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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  F24F
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  F24F
審判 全部申し立て 2項進歩性  F24F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F24F
審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  F24F
管理番号 1361464
異議申立番号 異議2018-700898  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-08 
確定日 2020-03-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6320731号発明「空気調和機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6320731号の明細書及び特許請求の範囲を令和1年9月30日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1、7〕、〔2、4-6〕、〔3、8〕について訂正することを認める。 特許第6320731号の請求項1?8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6320731号の請求項1?6に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成25年11月26日に出願され、平成30年4月13日にその特許権の設定登録がされ、同年5月9日に特許掲載公報が発行された。

本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年11月8日付け 特許異議申立人松田亘弘(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て
平成31年2月6日付け 取消理由通知書
平成31年4月9日付け 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和1年5月17日付け 申立人による意見書の提出
令和1年7月30日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和1年9月30日付け 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

また、令和1年10月8日付けで、申立人に対し、特許法第120条の5第5項に基づき訂正の請求があった旨の通知を行うとともに期間を定めて意見を求めたが、期間内に意見の提出はなかった。

なお、上記令和1年9月30日付けの訂正の請求がされたため、上記平成31年4月9日付けの訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。


第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、」と記載されているのを、「圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、前記コントローラは、鉛直面とされた取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する訂正後の請求項7も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1における「前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、外気温に応じて予め設定された冷媒温度もしくはその代替温度の目標温度に対して、結露の阻止制御を行う構成とされている」と記載されているのを、「前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う構成とされている」に訂正する。(請求項1の記載を引用する訂正後の請求項7も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に「前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記室内ファンの回転数制御、前記室外ファンの回転数制御、前記電子膨張弁の開度制御、前記圧縮機の回転数制御の順序で順次結露の阻止制御を行う構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。」と記載されているのを、「圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、前記コントローラを冷却する前記冷媒配管で結露が発生する条件が検知されたとき、室内ファンの回転数制御、室外ファンの回転数制御、前記電子膨張弁の開度制御、前記圧縮機の回転数制御のいずれかにより結露の発生を阻止する結露阻止制御部が設けられており、前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う構成とされており、前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記室内ファンの回転数制御、前記室外ファンの回転数制御、前記電子膨張弁の開度制御、前記圧縮機の回転数制御の順序で順次結露の阻止制御を行う構成とされていることを特徴とする空気調和機。」に訂正する。(請求項2の記載を引用する訂正後の請求項4、5、6も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に「圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、」と記載されているのを、「圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、前記コントローラは、鉛直面とされる取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、」に訂正する。(請求項3の記載を引用する訂正後の請求項8も同様に訂正する。)

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3における「前記冷媒配管は、前記コントローラに対して傾斜配置されている」と記載されているのを、「他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管は、前記取付け面に取り付けられるとともに水平方向に対して傾斜配置されている」に訂正する。(請求項3の記載を引用する訂正後の請求項8も同様に訂正する。)

(6)訂正事項6
特許請求の範囲請求項4における「前記冷媒配管は、前記コントローラの発熱部品に対して伝熱材製ブロックを介して配置され、該伝熱材製ブロックは、前記発熱部品側に接触配置される第1ブロックと、前記冷媒配管が接触配置される第2ブロックとに2分割され、2分割された前記第1ブロックおよび前記第2ブロック同士が一体に組み付け可能な構成とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の空気調和機」と記載されているのを、「前記冷媒配管は、前記コントローラの発熱部品に対して伝熱材製ブロックを介して配置され、該伝熱材製ブロックは、前記発熱部品側に接触配置される第1ブロックと、前記冷媒配管が接触配置される第2ブロックとに2分割され、2分割された前記第1ブロックおよび前記第2ブロック同士が一体に組み付け可能な構成とされていることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機」に訂正する。(請求項4の記載を引用する訂正後の請求項5も同様に訂正する。)

(7)訂正事項7
特許請求の範囲請求項4における「前記冷媒配管は、前記コントローラの発熱部品に対して伝熱材製ブロックを介して配置され、該伝熱材製ブロックは、前記発熱部品側に接触配置される第1ブロックと、前記冷媒配管が接触配置される第2ブロックとに2分割され、2分割された前記第1ブロックおよび前記第2ブロック同士が一体に組み付け可能な構成とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の空気調和機」と記載されているのを、「前記冷媒配管は、前記コントローラの発熱部品に対して伝熱材製ブロックを介して配置され、該伝熱材製ブロックは、前記発熱部品側に接触配置される第1ブロックと、前記冷媒配管が接触配置される第2ブロックとに2分割され、2分割された前記第1ブロックおよび前記第2ブロック同士が一体に組み付け可能な構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機」に訂正し、新たに請求項7とする。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲請求項4における「前記冷媒配管は、前記コントローラの発熱部品に対して伝熱材製ブロックを介して配置され、該伝熱材製ブロックは、前記発熱部品側に接触配置される第1ブロックと、前記冷媒配管が接触配置される第2ブロックとに2分割され、2分割された前記第1ブロックおよび前記第2ブロック同士が一体に組み付け可能な構成とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の空気調和機」と記載されているのを、「前記冷媒配管は、前記コントローラの発熱部品に対して伝熱材製ブロックを介して配置され、該伝熱材製ブロックは、前記発熱部品側に接触配置される第1ブロックと、前記冷媒配管が接触配置される第2ブロックとに2分割され、2分割された前記第1ブロックおよび前記第2ブロック同士が一体に組み付け可能な構成とされていることを特徴とする請求項3に記載の空気調和機」に訂正し、新たに請求項8とする。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲請求項6における「前記コントローラ側の発熱部品は、該コントローラの下方部位に集中配置され、その下方部位に対して前記冷媒配管が接触配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の空気調和機」と記載されているのを、「前記コントローラ側の発熱部品は、該コントローラの下方部位に集中配置され、その下方部位に対して前記冷媒配管が接触配置されていることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機」に訂正する。

(10)訂正事項10
願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の段落【0009】において「本発明にかかる空気調和機は、圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、」と記載されているのを、「本発明にかかる空気調和機は、圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、前記コントローラは、鉛直面とされる取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、」に訂正する。

(11)訂正事項11
本件明細書の段落【0009】において「前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、外気温に応じて予め設定された冷媒温度もしくはその代替温度の目標温度に対して、結露の阻止制御を行う構成とされていることを特徴とする」と記載されているのを、「前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う構成とされていることを特徴とする」に訂正する。

(12)訂正事項12
本件明細書の段落【0011】において「本発明の空気調和機は、上記の空気調和機において、」と記載されているのを、「本発明の空気調和機は、圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、前記コントローラを冷却する前記冷媒配管で結露が発生する条件が検知されたとき、室内ファンの回転数制御、室外ファンの回転数制御、前記電子膨張弁の開度制御、前記圧縮機の回転数制御のいずれかにより結露の発生を阻止する結露阻止制御部が設けられており、前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う構成とされており、」に訂正する。

(13)訂正事項13
本件明細書の段落【0013】において「本発明にかかる空気調和機は、圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、」と記載されているのを、「本発明にかかる空気調和機は、圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、前記コントローラは、鉛直面とされる取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、」に訂正する。

(14)訂正事項14
本件明細書の段落【0013】において「前記冷媒配管は、前記コントローラに対して傾斜配置されている」と記載されているのを、「他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管は、前記取付け面に取り付けられるとともに水平方向に対して傾斜配置されている」に訂正する。

(15)訂正事項15
本件明細書の段落【0014】において「コントローラに対して傾斜配置されている」と記載されているのを、「水平方向に対して傾斜配置されている」に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の発明特定事項であるコントローラについて、「前記コントローラは、鉛直面とされた取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、」との限定を付するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項1の発明特定事項であるコントローラについて、「前記コントローラは、鉛直面とされた取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、」との限定を付すものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもなく、同様に、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項7についても発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項1は、訂正前の請求項1の発明特定事項であるコントローラについて、「前記コントローラは、鉛直面とされた取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、」 との限定を付すものである。
訂正事項1のうち、「前記コントローラは、鉛直面とされた取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており」との事項については、本件明細書の段落【0029】の「コントローラ12は、空気調和機1の室外ユニット側の適所に設置されるもので、図2に示されるように、各種制御回路やその回路を構成する各種制御基板、電子部品等が配設される鉛直面とされた複数の取付け面13や設置用のフランジ14等を備えた構成とされている。ここでは、主にコントローラ12に搭載されるインバータ用のアクティブコンバータ15、ダイオードモジュール16、パワートランジスタ17等の発熱部品周りの冷却構造について、図2ないし図5を用いて説明する。」との記載、段落【0030】の「上記のアクティブコンバータ15、ダイオードモジュール16およびパワートランジスタ17は、各々基板18,19,20上に設けられ、その基板18,19,20が取付け面13に固定設置されるようになっている。」との記載から、本件明細書に記載されていることが理解できる。
また、訂正事項1のうち、「複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され」との事項については、本件明細書の段落【0028】の「コントローラ12には、インバータを構成するパワートランジスタ等の発熱部品が搭載されているため、コントローラ12を冷却する必要がある。本実施形態では、図1に示されるように、コントローラ12に対して、冷凍サイクル11を構成する電子膨張弁(EEV)6と室内熱交換器8間の冷媒配管10Aを接触配置した構成とし、冷房時には、冷媒配管10A内を流れる電子膨張弁6で絞られた低圧二相冷媒でコントローラ12を冷却する」との記載、段落【0029】の「コントローラ12は、空気調和機1の室外ユニット側の適所に設置されるもので、図2に示されるように、各種制御回路やその回路を構成する各種制御基板、電子部品等が配設される鉛直面とされた複数の取付け面13や設置用のフランジ14等を備えた構成とされている。ここでは、主にコントローラ12に搭載されるインバータ用のアクティブコンバータ15、ダイオードモジュール16、パワートランジスタ17等の発熱部品周りの冷却構造について、図2ないし図5を用いて説明する。」との記載、段落【0030】の「上記のアクティブコンバータ15、ダイオードモジュール16およびパワートランジスタ17は、各々基板18,19,20上に設けられ、その基板18,19,20が取付け面13に固定設置されるようになっている。」との記載、段落【0031】の「伝熱材製ブロック21は、基板18,19に対して接触配置される板状の第1ブロック21Aと、冷却用の冷媒配管10Aが接触配置される板状の第2ブロック21Bとに2分割され、第1ブロック21Aおよび第2ブロック21B同士がネジ等を介して一体に結合可能な構成とされている。つまり、ヒートシンクとされる伝熱材製ブロック21の2分割された第1ブロック21Aは、基板18,19の背面に対して密着された状態で取付け面13に固定設置されることによりサブアセンブリされる一方、第2ブロック21Bは、冷媒配管10Aが接触配置されることによりサブアセンブリされ、この第1ブロック21Aと第2ブロック21Bとが組み立てライン上で一体に結合可能とされている。」との記載から、本件明細書に記載されていることが理解できる。
さらに、訂正事項1のうち、「複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており」との事項については、本件明細書段落【0034】に「また、上記のように、冷房時、電子膨張弁(EEV)6で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管10Aをコントローラ12に接触配置し、コントローラ12を冷却する構成とした場合、室温が低く、低圧が低いと、冷媒配管10Aの表面で結露が発生するリスクがある。冷媒配管10Aの表面で結露が発生すると、そのドレン水がアクティブコンバータ15、ダイオードモジュール16、パワートランジスタ17等の電子部品やそれら部品を配設した基板18,19,20、あるいはそれら以外の電装部品、回路上に滴下し、故障の発生や電子部品類の損傷の要因となるため、結露の発生を阻止する必要がある。」との記載、図面【図5】に、取付け面13において、パワートランジスタ17がアクティブコンバータ15及びダイオードモジュール16に対して鉛直方向の下方の位置に配置されていることが図示されていることから、アクティブコンバータ15及びダイオードモジュール16を冷却する冷媒管10Aで結露が発生した場合には、結露により発生した水は鉛直方向の下方すなわち、パワートランジスタ17の方向に滴下することは明らかであることから、本件明細書及び図面に開示されたものといえる。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1における発明特定事項である「目標温度に対して、結露の阻止制御を行う」との記載の不明瞭さを正して「前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う」と訂正することにより、その記載の意味を明らかにしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項1における発明特定事項である「目標温度に対して、結露の阻止制御を行う」との記載の不明瞭さを正して「前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う」と訂正することにより、その記載の意味を明らかにしたものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、同様に、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項7についても発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項2は、「前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う」と訂正するものである。
本件明細書の段落【0034】「・・・冷房時、電子膨張弁(EEV)6で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管10Aをコントローラ12に接触配置し、コントローラ12を冷却する構成とした場合、室温が低く、低圧が低いと、冷媒配管10Aの表面で結露が発生するリスクがある。」との記載及び同【0035】「本実施形態では、冷媒配管10Aでの結露を阻止するため、コントローラ12に結露阻止制御部24(図1参照)を設けている。この結露阻止制御部24は、図6に示される制御フローチャートに基いて、結露の発生を阻止する機能を有するものである。 ここでは、結露阻止制御部24を、外気温センサ25により検知された室外温度が設定値A(例えば、-5℃)以上で、かつ電子膨張弁(EEV)6とコントローラ12間の冷媒配管10Aに設けられた冷媒温度センサ26で検知されるEEV後の冷媒温度が、図7に示すように、外気温センサ25により検知される室外温度に対して予め設定されている目標温度1ないし目標温度4以下の場合に、以下の順序で順次結露阻止制御を行う構成としている。」との記載があるところ、段落【0035】の「冷媒温度センサ26で検知されるEEV後の冷媒温度」とは、段落【0034】の「電子膨張弁(EEV)6で絞られた低圧二相冷媒」の温度であることは明らかであるから、これらの記載より、訂正事項2の「前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度」が「外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う構成とされていること」は、本件明細書に記載されていることが理解できる。
さらに、本件明細書の段落【0040】「また、結露発生の条件を検知するため、EEV後の冷媒温度を冷媒配管10Aに冷媒温度センサ26を設けて検知しているが、この冷媒温度センサ26を省略し、既設の温度センサを用いてEEV後の冷媒温度に代替可能な温度等を検知して上記の結露阻止制御を行う構成としてもよい。例えば、疑似EEV後の冷媒温度として、室外熱交換器5に設けられている室外熱交温度センサ27、室内熱交換器8に設けられている室内熱交温度センサ28の検出値に基いて、下記(1)式から疑似EEV後の冷媒温度を算出し、上記の結露阻止制御に用いてもよい。」との記載から、訂正事項2の「電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度」に代えて、「代替温度」を用いることが、本件明細書に記載されていることが理解できる。
よって、訂正事項2は、本件明細書中の発明の詳細な説明に基いて導き出せる事項といえるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用するものであったところ、その引用関係を解消して独立形式請求項とするとともに、訂正事項2と同様に、訂正前の請求項1における発明特定事項である「目標温度に対して、結露の阻止制御を行う」との記載の不明瞭さを正して「前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う」と訂正することにより、その記載の意味を明らかにしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び同じく第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項3は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用するものであったところ、その引用関係を解消して独立形式請求項とするとともに、訂正事項2と同様に、訂正前の請求項1における記載の不明瞭さを正して、その記載の意味を明らかにしたものであるところ、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、同様に訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項4?6についても発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項3は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用するものであったところ、その引用関係を解消して独立形式請求項とするとともに、訂正事項2と同様に、「前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う」と訂正するものであるところ、上記(2)ウと同様の理由により、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基いて導き出せる事項といえるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項3の発明特定事項であるコントローラについて、「前記コントローラは、鉛直面とされる取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、」との事項を付加することにより、その構成を限定しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項4は、訂正前の請求項3の発明特定事項であるコントローラについて、「前記コントローラは、鉛直面とされる取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、」との事項を付加することにより、その構成を限定しようとするものであって、訂正前の請求項3に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、同様に訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項8についても発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項4は、訂正前の請求項3の発明特定事項であるコントローラについて、「前記コントローラは、鉛直面とされる取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、」との事項を付加するものであるところ、上記(1)ウで指摘した理由に加え、本件明細書段落【0043】「上記の冷暖房運転時、コントローラ12は、電子膨張弁6と室内熱交換器8間を接続している冷媒配管10A内を流れる冷媒により冷却される。この冷媒配管10A内を流れる冷媒は、冷房時、電子膨張弁6で断熱膨張された低圧二相冷媒であり、暖房時、室内熱交換器8で凝縮液化された高圧液冷媒であり、コントローラ12に設けられているアクティブコンバータ15、ダイオードモジュール16、パワートランジスタ17等の発熱部品に対して十分温度が低く、これらの発熱部品を冷却することができる。」との記載から、訂正事項4は、本件明細書及び図面に記載されたものといえる。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する


