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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1360444
異議申立番号 異議2019-700165  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-28 
確定日 2020-01-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6416266号発明「非平坦積層体構造、非平坦積層体構造を備えた吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6416266号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。 特許第6416266号の請求項1?6、8?12に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6416266号の請求項1?12に係る特許についての出願は、平成26年9月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年9月20日、米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成30年10月12日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:平成30年10月31日)がされた。
その後、請求項1?6及び8?12に係る特許について、平成31年2月28日に特許異議申立人小園祐子(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされ、令和1年6月24日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和1年9月18日に特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」という。)が提出され、同年10月9日付けで申立人に対し期間を指定して、訂正の請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、その指定期間内である同年11月8日に申立人より、意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。(訂正箇所に下線を付す。)
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「非平坦積層体構造であって、」とあるのを、
「吸収性物品のベルトであって、内側層と外側層とを含むベルトを形成する非平坦積層体構造であって、」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2?12も同様に訂正する。

イ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、
「前記第1の開口が、繊維の材料が熱的に溶融され又は変形されて、かつ絡み合わされた端部によって定められる、積層体構造。」とあるのを、
「前記第1の開口が、繊維の材料が熱的に溶融され又は変形されて、かつ絡み合わされた端部によって定められ、
前記第1層が、前記ベルトの前記外側層を形成し、
前記皺が、機械方向および横断方向に不連続である隆起を有する、積層体構造。」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2?12も同様に訂正する。

(2)訂正の適否
ア.一群の請求項について
訂正前の請求項1?12について、請求項2?12は直接的又は間接的に請求項1を引用するから、訂正前の請求項1?12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であって、上記訂正事項1および2による訂正は、当該一群の請求項について請求されたものである。

イ.訂正の目的について
上記訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1における「非平坦積層体構造」が、「吸収性物品のベルトであって、内側層と外側層とを含むベルトを形成する」ものであることを限定して特定するものであり、同請求項1を引用する請求項2?12についても同様である。
また、上記訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1における「積層体構造」の「第1層」及び「皺」が、それぞれ、「前記ベルトの前記外側層を形成」ものであること及び「機械方向および横断方向に不連続、である隆起を有する」ことを、各々、限定して特定するものであり、同請求項1を引用する請求項2?12についても同様である。
ゆえに、上記訂正事項1および2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

ウ.新規事項の有無について
訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の段落【0019】の「図3?5を参照すると、ベルト20は不織ウェブ24、25の層から形成され得、それはベルトの内側と外側の層をそれぞれ形成する。・・・」及び「【0027】の「ベルト構造体の製造中、弾性ストランド26などの弾性部材が、それらがベルト構造体に組み込まれる際、所望量で長手方向に引っ張られることができる。ベルトの次の弛緩の際、弾性ストランド26などの弾性部材が、それらの非歪み長さへ収縮する。これにより、不織材料の層24、25の層が集まり、弾性ストランド26の長さに対して通常横断方向の隆起28及び谷29を有するひだ又は皺27を形成する。」との記載に基づくものである。
訂正事項2による訂正のうち、訂正前の請求項1において「機械方向を有する第1の不織ウェブにより形成された第1層であって、該第1の不織ウェブが機械方向バイアスを有するポリマ繊維により形成されて、かつ貫通する第1の開口の第1のパターンを有している」と特定されていた「第1層」について、「前記第1層が、前記ベルトの前記外側層を形成し」とする訂正は、本件特許明細書の段落【0035】の「上述のようにベルトの不織ウェブ層24、25の1つ又は両方を形成する上述の方法で孔を形成した不織ウェブを用いることで、魅力的かつ興味深い効果を提供できる。ベルトが、例えば着用中、動いて引っ張られる場合、それを囲む開口及び材料は、ウェブ層の収縮により誘導された皺と相互作用する。複雑さ、深さ及び追加のテクスチャの視覚的印象を提供しながら、層の開口は開いて、閉じて、形状を変えて、対応する他の層にシフトする。様々な形状及び対応する機械方向の角度を備えた開口は、ベルト構造が収縮するとき、開口の端部に沿ってz方向突起及び/又は隆起をもたらすことができる。例えば図7Cを参照すると、ベルト構造が横断方向又は長手方向に収縮するとき、示した開口41形状が作製する「耳」は立ち上がることができて、皺の高さに加えてz方向の嵩を加えることができる。追加した嵩は、追加した柔軟性及び/又は通気性の触覚的並びに視覚的認識に、寄与することができる。そのうえベルト構造の伸縮を使って、「耳」は開閉でき、あるいは、下位層の対照的な外観及び/又は色を明らかにしたり隠したり、より複雑かつ印象的な外観をベルト構造にもたらすことができる。」との記載からみて、本件特許明細書に記載された「第1の開口」を有する「第1層」は、着用中の視覚的印象の提供に寄与するように、ベルトの外側層を形成することが自明であることに基づくものである。
訂正事項2による訂正のうち、「皺」について、「前記皺が、機械方向および横断方向に不連続である隆起を有する」とする訂正は、本件特許明細書の段落【0036】の「・・・例えば、皺27の整然とした機械方向の行かつ無秩序又はランダムな横断方向の列を提供するように、接着剤のパターンは選択できる。・・・図8Cで示す別の例では、接着剤沈着のパターンが、横断方向に沿って実質的に連続している(すなわち、弾性ストランド26で若しくは他の箇所で、ほとんど又は全く中断していない)山28及び谷29を有する皺27を生じるように構成されており、これは、横断方向に沿って層24、25の間に、接着剤の実質的に連続する、線形沈着のパターンにより達成できる。・・・」との記載及び【図4】、【図8A】?【図8C】に示されているものからみて、「接着剤沈着のパターンが、横断方向に沿って実質的に連続している(すなわち、弾性ストランド26で若しくは他の箇所で、ほとんど又は全く中断していない)山28及び谷29を有する皺27を生じるように構成され」たと説明されている【図8C】に示されたものに対して【図8A】及び【図8B】に示されたものは、機械方向および横断方向に不連続である隆起29を有することが自明であることに基づくものである。
したがって、訂正事項1及び2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

