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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H04N
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H04N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H04N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04N
管理番号 1360450
異議申立番号 異議2018-700383  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-08 
確定日 2020-01-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6228041号発明「画像読取装置及び画像形成装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6228041号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?12〕について訂正することを認める。 特許第6228041号の請求項1、2、4?9、11、12に係る特許を維持する。 特許第6228041号の請求項3、10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6228041号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?12に係る特許についての出願は、平成26年3月4日(優先権主張 平成25年6月21日)の出願であって、平成29年10月20日付けでその特許権の設定登録(特許公報発行日 平成29年11月8日)がされた。
これに対して、平成30年5月8日に特許異議申立人東京総合コンサルティング株式会社より請求項1ないし請求項12に対して特許異議の申立てがされたものであり、その後の手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 8月 8日 取消理由通知
平成30年10月12日 意見書提出及び訂正請求(特許権者)
平成30年12月14日 意見書提出(特許異議申立人)
平成31年 2月 6日 訂正拒絶理由通知
令和 1年 5月 7日 取消理由通知(決定の予告)
令和 1年 7月12日 意見書提出及び訂正請求(特許権者)
令和 1年 9月 6日 意見書提出(特許異議申立人)
令和 1年 9月26日 取消理由通知(決定の予告)
令和 1年11月29日 意見書提出及び訂正請求(特許権者)

第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨
令和1年11月29日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)により、特許権者が請求する訂正の趣旨は、特許第6228041号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?12について訂正することを求めるものである。

2 訂正事項
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
また、下線は訂正箇所である。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記信号ケーブルは、幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され」と記載されているのを、
「前記信号ケーブルは、当該信号ケーブルの一部の幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記走査部は、前記信号ケーブルの上方への移動を規制する上側規制部を具備し、当該上側規制部は、当該上側規制部によって規制された当該信号ケーブルの部分が当該走査部の長手方向に沿うように当該走査部に構成および配置される」と記載されているのを、
「前記走査部は、画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ、前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部と、前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部を具備し、前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に「前記上側規制部」と記載されているのを、「前記突出部」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に「前記上側規制部」と記載されているのを、「前記突出部」と訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1ないし3のいずれかに記載の画像読取装置」と記載されているのを、
「請求項1または2に記載の画像読取装置」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項10を削除する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1ないし10のいずれかに記載の画像読取装置」と記載されているのを、
「請求項1、2、4ないし9のいずれかに記載の画像読取装置」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1ないし11の何れかに記載の画像読取装置と」と記載されているのを、
「請求項1、2、4ないし9および11の何れかに記載の画像読取装置と」に訂正する。

(10)訂正事項10
明細書の段落【0007】に「前記信号ケーブルは、幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され」と記載されているのを、
「前記信号ケーブルは、当該信号ケーブルの一部の幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され」に訂正する。

(11)訂正事項11
明細書の段落【0007】に「前記走査部は、前記信号ケーブルの上方への移動を規制する上側規制部を具備し、当該上側規制部は、当該上側規制部によって規制された当該信号ケーブルの部分が当該走査部の長手方向に沿うように当該走査部に構成および配置される」と記載されているのを、
「前記走査部は、画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ、前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部と、前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部を具備し、前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」に訂正する。

(12)訂正事項12
明細書の段落【0008】に「前記上側規制部」と記載されているのを、「前記突出部」に訂正する。

(13)訂正事項13
明細書の段落【0009】を削除する。

(14)訂正事項14
明細書の段落【0010】に「前記上側規制部」と記載されているのを、
「前記突出部」に訂正する。

(15)訂正事項15
明細書の段落【0016】に「 また、本願発明の他の態様の画像読取装置は、原稿を載置するための平板状の透明板と、前記透明板の下方に設けられており、前記透明板上に載置された原稿に少なくとも光を照射する光源を備える走査部と、前記走査部に一端が接続され、少なくとも前記走査部によって走査された結果に基づく画像信号を受け付ける回路部に他端が接続される帯状の信号ケーブルを備え、前記信号ケーブルは、前記一端が前記走査部の延びる方向に対して水平に接続され、水平から垂直に立てた状態で、前記走査部の移動方向に延びた壁部に沿って延び、前記走査部は、前記信号ケーブルが水平から垂直に変化した後において、前記信号ケーブルの上方への移動を規制する上側規制部を具備する。
また、上記のいずれかの態様において、前記信号ケーブルの一端は、前記原稿を走査する場合の前記走査部の移動方向の上流側において当該走査部に接続される。」と記載されているのを、
「 また、上記のいずれかの態様において、前記信号ケーブルの一端は、前記原稿を走査する場合の前記走査部の移動方向の上流側において当該走査部に接続される。」に訂正する。

3 訂正の適否の判断
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1?9、11、12について、請求項2?9、11、12は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1、2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
また、本件訂正前の請求項10?12について、請求項11、12は、請求項10を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項7によって記載が訂正される請求項10に連動して訂正されるものである。
そうすると、請求項1?9、11、12は一群の請求項を構成するとともに、請求項10?12も一群の請求項を構成し、共通する請求項11、12を有するから、これらの一群の請求項は組み合わされて、請求項1?12が1つの一群の請求項になる。
したがって、本件訂正前の請求項1?12に対応する本件訂正後の請求項1?12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正の目的
ア 訂正事項1
訂正事項1は、本件訂正前の「前記信号ケーブルは、幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され」ることにおける「幅方向」が、「当該信号ケーブルの一部の幅方向」であることに限定するための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 訂正事項2
訂正事項2に関連する記載として、本件訂正前の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明には以下のような記載がある。(下線は、当審で付した。)

(ア)「前記走査部は、前記信号ケーブルが前記上側規制部から離脱するのを防止する離脱防止部をさらに具備する」(【請求項3】)

(イ)「この点において、上側保持部36(発明の詳細な説明における他の記載から、「上側保持部36」は、「上側保持部38」の誤記である。)は、上側規制部ということができる。」(段落【0055】)

(ウ)「図13に示すように、上側保持部38は下方に開放された鈎状、即ち倒立凹状をなしている。つまり、上側保持部38は、画像読取ユニット3の壁部37から立ち上がり、壁部37よりも副走査方向上流側(Y2方向)に突出した突出部380aと、当該突出部380aに連続して設けられ、壁部37と並行に設けられる爪部380bによって構成される。
つまり、上側保持部38によってフレキシブルフラットケーブル52が保持されることにより、突出部380aによって上方への移動が規制され、爪部380bによって突出部380aからの離脱を防止される。」(段落【0068】?【0069】)

上記(ア)?(ウ)より、以下のことがいえる。
a 上記(ア)より、「上側規制部」と「離脱防止部」は異なる。
b 上記(イ)より、上側保持部38が、「上側規制部」である。
c 上記(ウ)より、突出部380aによって上方への移動が規制され、爪部380bによって突出部380aからの離脱を防止されることから、突出部380aが、「上側規制部」であり、爪部380bが「離脱防止部」である。
d 上記(ウ)より、上側保持部は、突出部と爪部によって構成される。

そうすると、本件訂正前の「上側規制部」は、上記bのように上側保持部38を意味するのか、上記cのように、突出部380aを意味するのか不明であるため、その記載が明瞭でない。

そこで、訂正事項2は、上記bのとおり、「上側規制部」は上側保持部を意味すること、上記a、c、dのとおり、上側保持部である「上側規制部」は「突出部」と「離脱防止部」によって構成されること、上記cのとおり、「上側規制部」である「突出部」が「前記信号ケーブルの上方への移動を規制する」であること、「上側規制部」である「離脱防止部」は、「上側規制部」である「突出部」によって「規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向」「に沿うように、当該走査部に構成および配置される」ことを訂正するものである。
そして、本件訂正は、本件訂正前の「前記信号ケーブルの上方への移動を規制する上側規制部」という記載を明瞭にするために、本件訂正前の「前記信号ケーブルの上方への移動を規制する上側規制部」を「前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部」とし、本件訂正前の「当該上側規制部は、当該上側規制部によって」を「前記離脱防止部は、前記突出部によって」とする訂正である。
よって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

また、訂正事項2は、本件訂正後の「前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部」が、「画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ」ていることに限定し、
「前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部」をさらに具備することに限定し、
「当該走査部の長手方向に沿う」ことが、「前記走査部の長手方向において当該走査部に沿う」ことに限定する訂正である。
よって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

ウ 訂正事項3
訂正事項3は、訂正事項2により、本件訂正前の請求項1の「上側規制部」を「突出部」と訂正したことに伴い、本件訂正前の請求項2の「前記上側規制部」を「前記突出部」とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

エ 訂正事項4
訂正事項4は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

オ 訂正事項5
訂正事項5は、訂正事項2により、本件訂正前の請求項1の「上側規制部」を「突出部」と訂正したことに伴い、本件訂正前の請求項4の「前記上側規制部」を「前記突出部」とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

カ 訂正事項6
訂正事項6は、請求項4に「請求項1ないし3のいずれかに記載の画像読取装置」と記載されているのを、「請求項1または2記載の画像読取装置」に訂正するものであり、多数項を引用している引用請求項数の削減をするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

キ 訂正事項7
訂正事項7は、請求項10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

ク 訂正事項8
訂正事項8は、請求項11に「請求項1ないし10のいずれかに記載の画像読取装置」と記載されているのを、「請求項1、2、4ないし9のいずれかに記載の画像読取装置」に訂正するものであり、多数項を引用している引用請求項数の削減をするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

ケ 訂正事項9
訂正事項9は、請求項12に「請求項1ないし11のいずれかに記載の画像読取装置」と記載されているのを、「請求項1、2、4ないし9および11のいずれかに記載の画像読取装置」に訂正するものであり、多数項を引用している引用請求項数の削減をするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

コ 訂正事項10
訂正事項10は、明細書の段落【0007】に「前記信号ケーブルは、幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され」と記載されているのを、「前記信号ケーブルは、当該信号ケーブルの一部の幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され」に訂正するものであり、訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

サ 訂正事項11
訂正事項11は、明細書の段落【0007】に「前記走査部は、前記信号ケーブルの上方への移動を規制する上側規制部を具備し、当該上側規制部は、当該上側規制部によって規制された当該信号ケーブルの部分が当該走査部の長手方向に沿うように当該走査部に構成および配置される」と記載されているのを、「前記走査部は、画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ、前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部と、前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部を具備し、前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」に訂正するものであり、訂正事項2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

シ 訂正事項12
訂正事項12は、明細書の段落【0008】に「前記上側規制部」と記載されているのを、「前記突出部」に訂正するものであり、訂正事項3に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

ス 訂正事項13
訂正事項13は、明細書の段落【0009】を削除するものであり、訂正事項4に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

セ 訂正事項14
訂正事項14は、明細書の段落【0010】に「前記上側規制部」と記載されているのを、「前記突出部」に訂正するものであり、訂正事項5に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

ソ 訂正事項15
訂正事項15は、明細書の段落【0016】に
「 また、本願発明の他の態様の画像読取装置は、原稿を載置するための平板状の透明板と、前記透明板の下方に設けられており、前記透明板上に載置された原稿に少なくとも光を照射する光源を備える走査部と、前記走査部に一端が接続され、少なくとも前記走査部によって走査された結果に基づく画像信号を受け付ける回路部に他端が接続される帯状の信号ケーブルを備え、前記信号ケーブルは、前記一端が前記走査部の延びる方向に対して水平に接続され、水平から垂直に立てた状態で、前記走査部の移動方向に延びた壁部に沿って延び、前記走査部は、前記信号ケーブルが水平から垂直に変化した後において、前記信号ケーブルの上方への移動を規制する上側規制部を具備する。
また、上記のいずれかの態様において、前記信号ケーブルの一端は、前記原稿を走査する場合の前記走査部の移動方向の上流側において当該走査部に接続される。」と記載されているのを、
「 また、上記のいずれかの態様において、前記信号ケーブルの一端は、前記原稿を走査する場合の前記走査部の移動方向の上流側において当該走査部に接続される。」に訂正するものであり、訂正事項7に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
ア 訂正事項1
訂正事項1は、明細書の段落【0037】、【0044】、【0060】、図2、図5、図6の
「【0037】
図5乃至図8及び図14を参照して分かるように、画像読取ユニット3の後端部近傍に、画像信号出力用のコネクタ(接続部)34aが設けられており、かかるコネクタ34aにフレキシブルフラットケーブル52の一端が接続されている。コネクタ34aは、主走査方向に、即ち原稿台ガラス2の主面に沿った方向に、長い形状を有しており、このコネクタ34aには、フレキシブルフラットケーブル52の一端が横長となるようにして接続される。」
「【0044】
図5及び図6に示すように、コネクタ34aに一端が接続されたフレキシブルフラットケーブル52は、副走査方向上流側へと延び、さらにその先において捻れつつ反対方向(副走査方向下流側。図5中Y2方向)へと折り返される。この折り返し部は、フレキシブルフラットケーブル52が湾曲するように折り返されることで形成される。つまり、フレキシブルフラットケーブル52は、その一端から離反するにしたがって水平方向から鉛直(垂直)方向に、その横長の幅方向を変化される。このような折り返し部を形成することで、フレキシブルフラットケーブル52に屈曲されることによる折り目が付けられることがなく、断線の発生が防止される。かかるフレキシブルフラットケーブル52の折り返し部は、第2壁部352bに当接するように保持部351の内部に収められる(図5)。」
「【0060】
フレキシブルフラットケーブル52は、上側保持部38によって保持された箇所の先において、副走査方向上流側へと延び、さらにその先においてU字状に水平に折り返され、保持部351の外側を通って画像読取ユニット3の後方へと回り、壁部62に沿って副走査方向下流側へと延びる(図2参照)。壁部62の中間部分には、縦方向の切れ込んだ欠落部が設けられており、フレキシブルフラットケーブル52は、この欠落部を通って壁部62の後側の制御回路5が配置されている領域7bへと入り込んでいる。この領域7bの内部で、フレキシブルフラットケーブル52は垂直に立てられた状態から水平に捻られ、その先において制御回路5に接続される。」