(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項3における「前記冷媒配管は、前記コントローラに対して傾斜配置されている」と記載されているのを、「他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管は、前記取付け面に取り付けられるとともに水平方向に対して傾斜配置されている」に訂正するものである。
訂正事項5のうち「前記冷媒配管は、」「水平方向に対して傾斜配置されている」との事項は、訂正前の請求項3における発明特定事項である「冷媒配管は、前記コントローラに対して傾斜配置されている」との記載が技術的に正確に特定されておらず、訂正前の請求項3に係る発明が明確でないものとなっていたところ、「冷媒配管は、」「水平方向に対して傾斜配置されている」と訂正することにより、訂正後の請求項3に係る発明を明確なものとしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項5のうち「他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管は、前記取付け面に取り付けられるとともに」との事項は、訂正前の請求項3における発明特定事項である「冷媒配管」について、「他の前記発熱部品を冷却する」及び「取付け面に取り付けられるとともに」との事項を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、訂正事項5は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるところ、訂正前の請求項3に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項5のうち「冷媒配管は、」「水平方向に対して傾斜配置されている」との事項について、本件明細書の段落【0049】「本実施形態では、第2ブロック21Bに対して、冷媒配管10Aを沿わせて配置するための半円形溝21Cを設けた構成としている。このため、冷媒配管10Aを第2ブロック21Bに対して半円形溝21Cに沿わせて接触配置し、それを押え金具23等を介して固定することにより、冷媒配管10Aを第2ブロック21Bに確実に密着させて接触配置することができ、これによって、冷媒配管10Aと伝熱材製ブロック21、ひいてはコントローラ12との間の伝熱効率を高め、コントローラ12およびその発熱部品の冷却性能を一段と向上することができる。」との記載、同【0051】「・・・本発明の第2実施形態について、図8を用いて説明する。本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、コントローラ12に接触配置される冷媒配管10Aを傾斜配置している点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。本実施形態においては、図8に示されるように、伝熱材製ブロック21の第2ブロック21Bに設けられる半円形溝21Cを、水平方向に対して一定の角度α傾けて設け、冷媒配管10Aをア伝熱材製ブロック21に対して傾斜配置した構成としている。」との記載から、冷媒配管10Aを沿わせて配置するための半円形溝21Cを水平方向に対して傾けて設けたことが理解できるから、コントローラ12に接触配置される冷媒配管10Aは、水平方向に対して傾けて配置したものであって、訂正事項5の「冷媒配管は、水平方向に対して傾斜配置されている」との事項は、本件明細書に記載されていたということができる。
また、訂正事項5のうち「他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管は、前記取付け面に取り付けられるとともに」との事項について、本件明細書の段落【0029】「コントローラ12は、空気調和機1の室外ユニット側の適所に設置されるもので、図2に示されるように、各種制御回路やその回路を構成する各種制御基板、電子部品等が配設される鉛直面とされた複数の取付け面13や設置用のフランジ14等を備えた構成とされている。ここでは、主にコントローラ12に搭載されるインバータ用のアクティブコンバータ15、ダイオードモジュール16、パワートランジスタ17等の発熱部品周りの冷却構造について、図2ないし図5を用いて説明する。」との記載、同【0030】「上記のアクティブコンバータ15、ダイオードモジュール16およびパワートランジスタ17は、各々基板18,19,20上に設けられ、その基板18,19,20が取付け面13に固定設置されるようになっている。この基板18,19,20の背面には、ヒートシンクを構成する伝熱材製ブロック(アルミ製ブロック)21,22が密着されて接触配置されている。」との記載、同【0031】「ヒートシンクとされる伝熱材製ブロック21の2分割された第1ブロック21Aは、基板18,19の背面に対して密着された状態で取付け面13に固定設置されることによりサブアセンブリされる一方、第2ブロック21Bは、冷媒配管10Aが接触配置されることによりサブアセンブリされ、この第1ブロック21Aと第2ブロック21Bとが組み立てライン上で一体に結合可能とされている。」との記載から、冷媒配管は取付け面13に固定設置される伝熱材製ブロック21の2分割された第1ブロック21Aに一体に結合可能とされた第2ブロック21Bに固定されており、さらにアクティブコンバータ15及びダイオードモジュール16が設けられた基板18、19の背面に密着する伝熱材製ブロック21を介して、アクティブコンバータ15及びダイオードモジュール16、すなわち他の発熱部品を冷却することが理解できるから、訂正事項5のうち「他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管は、前記取付け面に取り付けられるとともに」との事項は、本件明細書に記載されていたこということができる。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項4が請求項1から請求項3のいずれか一項の記載を引用するものものであったところ、並列的な引用関係を解消して、請求項2のみを引用するものとするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項6は、訂正前の請求項4において、並列的な引用関係を解消して、請求項2のみを引用するものとするのであるところ、請求項4に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことは明らかであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項6は、訂正前の請求項4において、並列的な引用関係を解消して、請求項2のみを引用するものとするのであるところ、本件明細書に記載されたものであることは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項4が請求項1から請求項3のいずれか一項の記載を引用するものであったところ、並列的な引用関係を解消して、請求項1のみを引用するものとするとともに、新たに請求項7とするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項7は、訂正前の請求項4において、並列的な引用関係を解消して、請求項1のみを引用するものとするとともに、新たに請求項7とするものであるところ、請求項4に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことは明らかであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項7は、訂正前の請求項4において、並列的な引用関係を解消して、請求項1のみを引用するものとするとともに、新たに請求項7とするものであるところ、本件明細書に記載されたものであることは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(8)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項4が請求項1から請求項3のいずれか一項の記載を引用するものであったところ、並列的な引用関係を解消して、請求項3のみを引用するものとするとともに、新たに請求項8とするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項8は、訂正前の請求項4の並列的な引用関係を解消して、請求項3のみを引用するものとするとともに、新たに請求項8とするものであるところ、請求項4に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことは明らかであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項8は、訂正前の請求項4の並列的な引用関係を解消して、請求項3のみを引用しようとするとともに、新たに請求項8とするものであるところ、本件明細書に記載されたものであることは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(9)訂正事項9
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項6が請求項1から請求項3のいずれか一項の記載を引用するものであったところ、並列的な引用関係を解消して、請求項2のみを引用するものとするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項9は、訂正前の請求項6の並列的な引用関係を解消して、請求項2のみを引用するものとするための訂正であるから、訂正前の請求項6に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことは明らかであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項9は、訂正前の請求項6の並列的な引用関係を解消して、請求項2のみを引用するものとするための訂正であるところ、本件明細書に記載されたものであることは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(10)訂正事項10
ア 訂正の目的について
訂正事項10は、訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項10は、訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるところ、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項10は、訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるところ、上記(1)ウにおいて示したとおり、本件明細書に記載されたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(11)訂正事項11
ア 訂正の目的について
訂正事項11は、訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項11は、訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるところ、訂正前の請求項2に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項11は、訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるところ、上記(2)ウにおいて示したとおり、本件明細書に記載されたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(12)訂正事項12
ア 訂正の目的について
訂正事項12は、訂正事項3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項12は、訂正事項3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるところ、訂正前の請求項2に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項12は、訂正事項3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるところ、上記(3)ウにおいて示したとおり、本件明細書に記載されたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(13)訂正事項13
ア 訂正の目的について
訂正事項13は、訂正事項4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項13は、訂正事項4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるところ、訂正前の請求項3に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項13は、訂正事項4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるところ、上記(4)ウにおいて示したとおり、本件明細書に記載されたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(14)訂正事項14、15
ア 訂正の目的について
訂正事項14、15は、訂正事項5に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項14、15は、訂正事項5に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるところ、訂正前の請求項3に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項14、15は、訂正事項5に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるところ、上記(5)ウにおいて示したとおり、本件明細書に記載されたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(15)一群の請求項及び別の訂正単位とすることの求めについて
訂正前の請求項1、2、4?6について、請求項2、4?6はそれぞれ、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。よって、訂正前の請求項1、2、4?6は一群の請求項である。
同様に訂正前の請求項3?6について、請求項4?6はそれぞれ、請求項3を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項2及び3によって訂正される請求項3に連動して訂正されるものである。
よって、訂正前の請求項3?6は一群の請求項である。
そうすると、一群の請求項である訂正前の請求項1、2、4?6と一群の請求項である訂正前の請求項3?6は、請求項4?6が共通するから、訂正前の請求項1?6は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正の請求は当該一群の請求項ごとに請求されたものである。 その上で、特許権者から、訂正後の請求項2と請求項4?6について並びに訂正後の請求項3と請求項8については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、それぞれ一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがあったから、訂正後の請求項〔1、7〕、〔2、4?6〕、〔3、8〕について訂正されたものとする。

(16)願書に添付した明細書の訂正に係る請求項について
明細書の訂正に係る請求項について、訂正事項10?15は、一群の請求項である訂正前の請求項1?6を対象とするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合する。

3 小括
上記のとおり、訂正事項1?15は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項の規定により準用する第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、令和1年9月30日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、7〕、〔2、4?6〕、〔3、8〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
令和1年9月30日付けの訂正の請求が認められたため、本件特許発明は、令和1年9月30日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。(以下、それぞれ「本件特許発明1?8」という。)

【請求項1】
圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、
前記コントローラは、鉛直面とされた取付け面を備え、
前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、
複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、
複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、 前記コントローラを冷却する前記冷媒配管で結露が発生する条件が検知されたとき、室内ファンの回転数制御、室外ファンの回転数制御、前記電子膨張弁の開度制御、前記圧縮機の回転数制御のいずれかにより結露の発生を阻止する結露阻止制御部が設けられており、
前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う構成とされていることを特徴とする空気調和機。」

【請求項2】
圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、
前記コントローラを冷却する前記冷媒配管で結露が発生する条件が検知されたとき、室内ファンの回転数制御、室外ファンの回転数制御、前記電子膨張弁の開度制御、前記圧縮機の回転数制御のいずれかにより結露の発生を阻止する結露阻止制御部が設けられており、
前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う構成とされており、 前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記室内ファンの回転数制御、前記室外ファンの回転数制御、前記電子膨張弁の開度制御、前記圧縮機の回転数制御の順序で順次結露の阻止制御を行う構成とされていることを特徴とする空気調和機。

【請求項3】
圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、
前記コントローラは、鉛直面とされる取付け面を備え、
前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、
複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、
複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、 他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管は、前記取付け面に取り付けられるとともに水平方向に対して傾斜配置されていることを特徴とする空気調和機。

【請求項4】
前記冷媒配管は、前記コントローラの発熱部品に対して伝熱材製ブロックを介して配置され、該伝熱材製ブロックは、前記発熱部品側に接触配置される第1ブロックと、前記冷媒配管が接触配置される第2ブロックとに2分割され、2分割された前記第1ブロックおよび前記第2ブロック同士が一体に組み付け可能な構成とされていることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。

【請求項5】
前記第2ブロックには、前記冷媒配管を沿わせて配置するための半円形溝が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の空気調和機。

【請求項6】
前記コントローラ側の発熱部品は、該コントローラの下方部位に集中配置され、その下方部位に対して前記冷媒配管が接触配置されていることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。

【請求項7】
前記冷媒配管は、前記コントローラの発熱部品に対して伝熱材製ブロックを介して配置され、該伝熱材製ブロックは、前記発熱部品側に接触配置される第1ブロックと、前記冷媒配管が接触配置される第2ブロックとに2分割され、2分割された前記第1ブロックおよび前記第2ブロック同士が一体に組み付け可能な構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。

【請求項8】
前記冷媒配管は、前記コントローラの発熱部品に対して伝熱材製ブロックを介して配置され、該伝熱材製ブロックは、前記発熱部品側に接触配置される第1ブロックと、前記冷媒配管が接触配置される第2ブロックとに2分割され、2分割された前記第1ブロックおよび前記第2ブロック同士が一体に組み付け可能な構成とされていることを特徴とする請求項3に記載の空気調和機。