エ.特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1及び2による訂正は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、明らかに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1及び2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

オ.独立特許要件
訂正事項1および2は、上記イ.で示したように、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるところ、訂正事項1及び2により訂正される、訂正前の請求項7は、特許異議の申立てがされていない請求項であるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定により、訂正後の請求項7に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
ここで、訂正後の請求項7が引用する訂正後の請求項1に係る発明は、後記3.(3)イ.及び4.で示すように、取消理由通知に記載した取消理由によっては、その特許を取り消すことができず、また、他にも、その特許を取り消すべき理由を発見しないもの、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
してみると、訂正後の請求項7に係る発明は、訂正後の請求項1に係る発明の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えるものであるから、上記訂正後の請求項1に係る発明についての判断と同様に、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
したがって、訂正事項1及び2による訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項?第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求が認められることにより、本件特許の請求項1?6、8?12に係る発明(以下、「本件発明1?6、8?12」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?6、8?12に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
吸収性物品のベルトであって、内側層と外側層とを含むベルトを形成する非平坦積層体構造であって、
機械方向を有する第1の不織ウェブにより形成された第1層であって、該第1の不織ウェブが機械方向バイアスを有するポリマ繊維により形成されて、かつ貫通する第1の開口の第1のパターンを有している、第1層と、
第2層と、
前記第1層と前記第2層との間に配置されて、かつそれらの間に結合された1つ以上の弾性部材であって、該弾性部材が歪みを付与された状態で前記第1層と前記第2層との間に配置されて、それによって、少なくとも前記第1層に存在する前記積層体の厚さの方向に延伸する皺のパターンを形成する、弾性部材とを含み、
前記第1層が、前記第2層に結合された前記弾性部材の少なくとも1つに前記第1層が結合された第1部分と、前記第1層が前記第2層に非接合若しくは非結合された第2部分と、を含み、
前記1つ以上の弾性部材がエラストマ材のストランドを含み、
前記第1層及び前記第2層が非弾性であり、
前記第1の開口が、繊維の材料が熱的に溶融され又は変形されて、かつ絡み合わされた端部によって定められ、
前記第1層が、前記ベルトの前記外側層を形成し、
前記皺が、機械方向および横断方向に不連続である隆起を有する、積層体構造。
【請求項2】
前記第1の不織ウェブがその上に結合のパターンを有する、請求項1に記載の積層体構造。
【請求項3】
前記第1の開口の第1のパターンが、機械方向間隔、横断方向間隔、開口形状及び開口サイズの1つ以上において結合のパターンと実質的に類似している、請求項2に記載の積層体構造。
【請求項4】
前記第2層が第2の不織ウェブにより形成される、請求項1?3のいずれか一項に記載の積層体構造。
【請求項5】
前記第1の開口の大部分が、最長寸法が機械方向に沿って配向される形状を定める、請求項1?4のいずれか一項に記載の積層体構造。
【請求項6】
前記第1の開口が、棒状、円弧状、他の湾曲する有限軌道、円形、卵形、楕円形又は多角形、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される形状を定める、請求項1?5のいずれか一項に記載の積層体構造。」

「【請求項8】
前記第1の不織ウェブがポリオレフィンにより形成されたスパンボンド繊維を含む、請求項1?7のいずれか一項に記載の積層体構造。
【請求項9】
前記第1層が、前記第1層と前記第2層の間に配置された接着剤のパターンにより前記第2層に結合される、請求項1?8のいずれか一項に記載の積層体構造。
【請求項10】
前記皺のパターンが山と谷とを有し、前記第1の開口の少なくともいくつかが該山に存在する、請求項1?9のいずれか一項に記載の積層体構造。
【請求項11】
パンツ又はおむつの形態の使い捨て吸収性物品であって、該物品が、前側腰部縁部で終わる前側腰部領域、後側腰部縁部で終わる後側腰部領域、横方向を定める腰部縁部を有しており、請求項1?10のいずれか一項に記載の前記積層体構造が、前記前側腰部領域および前記後側腰部領域を相互連結するパネルを形成する、使い捨て吸収性物品。
【請求項12】
機械方向が横方向に実質的に平行である、請求項11に記載の使い捨て吸収性物品。」

(2)取消理由の概要
上記令和1年6月24日付けで通知した取消理由に示した本件発明1?6及び8?12係る特許に対する取消理由の概要は、以下のとおりである。
なお、上記取消理由においては、申立人が申し立てた全ての特許異議申立理由を採用した。

《理由》
本件発明1?6、8?12は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


《引用例一覧》
甲1.特開2011-78477号公報
甲2.特開2012-139247号公報
甲3.特開2001-328191号公報
甲4.特開2010-82139号公報
甲5.特開2009-34271号公報
甲6.特許第3249530号公報

