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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F16L
管理番号 1360521
異議申立番号 異議2019-700952  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-26 
確定日 2020-03-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第6535410号発明「貫通部材セット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6535410号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6535410号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成30年12月6日に特許出願され、令和1年6月7日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:令和1年6月26日)がされ、その後、その特許に対し、令和1年11月26日に特許異議申立人関東器材工業株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6535410号の請求項1及び2の特許に係る発明(以下「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
壁に形成された壁貫通孔に挿入可能な筒状の第1筒状部材と、
一端部側にフランジ部を有すると共に、他端部側が前記第1筒状部材と連結可能な筒状の第2筒状部材と、を備えた貫通部材セットであって、
前記壁貫通孔に挿入された状態における前記第1筒状部材の左右両側には第1係合部がそれぞれ設けられており、
前記第2筒状部材の左右両側には前記第1係合部と係合可能な第2係合部がそれぞれ設けられており、
前記第1の筒状部材の下部には連通孔が設けられており、
前記第2筒状部材の下側には前記第1の筒状部材の下部の連通孔と篏合可能な下方に突き出た下側突起部が設けられており、
前記第2筒状部材は、前記左右両側の前記第1係合部と前記第2係合部とが係合されて前記第1筒状部材と連結された状態で、前記第2筒状部材の下側の下側突起部を支点として回動可能に構成されており、
前記第1係合部は、孔部であり、
前記第2係合部は、前記孔部と係合可能な係合突起であり、
前記孔部は、側面視で円弧状を成しており、
前記円弧状は、前記第1の筒状部材の下部の連通孔の中央部を中心とする円弧に沿って形成されている、
ことを特徴とする貫通部材セット。
【請求項2】
前記孔部の縁部には、単数又は複数の凸部が前記係合突起と接触可能に形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の貫通部材セット。」

第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠として以下の甲第1号証?甲第3号証を提出し、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に基づく周知技術に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1及び本件発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきものである旨主張している。

(証拠方法)
甲第1号証:特開2014-25577号公報
甲第2号証:実願平4-76428号(実開平6-32946号)のCD-ROM
甲第3号証:特開平10-322841号公報
(以下「甲第1号証」?「甲第3号証」を「甲1」?「甲3」という。)

