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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1361226
審判番号 不服2018-12650  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-21 
確定日 2020-04-02 
事件の表示 特願2014- 52835「リード内蔵型回路パッケージの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 5日出願公開、特開2015-177080〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年3月15日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 8月14日付け:拒絶理由通知
同 年10月 7日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 1月30日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知
同 年 3月15日 :意見書、手続補正書の提出
同 年 6月28日付け:平成30年3月15日付け手続補正につい
ての補正の却下の決定、拒絶査定
同 年 9月21日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 1年 9月 3日付け:当審による拒絶理由通知
同 年10月31日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和1年10月31日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
アキシャルリードタイプのリードを備えたリードフレームの表裏面のいずれかを上面とし、対向する上記リードの端子部上に直接、回路素子を配置、接続した集合体を形成し、該集合体の上記リードの延出方向に直交するように配置された上記回路素子及び上記リードとの接続部の周囲に第1のモールド樹脂を形成すると共に、上記回路素子が配置されているリードの端子部の端部から反対側に延出するリードの下面を上記第1のモールド樹脂の裏面側に露出し、
上記第1のモールド樹脂から露出する上記リードは、上下面を除く側面部に第2のモールド樹脂が形成されるように、上記集合体のリードフレームをモールド金型を用いて樹脂モールドし、
該樹脂モールドされた上記集合体をダイシングにより個片化する際、上記リードの延出方向に平行に上記リード間の上記第1のモールド樹脂及び上記第2のモールド樹脂を切断し、上記リードの延出方向に直交する方向に上記リードと該リードの側面部に形成された上記第2のモールド樹脂とが所望の長さとなるように切断することで、上記リードの長さを変更することを特徴とするリード内蔵型回路パッケージの製造方法。」

第3 当審が通した拒絶の理由

令和1年9月3日に当審が通知した拒絶理由の理由1及び理由2の概要は、次のとおりである。

1.理由1について
本件出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.理由2について
本件出願の請求項2における「対向する上記リードの端子部上に直接、回路素子を配置、接続した」という記載について、「対向する」が「端子部」を修飾し、回路素子が双方の端子部上にわたるように配置、接続されたものであることが特定されていると解釈したとしても、また、本件出願の請求項1においてそのような趣旨の特定がなされたとしても、請求項1及び2に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項(下記の引用文献2に記載された技術事項)に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2013-161903号公報
引用文献2.特開2003-229581号公報

第4 引用文献の記載

当審の拒絶の理由で引用された上記引用文献1には、「半導体装置の製造方法」について次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与したものである。

(1)「【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置100を表す模式図である。図1(a)は、半導体装置100の平面図であり、図1(b)は、A-A線に沿った断面図である。
【0010】
図1(a)に示すように、半導体装置100は、半導体素子10と、それを封じた樹脂を有する成形体20を備える。成形体20は、半導体素子10に対向する方形の上面20aと、上面20aにつながる4つの側面20b、20c、20dおよび20eを有する。さらに、半導体装置100は、4つの側面のうちの側面20dおよび20eからそれぞれ延出したフランジ部30を備える。
・・・(中略)・・・
【0013】
成形体20の上面20aとは反対側の裏面には、リードフレーム2の裏面2bと、リードフレーム3の裏面3bとが露出し、それぞれ電極パッドとして機能する。すなわち、半導体装置100は、半導体素子10を封じた樹脂を有する成形体20と、その裏面に設けられた電極パッドを有する表面実装型パッケージを備える。
【0014】
さらに、本実施形態では、成形体20の側面20dおよび20eからそれぞれ延出する2つのフランジ部30を備える。リードフレーム2および3は、成形体20からそれぞれのフランジ部30に延在し、フランジ部30の裏面および端面30fに露出する。」

