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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1361104 |
審判番号 | 不服2019-3660 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-18 |
確定日 | 2020-03-26 |
事件の表示 | 特願2017-227537号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月22日出願公開、特開2018- 27425号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年11月28日の出願であって、平成30年4月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年同月10日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年9月11日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月12日付け(送達日:同年同月25日)で、同年9月11日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、平成31年3月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、令和1年11月7日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年1月6日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願請求項1に係る発明は、令和2年1月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の事項により特定されるとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、分説してAないしFの符号を付与すると、次のとおりのものである。 「【請求項1】 A 複数種類の画像を表示可能な表示手段を備えた遊技機であって、 B 前記複数種類の画像のうちの一つは、後に遊技者にとって有利な遊技状態になることを示唆する第1の画像であり、 C 前記複数種類の画像のうちの一つは、第2の画像であり、 D 前記第1の画像は、ローマ字のVを表す立体形状の図形が回転をしている状態を表すように形状が変化し、前記立体形状の図形の形状自体が後に遊技者にとって有利な遊技状態になることを表しており、 E 前記第2の画像は、回転する前記Vを表す立体形状の図形の一方の側の前面であって、前記Vの文字の中央を覆うように位置する平板形状の図形を表しており、前記立体形状の図形の回転とともに前記平板形状の図形が回転している状態を表すように形状が変化するものであり、 F 前記立体形状の図形の回転によって、前記第1の画像と前記第2の画像との両方が視認可能な第1の表示と、前記第1の画像が視認可能であり、前記第2の画像が視認できない第2の表示と、を交互に繰り返す演出を実行可能な A ことを特徴とする遊技機。」 第3 令和1年11月7日付け拒絶理由の概要 当審による令和1年11月7日付け拒絶理由の概要は、請求項1に係る発明に対する拒絶理由を含むものであって、以下のとおりのものである。 理由1:この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用例1:特開2016-195727号公報 引用例2:特開2004-321483号公報 第4 引用例に記載された事項及び引用発明 1 引用例1 (1) 記載事項 当審における拒絶理由に引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2016-195727号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。 引1-ア 「【0005】 ・・・本発明の目的は、特別図柄の変動表示中に行われる演出の興趣性を高めることが可能な遊技機を提供することである。」 引1-イ 「【発明の効果】 【0008】 この発明によれば、特別図柄の変動表示中に行われる演出の興趣性を高めることが可能である。」 