(3)当審の判断
ア.甲1記載事項及び甲1-1発明
甲1には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の筒状部を並設してなる伸縮シートであって、
第1シートと、該第1シートに接合された第2シートと、該第1シート及び該第2シートの間に並列状に配された複数本の弾性部材とを有し、該弾性部材は前記筒状部の並設方向に伸長状態で配され、該弾性部材の伸長方向に伸縮するようになしてあり、
隣り合う前記筒状体同士の間には、前記第1シート及び前記第2シートを接合する接合部が複数個配されており、
前記筒状部は、両端部それぞれに開口端を有し、
前記筒状部の前記第1シート側の凸部には、前記筒状部の内部に繋がる開孔が間欠的に複数個形成されている伸縮シート。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、感触が柔らかく、見た目も美しく、通気性の高いギャザーを形成し得る伸縮シート及びそれを用いたパンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパンツ型吸収性物品として、パンツ内部の蒸気を外部に放出し易くし装着感が向上したパンツ型吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、前述のようなパンツ型吸収性物品として、周方向に環を形成するベルト部材と股下域を構成する吸液構造体とを、周方向に間欠的に並ぶ接合部によって接合し、周方向に隣り合う接合部同士の間に通気路が形成さた吸収性物品が記載されている。
【0003】
このような特許文献1に記載の吸収性物品においては、排泄された尿が吸液構造体に配された吸液性コアに吸収され、おむつ内の湿度が上昇しても、通気路を介して蒸気を外部に放出することができるので、おむつ内の湿潤感を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-61127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の吸収性物品においては、通気路がベルト部材と吸液構造体との接合域にのみ形成されているため、おむつ内部の蒸気を積極的に外部に放出することができない。
【0006】
したがって、本発明の課題は、通気性の高いギャザーを形成すると共に、感触が柔らかく、見た目も美しい伸縮シート及びその伸縮シートを用いたパンツ型吸収性物品を提供することにある。」
(ウ)「【発明の効果】
【0010】
本発明の伸縮シートによれば、通気性が高く、感触が柔らかく、見た目も美しいので、パンツ型吸収性物品にそのようなギャザーを形成することができる。」
(エ)「【0013】
本実施形態の伸縮シート1は、複数個の筒状部2を並設してなる。伸縮シート1は、図1に示すように、第1シート3と、第1シート3に接合された第2シート4と、第1シート3及び第2シート4の間に並列状に配された複数本の弾性部材5とを有している。弾性部材5は、図1に示すように、筒状部2の並設方向に伸長状態で配されており、伸縮シート1は、弾性部材5の伸長方向に伸縮するようになしてある。
上述のように、筒状部2の並設方向と、弾性部材5の伸長方向と、伸縮シート1の伸縮方向は、同一方向であり、以下の説明では、図1に示すように、図面の上下方向を、Y方向とし、Y方向と直交する方向をX方向として説明する。
【0014】
伸縮シート1は、図1に示すように、複数個の筒状部2を並設して形成されており、10個?200個、特に30個?80個の筒状部2をX方向に並設して形成されていることが好ましい。
【0015】
筒状部2は、図1に示すように、両端部2a,2aそれぞれに、開口端21,21を有している。筒状部2は、Y方向に細長い中空の構造である。開口端21は、略円形であり、その内径は、3mm?20mm、特に5mm?10mmであることが好ましい。開口端21の内径は、最も広い部位での長さである。筒上部2は、後述するように、第1シート3、第2シート4、弾性部材5、及び、第1シート3及び第2シート4を接合する接合部6により形成される。筒状部2の第1シート3側の凸部には、図1に示すように、筒状部2の内部に繋がる開孔22が間欠的に複数個形成されている。開孔22は、通気性を確保する観点から、Y方向に、10個?200個、特に5個?50個、略均等な間隔を空けて間欠的に配されていることが好ましい。このようにY方向に間欠的に配された複数個の開孔22(開孔22の群220)が、図1に示すように、X方向に、10個?200個、特に20個?80個、間欠的に列をなして形成されていることが好ましい。」
(オ)「【0017】
複数本の弾性部材5それぞれは、第1シート3及び第2シート4の間に、X方向に伸長した状態で配され、Y方向に、5本?200本、特に10本?100本の弾性部材5が、間欠的に並列状に配されていることが好ましい。各弾性部材5は、接合部6を通らないように配されており、各弾性部材5の両端部それぞれにおいてのみ、第1シート3及び第2シート4の間に挟まれた状態で固定されている(図1の左側の固定参照)。
【0018】
複数個の接合部6は、第1シート3及び第2シート4を接合している部位であり、隣り
合う筒状体2,2同士の間のY方向に、5個?200個、特に10個?100個の接合部6が、略均等な間隔を空けて間欠的に配されていることが好ましい。このようにY方向に間欠的に配された複数個の接合部6(接合部6の群60)が、図1に示すように、X方向に、10個?200個、特に10個?100個、間欠的に列をなして形成されていることが好ましい。伸縮シート1には、図1に示すように、Y方向に延びる接合部6の群60と、Y方向に細長い筒状部2とが、X方向に、交互に配されており、本実施形態においては、Y方向に延びる接合部6の群60と、Y方向に延びる開孔22の群220とが、X方向に、交互に配されている。
【0019】
以下、第1シート3、第2シート4、弾性部材5、及び接合部6から形成される筒上部2について具体的に説明する。
X方向に長い長方形状の第1シート3と、第1シート3と同形同大の第2シート4を、接合部6により接合する。本実施形態においては、第1シート3には、X方向及びY方向それぞれに、略均等な間隔を空けて、開孔22が形成されている。本実施形態においては、第1シート3の開孔22の配置パターンは、図2に示すように、X方向及びY方向にそれぞれ、略均等な間隔を空けて間欠的に配されたパターンであるが、千鳥状のパターンであっても、ランダムなパターンであってもよい。第1シート3の開孔22は、第1シート3を伸長させた状態において、X方向に隣り合う開孔22のピッチP1が、図2に示すように、3?50mm、特に5?20mmであることが好ましく、Y方向に隣り合う開孔22のピッチP2は、3?50mm、特に5?20mmであることが好ましい。
【0020】
本実施形態においては、接合部6の配置パターンは、図2に示すように、X方向及びY方向にそれぞれ、略均等な間隔を空けて間欠的に配されたパターンであるが、千鳥状のパターンであってもよい。本実施形態においては、X方向において、開孔22と接合部6とが交互に配されている。本実施形態においては、Y方向に細長い筒状部2を確実に形成させる観点から、第1シート3及び第2シート4を伸長させた状態における、X方向に隣り合う接合部6のピッチP3は、図2に示すように、1?30mm、特に6?20mmであることが好ましく、各接合部6のX方向の長さL1は、図2に示すように、0.1?5mm、特に0.2?1.5mmであることが好ましく、ピッチP3と長さL1の比(P3/L1)は1.1?300、特に4?100であることが好ましい。また、第1シート3及び第2シート4を伸長させた状態における、Y方向に隣り合う接合部6のピッチP4は、図2に示すように、1?40mm、特に2?15mmであることが好ましく、各接合部6のY方向の長さL2は、図2に示すように、0.5?20mm、特に1?10mmであることが好ましく、ピッチP4と長さL2の比(P4/L2)は1.05?80、特に1.05?15であることが好ましい。」
(カ)「【0022】
上述のように形成した伸縮シート1は、その自然状態(外力を加えない状態)において、各弾性部材5がX方向に収縮すると、図1に示すように、第1シート3及び第2シート4それぞれが、X方向に隣り合う接合部6の群60,60同士の間毎に、伸縮シート1の厚み方向に突出し、Y方向に細長い中空の構造の筒状部2を形成する。このように伸縮シート1は、図1に示すように、自然状態において、X方向に複数個の筒状部2が並設されたような形状となる。自然状態における筒状部2の高さは,好ましくは片側1?15mm程度である。
【0023】
本実施形態の伸縮シート1の形成材料について説明する。
第1シート3及び第2シート4としては、それぞれ、例えばエアースルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等の各種製法による不織布、織布、編布、樹脂フィルム等、及びこれら2以上を積層一体化させてなるシート材等を用いることができる。第1シート3及び第2シート4としては、好ましくは不繊布が用いられる。不織布の坪量としては、好ましくは5?50g/m^(2)、特に好ましくは18?30g/m^(2)の不織布が用いられる。
【0024】
第1シート3及び第2シート4は、熱融着による接合を容易にする観点から、その形成素材(不織布の場合の繊維、樹脂フィルムのフィルム材料等)が熱融着性の樹脂からなることが好ましく、熱融着性の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。不織布等を構成する繊維は、表面のみが熱融着性の樹脂からなる芯鞘型の複合繊維等であっても良い。尚、2枚のシート材のうちの一方のシート材と他方のシート材とでは、形成材料が同一でも異なっていてもよい。」