(2)「【0023】
次に、図4および図5を参照して、半導体装置100の製造方法を説明する。図4(a)および図4(b)は、半導体装置100の製造過程を表す模式断面図である。図5は、半導体装置100の製造に用いられるリードフレームシート50を示す平面図である。
【0024】
リードフレームシート50には、複数のリードフレーム2および3が設けられる(図5参照)。半導体装置100の製造過程では、リードフレームシート50の上に、複数の半導体素子10が固着され、ワイヤボンディングされる。すなわち、リードフレーム2となる部分に半導体素子10がダイボンディングされ、半導体素子10と、リードフレーム3となる部分と、の間に金属ワイヤ13がボンディングされる。
【0025】
次に、リードフレームシート50の上に、半導体素子10を封じた樹脂層23を形成する。続いて、樹脂層23を選択的に薄層化し、第1の方向に延在するストライプ状の第1の薄層部F_(1)を形成する。
【0026】
例えば、図4(a)に示すように、ダイシングブレード53を用いて、第1の方向に樹脂層23を研削する。これにより、成形体20から延出するフランジ部30となる第1の薄層部F_(1)が形成される。
【0027】
例えば、樹脂層23をリードフレームシート50に達する深さまで研削することにより、半導体装置100が製造される。また、リードフレームシート50の上に、樹脂層23の薄膜を残すことにより、半導体装置200を製造することができる。
【0028】
本実施形態の方法では、ダイシングピッチを変更することにより、半導体装置のサイズに合わせて第1の薄層部F_(1)を形成することができる。すなわち、半導体装置ごとに金型を準備する必要がないため、製造方法としての自由度が大きく製造コストを低減することができる。すなわち、別の方法として、例えば、射出成型法により、樹脂層23を第1の薄層部F_(1)を有する形状に成形することもできる。
【0029】
次に、ダイシングブレード55を用いて、樹脂層23およびリードフレームシート50を切断し、個々の半導体装置100を分離すると共にそのパッケージを形成する。
図4(b)に示すように、第1の薄層部F_(1)では、薄層化された樹脂層23と、リードフレームシート50と、を第1の方向に沿って切断する。ダイシングブレード55のブレード幅は、ダイシングブレード53のブレード幅よりも狭い。したがって、成形体20から延出するフランジ部30を残して、第1の薄層部F_(1)を切断することができる。
【0030】
次に、図5を参照して、リードフレームシート50の切断方法を具体的に説明する。
図5に示すように、例えば、リードフレームシート50には、複数のリードフレーム2および3が設けられる。そして、それぞれのリードフレームをつなぐ吊ピン50aおよび50bが設けられる。
【0031】
リードフレーム2および3は、第1の方向であるX方向にそれぞれ並列に配置される。一方、第1の方向に直交する第2の方向であるY方向には、リードフレーム2と、リードフレーム3とが、交互に配置される。
【0032】
X方向に並んで配置されたリードフレーム2の間、および、リードフレーム3の間は、吊ピン50aにより接続される。一方、Y方向に交互に配置されたリードフレーム2とリードフレーム3との間には、吊ピン50bにより接続された部分と、リードフレーム2とリードフレーム3とが離間して配置された部分と、が設けられる。
【0033】
リードフレーム2と、リードフレーム3と、が離間して設けられた部分には、半導体素子10と、リードフレーム3と、の間に金属ワイヤ13がボンディングされる。そして、リードフレーム2とリードフレーム3とを吊ピン50bで接続した部分において、第1の薄層部F_(1)が、X方向に延在するストライプ状に設けられる。
【0034】
第1の薄層部F_(1)をX方向に切断する際には、リードフレーム2および3のそれぞれの端を含むダイシング領域D_(1)が切断される。これにより、リードフレーム2および3のそれぞれの端と、吊ピン50bと、が除かれる。そして、そして、第1の薄層部F_(1)の切断面には、リードフレーム2および3の端面が露出する。
【0035】
さらに、Y方向において並列に配置されたリードフレーム2の間、および、リードフレーム3の間の樹脂層23を切断する。この場合も、例えば、ダイシングブレード55を用いて、ダイシング領域D1と同じ幅のダイシング領域D_(2)を切断する。
【0036】
これにより、半導体素子10に対向する方形の上面20aと、上面20aにつながる4つの側面と、を有した成形体20と、成形体20の側面から延出するフランジ部30と、を有するパッケージを形成することができる。
【0037】
上記の製造方法では、樹脂層23が薄層化されているダイシング領域D1において、リードフレーム2および3の端が切断される。そして、樹脂層23が厚いダイシング領域D2において、リードフレーム2および3が切断されることはなく、吊ピン50aが切断される。
【0038】
また、リードフレームシート50を切断する際には、図4(b)に示すように、リードフレームシート50の裏面側から切断する方法を用いても良いし、図4(a)に示す例のように、樹脂層23の側から切断しても良い。」