の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

イ 訂正事項2
訂正事項2に関連する記載として、明細書の段落【0057】、【0068】、【0069】、【0078】、図5?図8、図13には、以下のように記載されている。(図5、図6については、アを参照。)
「【0057】
上記のような下側保持部36は、コネクタ34aの後端からフレキシブルフラットケーブル52の幅の約2倍の距離を隔てた位置に設けられている。また、上側保持部38は、コネクタ34aの後端からフレキシブルフラットケーブル52の幅の約2.5倍の距離を隔てた位置に設けられている(図5参照)。」
「【0068】
図12は、上側保持部38の拡大側面図であり、図13は、図12に示すB-B’線による断面図である。図13に示すように、上側保持部38は下方に開放された鈎状、即ち倒立凹状をなしている。つまり、上側保持部38は、画像読取ユニット3の壁部37から立ち上がり、壁部37よりも副走査方向上流側(Y2方向)に突出した突出部380aと、当該突出部380aに連続して設けられ、壁部37と並行に設けられる爪部380bによって構成される。」
「【0069】
つまり、上側保持部38によってフレキシブルフラットケーブル52が保持されることにより、突出部380aによって上方への移動が規制され、爪部380bによって突出部380aからの離脱を防止される。つまり、爪部380bによってフレキシブルフラットケーブル52が副走査方向上流側(Y2方向)への移動を規制される。」
「【0078】
また、上述した第1の実施の形態においては、上側保持部38を、コネクタ34aの後端からフレキシブルフラットケーブル52の幅の約2.5倍の距離を隔てた位置に設ける構成について述べたが、これに限定されるものではない。但し、フレキシブルフラットケーブル52の浮き上がりを防止しつつ、配線作業を容易にするという観点から、コネクタ34aの後端からフレキシブルフラットケーブル52の幅の約2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に下側保持部36を設けることが好ましい。」




の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 訂正事項3
訂正事項3は、明細書の段落【0057】、【0068】?【0070】、図5?図8、図12、図13の
「【0070】
また、かかる倒立凹状となった上側保持部38の内側の上面(突起380aの下面)38aは、前方へ向かうにしたがって低くなるように傾斜している(図12参照)。つまり、フレキシブルフラットケーブル52の接続端部52aから離れるに従って、上面38aは下方に傾斜される。」

(図5、図6については、アを参照。段落【0057】、【0068】、【0069】、図7、図8、図13については、イを参照。)
の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項4、7
訂正事項4、7は、請求項を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項4、7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

オ 訂正事項5
訂正事項5は、明細書の段落【0054】、【0055】、【0057】、【0068】、【0069】、図5?図8、図13の
「【0054】
フレキシブルフラットケーブル52の折り返し部の先は、捻られながら折り返されることによって、平面部が斜め上方を向くように傾斜する(図5及び図6参照)。そのさらに先の部分は、斜め上方を向いていた平面部が実質的に垂直に立つように逆方向に捻られ、欠落部36aに挿入されて支持される。欠落部36aは上部が開放された凹状をなしており、この欠落部36aを形成する直線部354a、底板部354b及び壁部37の後端部によって、フレキシブルフラットケーブル52を下方から保持する下側保持部36が構成される(図6、図7及び図14参照)。つまり、底板部354bによって、フレキシブルフラットケーブル52は、下方への移動を規制されるのである。この点において、下側保持部36ないし底板部354bは、下側規制部ということができる。」
「【0055】
下側保持部36のさらに前方には、フレキシブルフラットケーブル52を上方から保持する上側保持部38が設けられている(図5乃至図7及び図14参照)。上側保持部38は、壁部37の上端に設けられており、鈎状をなしている。かかる上側保持部38がフレキシブルフラットケーブル52の上端に係合し、フレキシブルフラットケーブル52が上側保持部38によって上方から保持される。つまり、上側保持部38によって、フレキシブルフラットケーブル52は上方への移動を規制されるのである。この点において、上側保持部36は、上側規制部ということができる。」

(図5、図6については、アを参照。段落【0057】、【0068】、【0069】、図7、図8、図13については、イを参照。)
の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

カ 訂正事項6、8、9
訂正事項6、8、9は、多数項を引用している引用請求項数の削減をするための訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項6、8、9は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

キ 訂正事項10?14
訂正事項10?14は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項10?14は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(4)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
ア 訂正事項1
訂正事項1は、上記(2)アに示したように、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、発明のカテゴリーや発明の対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

イ 訂正事項2
訂正事項2は、上記(2)イに示したように、特許請求の範囲の減縮および明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、発明のカテゴリーや発明の対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

ウ 訂正事項3、5
訂正事項3、5は、上記(2)ウ、オに示したように、訂正事項2により、訂正前の請求項1の「上側規制部」を「突出部」と訂正したことに伴う訂正であり、発明のカテゴリーや発明の対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項4、7
訂正事項4、7は、上記(2)エ、キに示したように、請求項を削除するものであり、発明のカテゴリーや発明の対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

オ 訂正事項6、8、9
訂正事項6、8、9は、上記(2)カ、ク、ケに示したように、多数項を引用している引用請求項数の削減をするための訂正であり、発明のカテゴリーや発明の対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

カ 訂正事項10?14
訂正事項10?14は、上記(2)コ?セに示したように、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であり、発明のカテゴリーや発明の対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

キ 独立特許要件について
訂正前の請求項1?12は、本件特許異議申立事件において特許異議の申立てがされている請求項であるから、訂正事項1?9については、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に基づき、独立特許要件は課されない。

4 むすび
以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号に掲げる事項を目的としており、かつ、同条第4項、及び第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合している。

したがって、訂正後の請求項〔1?12〕についての訂正を認める。

第3 本件訂正発明
令和1年11月29日の本件訂正請求により訂正された本件特許請求の範囲の請求項1?12に係る発明(以下、項番にしたがい「本件訂正発明1」?「本件訂正発明12」といい、これらを総称して「本件訂正発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
なお、説明のために、本件訂正発明1については、A?Gの記号を当審において付与した。以下、「構成A」?「構成G」と称する。

(本件訂正発明)
【請求項1】(本件訂正発明1)
A 原稿を載置するための平板状の透明板と、
B 前記透明板の下方に設けられており、移動することにより、前記透明板上に載置された原稿を走査し、当該原稿から画像を読み取り、画像信号を出力する走査部と、
C 前記走査部の接続部に一端が接続され、少なくとも当該接続部から出力された画像信号を受け付ける回路部に他端が接続される帯状の信号ケーブルを備え、
D 前記信号ケーブルは、当該信号ケーブルの一部の幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され、
E 前記走査部は、
E-1 画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ、前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部と、
E-2 前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部を具備し、
F 前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される、
G 画像読取装置。

【請求項2】(本件訂正発明2)
前記突出部は、前記信号ケーブルの前記一端から遠ざかるに従って下方へ傾斜する傾斜面を有する、請求項1記載の画像読取装置。

【請求項3】(削除)

【請求項4】(本件訂正発明4)
前記走査部は、前記突出部とは前記信号ケーブルの長手方向において異なる位置で、前記信号ケーブルの下方への移動を規制する下側規制部を具備する、請求項1または2のいずれかに記載の画像読取装置。

【請求項5】(本件訂正発明5)
前記走査部は、
前記信号ケーブルの一端の幅方向が、前記透明板の主面に沿った方向となるように前記信号ケーブルの一端と接続される接続部と、
前記接続部から延設された前記信号ケーブルの幅方向を、前記一端から離反するにしたがって前記透明板の主面に対して交差する方向へと変化させるように、前記信号ケーブルを保持する形状保持部を具備する、請求項4に記載の画像読取装置。

【請求項6】(本件訂正発明6)
前記信号ケーブルは、前記走査部の前記接続部より下方の位置において、前記形状保持部と当接する、請求項5に記載の画像読取装置。

【請求項7】(本件訂正発明7)
前記下側規制部は、前記形状保持部に近接して設けられている、請求項6に記載の画像読取装置。

【請求項8】(本件訂正発明8)
前記形状保持部は、少なくとも一部において前記接続部に対向する壁部を有し、前記接続部から延設された前記信号ケーブルは当該壁部に当接する、請求項5ないし7のいずれかに記載の画像読取装置。

【請求項9】(本件訂正発明9)
前記壁部は、前記接続部の一部と対向する第1の部分が前記接続部よりも下方に設けられ、前記接続部の他の一部と対向する第2の部分が前記第1の部分よりも上方へと延びるように設けられている、請求項8に記載の画像読取装置。

【請求項10】(削除)

【請求項11】(本件訂正発明11)
前記信号ケーブルの一端は、前記原稿を走査する場合の前記走査部の移動方向の上流側において当該走査部に接続される、請求項1、2、4ないし9のいずれかに記載の画像読取装置。

【請求項12】(本件訂正発明12)
請求項1、2、4ないし9および11の何れかに記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置によって読み取られた画像を記録媒体に形成する画像形成部を備える、画像形成装置。

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由(決定の予告)の要旨
令和1年7月12日に請求された訂正請求(以下、「第2訂正」という。)により訂正された特許請求の範囲の請求項1、2、4?9、11、12に係る発明に対して、当審が令和1年9月26日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

本件特許は、請求項1?4、6?8、10、11、12、13の記載が以下(1)、(2)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(1)第2訂正の請求項1について
ア 構成E-1の「前記走査部の長手方向において前記接続部とは所定距離を隔てた位置に配置され」「る突出部」について
構成E-1は、突出部と接続部(コネクタ34a)との距離は、所定距離と限定しているのみであり、突出部が接続部(コネクタ34a)から離れ過ぎている位置や、近過ぎる位置に設けられる構成を含む記載であるから、明細書に記載も示唆もされていない構成を含むものである。

また、所定距離として突出部が接続部から離れ過ぎている位置では、浮き上がりが発生する虞があるので、段落【0005】、【0006】に示された課題を解決することができない。

したがって、構成E-1は、明細書に記載も示唆もされていない構成である。
また、課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになる。

イ 構成Fの「前記突出部は、当該突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分であって、前記離脱防止部によって当該突出部から離脱するのを防止された当該部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」について
願書に添付した明細書の段落【0057】、【0068】、【0069】、図5?図8、図13の記載において、構成Fは、記載も示唆もされていない。
また、「前記突出部は、」「当該部分が走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」構成が、どのような構成であるか不明瞭である。

(2)第2訂正の請求項2、4?9、11、12について
第2訂正の請求項2、4?9、11、12は、第1訂正の請求項1を直接もしくは間接的に引用する発明であるから、上記(1)と同様の取消理由が存在する。

2 当審の判断
(1)本件訂正発明1について
ア 上記1(1)アについて
上記第2の3(3)イで記載したように、願書に添付した明細書の段落【0078】には、「但し、フレキシブルフラットケーブル52の浮き上がりを防止しつつ、配線作業を容易にするという観点から、コネクタ34aの後端からフレキシブルフラットケーブル52の幅の約2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に下側保持部36を設けることが好ましい。」と記載されている。

本件訂正により、本件訂正発明1の構成E-1は、突出部は、「画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ」る構成へと訂正され、願書に添付した明細書の段落【0078】に記載された構成となった。
さらに、本件訂正により、フレキシブルフラットケーブル52の浮き上がりを防止しつつ、配線作業を容易にする構成となったので、課題を解決するための手段が反映されているものである。

イ 上記1(1)イについて
本件訂正により、本件訂正発明1の構成Fは、「前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」構成へと訂正され、願書に添付した明細書及び図面の段落【0057】、【0068】、【0069】、図5?図8、図13に記載された構成となり、当該訂正により、その記載が明瞭になった。

ウ 本件訂正発明1についてのまとめ
以上より、本件訂正発明1の記載は、特許法第36条第6項第1号、第2号の要件を満たすものである。

(2)本件訂正発明2、4?9、11、12について
本件訂正発明2、4?9、11、12は、本件訂正発明1を直接もしくは間接的に引用する発明であり、上記(1)と同様に、本件訂正発明2、4?9、11、12の記載は、特許法第36条第6項第1号、第2号の要件を満たすものである。

(3)まとめ
本件訂正発明1、2、4?9、11、12の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしている。

第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立書における特許異議申立理由
特許異議申立書における、請求項1?請求項12に係る特許に対しての特許異議申立理由は、以下のとおりである。(特許異議申立書の「3 申立の理由」)

(1)理由1:特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)
請求項1は、甲第1号証に対して新規性がなく、甲第2号証に対して新規性がなく、甲第3号証に対して新規性がない。
請求項3は、甲第1号証に対して新規性がなく、甲第2号証に対して新規性がなく、甲第3号証に対して新規性がない。
請求項4は、甲第1号証に対して新規性がない。
請求項5は、甲第1号証に対して新規性がなく、甲第3号証に対して新規性がない。
請求項6は、甲第3号証に対して新規性がない。
請求項7は、甲第3号証に対して新規性がない。
請求項8は、甲第1号証に対して新規性がない。
請求項10は、甲第3号証に対して新規性がない。
請求項11は、甲第1号証に対して新規性がなく、甲第2号証に対して新規性がない。
請求項12は、甲第1号証に対して新規性がなく、甲第3号証に対して新規性がない。

(2)理由2:特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
請求項1?請求項12は、甲第1号証または甲第1号証と周知技術から当業者が容易に発明できたものであり、進歩性がない。
請求項1?請求項12は、甲第2号証または甲第2号証と周知技術から当業者が容易に発明できたものであり、進歩性がない。
請求項1?請求項12は、甲第3号証または甲第3号証と周知技術から当業者が容易に発明できたものであり、進歩性がない。

(3)理由3:特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)
請求項1?請求項9、請求項11、請求項12は、サポート要件違反がある。

(4)理由4:特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)
請求項1?請求項12は、明確性違反がある。

2 証拠方法 特許異議申立人は、上記1(1)及び(2)の証拠方法として、異議申立書と同時に、以下の文献の写しを提出している。

甲第1号証(特開2007-43684号公報)
甲第2号証(特開2003-78719号公報)
甲第3号証(特開2001-346006号公報)
甲第4号証(特開2013-11655号公報)
甲第5号証(特開2007-33509号公報)
甲第6号証(特開2003-233138号公報)
甲第7号証(特開2002-247291号公報)
甲第8号証(特開2008-162728号公報)

3 当審の判断
(1)特許法第29条第1項第3号(新規性)、同条第2項(進歩性)について
ア 各甲号証に記載された発明又は技術
(ア)甲第1号証
a 甲第1号証に記載された事項

甲第1号証(特開2007-43684号公報)には、「イメージセンサ、コンタクトイメージセンサ及び画像読取装置」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

【0001】
本発明は、MFD(Multi Function Device)等に採用される画像読取装置、特に、画像読取装置に組み込まれるコンタクトイメージセンサなどに代表されるイメージセンサの構造に関するものである。

【0068】
この画像読取装置30は、例えば、プリンタ機能とスキャナ機能とを一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)のスキャナ部として、 また、複写機の画像読取部として用いられ得る。ただし、本発明において、上記プリンタ機能は任意の機構であり、例えば、スキャナ機能のみを有するフラットベッドスキャナ(FBS:Flatbed Scanner)として画像読取装置30が構成されていてもよい。
【0069】
同図が示すように、この画像読取装置30は、FBSとして機能する読取載置台31を備えており、この読取載置台31に対して原稿押さえカバー33が開閉自在に取り付けられている。この原稿押さえカバー33は、オート・ドキュメント・フィーダ(ADF:Auto Document Feeder)32を備えている。読取載置台31は、略直方体の本体フレーム34(ケーシング)と、本体フレーム34の天面(上面)に設けられたコンタクトガラス板35(光透過性プレート)と、本体フレーム34に内蔵された画像読取ユニット36とを有する。原稿は、コンタクトガラス板35上に載置される。 原稿押さえカバー33が閉じられると、原稿は、当該原稿押さえカバー33によって固定される。そして、上記画像読取ユニット36がコンタクトガラス板35の下方を当該コンタクトガラス板35に沿って移動することによって、上記原稿から画像を読み取るようになっている。