(キ)「【0026】
<座屈強度の試験法(CD)>
機械流れ方向(MD)に150mm、機械流れ方向と直交する方向(CD)に30mmの長方形の試験片を取り、直径45mmの円筒を作り、重なり合った部分の上端と下端とをホッチキス等で止め測定サンプルとする。これを、テンシロン万能試験装置の圧縮武験モードにより、測定環境20℃、65%RH、測定条件としては、圧縮速度10mm/min、測定距離20mmで測定を行う。サンプルを20mm圧縮した時の最大強度を各サンプルについて測定し、その平均値を求め、これを座屈独度とする。
前述したように、複数個の開孔22を有する第1シート3として、不織布(好ましくは5?50g/m^(2)、特に好ましくは18?30g/m^(2)の不織布)が用いられた際の不織布の座屈強度は、好ましくはCD方向で1cN以上?50cN以下、特に好ましくは3cN以上?30cN以下、MD方向で好ましくは2cN以上?70cN以下、特に好ましくは5cN以上?50cN以下である。第2シート4として、不織布(好ましくは5?50g/m^(2)、特に好ましくは18?30g/m^(2)の不織布)が用いられた際の不織布の座屈強度は、好ましくはCD方向で2cN以上?50cN以下、特に好ましくは5cN以上?30cN以下、MD方向で好ましくは3cN以上?70cN以下、特に好ましくは10cN以上?50cN以下である。」
(ク)「【0027】
弾性部材5としては、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられる各種公知の弾性材料を特に制限なく用いることができ、例えば、スチレン-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を用いることができ、形態としては、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状ないし紐状(平ゴム等)のもの、或いはマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を用いることができる。」
(ケ)「【0029】
第1シート3及び第2シート4の接合には、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられる各種公知の接合方法を特に制限なく用いることができ、例えば、ヒートシール、高周波シール、超音波シール、接着剤等が用いられる。」
(コ)「【0032】
第1実施形態のパンツ型使い捨ておむつ10A(以下、「おむつ10A」ともいう。)は、図3に示すように、肌当接面側に、伸縮シート1の第1シート3が配されて形成された外装体11と、外装体11の内面側に固定されている吸収性本体12とを具備している。おむつ10Aにおいては、筒状部2の開口端21が、おむつ10Aのウエスト開口部WO又はレッグ開口部LOの周縁部に配されている。おむつ10Aは、図3?図4に示すように、中心線CLに対して左右対称に形成されており、おむつ10Aの伸長状態(図4参照)において、その長手方向(Y方向)に、着用時に、着用者の腹側に配される腹側部Aと、着用者の背側に配される背側部Bと、腹側部Aと背側部Bとの間に位置し、着用者の股間部に配される股下部Cを有している。
【0033】
おむつ10Aは、図3,図4に示すように、外装体11と、外装体11の内面側に固定されている吸収性本体12とを具備している。おむつ10Aは、腹側部Aにおける外装体11の両側縁部11a,11a及び背側部Bにおける外装体11の両側縁部11b,11bそれぞれが接合されて一対のサイドシール部13,13が形成されている。尚、図3,図4に示すように、外装体11の幅方向(X方向)の長さは、吸収性本体12の幅方向(X方向)の長さよりも長い。
【0034】
おむつ10Aの外装体11は、図3に示すように、伸縮シート1により形成されており、伸縮シート1の第1シート3が、肌当接面側に配されている。おむつ10Aの外装体11においては、一対のサイドシール部13,13間に亘って、各弾性部材5がX方向に伸長した状態で配されており、Y方向に、間欠的に並列状に配されている。各弾性部材5は、一対のサイドシール部13,13において固定されているが、一対のサイドシール部13,13間においては、第1シート3と第2シート4と固定されていない。従って、おむつ10Aは、自然状態において、図3に示すように、腹側部Aにおける外装体11と、背側部Bにおける外装体11とに、おむつ10Aの長手方向(Y方向)に長い複数個の筒状部2がX方向に並設されている。」
(サ)「【0041】
上述した本発明の伸縮シート1を用いて形成した第1施形態のパンツ型使い捨ておむつ10Aを使用した際の作用効果について説明する。
第1実施形態のおむつ10Aは、図3,図4に示すように、外装体11が伸縮シート1から形成され、伸縮シート1は複数個の筒状部2を並設して形成されているので、見た目が美しい。また、第1実施形態のおむつ10Aは、図3,図4に示すように、肌当接面側に、伸縮シート1の第1シート3が配されて形成ており、筒状部2の開口端21が、おむつ10Aのウエスト開口部WO又はレッグ開口部LOの周縁部に配されていると共に、第1シート3側の凸部には、筒状部2の内部に繋がる開孔22が間欠的に複数個形成されているので、通気性が高く、おむつ10Aの内部に湿気が溜まり難い。また、第1実施形態のおむつ10Aは、図3,図4に示すように、外装体11が伸縮シート1から形成され、複数個の筒状部2により、伸縮シート1の厚み方向にボリュームが出るので、おむつ10Aに触れたときの感触が極めて柔らかく、肌触りがよい。」
(シ)「【0050】
次に、本発明のパンツ型吸収性物品を、上述した伸縮シート1を用いて形成した好ましい第3実施形態に基づき、図7?図8を参照しながら説明する。
第3実施形態のパンツ型使い捨ておむつ10C(以下、「おむつ10C」ともいう)については、第1実施形態のパンツ型使い捨ておむつ10Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態のパンツ型使い捨ておむつ10Aと同様であり、第1実施形態のパンツ型使い捨ておむつ10Aの説明が適宜適用される。
【0051】
第3実施形態のおむつ10Cは、おむつ10Aの外装体11と異なり、図7に示すように、伸縮性の腹側シート部材11Aと、伸縮性の背側シート部材11Bとを備えている。また、第3実施形態のおむつ10Cは、おむつ10Aの外装体11と異なり、図7に示すように、吸収性本体12の外表面が伸縮シート1により覆われている。
【0052】
おむつ10Cは、図7に示すように、着用時に着用者の腹側に配される伸縮性の腹側シート部材11Aと、着用時に着用者の背側に配される伸縮性の背側シート部材11Bと、腹側シート部材11A及び背側シート部材11Bに亘って固定された吸収性本体12とを具備し、腹側シート部材11Aの両側縁部11a,11aと背側シート部材11Bの両側縁部11b,11bとが接合されてウエスト開口部WOと一対のレッグ開口部LO,LOとが形成されている
【0053】
おむつ10Cの腹側シート部材11A及び背側シート部材11Bは、図7に示すように、伸縮シート1により形成されており、伸縮シート1の第1シート3が、肌当接面側に配されている。おむつ10Cの腹側シート部材11A及び背側シート部材11Bそれぞれにおいては、各弾性部材5がX方向に伸長した状態で配されており、Y方向に、間欠的に並列状に配されている。各弾性部材5は、一対のサイドシール部13,13において固定されているが、一対のサイドシール部13,13間においては、第1シート3と第2シート4と固定されていない。従って、おむつ10Cは、自然状態において、図7に示すように、腹側シート部材11Aと、背側シート部材11Bとに、おむつ10aの長手方向(Y方向)に長い複数個の筒状部2がX方向に並設されている。
【0054】
おむつ10Cにおいては、吸収性本体12の外表面が伸縮シート1により覆われている。具体的には、吸収性本体12は、図7,図8に示すように、実質的に縦長の長方形状であり、液透過性の表面シート121、液不透過性(液難透過性)の裏面シート122、両シート121,122間に介在する吸収体123を備えており、おむつ10Cにおいては、裏面シート122の外面側に、伸縮シート1が配されている。裏面シート122に配された伸縮シート1においては、各弾性部材5がY方向に伸長した状態で配されており、X方向に、間欠的に並列状に配されている。各弾性部材5は、吸収性本体12の長手方向(Y方向)の両端部において固定されているが、吸収性本体12の長手方向(Y方向)の両端部間においては、第1シート3と第2シート4と固定されていない。従って、おむつ10Cの吸収性本体12には、自然状態において、図7に示すように、その外表面に、おむつ10Cの幅方向(X方向)に長い複数個の筒状部2がY方向に並設されている。」
(ス)「【0059】
上述した本発明の第3実施形態のパンツ型使い捨ておむつ10Cを使用した際の作用効果について説明する。
第3実施形態のおむつ10Cの効果については、第1実施形態のおむつ10Aの効果と異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態のおむつ10Aの効果と同様であり、第1実施形態の展開型の使い捨ておむつ10Aの効果の説明が適宜適用される。」
(セ)
「【図1】


