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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H02M |
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管理番号 | 1361068 |
審判番号 | 不服2019-3656 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-18 |
確定日 | 2020-04-10 |
事件の表示 | 特願2016-110630「インバータ用制御電源供給装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月28日出願公開、特開2016-226283、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年6月2日(パリ条約による優先権主張2015年6月2日(以下,「優先日」という。),大韓民国)の出願であって,平成29年8月25日付けで拒絶理由通知がされ,平成29年11月29日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,平成30年4月24日付けで拒絶理由通知がされ,平成30年8月8日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,平成30年11月13日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成31年3月18日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和2年1月29日付けで拒絶理由通知がされ,令和2年2月3日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりのものである。 [理由1](特許法第36条第6項第1号)について (1)請求項3の「前記SMPS制御部は、電源が供給される場合、前記メモリーに保存された前記メインSMPS障害履歴があるか否かを照会し、前記メインSMPS障害履歴がある場合、前記メインSMPSの動作を中断し、前記補助SMPSを動作させる、」との記載の内容は,特に「前記メインSMPSの動作を中断し」との記載が,依然として,発明の詳細な説明に記載されたものとの対応をとることができない。 よって,請求項3,5-10に係る発明は,依然として,発明の詳細な説明に記載したものでない。 [理由2](特許法第36条第6項第2号)について (1)請求項8の「前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部にのみ前記定格電圧を供給するようにする第1モードを実行する、」との記載内容では,請求項1の「前記メインSMPSの動作が中断した場合に動作して前記インバータの前記制御部および前記補助回路部に前記定格電圧を提供する補助SMPSと、」との記載と,「前記定格電圧」を何に供給するのかが異なっているため,請求項1の前述の記載の内容と請求項8の前述の記載の内容とを合わせてみると,「前記定格電圧」を何に供給するのかを特定することができず,依然として明確でない。 (2)請求項9の「前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む最小定格電圧を供給するように動作する第2モードを実行する、」との記載の特に「インバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む最小定格電圧」という記載は,意味不明な記載であり,この補正後の記載の内容についても,依然として,真意が不明であり,明確でない。 (3)請求項10の「 前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源を含む最大定格電圧を供給するように動作する第3モードを実行する、」との記載の「最大定格電圧」とは,依然として,真意が不明であり,明確でない。 第3 当審拒絶理由の概要 当審における令和2年1月29日付け拒絶理由の概要は次のとおりである。 (サポート要件,明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 (1)請求項9の「前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のために必要となる最小の定格電圧を供給するように動作する第2モードを実行する」との記載は,「インバータ再起動のために必要となる最小の定格電圧」が具体的にどのような値の電圧を意味するのか不明確であるとともに,仮に文言どおりの意味と理解しても,同様の記載は発明の詳細な説明に記載されていない。 (2)請求項10の「前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のために必要となる最小の電圧に加えて、通信,FAN制御のための電源を含む主要な補助動作まで行う定格電圧を供給するように動作する第3モードを実行する」との記載は,「インバータ再起動のために必要となる最小の電圧」及び「通信,FAN制御のための電源を含む主要な補助動作まで行う定格電圧」が具体的にどのような値の電圧を意味するのか不明確であるとともに,仮に文言どおりの意味と理解しても,同様の記載は発明の詳細な説明に記載されていない。 