第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1?6に係る特許に対して、当審が平成31年2月6日に特許権者に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

[理由1] 本件特許は、以下の点で特許請求の範囲の請求項1?6の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
1 請求項1の「外気温に応じて予め設定された冷媒温度もしくはその代替温度の目標温度に対して、結露の阻止制御を行う」との記載により特定される事項が明確でない。請求項1を引用する請求項2、4?6も同様の理由により明確でない。

2 請求項3の「前記冷媒配管は、前記コントローラに対して傾斜配置されている」との記載により特定される事項が明確でない。請求項3を引用する請求項4?6も同様の理由により明確でない。

[理由2] 本件特許は、以下の点で特許請求の範囲の請求項1?6の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
1 請求項1に係る発明の「前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、外気温に応じて予め設定された冷媒温度もしくはその代替温度の目標温度に対して、結露の阻止制御を行う構成とされている」との特定事項は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。請求項1を引用する請求項2、4?6も同様の理由により発明の詳細な説明に記載されたものでない。

2 請求項3に係る発明の「前記冷媒配管は、前記コントローラに対して傾斜配置されている」との事項は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。請求項3を引用する請求項4?6も同様の理由により発明の詳細な説明に記載されたものでない。

[理由3] 本件特許の請求項1、3?6に係る発明は、下記1?4の理由により、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

1 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証に記載された発明を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2 請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に、甲第4号証に記載された事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

3 請求項3に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

4 請求項4?6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項を組み合わせることにより、または甲第1号証に記載された発明に甲第4号証に記載された事項及び甲第6号証に記載された事項を適用することにより、あるいは甲第4号証に記載された発明に甲第6号証に記載された事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項4?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
[刊行物]
甲第1号証:特開2009-299986号公報
甲第2号証:特開2008-101862号公報
甲第4号証:特開2010-147334号公報
甲第6号証:特開2010-175231号公報

第5 当審の判断
1 理由1について
(1)上記第2のとおり、令和1年9月30日付けの訂正の請求が認められるところ、請求項1において、「前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う」ことが特定されたことから、電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行うことが明らかとなり、本件特許発明1は明確となった。
よって、本件特許発明1及びそれを引用する本件特許発明7、並びに同様の記載を含む本件特許発明2及びそれを引用する本件特許発明4?6は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

(2)上記第2のとおり、令和1年9月30日付けの訂正の請求が認められるところ、請求項3において、「冷媒配管は・・・水平方向に対して傾斜配置されている」ことが特定され、冷媒配管は水平方向に対して傾斜配置されていることが明らかとなり、本件特許発明3は明確となった。 よって、本件特許発明3及びそれを引用する本件特許発明8は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

2 理由2について
(1)上記第2のとおり、令和1年9月30日付けの訂正の請求が認められるところ、請求項1において、「前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う」ことが特定され、本件明細書段落【0035】の「ここでは、結露阻止制御部24を、外気温センサ25により検知された室外温度が設定値A(例えば、-5℃)以上で、かつ電子膨張弁(EEV)6とコントローラ12間の冷媒配管10Aに設けられた冷媒温度センサ26で検知されるEEV後の冷媒温度が、図7に示すように、外気温センサ25により検知される室外温度に対して予め設定されている目標温度1ないし目標温度4以下の場合に、以下の順序で順次結露阻止制御を行う構成としている」との記載、同段落【0040】の「また、結露発生の条件を検知するため、EEV後の冷媒温度を冷媒配管10Aに冷媒温度センサ26を設けて検知しているが、この冷媒温度センサ26を省略し、既設の温度センサを用いてEEV後の冷媒温度に代替可能な温度等を検知して上記の結露阻止制御を行う構成としてもよい。」との記載からみて、発明の詳細な説明には、“電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行うこと”は開示されているということができる。
よって、本件特許発明1及びそれを引用する本件特許発明7、並びに同様の記載を含む本件特許発明2及びそれを引用する本件特許発明4?6は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

(2)上記第2のとおり、令和1年9月30日付けの訂正の請求が認められたところ、請求項3において、「冷媒配管は・・・水平方向に対して傾斜配置されている」ことが特定され、本件明細書【0005】?【0008】、【0014】等の記載によれば、本件特許発明3は、ドレン水がコントローラや電子部品等に滴下することによる故障を防止することを課題とし、冷媒配管を傾斜配置して、「冷媒配管の傾斜に沿わせて速やかに特定の方向に排出する」ことにより、上記課題を解決しようとするものと解される。そして、冷媒配管を水平方向に対して傾斜配置することにより、ドレン水が冷媒配管の傾斜に沿わせて排出されることは自明であるから、本件特許発明3は課題を解決することができるものとなった。
よって、本件特許発明3及びそれを引用する本件特許発明8は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

3 理由3について
(1)引用文献等の記載
A 甲第1号証(特開2009-299986号公報)
取消理由通知において引用した甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

ア「【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧縮機へ電力を供給する電源のパワー素子を冷媒によって冷却する冷凍装置において、パワー素子やその周辺部における結露を未然に防ぎ、冷凍装置の信頼性を向上させることにある。」

イ「【0024】
図1に示すように、本実施形態の空調機(10)は、屋外に設置される室外ユニット(11)と、屋内に設置される室内ユニット(12)を一つずつ備えている。室外ユニット(11)には、室外回路(21)が収容されている。室内ユニット(12)には、室内回路(22)が収容されている。この空調機(10)では、室外回路(21)と室内回路(22)を一対の連絡配管(23,24)によって接続することによって冷媒回路(20)が形成されている。
【0025】
室外回路(21)には、圧縮機(30)と四方切換弁(41)と冷却用部材(50)と膨張弁(43)とが設けられている。なお、冷却用部材(50)については後述する。圧縮機(30)は、その吐出側が四方切換弁(41)の第1のポートに接続され、その吸入側がアキュームレータ(34)を介して四方切換弁(41)の第2のポートに接続されている。四方切換弁(41)は、その第3のポートが室外熱交換器(42)の一端に接続され、その第4のポートがガス側閉鎖弁(44)に接続されている。室外熱交換器(42)の他端は、冷却用部材(50)を介して膨張弁(43)の一端に接続されている。膨張弁(43)の他端は、液側閉鎖弁(45)に接続されている。
【0026】
室内回路(22)には、室内熱交換器(46)が設けられている。室内回路(22)は、そのガス側の端部がガス側連絡配管(23)を介してガス側閉鎖弁(44)に接続され、その液側の端部が液側連絡配管(24)を介して液側閉鎖弁(45)に接続されている。
【0027】
圧縮機(30)は、いわゆる全密閉型圧縮機である。つまり、圧縮機(30)では、冷媒を圧縮する圧縮機構(32)と、圧縮機構(32)を回転駆動するための電動機(33)とが、一つのケーシング(31)内に収容されている。四方切換弁(41)は、第1のポートと第3のポートが連通し且つ第2のポートと第4のポートが連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートと第4のポートが連通し且つ第2のポートと第3のポートが連通する第2状態(同図に破線で示す状態)とに切り換わる。膨張弁(43)は、弁体がパルスモータによって駆動される開度可変の電動膨張弁である。」

ウ「【0029】 室外ユニット(11)には、電源であるインバータ装置(55)と、制御手段であるコントローラ(60)とが設けられている。インバータ装置(55)は、商用電源から供給された交流の周波数をコントローラ(60)からの指令値に変換し、周波数を変換した交流を圧縮機(30)の電動機(33)へ供給するように構成されている。このインバータ装置(55)には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー素子(56)が設けられている。図2に示すように、インバータ装置(55)では、パワー素子(56)が配線基板(57)に対して下側から取り付けられている。
【0030】
図2に示すように、冷却用部材(50)は、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属からなる本体部(51)と、本体部(51)に埋設された冷媒管(52)とを備えている。本体部(51)は、やや肉厚の平板状に形成され、パワー素子(56)に対して下側から取り付けられている。つまり、本体部(51)の上面がパワー素子(56)の下面に密着している。室外回路(21)では、室外熱交換器(42)と膨張弁(43)の間に冷却用部材(50)の冷媒管(52)が接続されている。冷媒管(52)を流れる冷媒は、本体部(51)を介してパワー素子(56)から吸熱する。
【0031】
コントローラ(60)には、圧縮機制御部(61)と膨張弁制御部(62)とが設けられている。圧縮機制御部(61)は、圧縮機(30)の回転速度(即ち、電動機(33)によって駆動される圧縮機構(32)の回転速度)を調節するように構成されている。この圧縮機制御部(61)は、圧縮機(30)の回転速度が制御目標値となるように、インバータ装置(55)の出力周波数を調節する。インバータの出力周波数が変化すると、圧縮機(30)の電動機(33)へ入力される交流の周波数が変化し、圧縮機構(32)を駆動する電動機(33)の回転速度が変化する。膨張弁制御部(62)は、膨張弁(43)のパルスモータを駆動して弁体を移動させることによって、膨張弁(43)の開度を調節する。」

エ「【0036】 暖房動作について説明する。暖房動作中の空調機(10)では、四方切換弁(41)が第2状態(図1に破線で示す状態)に設定され、室外ファン(13)と室内ファン(14)が運転される。そして、暖房動作中の冷媒回路(20)では、室内熱交換器(46)が凝縮器となって室外熱交換器(42)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。暖房動作中の冷媒回路(20)において、冷却用部材(50)は、膨張弁(43)と蒸発器である室外熱交換器(42)との間に位置している。
【0037】 、暖房動作中の冷媒回路(20)において、圧縮機(30)から吐出された冷媒は、四方切換弁(41)を通って室内熱交換器(46)へ流入し、室内空気へ放熱して凝縮する。室内ユニット(12)は、室内熱交換器(46)において加熱された空気を室内へ供給する。室内熱交換器(46)において凝縮した冷媒は、膨張弁(43)を通過する際に減圧された後に冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入し、冷媒管(52)を通過する間にパワー素子(56)から吸熱する。冷却用部材(50)から流出した冷媒は、室外熱交換器(42)へ流入し、室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(42)において蒸発した冷媒は、四方切換弁(41)とアキュームレータ(34)を順に通過し、その後に圧縮機(30)へ吸入されて圧縮される。」

オ「【0061】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。ここでは、本実施形態の空調機(10)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
【0062】
図5に示すように、本実施形態の空調機(10)では、実施形態1の湿度センサ(74)に代えて温度センサ(73)が設けられている。温度センサ(73)は、計測手段として空調機(10)に設けられており、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面(より詳しくは、パワー素子(56)と接している面)に取り付けられている。この温度センサ(73)は、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面温度を、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量として計測する。温度センサ(73)の計測値は、コントローラ(60)に入力される。
【0063】
また、本実施形態の空調機(10)において、室外気温センサ(71)は、計測手段を構成している。つまり、本実施形態のコントローラ(60)では、室外気温センサ(71)が計測した室外空気の温度が、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量として用いられる。
【0064】
本実施形態のコントローラ(60)では、膨張弁制御部(62)の構成が上記実施形態1と異なっている。本実施形態の膨張弁制御部(62)は、上記実施形態1とは異なる動作を結露防止用制御動作として実行するように構成されている。なお、本実施形態の膨張弁制御部(62)が行う起動時開度制御動作と通常時開度制御動作は、上記実施形態1における動作と同じである。
【0065】
本実施形態の膨張弁制御部(62)が行う結露防止用制御動作について、上記実施形態1と異なる点を、図6のフロー図を参照しながら説明する。
【0066】
図6のステップST21において、膨張弁制御部(62)は、室外気温センサ(71)の計測値Ta(即ち、室外空気の温度の実測値)を読み込む。また、次のステップST22において、膨張弁制御部(62)は、温度センサ(73)の計測値Td(即ち、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面温度の実測値)を読み込む。次のステップST23において、膨張弁制御部(62)は、温度センサ(73)の計測値Tdと室外気温センサ(71)の計測値Taを比較する。そして、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Ta以上(Td≧Ta)である場合、膨張弁制御部(62)はステップST21へ戻る。一方、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回っている(Td<Ta)場合、膨張弁制御部(62)はステップST23へ移る。ステップST23において、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を停止し、膨張弁(43)の開度を所定の値だけ強制的に増やす。
【0067】
ステップST23において膨張弁(43)の開度を強制的に増やした後において、膨張弁制御部(62)は、再びステップST21に戻って同じ動作を繰り返す。このため、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回っている間は、膨張弁制御部(62)が結露防止用制御動作を行う毎に、膨張弁(43)の開度が増加してゆく。そして、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Ta以上になると、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を再開し、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度となるように膨張弁(43)の開度を調節する。
【0068】
ここで、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを、温度センサ(73)の計測値Tdと室外気温センサ(71)の計測値Taを用いて判断できる理由について説明する。本実施形態の空調機(10)において、インバータ装置(55)と冷却用部材(50)は、屋外に設置された室外ユニット(11)に収容されている。つまり、インバータ装置(55)と冷却用部材(50)の周囲の雰囲気の状態は、室外空気の状態と概ね等しくなっている。一方、室外空気の相対湿度が100%になることは現実的には有り得ないため、室外空気の露点温度は室外気温(即ち、室外空気の乾球温度)よりも低くなる。このため、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taよりも低い状態では、冷却用部材(50)の表面温度が室外空気の露点温度に近付いており、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高くなっていると推測できる。
【0069】
そこで、本実施形態の膨張弁制御部(62)は、暖房動作中に温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回る場合には、冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する冷媒の温度を上昇させるために、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。従って、本実施形態によれば、上記実施形態1と同様に、圧縮機(30)の起動が完了して通常の運転状態になった後においても、冷却用部材(50)の表面温度の過度の低下を抑えることができ、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
【0070】
なお、本実施形態において、温度センサ(73)は、冷却用部材(50)自体ではなくて冷却用部材(50)の周辺部に設置されていてもよい。また、温度センサ(73)は、パワー素子(56)自体や、パワー素子(56)の周辺部に設置されていてもよい。更に、温度センサ(73)は、インバータ装置(55)の配線基板(57)のうちパワー素子(56)の近傍に位置する部分に設置されていてもよい。
【0071】
以上の説明の通り、本実施形態の空調機(10)は、パワー素子(56)、冷却用部材(50)、又はパワー素子(56)の近傍に設置された温度センサ(73)を計測手段として備えており、そのコントローラ(60)の膨張弁制御部(62)は、温度センサ(73)の計測値を利用してパワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを判断するように構成されている。更に、本実施形態では、インバータ装置(55)及び冷却用部材(50)が室外に設置されると共に、室外空気の温度を計測する室外気温センサ(71)と温度センサ(73)の両方が計測手段として空調機(10)に設けられている。また、本実施形態のコントローラ(60)の膨張弁制御部(62)は、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taよりも低くなっている場合に、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断するように構成されている。」