(3)「【図1】



(4)「【図5】



・段落【0010】、【0013】及び【0014】並びに図1(a)及び(b)によれば、半導体素子10と、半導体素子10を封じた樹脂を有する成形体20であって、半導体素子10に対向する方形の上面20aと、上面20aにつながる4つの側面20b、20c、20dおよび20eを有する成形体20と、当該4つの側面のうちの対向する側面20dおよび20eからそれぞれ延出したフランジ部30とを備え、成形体20の上面20aと反対側の裏面には、リードフレーム2の裏面2bと、リードフレーム3の裏面3bとが露出し、リードフレーム2およびリードフレーム3は、成形体20からそれぞれのフランジ部30に延在し、フランジ部30の裏面に露出する半導体装置100が記載されている。

・段落【0023】及び【0024】によれば、半導体装置100の製造方法において、複数のリードフレーム2およびリードフレーム3が設けられたリードフレームシート50の上に複数の半導体素子10が固着されて、リードフレーム2となる部分に半導体素子10がダイボンディングされ、半導体素子10とリードフレーム3となる部分との間に金属ワイヤ13がボンディングされることが記載されている。ここで、図5によれば、リードフレーム2及びリードフレーム3は互いに対向しており、また、リードフレーム2及びリードフレーム3は直線状に並んでいるからアキシャルリードタイプのリードと認められる。
したがって、引用文献1には、半導体装置100の製造方法において、アキシャルリードタイプのリードであり、互いに対向するリードフレーム2およびリードフレーム3が複数設けられたリードフレームシート50の上に複数の半導体素子10が固着されて、リードフレーム2となる部分に半導体素子10がダイボンディングされ、半導体素子10とリードフレーム3となる部分との間に金属ワイヤ13がボンディングされることが記載されている。

・段落【0025】及び【0027】によれば、ダイボンディングと金属ワイヤ13のボンディングの次に、リードフレームシート50の上に半導体素子10を封じた樹脂層23を形成し、続いて、樹脂層23をリードフレームシート50に達する深さまで研削(すなわち、リードフレーム50の上面が露出するまで研削)することにより選択的に薄層化し、第1の方向に延在するストライプ状の第1の薄層部F_(1)を形成することが記載されている。ここで、第1の薄層部F_(1)においてリードフレーム2及びリードフレーム3となる部分の側面部に樹脂(以下「薄層部樹脂」という。)が残っているのは明らかである。また、樹脂層23のうち研削されていない部分、すなわち、第1の薄層部F_(1)以外の部分は相対的に樹脂が厚い部分(以下「樹脂厚膜部」という。)となる。
そして、段落【0028】によれば、射出成型法により、樹脂層23を第1の薄層部F_(1)を有する形状に成形することもできるから、引用文献1には、ダイボンディングと金属ワイヤ13のボンディングの次に、リードフレームシート50の上に半導体素子10を封じた樹脂層23を射出形成法により第1の方向に延在するストライプ状に選択的に薄層化された第1の薄層部F_(1)を有するように成形することによって、第1の薄層部F_(1)においてリードフレームシート50の上面が露出するようにリードフレーム2及びリードフレーム3となる部分の側面部に形成された薄層部樹脂と、第1の薄層部F_(1)以外の部分において形成された樹脂厚膜部とからなる樹脂層23が成形されることが記載されているといえる。ここで、段落【0031】によれば、「第1の方向」は「X方向」である。

・段落【0031】、図1(b)及び図5によれば、樹脂厚膜部は、リードフレーム2及びリードフレーム3の延出方向であるY方向に直交するX方向に配置された複数の半導体素子10及びリードフレーム2との接続部の周囲に形成されている。

・段落【0029】によれば、樹脂層23を成形した次に、ダイシングブレード55を用いて、樹脂層23およびリードフレームシート50を切断し、個々の半導体装置100を分離すると共にそのパッケージを形成することが記載されている。

・段落【0034】及び【0035】によれば、第1の薄層部F_(1)をX方向に切断する際には、リードフレーム2およびリードフレーム3のそれぞれの端を含むダイシング領域D_(1)が切断されることにより、リードフレーム2およびリードフレーム3のそれぞれの端が除かれ、Y方向に切断する際には、並列に配置されたリードフレーム2の間、および、リードフレーム3の間の樹脂層23を切断する。ここで、図5によれば、ダイシング領域D1が切断されることにより薄層部樹脂のダイシング領域D_(1)も除かれ、また、Y方向において切断される樹脂層23には薄層部樹脂及び樹脂厚膜部の双方が含まれる。