第4 甲各号証の記載
1 甲1
(1) 甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内から室外へ配管を導くための配管スリーブであって、
前記室内と前記室外とを隔てる壁を貫通するように配設される筒状のスリーブ本体と、このスリーブ本体が前記壁に配設された状態で当該スリーブ本体の前記室内側の端部に装着されるフランジ部材とを有し、
前記スリーブ本体の前記端部には、当該スリーブ本体が前記壁に配設された状態における上部および下部にそれぞれ、係合孔または係合爪の一方が形成されるとともに、
前記フランジ部材の前記スリーブ本体内に挿入される挿入筒部には、当該フランジ部材が前記スリーブ本体の前記端部に装着された状態における上部および下部にそれぞれ、前記係合孔または前記係合爪の他方が形成され、
前記2つの係合孔のうち少なくとも一方の係合孔は、前記スリーブ本体の長手方向に延びる長孔であり、この長孔に沿って当該長孔に対応する係合爪が移動することにより、前記フランジ部材が前記スリーブ本体に対して角度調整自在に連結されていることを特徴とする配管スリーブ。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの配管スリーブは、所定の水勾配に対応可能であるものの、部品点数が多く、構造が複雑であるため、必然的に製造コストが高騰するという課題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、所定の水勾配に対応可能であり、かつ製造コストが低廉な配管スリーブを提供することを目的とする。」
「【0018】
このスリーブ本体2は、図2および図4に示すように、壁7の厚さD3より少し長い長さD4を有しているとともに、所定の外径D1(例えば、D1=64mm)および内径D2(例えば、D2=61mm)を有している。スリーブ本体2の一方の端部2aには、図2(c)?(e)に示すように、スリーブ本体2が壁7に配設された状態における上部および下部にそれぞれ、係合孔8、9がスリーブ本体2の内外を連通するように形成されている。ここで、係合孔8は、スリーブ本体2の長手方向(矢印L方向)に延びる長孔となっている。また、スリーブ本体2の外周面には、スリーブ本体2のほぼ中央部から他方(スリーブ本体2が壁7に配設された状態で室外6側)の端部2bまで、スリーブ本体2の周方向に沿う複数本(この実施の形態1では、10本)の切断補助用溝10が、スリーブ本体2の長手方向に所定の間隔Pで形成されている。
【0019】
一方、フランジ部材3は、図3に示すように、スリーブ本体2の内径D2にほぼ等しい曲率半径R1のほぼ球面状に形成された挿入筒部11を有しており、挿入筒部11の一方(スリーブ本体2と反対側)の端部には、略円環状の鍔部12が一体に連設されている。また、挿入筒部11には、スリーブ本体2に装着された状態における上部および下部にそれぞれ、係合爪13、14が形成されている。さらに、挿入筒部11には、係合爪13の近傍に凸片15が、挿入筒部11の球面に連続してスリーブ本体2側に突出するように形成されている。
【0020】
そして、スリーブ本体2とフランジ部材3とは、図5および図6に示すように、係合爪13が係合孔8に係合するとともに、係合爪14が係合孔9に係合することにより、互いに連結されており、フランジ部材3が係合爪14を中心として揺動して係合爪13が係合孔8に沿って移動することにより、フランジ部材3がスリーブ本体2に対して角度調整自在になっている。
【0021】
配管スリーブ1は以上のような構成を有するので、図4に示すように、壁7に貫通孔7aが所定の水勾配(例えば、7°、0°など)で形成されている場合に、この水勾配に対応させて配管スリーブ1を壁7に施工する際には、次の手順による。
【0022】
まず、配管スリーブ準備工程で、この水勾配に応じて、図5および図6に示すように、スリーブ本体2に対してフランジ部材3を適宜揺動させて角度調整することにより、フランジ部材3の鍔部12が、スリーブ本体2の長手方向(矢印L方向)に直角な平面に対して、水勾配に等しい角度θだけ傾斜した状態とする。
【0023】
例えば、水勾配が7°である場合には、図5に示すように、フランジ部材3を係合爪14を中心として揺動させて、係合爪13を係合孔8に沿って最前方位置P1まで移動させる。すると、配管スリーブ1は、フランジ部材3の鍔部12が、スリーブ本体2の長手方向(矢印L方向)に直角な平面に対して7°傾斜した状態となる。」
「【0025】
また、水勾配が0°である場合には、図6に示すように、フランジ部材3を係合爪14を中心として揺動させて、係合爪13を係合孔8に沿って最後方位置P2まで移動させる。すると、配管スリーブ1は、フランジ部材3の鍔部12が、スリーブ本体2の長手方向に直角な平面に対して0°傾斜した状態、つまり、この平面に平行な状態となる。
【0026】
なお、このようにしてフランジ部材3を係合爪14を中心として揺動させると、フランジ部材3の挿入筒部11の外周面がスリーブ本体2の内周面に対して摺動することになる。しかし、フランジ部材3の挿入筒部11は、上述したとおり、スリーブ本体2の内径D2にほぼ等しい曲率半径R1のほぼ球面状に形成されているので、フランジ部材3の揺動を円滑に行うことができる。」
「図1


「図4


「図5


(2) 甲1に記載された発明
上記(1)の記載事項を総合し、甲1には、以下の「甲1発明」が記載されていると認められる。
「室内から室外へ配管を導くための配管スリーブであって、
前記室内と前記室外とを隔てる壁を貫通するように配設される筒状のスリーブ本体と、このスリーブ本体が前記壁に配設された状態で当該スリーブ本体の前記室内側の端部に装着されるフランジ部材とを有し、
前記スリーブ本体の前記端部には、当該スリーブ本体が前記壁に配設された状態における上部および下部にそれぞれ、係合孔または係合爪の一方が形成されるとともに、
前記フランジ部材の前記スリーブ本体内に挿入される挿入筒部には、当該フランジ部材が前記スリーブ本体の前記端部に装着された状態における上部および下部にそれぞれ、前記係合孔または前記係合爪の他方が形成され、
前記2つの係合孔のうち少なくとも一方の係合孔は、前記スリーブ本体の長手方向に延びる長孔であり、この長孔に沿って当該長孔に対応する係合爪が移動することにより、前記フランジ部材が前記スリーブ本体に対して角度調整自在に連結されている、
配管スリーブ。」
2 甲2
(1) 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 斜め下方に吹出部を有する通風用ダクトにおいて、ダクト吹出部の全外周面を覆い、かつ、両側面が該ダクト吹出部側面と同心円弧の扇形をなす吹出部カバーを設け、該吹出部カバー下部を該ダクト吹出部下部に回動自在にヒンジで保持し、該吹出部カバー両側面に該同心円弧の長孔を穿設して、該ダクト吹出部両側面に該長孔に挿通する固定ボルトを突設し、該ダクト吹出部に吹出部カバーを挟着して固定ナットを該固定ボルトに締着し、ダクト吹出部に吹出部カバーを回動自在に取り付けて通風の吹出方向を変えることを特徴とする吹出方向可変ダクト。」
「 【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、建物および船舶内に装備する通風用ダクトに係り、特にダクト吹出部の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の考案は、パンカールーバのように、頭上に水平に配設するダクト下面に装備し、吹出方向を変えるものは知られているが、水平なダクトの斜め下方に突き出した吹出部に装備するものについては、特に考案されていない。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
従来の技術で述べたように、ダクトの斜め下方に突き出した吹出部は固定されているので、通風の吹出方向を必要に応じて変えることができず、高い通風効果を得ることができないという問題点を有していた。
【0004】
この考案は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、必要に応じて吹出方向を変えることができる吹出方向可変ダクトを提供しようとするものである。」
「 【0007】
【実施例】
実施例について、図面を用いて説明すると、図1および図2に示すように、斜め下方に吹出部を有する通風用ダクトにおいて、ダクト吹出部1の全外周面を覆い、かつ、両側面がダクト吹出部1側面と同心円弧の扇形をなす吹出部カバー2を設ける。
【0008】
吹出部カバー2下部はダクト吹出部1下部に回動自在にヒンジ3で保持し、吹出部カバー2両側面には同心円弧形の長孔4を穿設し、ダクト吹出部1両側面には長孔4に挿通する固定ボルト5を突設し、ダクト吹出部1に吹出部カバー2を挟着して固定ナット6を固定ボルト5に締着する。
【0009】
この実施例において、固定されたダクト吹出部1の吹出方向Aより下向きの吹出方向Bに変える場合、固定ボルト5に締着した固定ナット6を緩め、吹出部カバー2をヒンジ3の回りに下向きに回動させて、目的の吹出方向Bになる位置で固定ナット6を締着して、吹出部カバー2をダクト吹出部1に固定する。
【0010】
【考案の効果】
この考案は、上述のとおり構成されているので、次に記載する効果を奏する。
ダクト吹出部に回動自在に吹出部カバーを取り付けるので、通風の吹出方向を必要に応じて変えることができ、高い通風効果を得ることができる。」
「【図1】