(ア)摘記事項イの「・・・この空調機(10)では、室外回路(21)と室内回路(22)を一対の連絡配管(23,24)によって接続することによって冷媒回路(20)が形成されている。 【0025】 室外回路(21)には、圧縮機(30)と四方切換弁(41)と冷却用部材(50)と膨張弁(43)とが設けられている。なお、冷却用部材(50)については後述する。圧縮機(30)は、その吐出側が四方切換弁(41)の第1のポートに接続され、その吸入側がアキュームレータ(34)を介して四方切換弁(41)の第2のポートに接続されている。四方切換弁(41)は、その第3のポートが室外熱交換器(42)の一端に接続され、その第4のポートがガス側閉鎖弁(44)に接続されている。室外熱交換器(42)の他端は、冷却用部材(50)を介して膨張弁(43)の一端に接続されている。膨張弁(43)の他端は、液側閉鎖弁(45)に接続されている。 【0026】 室内回路(22)には、室内熱交換器(46)が設けられている。・・・」との記載より、甲第1号証に記載された空調機は、「圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、膨張弁、室内熱交換器を冷媒管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクル」を備えることが理解できる。

(イ)摘記事項ウの「【0029】 室外ユニット(11)には、電源であるインバータ装置(55)と、制御手段であるコントローラ(60)とが設けられている。インバータ装置(55)は、商用電源から供給された交流の周波数をコントローラ(60)からの指令値に変換し、周波数を変換した交流を圧縮機(30)の電動機(33)へ供給するように構成されている。このインバータ装置(55)には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー素子(56)が設けられている。図2に示すように、インバータ装置(55)では、パワー素子(56)が配線基板(57)に対して下側から取り付けられている。 【0030】 図2に示すように、冷却用部材(50)は、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属からなる本体部(51)と、本体部(51)に埋設された冷媒管(52)とを備えている。本体部(51)は、やや肉厚の平板状に形成され、パワー素子(56)に対して下側から取り付けられている。つまり、本体部(51)の上面がパワー素子(56)の下面に密着している。室外回路(21)では、室外熱交換器(42)と膨張弁(43)の間に冷却用部材(50)の冷媒管(52)が接続されている。冷媒管(52)を流れる冷媒は、本体部(51)を介してパワー素子(56)から吸熱する。」との記載から、甲第1号証に記載された空調機は、「パワー素子及び冷却用部材を有するインバータ装置と、膨張弁制御部を含むコントローラと」を備えること及び「パワー素子及び冷却用部材を有するインバータ装置」に接続されることにより冷却する冷媒管は、「室外熱交換器(42)と膨張弁(43)の間」の冷媒管であることが理解できる。

(ウ)摘記事項エの「暖房動作中の冷媒回路(20)では、室内熱交換器(46)が凝縮器となって室外熱交換器(42)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。暖房動作中の冷媒回路(20)において、冷却用部材(50)は、膨張弁(43)と蒸発器である室外熱交換器(42)との間に位置している。」との記載から、認定事項(ア)の室外熱交換器(42)と膨張弁(43)の間の冷媒管は、「暖房動作中に、前記膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒管」であることが理解できる。

(エ)摘記事項ウの「このインバータ装置(55)には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー素子(56)が設けられている。図2に示すように、インバータ装置(55)では、パワー素子(56)が配線基板(57)に対して下側から取り付けられている。 【0030】 図2に示すように、冷却用部材(50)は、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属からなる本体部(51)と、本体部(51)に埋設された冷媒管(52)とを備えている。本体部(51)は、やや肉厚の平板状に形成され、パワー素子(56)に対して下側から取り付けられている。つまり、本体部(51)の上面がパワー素子(56)の下面に密着している。室外回路(21)では、室外熱交換器(42)と膨張弁(43)の間に冷却用部材(50)の冷媒管(52)が接続されている。冷媒管(52)を流れる冷媒は、本体部(51)を介してパワー素子(56)から吸熱する。」との記載及び認定事項(ウ)から、「インバータ装置は、配線基板の下側にパワー素子が、さらにそのパワー素子の下面に冷却用部材が、取り付けられており、前記パワー素子及び冷却用部材は、暖房動作中に、前記膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒管により冷却され」ることが理解できる。

(オ)摘記事項オの「本実施形態の空調機(10)では、実施形態1の湿度センサ(74)に代えて温度センサ(73)が設けられている。温度センサ(73)は、計測手段として空調機(10)に設けられており、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面(より詳しくは、パワー素子(56)と接している面)に取り付けられている。この温度センサ(73)は、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面温度を、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量として計測する。」との記載、同「本実施形態の空調機(10)において、室外気温センサ(71)は、計測手段を構成している。つまり、本実施形態のコントローラ(60)では、室外気温センサ(71)が計測した室外空気の温度が、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量として用いられる。」との記載及び同「本実施形態において、温度センサ(73)は、冷却用部材(50)自体ではなくて冷却用部材(50)の周辺部に設置されていてもよい。また、温度センサ(73)は、パワー素子(56)自体や、パワー素子(56)の周辺部に設置されていてもよい。更に、温度センサ(73)は、インバータ装置(55)の配線基板(57)のうちパワー素子(56)の近傍に位置する部分に設置されていてもよい。」との記載事項から、甲第1号証に記載された空調機は「冷却用部材の周辺部に設置された温度センサ73及び室外気温センサ71を備え」ることが理解できる。

(カ)摘記事項オの「【0068】 ここで、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを、温度センサ(73)の計測値Tdと室外気温センサ(71)の計測値Taを用いて判断できる理由について説明する。本実施形態の空調機(10)において、インバータ装置(55)と冷却用部材(50)は、屋外に設置された室外ユニット(11)に収容されている。つまり、インバータ装置(55)と冷却用部材(50)の周囲の雰囲気の状態は、室外空気の状態と概ね等しくなっている。一方、室外空気の相対湿度が100%になることは現実的には有り得ないため、室外空気の露点温度は室外気温(即ち、室外空気の乾球温度)よりも低くなる。このため、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taよりも低い状態では、冷却用部材(50)の表面温度が室外空気の露点温度に近付いており、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高くなっていると推測できる。 【0069】 そこで、本実施形態の膨張弁制御部(62)は、暖房動作中に温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回る場合には、冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する冷媒の温度を上昇させるために、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。従って、本実施形態によれば、上記実施形態1と同様に、圧縮機(30)の起動が完了して通常の運転状態になった後においても、冷却用部材(50)の表面温度の過度の低下を抑えることができ、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。」との記載から、甲第1号証に記載された空調機の「膨張弁制御部は、冷却用部材の周辺部で結露が生じる可能性が高いと判断されたとき、膨張弁の開度を強制的に増やすことにより、結露に起因するトラブルを未然に防ぐものである」こと及び「膨張弁制御部は、結露に起因するトラブルを未然に防ぐ制御時、前記温度センサ73の計測値が前記室外気温センサ71の計測値を下回る場合に、結露に起因するトラブルを未然に防ぐ制御を行う構成とされている」ことが理解できる。

空調機の分野における技術常識を踏まえて、上記摘記事項ア?オ及び認定事項(ア)?(カ)を総合すると、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、膨張弁、室内熱交換器を冷媒管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、暖房動作中に、前記膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒管と接続されることにより冷却される、パワー素子及び冷却用部材を有するインバータ装置と、膨張弁制御部を含むコントローラとを備えた空調機において、
前記インバータ装置は、配線基板の下側にパワー素子が、さらにそのパワー素子の下面に前記冷却用部材が、取り付けられており、
前記パワー素子及び冷却用部材は、暖房動作中に、前記膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒管により冷却され、
前記冷却用部材の周辺部に設置された温度センサ73及び室外気温センサ71を備え、
前記膨張弁制御部は、前記冷却用部材の周辺部で結露が生じる可能性が高いと判断されたとき、膨張弁の開度を強制的に増やすことにより、結露に起因するトラブルを未然に防ぐものであって、
前記膨張弁制御部は、結露に起因するトラブルを未然に防ぐ制御時、前記温度センサ73の計測値が前記室外気温センサ71の計測値を下回る場合に、結露に起因するトラブルを未然に防ぐ制御を行う構成とされている空調機。」

B 甲第2号証(特開2008-101862号公報)
取消理由通知において引用した甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

ア「【0032】
上記構成の電装品箱において、発熱部品14,15,16に冷媒回路の冷媒配管10を熱的に結合させることにより発熱部品14,15,16から冷媒配管10内の冷媒に放熱する。」

イ「【0035】
図6に示すように、この空気調和機は、圧縮機51と、上記圧縮機51の吐出側に接続された四路弁52と、上記四路弁52に一端が接続された室外熱交換器53と、上記室外熱交換器53の他端に一端が接続された膨張弁54と、上記膨張弁54の他端に一端が接続された室内熱交換器55と、上記室内熱交換器55の他端に四路弁52を介して一端が接続され、他端が圧縮機51の吸引側に接続されたアキュムレータ56とを備えている。上記圧縮機51と四路弁52と室外熱交換器53膨張弁54およびアキュムレータ56で室外機50を構成し、室内熱交換器55で室内機60を構成している。」

ウ「【0036】
この空気調和機の冷媒回路に電装品箱を配置する場所としては、次の(1)?(4)が適している。
(1) 室外熱交換器53と膨張弁54との間(冷房運転時:高圧液冷媒、暖房運転時:低圧二相冷媒)
(2) 室外熱交換器53の中間部(冷房運転時:高圧二相冷媒、暖房運転時:低圧二相冷媒)
(3) 膨張弁54と室内熱交換器55との間(冷房運転時:低圧二相冷媒、暖房運転時:高圧液冷媒)
(4) 圧縮機51の吸入管(冷房運転、暖房運転共に低圧ガス冷媒)」

空調機の分野における技術常識を踏まえて、上記摘記事項ア?ウを総合すると、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「圧縮機、四路弁、室外熱交換器、膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房運転時、前記膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる膨張弁と室内熱交換器との間の冷媒回路に電装品箱を配置した空気調和機。」

C 甲第3号証(国際公開第2008/059803号)
申立人が提出した甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

ア 「[0038] この熱交換システム1Aは、室外用熱交換器11、室内用熱交換器12、圧縮機13、切換弁14、膨張弁15、およびキャピラリチューブ16を備えており、冷凍サイクルを形成する。また、この熱交換システム(空調システム)1Aは、室内を冷房する冷房運転と 室内を暖房する暖房運転との両方が可能である。なお、図1では、冷房運転中における冷媒の流路及び流れの向きが実線矢印J1で示されており、暖房運転中における冷媒の流路(一部)及び流れの向きが点線矢印J2で示されている。また鎖線の右側に室外での構成を、鎖線の左側に室内での構成を、それぞれ示している。他の実施形態の説明で用いられる図面についても同様である。」

イ 「[0053] ここにおいて、経路PT2上における冷媒は、上記の2種類の膨張機構15,16によって膨張する。具体的には、冷房運転中には室外用熱交換器11で凝縮された冷媒がキャピラリチューブ16で膨張して、冷却ジャケット20を通過した後に、さらに、膨張弁15でも膨張して室内用熱交換器12へと到達する。この際、キャピラリチューブ16から流出して膨張弁15に至るまでの間を流れる冷媒によって冷却ジャケット20が冷却され、当該冷却ジャケット20に設けられた副次的な冷却対象物30が冷却される。」

ウ 「[0060] 特に、冷房運転中および暖房運転中のいずれにおいても、膨張弁15およびキヤピラリチューブ16の両者間を流れる冷媒の温度Tl,T2が高温高圧冷媒の温度と低温低圧冷媒の温度との中間温度であり、低温低圧冷媒よりは高温になる。そのため、冷房運転中および暖房運転中のいずれにおいても、当該冷媒の温度T1が露点以下にまで低下することを回避し、冷却ジャケット20付近での結露の発生を防止することができる。」

エ 「[0068] この第 2実施形態に係る熱交換システム1Bにおいては、図3に示すように、室外用 熱交換器11と室内用熱交換器12とを結ぶ経路PT2上において、上記の第1実施形態とは逆の順序で、膨張弁15、冷却ジャケット20、キヤビラリチューブ16が配置される。すなわち、経路PT2上に冷却ジャケット20が設けられるとともに、当該冷却ジャケット20と室外用熱交換器11との間に膨張弁15が設けられ、当該冷却ジャケット20と室内用熱交換器12との間にキヤビラリチューブ16が設けられる。
[0069] このような態様の熱交換システム1Bによっても、熱交換システム1Aと同様に、コストの増大を回避しつつ、冷却ジャケット20付近での結露の発生を防止することが可能である。 」

オ「[0104] ・・・第7実施形態は、第1実施形態の変形例である。第7実施形態における熱交換システム1Fは、第1実施形態における熱交換システム1Aと同様の構成を有している。但し、室外用熱交換器11用のファン11Fおよび室内用熱交換器12用のファン12Fの存在を明確に描いた。・・・」

カ「[0106] 第7実施形態における熱交換システムの制御部50は、結露センサ40による計測結果に応じて、冷却ジャケット20付近で結露する可能性が所定レベル以上であるか否かを判定する。具体的には、結露センサ40によって計測された相対湿度が所定の閾値 (例えば90%)より大きいという条件C1を満たすときに、結露の可能性が所定レべル以上であると判定すればよい。」

キ「[0107] そして、制御部50は、結露の可能性が所定レベル以上であると判定されると、冷却ジャケット20付近における冷媒の温度が上昇するように、ファン11F,12Fの回転速度を変更する。」

空調機の分野における技術常識を踏まえて、上記摘記事項ア?キを総合すると、甲第3号証には、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