上記摘示事項および図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「半導体素子10と、
半導体素子10を封じた樹脂を有する成形体20であって、半導体素子10に対向する方形の上面20aと、上面20aにつながる4つの側面20b、20c、20dおよび20eを有する成形体20と、
当該4つの側面のうちの対向する側面20dおよび20eからそれぞれ延出したフランジ部30とを備え、
成形体20の上面20aと反対側の裏面には、リードフレーム2の裏面2bと、リードフレーム3の裏面3bとが露出し、リードフレーム2およびリードフレーム3は、成形体20からそれぞれのフランジ部30に延在し、フランジ部30の裏面に露出する
半導体装置100の製造方法において、
アキシャルリードタイプのリードであり、互いに対向するリードフレーム2およびリードフレーム3が複数設けられたリードフレームシート50の上に複数の半導体素子10が固着されて、リードフレーム2となる部分に半導体素子10がダイボンディングされ、半導体素子10とリードフレーム3となる部分との間に金属ワイヤ13がボンディングされ、
次に、リードフレームシート50の上に半導体素子10を封じた樹脂層23を射出形成法によりX方向に延在するストライプ状に選択的に薄層化された第1の薄層部F_(1)を有するように成形することによって、第1の薄層部F_(1)においてリードフレームシート50の上面が露出するようにリードフレーム2及びリードフレーム3となる部分の側面部に形成された薄層部樹脂と、第1の薄層部F_(1)以外の部分において形成された樹脂厚膜部とからなる樹脂層23が成形され、当該樹脂厚膜部は、リードフレーム2及びリードフレーム3の延出方向であるY方向に直交するX方向に配置された複数の半導体素子10及びリードフレーム2との接続部の周囲に形成されており、
次に、ダイシングブレード55を用いて、樹脂層23およびリードフレームシート50を切断し、個々の半導体装置100を分離すると共にそのパッケージを形成し、
第1の薄層部F_(1)をX方向に切断する際には、リードフレーム2およびリードフレーム3のそれぞれの端を含むダイシング領域D_(1)が切断されることにより、リードフレーム2およびリードフレーム3のそれぞれの端が除かれると共に薄層部樹脂のダイシング領域D_(1)が除かれ、Y方向に切断する際には、並列に配置されたリードフレーム2の間、および、リードフレーム3の間の薄層部樹脂及び樹脂厚膜部を切断する、製造方法。」

第5 当審の判断

1.特許法第29条第1項第3号について

1-1.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)本願発明の「対向する上記リードの端子部上に直接、回路素子を配置、接続した」という記載について、「対向する」が修飾しているのは「リード」であると解し、当該記載は、「端子部」を有する「リード」が「対向」し、「リードの端子部上に直接、回路素子を配置接続し」ていることを特定していると認め、対比する(「対向する」が「端子部」を修飾し、「対向する」「端子部上に直接、回路素子を配置、接続した集合体を形成」した、すなわち、回路素子が双方の端子部上にわたるように配置、接続されたものであることが特定されたと解する場合については、後述の「2.」を参照されたい。)。
引用発明の「リードフレームシート50」及び「半導体素子10」が、各々本願発明の「リードフレーム」及び「回路素子」に相当する。また、引用発明で「リードフレーム2」の「半導体素子10がダイボンディング」される部分(以下「端子部」という。)は本願発明の「端子部」に相当する。さらに、引用発明の「複数の半導体素子10」が「固着されて」、「ダイボンディングされ」る点は、本願発明の「直接、回路素子を配置、接続」することに相当する。
そうすると、引用発明の「アキシャルリードタイプのリードであり、互いに対向するリードフレーム2およびリードフレーム3が複数設けられたリードフレームシート50の上に複数の半導体素子10が固着されて、リードフレーム2となる部分に半導体素子10がダイボンディングされ」たものは、本願発明の「アキシャルリードタイプのリードを備えたリードフレームの表裏面のいずれかを上面とし、対向する上記リードの端子部上に直接、回路素子を配置、接続した集合体」に相当する。

