2宛の信号は取り出すことが困難となる。受信局UE2宛の信号を取り出す場合は,受信局UE2は,初めに受信局UE1の信号を検出し,同信号を受信局UE2の受信信号から除去することで,受信局UE2は受信局UE2宛のデータ信号を取得することが可能となる。
【0055】
上記の非直交多元接続方式の多重関係を多重層で定義した。多重層に割り当てられた受信局は,下層に他の受信局が割り当てられた場合,下層受信局宛信号が大きな送信電力でリソースが重なって送信されている為,その下層に割り当てられている全ての受信局宛信号を干渉除去機構を用いて干渉除去若しくは干渉低減を行う必要がある。一方で,上層に割り当てられた受信局に対しては,意識せずに受信処理を行うことができる。すなわち,受信局UE1は第1層に,受信局UE2は第2層に割り当てられる。
【0056】
本実施形態では,受信局の割当無線周波数帯域幅をトランスポートブロックと定義され,トランスポートブロックに含まれる信号を用いて誤り訂正復号が行われる。又,最小割当無線周波数帯域幅をリソースブロックと定義され,各リソースブロックは一つの無線リソース番号で表される。
【0057】
割り当てられる無線リソース量が各多重層で独立に設定される場合を図3,図4に示す。図3は,上層のリソース割当単位が多い場合における本実施形態に係る受信局の無線リソース割当の一例を示す図である。上層に割り当てられた受信局は,下層の全ての他受信局宛信号を復号して干渉除去しなければならないため,例えば,第3層に割り当てられた受信局UE3宛信号を復号するには,受信局UE11,12,13,14,21,22と6受信局宛の信号を復号し,除去する必要がある。一方で,図4は,下層のリソース割当単位が多い場合における本実施形態に係る受信局の無線リソース割当の一例を示す図である。同様に,第3層に割り当てられた受信局UE31を復号するには,受信局UE1,21の2受信局宛の信号を復号し,除去するだけで良い。しかし,所望信号が割り当てられる無線リソース以上の帯域をモニタリングする必要があり,前記の例では,無線リソース番号1だけでなく無線リソース番号2,3,4までをモニタリングする。本実施形態は,図2,図3,図4のいずれの場合においても適用可能である。」
【図4】

図4には,第1層では,UE1に無線リソース1,2,3,4を割り当て,第2層では,UE21に無線リソース1,2を,UE22に無線リソース3,4を,それぞれ割り当て,第3層では,UE31に無線リソース1を,UE32に無線リソース2を,UE33に無線リソース3を,UE34に無線リソース4を,それぞれ割り当てている,ことが記載されている。

「【0120】
《データ信号処理順番》
非直交多重方式では,データ信号の処理順番を誤ると正常に復号できないという問題がある。例えば,図3において,受信局UE11宛のデータ信号を除去する前に受信局UE21宛のデータ信号を復調・復号を行うと,受信局UE11宛のデータ信号の影響により多くのビット誤りを発生させてしまう。そこで,多重層の情報が必要となる。多重層の情報を通知することで,受信局は非直交多重の割当無線リソースと他の受信局との関係を把握し,正しい受信処理順番で干渉を除去することができる。
【0121】
多重層の情報には,絶対番号と相対番号がある。絶対番号は,例えば,図3,4のような層番号である。多重層の絶対番号で通知された場合は,第1層に割当てられる受信局宛データ信号から順番にデータ信号処理を行う。相対番号は,自受信局が割当てられた多重層と自受信局と同じ無線リソースを用いて通信する他受信局の多重層との番号差となる。多重層の相対番号で通知された場合は,相対番号が最も大きい受信局宛データ信号から順番にデータ信号処理を行う。」

の記載がある。

上記記載によれば,引用例1には,

「送信局側における事前分離処理を行わずに,送信局が同一の無線リソースを用いて複数の受信局に対するデータ信号を送信する,多重アクセス方式を用いた通信システムが対応する送信方法において,
第1層では,UE1に無線リソース1,2,3,4を割り当て,第2層では,UE21に無線リソース1,2を,UE22に無線リソース3,4を,それぞれ割り当て,第3層では,UE31に無線リソース1を,UE32に無線リソース2を,UE33に無線リソース3を,UE34に無線リソース4を,それぞれ割り当て,
第1層に割当てられる受信局宛データ信号から順番にデータ信号処理を行う,
送信方法。」

が記載されている。(以下「引用発明」という)

(3)本願補正発明と引用発明の対比

ア.本願補正発明の「データ」について,本願明細書【0065】には,

「ここで、s1はユーザー1のデータ、S2はユーザー2のデータ、S3はユーザー3のデータ、S4はユーザー4のデータ、S5はユーザー5のデータを示し、これによって類推すれば、sNはユーザーnのデータを示す。」