【0071】
前述のように、原稿押さえカバー33は、原稿トレイから排紙トレイへ原稿を連続搬送するADF32を備えている。こ
のADF32による搬送過程において、原稿がプラテン38を通過し、このプラテン38の下方において画像読取ユニット36が当該原稿から画像を読み取るようになっている。ただし、本実施形態において、このADF32は省略されていてもよい。

【0075】
画像読取ユニット36は、図2が示すように、CISユニット50(コンタクトイメージセンサ)と、ガイドシャフト52(ガイド部材)を有するベルト駆動機構53(スライド機構)とを備えている。また、画像読取ユニット36は、同図では図示されていないローラユニット58(図3参照)を備えている。図3が示すように、このローラーユニット58は、コンタクトガラス板35の裏面75に当接し、CISユニット50の円滑な移動を支援する。CISユニット50は、いわゆる密着型のイメージセンサである。CISユニット50は、原稿に光を照射すると共にこの原稿からの反射光を受光し、受光した光を電気信号に変換する。CISユニット50は、後に詳述されるように、細長直方体状の筐体70を備えており、この筐体70が上記ガイドシャフト52と嵌合している。そして、この筐体70がコンタクトガラス板35(図1及び図3参照)の下方を移動する。
【0076】
具体的には、ガイドシャフト52は、下フレーム39の幅方向に渡って架設されている。ここで、「下フレーム39の幅方向」とは、CISユニット50の筐体70の長手方向に直交し且つコンタクトガラス板35の下面75に沿う方向(すなわち、図3において、紙面に垂直な方向)である。以下、当該方向(図3における紙面に垂直な方向)は、「短手方向」と称される。上記筐体70は、ベルト駆動機構53により駆動されて上記ガイドシャフト52上を摺動して移動する。また、後に詳述されるが、このガイドシャフト52は、コイルバネ63(図5参照)を備えており、これによって上方へ弾性的に付勢されている。したがって、筐体70は、コンタクトガラス板35の裏面75に密着するように付勢され、コンタクトガラス板35に押しつけられた状態で当該コンタクトガラス板35に沿って上記短手方向に移動されるようになっている。

【0085】
図12が示すように、筐体70には、複数の受光素子190が設けられている。各受光素子190は、筐体70の内底部に設けられており、当該筐体70の長手方向に並設されている。受光素子190は、光電変換素子であって、受光した光量に基づいて電気信号を出力する。この電気信号が、原稿に表された画像の画像信号である。各受光素子190の受光面から筐体70の上面74に至る箇所には、複数の集光レンズ72が設けられている。この集光レンズ72は、筐体70の上面74に照射された反射光を受光素子190の受光面に導光するものであり、典型的には、光ファイバが採用される。集光レンズ72は、受光素子190に対応して設けられており、該受光素子190と同じように、筐体70の長手方向に並設されている。また、筐体70の上面74に照射された反射光を捕捉しやすいように、集光レンズ72は、上面74に露出されている。
【0086】
このように構成されたCISユニット50において、上記光源160から光が出射されると、当該光は、ライトガイド73を通過して筐体70の長手方向全体に略均等に拡散されて、ライトガイド73の上部(筐体70の上面74から露出している部分)からコンタクトガラス板35に向けて照射される。この照射された光は、コンタクトガラス板35を通過して原稿に照射されて、該原稿で反射される。そして、再びコンタクトガラス板35を通過して筐体70の上面74に反射光として照射される。上面74に照射された反射光は、各集光レンズ72によって捕捉されて該集光レンズ72に入射する。そして、該集光レンズ72に入射した反射光は、対応する各受光素子190に案内されて、反射光の光量に応じた電気信号が画像信号として出力される。

【0091】
上記筐体70は、コネクタ128及びケーブル保持部130を備えている。コネクタ128は、上記受光素子190が出力する画像信号の出力端子として機能する。ただし、このコネクタ128は、所定の規格に合致した既存の汎用品であり、上記筐体70の下面122の所定位置(本実施形態では、図5?図7において左右両端部)に固定されている。コネクタ128は、CISユニット50の光源160や受光素子190と電気的に接続されており、上記操作パネル37や前述のコンピュータとの間で電気信号の入出力を行う。このコネクタ128に電気ケーブル134が接続されている。
【0092】
この電気ケーブル134は、CISユニット50の光源に電力供給するための導線や、受光素子190から出力される画像信号を伝送する導線を含んでおり、いわゆるフラットケーブルとして構成されている。電気ケーブル134は、上記操作パネル37や前述のコンピュータと、コネクタ128との間で電気信号路を形成している。前述のように、CISユニット50は、上記短手方向にスライドされるものであるから(図5参照)、電気ケーブル134は、姿勢変化しながらCISユニット50のスライドに追従することができるように十分な可撓性を備えている。この電気ケーブル134は、下フレーム39の底面に設けられたケーブル案内溝129に沿って挿入されている。このケーブル案内溝129は、上記矢印64の方向に延びており、電気ケーブル134の自由な挿抜を許容し、電気ケーブル134が嵌め込まれた状態でこれを保持する。したがって、CISユニット50の上記矢印64の方向へのスライドに伴って、電気ケーブル134は、上記矢印64の方向に案内される。

【0094】
ケーブル保持部130は、筐体70と一体的に形成されている。具体的には、ケーブル保持部130は、平板131、132(板状部材)を備えている。平板131、132は、筐体70の側面120(短手方向の側面)に平行に配置されている。これら平板131、132は上記側面120に近接しており、当該側面120との間で上記電気ケーブル134を挟持することができるようになっている。また、本実施形態では、コネクタ128及びケーブル案内溝129の位置関係に起因してケーブル保持部130が上記平板131、132を備える構造であるが、上記コネクタ128及びケーブル案内溝129の位置関係が変更された場合には、上記ケーブル案内溝129の構成も適宜設計変更され得る。要するに、ケーブル保持部130は、上記コネクタ128に接続された電気ケーブル134が上記ケーブル案内溝129に導かれるように、当該電気ケーブル134を保持することができる構造を備えていればよい。特に、本実施形態では、ケーブル保持部130が上記平板131、132からなるので、ケーブル保持部130の構造がきわめて簡単であるという利点がある。


b 甲第1号証に記載された発明
上記甲第1号証の記載事項及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して甲第1号証に記載された発明を認定する。

(a)段落0001の記載によれば、甲第1号証には、画像読取装置についての記載がある。

(b)段落0069の記載によれば、甲第1号証の画像読取装置は、原稿を載置するコンタクトガラス板を有するものである。

(c)段落0069、0075、0076、0085、0086の記載によれば、甲第1号証の画像読取装置は、コンタクトガラス板上に載置された原稿に光を照射すると共にこの原稿からの反射光を受光し、反射光の光量に応じた電気信号が画像信号として出力されるCISユニットを備えており、当該CISユニットは筐体を備え、筐体は、コンタクトガラス板の下方を移動することによって、コンタクトガラス板に沿って移動されるものである。

(d)段落0091、0092の記載によれば、甲第1号証の画像読取装置は、筐体に備えられたコネクタに接続され、操作パネルやコンピュータとコネクタとの間で電気信号路を形成し、画像信号を伝送するフラットケーブルを備えている。
ここで、図5?図7より、フラットケーブルは、幅方向とコンタクトガラス板が平行となるように、筐体に備えられたコネクタに接続されていることが見てとれる。

(e)段落0094の記載によれば、甲第1号証の画像読取装置は、筐体の側面に平行にケーブル保持部である平板131、132を配置し、平板131、132と筐体の側面との間でフラットケーブルを挟持しているものである。
図5?図7より、平板132は、コネクタと向き合う位置であり、平板132の上部において、平板132と筐体の側面は繋がって、平板132が鉤形に構成されていることが見てとれる。

(f)図5?図7より、コネクタに接続されたフラットケーブルは、平板132によってコンタクトガラス板に対して交差する方向になり、平板131、132と筐体の側面との間で、コンタクトガラス板に対して交差する方向に配置されることが見てとれる。

(g)以上より、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、説明のために1a?1fの記号を当審において付与した。以下、構成1a?構成1fと称することにする。

(甲1発明)
1a 原稿を載置するコンタクトガラス板を有し、
1b コンタクトガラス板上に載置された原稿に光を照射すると共にこの原稿からの反射光を受光し、反射光の光量に応じた電気信号が画像信号として出力されるCISユニットを備えており、当該CISユニットは筐体を備え、筐体は、コンタクトガラス板の下方を移動することによって、コンタクトガラス板に沿って移動され、
1c 幅方向とコンタクトガラス板が平行となるように、筐体に備えられたコネクタに接続され、操作パネルやコンピュータとコネクタとの間で電気信号路を形成し、画像信号を伝送するフラットケーブルを備え、
1d 筐体の側面に平行にケーブル保持部である平板131、132を配置し、平板132は、コネクタと向き合う位置であり、平板131、132と筐体の側面との間でフラットケーブルを挟持し、平板132の上部において、平板132と筐体の側面は繋がって、平板132が鉤形に構成され、
1e コネクタに接続されたフラットケーブルは、平板132によってコンタクトガラス板に対して交差する方向になり、平板131、132と筐体の側面との間で、コンタクトガラス板に対して交差する方向に配置される、
1f 画像読取装置。

(イ)甲第2号証
a 甲第2号証に記載された事項
甲第2号証(特開2003-78719号公報)には、「画像読取装置」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像読取装置に関し、詳細には、原稿台に載置された原稿を読取ユニットが移動しながら原稿台を介して読み取りを行う画像読取装置に関するものである。

【0023】図1?図5を参照して、実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態の画像読取装置を示す概略斜視図であり、画像読取装置上部の透明な原稿台である原稿台ガラス及び上部カバー等を除いた状態を示している。

【0028】また、読取ユニット1にはコンタクトイメージセンサ2で読み取られた原稿の情報を伝達するフラットケーブル7が接続されている。
【0029】フラットケーブル7は、読取ユニット1への接続端部からガイドシャフト4側に向かう途中で折り曲げられ、フラットケーブル7のエッジ部分が枠体11の底面と摺動するように上方から見てU字状に曲げられた後、読取ユニット1の側方の壁面に沿って配設され、その一端は枠体11の外部に設けられた装置本体の不図示のコントロールボードに接続されている。

【0031】図2?図4は図1の斜視図に示された画像読取装置を上方から見た平面図であり、図2は読取ユニット1がホームポジションにあるときの読取ユニット1及びフラットケーブル7の状態を表している。読取ユニット1は、この位置から矢印A方向に移動しながら読み取りを行う。

【0050】尚、フラットケーブル7は、一般的な線材であっても構わないが、薄くフラットな形状のものを、フラットな面が摺動面11a,11bと垂直になるようにして、フラットケーブル7の端部を摺動面11a,11bと摺動させることにより、接触面積を減らすことができ、フラットケーブル7の屈曲による負荷や摺動面11a,11bとの摺動負荷を小さくすることができ、画像乱れのない画像読取装置を得るのに有利である。


b 甲第2号証に記載された発明
上記甲第2号証の記載事項及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して甲第2号証に記載された発明を認定する。

(a)段落0001の記載によれば、甲第2号証には、画像読取装置についての記載がある。

(b)段落0001、0023の記載によれば、甲第2号証の画像読取装置は、原稿を載置する透明な原稿台である原稿台ガラスを備えている。

(c)段落0001、0028の記載によれば、甲第2号証の画像読取装置は、原稿台に載置された原稿を移動しながら原稿台を介して読み取りを行い、接続されたフラットケーブルにより読み取られた原稿の情報を伝達する読取ユニットを備えている。

(d)段落0028、0029の記載によれば、甲第2号証の画像読取装置は、読取ユニットに接続され、コントロールボードに一端が接続されているフラットケーブルを備えている。

(e)段落0050の記載によれば、フラットケーブルは、フラットな面が摺動面と垂直になるようにしている。
ここで、図1より、原稿台ガラスと摺動面が平行であることは明らかである。

(f)段落0029の記載によれば、フラットケーブルは、読取ユニットへの接続端部からガイドシャフト側に向かう途中で折り曲げられ、上方から見てU字状に曲げられている。

(g)以上より、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。なお、説明のために2a?2eの記号を当審において付与した。以下、構成2a?構成2eと称することにする。

(甲2発明)
2a 原稿を載置する透明な原稿台である原稿台ガラスと、
2b 原稿台に載置された原稿を移動しながら原稿台を介して読み取りを行い、接続されたフラットケーブルにより読み取られた原稿の情報を伝達する読取ユニットと、
2c 読取ユニットに接続され、コントロールボードに一端が接続されているフラットケーブルとを備え、
2d フラットケーブルは、
2d1 フラットな面が摺動面と垂直になるようにしており、原稿台ガラスと摺動面が平行であり、
2d2 読取ユニットへの接続端部からガイドシャフト側に向かう途中で折り曲げられ、上方から見てU字状に曲げられている
2e 画像読取装置。

(ウ)甲第3号証
a 甲第3号証に記載された事項
甲第3号証(特開2001-346006号公報)には、「画像読取装置」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原稿載置部に載置された原稿の画像情報を読み取る画像読取装置に関し、例えば、イメージスキャナ、ファクシミリに用いる画像読取装置に関する。また、電子写真方式や静電記録方式等により画像を形成する複写機等の画像形成装置に用いられる画像読取装置に関する。

【0027】(第1の実施の形態)図1?図3を参照して、第1の実施の形態について説明する。図1、図2において、1は画像読取センサとしての密着型イメージセンサ(以下、CISと略す)であり、400?600dpi(dot/inch)程度の解像度を有し、内部に光を原稿台に向けて照射する光源としてのキセノン管11を配置している。

【0029】3は接続ケーブルとしての帯状のフラットケーブルであり、本実施の形態の400?600dpi程度の解像度のCIS1でフラットケーブル3による信号伝達を行う場合には、ケーブル幅が25mm以上になる。このため、原稿載置部としての原稿台ガラス10と平行の水平向きでCIS1のコネクタ2aに接続されることが多い。なお、フラットケーブルの幅方向は、上記ケーブル幅方向を意味しており(図4のX方向に相当する)、原稿載置面と直交する方向の成分を備えている。
【0030】フラットケーブル3はインバータ回路基板2上に水平向きに配置されたコネクタ2aに接続され、折り曲げた端部3aにより透光部材としての原稿台ガラス10と垂直の鉛直向きにねじられている。
【0031】フラットケーブル3が鉛直向きになった後、フラットケーブル3は画像読取装置の後方中央付近に設けられた開口部3bで画像読取装置本体、即ち、CIS1により読み取られた原稿の画像情報を処理する画像処理手段としての画像処理部50と電気的に接続される。
【0032】画像読取ユニットをCIS1とともに構成するキャリッジ4は、上記光源や、付勢部材としてのバネ30を介してCIS1を弾力的に支持し、ガイドシャフト7に対してCIS1を垂直に保持している。また、画像読取ユニットは、原稿の画像情報を読み取るとき、原稿台ガラス10上に停止している原稿に対して副走査方向に移動する構成となっており、原稿台ガラス10の裏面と摺動する構成となっている。なお、CIS1と原稿台ガラス10との距離を規制する規制部が画像読取ユニットの主走査方向端部であって上側に設けられている。本実施の形態では、この規制部の垂直方向の長さは約1mmとなっている。