第4 本願発明 本願請求項1-10に係る発明は,令和2年2月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 インバータの制御部および補助回路部に定格電圧を提供することができるメインSMPSと、 前記メインSMPSの動作が中断した場合に動作して前記インバータの前記制御部および前記補助回路部に前記定格電圧を提供することができる補助SMPSと、 前記メインSMPSの出力電圧を感知し、感知した感知電圧が正常範囲内にあるか否かを判断して、正常範囲でない場合、前記メインSMPSの動作を中断し、前記補助SMPSを動作させ、前記メインSMPSにSMPS障害が発生して前記補助SMPSを動作させたことを示すトリップ情報を前記制御部に伝達するSMPS制御部と、を含み、 前記SMPS制御部は、前記インバータのオンまたはオフの際に、前記インバータのDC‐リンク電圧が設定された電圧レベルより大きい場合にのみ前記メインSMPSの出力電圧を感知し、感知した感知電圧が正常範囲内にあるか否かを判断する、インバータ用制御電源供給装置。 【請求項2】 前記SMPS制御部は、前記感知電圧が正常範囲でない場合、メインSMPS障害履歴をメモリーに記録する、請求項1に記載のインバータ用制御電源供給装置。 【請求項3】 前記SMPS制御部は、電源が供給される場合、前記メモリーに保存された前記メインSMPS障害履歴があるか否かを照会し、前記メインSMPS障害履歴がある場合、前記補助SMPSを動作させる、請求項2に記載のインバータ用制御電源供給装置。 【請求項4】 前記設定された電圧レベルは、前記メインSMPSの動作電圧にマージン電圧を合算した電圧レベルである、請求項1に記載のインバータ用制御電源供給装置。 【請求項5】 前記インバータのDC‐リンクからの電圧を降圧して前記SMPS制御部に出力するダウンコンバータをさらに含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のインバータ用制御電源供給装置。 【請求項6】 前記メインSMPSおよび前記補助SMPSは、前記インバータのDC‐リンクから動作電圧の供給を受ける、請求項1から4のいずれか1項に記載のインバータ用制御電源供給装置。 【請求項7】 前記制御部は、前記SMPS制御部から受信したトリップ情報をユーザに表示する、請求項1から4のいずれか1項に記載のインバータ用制御電源供給装置。 【請求項8】 前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部にのみ前記定格電圧を供給するようにする第1モードを実行する、請求項1から4のいずれか1項に記載のインバータ用制御電源供給装置。 【請求項9】 前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む最小電源を供給するように動作する第2モードを実行する、請求項1から4のいずれか1項に記載のインバータ用制御電源供給装置。 【請求項10】 前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源を含む最大電源を供給するように動作する第3モードを実行する、請求項1から4のいずれか1項に記載のインバータ用制御電源供給装置。」 第5 当審における拒絶理由通知の理由についての判断 1 明確性違反(特許法第36条第6項第2号)について (1)請求項9における「インバータ再起動のため」に供給される電源に関する記載について 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。以下では,この観点に立ち請求項の記載について検討する。 令和2年2月3日付けの手続補正により,請求項9は「前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む最小電源を供給するように動作する第2モードを実行する」との記載となった。このうちの「インバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む最小電源」(下線は当審により付与,以下同様。)との記載は,発明の詳細な説明の 段落【0045】の「例えば、SMPS制御部140は、制御部14にトリップ情報を伝送し、補助SMPS130が制御部14および補助回路部15にインバータ10の再起動のためのゲート(Gate)駆動電源、I/O電源を含む最小電源を供給するように動作する第2モードを実行してもよい。」との記載,及び, 段落【0048】の「例えば、スタンダードクラスの製品では、インバータ動作では第2モードを実行し、補助SMPS130で最小限の電源である制御部14の電源、I/O、ゲートドライブ(Gate drive)電源のみを供給することでユーザがトリップ履歴の確認およびインバータの再起動まで行うように補助SMPS130を運用してもよい。」との記載 を参酌すれば,ユーザによるトリップ履歴の確認およびインバータの再起動を行うためには,少なくとも「ゲート(Gate)駆動電源、I/O電源」に電源を供給しておく必要があり,このような「ゲート(Gate)駆動電源、I/O電源」のみに供給される程度の容量の電源を指していると解することができ,また, 段落【0046】の「例えば、SMPS制御部140は、制御部14にトリップ情報を伝送し、補助SMPS130が制御部14および補助回路部15にインバータ10の再起動のためのゲート(Gate)駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源を含む最大電源を供給するように動作する第3モードを実行してもよい。」との記載に「最大電源」との用語があり,この場合の「最大電源」に相当する容量の電源との大小関係で「最小電源」と称していることが読み取れる。 そうすると,請求項9の「前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む最小電源を供給するように動作する第2モードを実行する」との記載のうち「インバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む最小電源」との記載は,発明の詳細な説明の記載を考慮することで,当業者であれば明確に把握でき,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。また,他に請求項9が不明確であるとする理由もない。 