「圧縮機、切換弁、室外用熱交換器、膨張弁、冷却ジャケット、キャピラリチューブ、室内用熱交換器を冷媒経路により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時、前記膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒経路に設けられた冷却ジャケットにより冷却される冷却対象物とを備えた熱交換システムにおいて、前記冷却対象物を冷却する前記冷却ジャケット付近での相対湿度に応じて膨張弁の弁開度の制御、室内用熱交換器室ファンの回転数制御、室外用熱交換器ファンの回転数制御、のいずれかにより結露の発生を防止する制御部が設けられている熱交換システム。」

D 甲第4号証(特開2010-147334号公報)
取消理由通知において引用した甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

ア「【0036】
・・・図1に示すように、本発明の実施形態に係る空気調和装置(1)は、室外機(1A)と室内機(1B)とを有し、蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路(10)を備えている。該冷媒回路(10)は、圧縮機(11)と室外熱交換器(12)とキャピラリーチューブ(13)と室内熱交換器(14)とが順に冷媒配管によって接続されることにより形成されている。また、冷媒回路(10)は四路切換弁(17)を備え、冷媒循環が可逆に構成されている。」

イ「【0038】
・・・室外熱交換器(12)の液側端部には、液管(23)の一端が接続されている。液管(23)には、膨張機構としてのキャピラリーチューブ(13)が設けられている。また、液管(23)のキャピラリーチューブ(13)よりも室外熱交換器(12)側には、本発明に係る冷媒冷却器を構成する冷媒ジャケット(81)が設けられている。液管(23)の他端は、室内熱交換器(14)の液側端部に接続されている。

ウ「【0042】
また、空気調和装置(1)は、上記冷媒回路(10)の構成部品を制御するための各種電装品が組み付けられた電装品ユニット(50)を備えている。以下に詳述するが、冷媒ジャケット(81)は、電装品ユニット(50)の各種電装品(72,73)を覆う電装品箱(51)に取り付けられている。」

エ「【0049】
《電装品ユニット》
図3に示すように、電装品ユニット(50)は、複数の電装品(72,73)と、該電装品(72,73)が実装された基板(71)が収納された電装品箱(51)とを備えている。また、電装品箱(51)は、箱本体(53)と、伝熱板(54)とを備えている。
【0050】
上記箱本体(53)は、上板に開口部(52)が形成された横長の筺状体に形成されている。一方、上記伝熱板(54)は、箱本体(53)の上板の開口部(52)を遮蔽するように該箱本体(53)の上面に取り付けられている。このようにして、電装品箱(51)は、略密閉状態に形成されている。」

オ「【0053】
電装品箱(51)内に収容された基板(71)には、例えばパワートランジスタやダイオード等のように電力制御や電力変換を行うための素子であって稼動時に高温に発熱するパワー素子(72)やその他の電装品(73)が実装されている。図4に示すように、発熱素子であるパワー素子(72)は、基板(71)の上面に実装される一方、その他の電装品(73)は、基板(71)の下面に実装されている。」

カ「【0058】
また、上述のように、冷媒ジャケット(81)は、板状に形成されて電装品箱(51)の上面の一部であって傾斜面(91)の一部を形成する伝熱板(54)に取り付けられている。そのため、冷媒ジャケット(81)も後方に向かって下方に傾斜して配置されている。」

キ「【0064】
〈パワー素子の冷却〉
冷媒ジャケット(81)内の冷媒流路には、冷房運転時には、室外熱交換器(12)で凝縮した冷媒が流れ、暖房運転時には、室内熱交換器(14)で凝縮した後、キャピラリーチューブ(13)を通過して減圧された冷媒が流れる。冷媒ジャケット(81)を流れる冷媒の温度は、運転条件や外気条件によって異なるが、冷房運転時には例えば50℃程度、暖房運転時には例えば5℃程度になっている。
【0065】
一方、パワー素子(72)は作動時に発熱するため、上記冷媒ジャケット(81)内を流れる冷媒よりも高温となっている。そのため、パワー素子(72)は、伝熱板(54)及び冷媒ジャケット(81)を介して冷媒ジャケット(81)に形成された冷媒流路を流れる冷媒に放熱することによって冷却される。」
空調機の分野における技術常識を踏まえて、上記摘記事項ア?キを総合すると、甲第4号証には、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

「圧縮機、四路切換弁、室外熱交換器、キャピラリーチューブ、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房運転時には室外熱交換器で凝縮した冷媒が、暖房運転時にはキャピラリーチューブを通過して減圧された冷媒が流れる液管23の一部と接触されることにより冷却される電装品ユニットとを備えた空気調和装置において、
前記電装品ユニットは、傾斜した上面を備え、
前記電装品ユニットは、パワー素子を含む各種電装品が実装された基板を内部に収容し、
前記電装品ユニット内に収容されたパワー素子は、冷房運転時には室外熱交換器で凝縮した冷媒が、暖房運転時にはキャピラリーチューブを通過して減圧された冷媒が、流れる液管23の一部により冷却され、
前記液管23の一部は、前記傾斜した上面に取付けられるとともに後方に向かって下方に傾斜配置されている空気調和装置。」

E 甲第5号証(特開2009-204238号公報)
申立人の提出した甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0004】 空気調和機においては、室内ユニットあるいは室外ユニットの筐体内部に電気部品等の機能部品が多く配置されている。そして、このような機能部品は、水に濡れることによって不具合を発生するおそれがある。しかしながら、上記従来の空気調和機および室内用ユニット構造では、筐体外部への結露の漏れ出しを防止することはできても、筐体内部において発生する結露の落下等を防止することはできない。このため、筐体内部に配置され、結露する冷媒配管の直下に、例えば、電気部品等の機能部品が配置されている場合においては、機能部品に不具合を発生させてしまうおそれがある。」

イ 「【0086】・・・ 本実施形態の空気調和機1は、図4に示すように、膨張弁25の鉛直上方の空間に配置された第1吸入管28の一部である第1部101と、第1部101に連続し、かつ、第1部101より鉛直上方に伸びる第1吸入管28の一部である第2部102とを有している空気調和機1の配管構造において、少なくとも第1部101の表面に設けられたクッション材103と、第2部102の表面においてクッション材103に連続して設けられ、クッション材103よりも第1吸入管28の直径方向において厚みが大きい円筒形状の断熱筒104とを備えている。」

ウ 「【0093】・・・ 本実施形態の空気調和機1では、断熱筒104が、図5に示すように、鉛直上方に斜め方向に伸びている第2部102の傾斜部分に配置されている。
【0094】 これにより、第1吸入管28の表面を伝ってくる結露wを、膨張弁25が配置された第1部101の直下と平面的に異なる位置に容易に導くことが可能となる。」

空調機の分野における技術常識を踏まえて、上記摘記事項ア?ウを総合すると、甲第5号証には、以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。

「冷媒配管は、傾斜配置されていることを特徴とする空気調和機。」

F 甲第6号証(特開2010-175231号公報)
取消理由通知において引用した甲第6号証には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0030】
図1は、本実施形態に係る空気調和装置10の配管系統を示している。この空気調和装置10は、冷房運転と暖房運転とが可能なヒートポンプ式の空気調和装置10である。図1に示すように、空気調和装置10は、室外に設置される室外機11と、室内に設置される室内機12とを備えている。室外機11と室内機12とは、第1接続配管13及び第2接続配管14を介して接続されている。空気調和装置10には、これら接続配管13,14を含む配管が閉回路状に接続された冷媒回路18が設けられている。冷媒回路18には、主として、室内熱交換器20、圧縮機23、油分離器24、室外熱交換器25、膨張機構である膨張弁26、アキュムレータ27、四方切換弁28が設けられている。冷媒回路18では、冷媒が循環することにより、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。」

イ 「【0036】
膨張弁26は、冷媒回路18において室外熱交換器25と室内熱交換器20との間に配設され、流入した冷媒を膨張させて、所定の圧力に減圧させる。膨張弁26として、例えば開度可変の電子膨張弁26を採用することができる。」

ウ 「【0039】
冷媒回路18の液側配管には、電装品モジュール35の発熱部を冷却するための冷却部である冷媒ジャケット37が接合されている。図例では、冷媒ジャケット37が接合される液側配管は、冷媒回路18における室外熱交換器25と膨張弁26との間の液側配管となっているが、冷媒ジャケット37が接合される冷媒配管は、これに限られない。ただし、冷却能力を考慮すれば、冷媒ジャケット37は、液側配管に接合されるのが好ましい。
【0040】
冷媒ジャケット37に接合された配管には、冷房運転時には、室外熱交換器25で凝縮した冷媒が流れ、暖房運転時には、室内熱交換器20で凝縮し、膨張弁26で減圧された冷媒が流れる。これらの冷媒の温度は、運転条件等によって異なるが、例えば冷房運転時で40?45℃程度である。」

エ 「【0050】
背面側基板54は、パワー素子56a(図8参照)及びパワー素子56a以外のコンデンサ等の素子56b(図5及び図6参照)を含む電装品56が複数実装される第1基板部54aと、パワー素子56a以外の素子56bからなる電装品56が複数実装される第2基板部54bとを備えている。第2基板部54bに実装される電装品56としては、例えばノイズフィルタ等が挙げられる。第2基板部54bは、電装品56が背面側になるように主部材51に固定されている。」

オ 「【0052】
第1基板部54aに設けられるパワー素子56aとしては、例えば圧縮機制御用インバータ、ファンモータ制御用モジュール等が挙げられる。すなわち、第1基板部54aには、複数のパワー素子56aが実装されている。これらパワー素子56aは第1基板部54aの前面に実装されている。一方、第1基板部54aの背面には、パワー素子56a以外の電装品56が実装されるとともに、板状の電装部材57が設けられている。この電装部材57は、第1基板部54aに対して垂直になるように第1基板部54aに接合されている。」

カ 「【0054】
第1基板部54aに実装された複数のパワー素子56aの前面には、伝熱部材である伝熱板60が面接合されている(図8参照)。すなわち、伝熱板60は、これら複数のパワー素子56aの配設位置を包含する大きさの部材であり、例えばアルミニウム等の熱伝導性の高い材質で構成されている。パワー素子56aの前面に伝熱板60が接合された構成となっているので、後述の冷媒ジャケット37接合時のパワー素子56aの傷つきを防止することができる。なお、主部材51の主面部51aには、図8に示すように、伝熱板60の前面側の一部の覆うように突出したカバー部51eが一体に形成されている。」

キ 「【0056】
伝熱板60の前面には、冷媒ジャケット37が面接合されている。冷媒ジャケット37は、例えばボルトによるねじ締結により伝熱板60に固定されている。
【0057】
冷媒ジャケット37は、例えばアルミニウム等の熱伝導性の高い材質で構成された厚みのある板材からなり、冷媒回路18の冷媒配管18aが接合されている。すなわち、冷媒回路18の冷媒を流通させる冷媒配管18aに接合される冷媒ジャケット37が、伝熱板60を介してパワー素子56aに熱的に接続されている。したがって、伝熱板60は、パワー素子56aに接合されるとともに、冷媒ジャケット37を熱的に接続可能な受け部として機能する。
【0058】
図2に示すように、冷媒ジャケット37は、横長の長方形状に形成されるとともに、長手方向に延びる溝(図8参照)が形成されている。この溝は上下に2つ設けられており、互いに平行となっている。この2つの溝にU字状に折り曲げられた冷媒配管18aが圧入されることにより、冷媒ジャケット37に冷媒配管18aが接合されている。冷媒ジャケット37に固定された冷媒配管18aは、冷媒回路18の冷媒を流通させる冷却用通路として機能する。」

ク 「【0071】
この空気調和装置10では、冷房運転を行うときは、四方切換弁28は第1状態に切り換えられる。圧縮機23で圧縮された冷媒は、油分離器24で油分が分離された後、四方切換弁28を経由して室外熱交換器25に流入する。この冷媒は、室外熱交換器25において室外空気と熱交換されて凝縮し、液冷媒となる。この液冷媒は、上下方向に延びる一方の配管18bを上方に向かって流れた後、冷媒ジャケット37に固定された冷媒配管18aを流れる。このとき、圧縮機23、ファンモータの駆動によってパワー素子56aが発熱していれば、パワー素子56aの発熱によって伝熱板60が加熱されているが、冷媒配管18aを流れる冷媒によって、この加熱された伝熱板60が冷却される。」

ケ 「【0073】
一方、暖房運転時には、四方切換弁28は第2状態に切り換えられる。圧縮機23から吐出された冷媒は、油分離器24及び四方切換弁28を経由して室内熱交換器20に導入される。室内熱交換器20において、冷媒は室内空気と熱交換されて凝縮する。この熱交換により、室内空気は加熱されて室内に吹き出される。室内空気によって冷却されて凝縮した冷媒は、膨張弁26で膨張され、その後、上下方向に延びる一方の配管18bを上方に向かって流れた後、冷媒ジャケット37に固定された冷媒配管18aを流れる。このとき、パワー素子56aの発熱によって加熱された伝熱板60を冷却する。」

空調機の技術分野における技術常識を踏まえて、上記摘記事項ア?ケを総合すると、甲第6号証には、以下の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。

「圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房運転時には前記室外熱交換器で凝縮した液冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却される、電装品モジュールを有する空気調和装置において、電装品モジュールは、鉛直面とされた第1基板部54a及び第2基板部54bを備え、第1基板部54aには複数種類のパワー素子及びパワー素子以外の素子が実装され、第2基板部54bには複数種類のパワー素子以外の素子が実装されており、複数種類のパワー素子のそれぞれは、冷房時、室外熱交換器で凝縮された液冷媒が流れる冷媒配管により冷却され、前記第1基板部54aは第2基板部54bの下側に配設され、その第1基板部54aに対して該パワー素子を冷却する伝熱板60、冷却ジャケット37及び冷媒配管が接合されており、
電装品モジュールのパワー素子を冷却するための冷媒配管は、前記パワー素子に対して伝熱板及び冷媒ジャケットを介して配置され、前記伝熱板は前記パワー素子に接合され、前記冷媒ジャケットは冷媒配管に接合され、伝熱板及び冷媒ジャケットはボルトによるねじ締結により固定可能な構成とされており、
冷媒ジャケットには、電装品モジュールのパワー素子を冷却するための冷媒配管を圧入するための溝が設けられている、空気調和装置。」

(2)対比・判断
A 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、以下の点で相違し、その余の点で一致する。

(相違点1)
冷媒配管により冷却される対象について、本件特許発明1では、コントローラであるのに対し、甲1発明では、インバータ装置であって、コントローラではない点。