(2)引用発明の「樹脂厚膜部」は、「リードフレーム2及びリードフレーム3の延出方向であるY方向に直交するX方向に配置された複数の半導体素子10及びリードフレーム2との接続部の周囲に形成され」るから、本願発明の「該集合体の上記リードの延出方向に直交するように配置された上記回路素子及び上記リードとの接続部の周囲に」形成する「第1のモールド樹脂」に相当する。

(3)引用発明は、「樹脂層23を射出形成法によりX方向に延在するストライプ状に選択的に薄層化された第1の薄層部F_(1)を有するように成形」したあと、「ダイシングブレード55を用いて、樹脂層23およびリードフレームシート50を切断」することよって「個々の半導体装置100」が分離される(すなわち、裏面に対する樹脂層23の除去工程は特段行われていない)ところ、完成品である半導体装置100は「成形体20の上面20aと反対側の裏面には、リードフレーム2の裏面2bと、リードフレーム3の裏面3bとが露出し、リードフレーム2およびリードフレーム3は、成形体20からそれぞれのフランジ部30に延在し、フランジ部30の裏面に露出する」ものである。また、引用発明の「樹脂厚膜部」及び「第1の薄層部F_(1)」が各々、切断によって半導体装置100の「成形体20」及び「フランジ部30」となるのは明らかである。
したがって、引用発明では、「樹脂厚膜部」の裏面にリードフレーム2の裏面2bとリードフレーム3の裏面3bが露出され、「第1の薄層部F_(1)」においてリードフレーム2の裏面2b及びリードフレーム3の裏面3bが露出されている。

(4)引用発明における「リードフレーム2」の「半導体素子10がダイボンディングされ」た部分である端子部(上記(1)参照。)のリードフレーム3側の端部が本願発明の「端子部の端部」に相当し、引用発明の「リードフレーム2」が「成形体(樹脂厚膜部)からそれぞれのフランジ部30(第1の薄層部F_(1))に延在」することは、本願発明の「リード」が「端子部の端部から反対側に延出する」ことに相当する。
そして、引用発明では、上記(3)のとおり、リードフレーム2の裏面2bが樹脂厚膜部の裏面に露出しているところ、「樹脂厚膜部」は、上記(2)のとおり本願発明の「第1のモールド樹脂」に相当するから、引用発明と本願発明とは、「上記回路素子が配置されているリードの端子部の端部から反対側に延出するリードの下面を上記第1のモールド樹脂の裏面側に露出」する点で一致する。

(5)引用発明の「リードフレーム2」は、上記(3)のとおり、樹脂厚膜部から露出しており、「樹脂厚膜部」は、上記(2)のとおり本願発明の「第1のモールド樹脂」に相当することから、引用発明の「リードフレーム2」は、本願発明の「上記第1のモールド樹脂から露出する上記リード」に相当する。
また、上記(3)によれば、引用発明では、第1の薄層部F_(1)においてリードフレーム2の裏面2bが露出していることから、第1の薄層部F_(1)において形成された「薄層部樹脂」は、リードフレーム2の裏面2bを除いて設けられていることは明らかである。さらに、引用発明の「薄層部樹脂」は、「第1の薄層部F_(1)においてリードフレームシート50の上面が露出するようにリードフレーム2及びリードフレーム3となる部分の側面部に形成された」ものであるから、リードフレーム2の上面を除く側面部に形成されている。
したがって、引用発明の「薄層部樹脂」は、本願発明の「上記第1のモールド樹脂から露出する上記リード」の「上下面を除く側面部に」形成される「第2のモールド樹脂」に相当する。

(6)射出成形法は通常、モールド金型を用いて行われるものであるから、引用発明の「樹脂層23を射出形成法によりX方向に延在するストライプ状に選択的に薄層化された第1の薄層部F_(1)を有するように成形する」ことは、本願発明の「上記集合体のリードフレームをモールド金型を用いて樹脂モールド」することに相当する。

(7)引用発明の「ダイシングブレード55を用いて、樹脂層23およびリードフレームシート50を切断し、個々の半導体装置100を分離する」ことは、本願発明の「該樹脂モールドされた上記集合体をダイシングにより個片化」することに相当する。