【0038】原稿搬送部60により画像読み取り位置に搬送された原稿の画像情報をCIS1とキャリッジ4とで構成される画像読取ユニットが移動することにより読み取り、読み取られた画像情報信号はフラットケーブル3を介して画像処理部50(画像形成のための制御部も兼ねている)に伝達される。画像処理部50は、入力された画像情報信号に基づいたトナー画像が記録材Pに形成されるように、画像形成部70に制御信号を送信する。画像形成部70では、画像処理部50からの制御信号により、表面が一様に帯電された像担持体としての感光体ドラム表面に静電潜像を形成するべく、露光装置により露光を行う。そして、感光体ドラム表面に形成された静電潜像は現像装置により現像剤としてのトナーを用いて現像され、このトナー像は記録材Pに静電転写される。この後、トナー像は定着装置により記録材P上に定着されて、記録材Pは画像形成装置外に排出され、一連の画像形成が終了する。

【0055】(第4の実施の形態)図7、図8には、第4の実施の形態が示されている。第1の実施の形態と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。図7はCIS1に図示しないLED光源と200?300dpi程度の解像度のセンサ(これも図示せず)を用いた例である。
【0056】この装置では低解像度のためフラットケーブル3の幅が25mm以下でよく、CIS1に垂直向きにフラットケーブル3を直接接続し、フラットケーブル3をねじることなく画像読取装置外へ出す。

【0059】これにより、直接、フラットケーブル3の平面部分が原稿台ガラス10と垂直となるように変更したので、フラットケーブル3が原稿台ガラス10に接触せずに屈曲することができ、空気中の微量な塵が付着してフラットケーブル3表面が黒化して汚れても、原稿台ガラス10の裏面にそのフラットケーブル3の汚れが付着して画像読み取りの不良を引き起こすことはない。


b 甲第3号証に記載された発明
上記甲第3号証の記載事項及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して甲第3号証の第4の実施の形態に記載された発明を認定する。

ここで、甲第3号証の第4の実施の形態は、段落0055?0059に記載されており、段落0055によれば、第1の実施の形態と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略するものであるから、第4の実施の形態に記載された発明を認定するにあたっては、第1の実施の形態として記載された段落0029?0032、0038についても考慮する。

(a)段落0001の記載によれば、甲第3号証には、画像読取装置についての記載がある。

(b)段落0029の記載によれば、甲第3号証の画像読取装置は、原稿載置部としての原稿台ガラスを備えている。

(c)段落0032の記載によれば、甲第3号証の画像読取装置は、原稿の画像情報を読み取るとき、原稿台ガラス上に停止している原稿に対して副走査方向に移動する構成となっており、原稿台ガラスの裏面と摺動する構成となっているCISとキャリッジとで構成される画像読取ユニットを備えている。

(d)段落0029?0031、0056の記載によれば、甲第3号証の画像読取装置は、CISのコネクタに接続され、CISにより読み取られた原稿の画像情報を処理する画像処理部と電気的に接続される帯状のフラットケーブルを備えている。

(e)段落0059の記載によれば、フラットケーブルは、平面部分が原稿台ガラスと垂直となるようにしている。

(f)上記(d)より、フラットケーブルはCISのコネクタに接続されていることから、図7、図8においては、図7のコネクタ1a、図8のコネクタ2aにフラットケーブルが接続されているものである。
ここで、図7、図8より、コネクタはCISから突出する形状であることが見て取れる。また、コネクタによりフラットケーブルの上方への移動が規制され、コネクタ付近では、フラットケーブルをCISに沿うように案内していることが見てとれる。

(g)以上より、甲第3号証の第4の実施の形態には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。なお、説明のために3a?3fの記号を当審において付与した。以下、構成3a?構成3fと称することにする。

(甲3発明)
3a 原稿載置部としての原稿台ガラスと、
3b 原稿の画像情報を読み取るとき、原稿台ガラス上に停止している原稿に対して副走査方向に移動する構成となっており、原稿台ガラスの裏面と摺動する構成となっているCISとキャリッジとで構成される画像読取ユニットと、
3c CISのコネクタに接続され、CISにより読み取られた原稿の画像情報を処理する画像処理部と電気的に接続される帯状のフラットケーブルを備え、
3d フラットケーブルは、平面部分が原稿台ガラスと垂直となり、
3e コネクタはCISから突出する形状であり、コネクタによりフラットケーブルの上方への移動が規制され、コネクタ付近では、フラットケーブルをCISに沿うように案内し、
3f 画像読取装置。

(エ)甲第4号証
a 甲第4号証に記載された事項
甲第4号証(特開2013-11655号公報)には、「画像読取装置」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

【0001】
本発明は、例えば、イメージスキャナ、複合機、複写機、あるいは、ファクシミリ装置などの、原稿の画像を読み取るための画像読取装置に関するものである。

【0020】
FFC21は、前述したように一端がコネクタ20に挿入され、他端が不図示の制御基板(メイン基板)に接続されており、その間の領域は一部本体フレーム5の内壁5-1に接触している。そのため、特に走査方向とは逆のリターン方向に戻る場合、FFC21は、内壁5-1との間で摩擦力23を常に受けている。この時、図2(b)(FFC21-1(破線))で示しているように、仮に、FFC21-1がFFC位置決め部材17から電気基板19を出て、内壁5-1に対して垂直な方向にて該壁へ向かう場合、そのルートが成す円弧は大きくなる。従って、FFC21-1がフラットな形へ戻ろうとする力(復元力)は弱く、FFC21-1の内壁5-1への押しつける力は弱くなる。その結果、摩擦力23は小さくなり、FFC21-1と内壁5-1の間にすべりが生じるため、FFC21-1の破線の形状を維持したままリターン方向へ動いていく。このため、FFC21-1の余長部24が折れ曲がり、それを繰り返すと断線に至ることが懸念される。この断線を防ぐために、図2(b)(FFC21(実線))で示しているように、FFC21は、FFC位置決め部材17上にあるリブ17-2とリブ17-3の間を通って電気基板19を出て内壁5-1へ向かうルートを通る。このとき、FFC21が内壁5-1へ向かうルートが成す円弧は、FFC21-1(破線)が成す円弧よりも小さくなる。従って、FFC21がフラットな形へ戻ろうとする力(復元力)が強くなり、FFC21の内壁5-1への押しつけ力は強くなる。その結果、摩擦力23は大きくなり、FFC21と内壁5-1の間にすべりは生じず、FFC21の余長部25は、図2(b)中の走査方向側へ成長していく。このため、FFC21の余長部25に折れ曲がりは生じず、断線を防ぐことができる。

b 甲第4号証に記載された技術
上記甲第4号証の記載事項及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、甲第4号証には、次の技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されていると認められる。

(甲4技術)
画像読取装置において、一端がコネクタに挿入され他端が制御基板に接続されているFFCが、FFC位置決め部材上にある2つのリブの間を通って内壁へ向かうように構成されている技術。

(オ)甲第5号証?甲第7号証
a 甲第5号証に記載された事項
甲第5号証(特開2007-33509号公報)には、「画像読み取り装置及び多機能記録装置」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

【0004】
図6は、従来の画像読み取り装置の概略構成を示す上視図である。



b 甲第6号証に記載された事項
甲第6号証(特開2003-233138号公報)には、「画像読取装置」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

【0034】本実施形態ではライン間隔1mmのFFCを使用しているため幅は17mmの帯状の形態になる。前述した従来例ではFFCを原稿台ガラスとほぼ平行になるように使用する例を示したが、FFCがガラスと接触し、ガラスの汚れや、ジャム、動作不良の要因になってしまうため、本実施形態では可動部分に関しては原稿台ガラスと直交する方向、略垂直な方向に、すなわちFFCを立てて使用している。こうすることでFFC23がガラス2と接触しなくなるため前記問題は大幅に改善される。



c 甲第7号証に記載された事項
甲第7号証(特開2002-247291号公報)には、「画像読取装置」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

【0039】図3(a)?(d)は、第1の実施の形態に係る画像読取装置の原稿走査時における読取ユニット110とフラットケーブル121の関係を示す概略平面断面図である。図3(a)?(d)中において、フラットケーブル121は、支柱130を中心に腕が回転可能なねじりコイルばね129を配置する。ねじりコイルばね129は、一端を支柱131で固定され、他端をフラットケーブル121と接触する。



d 甲第5号証?甲第7号証に記載された技術
甲第5号証の図6、甲第6号証の図6、甲第7号証の図3より、フラットケーブルが、幅方向をガラス面に対して垂直にする構成が見てとれる。

したがって、上記甲第5号証?甲第7号証の記載事項及び図面の記載によれば、甲第5号証?甲第7号証には次の技術(以下、「甲5?7技術」という。)が記載されていると認められる。

(甲5?7技術)
画像読取装置のフラットケーブルが、幅方向をガラス面に対して垂直にする技術。

(カ)甲第8号証
a 甲第8号証に記載された事項
甲第8号証(特開2008-162728号公報)には、「原稿搬送装置及び画像読取装置」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

【0018】
ここで、図2を参照しながら、プリンタユニット8について詳しく説明する。
図示のように、プリンタユニット8は、インクジェット式のプリンタヘッド800と、このプリンタヘッド800を着脱可能に固定・支持するヘッド支持部801とを有している。プリンタヘッド800には、印刷の開始コマンドや文字データ等の受信や電源供給のためのケーブル812が接続されている。



b 甲第8号証に記載された技術
図2の記載によれば、受信ケーブル812の位置決めにあたり、鉤型部を上下に、かつ離間して配置した構成が見てとれる。

したがって、上記甲第8号証の記載事項及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、甲第8号証には、次の技術(以下、「甲8技術」という。)が記載されていると認められる。

(甲8技術)
ケーブルの位置決めにあたり、鉤型部を上下に、かつ離間して配置した技術。

イ 本件訂正発明1について
(ア)甲1発明との対比、判断
a 対比
(a)構成Aと構成1aとの対比
構成1aの「原稿を載置するコンタクトガラス板」は、原稿を載置するものであるから、平らなものであり、構成Aの「原稿を載置するための平板状の透明板」に相当する。

よって、構成1aと構成Aは一致する。

(b)構成Bと構成1bとの対比
構成1bの「CISユニット」は、原稿を走査するためのものであるから、構成Bの「走査部」に相当する。
構成1bにおいて「コンタクトガラス板の下方を移動することによって、コンタクトガラス板に沿って移動され」るのは、CISユニットであり、構成Bの「前記透明板の下方に設けられており、移動する」ことに相当する。
また、構成1bの「コンタクトガラス板上に載置された原稿に光を照射すると共にこの原稿からの反射光を受光し、反射光の光量に応じた電気信号が画像信号として出力される」ことは、原稿に光を照射すると共にこの原稿からの反射光を受光することによって、原稿を走査して画像を読み取るものであるから、構成Bの「前記透明板上に載置された原稿を走査し、当該原稿から画像を読み取り、画像信号を出力する」ことに相当する。

よって、構成1bと構成Bは一致する。

(c)構成Cと構成1cとの対比
構成1cの「フラットケーブル」は、構成Cの「帯状の信号ケーブル」に相当する。
構成1cの「筐体に備えられたコネクタに接続され」ることは、構成Cの「前記走査部の接続部に一端が接続され」ることに相当する。
構成1cの「フラットケーブル」は、「操作パネルやコンピュータとコネクタとの間で電気信号路を形成し、画像信号を伝送する」ものであり、操作パネルやコンピュータに接続されるものであり、画像信号を伝送するのであるから、操作パネルやコンピュータは、画像信号を受け付けるものといえる。また、操作パネルやコンピュータは、回路部を有するものといえる。

よって、構成1cと構成Cは一致する。

(d)構成Dと構成1eとの対比
フラットケーブルは、構成1cより「幅方向とコンタクトガラス板が平行となるように、」コネクタに接続され、構成1eより「平板132によってコンタクトガラス板に対して交差する方向になり、」「平板131、132と筐体の側面との間で、コンタクトガラス板に対して交差する方向に配置される」ことから、コンタクトガラス板に対して交差するのは、フラットケーブルの一部であるといえる。

よって、構成1eと構成Dは一致する。

(e)構成E、構成E-1、構成E-2、構成Fと構成1dとの対比
構成1dの「平板132の上部において、平板132と筐体の側面は繋がって、平板132が鉤形に構成され」ることにおいて、「平板132の上部」により、フラットケーブルは、上方への移動が規制されることとなるので、構成1dの「平板132の上部」は構成E-1の「前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部」に相当する。
また、構成1dの「筐体の側面に平行にケーブル保持部である平板131、132を配置」、「平板131、132と筐体の側面との間でフラットケーブルを挟持」、「平板132が鉤形に構成され」ることにより、平板132は、鉤形の構成により、上部に続いて筐体の側面に平行な部分を有し、当該側面に平行な部分により、フラットケーブルを挟持しているものであるといえるから、当該側面に平行な部分は、構成E-2の「前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部」、構成Fの「前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」ことに相当する。

よって、構成1dと構成E、構成E-1、構成E-2、構成Fは、
「前記走査部は、
前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部と、
前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部を具備し、
前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」という点で共通する。
しかし、突出部の位置に関して、構成1dは、「コネクタと向き合う位置」であるのに対し、構成E-1は、「画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ」ている点で相違する。

(f)構成Gと構成1fとの対比
構成1fと構成Gは、「画像読取装置」である点で一致する。

(g)上記(a)?(f)より、本件訂正発明1と甲1発明は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
A 原稿を載置するための平板状の透明板と、
B 前記透明板の下方に設けられており、移動することにより、前記透明板上に載置された原稿を走査し、当該原稿から画像を読み取り、画像信号を出力する走査部と、
C 前記走査部の接続部に一端が接続され、少なくとも当該接続部から出力された画像信号を受け付ける回路部に他端が接続される帯状の信号ケーブルを備え、
D 前記信号ケーブルは、当該信号ケーブルの一部の幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され、
E 前記走査部は、
E-1’前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部と、
E-2 前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部を具備し、
F 前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される、
G 画像読取装置。

(相違点1)
突出部の位置に関して、本件訂正発明は、「画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ」ているのに対し、甲1発明は、「コネクタと向き合う位置」である点。

b 判断
(a)新規性について
本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、両者は上記相違点1を有するものであるから、本件訂正発明1は、甲1発明と同一ではない。

