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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1361110
審判番号 不服2019-10079  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-31 
確定日 2020-03-26 
事件の表示 特願2014- 89126「表示画像生成装置、表示制御プログラム、および記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月19日出願公開、特開2015-205128〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月23日の出願であって、平成30年3月14日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月11日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月29日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年12月25日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成31年4月23日付けで、平成30年12月25日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、令和1年7月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和1年7月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年7月31日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成30年5月11日に提出された手続補正書(平成30年12月25日付け手続補正は却下されている。)により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。)。

(本件補正前)
「【請求項1】
1つ以上のオブジェクトが配置された仮想空間を生成し、所定の視点から見た上記仮想空間の視界を表示画像として表示する表示画像生成装置であって、
上記仮想空間内に配置された上記オブジェクトが、上記仮想空間内における基準点からの距離が第1の所定値以下である出現範囲内に含まれるか否かを判定する位置判定手段と、
上記視界内にある上記オブジェクトのうち、上記位置判定手段によって、上記出現範囲内に含まれると判定されたオブジェクトを表示する一方、上記出現範囲内に含まれないと判定されたオブジェクトを表示しない表示制御手段と、
を備え、
上記出現範囲内に含まれないと判定された上記オブジェクトが上記基準点の移動によって、上記出現範囲内に含まれると判定された場合に上記表示制御手段は上記オブジェクトを表示する
ことを特徴とする表示画像生成装置。」

(本件補正後)
「【請求項1】
1つ以上のオブジェクトが静止して配置された仮想空間を生成し、所定の視点から見た上記仮想空間の視界を表示画像として表示する表示画像生成装置であって、
上記仮想空間内に配置された上記オブジェクトが、上記仮想空間内における基準点からの距離が第1の所定値以下である出現範囲内に含まれるか否かを判定する位置判定手段と、
上記視界内にある上記オブジェクトのうち、上記位置判定手段によって、上記出現範囲内に含まれると判定されたオブジェクトを表示する一方、上記出現範囲内に含まれないと判定されたオブジェクトを表示しない表示制御手段と、
を備え、
上記出現範囲内に含まれないと判定された上記オブジェクトが上記基準点の移動によって、上記出現範囲内に含まれると判定された場合に上記表示制御手段は上記オブジェクトを表示し、
上記表示制御手段は、
上記オブジェクトが上記出現範囲の外部から上記出現範囲の内部に移動した場合、アニメーションを含む演出効果を伴って、当該オブジェクトを新たに表示する
ことを特徴とする表示画像生成装置。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「表示画像生成装置」が「生成」する「仮想空間」に「配置された」「1つ以上のオブジェクト」について、「静止して」配置されたとの限定を付加し、また、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「表示制御手段」について、「上記オブジェクトが上記出現範囲の外部から上記出現範囲の内部に移動した場合、アニメーションを含む演出効果を伴って、当該オブジェクトを新たに表示する」との限定を付加する補正を含むものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書の最初に添付した明細書の段落【0033】及び【0106】等の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用され本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第2004/045734号(以下「引用文献」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態について詳細に説明する。ここでは、操作者(以下、プレイヤーとする)の操作入力に応答して仮想三次元空間内を移動する所定の移動体(以下、プレイヤーキャラクタとする)が、コース枠を有するカーレース場のように移動領域が制限された仮想三次元空間内の所定のコースを移動しながら、若しくは宇宙空間のように移動領域が制限されていない仮想三次元空間内を自由に移動しながらゲームを進行させる形態のゲームなど、コンピュータ・ゲームに適用した場合を例として説明する。
本発明の仮想三次元空間のレーダ画像に係わる画像処理方法を実現する装置は、家庭用ゲーム装置,パーソナルコンピュータ,携帯型電話機,業務用ゲーム装置(アーケイド・マシン),シミュレーション装置など、コンピュータ・プログラムの実行制御が可能な情報処理装置であれば良く、ハードウェア構成は汎用的なものを適用することができる。図1は、本発明を実現する情報処理装置(以下、ゲーム装置とする)の構成の一例をブロック図で示している。本発明に係るゲーム装置は、コンピュータ・プログラムの実行制御や入出力インターフェイス11を介して周辺機器との入出力制御などを行なう制御部10と、プレイヤーの操作情報などを入力するための入力部20と、画像を表示するための表示部30と、効果音や音声などを出力するための音声出力部40と、アプリケーションプログラムやデータなどを記録するための記録媒体50とを有している。ハードウェア的には、制御部10は、CPU,MPU等の制御装置、操作情報入力部20は、コントロールパッド,ジョイスティック,キーボード等の入力装置、表示部30は、液晶ディスプレイ,CRT等の表示装置、音声出力部40は、スピーカ等の音出力装置から構成される。本発明においては、これらのハードウェアの種類や数に限定されるものではない。」(明細書9頁11行?10頁12行)