の記載があるから,「ユーザnのデータ」を含んでいることが明らかである。

したがって,本願補正発明の「データ」は,「受信局のデータ」を含んでいる。

イ.本願補正発明の「物理リソース」は,引用発明の「無線リソース」に相当する。

ウ.局に無線リソースを割り当てることは,局のデータに無線リソースを割り当てることを意味する,ことが技術常識である。

引用発明は,7局のUEを4つの無線リソースに割り当てているから,「複数のデータを前記データ数より多くない物理リソースにマッピング」しているといえる。

エ.本願補正発明の「データに掛ける加重値」について,本願明細書【0075】には,

「ここで,行の加重値とは,当該行における1の数であり,当該行の加重値は,対応のデータの伝送に占有される物理リソース数と等しい。」

の記載があるから,「加重値」とは,「対応のデータの伝送に占有される物理リソース数」である。

一方,引用発明は,引用発明の第1層のUE1は,無線リソース数が4であり,第2層のUE21とUE22は,ともに無線リソース数が2であり,第3層のUE31,UE32,UE33,UE34は,いずれも無線リソース数が1である。
ここで,ウ.に記載したように「UE」とは「UEのデータ」であり,上記のように「対応のデータの伝送に占有される物理リソース数」が「加重値」であることを考慮すれば,第1層のUE1は,4つの無線リソースが割り当てられているから,UE1のデータは「4」の加重値を掛けることにより,4つの物理リソースにマッピングし,第2層のUE21とUE22は,2つの無線リソースが割り当てられているから,UE21とUE22のデータは「2」の加重値を掛けることにより,2つの物理リソースにマッピングし,第3層のUE31とUE32とUE33とUE34は,1つの無線リソースが割り当てられているから,UE31とUE32とUE33とUE34のデータは「1」の加重値を掛けることにより,1つの物理リソースにマッピングしているといえる。

つまり,引用発明は,「複数のデータのうちの各々UEのデータを,加重値掛けすることにより,少なくとも1個の物理リソースにマッピング」し,「各々UEのデータがマッピングされた物理リソースは完全に同一ではない」といえる。

オ.各UEがUEのデータに割り当てられた無線リソースにおけるデータを送信することは自明である。

カ.引用発明は,
第1層のUE(UE1)には,4つの無線リソースを割り当て,
第2層のUE(UE21,UE22)には,いずれも2つの無線リソースを割り当て,
第3層のUE(UE31,UE32,UE33,UE34のデータ信号)には,いずれも1つの無線リソースを割り当てているから,
UEは3つの層に分割されており,第1層のUEが割り当てられた無線リソース数は,第2層のUEが割り当てられた無線リソース数より大きく,第2層のUEが割り当てられた無線リソース数は,第3層のUEが割り当てられた無線リソース数より大きいので,「複数の局のデータは複数の層に分割され,直前の層における局のデータが割り当てられた物理リソース数は,直後の層における各々局のデータが割り当てられた物理リソース数より大き」いといえる。

キ.引用発明は,
第1層のUE(UE1)には,4つの無線リソースを割り当て,即ち加重値「4」を掛け,
第2層のUE(UE21,UE22)には,いずれも2つの無線リソースを割り当て,即ち加重値「2」を掛け,
第3層のUE(UE31,UE32,UE33,UE34のデータ信号)には,いずれも1つの無線リソースを割り当て,即ち加重値「1」を掛けているから,
「異なる層のUEのデータに異なる加重値を掛け,直前の層の加重値は直後の層の加重値より大きく,同一の層における異なるデータに掛ける加重値が同一である」といえる。

ク.「送信方法」は,「データ伝送方法」に含まれる。

したがって,本願補正発明と引用発明は,

「複数のデータを前記データ数より多くない物理リソースにマッピングし,かつ前記複数のデータのうちの各々データを,加重値掛け及び/または共役することにより,少なくとも1個の物理リソースにマッピングするステップであって,各々データがマッピングされた物理リソース数が完全に同一ではない前記マッピングするステップと,
前記物理リソースにおけるデータを送信するステップとを備え,
前記複数のデータは複数の層に分割され,直前の層における各々データがマッピングされた物理リソース数は,直後の層における各々データがマッピングされた物理リソース数より大きく,
異なる層のデータに異なる加重値を掛け,直前の層の加重値は直後の層の加重値より大きく,同一の層における異なるデータに掛ける加重値が同一であることを特徴とするデータ伝送方法。」

で一致し,相違点は無い。

(4)むすび

したがって,本願補正発明は引用発明と同一であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないから,同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下する。


3.本願発明について

(1)本願発明

平成30年10月17日の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成30年1月4日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「複数のデータを前記データ数より多くない物理リソースにマッピングし、かつ前記複数のデータのうちの各々データを、加重値掛け及び/または共役することにより、少なくとも1個の物理リソースにマッピングするステップであって、各々データがマッピングされた物理リソース数が完全に同一ではない前記マッピングするステップと、
前記物理リソースにおけるデータを送信するステップとを備えることを特徴とするデータ伝送方法。」

(2)引用例記載の発明

「2(2)引用例記載の発明」に記載したとおりである。

(3)本願発明と引用発明の対比と検討

本願発明は,前記2.で検討した本願補正発明の「複数のデータ」について

「前記複数のデータは複数の層に分割され,直前の層における各々データがマッピングされた物理リソース数は,直後の層における各々データがマッピングされた物理リソース数より大きく,
異なる層のデータに異なる加重値を掛け,直前の層の加重値は直後の層の加重値より大きく,同一の層における異なるデータに掛ける加重値が同一である」

ことに限定しないものである。

したがって,本願発明を限定した本願補正発明が,引用発明と同一であるから,「複数のデータ」を限定しない本願発明も引用発明と同一であることは明らかである。

(4)まとめ

以上のとおり,本願発明は,引用発明と同一であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲

 
審理終結日 2019-09-26 
結審通知日 2019-10-01 
審決日 2019-10-15 
出願番号 特願2016-554332(P2016-554332)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04J)
P 1 8・ 113- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 正悟和平 悠希  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 吉田 隆之
丸山 高政
発明の名称 データ伝送・データ受信の検出方法及び基地局及びUE  
代理人 平木 祐輔  
代理人 松丸 秀和  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