(b)進歩性について
甲1発明の平板132は、コネクタと向き合う位置であり、相違点1に係る構成である、本件訂正発明1の「画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置」にする構成については、甲第1号証に記載も示唆もない。
また、甲2発明、甲3発明、甲4技術、甲5?7技術、甲8技術を検討しても、そのような位置に設けることが周知技術であると認めることができない。
そして、相違点1に係る構成とすることにより、段落【0078】に記載されたように、「フレキシブルフラットケーブル52の浮き上がりを防止しつつ、配線作業を容易にする」ものであるから、相違点1に係る構成が、設計的事項であると認めることもできない。

したがって、本件訂正発明1は、当業者であっても、甲1発明、甲2発明、甲3発明、甲4技術、甲5?7技術、甲8技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(イ)甲2発明との対比、判断
a 対比
(a)構成Aと構成2aとの対比
構成2aの「原稿を載置する透明な原稿台である原稿台ガラス」は、原稿を載置するものであるから、平らなものであり、構成Aの「原稿を載置するための平板状の透明板」に相当する。

よって、構成2aと構成Aは一致する。

(b)構成Bと構成2bとの対比
構成2bの「読取ユニット」は、原稿を走査するためのものであるから、構成Bの「走査部」に相当する。
構成2bの「原稿台に載置された原稿を移動しながら原稿台を介して読み取りを行」うことは、構成Bの「前記透明板の下方に設けられており、移動することにより、前記透明板上に載置された原稿を走査し、当該原稿から画像を読み取」ることに相当する。

また、構成2bの「接続されたフラットケーブルにより読み取られた原稿の情報を伝達する」ことにより、フラットケーブルを介して原稿の画像を出力するものといえるので、構成Bの「画像信号を出力する」ことに相当する。

よって、構成2bと構成Bは一致する。

(c)構成Cと構成2cとの対比

構成2cの「フラットケーブル」は、構成Cの「帯状の信号ケーブル」に相当する。
構成2cの「読取ユニットに接続され」ることは、構成Cの「前記走査部の接続部に一端が接続され」ることに相当する。
構成2cの「フラットケーブル」は、構成2bのように「原稿の情報を伝達する」ものであり、「コントロールボードに一端が接続されている」ものであるから、コントロールボードは、画像信号を受け付けるものといえる。また、コントロールボードは、回路部を有するものといえる。

よって、構成2cと構成Cは一致する。

(d)構成Dと、構成2d及び構成2d1との対比
構成2d及び構成2d1の「フラットケーブルは、」「フラットな面が摺動面と垂直になるようにしており、原稿台ガラスと摺動面が平行」であることは、フラットな面が原稿台ガラスと垂直になるようにしていることである。
よって、構成2d及び構成2d1と構成Dとは、「前記信号ケーブルは、当該信号ケーブルの」「幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され」る点で共通する。
しかし、信号ケーブルの幅方向が透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置されることに関して、構成Dは、「当該信号ケーブルの一部の幅方向」であるのに対し、構成2d1は、そのような限定がない点で相違する。

(e)構成E、構成E-1、構成E-2、構成Fと、構成2d2との対比
構成2d2は、フラットケーブルは、「読取ユニットへの接続端部からガイドシャフト側に向かう途中で折り曲げられ、上方から見てU字状に曲げられている」ものであるが、どのような構成で折り曲げられているかについての限定がなく、構成E、構成E-1、構成E-2、構成Fのような、突出部や離脱防止部に関する構成である、
「前記走査部は、
画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ、前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部と、
前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部を具備し、
前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」構成を有することに限定されていない。

(f)構成Gと構成2eとの対比
構成2eと構成Gは、「画像読取装置」である点で一致する。

(g)上記(a)?(f)より、本件訂正発明1と甲2発明は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
A 原稿を載置するための平板状の透明板と、
B 前記透明板の下方に設けられており、移動することにより、前記透明板上に載置された原稿を走査し、当該原稿から画像を読み取り、画像信号を出力する走査部と、
C 前記走査部の接続部に一端が接続され、少なくとも当該接続部から出力された画像信号を受け付ける回路部に他端が接続される帯状の信号ケーブルを備え、
D’前記信号ケーブルは、当該信号ケーブルの幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置される、
G 画像読取装置。

(相違点2)
信号ケーブルの幅方向が透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置されることに関して、本件訂正発明1は、「当該信号ケーブルの一部の幅方向」であるのに対し、甲2発明は、そのような限定がない点。

(相違点3)
本件訂正発明1は、
「前記走査部は、
画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ、前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部と、
前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部を具備し、
前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」構成であるのに対し、甲2発明は、そのような限定がない点。

b 判断
(a)新規性について
本件訂正発明1と甲2発明を対比すると、両者は上記相違点を有するものであるから、本件訂正発明1は、甲2発明と同一ではない。

(b)進歩性について
上記相違点のうち、まず相違点3について検討する。
相違点3に関して、特許異議申立人は、以下のような主張をしている。
(b-1)「図2、図5及び【0029】の記載から、鉤型部分の存在が見て取れる。」(特許異議申立書42頁11行)
(b-2)「フラットケーブル7は、鉤型部分の近傍において、ガイドシャフト4へ向かう方向、つまり、読取ユニット1の長手方向に沿っている。
以上のことから、本件発明1の「上側規制部」に相当する構成として、鉤型部分の上壁部分が開示されている。」(特許異議申立書44頁1?4行)
(b-3)「当業者であれば、図2から「鈎型部分」の左側にフラットケーブルが存在し、「鈎型部分」はコネクタではなく、フラットケーブルを係止するものと理解する(後略)」(平成30年12月14日付け意見書23頁10?12行)
(b-4)「しかし、「出っぱり状の構成」は、フラットケーブル7が浮き上がることを防止するために設けられ、フラットケーブル7を拘束しているのであるから、その前後において、多少の変形を生じることは何ら不思議なことではない。(中略)したがって、異議申立人が主張するように「出っぱり状の構成」の左側にもフラットケーブルは存在し、「出っぱり状の構成」はコネクタではなく、フラットケーブルの浮き上がりを防止する部材である。」(令和1年9月6日付け意見書10頁6行?11頁3行)

確かに、上記(b-1)で主張するように、図2、図5には、鉤型部分の存在が見てとれるが、図1には、鉤型部分に相当する構成を見てとることができず、また、明細書には、鉤型部分に関しての説明がない。
そうすると、図2、図5に示された鉤型部分が、どのような構成部であるかは甲第2号証からは不明である。
ましてや、上記(b-3)、(b-4)で主張するような、図2、図5に示された鉤型部分が、フラットケーブルを係止するものであり、浮き上がりを防止するために設けられているとの特許異議申立人の主張を認めることはできない。

甲2発明は、構成2d2のように、フラットケーブルは、「読取ユニットへの接続端部からガイドシャフト側に向かう途中で折り曲げられ、上方から見てU字状に曲げられている」ものである。
ここで、フラットケーブルを途中で折り曲げるために、接続端部からガイドシャフト側に向かう途中までの間は、何らかの構成により係止する必要があり、その際に、甲4技術のリブ、甲8技術の鉤型部のような何らかの部材を用いることによって係止することについては、当業者が容易に想到し得るものである。
そうすると、甲2発明において、甲4技術のリブ、甲8技術の鉤型部のような構成を用いて係止することについては、当業者であれば、容易に想到し得るものであり、甲4技術のリブ、甲8技術の鉤型部は、本件訂正発明1の突出部及び離脱防止部に相当するといえる。
すなわち、甲2発明において、
「前記走査部は、
前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部と、
前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部を具備し、
前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
しかしながら、甲2発明において、甲4技術のリブ、甲8技術の鉤型部のような構成を用いた構成についても、「画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置」にする構成を有するものではなく、その点については、上記(ア)b(b)で検討したように、周知技術であるとも、設計的事項であるとも認めることができない。

したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件訂正発明1は、当業者であっても、甲2発明、甲1発明、甲3発明、甲4技術、甲5?7技術、甲8技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(ウ)甲3発明との対比、判断
a 対比
(a)構成Aと構成3aとの対比
構成3aの「原稿載置部としての原稿台ガラス」は、原稿を載置するものであるから、平らなものであり、構成Aの「原稿を載置するための平板状の透明板」に相当する。

よって、構成3aと構成Aは一致する。

(b)構成Bと構成3bとの対比
構成3bの「画像読取ユニット」は、原稿を走査するためのものであるから、構成Bの「走査部」に相当する。
構成3bの「原稿の画像情報を読み取るとき、原稿台ガラス上に停止している原稿に対して副走査方向に移動する構成となっており、原稿台ガラスの裏面と摺動する構成となっている」ことは、構成Bの「前記透明板の下方に設けられており、移動することにより、前記透明板上に載置された原稿を走査し、当該原稿から画像を読み取」ることに相当する。
また、構成3bの「画像読取ユニット」は、構成3cのように、フラットケーブルによって「CISにより読み取られた原稿の画像情報を処理する画像処理部と電気的に接続される」ものであるから、構成Bの「画像信号を出力する」構成を有するものである。

よって、構成3bと構成Bは一致する。

(c)構成Cと構成3cとの対比
構成3cの「帯状のフラットケーブル」は、構成Cの「帯状の信号ケーブル」に相当する。
構成3cの「CISのコネクタに接続され」ることは、画像読取ユニットがCISとキャリッジとで構成されていることから、構成Cの「前記走査部の接続部に一端が接続され」ることに相当する。
構成3cの「フラットケーブル」は、「CISにより読み取られた原稿の画像情報を処理する画像処理部と電気的に接続される」ものであるから、画像処理部は、画像信号を受け付けるものといえる。また、画像処理部は、回路部を有するものといえる。

よって、構成3cと構成Cは一致する。

(d)構成Dと構成3dとの対比
構成3dの「フラットケーブルは、平面部分が原稿台ガラスと垂直とな」ることは、構成Dの「前記信号ケーブルは、当該信号ケーブルの」「幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され」ることに相当する。
よって、構成3dと構成Dとは、「前記信号ケーブルは、当該信号ケーブルの」「幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され」る点で共通する。
しかし、信号ケーブルの幅方向が透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置されることに関して、構成Dは、「当該信号ケーブルの一部の幅方向」であるのに対し、構成3dは、そのような限定がない点で相違する。

(e)構成E、構成E-1と構成3eとの対比
構成3eの「コネクタ」は、「CISから突出する形状であり」、「フラットケーブルの上方への移動が規制され」るものであるから、構成E-1の「前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部」に相当する。
よって、構成3eと構成E、構成E-1とは、「前記走査部は、」「前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部」を具備する点で共通する。
しかし、突出部に関して、構成3eは、「コネクタ」すなわち接続部そのものが突出部であるのに対し、構成E-1は、「画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ」ており、接続部から信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置である点で相違する。

(f)構成E-2、構成Fについて
構成E-2は「前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部」を具備するものであるのに対し、甲3発明は、そのような構成を有するものではない。

そして、構成3eの「コネクタ」は、「コネクタ付近では、フラットケーブルをCISに沿うように案内している」ものであるから、構成Fの「前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」構成と共通するものであるが、構成Fの「前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」構成は、構成E-2の「離脱防止部」によるものである。

したがって、構成E-2、構成Fは、「前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部を具備し、前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」のに対し、甲3発明は、そのような構成を有するものではない点で相違する。

(g)構成Gと構成3fとの対比
構成3fと構成Gは、「画像読取装置」である点で一致する。

(h)上記(a)?(g)より、本件訂正発明1と甲3発明は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
A 原稿を載置するための平板状の透明板と、
B 前記透明板の下方に設けられており、移動することにより、前記透明板上に載置された原稿を走査し、当該原稿から画像を読み取り、画像信号を出力する走査部と、
C 前記走査部の接続部に一端が接続され、少なくとも当該接続部から出力された画像信号を受け付ける回路部に他端が接続される帯状の信号ケーブルを備え、
D’前記信号ケーブルは、当該信号ケーブルの幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され、
E 前記走査部は、
E-1’前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部を具備する
G 画像読取装置。

(相違点4)
信号ケーブルの幅方向が透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置されることに関して、本件訂正発明1は、「当該信号ケーブルの一部の幅方向」であるのに対し、甲3発明は、そのような限定がない点。

(相違点5)
突出部に関して、本件訂正発明1は、「画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ」ているのに対し、甲3発明は、「コネクタ」すなわち接続部そのものが突出部であり、そのような位置に設けられているものではない点。

(相違点6)
本件訂正発明1は、「前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部を具備し、前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」構成であるのに対し、甲3発明は、そのような構成を有するものでない点。

b 判断
(a)新規性について
本件訂正発明1と甲3発明を対比すると、両者は上記相違点を有するものであるから、本件訂正発明1は、甲3発明と同一ではない。

(b)進歩性について
上記相違点のうち、まず相違点5について検討する。
甲3発明は、コネクタすなわち接続部そのものが突出部であることから、コネクタを「画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ」ている構成にすることはあり得ないことである。
また、甲3発明において、コネクタ以外に、さらに突出部を設けることを考えたとしても、そのような構成を、「画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設け」ることは、上記(ア)b(b)で検討したように、周知技術であるとも、設計的事項であるとも認めることができない。

したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件訂正発明1は、当業者であっても、甲3発明、甲1発明、甲2発明、甲4技術、甲5?7技術、甲8技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

ウ 本件訂正発明2、4?9、11、12について
本件訂正発明2、4?9、11、12は、本件訂正発明1を直接もしくは間接に引用する発明である。

したがって、上記イと同様の理由により、本件訂正発明2、4?9、11、12は、甲1発明又は甲2発明又は甲3発明と同一ではない。

また、本件訂正発明2、4?9、11、12は、甲1発明、甲2発明、甲3発明、甲4技術、甲5?7技術、甲8技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)、同条同項第2号(明確性)について
ア 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、異議申立書において、サポート要件及び明確性について以下のような主張をしている。
(ア)請求項1の「当該上側規制部は、当該上側規制部によって規制された当該信号ケーブルの部分が当該走査部の長手方向に沿うように当該走査部に構成および配置される」との記載は、明確性及びサポート要件に違反している。(特許異議申立書80頁2?5行)
(イ)請求項1の「前記信号ケーブルは、幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され、」との記載は、明確性及びサポート要件に違反している。(特許異議申立書83頁2?4行)
(ウ)請求項8の「少なくとも一部において前記接続部に対向する壁部」との記載は、明確性に違反している。また、請求項9の「前記壁部は、前記接続部の一部と対向する第1の部分が前記接続部よりも下方に設けられ」との記載も明確性に違反している。(特許異議申立書83頁16?19行)
(エ)請求項10の「前記走査部の移動方向に延びた壁部に沿って延び」の壁部とはどのように配置された壁部であるか不明確であり、明確性に違反している。(特許異議申立書84頁7?8行)