(相違点2)
冷却される対象と接触する冷媒配管について、本件特許発明1では、冷房時、低圧二相冷媒が流れる冷媒配管であるのに対し、甲1発明では、暖房動作中に、低圧二相冷媒が流れる冷配管である点。

(相違点3)
結露が発生する条件を検知する場所及び結露阻止制御部の構成について、本件特許発明1では、コントローラを冷却する冷媒配管であって、電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う構成であるのに対し、甲1発明では、インバータ装置の冷却用部材の周辺部であって、冷却用部材の周辺部に設置された温度センサ73の計測値が室外気温センサ71の計測値を下回る場合に、結露の阻止制御を行う構成である点。

(相違点4)
コントローラの具体的構成について、本件特許発明1では、コントローラは、鉛直面とされた取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されているのに対し、甲1発明では、コントローラは、膨張弁制御部を備えるものの、取付け面を備えるか否か不明であり、発熱部品の配置についても不明である点。

事案に鑑み、まず相違点4について検討すると、相違点4に係る本件特許発明1の構成については、甲第2?6号証のいずれにも開示されていない。
そして、本件特許発明1は、結露の発生を阻止しつつ、相違点4に係る本件特許発明1の構成を備えることにより、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品と、複数種類の発熱部品を冷却する冷却構造を同一の取付け面の鉛直方向に渡って配置することが可能となり、電子部品の配置設計の自由度が増すことから、コントローラ自体を小型化することができるという格別顕著な効果を奏するものであり、当業者が適宜なし得る設計的事項ということもできない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2?6号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

B 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、両者は上記相違点1?3に加え以下の点で相違する。

(相違点5)
結露阻止制御部の構成について、本件特許発明2では、結露の発生を阻止する制御時、前記室内ファンの回転数制御、前記室外ファンの回転数制御、前記電子膨張弁の開度制御、前記圧縮機の回転数制御の順序で順次結露の阻止制御を行う構成とされているのに対し、甲1発明では、結露の発生を阻止する制御時、膨張弁の開度を強制的に増やすものではあるが、室内ファンの回転数制御、室外ファンの回転数制御、圧縮機の回転数制御を行うか明らかでなく、さらに室内ファンの回転数制御、室外ファンの回転数制御、膨張弁の開度制御、圧縮機の回転数制御の順序で順次結露の阻止制御を行うものではない点。

事案に鑑み、まず相違点5について検討すると、相違点5に係る本件特許発明2の構成については、甲第2?6号証のいずれにも開示されていない。 そして、本件特許発明2は、相違点2に係る本件特許発明2の構成を備えることにより、コントローラを冷却する冷媒配管での結露の発生を確実に防止することができ、コントローラにおいて、結露により発生したドレン水の滴下による故障の発生や電子部品の損傷等を防止しつつ、コントローラの冷却機能を高めることができ、製品の品質および信頼性を向上することができるという格別顕著な効果を奏するものであって、当業者が適宜なし得る設計的事項ということもできない。
したがって、本件特許発明2は、甲1発明及び甲2?6号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

C 本件特許発明3について
I 甲第1号証を主引例とした場合
本件特許発明3と甲1発明とを対比すると、両者は上記相違点1に加え以下の点で相違する。

(相違点6)
コントローラの具体的構成について、本件特許発明3では、コントローラは、鉛直面とされる取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されているのに対し、甲1発明では、コントローラは、膨張弁制御部を備えるものの、取付け面を備えるか否か不明であり、発熱部品の配置についても不明である点。

(相違点7)
冷却されるコントローラと接触する冷媒配管について、本件特許発明3では、前記取付け面に取り付けられるとともに水平方向に対して傾斜配置されているのに対して、甲1発明では、そのように構成されていない点。

事案に鑑み、まず相違点6について検討すると、相違点6に係る本件特許発明3の構成については、甲第2?6号証のいずれにも開示されていない。
そして、本件特許発明3は、結露が発生しても、ドレン水がコントローラ上に設けられている電子部品上に滴下することを防止しつつ、相違点6に係る本件特許発明3の構成を備えることにより、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品と、複数種類の発熱部品を冷却する冷却構造を同一の取付け面の鉛直方向に渡って配置することが可能となり、電子部品の配置設計の自由度が増すことから、コントローラ自体を小型化することができるという格別顕著な効果を奏するものであって、当業者が適宜なし得る設計的事項ということもできない。

II 甲第4号証を主引用例とした場合
本件特許発明3と甲4発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

(相違点8)
室外熱交換器と室内熱交換器との間の冷媒配管に接続される減圧要素について、本件特許発明3では電子膨張弁であるのに対し、甲4発明ではキャピラリーチューブである点。

(相違点9)
コントローラの構成及び電子部品の配置について、本件特許発明3では、コントローラは、鉛直面とされる取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されているのに対し、甲4発明では、電装品ユニットは、傾斜した上面を備え、パワー素子を含む各種電装品は電装品ユニット内部に収容されており、鉛直面とされる取付け面を備えているか明らかでなく、各種電装品の具体的な配置も不明である点。

事案に鑑み、まず相違点9について検討すると、相違点9に係る本件特許発明3の構成については、甲第1?3、5、6号証のいずれにも開示されていない。
そして、本件特許発明3は、結露が発生しても、ドレン水がコントローラ上に設けられている電子部品上に滴下することを防止しつつ、相違点9に係る本件特許発明3の構成を備えることにより、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品と、複数種類の発熱部品を冷却する冷却構造を同一の取付け面の鉛直方向に渡って配置することが可能となり、電子部品の配置設計の自由度が増すことから、コントローラ自体を小型化することができるという格別顕著な効果を奏するものであって、当業者が適宜なし得る設計的事項ということもできない。

III 小括
したがって、本件特許発明3は、甲1発明及び甲2?6号証に基いて、あるいは甲4発明及び甲1?3、5、6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

D 本件特許発明4について
本件特許発明4は、上記Bで検討した本件特許発明2を直接的に引用するものであるから、本件特許発明2と同様に、甲1発明及び甲2?6号証に基いて、あるいは甲4発明及び甲1?3、5、6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

E 本件特許発明5について
本件特許発明5は、上記Dで検討した本件特許発明4を直接的に引用するとともに、上記Bで検討した本件特許発明2を関接的に引用するものであるから、本件特許発明2、4と同様に、甲1発明及び甲2?6号証に基いて、あるいは甲4発明及び甲1?3、5、6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

F 本件特許発明6について
本件特許発明6は、上記Bで検討した本件特許発明2を直接的に引用するものであるから、本件特許発明2と同様に、甲1発明及び甲2?6号証に基いて、あるいは甲4発明及び甲1?3、5、6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

G 本件特許発明7について
本件特許発明7は、上記Aで検討した本件特許発明1を直接的に引用するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明及び甲2?6号証に基いて、あるいは甲4発明及び甲1?3、5、6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

H 本件特許発明8について
本件特許発明8は、上記Cで検討した本件特許発明3を直接的に引用するものであるから、本件特許発明3と同様に、甲1発明及び甲2?6号証に基いて、あるいは甲4発明及び甲1?3、5、6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

7 取消理由通知において採用しなかった明確性要件(特許法第36条第6項第2号)に係る特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1に記載の「冷媒温度もしくはその代替温度の目標温度」との記載は、「冷媒温度もしくは代替温度」が「目標温度」であるのか、「冷媒温度もしくは代替温度」に「目標温度」が設けられているのか明確でないから、請求項1に係る発明及びそれを引用する請求項2、4?6に係る発明は明確でない旨主張する。
しかしながら、上記第2のとおり、令和1年9月30日付けの訂正の請求が認められるところ、請求人が明確でないと指摘していた請求項1の記載は「電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に」となり、冷媒の温度もしくはその代替温度に目標温度が設けられていることが明らかとなった。
よって、本件特許発明1及びそれを引用する本件特許発明7、並びに同様の記載を含む本件特許発明2及びそれを引用する本件特許発明4?6は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