(8)引用発明の「リードフレーム2及びリードフレーム3の延出方向であるY方向」は、本願発明の「上記リードの延出方向」に相当するから、引用発明の「Y方向に切断する際には、並列に配置されたリードフレーム2の間、および、リードフレーム3の間の薄層部樹脂及び樹脂厚膜部を切断する」ことは、本願発明の「上記リードの延出方向に平行に上記リード間の上記第1のモールド樹脂及び上記第2のモールド樹脂を切断」することに相当する。

(9)引用発明の「リードフレーム2及びリードフレーム3の延出方向であるY方向に直交するX方向」は、本願発明の「上記リードの延出方向に直交する方向」に相当する。
そして、引用発明の「第1の薄層部F_(1)をX方向に切断する際には、リードフレーム2およびリードフレーム3のそれぞれの端を含むダイシング領域D_(1)が切断されることにより、リードフレーム2およびリードフレーム3のそれぞれの端が除かれると共に薄層部樹脂のダイシング領域D_(1)が除かれ」た結果として半導体装置10が得られるのであるから、「第1の薄層部F_(1)をX方向に切断する」ことによって、薄層部樹脂、リードフレーム2及びリードフレーム3が「所望の長さ」となっているのは明らかである。
さらに、引用発明では「リードフレーム2およびリードフレーム3のそれぞれの端が除かれ」ることによって、「端が除かれ」る前に比べてリードフレーム2及びリードフレーム3の長さが「変更」されている。
したがって、引用発明と本願発明とは、「上記リードの延出方向に直交する方向に上記リードと該リードの側面部に形成された上記第2のモールド樹脂とが所望の長さとなるように切断することで、上記リードの長さを変更する」点で一致する。

(10)引用発明の「半導体装置100」は、「成形体20の上面20aと反対側の裏面には、リードフレーム2の裏面2bと、リードフレーム3の裏面3bとが露出し、リードフレーム2およびリードフレーム3は、成形体20からそれぞれのフランジ部30に延在し、フランジ部30の裏面に露出する」ものであるから、リードを内蔵しているのは明らかである。
また、引用発明の「半導体装置100の製造方法」は、「ダイシングブレード55を用いて、樹脂層23およびリードフレームシート50を切断し、個々の半導体装置100を分離すると共にそのパッケージを形成」するから、「回路パッケージの製造方法」であるといえる。
したがって、引用発明の「半導体装置100の製造方法」は、本願発明の「リード内蔵型回路パッケージの製造方法」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは

「アキシャルリードタイプのリードを備えたリードフレームの表裏面のいずれかを上面とし、対向する上記リードの端子部上に直接、回路素子を配置、接続した集合体を形成し、該集合体の上記リードの延出方向に直交するように配置された上記回路素子及び上記リードとの接続部の周囲に第1のモールド樹脂を形成すると共に、上記回路素子が配置されているリードの端子部の端部から反対側に延出するリードの下面を上記第1のモールド樹脂の裏面側に露出し、
上記第1のモールド樹脂から露出する上記リードは、上下面を除く側面部に第2のモールド樹脂が形成されるように、上記集合体のリードフレームをモールド金型を用いて樹脂モールドし、
該樹脂モールドされた上記集合体をダイシングにより個片化する際、上記リードの延出方向に平行に上記リード間の上記第1のモールド樹脂及び上記第2のモールド樹脂を切断し、上記リードの延出方向に直交する方向に上記リードと該リードの側面部に形成された上記第2のモールド樹脂とが所望の長さとなるように切断することで、上記リードの長さを変更するリード内蔵型回路パッケージの製造方法。」

である点で一致し、相違するところがない。

1-2.小括

したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当する。

<<予備的見解>>
2.特許法第29条第2項について

2-1.対比

本願発明と引用発明とを対比した上記「1.1-1.(1)」において、本願発明の「対向する上記リードの端子部上に直接、回路素子を配置、接続した」という記載について、「対向する」が「端子部」を修飾していると解し、当該記載が、「対向する」「端子部上に直接、回路素子を配置、接続した集合体を形成」したこと、すなわち、回路素子が双方の端子部上にわたるように配置、接続されたものであることを特定している場合、引用発明と本願発明とは、「アキシャルリードタイプのリードを備えたリードフレームの表裏面のいずれかを上面とし、上記リードの端子部上に直接、回路素子を配置、接続した集合体を形成」する点と共通するものの、直接、回路素子を配置、接続する端子部が、本願発明では「対向する」端子部であるのに対し、引用発明ではその旨特定されていない点で相違する。