イ 判断
(ア)上記ア(ア)について
本件訂正により、「前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部と、前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部を具備し、前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される」構成に訂正された。
このように訂正されたことにより、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、また、明確な記載となった。

(イ)上記ア(イ)について
本件訂正により、「前記信号ケーブルは、当該信号ケーブルの一部の幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され、」との構成に訂正された。
このように訂正されたことにより、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、また、明確な記載となった。

(ウ)上記ア(ウ)について
「対向」とは、「互いにむきあうこと」(広辞苑第6版)という意味であるが、「対向車」、「対向車線」という使われ方もあるように完全に向き合う関係のみを指すものではない。
そうすると、請求項8の「少なくとも一部において前記接続部に対向する壁部」とは、壁部の少なくとも一部と接続部とが互いにむきあっていることであり、当該記載に不明確な点はない。
また、請求項9の「前記壁部は、前記接続部の一部と対向する第1の部分が前記接続部よりも下方に設けられ」との記載は、接続部の一部と互いにむきあっている壁部の部分が、接続部よりも下方に位置することであり、当該記載も不明確な点はない。

(エ)上記ア(エ)について
本件訂正により、請求項10は削除されたので、対象となる請求項が存在しない。

(3)まとめ
上記(1)、(2)より、特許異議申立理由を採用することはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4?9、11、12に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件請求項1、2、4?9、11、12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