8 むすび
以上のとおり、本件特許発明1?8に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
さらに、他に本件特許発明1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
空気調和機
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルを構成する冷媒配管によりコントローラが冷却可能とされている空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機のコントローラにおいては、インバータ装置やそのパワー素子の大容量化等に伴い冷却性能の向上が求められている。このため、従来から採用されている空冷方式の場合、冷却用のフィンを大型化しなければならず、コスト高となる等の問題があった。そこで、冷媒を用いた冷却方式が採用されつつある。例えば、特許文献1には、電子部品が収納されているケーシングに対して、冷却ジャケットを介在させて冷媒配管を熱的に結合したものが提供されている。
【0003】
この特許文献1には、コントローラのケーシングに対して、下記(1)ないし(4)の冷媒配管を熱的に結合し、コントローラを冷却するようにしたものが開示されている。
(1)室外熱交換器と膨張弁間の冷媒配管(冷房時は、高圧液冷媒、暖房時は、低圧二相冷媒)
(2)室外熱交換器の中間部配管(冷房時は、高圧二相冷媒、暖房時は、高圧液冷媒)
(3)膨張弁と室内熱交換器間の冷媒配管(冷房時は、低圧二相冷媒、暖房時は、高圧液冷媒)
(4)圧縮機の吸入配管(冷房時、暖房時共に、低圧ガス冷媒)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2008-101862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コントローラに対して冷媒配管の結合が容易な上記(1)の場合、室外熱交換器と膨張弁間の冷媒配管で、冷房時は高圧液冷媒、暖房時は低圧二相冷媒によりコントローラを冷却することになるため、低外気温下での暖房時、冷媒配管に着霜し、その氷結による配管の損傷やそのドレン水がコントローラ上に配設されている電子部品上に滴下することによる故障の発生、電子部品の損傷等のリスクがあった。
【0006】
同様に、上記(3)の場合、室内熱交換器と膨張弁間の冷媒配管で、冷房時は低圧二相冷媒、暖房時は高圧液冷媒によりコントローラを冷却することになるため、冷房時、室温が低く、低圧が低い場合に、冷媒配管の表面で結露が発生し、そのドレン水がコントローラ上に設けられている電子部品上に滴下することによる故障の発生や電子部品の損傷等のリスクがあった。さらに、冷媒配管上で結露や着霜が発生した場合、そのドレン水がコントローラ上に滞留し、運転中に下部の電子部品上に滴下したり、氷結したりする等のリスクもあった。
【0007】
また、冷媒配管をアルミ製の冷却ジャケットを介在させてコントローラのケーシングに熱的に結合しているが、組み立てライン上において、アルミ製のジャケットに冷媒配管を密着させて結合するのは難しく、グリス等を塗布して密着させることになるが、ライン上でグリスの塗布量を管理しながら作業するのも煩雑な作業となる等の課題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、冷房時、低圧二相冷媒が流れる冷媒配管によりコントローラを冷却する場合の結露の発生を解消し、また冷媒配管で結露や着霜が発生しても、そのドレン水が滴下することによるコントローラの故障、電子部品の損傷等を防止でき、更にコントローラに対して冷媒配管を容易に密着させて接触配置することができる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の空気調和機は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる空気調和機は、圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、前記コントローラは、鉛直面とされる取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、前記コントローラを冷却する前記冷媒配管で結露が発生する条件が検知されたとき、室内ファンの回転数制御、室外ファンの回転数制御、前記電子膨張弁の開度制御、前記圧縮機の回転数制御のいずれかにより結露の発生を阻止する結露阻止制御部が設けられており、前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う構成とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、冷房時、電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラを備えた空気調和機にあって、コントローラを冷却する冷媒配管で結露が発生する条件が検知されたとき、室内ファンの回転数制御、室外ファンの回転数制御、電子膨張弁の開度制御、圧縮機の回転数制御のいずれかにより結露の発生を阻止する結露阻止制御部が設けられているため、冷房時、コントローラを冷却する冷媒配管に電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れることから、運転状況により冷媒配管表面で結露が発生する虞があるが、結露の発生条件が検知されたとき、結露阻止制御部により室内ファンの回転数制御、室外ファンの回転数制御、電子膨張弁の開度制御、圧縮機の回転数制御のいずれかの制御を行って冷媒温度を上げることにより、冷媒配管での結露の発生を防ぐことができる。従って、コントローラにおいて、ドレン水の滴下による故障の発生や電子部品の損傷等を防止しつつ、発熱部品の冷却性能を高め、製品の品質および信頼性を向上することができる。
【0011】
さらに、本発明の空気調和機は、圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、前記コントローラを冷却する前記冷媒配管で結露が発生する条件が検知されたとき、室内ファンの回転数制御、室外ファンの回転数制御、前記電子膨張弁の開度制御、前記圧縮機の回転数制御のいずれかにより結露の発生を阻止する結露阻止制御部が設けられており、前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う構成とされており、前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記室内ファンの回転数制御、前記室外ファンの回転数制御、前記電子膨張弁の開度制御、前記圧縮機の回転数制御の順序で順次結露の阻止制御を行う構成とされていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、結露阻止制御部が、結露の発生を阻止する制御時、室内ファンの回転数制御、室外側ファンの回転数制御、電子膨張弁の開度制御、圧縮機の回転数制御の順序で順次結露の阻止制御を行う構成とされているため、冷房時、運転状況により電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる冷媒配管上で結露の虞が生じたとしても、冷房能力に影響を及ぼす度合いが小さい室内ファンの回転数制御、室外ファンの回転数制御、電子膨張弁の開度制御、圧縮機の回転数制御の順序で順次結露の阻止制御を実行することにより、結露が発生しない温度に冷媒温度を上昇させることができる。従って、冷媒配管に対する結露の発生を確実に防止することができ、ドレン水の滴下からコントローラ、電子部品等を保護することができる。
【0013】
さらに、本発明にかかる空気調和機は、圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、前記コントローラは、鉛直面とされる取付け面を備え、前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管は、前記取付け面に取り付けられるとともに水平方向に対して傾斜配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、冷房時または暖房時、電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラを備えている空気調和機にあって、冷媒配管が、水平方向に対して傾斜配置されているため、運転状況により仮に冷媒配管の表面において結露もしくは着霜が発生したとしても、そのドレン水を傾斜配置されている冷媒配管の傾斜に沿わせて速やかに特定の方向に排出することができる。従って、コントローラ上でのドレン水の滞留を防止することができるとともに、そのドレン水が電子部品上に滴下することによる故障の発生や電子部品の損傷等を防止し、コントローラを保護することができる。
【0015】
さらに、本発明にかかる空気調和機は、圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、前記冷媒配管は、前記コントローラの発熱部品に対して伝熱材製ブロックを介して配置され、該伝熱材製ブロックは、前記発熱部品側に接触配置される第1ブロックと、前記冷媒配管が接触配置される第2ブロックとに2分割され、2分割された前記第1ブロックおよび前記第2ブロック同士が一体に組み付け可能な構成とされていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、冷房時または暖房時、膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラを備えている空気調和機にあって、冷媒配管が、コントローラの発熱部品に対して伝熱材製ブロックを介して配置され、該伝熱材製ブロックが、発熱部品側に接触配置される第1ブロックと、冷媒配管が接触配置される第2ブロックとに2分割され、2分割された第1ブロックおよび第2ブロック同士が一体に組み付け可能な構成とされているため、コントローラの発熱部品に接触配置されている伝熱材製ブロックに対して、冷媒配管を組み立てライン上で密着させて接触配置することは難しいが、2分割された第1ブロックを発熱部品側、第2ブロックを冷媒配管にそれぞれ密着配置して予めサブアセンブリしておき、ライン上で第1ブロックと第2ブロックとを一体に組み付けるようにすることで、比較的容易に伝熱材製ブロックに対して冷媒配管を密着させて接触配置することができる。従って、伝熱材製ブロックに対する冷媒配管の接触熱抵抗を低減して伝熱効率を向上させ、コントローラおよびその発熱部品の冷却性能を高めることにより、製品の品質および信頼性を向上することができる。
【0017】
さらに、本発明の空気調和機は、上記の空気調和機において、前記第2ブロックには、前記冷媒配管を沿わせて配置するための半円形溝が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、第2ブロックに、冷媒配管を沿わせて配置するための半円形溝が設けられているため、冷媒配管を第2ブロックに対して半円形溝に沿わせて接触配置し、それを押え金具等を介して固定することにより、冷媒配管を第2ブロックに確実に密着させて接触配置することができる。従って、冷媒配管と伝熱材製ブロック、ひいてはコントローラとの間の伝熱効率を高め、コントローラおよびその発熱部品の冷却性能を一段と向上することができる。
【0019】
さらに、本発明にかかる空気調和機は、圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、前記コントローラ側の発熱部品は、該コントローラの下方部位に集中配置され、その下方部位に対して前記冷媒配管が接触配置されていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、冷房時または暖房時、電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラを備えている空気調和機にあって、コントローラ側の発熱部品が、該コントローラの下方部位に集中して配置され、その下方部位に対して冷媒配管が接触配置されているため、運転状況により仮に冷媒配管の表面において結露もしくは着霜が発生したとしても、そのドレン水が発熱部品よりも下方部位に電子部品が配置されていないことから他の電子部品上に滴下することがない。従って、ドレン水がコントローラに設けられている他の電子部品上に滴下することによる故障の発生や電子部品の損傷等を防止し、コントローラを保護することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の空気調和機によると、冷房時、コントローラを冷却する冷媒配管に電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れることから、運転状況により冷媒配管表面で結露が発生する虞があるが、結露の発生条件が検知されたとき、結露阻止制御部により室内ファンの回転数制御、室外ファンの回転数制御、電子膨張弁の開度制御、圧縮機の回転数制御のいずれかの制御を行って冷媒温度を上げることにより、冷媒配管での結露の発生を防ぐことができるため、コントローラにおいて、ドレン水の滴下による故障の発生や電子部品の損傷等を防止しつつ、発熱部品の冷却性能を高め、製品の品質および信頼性を向上することができる。
【0022】
また、本発明の空気調和機によると、コントローラの発熱部品に接触配置されているアルミ製ブロックに対して、冷媒配管を組み立てライン上で密着させて接触配置することは難しいが、2分割された第1ブロックを発熱部品側、第2ブロックを冷媒配管にそれぞれ密着配置して予めサブアセンブリしておき、ライン上で第1ブロックと第2ブロックとを一体に組み付けるようにすることで、比較的容易にアルミ製ブロックに対して冷媒配管を密着させて接触配置することができるため、アルミ製ブロックに対する冷媒配管の接触熱抵抗を低減して伝熱効率を向上させ、コントローラおよびその発熱部品の冷却性能を高めることにより、製品の品質および信頼性を向上することができる。
【0023】
また、本発明の空気調和機によると、運転状況により仮に冷媒配管の表面において結露もしくは着霜が発生したとしても、そのドレン水を傾斜配置されている冷媒配管の傾斜に沿わせて速やかに特定の方向に排出することができるため、コントローラ上でのドレン水の滞留を防止することができるとともに、そのドレン水が電子部品上に滴下することによる故障の発生や電子部品の損傷等を防止し、コントローラを保護することができる。
【0024】
さらに、本発明の空気調和機によると、運転状況により仮に冷媒配管の表面において結露もしくは着霜が発生したとしても、そのドレン水が発熱部品よりも下方部位に電子部品が配置されていないことから他の電子部品上に滴下することがなく、従って、ドレン水がコントローラに設けられている他の電子部品上に滴下することによる故障の発生や電子部品の損傷等を防止し、コントローラを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る空気調和機の冷凍サイクル図である。
【図2】 上記冷凍サイクルを構成する冷媒配管で冷却されるコントローラの斜視図である。
【図3】 上記コントローラにおける冷媒配管の接触配置部の斜視図である。
【図4】 上記コントローラにおける冷媒配管の接触配置部の分解斜視図である。
【図5】 上記コントローラにおける発熱部品の配置構成を示す正面図である。
【図6】 上記コントローラの結露阻止制御部による制御フローチャート図である。
【図7】 上記コントローラの結露阻止制御部による制御目標温度の設定例の説明図である。
【図8】 本発明の第2実施形態に係るコントローラの斜視図である。
【図9】 本発明の第3実施形態に係るコントローラの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図7を用いて説明する。
図1には、本実施形態に係る空気調和機の冷凍サイクル図が示され、図2には、その冷凍サイクルを構成する冷媒配管で冷却されるコントローラの斜視図が示されている。
空気調和機1は、冷媒を圧縮する圧縮機2と、冷媒の循環方向を切換える四方切換弁3と、冷媒と室外ファン4からの外気とを熱交換させる室外熱交換器5と、冷媒を断熱膨張する電子膨張弁(膨張弁;EEV)6と、冷媒と室内ファン7からの室内空気とを熱交換させる室内熱交換器8と、アキュームレータ9とを具備し、それを冷媒配管10により接続した可逆サイクルの冷凍サイクル11を備えた構成とされている。
【0027】
また、空気調和機1は、リモコン等からの運転指令に基づいて空気調和機1の運転を制御するコントローラ12を備えている。コントローラ12は、圧縮機2の回転数を制御するインバータを搭載するとともに、運転モードに応じて四方切換弁3を切換え、更に室外ファン4の回転数、室内ファン7の回転数、電子膨張弁6の開度等を制御する機能を備えたものであり、基本構成は公知のコントローラと変わるものではない。
【0028】
コントローラ12には、インバータを構成するパワートランジスタ等の発熱部品が搭載されているため、コントローラ12を冷却する必要がある。本実施形態では、図1に示されるように、コントローラ12に対して、冷凍サイクル11を構成する電子膨張弁(EEV)6と室内熱交換器8間の冷媒配管10Aを接触配置した構成とし、冷房時には、冷媒配管10A内を流れる電子膨張弁6で絞られた低圧二相冷媒でコントローラ12を冷却するとともに、暖房時には、冷媒配管10A内を流れる室内熱交換器8で凝縮液化された高圧液冷媒でコントローラ12を冷却する構成としている。
【0029】
コントローラ12は、空気調和機1の室外ユニット側の適所に設置されるもので、図2に示されるように、各種制御回路やその回路を構成する各種制御基板、電子部品等が配設される鉛直面とされた複数の取付け面13や設置用のフランジ14等を備えた構成とされている。ここでは、主にコントローラ12に搭載されるインバータ用のアクティブコンバータ15、ダイオードモジュール16、パワートランジスタ17等の発熱部品周りの冷却構造について、図2ないし図5を用いて説明する。
【0030】
上記のアクティブコンバータ15、ダイオードモジュール16およびパワートランジスタ17は、各々基板18,19,20上に設けられ、その基板18,19,20が取付け面13に固定設置されるようになっている。この基板18,19,20の背面には、ヒートシンクを構成する伝熱材製ブロック(アルミ製ブロック)21,22が密着されて接触配置されている。以下に、伝熱材製ブロック(アルミ製ブロック)21の構成を、図4に基づいて詳しく説明する。なお、伝熱材製ブロック22は、伝熱材製ブロック21の構成と同様であり、説明は省略する。
【0031】
伝熱材製ブロック21は、基板18,19に対して接触配置される板状の第1ブロック21Aと、冷却用の冷媒配管10Aが接触配置される板状の第2ブロック21Bとに2分割され、第1ブロック21Aおよび第2ブロック21B同士がネジ等を介して一体に結合可能な構成とされている。つまり、ヒートシンクとされる伝熱材製ブロック21の2分割された第1ブロック21Aは、基板18,19の背面に対して密着された状態で取付け面13に固定設置されることによりサブアセンブリされる一方、第2ブロック21Bは、冷媒配管10Aが接触配置されることによりサブアセンブリされ、この第1ブロック21Aと第2ブロック21Bとが組み立てライン上で一体に結合可能とされている。
【0032】
第2ブロック21Bの表面には、U字状に屈曲された冷媒配管10Aを沿わせる2本の半円形溝21Cが形成されており、その半円形溝21Cに冷媒配管10Aを嵌め込み、外側を押え金具23で押えてネジ止め固定することにより、冷媒配管10Aを第2ブロック21Bに密着させて一体に組み付け、サブアセンブリする構成としている。なお、冷媒配管10Aの組み付けに際し、グリスの塗布を妨げるものではない。これによって、伝熱材製ブロック21に対する冷媒配管10Aの組み付け精度を高め、冷媒配管10Aから基板18,19側のアクティブコンバータ15やダイオードモジュール16等の発熱部品への伝熱効率を向上し、冷却効果を高めるようにしている。
【0033】
なお、パワートランジスタ17が設けられている基板20についても、伝熱材製ブロック22を伝熱材製ブロック21と同様の構成とすることにより、低圧二相冷媒が流れる冷媒配管10Aを介して発熱部品であるパワートランジスタ17を冷却可能としている。
【0034】