引1-ウ 「【発明を実施するための形態】 【0010】 以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の遊技機の一実施形態に係るパチンコ遊技機1について説明する。 【0011】 [パチンコ遊技機1の概略構成例] まず、図1?図3を参照しつつ、パチンコ遊技機1の概略構成について説明する。ここで、図1は、パチンコ遊技機1の概略正面図である。図2は、パチンコ遊技機1の一部を示す平面図である。図3は、図1における表示器4の拡大図である。」 引1-エ 「【0026】 [パチンコ遊技機1の演出手段の構成例] 図1に例示されるように、遊技盤2又は枠部材3には、各種の演出を行うものとして、液晶表示装置5、スピーカ24、盤ランプ25、センターランプ30等が設けられている。また、図1には示されていないが、遊技盤2には、第1演出役物71?第3演出役物73(図19参照)が設けられており、枠部材3には、枠ランプ37(図19参照)が内蔵されている。 【0027】 液晶表示装置5は、演出画像を表示する画像表示装置であり、液晶表示装置5の表示画面は、遊技者によって視認され易い位置に設けられている。この表示画面には、例えば、特別図柄判定の判定結果を報知する装飾図柄、予告演出などを行うキャラクタやアイテム、特別図柄判定が保留されている数だけ表示される保留表示画像(保留アイコン)等の各種表示オブジェクトを含む演出画像が表示される。なお、画像表示装置は、EL表示装置等の他の画像表示装置によって構成されてもよい。」 引1-オ 「【0157】 また、第1始動口11への入賞に基づいて大当たりと判定された場合、図柄乱数の乱数値として、「45」?「99」の55個の乱数値が長開放当たりに対応付けられている。このため、55%(=55/100)の割合で長開放当たりとなる。後に詳述するが、第1特別図柄表示器41に大当たり図柄Bが停止表示されて長開放当たりになると、所定条件を満たすまで第2大入賞口19が長開放される長開放ラウンド遊技を含む大当たり遊技が行われると共に、所定期間中に遊技球がV領域195を通過したこと(V入賞)を条件として、大当たり遊技終了後に確変遊技状態で遊技が制御される。」 引1-カ 「【0239】 [長開放当たりにおける演出の具体例] 次に、図18を参照しつつ、第1始動口11への入賞に基づく長開放当たりにおける演出の具体例について説明する。ここで、図18は、長開放当たりにおける演出の具体例について説明するための画面図である。 【0240】 第1始動口11への入賞に基づいて長開放当たりになると、大当たり遊技が開始される。大当たり遊技中には、短開放当たりとなった場合と同様に、遊技者に右打ちを促す右打ち画像と、現在行われているラウンド数を示すラウンド画像と、今回の大当たり遊技中に払い出しが指示された合計賞球数(単位はt)を示す出玉数画像とが表示される。 【0241】 その後、短開放当たりとなった場合と同様に、13R目のラウンド遊技の開始に伴ってゲーム演出が実行され、ゲーム演出におけるボタン押下演出が行われる(図18(A)参照)。このため、遊技者は、今回の大当たりが短開放当たりであるか長開放当たりであるかを未だ判断することはできない。なお、13R目のラウンド遊技が行われることによってオーバー入賞すると、オーバー入賞に伴ってオーバー入賞音が出力される。図18(A)は、13R目のラウンド遊技終了後におけるインターバル期間を例示しているため、ラウンド画像として「13R」の文字が表示されており、第1大入賞口13及び第2大入賞口19は閉塞している。なお、出玉数画像として、8R目のラウンド遊技によって2回、9R目?13R目のラウンド遊技によって1回ずつオーバー入賞した場合の合計賞球数である「854t」が表示される。 【0242】 ゲーム演出が終了すると、14R目のラウンド遊技の開始に伴い、結果報知演出(成功報知)が行われる。図18(B)は、14R目のラウンド遊技が行われることによってオーバー入賞が1回されたタイミングを例示している。すなわち、14R目のラウンド遊技が終了した後のインターバル期間であるため、ラウンド画像として「14R」の文字が表示されており、第1大入賞口13及び第2大入賞口19は閉塞している。なお、オーバー入賞に伴ってオーバー入賞音は出力されない(図16(B)参照)。また、出玉数画像として、8R目のラウンド遊技によって2回、9R目?14R目のラウンド遊技によって1回ずつオーバー入賞した場合の合計賞球数である「994t」が表示される。 