さらに、本件請求項3、10に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3、10に対して、特許異議申立人東京総合コンサルティング株式会社がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像読取装置及び画像形成装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿から画像を読み取る画像読取装置及び原稿から読み取られた画像を記録媒体に形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フラットベッド型の画像読取装置、及び当該画像読取装置を備える複写機、ファクシミリ装置、及びデジタル複合機等の画像形成装置が知られている。かかるフラットベッド型の画像読取装置は、原稿台ガラスの下方に、原稿を照明する光源とCIS(Contact Image Sensor)等の密着型光電変換素子とを有する画像読取ユニットが配置され、原稿台ガラスに沿って移動される画像読取ユニットにより、原稿台ガラス上に載置された原稿を走査し、画像を読み取るように構成されている。
【0003】
特許文献1には、フラットベッド型の画像読取装置が開示されている。特許文献1に開示されている画像読取装置においては、装置本体に置かれたコントロールボードと画像読取ユニットとを互いに接続するフレキシブルフラットケーブルがガラスと接触することによるガラスの汚れ、フレキシブルフラットケーブルの断線、及び動作不良を防止するために、フレキシブルフラットケーブルが原稿台ガラスと直交する方向に立てて配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-233138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている画像読取装置のように、フレキシブルフラットケーブルを単純に立てて配置しただけでは、画像読取ユニットの移動に伴ってフレキシブルフラットケーブルが上下に移動することを妨げられず、フレキシブルフラットケーブルとガラスとが接触してしまうことがあった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる画像読取装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の画像読取装置は、原稿を載置するための平板状の透明板と、前記透明板の下方に設けられており、移動することにより、前記透明板上に載置された原稿を走査し、当該原稿から画像を読み取り、画像信号を出力する走査部と、前記走査部の接続部に一端が接続され、少なくとも当該接続部から出力された画像信号を受け付ける回路部に他端が接続される帯状の信号ケーブルを備え、前記信号ケーブルは、当該信号ケーブルの一部の幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され、前記走査部は、画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ、前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部と、前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部を具備し、前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される。
【0008】
この態様において、前記突出部は、前記信号ケーブルの前記一端から遠ざかるに従って下方へ傾斜する傾斜面を有するようにしていてもよい。
【0009】(削除)
【0010】
また、上記の態様において、前記走査部は、前記突出部とは前記信号ケーブルの長手方向において異なる位置で、前記信号ケーブルの下方への移動を規制する下側規制部を具備していてもよい。
【0011】
また、上記態様において、前記走査部は、前記信号ケーブルの一端の幅方向が、前記透明板の主面に沿った方向となるように前記信号ケーブルの一端と接続される接続部と、前記接続部から延設された前記信号ケーブルの幅方向を、前記一端から離反するにしたがって前記透明板の主面に対して交差する方向へと変化させるように、前記信号ケーブルを保持する形状保持部を具備していてもよい。
【0012】
また、上記態様において、前記信号ケーブルは、前記走査部の前記接続部より下方の位置において、前記形状保持部と当接していてもよい。
【0013】
また、上記態様において、前記下側規制部は、前記形状保持部に近接して設けられていてもよい。
【0014】
また、上記態様において、前記形状保持部は、前記接続部に対向する壁部を有し、前記接続部から延設された前記信号ケーブルは当該壁部に当接するように構成されていてもよい。
【0015】
また、上記態様において、前記壁部は、前記接続部の一部と対向する第1の部分が前記接続部よりも下方に設けられ、前記接続部の他の一部と対向する第2の部分が前記第1の部分よりも上方へと延びるように設けられていてもよい。
【0016】
また、上記のいずれかの態様において、前記信号ケーブルの一端は、前記原稿を走査する場合の前記走査部の移動方向の上流側において当該走査部に接続される。
【0017】
また、本発明の一の態様の画像形成装置は、上記態様の画像読取装置と、前記画像読取装置によって読み取られた画像を記録媒体に形成する画像形成部と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る画像読取装置及び画像形成装置によれば、信号ケーブルと透明板との接触を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は第1の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を示す正面図である。
【図2】図2は上側ハウジングを取り外した状態における画像読取装置の構成を示す平面図である。
【図3】図3は上側ハウジングを取り付けた状態における画像読取装置の図2に示すA-A’線による断面図である。
【図4】図4は画像読取ユニットの構成を示す正面断面図である。
【図5】図5は画像読取ユニットの後端部分の構成を示す平面図である。
【図6】図6は画像読取ユニットの後端部分の構成を示す側面図である。
【図7】図7はフレキシブルフラットケーブルが接続されていない状態における画像読取ユニットの後端部分の構成を示す平面図である。
【図8】図8はフレキシブルフラットケーブルが接続されていない状態における画像読取ユニットの後端部分の構成を示す側面図である。
【図9】図9は保持部によるフレキシブルフラットケーブルの保持構造を模式的に示す正面断面図である。
【図10】図10は画像読取ユニットが初期位置に配置されたときにおける画像読取装置の構成を示す平面断面図である。
【図11】図11は下側保持部及び上側保持部によるフレキシブルフラットケーブルの保持構造を模式的に示す側面図である。
【図12】図12は上側保持部の拡大側面図である。
【図13】図13は図12に示すB-B’線による断面図である。
【図14】図14はフレキシブルフラットケーブルが接続されていない状態における画像読取ユニットの後端部分の構成を示す斜視図である。
【図15】図15は上側保持部の他の例を示す拡大断面図である。
【図16】図16は第2の実施の形態の画像形成装置に用いられる画像読取装置の一部を側面から透視した透視図である。
【図17】図17は第2の実施の形態における画像読取部の構成を示す斜視図である。
【図18】図18は第3の実施の形態における上側ハウジングを取り外した状態における画像読取装置の構成を示す平面図である
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を示す部分断面図である。
【0021】
第1の実施の形態に係る画像形成装置1は、原稿から画像を読み取る画像読取装置10と、当該画像読取装置10によって読み取られた画像を記録媒体である記録用紙に形成する装置本体(画像形成部)20とを備えている。図1において、Z方向は鉛直方向であり、Z1方向が上方を、Z2方向が下方を示している。画像形成装置1は、使用状態において、画像読取装置10が装置本体20の上方に位置するように、床面に設置される。また、図1において、上下方向に直交するY方向(水平方向の一方向)を副走査方向といい、Y1方向を副走査方向下流側、Y2方向を副走査方向上流側という。さらに、Z方向及びY方向の両方に直交する方向(Y方向と直交する水平方向の一方向。図2におけるX方向。)を主走査方向といい、主走査方向の一方を前方(図2等におけるX1方向。正面側。)とし、主走査方向の他方を後方(図2等におけるX2方向)とする。図1では、前方から見たときの画像形成装置1の構成を示している。
【0022】
装置本体20は、感光体ドラム21、帯電器22、露光装置23、現像装置24、転写装置25、定着装置26、給紙トレイ27等を具備している。かかる装置本体20においては次のようにして画像が記録用紙に形成される。
【0023】
まず、帯電器22によって帯電された感光体ドラム21の表面を、画像読取装置10によって読み取られた画像に応じて露光装置23が露光することで、感光体ドラム21の表面に静電潜像が形成される。次に、現像装置24が、感光体ドラム21に形成された静電潜像をトナーにより現像する。このようにして感光体ドラム21に形成されたトナー像が転写装置25に設けられた転写ベルト上に転写され、さらに転写ベルト上のトナー像が給紙トレイ27から供給された記録用紙上に転写される。記録用紙が定着装置26によって加熱されることにより、記録用紙に形成されたトナー像が溶融及び混合され、同時に記録用紙に対してトナー像が圧接される。トナー像が定着された後の記録用紙は、装置本体20に設けられた排紙トレイ28上に排出される。
【0024】
装置本体20の上方に、画像読取装置10が配置されている。また、画像読取装置10の上方には、原稿台のカバーとして機能する自動原稿送り装置30が配置されている。
【0025】
図2及び図3を用いて、画像読取装置10の構成について説明する。画像読取装置10は、原稿台ガラス(透明板)2と、画像読取ユニット(画像読取部)3と、画像読取ユニット3を駆動する駆動機構(駆動部)4と、画像読取ユニット3から出力された信号を処理する制御回路(回路部)5とを備えている。画像読取ユニット3、駆動回路4、及び制御回路5のそれぞれは、直方体箱状をなすハウジング6に収容されている。当該ハウジング6は、上側ハウジング6aと、下側ハウジング6bとから構成されている。図2は、上側ハウジング6aを取り外した状態における画像読取装置の平面図であり、図3は、上側ハウジング6aを取り付けた状態における画像読取装置のA-A’線による断面図である。
【0026】
原稿台ガラス2は、透光性を有するガラスによって構成されており、原稿を載置するための原稿台として使用される。かかる原稿台ガラス2は、原稿の最大サイズよりも大きい矩形板状をなしており、その主面が水平方向に延びるように、上側ハウジング6aの四角形の枠に嵌め込まれている(図3参照)。
【0027】
図4は、画像読取ユニット3の構成を示す正面断面図である。画像読取ユニット3は、原稿台ガラス2上に載置された原稿に対して光を照射するための一対の光源部31と、2つの光源部31の間に配置されたレンズアレイ32と、原稿によって反射され、レンズアレイ32を通過した光を受け、受光量に応じて電気信号(以下、「画像信号」という。)を出力するラインセンサ33とを有している。
【0028】
光源部31、レンズアレイ32、及びラインセンサ33のそれぞれは、主走査方向(図2及び3においてX方向)に長く延びており、同じく主走査方向に長く延び、上部にスリットを有する箱状のハウジング34に収容されている。かかる画像読取ユニット3は、主走査方向に長く延びた基台35に取り付けられている。レンズアレイ32は、主走査方向に一列に並べられた複数のレンズから構成されている。また、ラインセンサ33は、主走査方向に一列に並べられた複数の受光素子によって構成されている。レンズアレイ32のレンズと、ラインセンサ33の受光素子とは一対一に対応しており、レンズを通過した光が受光素子によって受けられるようになっている。かかる構成の画像読取ユニット3により、原稿が主走査方向に走査される。
【0029】
図2及び図3に示すように、下側ハウジング6bの内底面の主走査方向中央近傍には、副走査方向(Y方向)に延びたガイドレール61が設けられている。このガイドレール61には、画像読取ユニット3の基台35の底部に設けられた凹部が係合する。画像読取ユニット3は、ガイドレール61に沿って摺動可能である。つまり、画像読取ユニット3の移動方向がガイドレール61によって副走査方向に規制されるようになっている。
【0030】
また、ハウジング6の内部には、副走査方向に延びた壁部62が設けられている。この壁部62によって、画像読取ユニット3の移動領域7aと、制御回路5を配置するための領域7bとが区分けされている。
【0031】
駆動機構4は、ステッピングモータ41と、ステッピングモータ41が出力する回転力を伝達する複数の歯車42と、歯車42を介してステッピングモータ41により駆動される駆動プーリ43と、従動プーリ44と、駆動プーリ43及び従動プーリ44の間を懸架される無端状のベルト45とを有している(図2)。
【0032】
ステッピングモータ41は、ハウジング6の内部の副走査方向上流側において、主走査方向中央近傍に配置されている。駆動プーリ43は、ステッピングモータ41より若干前方の位置に配置されている。従動プーリ44は、ハウジング6の内部の副走査方向下流側において、駆動プーリ43に対向する位置に配置されている。これにより、ベルト45は、副走査方向に延びて駆動プーリ43と従動プーリ44とに架設される。つまり、ベルト45とガイドレール61とは互いに平行に延設されている。かかるベルト45は、ガイドレール61より若干前方の位置に配置されている。
【0033】
画像読取ユニット3の基台35は、ベルト45の一部に接続されている。ステッピングモータ41が回転動作すると、ステッピングモータ41の回転力が歯車42を介して駆動プーリ43に伝達され、ベルト45が駆動プーリ43と従動プーリ44との間を周回移動する。このとき、画像読取ユニット3がベルト45と共に副走査方向へと移動する。
【0034】
原稿台ガラス2に原稿が載置され、ユーザから読み取り開始の指示が与えられると、ハウジング6の内部の副走査方向上流側の位置(以下、「初期位置」という。)に配置された画像読取ユニット3が、駆動機構4によって一定速度でハウジング6の内部の副走査方向下流側の位置(以下、「終期位置」という。)へと副走査方向に移動される。この移動時に、画像読取ユニット3のラインセンサが主走査方向に繰り返し原稿を走査することによって、原稿の原稿台ガラス2に対する接触面の全体が走査される。
【0035】
ハウジング6内部の壁部62によって規定された後側の領域7bには、制御回路5が配置されている。制御回路5は、ステッピングモータ41を駆動するための駆動回路と、画像読取ユニット3から出力された画像信号を処理する信号処理回路と、電源回路とを含んでいる。かかる制御回路5とステッピングモータ41とは、駆動信号伝送ケーブル51によって接続されている。また、制御回路5と画像読取ユニット3とは、画像信号伝送用の帯状のフレキシブルフラットケーブル(信号ケーブル)52によって接続されている。
【0036】
図5は、画像読取ユニット3の後端部分の構成を示す平面図であり、図6は、その側面図である。また、図7は、フレキシブルフラットケーブルが接続されていない状態における画像読取ユニット3の後端部分の構成を示す平面図であり、図8は、その側面図であり、図14は、その斜視図である。
【0037】
図5乃至図8及び図14を参照して分かるように、画像読取ユニット3の後端部近傍に、画像信号出力用のコネクタ(接続部)34aが設けられており、かかるコネクタ34aにフレキシブルフラットケーブル52の一端が接続されている。コネクタ34aは、主走査方向に、即ち原稿台ガラス2の主面に沿った方向に、長い形状を有しており、このコネクタ34aには、フレキシブルフラットケーブル52の一端が横長となるようにして接続される。
【0038】
画像読取ユニット3の基台35には、フレキシブルフラットケーブル52を保持する保持部(形状保持部)351が設けられている。保持部351は、コネクタ34aの下方から副走査方向上流側(図5及び図7中Y2方向)に突出して設けられている。かかる保持部351は、平面視において概略台形状をなしている。台形の長辺側が基台35に接続された基端側であり、同短辺側が基台35から突出した先端側である。
【0039】
保持部351は、底板部353と、壁部352とを備えている(図5、図7、図8及び図14参照)。底板部353は、上述したような概略台形状をなしている。壁部352は、底板部353の外縁に沿って上方に立ち上がるように設けられている。かかる壁部352は、第1壁部(第1の部分)352a、第2壁部(第2の部分)352b、及び第3壁部352cの連続する3つの部分から構成されている。
【0040】
第1壁部352aは、前述した台形の後側の斜辺に設けられており、第2壁部352bは、短辺に設けられており、第3壁部352cは、前側(正面側)の斜辺に設けられている。後側の斜辺に設けられた第1壁部352aは、第2壁部352b及び第3壁部352cよりも低く、前側(正面側)の斜辺に設けられた第3壁部352cは、第1壁部352a及び第2壁部352bよりも高く構成されている。
【0041】
また、前側の斜辺に設けられた第3壁部352cは、前端(後述する欠落部36aに隣接する部分)から中間部分までにおいて高さが一定となっており、中間部分から後端(第2壁部352bとの接続部)までにおいて後方(図5乃至図8中X2方向)へ向かうにしたがって低くなるように直線的に傾斜している。短辺に設けられた第2壁部352bは、前端(第3壁部352cとの接続部)から後端(第1壁部352aとの接続部)までの全体にわたって、後方に向かうにしたがって低くなるように直線的に傾斜している。
【0042】
また、第2壁部352bの前端における高さは、第3壁部352cの後端における高さと同一である。後側の斜辺に設けられた第1壁部352aは、前端(第2壁部352bとの接続部)から後端までの全体にわたって、高さが一定とされており、その高さは第2壁部352bの後端における高さと同一である。つまり、第1壁部352a、第2壁部352b、及び第3壁部352cは、高さが連続的に変化するように連接されている。
【0043】
第1壁部352a及び第2壁部352bのそれぞれは、コネクタ34aと対向している。特に、第2壁部352bは、コネクタ34aと平行に設けられており、正対している。つまり、コネクタ34aの前側部分は、第2壁部352bに対向しており、コネクタ34aの後側部分は、第1壁部352aに対向している。また、第1壁部352aの上端の位置は、コネクタ34aが設けられている位置よりも低い。このように、高さの低い第1壁部352aの全体がコネクタ34aの後側部分と対向しており、また、コネクタ34aの前側部分に正対する第2壁部352bにおいても後方へ向かうにしたがって高さが低くなっているので、作業者がコネクタ34aにフレキシブルフラットケーブル52を接続するときに、壁部352が作業の邪魔になることが防止され、効率的に組立作業を行うことが可能となる。
【0044】
図5及び図6に示すように、コネクタ34aに一端が接続されたフレキシブルフラットケーブル52は、副走査方向上流側へと延び、さらにその先において捻れつつ反対方向(副走査方向下流側。図5中Y2方向)へと折り返される。この折り返し部は、フレキシブルフラットケーブル52が湾曲するように折り返されることで形成される。つまり、フレキシブルフラットケーブル52は、その一端から離反するにしたがって水平方向から鉛直(垂直)方向に、その横長の幅方向を変化される。このような折り返し部を形成することで、フレキシブルフラットケーブル52に屈曲されることによる折り目が付けられることがなく、断線の発生が防止される。かかるフレキシブルフラットケーブル52の折り返し部は、第2壁部352bに当接するように保持部351の内部に収められる(図5)。
【0045】
保持部351におけるフレキシブルフラットケーブル52の保持構造についてさらに詳細に説明する。図9は、保持部351におけるフレキシブルフラットケーブル52の保持構造を模式的に示す正面断面図である。
【0046】
図9に示すように、フレキシブルフラットケーブル52は、コネクタ34aから下方に傾斜しながら副走査方向上流側へ延び、保持部351の底板部353と第2壁部352bとが接続される隅部、即ち、第2壁部352bの下端の近傍において折り返され、第2壁部352bに当接する。
【0047】
第2壁部352bにおけるフレキシブルフラットケーブル52の当接位置P1は、コネクタ34aよりも低い位置であるため、コネクタ34aから前記当接位置P1までの距離D1は、コネクタ34aから第2壁部352bまでの最短距離、即ち、コネクタ34aから第2壁部352bまでの水平方向における距離D0よりも長い。つまり、フレキシブルフラットケーブル52のコネクタ34aに対する接続箇所から折り返し箇所までの部分52a(以下、「接続端部」という。)の長さD1は、コネクタ34aから第2壁部352bまでの最短距離D0より長い。
【0048】
このため、第2壁部352bにおけるコネクタ34aに最も近接した位置P0よりも低い位置に配置された接続端部52aが位置P0を越えて上方へと移動するためには、接続端部52aを変形させる必要があるが、フレキシブルフラットケーブル52は可撓性と共に弾性を有しており、接続端部52aが変形しようとしても、その弾性によって変形を復元する力が生じ、変形が阻害される。
【0049】
また、その復元する力によって、接続端部52aが第2壁部352bに付勢され、接続端部52aは、第2壁部352bからコネクタ34a側に抗力を受ける。したがって、接続端部52aと第2壁部352bとの間に静止摩擦力が生じる。
【0050】
よって、接続端部52aが第2壁部352bに係止され、したがって、接続端部52aの浮き上がりが防止され、保持部351によって接続端部52aが確実に保持される。
【0051】
上述したように、コネクタ34aの前側部分は、第2壁部352bに正対している。また、第2壁部352bは、前方へ向かうに従って高さが高くなるように構成されている(図6、図8及び図14)。このため、コネクタ34aの前側部分は、高さが確保された第2壁部352bに面しており、このコネクタ34aから延びたフレキシブルフラットケーブル52の接続端部52aは、確実に第2壁部352bに当接することとなる。また、第2壁部352bの高さが確保されていることから、当該第2壁部352bに係止された接続端部52aが第2壁部352bから離脱することが防止される。さらに、上記のように、フレキシブルフラットケーブル52の折り返し部が第2壁部352bに当接するので、フレキシブルフラットケーブル52のコネクタ34aへの接続端がコネクタ34aから抜けることも防止される。
【0052】
なお、コネクタ34aと第2壁部352bとが正対する構成としたが、これに限定されるものではなく、コネクタ34aと第2壁部352bとが対向してさえいれば、コネクタ34aと第2壁部352bとが平行に設けられていなくてもよい。コネクタ34aと第2壁部352bとが対向していれば、上記と同様に、コネクタ34aから延設されたフレキシブルフラットケーブル52を第2壁部352bに係止させることが可能であるので、フレキシブルフラットケーブル52の接続端部52aを保持することができる。
【0053】
上記のようにして保持部351において折り返されたフレキシブルフラットケーブル52は、折り返し部において捻りが加えられることにより、第3壁部352cに沿って前方(図5中X1方向)に傾斜しながら副走査方向下流側へ延びる(図5参照)。第3壁部352cの前端からは、前方(主走査方向)へと延長された直線部354aが設けられており、この直線部354aのさらに前方に、上側から縦方向に長く切れ込んだ欠落部36aが設けられている(図8参照)。直線部354aは、かかる欠落部36aを介して、主走査方向に延設された壁部37へと連なっている。また、直線部354aの副走査方向下流側には、フレキシブルフラットケーブル52を配置するための間隙が設けられており、当該間隙の下方には、保持部351の底板部353から続く底板部354bが設けられている(図7参照)。
【0054】