(ソ)
「【図3】


(タ)
「【図4】


(チ)
「【図7】


(ツ)
「【図8】



上記(シ)、(ス)、(セ)、(チ)及び(ツ)に摘記した「第3実施形態のおむつ10C」に関する記載に着目し、上記(ア)?(ス)の摘記及び(セ)?(ツ)の図示を整理すると、甲1には以下の甲1発明が記載されているといえる。

《甲1発明》
おむつ10Cの腹側シート部材11A及び背側シート部材11Bを形成するための伸縮シート1であって、
ポリエチレン、ポリプロピレン等を形成素材とするスパンボンド不織布を用い、X方向及び該X方向に直交するY方向にそれぞれ、略均等な間隔を空けて間欠的に配されたパターンで開孔22が形成され、おむつ10Cの形成時には肌当接面側に配される、第1シート3と、
不織布を用いた第2シート4と、
前記X方向及びY方向にそれぞれ、略均等な間隔を空けて間欠的に配されたパターンで形成され、前記第1シート3と前記第2シート4とを、接着剤で接合する接合部6と、
前記第1シート3及び第2シート4の間に、前記X方向に伸長した状態で配され、前記Y方向に間欠的に並列状に配され、その両端部それぞれにおいてのみ、前記第1シート3及び第2シート4との間に挟まれた状態で固定されており、スチレン-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴムを用いた糸状ないし紐状(平ゴム等)の複数本の弾性部材5と、
前記第1シート3、第2シート4、弾性部材5及び接合部6により形成される複数個の筒状部2とを有し、
その自然状態(外力を加えない状態)において、各弾性部材5がX方向に収縮することにより、前記第1シート3及び第2シート4それぞれが、X方向に隣り合う接合部6の群60,60同士の間毎に、伸縮シート1の厚み方向に突出し、Y方向に細長い中空の構造の前記筒状部2を形成し、
前記開孔22は、前記筒状部2の内部に繋がれるように、前記第1シート3側の凸部に形成されている、伸縮シート1。