(イ)「第2図は、本発明に係る画像処理機能を実現するソフトウェアの主要部の構成の一例をブロック図で示している。制御部10の主要な構成要素としては、ゲーム全体の動きを制御するゲーム制御手段110、仮想三次元空間内の物体を第1の視点位置から捉えてゲームの主画面用の映像を撮影する仮想カメラのカメラワークを制御する主画面用カメラワーク制御手段120、上記仮想カメラにより当該仮想三次元空間内の第1の視点位置(例えば、プレイヤーキャラクタのやや後方)から捉えた映像の画像データを生成して主画面として表示部30に表示する主画面表示制御手段130を有している。上記の主画面用カメラワーク制御手段120は、ゲームの主画面の形状を表示手段の形状(画面比率)又はゲームの進行に応じて変化させる機能を含んでおり、表示部30に表示される主画面は、例えば表示装置の画面比率に応じて形状が変化すると共に、ゲームの進行状況に応じて仮想カメラからの視界が角錐や円錐など任意の形状に変化し、その三次元空間内の領域が投影された主画面が、主画面表示制御手段130により形成されて表示部30に表示されるようになっている。」(明細書11頁4?19行)

(ウ)「なお、本実施の形態におけるレーダ画像は、仮想三次元空間を構成する三次元マップ上での特定のオブジェクトの配置関係を示す画像のことを言い、表示形態としては、マップ上での移動体と他のオブジェクトとの位置関係及び方向関係(又はいずれか一方)、オブジェクト間の位置/方向関係のみを表示する形態の他に、当該領域のマップをオブジェクトとしてその略図を上記の移動体と他のオブジェクトと合わせて表示する形態も含む。レーダ画像の表示内容としては、例えば、プレイヤーキャラクタや他の敵キャラクタや障害物のオブジェクト等を示すアイコン(本例では光点)を、必要に応じて当該視野領域のマップの略図と共に、レーダ画像として主画面の一部(若しくは他の表示装置の表示部)に表示する。」(明細書12頁19?13頁4行)

(エ)「また、その仮想三次元空間内の任意の位置に視点(仮想視点)を設定し、表示部30に映し出す映像は、その視点位置から空間内を投影した情景とする。ここで、投影とは、仮想三次元空間を仮想カメラから見ることをいい、仮想カメラの視点位置及び方位角、視野領域等の各種パラメータに基づいて投影処理が行なわれる。仮想カメラの視点位置は空間内の任意の位置に設定することができる。そして、その視点位置を刻々と連続的に移動させることにより、表示部30に映し出される映像も徐々に変化する。そのとき表示部30を見入る者にとっては、あたかも自己がその仮想三次元空間内を移動しているような感覚を受ける。更に、その仮想三次元空間内に光源の情報も盛り込むことができる。光源の位置が特定されると空間内の表示物の情報に対してその陰影が特定される。
主画面用の仮想カメラのカメラワークとしては、例えばプレイヤーの操作に応答して移動する移動体を追尾するように、追尾対象の移動体から所定位置離れた位置,プレイヤーキャラクタの位置等、任意の位置から仮想三次元空間を投影する。仮想カメラのカメラワークに係るパラメータ、例えば、追尾対象、仮想カメラの移動、仮想カメラの位置、方位角、プレイヤーキャラクタと仮想カメラとの距離(ズームアップやズームアウト)等の各種のパラメータは、プレイヤーキャラクタの仮想三次元空間内の位置やゲームの場面に応じて自動的に変更され、また、プレイヤーの操作に応じて変更される。例えば、ゲームの進行状況に応じて自動的に変化し、また、プレイヤーの操作に応答して動作するプレイヤーキャラクタの向きや位置、或いは左右上下を含むあらゆる方向の視角に係る操作に応じて仮想カメラの方向や位置が変化する。いずれにより変化させるかは、プレイヤーキャラクタの位置,ゲームの場面等を要素として決定される。」(明細書15頁14行?16頁)