よって,令和2年2月3日付けの手続補正により請求項9の記載は明確となり,当審における拒絶理由は解消した。 (2)請求項10における「インバータ再起動のため」に供給される電源に関する記載について 令和2年2月3日付けの手続補正により,請求項10は「前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源を含む最大電源を供給するように動作する第3モードを実行する」との記載となった。このうちの「インバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源を含む最大電源」との記載は,発明の詳細な説明の 段落【0046】の「例えば、SMPS制御部140は、制御部14にトリップ情報を伝送し、補助SMPS130が制御部14および補助回路部15にインバータ10の再起動のためのゲート(Gate)駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源を含む最大電源を供給するように動作する第3モードを実行してもよい。」との記載,及び, 段落【0049】の「例えば、高信頼性が求められるプレミアムクラスの製品では第3モードを実行し、補助SMPS130で制御部14および補助回路部15にすべての電源を供給してTrip履歴の確認およびインバータの再起動、通信およびFAN起動などの主要補助動作まで行うように補助SMPS130を運用してもよい。」との記載 を参酌すれば,Trip履歴の確認,インバータの再起動,通信及びFAN起動などの主要補助動作まで行うためには,「ゲート駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源」に電源を供給しておく必要があり,このような「ゲート駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源」に供給される程度の容量の電源を指しているものと解することができ,また,上記(1)で引用した段落【0045】の記載に「最小電源」との用語があり,この場合の「最小電源」に相当する容量の電源との大小関係で「最大電源」と称していることが読み取れる。 そうすると,請求項10の「前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源を含む最大電源を供給するように動作する第3モードを実行する」との記載のうち「インバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源を含む最大電源」との記載は,発明の詳細な説明の記載を考慮することで,当業者であれば明確に把握でき,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。また,他に請求項10が不明確であるとする理由もない。 よって,令和2年2月3日付けの手続補正により請求項10の記載は明確となり,当審における拒絶理由は解消した。 2 サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)について (1)請求項9における「インバータ再起動のため」に供給される電源に関する記載について 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否か,また,発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下では,この観点に立ち請求項の記載について検討する。 上記1の(1)で検討のとおり,令和2年2月3日付けの手続補正により請求項9の記載は明確となり,この点において請求項9の記載が,発明の詳細な説明に記載されていないとはいえない。そして,請求項9の「SMPS制御部」は,「制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む最小電源を供給する」という構成を有するから,発明の詳細な説明の段落【0008】に記載された「インバータに安定した電源を供給するためのメインSMPSの出力電圧を感知し、感知した感知電圧が正常範囲でない場合、メインSMPSの動作を中断し、補助SMPSを動作させ、トリップ情報をインバータを制御する制御部に伝達するインバータ用制御電源供給装置を提供」するとの課題に対し,課題解決手段となりうるものである。 そうすると,請求項9の「前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む最小電源を供給するように動作する第2モードを実行する」との記載は,発明の詳細な説明に記載されているといえる。また,他に請求項9が発明の詳細な説明に記載されていないとする理由もない。 よって,令和2年2月3日付けの手続補正により請求項9の記載は発明の詳細な説明に記載されたものとなり,当審における拒絶理由は解消した。 (2)請求項10における「インバータ再起動のため」に供給される電源に関する記載について 上記1の(2)で検討のとおり,令和2年2月3日付けの手続補正により請求項10の記載は明確となり,この点において請求項10の記載が,発明の詳細な説明に記載されていないとはいえない。そして,請求項10の「SMPS制御部」は,「制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源を含む最大電源を供給する」という構成を有するから,発明の詳細な説明の段落【0008】に記載された「インバータに安定した電源を供給するためのメインSMPSの出力電圧を感知し、感知した感知電圧が正常範囲でない場合、メインSMPSの動作を中断し、補助SMPSを動作させ、トリップ情報をインバータを制御する制御部に伝達するインバータ用制御電源供給装置を提供」するとの課題に対し,課題解決手段となりうるものである。 そうすると,請求項10の「前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源を含む最大電源を供給するように動作する第3モードを実行する」との記載は,発明の詳細な説明に記載されているといえる。