【0243】 14R目のラウンド遊技が終了すると、15R目のラウンド遊技の開始に伴い、V領域195(第2大入賞口19)への遊技球の打ち出しを促すV入賞前報知演出が行われる。図18(C)は、15R目のラウンド遊技においてV領域195が開放される前の状態を例示している。このため、ラウンド画像として「15R」の文字が表示されており、第1大入賞口13は閉塞し、第2大入賞口19は長開放している。なお、V領域195の開放前であるため、V入賞はしていない。また、出玉数画像として、現在までに払い出し指示が行われた合計賞球数である「1022t」が表示される。 【0244】 その後、V領域195が開放されてV入賞すると、V入賞前報知演出が終了するのに伴い、大当たり遊技終了後の確変遊技状態への移行が確定したことを報知するV入賞報知演出が実行される。このV入賞報知演出は、15R目のラウンド遊技終了後に行われる16R目のラウンド遊技終了後のエンディング期間開始時まで行われる。V入賞報知演出では、「V」といったV入賞を報知するV入賞報知画像が表示画面に表示されると共に、V入賞音がスピーカ24から出力される。図18(D)は、15R目のラウンド遊技が行われることによってオーバー入賞が1回されたタイミングを例示している。すなわち、15R目のラウンド遊技が終了した後のインターバル期間であるため、ラウンド画像として「15R」の文字が表示されており、第1大入賞口13及び第2大入賞口19は閉塞している。なお、オーバー入賞に伴ってオーバー入賞音は出力されない(図16(B)参照)。また、出玉数画像として、8R目のラウンド遊技によって2回、9R目?15R目のラウンド遊技によって1回ずつオーバー入賞した場合の合計賞球数である「1134t」が表示される。 【0245】 そして、15R目の長開放ラウンド遊技が終了すると、16R目のラウンド遊技が開始される。図18(E)は、16R目のラウンド遊技が行われることによってオーバー入賞が1回されたタイミングを例示している。すなわち、16R目のラウンド遊技が終了した直後であるため、第1大入賞口13及び第2大入賞口19は閉塞している。しかしながら、いまだ確変移行エンディング演出が開始されていないため、表示画面にはV入賞報知画像やラウンド画像(「16R」の文字)等が表示されている。なお、オーバー入賞に伴ってオーバー入賞音は出力されない(図16(B)参照)。また、出玉数画像として、8R目のラウンド遊技によって2回、9R目?16R目のラウンド遊技によって1回ずつオーバー入賞した場合の合計賞球数である「1274t」が表示される。 【0246】 そして、16R目のラウンド遊技終了後の今回の大当たり遊技のエンディング期間において、確変遊技状態への移行を報知する確変移行エンディング演出が行われる(図18(F)参照)。確変移行エンディング演出の序盤において、表示画面の上方に出玉数画像が表示され、今回の大当たり遊技中に払い出しが指示された合計賞球数「1274t」が表示される。また、確変遊技状態に移行することを示す演出画像(例えば、NEXTという演出画像)等が表示画面に表示される。 【0247】 確変移行エンディング演出が行われて大当たり遊技が終了すると、確変遊技状態に移行することになる。このため、右打ち画像が所定期間表示され、第2特別図柄の変動開始に応じて装飾図柄51の変動表示が開始される(図18(G)参照)。」 引1-キ 「図1 」 引1-ク 「図18 」 (2) 認定事項 引1-クに示した図18(D)及び(E)を参照すると、V入賞報知画像は、立体的に表現された「V」の文字が垂直軸まわりに回転するものであることが認定できる。 (3) 引用発明1 上記引1-アないし引1-クに摘記した引用例1の記載、及び、上記認定事項を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。なお、aないしdの符号は、本願発明に付したAないしDの符号に対応させて、当審にて付与した。また、括弧内に示された段落番号は引用例1における引用箇所を示すものである。 「a 画像表示装置である液晶表示装置5が設けられたパチンコ遊技機1であって、液晶表示装置5の表示画面には、各種表示オブジェクトを含む演出画像が表示され(【0010】、【0026】、【0027】、図1)、 b 所定期間中に遊技球がV領域195を通過したこと(V入賞)を条件として、大当たり遊技終了後に確変遊技状態で遊技が制御され(【0157】)、V入賞すると、大当たり遊技終了後の確変遊技状態への移行が確定したことを報知するV入賞報知画像が液晶表示装置5に表示されるV入賞報知演出が実行され(【0244】)、 d V入賞報知画像は、立体的に表現された「V」の文字が垂直軸まわりに回転するものである(【0244】、図18)、 a パチンコ遊技機1。」 