(オ)「第5図?第8図は、標準モードにおけるゲームの主画面とレーダ画像の具体例を示しており、これらの図面を参照してゲームの主画面とレーダ画像との関係を説明する。第5図は本発明におけるシューティングゲームの画面例を示しており、ドラゴンに乗ったプレイヤーキャラクタ1は、プレイヤーの操作によって進行方向を変えて空間を自由に移動できると共に、その進行方向とは独立して、敵キャラクタを捉える射程の範囲6Bをあらゆる方向に操作できるようになっている。このゲームは、空間を飛行若しくは地上を移動する敵キャラクタを射程範囲6B内に捉えて撃破しながらゲームを進行させて行くタイプのゲームであり、本例では、プレイヤーキャラクタ1の位置を視点位置として、その視点位置から矩形の面に至る四角錐状の視野領域6B(第4図参照)が射程領域となっている。この場合、第5図中の右上部分に示すように、レーダ画面6としては、例えばプレイヤーキャラクタ1の周囲とその範囲内に含まれる敵キャラクタとをプレイヤーキャラクタ1の上方の視点位置から捉え、その範囲の画像6Aと、自機であるドラゴンとプレイヤーキャラクタ1及び敵キャラクタを示すアイコン(第5図中の1aが敵キャラクタのアイコン)とを表示すると共に、プレイヤーキャラクタ1(武器の位置)から捉えた領域を上記の範囲内に投影した視野領域6B(上記射程領域)とその四角錐状の領域内に含まれる敵キャラクタを示すアイコンとをレーダ画面6に表示するようにしている。」(明細書21頁10行?22頁4行)

(カ)「第13図は、ゲームの進行によって主画面の形状を一時的に通常のゲーム中とは異なる形状に変化させた場合の画面例を示している。例えば、暗いところでのスポットライト表示をシミュレートした場合など、第13図に示すように、仮想三次元空間内の第1の視点位置から円錐形の視界(同図の例では投影面が楕円形の視界)で捉えた映像を表示する。この場合、レーダ画像の視野領域をそれまでの形状(例えば四角錐)から円錐形に変化させた視野領域6Bを対象としてレーダ画像6を表示する。
例えば、ゲームの進行上、プレイヤーの視界が制限されていることを表現するため(暗いところを進む、霧が出ているところを進むなど、時間的な経過や移動領域内の移動位置に応じて、視野領域6Bを変化させるため)に、表示画面の形状を変形させて通常より狭い範囲を表示する場合がある。これは、通常の表示範囲を表示画面上に表示する上で、視野の外となる部分の画像を本来表示されるべき画像とは異なる色や形状で表示するように画像表示を制御することで達成される。例えば第13図では、円形の視野の外には黒1色の画素を固定的に表示することにより、視野の外の部分を遊戯者に視野不能としている。このために、表示画像を生成するとき、視野外に相当する部分の画素を黒1色に置き換える他、一旦通常の表示画像を生成、表示させた後、その表示画像に視野範囲だけを透過するように構成されたマスク画像(黒1色の他、ゲームの演出上の要求に応じて、他の色彩や雨、霧などのエフェクト画像等を用いても良い)を重ね合せる方法や、視野外の画素に対して視野を不可能または困難にするような既知の画像エフェクト(ブラー、カラーチェンジ等)をほどこす方法を用いても良い。また、第13図では視野外を完全に黒1色として視認を不能にしているが、半透明のマスク画像を重ね合わせること等で、視認を困難にするように構成しても良い。
また、ゲーム進行上の演出などで、視野範囲を通常より近距離に変更するような場合がある。例えば霧がかかったり暗くなったりしたことを表現するため、視点位置から所定距離以上離れた位置にある物体について、エフェクトをかけたり色を変えたり、あるいは表示処理を行なわないなどにより、遊戯者に通常表示画面において視認不能にする(その場合、レーダ画面にはアイコン表示されるようにしても良い)。その場合、レーダ画面に表示されている視野範囲の画像も、表示されるべき距離に合わせて変形,縮小処理を行なう。例えば第3図(A)において、視野範囲6Bの扇形の半径を小さくする。あるいは第4図(A)において、視野範囲6Bの四角錐の頂点から底面までの距離が小さくなるように変形する。
例えば、通常のレーダの最大探知範囲が第3図の符号6で示す円周部分までであるとして、ゲーム進行に伴い視野範囲がその円周部分まで届かなくなった場合、視野範囲画像6Bの円弧を、円6の円周より内側に、視野範囲に対応した距離だけ離間させるように、視野範囲画像6Bを変形する。」(明細書23頁2行?24頁18行)