【図2】



(2) 甲2に記載された技術
上記(1)の記載事項を総合し、甲2には、以下の技術(以下「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。
「斜め下方に吹出部を有する通風用ダクトにおいて、ダクト吹出部の全外周面を覆い、かつ、両側面が該ダクト吹出部側面と同心円弧の扇形をなす吹出部カバーを設け、該吹出部カバー下部を該ダクト吹出部下部に回動自在にヒンジで保持し、該吹出部カバー両側面に該同心円弧の長孔を穿設して、該ダクト吹出部両側面に該長孔に挿通する固定ボルトを突設し、該ダクト吹出部に吹出部カバーを挟着して固定ナットを該固定ボルトに締着する技術。」
3 甲3
(1) 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 車体のブラケットを収容するブラケット保持部材に係合突起を設け、プロテクタの側壁面から突出する受け部に円弧状面を設け、該円弧状面に、前記係合突起が係脱可能な凹部を複数配列し、
前記係合突起と凹部との係合位置を選択することにより、前記ブラケットに対する前記プロテクタの側壁面の角度が可変であることを特徴とするプロテクタ取付角度調整構造。」
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ワイヤーハーネスを保持するプロテクタを車体のブラケットに取り付ける際に、ワイヤーハーネスの取付角度を調整可能にしたプロテクタ取付角度調整構造に関するものである。」
「【0015】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の第1実施例のプロテクタ取付角度調整構造Aの分解斜視図、図2?図4は角度の調整を説明するプロテクタ取付角度調整構造Aの斜視図である。図1に示すように、ワイヤーハーネスWを内部に支持するプロテクタ24の一方の側壁24bの外壁面に2個の受け部25が設けられる。
【0016】受け部25は、上記の受け部17と同様に、モーメント荷重の関係から突出長さを大きくできないが、側壁24bと平行な方向の長さLは大きくしてもかまわない。従って、受け部25は、側壁24bと平行な方向に長い矩形板状に形成され、同方向に長い円弧状孔26が形成され、円弧状孔26の一方の内壁面(円弧状面)26aに複数の凹部27が配列して設けられる(図1,図5参照)。
【0017】プロテクタ24をブラケット5に取り付けるブラケット保持部材28は、ブラケット5が挿入される挿入孔29の内面に、ブラケット5の係止孔6に係合する係止突起4が設けられ、ブラケット保持部材28の両側面から突出する摺動軸部30の外面に、凹部27に係合する係合突起31が設けられ、係合突起31の反対側には、円弧状孔26の他方の内壁面26bに滑り接触する摺動面32が形成される(図1参照)。
【0018】2個の受け部25の相対する側面に、受け部25に端部から円弧状孔26に向けて次第に浅くなる案内溝33が設けられ、摺動軸部30を案内溝33に沿って円弧状孔26に向けて移動すると、受け部25が弾性撓み変形して摺動軸部30の移動を許容し、摺動軸部30が円弧状孔26に挿入されると、受け部25の弾性変形が復帰すると共に、係合突起31がほぼ中央位置にある凹部27に係入する(図2参照)。
【0019】係合突起31と凹部27との係合深さは浅く、係合突起31も弾性圧縮可能であるので、摺動軸部30を円弧状孔26に沿って移動すると、係合突起31が凹部27と凹部27との間の山を乗り越えて他の凹部27に係合する。従って、摺動軸部30を円弧状孔26の下方に移動すると、係合突起31が下方位置にある凹部27に係合し、ブラケット保持部材28に対するプロテクタ24の取付角度が変化する(図3参照)。
【0020】摺動軸部30を円弧状孔26の上方に移動すると、プロテクタ24の取付角度が反対方向に傾く(図4参照)。プロテクタ24の側壁24b方向に長い円弧状孔26には多数の凹部27を配列することができるので、細かい角度θを単位としてプロテクタ24の取付角度を調整することができる(図5参照)。」
「【図1】


