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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E04D |
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管理番号 | 1360768 |
審判番号 | 不服2019-6715 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-05-23 |
確定日 | 2020-04-01 |
事件の表示 | 特願2015- 17322「屋上防水断熱保護工法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 8日出願公開、特開2016-142002、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年1月30日に特許出願したものであって、平成30年7月17日付け(起案日)で拒絶理由通知がされ、平成30年9月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成31年2月21日付け(起案日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和1年5月23日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 1 原査定(平成31年2月21日付け拒絶査定)の拒絶理由の概要は次のとおりである。 本願請求項1ないし4に係る発明は、下記引用文献1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献: 1.特開昭56-160388号公報 2.特開平10-152648号公報 第3 本件発明 本願の請求項1ないし4に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、平成30年9月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 (1)屋上防水材の表面に、2液硬化系エポキシ樹脂系下塗り塗料を塗装する工程、 (2)工程(1)で得られた下地層の上に、ガラス転移温度が30℃以下である樹脂を水分散化してなる樹脂エマルション及び水を含み、塗膜の比重が1.0未満であり、塗膜の熱伝導率が0.3W/m・K以下である水性塗料を塗装して断熱塗膜層を形成する工程、 (3)工程(2)で得られた断熱塗膜層の上に、ガラス転移温度が30℃以下である樹脂を水分散化してなる樹脂エマルション、水及び顔料を含み、塗膜の比重が1.0以上である水性塗料を塗装して防水塗膜層を形成する工程、 (4)工程(3)で得られた防水塗膜層の上に、組成物中に含まれる顔料成分のうち、白色顔料を50質量%以上含み、塗膜の比重が1.0以上であって、形成塗膜の日射反射率が50%以上である上塗り遮熱塗料を塗装して遮熱塗膜層を形成する工程、を含み、 遮熱塗膜層を形成するための塗料の全顔料体積濃度が防水塗膜層を形成するための塗料の全顔料体積濃度より低いことを特徴とする屋上防水断熱保護工法。 【請求項2】 断熱塗膜層を形成するための水性塗料が、中空粒子、顔料及び難燃化剤から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1記載の屋上防水断熱保護工法。 【請求項3】 防水塗料がJIS A 6021に規定される塗料である請求項1又は2に記載の屋上防水断熱保護工法。 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の保護工法により得られた塗装物品。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定に引用された引用文献1(特開昭56-160388号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。(下線は、当審決で付した。以下同様。) (1) 「3.発明の詳細な説明 本発明は、断熱防水構法、殊に建築物の屋根等の断熱防水構法に望ましく適用し得る新規な仕上方法に関するものである。」(第1頁左欄下から7行?下から4行) (2) 「[VI]コンクリートスラブ1上に、防水層3、断熱層2及びコンクリートもしくはモルタルの保護仕上層4’を順次積層した第6図の押え工法の場合:」(第2頁左下欄3行?6行) (3) 「即ち、本発明は、皮膜形成材と、太陽輻射反射材としての顔料容積濃度10?45%の白色顔料と、皮膜改質材としての粒径20?350μのガラス質粉、シリカ質粉及びアルミナ粉のいずれか一種又は二種以上とを主成分として含んだ太陽輻射に対する全反射率40%以上の反射能を有する被覆用組成物を、断熱防水構築体の表面に施して表面仕上層を形成することを要旨とする断熱防水構法の仕上方法に係るものであって、従来の断熱防水構法に対して表面仕上層による遮熱機能を付加することにより、従来法の諸欠点を解決または大巾に改善し、耐久度を高め、安全面、経済面で優れた新規且つ有用な構法を提供せんとするものである。 