(認定事項)
引用文献に記載された「物体」と「オブジェクト」は、それらが記載された前後の文脈等を勘案すれば、同義と解される。

上記記載事項及び認定事項を総合すれば、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「仮想三次元空間内に配置された障害物のオブジェクトを当該仮想三次元空間内の第1の視点位置から捉えた映像を主画面として表示部30に表示するゲーム装置であって、
上記仮想三次元空間内の上記第1の視点位置から所定距離以上離れた位置にある上記仮想三次元空間内に配置された上記障害物のオブジェクトについて、遊戯者に視認不能にする主画面表示制御手段130を備え、
ドラゴンに乗ったプレイヤーキャラクタ1がプレイヤーの操作によって進行方向を変えて前記仮想空間を自由に移動することに応じて、上記第1の視点位置を刻々と連続的に移動させることにより、表示部30に映し出される映像も徐々に変化し、そのとき表示部30を見入る者にとっては、あたかも自己がその仮想三次元空間内を移動しているような感覚を受ける
ゲーム装置。」

(3)対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「障害物のオブジェクト」、「仮想三次元空間」、「当該仮想三次元空間内の第1の視点位置から捉えた映像」及び「ゲーム装置」は、それぞれ本願補正発明の「1つ以上のオブジェクト」、「仮想空間」、「所定の視点から見た上記仮想空間の視界」及び「表示画像生成装置」に相当する。
また、引用発明の「ゲーム装置」は「仮想三次元空間内に配置された障害物のオブジェクトを当該仮想三次元空間内の第1の視点位置から捉えた映像を主画面として表示部30に表示する」のであるから、「障害物のオブジェクト」が「配置された」「仮想三次元空間」を生成するものであることは明らかである。
したがって、引用発明の「仮想三次元空間内に配置された障害物のオブジェクトを当該仮想三次元空間内の第1の視点位置から捉えた映像を主画面として表示部30に表示するゲーム装置」と、本願補正発明の「1つ以上のオブジェクトが静止して配置された仮想空間を生成し、所定の視点から見た上記仮想空間の視界を表示画像として表示する表示画像生成装置」とは、「1つ以上のオブジェクトが配置された仮想空間を生成し、所定の視点から見た上記仮想空間の視界を表示画像として表示する表示画像生成装置」の点で共通する。

(イ)引用発明は、「上記仮想三次元空間内の上記第1の視点位置から所定距離以上離れた位置にある上記仮想三次元空間内に配置された上記障害物のオブジェクトについて、遊戯者に視認不能にする」のであるから、仮想三次元空間内に配置された障害物のオブジェクトについて、仮想三次元空間内の第1の視点位置からの距離が所定距離未満であれば、当該障害物のオブジェクトを視認可能にすることを前提とするものであることが明らかである。また、その前提のためには、仮想三次元空間内に配置された障害物のオブジェクトが、仮想三次元空間内の第1の視点位置からの距離が所定距離未満であるか否かを判定する位置判定手段を備えることも明らかである。
そして、引用発明の「オブジェクトを視認可能にする」ことは、本願発明の「出現範囲内に含まれる」「オブジェクトを表示」することに相当する。
したがって、引用発明と、本願補正発明とは、「上記仮想空間内に配置された上記オブジェクトが、上記仮想空間内における基準点からの距離が第1の所定値」により規定される「出現範囲内に含まれるか否かを判定する位置判定手段」を備える点で共通する。

(ウ)上記(イ)で検討したことに加えて、引用発明は、「上記仮想三次元空間内の上記第1の視点位置から所定距離以上離れた位置にある上記仮想三次元空間内に配置された上記障害物のオブジェクトについて、遊戯者に視認不能にする」のであるから、そのためには、仮想三次元空間内に配置された障害物のオブジェクトが、仮想三次元空間内の第1の視点位置からの距離が所定距離以上離れた位置にあるか否かを判定する位置判定手段を備えることも明らかである。
したがって、引用発明の「上記仮想三次元空間内の上記第1の視点位置から所定距離以上離れた位置にある上記仮想三次元空間内に配置された上記障害物のオブジェクトについて、遊戯者に視認不能にする主画面表示制御手段130」は、本願補正発明の「上記視界内にある上記オブジェクトのうち、上記位置判定手段によって、上記出現範囲内に含まれると判定されたオブジェクトを表示する一方、上記出現範囲内に含まれないと判定されたオブジェクトを表示しない表示制御手段」に相当する。