イ.本件発明1について
(ア)甲1発明との対比、一致点、相違点
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「おむつ10C」、「ポリエチレン、ポリプロピレン等を形成素材とするスパンボンド不織布」、「開孔22」、「肌当接面側」、「第2シート4」、「スチレン-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴムを用いた糸状ないし紐状(平ゴム等)」、「弾性部材5」は、各々、本件発明1の「吸収性物品」、「第1の不織ウェブ」、「第1の開口」、「内側」、「第2層」、「エラストマ材のストランド」、「弾性部材」に相当する。
また、甲1発明の「伸縮シート1」は、「第1シート3」、「弾性部材5」及び「第2シート4」が積層された構造体であり、「その自然状態(外力を加えない状態)において、各弾性部材5がX方向に収縮することにより、前記第1シート3及び第2シート4それぞれが、X方向に隣り合う接合部6の群60,60同士の間毎に、伸縮シート1の厚み方向に突出し、Y方向に細長い中空の構造の前記筒状部2を形成する」ものであり、平坦なものではないことが明らかであるから、前記「伸縮シート1」は、本件発明1の「非平坦積層体構造」に相当する。
そして、甲1発明において、「おむつ10Cの腹側シート部材11A及び背側シート部材11B」は、いわゆる、おむつ10Cのベルト部材であるといえるところ、「腹側シート部材11A及び背側シート部材11B」は、「おむつ10Cの形成時には肌当接面側に配される肌当接面側に配される」、「第1シート3」と「弾性部材5」と「第2シート4」とが積層された構造体である「伸縮性シート1」により形成されるものであることを踏まえると、前記「おむつ10Cの腹側シート部材11A及び背側シート部材11B」は、本件発明1の「吸収性物品のベルトであって、内側層と外側層とを含むベルト」に相当する。
さらに、甲1発明の「ポリエチレン、ポリプロピレン等を形成素材とするスパンボンド不織布を用い、X方向及び該X方向に直交するY方向にそれぞれ、略均等な間隔を空けて間欠的に配されたパターンで開孔22が形成され、おむつ10Cの形成時には肌当接面側に配される、第1シート3」と、
本件発明1の「機械方向を有する第1の不織ウェブにより形成された第1層であって、該第1の不織ウェブが機械方向バイアスを有するポリマ繊維により形成されて、かつ貫通する第1の開口の第1のパターンを有している」、「前記ベルトの前記外側層を形成」する、「第1層」とは、
「第1の不織ウェブにより形成された第1層であって、貫通する第1の開口の第1のパターンを有している、第1層」という限りにおいて一致する。
そして、甲1発明の「前記第1シート3、第2シート4、弾性部材5及び接合部6により形成され」、「その自然状態(外力を加えない状態)において、各弾性部材5がX方向に収縮することにより、前記第1シート3及び第2シート4それぞれが、X方向に隣り合う接合部6の群60,60同士の間毎に、伸縮シート1の厚み方向に突出し、Y方向に細長い中空の構造の」、「複数個の筒状部2」と、
本件発明1の「前記第1層と前記第2層との間に配置されて、かつそれらの間に結合された1つ以上の弾性部材であって、該弾性部材が歪みを付与された状態で前記第1層と前記第2層との間に配置されて、それによって」、「形成」される、「少なくとも前記第1層に存在する前記積層体の厚さの方向に延伸」し、「機械方向および横断方向に不連続である隆起を有する」、「皺のパターン」とは、
「前記第1層と前記第2層との間に配置されて、かつそれらの間に結合された1つ以上の弾性部材であって、該弾性部材が歪みを付与された状態で前記第1層と前記第2層との間に配置されて、それによって」、「形成」される、「少なくとも前記第1層に存在する前記積層体の厚さの方向に延伸」する「皺のパターン」という限りにおいて一致する。

してみると、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
《一致点》
吸収性物品のベルトであって、内側層と外側層とを含むベルトを形成する非平坦積層体構造であって、
機械方向を有する第1の不織ウェブにより形成された第1層であって、該第1の不織ウェブがポリマ繊維により形成されて、かつ貫通する第1の開口の第1のパターンを有している、第1層と、
第2層と、
前記第1層と前記第2層との間に配置されて、かつそれらの間に結合された1つ以上の弾性部材であって、該弾性部材が歪みを付与された状態で前記第1層と前記第2層との間に配置されて、それによって、少なくとも前記第1層に存在する前記積層体の厚さの方向に延伸する皺のパターンを形成する、弾性部材とを含み、
前記第1層が、前記第2層に結合された前記弾性部材の少なくとも1つに前記第1層が結合された第1部分と、前記第1層が前記第2層に非接合若しくは非結合された第2部分と、を含み、
前記1つ以上の弾性部材がエラストマ材のストランドを含み、
前記第1層及び前記第2層が非弾性である、積層体構造。

《相違点1》
第1の不織ウェブが、本件発明1では「機械方向を有する」ものであって、「機械方向バイアスを有するポリマ繊維により形成され」ているのに対し、甲1発明では「スパンボンド不織布を用いた」ものではあるが、スパンボンド不織布を構成する長繊維の繊維長方向が機械方向であるとは特定されていない点。
《相違点2》
本件発明1の第1の開口は「繊維の材料が熱的に溶融され又は変形されて、かつ絡み合わされた端部によって定められる」ものであるのに対し、甲1発明の「開孔22」はそのようなそのようなものであるとの特定がされていない点。
《相違点3》
本件発明1は、「第1層が、前記ベルトの前記外側層を形成」するものであるのに対し、甲1発明は、「第1シート3」が、「おむつ10Cの形成時には肌当接面側に配される」ものである点。
《相違点4》
本件発明1は、「皺が、機械方向および横断方向に不連続である隆起を有する」ものであるのに対し、甲1発明は、「筒状部2」が、「Y方向に細長い中空の構造」のものである点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、《相違点3》及び《相違点4》から検討する。
a.《相違点3》について
甲1発明は、「第1シート3」が、「X方向及び該X方向に直交するY方向にそれぞれ、略均等な間隔を空けて間欠的に配されたパターンで開孔22が形成され、おむつ10Cの形成時には肌当接面側に配される」ものであることにより、通気性が高く、おむつの内部に湿気が溜まり難いという作用効果を奏し(上記ア.(サ)及び(ス)を参照。)、通気性の高いギャザーを形成すると共に、感触が柔らかく、見た目も美しい伸縮シート及びその伸縮シートを用いたパンツ型吸収性物品を提供するという課題(上記ア.(イ)を参照。)を解決するものであるから、甲1発明における「第1シート3」を「肌当接面側」とは反対側となる外側の層を形成するように、その構成を変更することには、阻害要因がある。
そして、甲1発明における「第1シート3」を「肌当接面側」とは反対側となる外側の層を形成するように、その構成を変更し得る旨は、甲1には、当然のことながら記載されておらず、これを示唆する記載もないし、甲2?甲6にも記載されておらず、これを示唆する記載もない。
したがって、甲1発明における「第1シート3」を「肌当接面側」とは反対側となる外側の層を形成するように、その構成を変更し、《相違点3》に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