また,他に請求項10が発明の詳細な説明に記載されていないとする理由もない。 よって,令和2年2月3日付けの手続補正により請求項10の記載は発明の詳細な説明に記載されたものとなり,当審における拒絶理由は解消した。 第6 原査定についての判断 1 請求項3(特許法第36条第6項第1号)について 令和2年2月3日付けの手続補正により,請求項3は,「前記SMPS制御部は、電源が供給される場合、前記メモリーに保存された前記メインSMPS障害履歴があるか否かを照会し、前記メインSMPS障害履歴がある場合、前記補助SMPSを動作させる」と補正されたことで,「メインSMPSの動作を中断し」との記載が削除された。よって,原査定の理由である[理由1](特許法第36条第6項第1号)は解消された。 2 請求項8(特許法第36条第6項第2号)について 平成31年3月18日付けの手続補正により,請求項1は,「前記メインSMPSの動作が中断した場合に動作して前記インバータの前記制御部および前記補助回路部に前記定格電圧を提供することができる補助SMPS」と補正されたことで,請求項8の「前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部にのみ前記定格電圧を供給するようにする第1モードを実行する」との記載との間で,「補助SMPS」が「定格電圧」を実際に供給する対象について整合がとれることとなった。よって,原査定の理由である[理由2]の(1)(特許法第36条第6項第2号)は解消された。 3 請求項9(特許法第36条第6項第2号)について 上記第5の1(1)のとおり,令和2年2月3日付けの手続補正により請求項9の記載は明確となった。なお,原査定の上記第2の[理由2]の(2)は,平成30年4月24日付けの拒絶理由通知における 『 請求項9には、「前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む最小電源を供給するように動作する第2モードを実行する、」 と記載されている・・・(中略)・・・この記載は、「前記SMPS制御部」は、「前記制御部」「インバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む最小電源」を供給するように動作し、かつ、「前記補助回路部」に「インバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む最小電源」を供給するように動作する、と解釈できる。』 との記載を前提とするものと解されるが,上記拒絶理由通知の対象となった平成29年11月29日付けの手続補正における請求項9の記載からは,「補助SMPS」が,「前記制御部および前記補助回路部」に「インバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む最小電源を供給する」と自然に理解できるから,上記平成29年11月29日付けの手続補正における請求項9と同様の記載である令和2年2月3日付けの手続補正における請求項9の記載となっていることで,原査定の理由である[理由2]の(2)(特許法第36条第6項第2号)に理由はなく,この点において原査定は維持できないことになる。 4 請求項10(特許法第36条第6項第2号)について 上記第5の1(2)のとおり,令和2年2月3日付けの手続補正により請求項10の記載は明確となった。なお,原査定の上記第2の[理由2]の(3)は,平成30年4月24日付けの拒絶理由通知における 『 請求項10には、「 前記SMPS制御部は、前記制御部に前記トリップ情報を伝送し、前記補助SMPSが前記制御部および前記補助回路部にインバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源を含む最大電源を供給するように動作する第3モードを実行する、」 と記載されている・・・(中略)・・・この記載は、「前記SMPS制御部」は、「前記制御部」に「インバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源を含む最大電源」を供給するように動作し、かつ、「前記補助回路部」に「インバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源を含む最大電源」を供給するように動作する、と解釈できる。』 との記載を前提とするものと解されるが,上記拒絶理由通知の対象となった平成29年11月29日付けの手続補正における請求項10の記載からは,「補助SMPS」が,「前記制御部および前記補助回路部」に「インバータ再起動のためのゲート駆動電源、I/O電源を含む電源と、通信、FAN制御のための電源を含む最大電源を供給する」と自然に理解できるから,上記平成29年11月29日付けの手続補正における請求項10と同様の記載である令和2年2月3日付けの手続補正における請求項10の記載となっていることで,原査定の理由である[理由2]の(3)(特許法第36条第6項第2号)に理由はなく,この点において原査定は維持できないことになる。 第7 むすび 以上のとおり,本願請求項1-10に係る発明は,明確であり,また,発明の詳細な説明に記載されたものである。 したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-03-31 |
出願番号 | 特願2016-110630(P2016-110630) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H02M)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 白井 孝治 |
特許庁審判長 |
田中 秀人 |
特許庁審判官 |
山澤 宏 仲間 晃 |
発明の名称 | インバータ用制御電源供給装置 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 関根 毅 |