(エ)引用発明は、「ドラゴンに乗ったプレイヤーキャラクタ1がプレイヤーの操作によって進行方向を変えて前記仮想空間を自由に移動することに応じて、上記第1の視点位置を刻々と連続的に移動させることにより、表示部30に映し出される映像も徐々に変化し、、そのとき表示部30を見入る者にとっては、あたかも自己がその仮想三次元空間内を移動しているような感覚を受ける」のであるから、上記(ウ)の検討を踏まえれば、仮想三次元空間内の第1の視点位置からの距離が所定距離以上離れた位置にあると判定された仮想三次元空間内に配置された障害物のオブジェクトが、仮想三次元空間内の第1の視点位置の移動によって、仮想三次元空間内の第1の視点位置からの距離が所定距離未満と判定された場合に主画面表示制御手段130は仮想三次元空間内に配置された障害物のオブジェクトを表示することは明らかである。
したがって、引用発明は、本願補正発明の「上記出現範囲内に含まれないと判定された上記オブジェクトが上記基準点の移動によって、上記出現範囲内に含まれると判定された場合に上記表示制御手段は上記オブジェクトを表示する」ことに相当する構成を有するといえる。

(オ)上記(エ)の検討を踏まえれば、引用発明と本願補正発明とは、「上記表示制御手段は、上記オブジェクトが上記出現範囲の外部から上記出現範囲の内部に移動した場合」、「当該オブジェクトを新たに表示する」点で共通する。

(相違点1)
オブジェクトについて、本願補正発明は「静止し」たものであるのに対し、引用発明はそのようなものか否か明らかでない点。

(相違点2)
仮想空間内に配置されたオブジェクトが出現範囲内に含まれるか否かを判定するための仮想空間内における基準点からの距離について、本願補正発明は「第1の所定値以下」であるのに対し、引用発明は「所定値未満」である点。

(相違点3)
表示制御手段が、オブジェクトが出現範囲の外部から出現範囲の内部に移動した場合、当該オブジェクトを新たに表示する際に、本願補正発明では「アニメーションを含む演出効果を伴って」表示するのに対し、引用発明ではそのようなものか否か明らかでない点。

イ 判断
(相違点1について)
引用発明の障害物のオブジェクトについて、障害物を静止したオブジェクトにするか、移動するオブジェクトにするかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎず、前者を選択して相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

(相違点2について)
仮想空間内に配置されたオブジェクトが出現範囲内に含まれるか否かを判定するための仮想空間内における基準点からの距離について、所定値未満とするか、所定値以下とするかは、境界を示すための表現の相違にすぎず、所定値以下と所定値未満との間に生じる、所定値自体が含まれるか否かの相違点を実質的な相違点としたとしても、いずれの表現を選択するかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。

(相違点3について)
ゲームにおける画像表示の技術分野において、オブジェクトを新たに表示する際に、突然出現する違和感をなくしたり、興趣を向上したりすることを目的として、アニメーションを含む演出効果を伴って表示することは、例えば、以下の文献(ア)?(オ)に記載されているように周知技術(以下「周知技術」という。)である。

(ア)国際公開第2008/149839号(下線は当審で付与した。以下同様。)
「[0067]
そこで、本変形例では、敵モンスターM4が隣接フィールドであるマスF3から可視フィールドであるマスF2へ配置変更される場合、表示制御手段として機能する表示制御部としての制御装置11は、マスF3に位置する敵モンスターM4の画像をマスF2へ移動させる表示制御を行うとともに、当該敵モンスターM4の画像を透明の状態から不透明の状態へ徐々に変更するように不透明化処理を行う。これにより、ディスプレイ2には、図16Aから図16Cに示すように、敵モンスターM4の画像がマスF3からマスF2へ移動してくる様子をディスプレイ2上で表現することができる。しかも、当該敵モンスターM4の画像が徐々にディスプレイ2上に現れるので、プレイヤーに与える違和感を少なくし、ゲームの雰囲気を壊すようなこともない。」