(2) 甲3に記載された技術
上記(1)の記載事項を総合し、甲3には、以下の技術(以下「甲3周知技術」という。)が記載されていると認められる。
「受け部25は、側壁24bと平行な方向に長い矩形板状に形成され、同方向に長い円弧状孔26が形成され、円弧状孔26の一方の内壁面(円弧状面)26aに複数の凹部27が配列して設けられること。」

第5 対比・判断
1 本件発明1について
各文言の意味、機能、作用等を考慮して、本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも、甲1発明が、本件発明1の「第1筒状部材の左右両側に」、「前記第1の筒状部材の下部の連通孔の中央部を中心とする円弧に沿って形成されている」、「円弧状を成」す「孔部」を有していない点(以下「相違点」という。)で、両者は相違する。
上記相違点について検討する。
甲2技術は、「吹出部カバー両側面に該同心円弧の長孔を穿設して、該ダクト吹出部両側面に該長孔に挿通する固定ボルトを突設し、該ダクト吹出部に吹出部カバーを挟着して固定ナットを該固定ボルトに締着する」点を備えるものである。
しかしながら、甲2技術は、「吹出部カバー下部を該ダクト吹出部下部に回動自在にヒンジで保持」し、「該ダクト吹出部両側面に該長孔に挿通する固定ボルトを突設し、該ダクト吹出部に吹出部カバーを挟着して固定ナットを該固定ボルトに締着」して、必要に応じて吹出方向を変えることができる吹出方向可変ダクトに関するものであり(甲2【0004】)、甲1発明の「室内と前記室外とを隔てる壁を貫通するように配設される」、「室内から室外へ配管を導くための配管スリーブ」とは、技術分野及び対象となる物自体が異なるとともに、甲2技術の、ヒンジによる回動の保持構造や、固定ボルト及び固定ナットを用いた締着構造も、甲1発明と異なることを踏まえると、甲1発明に、甲2技術を適用する動機付けを見い出すことはできない。
また、甲2技術の、「該吹出部カバー両側面に該同心円弧の長孔を穿設して、該ダクト吹出部両側面に該長孔に挿通する固定ボルトを突設し、該ダクト吹出部に吹出部カバーを挟着して固定ナットを該固定ボルトに締着する」構成を、「室内と前記室外とを隔てる壁を貫通するように配設される」、甲1発明に適用することは、配管スリーブを設置する壁と、固定ナット及び固定ボルトとが干渉し、障害になり得ることを考慮すると、甲2技術を甲1発明へ適用することには、むしろ阻害要因があるともいえる。
そして、本件発明1は、「第1筒状部材の左右両側に」、「前記第1の筒状部材の下部の連通孔の中央部を中心とする円弧に沿って形成されている」「円弧状を成」す「孔部」を設けることから、「上部の係合孔のみによる位置調整を行う構成に比べて」「係合部の数が多い分だけ大きな抵抗が生じるので、位置ズレが生じ難く、施工精度が低下し難い。」(本件特許明細書【0051】)との効果を奏するものであり、その効果は甲1及び甲2から予測し得るものではない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を更に減縮したものであるから、甲3周知技術を考慮しても、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明、甲2技術及び甲3周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 以上のとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲2技術に基いて、本件発明2は、甲1発明、甲2技術及び甲3周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-03-04 
出願番号 特願2018-229399(P2018-229399)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F16L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡邉 聡  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 山崎 勝司
塚本 英隆
登録日 2019-06-07 
登録番号 特許第6535410号(P6535410)
権利者 星朋商工株式会社
発明の名称 貫通部材セット  
代理人 佐野 弘  
代理人 石井 明夫  

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