なお、上記《相違点3》に関し、申立人は、申立人意見書の3頁16行?4頁末行において、本件特許明細書には、「外側層」を「肌当接面側とは反対側」と同視すべき根拠は見出せず、本件特許明細書の段落【0035】及び【0037】の記載からは、視覚効果を考慮しても、「開口」を有するのは「外側層」に限らないことが理解できるから、上記《相違点3》は実質的な相違点とはならない旨を主張している。
しかしながら、本件特許明細書において、【背景技術】を説明した段落【0002】の「・・・バルーンパンツのデザインは、通常、中心の吸収性シャーシ及び弾性ベルトを含む。弾性ベルトは、通常、比較的幅が広く(長手方向に)及び横方向に弾性的に伸縮性がある。それは完全に着用者の腰部を取り囲み、それによって、着用者の皮膚の比較的広い領域を覆い、更にパンツの目視できる外側表面の比較的大きな部分を占める。・・・これにより不織ウェブ層に、ベルトの目に見える皺の形態になるギャザが形成される。前記皺が、非平坦(textured)で、ビロードに似た、フリルのついた及び/又は柔らかい外観及び感触を提示し、並びに、伸縮性及び快適さの目視できる表示も提供するので、一部の消費者は皺を魅力的と感じると考えられている。」(下線は当審にて付与。)との記載、【発明が解決しようとする課題】を説明した段落【0003】の「バルーンパンツのデザインは製造の特定の効率を提供し、及び該デザインは人気を得ることができると考えられている。したがって、その外観及び機能を強化するベルトなどの構成要素のいかなる改善も、その製造業者に利点をもたらすことができる。」との記載から、本件特許明細書における「外観」とは、バルーンパンツ等の吸収性物品の着用時の外観を意味することが明らかであり、本件発明1における「外側層」とは、着用時に外側となる層を意味すると解するのが自然であるから、本件特許明細書には、「外側層」を「肌当接面側とは反対側」と同視すべき根拠は見出せないとはいえない。
そして、本件特許明細書の段落【0035】の「上述のようにベルトの不織ウェブ層24、25の1つ又は両方を形成する上述の方法で孔を形成した不織ウェブを用いることで、魅力的かつ興味深い効果を提供できる。」との記載及び【0037】の「両方の層24、25に孔がある場合、ベルトの開口した不織材層の視覚効果を増すことができる。」との記載は、内側層、外側層となる不織ウェブ層24、25の双方に孔(開口)を形成することができ、その場合には、視覚効果を増すことができる旨を意味するものであって、申立人の「「外側層」を「肌当接面側とは反対側」と同視すべき根拠は見出せない」との主張を裏付けるものではない。
ゆえに、上記《相違点3》に関する申立人の主張は、当を得たものではなく、採用できない。

b.《相違点4》について
甲1発明は、「筒状部2」が、「Y方向に細長い中空の構造」のものであることにより、見た目が美しく、さらに、「第1シート3」が、「X方向及び該X方向に直交するY方向にそれぞれ、略均等な間隔を空けて間欠的に配されたパターンで開孔22が形成され、おむつ10Cの形成時には肌当接面側に配される」ものであることと相まって、通気性が高く、おむつの内部に湿気が溜まり難いという作用効果を奏し(上記ア.(サ)及び(ス)を参照。)、通気性の高いギャザーを形成すると共に、感触が柔らかく、見た目も美しい伸縮シート及びその伸縮シートを用いたパンツ型吸収性物品を提供するという課題(上記ア.(イ)を参照。)を解決するものであるから、甲1発明における「Y方向に細長い中空の構造」である「筒状部2」をその途中で中断し、機械方向および横断方向に不連続である隆起を有するものとなるように、その構成を変更することには、阻害要因がある。
そして、甲1発明における「筒状部2」をその途中で中断し、機械方向および横断方向に不連続である隆起を有するものとなるように、その構成を変更し得る旨は、甲1には、当然のことながら記載されておらず、これを示唆する記載もないし、甲2?甲6にも記載されておらず、これを示唆する記載もない。
したがって、甲1発明における「筒状部2」をその途中で中断し、機械方向および横断方向に不連続である隆起を有するものとなるように、その構成を変更し、《相違点4》に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