(イ)特開2001-137539号公報
「【0009】図1は、カーレースゲームにおいて、プレイヤーの運転する車が直線道路Sを走行しているとき、建物H(オブジェクト)が次第に接近してくる様子を示している。この建物Hは、図1(A)に示すように、本来であれば遠くの地平線に近い位置pにある時点から見えているべきものであるが、そのように遠くの時点から表示したのでは、画像処理の負担が大きいことは前記のとおりである。そこで、本発明においては、建物Hが図中aで示す位置に達した時点で初めて建物Hの画像を表示するようにする。即ち、車の中にいるプレイヤーの視点位置Eから建物Hまでの距離をLとしたとき、建物Hが前記pの位置にあるとき(その距離をLpで示す。)からaの位置(距離La)に達するまでの期間中は、建物Hの画像は表示しない。
【0010】而して、建物Hがaの位置に達した時点で初めてその画像を表示するようにするが、これを直ちに不透明な状態で表示すると、建物Hが突然現れて不自然であり、また、奥行き空間が急に狭くなったような印象を与える。そこで、本発明においては、aの位置での建物Hを極めて透明度の高い状態で表示し始めるようにし、次第に近づいてくるに従ってその透明度を減じ、(C)に示すようにcの位置(距離Lc)に達した時点で完全に不透明にし、それ以降は不透明の状態で表示するようにするものである。」

(ウ)特開2005-32140号公報
「【0071】
オブジェクトが出現するゲームイベントが発生した場合には、例えば図7(A)?(D)のようなテクスチャをオブジェクトにマッピングする。
【0072】
図7(A)ではテクスチャの円の全ての領域においてα値が0.0(透明)になっている。図7(B)(C)では円中心から円外周に向かって徐々にα値が0.0から1.0(不透明)に変化し、図7(D)では円の全ての領域においてα値が1.0になっている。
【0073】
このようにすれば、オブジェクトの中心部分からオブジェクトの輪郭部分に向かって時間経過に伴いオブジェクトが徐々に不透明(出現)になる画像を生成できる。例えば図7(A)(時間T1)では、オブジェクトは表示されず(オブジェクトが透明となり)、図7(B)(C)(時間T2、T3)ではオブジェクトの中心から不透明になり(オブジェクトが出現し)、図7(D)では輪郭部分を含めたオブジェクトの全てが不透明になる(オブジェクトの全てが表示される)。このようにすれば、演出度の高い出現表現を実現できる。」

(エ)特開2004-267306号公報
「【0020】
次に、図4に示すフローチャートを用いて本実施の形態の基本的な使用の一例について説明する。先ずステップ100において、ゲーム機本体3にCD-ROMをセットし、かつゲーム機本体3を起動することで、本例の対戦ゲームが開始される。ステップ101において、雑敵キャラクタ51が出現する。雑敵キャラクタ51の出現の仕方は、図5に示すように、例えば1体ずつ、左から出現する場合、上から出現する場合、地面から出現する場合、炎とともに出現する場合、雷とともに出現する場合等があり、あるいは図6に示すように、1度に銘々の状態で3体出現するという場合があり、あるいは例えば同一の3体の雑敵キャラクタ51が各々雷や炎等とともに出現するという即ちリーチ成立の場合がある。何れにせよ、次にステップ102において、雑敵キャラクタ51の出現の仕方が同時に同一の3体の雑敵キャラクタ51が登場するというリーチ状態であるか否かを判断する。リーチ状態でない場合はステップ110へ進んで遊戯者が操作する主役キャラクタ53と雑敵キャラクタ51との戦闘を行わせ、主役キャラクタ53の勝利の如何を問わず本ゲームを終了する。但し、終了する前に繰り返しステップ100もしくは101に戻るようにしても良いことは勿論である。」