また、上記「1.1-1.(9)」において、「上記リードの延出方向に直交する方向に上記リードと該リードの側面部に形成された上記第2のモールド樹脂とが所望の長さとなるように切断することで、上記リードの長さを変更する」を、審判請求人が令和1年10月31日付け意見書で主張するように、「リードの長さを用途によって適切な長さに切断」するという意味に解すると、本願発明と引用発明とは、「上記リードの延出方向に直交する方向に上記リードと該リードの側面部に形成された上記第2のモールド樹脂と」を「切断する」点で一致するものの、リードと第2のモールド樹脂とを切断する際に、本願発明は「所望の長さとなるように」切断して、「上記リードの長さを変更する」のに対し、引用発明ではその旨特定されていない点で相違する。

その他の構成については、上記「1.1-1.」の(2)ないし(8)及び(10)と同様である。

そうすると、本願発明と引用発明とは、

「アキシャルリードタイプのリードを備えたリードフレームの表裏面のいずれかを上面とし、上記リードの端子部上に直接、回路素子を配置、接続した集合体を形成し、該集合体の上記リードの延出方向に直交するように配置された上記回路素子及び上記リードとの接続部の周囲に第1のモールド樹脂を形成すると共に、上記回路素子が配置されているリードの端子部の端部から反対側に延出するリードの下面を上記第1のモールド樹脂の裏面側に露出し、
上記第1のモールド樹脂から露出する上記リードは、上下面を除く側面部に第2のモールド樹脂が形成されるように、上記集合体のリードフレームをモールド金型を用いて樹脂モールドし、
該樹脂モールドされた上記集合体をダイシングにより個片化する際、上記リードの延出方向に平行に上記リード間の上記第1のモールド樹脂及び上記第2のモールド樹脂を切断し、上記リードの延出方向に直交する方向に上記リードと該リードの側面部に形成された上記第2のモールド樹脂とを切断するリード内蔵型回路パッケージの製造方法。」

である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
直接、回路素子を配置、接続する端子部が、本願発明では「対向する」端子部であるのに対し、引用発明ではその旨特定されていない点。
[相違点2]
リードと第2のモールド樹脂とを切断する際に、本願発明は「所望の長さとなるように」切断して、「上記リードの長さを変更する」のに対し、引用発明ではその旨特定されていない点。

2-2.相違点についての判断

(1)相違点1について
アキシャルリードタイプのリードの対向する端子部上に直接、回路素子を配置、接続する技術事項は、例えば引用文献2(段落【0059】、【0060】及び図22を参照。リードフレーム58の対向する電極端子間にダイオードチップを乗せ、ダイオードチップのアノード電極とカソード電極をリードフレームの各々の電極端子60上でハンダ付着させる点。)に記載されているように、周知である。
したがって、引用発明の半導体素子10、リードフレーム2及びリードフレーム3の接続構造として上記周知の技術事項を採用することで、相違点1に係る構成とすることは当業者にとって適宜なし得たことである。

(2)相違点2について
リードを所望の長さに切断して、リードの長さを変更する技術事項は、例えば特開平5-315493号公報(段落【0023】及び図4を参照。アウターリード42の切断の際、切断部42aの位置を変えることで、アウターリード42の長さを調節できる点。)及び特開平5-23753号公報(段落【0002】及び図3(a)(b)を参照。同一パッケージで長さが異なるリードの切断方法として、打抜きパンチ2とダイ1の寸法によって切断するリード長さが規制される点。)に記載されているように、周知である。
したがって、引用発明の「第1の薄層部F_(1)をX方向に切断する際」に、上記周知の技術事項を採用することで相違点2に係る構成とすることは当業者が適宜なし得たことである。

そして、上記相違点1及び2を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項の奏する効果から予測できる範囲内のものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。
よって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が容易に想到できたものである。

2-3.小括

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条1項3号に該当し、同条第1項の規定により特許を受けることができない。また、仮に相違点が認められるとしても、同条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-01-31 
結審通知日 2020-02-04 
審決日 2020-02-18 
出願番号 特願2014-52835(P2014-52835)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
P 1 8・ 113- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 和俊  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 石坂 博明
山田 正文
発明の名称 リード内蔵型回路パッケージの製造方法  

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