2 引用例2 (1) 記載事項 当審における拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2004-321483号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。 引2-ア 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上述したような従来の遊技機においては、識別情報を示す画像を中心とした回転表示のみによる演出しか行なうことができないため、識別情報による変動演出が遊技者にとって単調なものとなってしまい遊技を興醒めさせてしまう要因となっていた。・・・。 【0006】 この発明は、かかる実情に鑑み考えだされたものであり、その目的は、特にリーチ演出表示などにおいて、データ量を増加させることなく多様化した変動表示演出を行なうことのできる遊技機を提供することである。」 引2-イ 「【0086】 次に、図4は、図柄表示装部9において特別図柄を縦軸回転表示させ変動表示する回転表示制御に用いられるスプライトデータを説明するための図である。 【0087】 図4(a)は、図柄単位で回転表示制御するときに用いられるスプライトデータを説明するための図である。なお、回転表示とは、図柄表示部9に表示されている特別図柄自体を回転させて表示するものである。図柄単位での回転表示とは、識別情報と装飾情報とを一体化した1つの図柄として、図柄全体を単位として、回転表示を行なうものである。 【0088】 具体例でいうと、図柄表示部9に表示されている確変図柄「七」(第1図柄)が、大きく表示された数字「七」(第1識別情報)と小さく表示された鈴の絵(第2装飾情報)とを一体化した1つの図柄として、図柄全体を単位として、その図柄の上下方向の中心線を回転軸として左まわりに回転する図柄をその図柄表示部上に投射した平面図で表示し、この図柄全体を一体として左まわりに回転している様子を表示するものである。」 引2-ウ 「図4(a) 」 (2) 認定事項 上記引2-ウに示した図4(a)に記載された態様は、大きく表示された数字「七」を表す立体形状の図形の一方の側の前面に位置するように小さく表示された鈴の絵を表し、数字「七」と、鈴の絵との両方が視認可能な状態と、数字「七」が視認可能であり、鈴の絵が視認困難な状態を交互に繰り返していることが見て取れる。 (3) 引用例2記載事項 してみると、引用例2には、 「遊技機において、確変図柄「七」が、大きく表示された数字「七」を表す立体形状の図形の一方の側の前面に位置するように小さく表示された鈴の絵とを一体化した1つの図柄として、図柄全体を単位として、その図柄の上下方向の中心線を回転軸として左まわりに回転する図柄をその図柄表示部上に投射した平面図で表示し、この図柄全体を一体として左まわりに回転させ、数字「七」と、鈴の絵との両方が視認可能な状態と、数字「七」が視認可能であり、鈴の絵が視認困難な状態を交互に繰り返して表示させる表示態様としたこと」(以下、「引用例2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 第5 対比 1 引用発明1と本願発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(d)は、本願発明のAないしDに対応させている。 (a) 引用発明1の特定事項aにおいて、「各種表示オブジェクトを含む演出画像が表示され」る「液晶表示装置5」が、複数種類の画像を表示可能であることは、当業者にとって明らかであるから、引用発明1における「各種表示オブジェクトを含む演出画像が表示され」る「液晶表示装置5」は、本願発明の「複数種類の画像を表示可能な表示手段」に相当する。 そして、引用発明1の「各種表示オブジェクトを含む演出画像が表示され」る「液晶表示装置5が設けられたパチンコ遊技機1」は、本願発明の「複数種類の画像を表示可能な表示手段を備えた遊技機」に相当する。 (b) 引用発明1の特定事項bにおける「大当たり遊技終了後の確変遊技状態」は、遊技者にとって有利な遊技状態であることは当業者にとって明らかであるから、本願発明の「遊技者にとって有利な遊技状態」に相当する。 また、引用発明1の特定事項bにおける「V入賞報知画像」は、「大当たり遊技終了後の確変遊技状態への移行が確定したことを報知する」ための画像であり、本願発明の「第1の画像」は、「後に遊技者にとって有利な遊技状態になることを示唆する」画像であるから、引用発明1の「V入賞報知画像」は、本願発明の「第1の画像」に相当する。 (d) 引用発明1の特定事項dにおける「V入賞報知画像」が「立体的に表現された「V」の文字が垂直軸まわりに回転する」ものであることは、本願発明における「第1の画像」が「ローマ字のVを表す立体形状の図形が回転をしている状態を表すように形状が変化」するものであることに相当する。 また、引用発明1における「立体的に表現された「V」の文字」が、その形状自体が後に遊技者にとって有利な遊技状態になることを表すものであることは、当業者にとって明らかであるから、引用発明1の「V入賞報知画像」が「立体的に表現された「V」の文字が垂直軸まわりに回転するものである」ことは、本願発明の「第1の画像は、ローマ字のVを表す立体形状の図形が回転をしている状態を表すように形状が変化し、前記立体形状の図形の形状自体が後に遊技者にとって有利な遊技状態になることを表」すことに相当する。 2 上記1からみて、本願発明と引用発明1とは、 「A 複数種類の画像を表示可能な表示手段を備えた遊技機であって、 B 前記複数種類の画像のうちの一つは、後に遊技者にとって有利な遊技状態になることを示唆する第1の画像であり、 D 前記第1の画像は、ローマ字のVを表す立体形状の図形が回転をしている状態を表すように形状が変化し、前記立体形状の図形の形状自体が後に遊技者にとって有利な遊技状態になることを表している A 遊技機。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点(特定事項C、E、F) 本願発明は、表示手段に表示可能な画像として、第1の画像のほかに第2の画像があり、前記第2の画像は、ローマ字のVを表す回転する立体形状の図形の一方の側の前面であって、前記Vの文字の中央を覆うように位置する平板形状の図形を表しており、前記立体形状の図形の回転とともに前記平板形状の図形が回転している状態を表すように形状が変化するものであり、前記立体形状の図形の回転によって、前記第1の画像と前記第2の画像との両方が視認可能な第1の表示と、前記第1の画像が視認可能であり、前記第2の画像が視認できない第2の表示と、を交互に繰り返す演出を実行可能であるのに対して、引用発明1では、そのような特定がされていない点。 第6 検討・判断 1 相違点についての検討 (1) 引用発明1に引用例2記載事項を適用する動機付けについて 引用例2には、上記「第4 引用例に記載された事項及び引用発明」2(3)のとおり、引用例2記載事項が記載されている。 ここで、引用発明1に引用例2記載事項を適用する動機付けの有無について以下に検討すると、引用発明1、引用例2記載事項のいずれも、遊技機の画像の表示手段において回転する立体形状の図形を用いた演出という点で技術分野が共通しており、ともに、演出の興趣性を高めることを目的とするものであることは明らかであり、さらに、引用例2記載事項は、引2-アに示したように、「従来の遊技機においては、識別情報を示す画像を中心とした回転表示のみによる演出しか行なうことができないため、識別情報による変動演出が遊技者にとって単調なものとなってしまい遊技を興醒めさせてしまう要因となっていた」ことから、「多様化した変動表示演出を行なうことのできる遊技機を提供すること」を発明が解決しようとする課題とするものであり、引用発明1は、画像表示装置において「回転表示のみによる演出」を行うものであるから、引用発明1に引用例2記載事項を適用することは、遊技者を興醒めさせないために、多様化した演出を行うという観点において、十分な動機付けが存在するものと認められる。 してみると、引用発明1に引用例2記載事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たものといえる。 (2) 引用例2記載事項と本願発明の相違点に係る構成との対比 引用例2記載事項と本願発明の相違点に係る構成とを対比する。 