(オ)特開2011-258155号公報
「【0149】
(変形例)
上述した実施形態においては、マーカの位置に六面体を出現させていた。しかしながら、マーカの位置とは別の位置に六面体を出現させるようにしても構わない。この場合には、出現位置に応じた領域のカメラ画像が上面に貼り付けられる。また、六面体以外の立体(閉空間を構成できる立体)を出現させるようにしても構わない。すなわち、六面体の出現位置は限定されず、かつ、多面体は六面体に限定されない。多面体は、四面体(三角錐)以上であって閉空間を構成できる立体であれば、特に限定されない。さらに、閉空間を構成でき、かつ、その閉空間を展開できる立体であれば、特に限定されない。例えば、伸縮する布のようなもので閉空間を構成することが考えられる。
【0150】
ここで、多面体が五面体(四角錐)であって、マーカの位置とは別の位置に四角錐が出現する状態を図17A?図17Eに示す。図17Aに示すように、四角錐の頂点の一部が机(マーカは机上に載置されているものとする)を突き破るようにして出現し始める。このときの四角錐の頂点側の一部は、閉空間を構成する仮想オブジェクトの外側面の一部である。この図17Aに示す状態から四角錐がマーカ座標系のz軸方向(上方向)へ移動して、図17B及び図17Cに示すように四角錐がせり上がるように上昇してくる。このときに、机の表面が割れて四角錐が盛り上がるようにアニメーションを作成してもよい。図17Dは四角錐の全体が出現した状態を示す。この図17Dに示す状態から四角錐の底面以外の側面が、各側面の底面側の辺を回転軸として外側へ90度展開して、図17Eに示すように、仮想オブジェクト(第1ステージの家、樹木及び的)が出現する。」

そして、引用発明において、障害物のオブジェクトが静止したオブジェクトであるか移動するオブジェクトであるかにかかわらず、新たに表示する際に、突然出現する違和感をなくしたり、興趣を向上したいという課題が生じることは当業者に明らかであるから、上記周知技術を適用して相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

また、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)審判請求書における請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、
ア 引用文献及びその他の審査段階で引用された複数の文献のいずれにおいても、移動するオブジェクトは記載されているが、本願補正発明の「1つ以上のオブジェクトが静止して配置された仮想空間を生成し、…、上記表示制御手段は、上記オブジェクトが上記出現範囲の外部から上記出現範囲の内部に移動した場合、アニメーションを含む演出効果を伴って、当該オブジェクトを新たに表示する」という構成については開示も示唆もないこと、
イ したがって、引用文献と、その他の審査段階で引用された複数の文献とを組み合わせたとしても、高々、移動するオブジェクトに関する構成にしか想到することはできず、本願補正発明に係る上記構成に想到することは困難であること、
ウ また、一般に、移動するオブジェクトは表示中に常時アニメーションを伴うことが通常であるが、静止して配置されたオブジェクトは、表示中にアニメーションを伴うことはないため、移動するオブジェクトが登場時にアニメーションを伴うという構成には想到し得たとしても、静止して配置されたオブジェクトがアニメーションを含む演出効果を伴って新たに表示するという本願補正発明に係る上記構成には当業者であっても容易に想到することは困難であること、
エ しかも、本願補正発明は、上記構成を採用することにより、静止して配置されたオブジェクトが、アニメーションを含む演出効果を伴って新たに表示されるため、ユーザに対してより臨場感を与えることができるという特有の効果を奏するものであること
を主張する。

しかしながら、上記ア?エの請求人の主張について、前記(3)イ(相違点3について)で検討したとおり、引用発明において、障害物のオブジェクトが静止したオブジェクトであるか移動するオブジェクトであるかにかかわらず、新たに表示する際に、突然出現する違和感をなくしたり、興趣を向上したいという課題が生じることは当業者に明らかであるから、前記周知技術を適用して、アニメーションを含む演出効果を伴って新たに表示するものとすることは、当業者が容易になし得たものである。

(5)本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成30年5月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由のうち請求項1に対する引用文献に係るものは、
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
国際公開第2004/045734号(引用文献)
特開2004-337305号公報
というものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及び2の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、「表示画像生成装置」が「生成」する「仮想空間」に「配置された」「1つ以上のオブジェクト」について、「静止して」配置されたとの限定を省き、また、「表示制御手段」について、「上記オブジェクトが上記出現範囲の外部から上記出現範囲の内部に移動した場合、アニメーションを含む演出効果を伴って、当該オブジェクトを新たに表示する」との限定を省いたものである。
そして、本願発明と引用発明とを、前記第2[理由]2(3)アに記載したのと同様に対比すると、両者は前記相違点2の点で相違し、その余の点で一致する(前記相違点1及び3は生じない。)。
そうすると、前記相違点2に係る本願発明の構成は、前記第2[理由]2(3)イの(相違点2について)に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-01-27 
結審通知日 2020-01-28 
審決日 2020-02-10 
出願番号 特願2014-89126(P2014-89126)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 泰  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤田 年彦
塚本 丈二
発明の名称 表示画像生成装置、表示制御プログラム、および記録媒体  
代理人 村上 尚  

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