本発明に用いる被覆用組成物に含まれる皮膜形成材としては、たとえば各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成ゴムなどの水性エマルジヨンあるいは油性溶液が広範囲に使用される。亦、太陽輻射反射材としては、たとえば塩基性炭酸鉛、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化アンチモンあるいは酸化亜鉛などの各種白色顔料が用いられ、顔料容積濃度で10?45%の範囲が適用される。斯る白色顔料は、その容積濃度が低すぎても高すぎても被覆用組成物の反射率が低下するものであり、そのため該濃度が10%未満の場合には、充分な遮熱作用を行なわせるに必要な太陽輻射(波長0.3?2.3μ)に対する全反射率40%以上の被覆組成物が得難くなくなり(審決注:「得難くなり」の誤記と認められる)、一方45%を超えるときは、遮熱作用が低下する上にコスト増にもなるからである。」(第2頁右下欄3行?第3頁左上欄12行) (4) 「亦第10図、第11図及び第12図はそれぞれ、第4?6図に示す既述の[IV],[V]及び[VI]の従来押え工法に於て、押えコンクリート又はモルタルの保護仕上層4’の上に更に本発明の被覆用組成物の表面仕上層40を形成したものである。」(第3頁右下欄5行?9行) (5) 「尚、図に於て、断熱層2は断熱防水構法に通常使用される発泡ポリエチレン、発泡ポリスチロール等の断熱材よりなる層であり、防水層3は同構法に通常使用されるアスフアルト、ゴムシート、塩ビシート、ウレタン塗膜等よりなる層である。 以上の説明から理解できるように、本発明仕上方法は、(1)直射日光を遮断し、衝撃、摩擦などの外力に耐える表面仕上層を形成したため、前述の[I]?[VI]の各工法について挙げた欠陥、即ち、日照による蓄熱に起因して断熱防水構築体の防水層、断熱層、コンクリートスラブ等に生じる、ふくれ、熱変形、熱劣化、亀裂、或は層間剥離等の欠陥を解決または大巾に改善して構築体の耐久性を高めると共に、構築体の表面強度も向上せしめることが可能となり、亦防火性が向上し、施工性が良く工費が安価である上に補修が容易である等の利点もあり、すこぶる有用なものである。」(第4頁左上欄1行?19行) (6) 「被覆用組成物を刷毛で塗装して乾燥膜厚500μ、全反射率約80%の表面仕上層を形成し」(第4頁右上欄6行?8行) (7)第12図は、以下のものである。 (8)上記(2)及び(5)を踏まえると、第6図の押え工法は、「コンクリートスラブ1上に積層される防水層3の上に、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチロール等の断熱材よりなる断熱層2を積層する工程」、「断熱層2の上に、コンクリート又はモルタルの保護仕上層4’を積層する工程」を有することは明らかである。 (9)上記(4)からみて、第12図においては、第6図に示す押え工法において、「コンクリート又はモルタルの保護仕上層4’の上に、表面仕上層40を形成する工程」を有することは明らかである。 以上を総合すると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「コンクリートスラブ1上に積層される防水層3の上に、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチロール等の断熱材よりなる断熱層2を積層する工程、 断熱層2の上に、コンクリート又はモルタルの保護仕上層4’を積層する工程、 保護仕上層4’の上に、太陽輻射反射材としての顔料容積濃度10?45%の白色顔料を含んだ太陽輻射に対する全反射率40%以上の反射能を有する被覆用組成物を、断熱防水構築体の表面に施して表面仕上層40を形成し、表面仕上層による遮熱機能を付加する工程を含む、建築物の屋根等の断熱防水構法。」 2 引用文献2について 原査定に引用された引用文献2(特開平10-152648号公報)には、次の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、断熱性、消音性を有する塗膜を形成し得る塗料に関し、特に建造物壁面の内外装仕上げに好適な厚膜形弾性断熱塗料及びこれを用いた塗装断熱工法に関する。」 (2)「【0004】即ち本発明は、(A)ガラス転移温度30℃以下、造膜温度25℃以下である樹脂を水分散化してなる弾性系樹脂エマルション、及び(B)熱伝導率0.02?0.1kcal/m・h・℃で、かさ密度0.02?0.5g/cc、粒子径0.2?8mmである樹脂発泡体粒子、及び(C)顔料を、(A)/(B)の固形分体積比が100/50?100/500で、且つ(C)の(A)に対する顔料体積濃度が1?50%となるよう含有する塗材で、該塗材による塗膜の熱伝導率が0.3Kcal/m・h・℃以下であることを特徴とする厚膜形弾性断熱塗材、及び該厚膜形弾性断熱塗材を基材面に塗装してなる塗装断熱工法を提供するものである。」 (3)「【0019】基材面に上記断熱塗材を直接塗装することもできるが、付着性の面からシ-ラ-やプライマ-層を予め基材面に設けておいてもよい。これらは、必要に応じて基材に塗装されるものであり、基材と断熱塗膜との付着性向上や基材からのエフロ防止、多孔質基材による断熱塗膜の吸い込みムラ防止などを目的として用いられる。具体的には、例えばアクリル樹脂系、塩化ビニル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、塩化ゴム系などから選ばれる1種又は2種以上組合せた樹脂成分を有するシ-ラ-やプライマ-が挙げられる。水回りなどの高度の耐水性が要求される場所では適宜塗り重ねてもよい。」 (4)「【0022】さらに上記断熱塗膜上に上塗り塗装を行なう場合には、上塗り塗装として、○1(審決注:○1は、○囲いの1。他の数字も同様。)断熱塗膜との付着や中塗塗膜の機能、○2仕上り面の着色や光沢の付与、耐候性、耐水性、耐汚染性等の付与、の両方を目的として、○1のための下地調整材を塗装後に○2のための上塗り塗料を塗装するか、○1、○2の両方を備えた上塗り塗料を塗装することができ、またのための上塗り塗料のみを塗装してもよい。」 (5)「【0027】上記○2のための上塗り塗料としては、特に制限なく従来公知の仕上り面の着色や光沢の付与、また高耐候性、耐水性、耐汚染性などを付与しうる水系又は有機溶剤系の塗料が適用でき、例えば、アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン・アクリル樹脂などを主成分とし、顔料類や塗料用添加剤等を含有するものが挙げられる。 【0028】また○1、○2の両方を備えた上塗り塗料としては、例えばアクリルラテックスやゴムラテックス等の断熱塗材の説明で述べた(A)成分と同様の樹脂エマルションを主成分とし、顔料類や塗料用添加剤等を含有し、これらを水に分散させてなるもので、形成塗膜の伸び率が20℃雰囲気で100?700%を示す厚膜形弾性上塗り塗料などが挙げられる。該上塗り塗料は単層形や複層形のいずれであってもよい。該上塗り塗料の塗装の前に、断熱塗膜との付着向上のために必要に応じてシ-ラ-を塗装してもよい。」 以上を総合すると、上記引用文献2には次の技術的事項(以下、「引用文献2技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「断熱塗膜上に上塗り塗装を行なう場合に、耐水性を目的として塗装する上塗り塗料であって、樹脂エマルションを主成分とし、顔料類や塗料用添加剤等を含有し、これらを水に分散させてなるものであり、仕上り面の着色や光沢の付与、また高耐候性、耐水性、耐汚染性などを付与しうるものとした上塗り塗料。」 第5 対比・判断 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 ア.引用発明1の「コンクリートスラブ1上に積層される防水層3」、及び、「建築物の屋根等の断熱防水構法」は、それぞれ、本件発明1の「屋上防水材」、及び、「屋上防水断熱保護工法」に相当する。 イ.引用発明1の「防水層3の上に、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチロール等の断熱材よりなる断熱層2を積層する工程」と、本件発明1の「屋上防水材の表面に、2液硬化系エポキシ樹脂系下塗り塗料を塗装する工程」で得られた下地層の上に、「ガラス転移温度が30℃以下である樹脂を水分散化してなる樹脂エマルション及び水を含み、塗膜の比重が1.0未満であり、塗膜の熱伝導率が0.3W/m・K以下である水性塗料を塗装して断熱塗膜層を形成する工程」とは、「屋上防水材よりも上層に、断熱層を形成する工程」である点で共通する。 ウ.引用発明1の「保護仕上層4’の上に、太陽輻射反射材としての顔料容積濃度10?45%の白色顔料を含んだ太陽輻射に対する全反射率40%以上の反射能を有する被覆用組成物を、断熱防水構築体の表面に施して表面仕上層40を形成し、表面仕上層による遮熱機能を付加する工程」と、「断熱塗膜層の上に、ガラス転移温度が30℃以下である樹脂を水分散化してなる樹脂エマルション、水及び顔料を含み、塗膜の比重が1.0以上である水性塗料を塗装して防水塗膜層を形成する工程」で得られた防水塗膜層の上に、「組成物中に含まれる顔料成分のうち、白色顔料を50質量%以上含み、塗膜の比重が1.0以上であって、形成塗膜の日射反射率が50%以上である上塗り遮熱塗料を塗装して遮熱塗膜層を形成する工程」とは、「断熱層よりも上層に、所定の含量の白色顔料を含み、所定の日射反射率を有する遮熱塗料を塗装して遮熱塗膜層を形成する工程」である点で共通する。 したがって、本件発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「屋上防水材よりも上層に、断熱層を形成する工程、 断熱層よりも上層に、所定の含量の白色顔料を含み、所定の日射反射率を有する遮熱塗料を塗装して遮熱塗膜層を形成する工程、を含む、 屋上防水断熱保護工法。」 <相違点> (相違点1)本件発明1は「屋上防水材の表面に、2液硬化系エポキシ樹脂系下塗り塗料を塗装する工程」を有するのに対し、引用発明1は、断熱層3の上に、そのように下塗り塗料を塗装する工程を有していない点。 (相違点2)断熱層を形成する工程について、本件発明1は「下地層の上に、ガラス転移温度が30℃以下である樹脂を水分散化してなる樹脂エマルション及び水を含み、塗膜の比重が1.0未満であり、塗膜の熱伝導率が0.3W/m・K以下である水性塗料を塗装して」いるのに対し、引用発明1は、そのような塗料を塗装することは特定がなされておらず、断熱層が「塗膜層」であるか否かも不明である点。 (相違点3)本件発明1は「断熱塗膜層の上に、ガラス転移温度が30℃以下である樹脂を水分散化してなる樹脂エマルション、水及び顔料を含み、塗膜の比重が1.0以上である水性塗料を塗装して防水塗膜層を形成する工程」を有しているのに対し、引用発明1は、断熱層の上にそのような防水塗膜層を形成する工程を有していない点。 (相違点4)遮熱塗膜層を形成する工程について、本件発明1は「防水塗膜層の上に、組成物中に含まれる顔料成分のうち、白色顔料を50質量%以上含み、塗膜の比重が1.0以上であって、形成塗膜の日射反射率が50%以上である上塗り遮熱塗料を塗装して」いるのに対し、引用発明1は、防水塗膜層を形成しておらず、遮熱機能を付加するための表面仕上層は、保護仕上層の上に形成されており、また、保護仕上層を形成する被覆用組成物は、太陽輻射反射材として、白色顔料を含み、全反射率が40%以上であるものの、組成物中に含まれる顔料成分のうちの白色顔料の含有割合は特定されておらず、また、塗膜の比重も特定がなされていない点。 (相違点5)本件発明1は「遮熱塗膜層を形成するための塗料の全顔料体積濃度が防水塗膜層を形成するための塗料の全顔料体積濃度より低い」のに対し、引用発明1は、防水塗膜層を形成しておらず、「遮熱塗膜層を形成するための塗料の全顔料体積濃度」と対比される「防水塗膜層を形成するための塗料の全顔料体積濃度」が存在しない点。 (2)相違点についての判断 ア.相違点3について 引用文献2には、上記「第4 2 引用文献2について」に記載した、引用文献2技術的事項が記載されている。引用文献2技術的事項は、断熱塗膜上に、耐水性を目的とした上塗り塗装を行なうものであるところ、「仕上り面の着色や光沢の付与、また高耐候性、耐水性、耐汚染性などを付与しうるもの」という点から、「上塗り塗装」は、最上面に設けられるものであると考えるのが自然である。 一方、引用発明1は、「防水層3」の上に「断熱層2」、「断熱層2」の上に「保護仕上層4’」、「保護仕上層4’」の上に「表面仕上層40」が順次積層して設けられるものであるから、引用発明1の積層構造の中間に位置する層である、「断熱層2」の上に、上記引用文献2技術的事項の、最上面に設けられる「上塗り塗装」を適用すること、引用発明1がすでに有している「防水層3」に加えて、さらに、前記「防水層3」と同じ機能を有する、引用文献2技術的事項の「耐水性」を有する「上塗り塗装」を採用すること、及び、「断熱層2」の上の「保護仕上層4’」に代えて、引用文献2技術的事項の「上塗り塗装」による層を形成すること、のいずれにも、動機付けがあるとはいえない。 イ. 効果について また本件発明は上記相違点に係る構成を有することにより、「断熱性や防水性等の性能を発揮しながら、積層塗膜の仕上がり外観が優れているという利点がある。また、本発明方法ではトップコートとして特定の顔料組成を有する遮熱塗膜層が設けられているので、良好な仕上がり外観を維持したまま、その下にある積層塗膜と防水材の太陽光による劣化を抑制することができる。」(段落【0010】参照)という効果を奏するものと認められるところ、このような効果は、引用発明1及び引用文献2技術的事項からは当業者が予測することができないものである。 ウ.小括 したがって、相違点3以外の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は当業者であっても引用発明1及び引用文献2技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。 そうすると、原査定を維持することはできない。 2 本件発明2ないし4について 本件発明2及び3は、本件発明1の全ての発明特定事項を有したうえで、所定の構成が限定されたものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。 本件発明4は、本件発明1の全ての発明特定事項を実質的に含む「塗装物品」であるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-03-17 |
出願番号 | 特願2015-17322(P2015-17322) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(E04D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 五十幡 直子 |
特許庁審判長 |
秋田 将行 |
特許庁審判官 |
小林 俊久 大塚 裕一 |
発明の名称 | 屋上防水断熱保護工法 |