ア 引用例2記載事項における「数字「七」を表す立体形状の図形」、「数字「七」を表す立体形状の図形の一方の側の前面に位置するように小さく表示された鈴の絵」は、それぞれ、本願発明の相違点に係る構成の「立体形状の図形」を表す「第1の画像」、「立体形状の図形の一方の側の前面」「に位置する」「第2の画像」に相当する。 イ 引用例2記載事項における「大きく表示された数字「七」を表す立体形状の図形の一方の側の前面に位置するように小さく表示された鈴の絵とを一体化した1つの図柄として、図柄全体を単位として、その図柄の上下方向の中心線を回転軸として左まわりに回転する」ことにおいて、「数字「七」を表す立体形状の図形」も、一体化した1つの図柄として、「鈴の絵」とともに「左まわりに回転」していることは明らかであるから、「数字「七」を表す立体形状の図形」が「左まわりに回転」することは、本願発明の相違点に係る構成の「立体形状の図形」が「回転する」ことに相当する。 ウ 引用例2記載事項における「小さく表示された鈴の絵」と、本願発明の相違点に係る構成の「平板形状の図形」とは、所定の形状の図形である点で一致する。 エ 引用例2記載事項において、「図柄の上下方向の中心線を回転軸として左まわりに回転する図柄をその図柄表示部上に投射した平面図で表示し、この図柄全体を一体として左まわりに回転させ」た場合において、図柄表示部上に投射した平面図における図柄の形状が変化することは、当業者にとって明らかであるから、引用例2記載事項における「大きく表示された数字「七」を表す立体形状の図形の一方の側の前面に位置するように小さく表示された鈴の絵とを一体化した1つの図柄として、図柄全体を単位として、その図柄の上下方向の中心線を回転軸として左まわりに回転する図柄をその図柄表示部上に投射した平面図で表示し、この図柄全体を一体として左まわりに回転させ」ることと、本願発明の相違点に係る構成の「前記立体形状の図形の回転とともに前記平板形状の図形が回転している状態を表すように形状が変化する」こととは、「前記立体形状の図形の回転とともに」所定の「形状の図形が回転している状態を表すように形状が変化する」ことである点で一致する。 オ 引用例2記載事項における「数字「七」と、鈴の絵との両方が視認可能な状態」は、本願発明の相違点に係る構成の「前記第1の画像と前記第2の画像との両方が視認可能な第1の表示」に相当する。 カ 引用例2記載事項における「数字「七」が視認可能であり、鈴の絵が視認困難な状態」と、本願発明の相違点に係る構成の「前記第1の画像が視認可能であり、前記第2の画像が視認できない第2の表示」とは、「前記第1の画像が視認可能であり、前記第2の画像が」第1の表示よりも視認が困難又は不可能な「第2の表示」である点で一致する。 キ 引用例2記載事項における「この図柄全体を一体として左まわりに回転させ、数字「七」と、鈴の絵との両方が視認可能な状態と、数字「七」が視認可能であり、鈴の絵が視認困難な状態を交互に繰り返して表示させる」ことと、本願発明の相違点に係る構成の「前記立体形状の図形の回転によって、前記第1の画像と前記第2の画像との両方が視認可能な第1の表示と、前記第1の画像が視認可能であり、前記第2の画像が視認できない第2の表示と、を交互に繰り返す演出を実行可能である」こととは、「前記立体形状の図形の回転によって、前記第1の画像と前記第2の画像との両方が視認可能な第1の表示と、前記第1の画像が視認可能であり、前記第2の画像が」第1の表示よりも視認が困難又は不可能な「第2の表示と、を交互に繰り返す演出を実行可能である」点で一致する。 (3) 引用発明1に引用例2記載事項を適用した発明との対比・検討 上記(1)のとおり、引用発明1に引用例2記載事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たといえるところ、その結果得られるパチンコ遊技機は、本願発明の相違点に係る構成における以下の構成を満たすことになる。 「表示手段に表示可能な画像として、第1の画像のほかに第2の画像があり、前記第2の画像は、ローマ字のVを表す回転する立体形状の図形の一方の側の前面に位置する所定の形状の図形を表しており、前記立体形状の図形の回転とともに前記所定の形状の図形が回転している状態を表すように形状が変化するものであり、前記立体形状の図形の回転によって、前記第1の画像と前記第2の画像との両方が視認可能な第1の表示と、前記第1の画像が視認可能であり、前記第2の画像が、前記第1の表示よりも視認が困難又は不可能な第2の表示と、を交互に繰り返す演出を実行可能である点。」 