フレキシブルフラットケーブル52の折り返し部の先は、捻られながら折り返されることによって、平面部が斜め上方を向くように傾斜する(図5及び図6参照)。そのさらに先の部分は、斜め上方を向いていた平面部が実質的に垂直に立つように逆方向に捻られ、欠落部36aに挿入されて支持される。欠落部36aは上部が開放された凹状をなしており、この欠落部36aを形成する直線部354a、底板部354b及び壁部37の後端部によって、フレキシブルフラットケーブル52を下方から保持する下側保持部36が構成される(図6、図7及び図14参照)。つまり、底板部354bによって、フレキシブルフラットケーブル52は、下方への移動を規制されるのである。この点において、下側保持部36ないし底板部354bは、下側規制部ということができる。
【0055】
下側保持部36のさらに前方には、フレキシブルフラットケーブル52を上方から保持する上側保持部38が設けられている(図5乃至図7及び図14参照)。上側保持部38は、壁部37の上端に設けられており、鈎状をなしている。かかる上側保持部38がフレキシブルフラットケーブル52の上端に係合し、フレキシブルフラットケーブル52が上側保持部38によって上方から保持される。つまり、上側保持部38によって、フレキシブルフラットケーブル52は上方への移動を規制されるのである。この点において、上側保持部36は、上側規制部ということができる。
【0056】
上記のようにして、フレキシブルフラットケーブル52は、保持部351、下側保持部36、及び上側保持部38によって3箇所で保持される。
【0057】
上記のような下側保持部36は、コネクタ34aの後端からフレキシブルフラットケーブル52の幅の約2倍の距離を隔てた位置に設けられている。また、上側保持部38は、コネクタ34aの後端からフレキシブルフラットケーブル52の幅の約2.5倍の距離を隔てた位置に設けられている(図5参照)。
【0058】
上側保持部38がコネクタ34aから離れ過ぎていると、コネクタ34aから上側保持部38までの間において、フレキシブルフラットケーブル52に撓みが生じる等して浮き上がりが発生する虞がある。また、下側保持部36がコネクタ34aから離れ過ぎていても、同様にフレキシブルフラットケーブル52の浮き上がりが発生する虞がある。
【0059】
他方、上側保持部38がコネクタ34aに近過ぎると、コネクタ34aと上側保持部38との間において上記のような捻り及び折り返しを設ける必要があることから、フレキシブルフラットケーブル52の配線作業が難しくなる虞がある。また、下側保持部36がコネクタ34aに近過ぎても、同様にフレキシブルフラットケーブル52の配線作業が難しくなる虞がある。このため、上記のような位置に下側保持部36及び上側保持部38を設けることにより、フレキシブルフラットケーブル52の浮き上がりを防止しつつ、配線作業を容易にすることが可能となる。
【0060】
フレキシブルフラットケーブル52は、上側保持部38によって保持された箇所の先において、副走査方向上流側へと延び、さらにその先においてU字状に水平に折り返され、保持部351の外側を通って画像読取ユニット3の後方へと回り、壁部62に沿って副走査方向下流側へと延びる(図2参照)。壁部62の中間部分には、縦方向の切れ込んだ欠落部が設けられており、フレキシブルフラットケーブル52は、この欠落部を通って壁部62の後側の制御回路5が配置されている領域7bへと入り込んでいる。この領域7bの内部で、フレキシブルフラットケーブル52は垂直に立てられた状態から水平に捻られ、その先において制御回路5に接続される。
【0061】
図2に示すように、ハウジング6の内部の副走査方向上流側端部には、ステッピングモータ41、歯車42及び駆動プーリ43が配置される配置領域7cが設けられている。かかる配置領域7cより副走査方向下流側の位置が、画像読取ユニット3の初期位置である。
【0062】
図10は、画像読取ユニット3が初期位置に配置されたときにおける画像読取装置10の構成を示す平面図である。配置領域7cには、フォトインタラプタからなる初期位置検出センサ46が設けられている。他方、画像読取ユニット3の壁部37には、上側保持部38よりも前方の位置に、検出片39が副走査方向上流側へと突設されている(図5乃至図8参照)。画像読取ユニット3が初期位置に位置づけられると、検出片39が初期位置検出センサ46によって検出される(図10参照)。これにより、画像読取ユニット3が初期位置にあることが検出されるようになっている。
【0063】
図2には、画像読取ユニット3が初期位置から副走査方向下流側へ移動したときの状態が示されている。図2に示すように、ステッピングモータ41等が配置される領域7cの後方において、画像読取ユニット3の移動領域7aが副走査方向上流側へと突出している。この部分は、画像読取ユニット3から副走査方向上流側に突出した保持部351を収容するための領域7dである。つまり、画像読取ユニット3が初期位置に位置づけられると、この領域7dに、保持部351が収容される(図10参照)。このように、画像読取ユニット3が初期位置にあるときに、保持部351が他の部分に干渉しないように構成されている。
【0064】
上述の如く構成したことにより、上側保持部38によってフレキシブルフラットケーブル52が上方から保持されるため、フレキシブルフラットケーブル52が上方へ移動しようとしても、上側保持部38によってフレキシブルフラットケーブル52の移動が妨げられる。このように、上側保持部38によりフレキシブルフラットケーブル52の浮き上がりが防止され、フレキシブルフラットケーブル52が原稿台ガラス2に接触することによる原稿台ガラス2の汚れ、フレキシブルフラットケーブル52の断線、及び動作不良が防止される。
【0065】
また、上側保持部38よりもコネクタ34aに近接した位置に下側保持部36を設け、下側保持部36によってフレキシブルフラットケーブル52を下方から保持し、上側保持部38によってフレキシブルフラットケーブル52を上方から保持する構成としたので、フレキシブルフラットケーブル52の浮き上がりがより一層防止される。
【0066】
図11は、フレキシブルフラットケーブル52の保持構造を模式的に示す側面図である。図11において、フレキシブルフラットケーブル52には斜線によるハッチングを施している。図11に示すように、フレキシブルフラットケーブル52は、水平方向、即ち、フレキシブルフラットケーブル52の長手方向の異なる位置において下側保持部36と上側保持部38とによって保持されている。
【0067】
フレキシブルフラットケーブル52の下側保持部36に保持されている箇所は、下側保持部36が上方に開放されているため、上方への移動が規制されない。他方、フレキシブルフラットケーブル52の上側保持部38に保持されている箇所は、上側保持部38が下方に開放されているため、下方への移動が規制されない。つまり、フレキシブルフラットケーブル52は、図中矢印R1で示す反時計方向へ旋回することが規制され、図中矢印R2で示す時計方向へ旋回することは規制されていない。したがって、フレキシブルフラットケーブル52における上側保持部38により保持される箇所より先(制御回路5への接続側)の部分の浮き上がりが防止される。
【0068】
図12は、上側保持部38の拡大側面図であり、図13は、図12に示すB-B’線による断面図である。図13に示すように、上側保持部38は下方に開放された鈎状、即ち倒立凹状をなしている。つまり、上側保持部38は、画像読取ユニット3の壁部37から立ち上がり、壁部37よりも副走査方向上流側(Y2方向)に突出した突出部380aと、当該突出部380aに連続して設けられ、壁部37と並行に設けられる爪部380bによって構成される。
【0069】
つまり、上側保持部38によってフレキシブルフラットケーブル52が保持されることにより、突出部380aによって上方への移動が規制され、爪部380bによって突出部380aからの離脱を防止される。つまり、爪部380bによってフレキシブルフラットケーブル52が副走査方向上流側(Y2方向)への移動を規制される。
【0070】
また、かかる倒立凹状となった上側保持部38の内側の上面(突起380aの下面)38aは、前方へ向かうにしたがって低くなるように傾斜している(図12参照)。つまり、フレキシブルフラットケーブル52の接続端部52aから離れるに従って、上面38aは下方に傾斜される。
【0071】
図11に示すように、矢印R2の方向への旋回が規制されておらず、しかも上側保持部38の内側の上面38aが上記のように傾斜していることから(図12参照)、フレキシブルフラットケーブル52は、前方へ向かうにしたがって低くなるように、若干傾斜した状態を取りやすい。したがって、このことによっても、フレキシブルフラットケーブル52における上側保持部38により保持される箇所より先(制御回路5への接続側)の部分の浮き上がりが防止される。
【0072】
また、図11に示すように、下側保持部36の後方に近接して(下側保持部36と相隣して)保持部351が設けられており、この保持部351によって接続端部52aが保持されているため、接続端部52aの浮き上がりが防止されると共に、接続端部52aの近接した下側保持部36におけるフレキシブルフラットケーブル52の浮き上がりも防止される。このため、フレキシブルフラットケーブル52がR2方向に必要以上に旋回することが防止され、フレキシブルフラットケーブル52の原稿台ガラス2への接触及び画像読取ユニット3への巻き込み等が防止される。
【0073】
第1の実施の形態によれば、保持部351、下側保持部36、及び上側保持部38の3箇所において、フレキシブルフラットケーブル52を保持するので、フレキシブルフラットケーブル52の上方および下方への移動を規制することができる。したがって、フレキシブルフラットケーブル52が原稿台ガラス2や下側ハウジング6bの内底面に接触するのを防止することができる。このため、原稿台ガラス2に傷が入ったり、フレキシブルフラットケーブル52が断線したりするのを未然に防止することができる。
【0074】
なお、上述した第1の実施の形態においては、保持部351、下側保持部36、及び上側保持部38の3箇所において、フレキシブルフラットケーブル52を保持する構成について述べたが、これに限定されるものではない。保持部351を設けず、下側保持部36、及び上側保持部38の2箇所において、フレキシブルフラットケーブル52を保持する構成としてもよいし、保持部351及び下側保持部36を設けず、上側保持部38の1箇所において、フレキシブルフラットケーブル52を保持する構成としてもよい。
【0075】
また、上述した第1の実施の形態においては、上側保持部38を倒立凹状に形成したが、これに限定される必要はない。上側保持部38は、フレキシブルフラットケーブル52の上方への移動を規制するとともに、この規制状態が解除されるのを防止すればよい。したがって、図15(A)に示すように、突出部380aを副走査方向上流側(Y2方向)に向かうに従って下向きに傾斜させて、爪部380bを省略してもよい。また、図15(B)に示すように、突出部380aを副走査方向上流側(Y2方向)に延ばして、爪部380bを省略してもよい。これらの場合には、突出部380aによって、フレキシブルフラットケーブル52の上方への移動が規制されるとともに、この規制状態が解除されるのが防止される。
【0076】
さらに、第1の実施の形態では、画像読取装置10のハウジング6内に制御回路5を設けて、フレキシブルフラットケーブル52を制御回路5に接続するようにしたが、制御回路5を画像形成装置1の装置本体(画像形成部)20側に設けるようにしてもよい。この場合、制御回路5を、画像形成装置1の装置本体(画像形成部)20に設けられる制御回路に含めてもよい。
【0077】
また、上述した第1の実施の形態においては、下側保持部36を、コネクタ34aの後端からフレキシブルフラットケーブル52の幅の約2倍の距離を隔てた位置に設ける構成について述べたが、これに限定されるものではない。但し、フレキシブルフラットケーブル52の浮き上がりを防止しつつ、配線作業を容易にするという観点から、コネクタ34aの後端からフレキシブルフラットケーブル52の幅の約1.5倍乃至2.5倍の距離を隔てた位置に下側保持部36を設けることが好ましい。
【0078】
また、上述した第1の実施の形態においては、上側保持部38を、コネクタ34aの後端からフレキシブルフラットケーブル52の幅の約2.5倍の距離を隔てた位置に設ける構成について述べたが、これに限定されるものではない。但し、フレキシブルフラットケーブル52の浮き上がりを防止しつつ、配線作業を容易にするという観点から、コネクタ34aの後端からフレキシブルフラットケーブル52の幅の約2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に下側保持部36を設けることが好ましい。
【0079】
なお、上述した第1の実施の形態においては、ステッピングモータ41を駆動するための駆動回路と、画像読取ユニット3から出力された画像信号を処理する信号処理回路と、電源回路とを有する制御回路5に、駆動信号伝送ケーブル51及びフレキシブルフラットケーブル52が接続される構成について述べたが、これに限定されるものではない。制御回路5に直接駆動信号伝送ケーブル51及びフレキシブルフラットケーブル52が接続されるのではなく、制御回路5への接続を中継する中継基板に駆動信号伝送ケーブル51及びフレキシブルフラットケーブル52が接続される構成とすることもできる。この場合、制御回路5を設けた基板は、装置本体20に設けることが可能であり、中継基板と制御回路5とがケーブル等で接続され、中継基板によって受け付けられた画像信号が制御回路5へと伝送され、制御回路5から中継基板を介してステッピングモータ41等へ駆動信号が供給される。
【0080】
また、上述した第1の実施の形態においては、画像読取装置10と装置本体20とを備える画像形成装置1について述べたが、これに限定されるものではない。例えば、フラットベッド型のスキャナ装置の様に、読み取られた画像を記録媒体に形成する構成を有しない画像読取装置とすることも可能である。
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態の画像形成装置1は、画像読取装置の構成が異なる以外は、第1の実施の形態と同じであるため、異なる内容について説明し、重複した説明は省略する。
【0081】
なお、第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と同じものについては、同じ参照符号を用いて説明することにする。
【0082】
図16は、第2の実施の形態の画像読取装置400であり、原稿を順次供給可能な構成を有する自動搬送部402および原稿を読み取る読取部404を備える。ただし、図16では、自動搬送部402については側面を示し、読取部404については側面から透視した状態を示す。
【0083】
図16に示すように、画像読取装置400は、光源を備える画像読取ユニット410を備えている。画像読取ユニット410は、一対の光源部412と、一対の光源部412から照射され、原稿によって反射された反射光の光路を変換する第1ミラー414を備える。
【0084】
光路を変換された反射光は、画像信号生成部420へ導入される。画像信号生成部420は、第2ミラー422と、第3ミラー423と、レンズ424と撮像装置425を備える。
【0085】
したがって、画像信号生成部420に導入された反射光は、第2ミラー422および第3ミラー423で光路を変換され、光路を変換された反射光はレンズ424で結像されて、撮像装置425に入力される。CCDのような撮像装置425は、反射光を光電変換し、電気信号(画像信号)を生成する。図示は省略するが、生成された画像信号は、信号ケーブルを用いて制御回路5に与えられる。
【0086】
図17は、第2の実施の形態の画像読取部404を斜め上方から見た斜視図である。図17に示すように、画像読取部404は、上述した画像読取ユニット410および画像信号生成部420を備える。図示は省略するが、画像読取部404は、画像読取ユニット410および画像信号生成部420を透明板に沿って副走査方向Yに移動(走査)するための機構を有している。
【0087】
画像読取ユニット410には、第1の実施の形態と同様に、副走査方向上流側(Y2方向)であり、主走査方向Xの後方(X2方向)寄りに、保持部351、下側保持部36および上側保持部38が設けられる。したがって、フレキシブルフラットケーブル52は、保持部351、下側保持部36および側保持部38によって、接続端部52を保持されるとともに、下方への移動および上方への移動を規制される。
【0088】
なお、第2の実施の形態の画像読取ユニット410には、原稿を走査するための制御信号が制御回路5から与えられる。その制御信号がフレキシブルフラットケーブル52を通して入力される。ただし、図17では、フレキシブルフラットケーブル52の一部および制御回路5を省略してあるが、第1の実施の形態で示した場合と同様である。
【0089】
第2の実施の形態によれば、画像信号を生成するための機構を備えていない画像読取ユニットについても、保持部351、下側保持部36および上側保持部38を設けることにより、原稿台ガラスに傷が入ったり、フレキシブルフラットケーブル52が断線したりするのを未然に防止することができる。
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態の画像形成装置1は、保持部351、下側保持部36および上側保持部38を設ける位置が異なる以外は、第1の実施の形態と同じであるため、異なる内容について説明し、重複した説明は省略する。
【0090】
図18に示すように、第3の実施の形態では、保持部351、下側保持部36および上側保持部38が、画像読取ユニット3において、副走査方向下流側(Y1方向)に設けられる。この場合、コネクタ34aも、画像読取ユニット3において、副走査方向下流側(Y1方向)に設けられる。
【0091】
また、図18に示すように、第3の実施の形態では、第1の実施の形態よりも副走査方向上流側(Y2方向)において、壁部62に欠落部が設けられ、フレキシブルフラットケーブル52は、この欠落部を通って領域7bへと入り込む。
【0092】
したがって、第3の実施の形態では、フレキシブルフラットケーブル52は、上側保持部38によって保持された箇所の先において、副走査方向下流側へと延び、さらにその先においてU字状に水平に折り返され、保持部351の外側を通って画像読取ユニット3の前方へと回り、壁部62に沿って副走査方向上流側へと延びる。上述したように、壁部62の中間部分よりも、副走査方向上流側(Y2方向)に欠落部が設けられており、フレキシブルフラットケーブル52は、この欠落部を通って壁部62の後側の制御回路5が配置されている領域7bへと入り込む。この領域7bの内部で、フレキシブルフラットケーブル52は垂直に立てられた状態から水平に捻られ、その先において制御回路5に接続される。
【0093】
このようにしても、フレキシブルフラットケーブル52は、保持部351、下側保持部36および側保持部38によって、接続端部52を保持されるとともに、下方への移動および上方への移動を規制される。
【0094】
第3の実施の形態においても、原稿台ガラス2に傷が入ったり、フレキシブルフラットケーブル52が断線したりするのを未然に防止することができる。
【0095】
なお、第3の実施の形態では、保持部351、下側保持部36および上側保持部38を、副走査方向下流側(Y1方向)に設けるので、領域7dを設ける必要はない。
【0096】
また、第2の実施の形態の画像読取装置400においても、保持部351、下側保持部36および上側保持部38を、副走査方向下流側(Y1方向)に設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の画像読取装置及び画像形成装置は、原稿から画像を読み取る画像読取装置及び原稿から読み取られた画像を記録媒体に形成する画像形成装置として有用である。
【符号の説明】
【0098】
1 画像形成装置
2 原稿台ガラス
3,410 画像読取ユニット
34a コネクタ
35 基台
351 保持部
352 壁部
36 下側保持部
36a 欠落部
38 上側保持部
38a 内側上面
4 駆動機構
5 制御回路
51 駆動信号伝送ケーブル
52 フレキシブルフラットケーブル
52a 接続端部
6 ハウジング
61 ガイドレール
10、400 画像読取装置
20 装置本体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を載置するための平板状の透明板と、
前記透明板の下方に設けられており、移動することにより、前記透明板上に載置された原稿を走査し、当該原稿から画像を読み取り、画像信号を出力する走査部と、
前記走査部の接続部に一端が接続され、少なくとも当該接続部から出力された画像信号を受け付ける回路部に他端が接続される帯状の信号ケーブルを備え、
前記信号ケーブルは、当該信号ケーブルの一部の幅方向が前記透明板の主面に沿った方向に対して交差するように配置され、
前記走査部は、
画像読取装置を正面側から見た場合の前記接続部の後端から当該走査部の長手方向に前記信号ケーブルの幅の2倍乃至3倍の距離を隔てた位置に設けられ、前記信号ケーブルの上方への移動を規制する突出部と、
前記突出部の端部から下方に突出して設けられ、前記信号ケーブルが当該突出部から離脱するのを防止する離脱防止部を具備し、
前記離脱防止部は、前記突出部によって規制された前記信号ケーブルの部分が前記走査部の長手方向において当該走査部に沿うように、当該走査部に構成および配置される、画像読取装置。
【請求項2】
前記突出部は、前記信号ケーブルの前記一端から遠ざかるに従って下方へ傾斜する傾斜面を有する、請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記走査部は、前記突出部とは前記信号ケーブルの長手方向において異なる位置で、前記信号ケーブルの下方への移動を規制する下側規制部を具備する、請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記走査部は、
前記信号ケーブルの一端の幅方向が、前記透明板の主面に沿った方向となるように前記信号ケーブルの一端と接続される接続部と、
前記接続部から延設された前記信号ケーブルの幅方向を、前記一端から離反するにしたがって前記透明板の主面に対して交差する方向へと変化させるように、前記信号ケーブルを保持する形状保持部を具備する、請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記信号ケーブルは、前記走査部の前記接続部より下方の位置において、前記形状保持部と当接する、請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記下側規制部は、前記形状保持部に近接して設けられている、請求項6に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記形状保持部は、少なくとも一部において前記接続部に対向する壁部を有し、前記接続部から延設された前記信号ケーブルは当該壁部に当接する、請求項5ないし7のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記壁部は、前記接続部の一部と対向する第1の部分が前記接続部よりも下方に設けられ、前記接続部の他の一部と対向する第2の部分が前記第1の部分よりも上方へと延びるように設けられている、請求項8に記載の画像読取装置。
【請求項10】(削除)
【請求項11】
前記信号ケーブルの一端は、前記原稿を走査する場合の前記走査部の移動方向の上流側において当該走査部に接続される、請求項1、2、4ないし9のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項12】
請求項1、2、4ないし9および11の何れかに記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置によって読み取られた画像を記録媒体に形成する画像形成部を備える、画像形成装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-01-14 
出願番号 特願2014-41893(P2014-41893)
審決分類 P 1 651・ 853- YAA (H04N)
P 1 651・ 113- YAA (H04N)
P 1 651・ 121- YAA (H04N)
P 1 651・ 851- YAA (H04N)
P 1 651・ 537- YAA (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 畑中 高行花田 尚樹  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 藤原 敬利
渡辺 努
登録日 2017-10-20 
登録番号 特許第6228041号(P6228041)
権利者 シャープ株式会社
発明の名称 画像読取装置及び画像形成装置  
代理人 大村 和史  
代理人 大村 和史  

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