なお、上記《相違点4》に関し、申立人は、申立人意見書の5頁1行?7頁12行において、本件特許明細書には、「不連続である隆起」における「不連続」とは「通気性が阻害される」ような不連続性を意味すると理解できる根拠は見出せないから、上記《相違点4》は実質的な相違点とはならない旨及び「不連続である隆起」なる不明瞭な記載により、本件発明1?6及び8?12に係る特許は特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものである旨を主張している。
しかしながら、仮に、本件発明1における「不連続である隆起」における「不連続」とは「通気性が阻害される」ような不連続性を意味すると理解できないものであるとしても、申立人は、本件発明1において、「皺が、機械方向および横断方向に不連続である隆起を有する」ことと、甲1発明において、「筒状部2」が、「Y方向に細長い中空の構造」であることとは、技術的に同義であると解するべき具体的な理由を何ら説明していないし、技術的に同義であると解するべき証拠もないから、上記《相違点4》は実質的な相違点とはならないとの主張は当を得たものではない。
そして、本件発明1における「不連続である隆起」とは、本件特許明細書の段落【0036】の「・・・例えば、皺27の整然とした機械方向の行かつ無秩序又はランダムな横断方向の列を提供するように、接着剤のパターンは選択できる。・・・図8Cで示す別の例では、接着剤沈着のパターンが、横断方向に沿って実質的に連続している(すなわち、弾性ストランド26で若しくは他の箇所で、ほとんど又は全く中断していない)山28及び谷29を有する皺27を生じるように構成されており、これは、横断方向に沿って層24、25の間に、接着剤の実質的に連続する、線形沈着のパターンにより達成できる。・・・」との記載及び【図4】、【図8A】?【図8C】に示されているものからみて、「接着剤沈着のパターンが、横断方向に沿って実質的に連続している(すなわち、弾性ストランド26で若しくは他の箇所で、ほとんど又は全く中断していない)山28及び谷29を有する皺27を生じるように構成され」たと説明されている【図8C】に示されたものに対して【図8A】及び【図8B】に示されたものは、機械方向および横断方向に不連続である隆起29を意味することが明らかであり、不明瞭な記載とはいえないから、本件発明1?6及び8?12に係る特許は特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものであるとの主張も当を得たものではない。
したがって、上記《相違点4》に関する申立人の主張は採用できない。

(ウ)まとめ
以上のとおり、甲1発明の構成を、上記《相違点3》及び《相違点4》に係る本件発明1の構成に変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、上記《相違点1》及び《相違点2》について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲1記載事項?甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ.本件発明2?6及び8?12について
本件発明2?6及び8?12は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えるものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明及び甲1記載事項?甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ.小括
したがって、本件発明1?6及び8?12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?6及び8?12に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由によっては、取り消すことができず、また、他に本件発明1?6及び8?12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品のベルトであって、内側層と外側層とを含むベルトを形成する非平坦積層体構造であって、
機械方向を有する第1の不織ウェブにより形成された第1層であって、該第1の不織ウェブが機械方向バイアスを有するポリマ繊維により形成されて、かつ貫通する第1の開口の第1のパターンを有している、第1層と、
第2層と、
前記第1層と前記第2層との間に配置されて、かつそれらの間に結合された1つ以上の弾性部材であって、該弾性部材が歪みを付与された状態で前記第1層と前記第2層との間に配置されて、それによって、少なくとも前記第1層に存在する前記積層体の厚さの方向に延伸する皺のパターンを形成する、弾性部材とを含み、
前記第1層が、前記第2層に結合された前記弾性部材の少なくとも1つに前記第1層が結合された第1部分と、前記第1層が前記第2層に非接合若しくは非結合された第2部分と、を含み、
前記1つ以上の弾性部材がエラストマ材のストランドを含み、
前記第1層及び前記第2層が非弾性であり、
前記第1の開口が、繊維の材料が熱的に溶融され又は変形されて、かつ絡み合わされた端部によって定められ、
前記第1層が、前記ベルトの前記外側層を形成し、
前記皺が、機械方向および横断方向に不連続である隆起を有する、積層体構造。
【請求項2】
前記第1の不織ウェブがその上に結合のパターンを有する、請求項1に記載の積層体構造。
【請求項3】
前記第1の開口の第1のパターンが、機械方向間隔、横断方向間隔、開口形状及び開口サイズの1つ以上において結合のパターンと実質的に類似している、請求項2に記載の積層体構造。
【請求項4】
前記第2層が第2の不織ウェブにより形成される、請求項1?3のいずれか一項に記載の積層体構造。
【請求項5】
前記第1の開口の大部分が、最長寸法が機械方向に沿って配向される形状を定める、請求項1?4のいずれか一項に記載の積層体構造。
【請求項6】
前記第1の開口が、棒状、円弧状、他の湾曲する有限軌道、円形、卵形、楕円形又は多角形、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される形状を定める、請求項1?5のいずれか一項に記載の積層体構造。
【請求項7】
前記第1層又は前記第2層のうちの一方が、前記第1層若しくは前記第2層の他方の第2の色と視覚的に対照をなす第1の色で、色合いをつけて、着色されて、又は印刷されている、請求項1?6のいずれか一項に記載の積層体構造。
【請求項8】
前記第1の不織ウェブがポリオレフィンにより形成されたスパンボンド繊維を含む、請求項1?7のいずれか一項に記載の積層体構造。
【請求項9】
前記第1層が、前記第1層と前記第2層の間に配置された接着剤のパターンにより前記第2層に結合される、請求項1?8のいずれか一項に記載の積層体構造。
【請求項10】
前記皺のパターンが山と谷とを有し、前記第1の開口の少なくともいくつかが該山に存在する、請求項1?9のいずれか一項に記載の積層体構造。
【請求項11】
パンツ又はおむつの形態の使い捨て吸収性物品であって、該物品が、前側腰部縁部で終わる前側腰部領域、後側腰部縁部で終わる後側腰部領域、横方向を定める腰部縁部を有しており、請求項1?10のいずれか一項に記載の前記積層体構造が、前記前側腰部領域および前記後側腰部領域を相互連結するパネルを形成する、使い捨て吸収性物品。
【請求項12】
機械方向が横方向に実質的に平行である、請求項11に記載の使い捨て吸収性物品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-01-14 
出願番号 特願2016-542799(P2016-542799)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 弘實 由美子  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 渡邊 豊英
横溝 顕範
登録日 2018-10-12 
登録番号 特許第6416266号(P6416266)
権利者 ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
発明の名称 非平坦積層体構造、非平坦積層体構造を備えた吸収性物品  
代理人 宮嶋 学  
代理人 柏 延之  
代理人 朝倉 悟  
代理人 山下 和也  
代理人 小島 一真  
代理人 小島 一真  
代理人 永井 浩之  
代理人 村田 卓久  
代理人 中村 行孝  
代理人 出口 智也  
代理人 朝倉 悟  
代理人 山下 和也  
代理人 永井 浩之  
代理人 出口 智也  
代理人 中村 行孝  
代理人 柏 延之  
代理人 宮嶋 学  
代理人 村田 卓久  

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