そして、引用発明1に引用例2記載事項を適用した発明は、本願発明の相違点に係る構成における、以下の(ア)ないし(ウ)に示す点を有していない。 (ア) 第2の画像がVの文字の中央を覆うように位置するものである点。 (イ) 第2の画像として表された所定の形状の図形が、平板形状の図形である点。 (ウ) 第2の表示が、第2の画像が視認できないものである点。 そこで、上記(ア)ないし(ウ)の点について検討する。 (ア)について 第1の図柄であるローマ字のVを表す立体形状の図形に対して、第2の図柄を付加する場合において、その図柄を立体形状のVの文字に対してどのように付加するかは、意匠性を勘案して当業者が適宜定めるものであり、第2の画像がVの文字の中央を覆うように位置させたことに基づく作用効果も当業者が予測できる範囲を超えるほどのものとは認められない。 (イ)について 表示装置上で二次元画像として表される第2の図柄の形状をどのようにするかも、意匠性を勘案して当業者が適宜定めるものであり、その形状を平板形状と特定したことに基づく作用効果も当業者が予測できる範囲を超えるほどのものとは認められない。 (ウ)について 第2の表示の状態において、第2の画像を全く視認できないものとするか、視認が困難ではあるがわずかに視認できるものとするかも、程度問題のことにすぎないとともに、意匠性を勘案して当業者が適宜定めるものであり、「視認できないもの」とすることによって、当業者が予測できる範囲を超えるほどの作用効果をもたらし得るとは認められない。 してみると、上記(ア)ないし(ウ)の点は、いずれも、演出を行うにあたって、意匠性を勘案して当業者が適宜定めるものであって、それらの構成を採用したことによって、当業者が予測できる範囲を超えるほどの作用効果をもたらし得るとは認められない。 (4) 本願発明の奏する作用効果について 本願発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用例2記載事項に基づき、当業者が予測できる範囲のものであり、格別なものではない。 2 令和2年1月6日付け意見書における請求人の主張への反論 (1) 請求人は、令和2年1月6日付け意見書の「4 本願発明が特許されるべき理由」において、請求項1に係る発明を、以下の構成[1]ないし[6]を備えるものと認定している。 「構成[1] 複数種類の画像を表示可能な表示手段を備える点 構成[2]前記複数種類の画像のうちの一つは、後に遊技者にとって有利な遊技状態になることを示唆する第1の画像である点 構成[3]前記複数種類の画像のうちの一つは、第2の画像である点 構成[4]前記第1の画像は、ローマ字のVを表す立体形状の図形が回転をしている状態を表すように形状が変化し、前記立体形状の図形の形状自体が後に遊技者にとって有利な遊技状態になることを表している点 構成[5]前記第2の画像は、回転する前記Vを表す立体形状の図形の一方の側の前面であって、前記Vの文字の中央を覆うように位置する平板形状の図形を表しており、前記立体形状の図形の回転とともに前記平板形状の図形が回転している状態を表すように形状が変化するものである点 構成[6]前記立体形状の図形の回転によって、前記第1の画像と前記第2の画像との両方が視認可能な第1の表示と、前記第1の画像が視認可能であり、前記第2の画像が視認できない第2の表示と、を交互に繰り返す演出を実行可能な点」 そして、「構成[1]?[6]を有する本願請求項1に係る発明(本願発明)によれば、遊技者に斬新な演出を印象づけることができるため、興趣の向上を図ることができます(本願:明細書段落0537)。」と主張し、「仮に、当業者が、引用発明に引用文献2の構成を組み合わせたとしても、構成[5]および構成[6]を有する本願発明を想到し得ないことは明らかです。」と主張している。 そこで、上記の主張について検討すると、構成[5]は、上記1(3)における(ア)及び(イ)に示した構成であり、構成[6]は、上記1(3)における(ウ)に示した構成であるところ、請求人の主張のとおり、それらの構成は、引用例1及び引用例2には記載されてはいないが、その判断については、上記1(3)に示したとおりであり、いずれも、演出を行うにあたって、意匠性を勘案して当業者が適宜定めるものであって、それらの構成を採用したことによって、当業者が予測できる範囲を超えるほどの作用効果をもたらし得るとは認められない。 (2) 請求人は、「引用文献1のV入賞報知画像のように、後に遊技者にとって有利な遊技状態になることを示唆する画像は、表示の優先順位が高いため、V入賞報知画像の前面に他の画像を表示することを当業者であれば避けようとします。よって、引用文献1のV入賞報知画像に対して、引用文献2の図柄に関する演出を組み合わせることについては、明らかに技術的な阻害要因が存在します。」と主張している。 しかしながら、引用文献1のV入賞報知画像が一般的に表示の優先順位が高いものであったとしても、V入賞報知画像の前面に他の画像を表示することが技術的に不可能なものではなく、また、遊技機の技術分野においては、多様な興趣性を実現する観点から、遊技者に対する示唆画像の前面に他の画像を表示することによって意外性を実現することが当業者により普通に行われていることを勘案すると、V入賞報知画像の前面に他の画像を表示することに関して阻害要因が存在するとは認められない。 (3) 請求人は、「引用文献2では、図柄単位が中図柄として上から下にスクロール表示しているときに回転表示されます。拒絶理由通知書では、この一連の演出から、恣意的に、上から下にスクロール表示するという要件を捨象し、回転表示することのみを抽出し、引用文献1に適用しようとしています。このような恣意的な解釈は認められません。仮に、当業者が引用発明に引用文献2の構成を組み合わせたとしても、引用文献1の図柄を引用文献2のように回転させることを想到すると考えるのが自然であり、本願発明を想到し得ません。」と主張している。 しかしながら、上記1(1)において検討したように、引用例2記載事項は、「従来の遊技機においては、識別情報を示す画像を中心とした回転表示のみによる演出しか行なうことができな」かったことから、「多様化した変動表示演出を行なうことのできる遊技機を提供すること」を課題とするものであり、その観点に基づくと、「一連の演出から、恣意的に、上から下にスクロール表示するという要件を捨象し、回転表示することのみを抽出し」たものではなく、引用例2記載事項は、「回転表示」を行うための構成に、課題を解決するための特徴的な構成を備えるものであり、請求人の上記の主張は採用できない。 (4) 請求人は、「上述のように、引用文献1のV入賞報知画像は、表示の優先順位が高いため、当業者がこれらの条件を総合的に勘案した場合、「V入賞報知画像」のVの文字の中央を覆うように、他の画像を配置するような構成は避けようとします。これらのことからも、当業者は引用文献1、2から、構成[5]および構成[6]を有する本願発明を想到し得ないことは明らかです。」と主張している。 しかしながら、上記(2)においても指摘したことに加えて、V入賞報知画像の表示が遊技者への示唆を目的とし、優先順位の高いものである場合に、他の画像の表示によってVの文字の大部分を覆い隠し、遊技者への示唆の目的を果たせなくなってしまう構成であれば、請求人が主張するように、当業者は他の画像を配置するような構成を避けようとすると考えられるが、装飾や強調を目的とした、Vの文字の一部を覆う程度の表示であれば、興趣性の観点に基づき当業者が適宜なし得ることであり、その一例として、装飾や強調を目的とした他の画像を表示する場合におけるVの文字の示唆内容を損なわない表示位置として、Vの文字の中央を覆う位置を選択することは、意匠性を勘案した単なる設計的事項であるから、当業者であれば「「V入賞報知画像」のVの文字の中央を覆うように、他の画像を配置するような構成は避けようとし」、「当業者は引用文献1、2から、構成[5]および構成[6]を有する本願発明を想到し得ない」との請求人の主張は採用できない。 したがって、上記(1)ないし(4)において検討したように、請求人の意見書における上記の主張を参酌しても、本願発明が格別な進歩性を有するものとは認められない。 第7 結語 以上のとおり、本願発明は、引用発明1に、引用例2記載事項を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-01-27 |
結審通知日 | 2020-01-28 |
審決日 | 2020-02-10 |
出願番号 | 特願2017-227537(P2017-227537) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 辻野 安人 |
特許庁審判長 |
鉄 豊郎 |
特許庁審判官 |
田邉 英治 ▲高▼橋 祐介 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 田邊 淳也 |