また、上記のように、冷房時、電子膨張弁(EEV)6で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管10Aをコントローラ12に接触配置し、コントローラ12を冷却する構成とした場合、室温が低く、低圧が低いと、冷媒配管10Aの表面で結露が発生するリスクがある。冷媒配管10Aの表面で結露が発生すると、そのドレン水がアクティブコンバータ15、ダイオードモジュール16、パワートランジスタ17等の電子部品やそれら部品を配設した基板18,19,20、あるいはそれら以外の電装部品、回路上に滴下し、故障の発生や電子部品類の損傷の要因となるため、結露の発生を阻止する必要がある。
【0035】
本実施形態では、冷媒配管10Aでの結露を阻止するため、コントローラ12に結露阻止制御部24(図1参照)を設けている。この結露阻止制御部24は、図6に示される制御フローチャートに基づいて、結露の発生を阻止する機能を有するものである。
ここでは、結露阻止制御部24を、外気温センサ25により検知された室外温度が設定値A(例えば、-5℃)以上で、かつ電子膨張弁(EEV)6とコントローラ12間の冷媒配管10Aに設けられた冷媒温度センサ26で検知されるEEV後の冷媒温度が、図7に示すように、外気温センサ25により検知される室外温度に対して予め設定されている目標温度1ないし目標温度4以下の場合に、以下の順序で順次結露阻止制御を行う構成としている。
【0036】
冷房運転モード時、ステップS1において、「室外温度>設定値A(-5℃)」で、かつ「EEV後の冷媒温度<目標温度1」が検知され、冷媒配管10Aで結露発生の虞があることが検知されると、ステップS2で、室内ファン7の回転数制御(回転数アップ)が実行される。これによって、EEV後の冷媒温度が目標温度1以上に上昇され、結露が阻止されることになる。室内ファン7の回転数制御(回転数アップ)が実行されても、冷媒温度センサ26で検知されるEEV後の冷媒温度が低下し、ステップS3において、「EEV後の冷媒温度<目標温度2」が検知されると、ステップS4で、更に室外ファン4の回転数制御(回転数ダウン)が実行され、EEV後の冷媒温度が上昇されることになる。
【0037】
同様に、ステップS5で、「EEV後の冷媒温度<目標温度3」が検知されると、ステップS6において、電子膨張弁(EEV)6の開度制御(開度アップ)が実行され、それでもEEV後の冷媒温度が低下し、ステップS7で、「EEV後の冷媒温度<目標温度4」が検知されると、ステップS8において、圧縮機2の回転数制御(回転数ダウン)が実行される。これにより、冷媒温度を上昇させ、結露を阻止する構成とされている。
【0038】
このように、冷媒温度センサ26で検知されるEEV後の冷媒温度が目標温度1ないし目標温度4以下となり、結露の発生条件が検知されると、結露阻止制御部24は、室内ファン7の回転数制御(回転数アップ)、室外ファン4の回転数制御(回転数ダウン)、電子膨張弁(EEV)の開度制御(開度アップ)、圧縮機の回転数制御(回転数ダウン)の順序で順次結露の阻止制御を実行することにより、冷媒配管10Aでの結露の発生を防止する構成とされている。この順序は、結露阻止制御が性能(冷房能力)を及ぼす影響を極力抑えるため、影響度合いの小さい制御から順次実行する設定としている。
【0039】
なお、上記実施形態では、結露阻止制御部24により、結露が発生する条件が検知されたとき、室内ファン7の回転数制御(回転数アップ)、室外ファン4の回転数制御(回転数ダウン)、電子膨張弁(EEV)の開度制御(開度アップ)、圧縮機の回転数制御(回転数ダウン)の順序で順次結露の阻止制御を実行する構成としているが、結露が発生する条件が検知されたとき、室内ファン7の回転数制御(回転数アップ)、室外ファン4の回転数制御(回転数ダウン)、電子膨張弁(EEV)の開度制御(開度アップ)、圧縮機の回転数制御(回転数ダウン)のいずれか1つを実行する構成としてもよいことはもちろんである。
【0040】
また、結露発生の条件を検知するため、EEV後の冷媒温度を冷媒配管10Aに冷媒温度センサ26を設けて検知しているが、この冷媒温度センサ26を省略し、既設の温度センサを用いてEEV後の冷媒温度に代替可能な温度等を検知して上記の結露阻止制御を行う構成としてもよい。例えば、疑似EEV後の冷媒温度として、室外熱交換器5に設けられている室外熱交温度センサ27、室内熱交換器8に設けられている室内熱交温度センサ28の検出値に基づいて、下記(1)式から疑似EEV後の冷媒温度を算出し、上記の結露阻止制御に用いてもよい。
疑似EEV後の冷媒温度=室内熱交温度+(室外熱交温度-室内熱交温度)×C(ただし、Cは定数)・・・(1)
【0041】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上記の空気調和機1において、冷房運転時、圧縮機2で圧縮された冷媒は、四方切換弁3により室外熱交換器5、電子膨張弁6、室内熱交換器8、四方切換弁3、アキュームレータ9および圧縮機2の順に循環される。この間、室外熱交換器5で外気に放熱して凝縮液化された冷媒は、電子膨張弁6で断熱膨張され、低圧二相冷媒となって室内熱交換器8に導入されることにより、室内熱交換器8で室内ファン7を介して送風される室内空気と熱交換されて蒸発され、室内空気を冷却することにより冷房に供されることになる。
【0042】
また、暖房運転時、圧縮機2により圧縮された冷媒は、四方切換弁3を介して室内熱交換器8、電子膨張弁6、室外熱交換器5、四方切換弁3、アキュームレータ9および圧縮機2の順に循環される。この間、冷媒は、室内熱交換器8において室内空気に放熱して凝縮液化され、室内空気を加熱することにより暖房に供されることになる。
【0043】
上記の冷暖房運転時、コントローラ12は、電子膨張弁6と室内熱交換器8間を接続している冷媒配管10A内を流れる冷媒により冷却される。この冷媒配管10A内を流れる冷媒は、冷房時、電子膨張弁6で断熱膨張された低圧二相冷媒であり、暖房時、室内熱交換器8で凝縮液化された高圧液冷媒であり、コントローラ12に設けられているアクティブコンバータ15、ダイオードモジュール16、パワートランジスタ17等の発熱部品に対して十分温度が低く、これらの発熱部品を冷却することができる。
【0044】
このように、暖房時に高圧液冷媒、冷房時に低圧二相冷媒を用いてコントローラ12を冷却する構成とした場合、暖房時には、低外気温下であっても、高圧液冷媒の温度が着霜となることはなく、従って、コントローラ12を冷却する冷媒配管10A上で着霜のリスクはない。一方、冷房時には、通常冷房条件下で低圧冷媒の温度が0℃以下になることはなく、配管圧損等からコントローラ12に流れる冷媒の温度は通常20℃以上になると考えられ、結露のリスクはないが、室温が低く、低圧が低くなった場合に結露するケースが生じ得る。
【0045】
本実施形態においては、コントローラ12を冷却する冷媒配管10Aの表面で結露が発生する虞が生じた場合、つまり、結露の発生条件が検知された場合、結露阻止制御部24を介して、室内ファン7の回転数制御(回転数アップ)、室外ファン4の回転数制御(回転数ダウン)、電子膨張弁(EEV)の開度制御(開度アップ)、圧縮機の回転数制御(回転数ダウン)のいずれか結露の阻止制御、もしくはその順序で順次結露の阻止制御を行うことにより、結露の発生を防止することができる。
【0046】
従って、コントローラ12を冷却する冷媒配管10Aでの結露の発生を確実に防止することができ、コントローラ12において、結露により発生したドレン水の滴下による故障の発生や電子部品の損傷等を防止しつつ、インバータやパワー素子の大容量化に伴って冷却性能の向上が求められているコントローラ12の冷却機能を高めることができ、製品の品質および信頼性を向上することができる。
【0047】
一方、コントローラ12側において、冷媒配管10Aは、ヒートシンクとして機能する伝熱材製ブロック21,22を介して、アクティブコンバータ15、ダイオードモジュール16、パワートランジスタ17等の発熱部品が配設された基板18,19,20の背面に密着されるように接触配置されている。そして、伝熱材製ブロック21(伝熱材製ブロック22も同様)は、発熱部品側に接触配置される第1ブロック21Aと、冷媒配管10Aが接触配置される第2ブロック21Bとに2分割され、2分割された第1ブロック21Aおよび第2ブロック21B同士が一体に組み付け可能な構成とされている。
【0048】
このため、コントローラ12側において、発熱部品に接触配置されている伝熱材製ブロック21に対して、冷媒配管10Aを組み立てライン上で密着させて接触配置することは中々難しいが、2分割された第1ブロック21Aを発熱部品側、第2ブロック21Bを冷媒配管10Aにそれぞれ密着配置して予めサブアセンブリしておき、ライン上で第1ブロック21Aと第2ブロック21Bとを一体に組み付けるようにすることで、比較的容易に伝熱材製ブロック21に対して冷媒配管10Aを密着させて接触配置することができる。従って、伝熱材製ブロック21,22に対する冷媒配管10Aの接触熱抵抗を低減して伝熱効率を向上させ、コントローラ21上の発熱部品の冷却性能を高めることにより、製品の品質および信頼性を向上することができる。
【0049】
また、本実施形態では、第2ブロック21Bに対して、冷媒配管10Aを沿わせて配置するための半円形溝21Cを設けた構成としている。このため、冷媒配管10Aを第2ブロック21Bに対して半円形溝21Cに沿わせて接触配置し、それを押え金具23等を介して固定することにより、冷媒配管10Aを第2ブロック21Bに確実に密着させて接触配置することができ、これによって、冷媒配管10Aと伝熱材製ブロック21、ひいてはコントローラ12との間の伝熱効率を高め、コントローラ12およびその発熱部品の冷却性能を一段と向上することができる。
【0050】
なお、ヒートシンクとして機能する伝熱材製ブロック21を2分割し、その2分割された伝熱材製ブロック21を介して上記の如く冷媒配管10Aをコントローラ12に接触配置する構成は、電子膨張弁6と室内熱交換器8間を接続している冷媒配管10Aをコントローラ12に接触配置したものに限らず、電子膨張弁6と室外熱交換器5間を接続する冷媒配管等をコントローラ12に接触配置し、暖房時に低圧二相冷媒でコントローラ12を冷却するタイプのものに対しても同様に適用できるものである。
【0051】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図8を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、コントローラ12に接触配置される冷媒配管10Aを傾斜配置している点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態においては、図8に示されるように、伝熱材製ブロック21の第2ブロック21Bに設けられる半円形溝21Cを、水平方向に対して一定の角度α傾けて設け、冷媒配管10Aをア伝熱材製ブロック21に対して傾斜配置した構成としている。
【0052】
なお、冷媒配管10Aの傾きは、ドレン水が一方向に流れる程度の傾きでよく、角度αについては特に限定されるものではないが、十数度もあれば十分である。また、本実施形態は、図1に示すように、電子膨張弁6と室内熱交換器8間を接続している冷媒配管10Aをコントローラ12に接触配置したものに限らず、電子膨張弁6と室外熱交換器5間を接続する冷媒配管等をコントローラ12に接触配置し、暖房時に低圧二相冷媒でコントローラ12を冷却するタイプのものにも同様に適用できるものである。
【0053】
このように、冷媒配管10Aをコントローラ12に対して、傾斜配置した構成とすることによって、運転状況により仮に冷媒配管10Aの表面において結露もしくは着霜が発生したとしても、そのドレン水を傾斜配置されている冷媒配管10Aの傾斜に沿わせて速やかに特定の方向に排出することができる。従って、コントローラ12上でのドレン水の滞留を防止することができるとともに、そのドレン水がコントローラ12やその電子部品上に滴下することによる故障の発生、電子部品の損傷等を防止し、コントローラを保護することができる。
【0054】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図9を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、コントローラ12上に設けられる発熱部品の配置構成を変えている点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態では、図9に示されるように、アクティブコンバータ15、ダイオードモジュール16、パワートランジスタ17等の発熱部品を配設した基板18,19,20をコントローラ12の下方部位に集中配置し、それらの基板18,19,20に対して上記構成の伝熱材製ブロック21を介在させて冷媒配管10Aを接触配置したものである。
【0055】
なお、本実施形態の場合も、図1に示すように、電子膨張弁6と室内熱交換器8間を接続している冷媒配管10Aをコントローラ12に接触配置したものに限らず、電子膨張弁6と室外熱交換器5間を接続する冷媒配管等をコントローラ12に接触配置し、暖房時に低圧二相冷媒によりコントローラ12を冷却するタイプのものに対しても同様に適用できるものである。
【0056】
上記のように、コントローラ12に設けられる発熱部品がコントローラ12の下方部位に集中して配置され、その下方部位に対して冷媒配管10Aを接触配置した構成としているため、運転状況により仮に冷媒配管10Aの表面において結露もしくは着霜が発生したとしても、そのドレン水が発熱部品よりも下方部位に電子部品が配置されていないことから他の電子部品上に滴下することがない。従って、ドレン水がコントローラに設けられている他の電子部品上に滴下することによる故障の発生や電子部品の損傷等を防止し、コントローラを保護することができる。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、コントローラ12について、オープン構造のものを例に説明したが、コントローラ12の構造については、上記実施形態のものに限定されず、ボックス構造のもの等、他構造のコントローラにも同様に適用できることは云うまでもない。また、上記実施形態では、EEV後の冷媒温度を冷媒配管に冷媒温度センサ26を設けて直接検知するようにした例および既設の温度センサを用いてEEV後の冷媒温度に代替可能な温度を疑似温度として検知するようにした例について説明したが、この2例に限定されるものでないことはもちろんである。
【符号の説明】
【0058】
1 空気調和機
2 圧縮機
3 四方切換弁
4 室外ファン
5 室外熱交換器
6 電子膨張弁
7 室内ファン
8 室内熱交換器
10 冷媒配管
10A 冷媒配管
11 冷凍サイクル
12 コントローラ
15 アクティブコンバータ
16 ダイオードモジュール
17 パワートランジスタ
18,19,20 基板
21,22 伝熱材製ブロック
21A 第1ブロック
21B 第2ブロック
21C 半円形溝
24 結露阻止制御部
25 外気温センサ
26 冷媒温度センサ
27 室外熱交温度センサ
28 室内熱交温度センサ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、
前記コントローラは、鉛直面とされた取付け面を備え、
前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、
複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、
複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、
前記コントローラを冷却する前記冷媒配管で結露が発生する条件が検知されたとき、室内ファンの回転数制御、室外ファンの回転数制御、前記電子膨張弁の開度制御、前記圧縮機の回転数制御のいずれかにより結露の発生を阻止する結露阻止制御部が設けられており、
前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う構成とされていることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、
前記コントローラを冷却する前記冷媒配管で結露が発生する条件が検知されたとき、室内ファンの回転数制御、室外ファンの回転数制御、前記電子膨張弁の開度制御、前記圧縮機の回転数制御のいずれかにより結露の発生を阻止する結露阻止制御部が設けられており、
前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記電子膨張弁で絞られた低圧二相冷媒の温度もしくはその代替温度が外気温に応じて予め設定された目標温度以下の場合に、結露の阻止制御を行う構成とされており、
前記結露阻止制御部は、結露の発生を阻止する制御時、前記室内ファンの回転数制御、前記室外ファンの回転数制御、前記電子膨張弁の開度制御、前記圧縮機の回転数制御の順序で順次結露の阻止制御を行う構成とされていることを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、室内熱交換器を冷媒配管により接続した可逆サイクルの冷凍サイクルと、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる冷媒配管と接触されることにより冷却されるコントローラとを備えた空気調和機において、
前記コントローラは、鉛直面とされる取付け面を備え、
前記取付け面には、複数種類の発熱部品を含む複数の電子部品が配設されており、
複数種類の前記発熱部品のそれぞれは、冷房時または暖房時、前記電子膨張弁で絞られた低圧冷媒が流れる前記冷媒配管により冷却され、
複数種類の前記発熱部品のいずれかは、他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管で結露が発生した場合に結露により発生した水が滴下する方向であって他の前記発熱部品に対して鉛直方向の下方の位置に配置されており、
他の前記発熱部品を冷却する前記冷媒配管は、前記取付け面に取り付けられるとともに水平方向に対して傾斜配置されていることを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
前記冷媒配管は、前記コントローラの発熱部品に対して伝熱材製ブロックを介して配置され、該伝熱材製ブロックは、前記発熱部品側に接触配置される第1ブロックと、前記冷媒配管が接触配置される第2ブロックとに2分割され、2分割された前記第1ブロックおよび前記第2ブロック同士が一体に組み付け可能な構成とされていることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記第2ブロックには、前記冷媒配管を沿わせて配置するための半円形溝が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記コントローラ側の発熱部品は、該コントローラの下方部位に集中配置され、その下方部位に対して前記冷媒配管が接触配置されていることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記冷媒配管は、前記コントローラの発熱部品に対して伝熱材製ブロックを介して配置され、該伝熱材製ブロックは、前記発熱部品側に接触配置される第1ブロックと、前記冷媒配管が接触配置される第2ブロックとに2分割され、2分割された前記第1ブロックおよび前記第2ブロック同士が一体に組み付け可能な構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記冷媒配管は、前記コントローラの発熱部品に対して伝熱材製ブロックを介して配置され、該伝熱材製ブロックは、前記発熱部品側に接触配置される第1ブロックと、前記冷媒配管が接触配置される第2ブロックとに2分割され、2分割された前記第1ブロックおよび前記第2ブロック同士が一体に組み付け可能な構成とされていることを特徴とする請求項3に記載の空気調和機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-02-27 
出願番号 特願2013-243961(P2013-243961)
審決分類 P 1 651・ 853- YAA (F24F)
P 1 651・ 854- YAA (F24F)
P 1 651・ 537- YAA (F24F)
P 1 651・ 851- YAA (F24F)
P 1 651・ 121- YAA (F24F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 正浩  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 沖田 孝裕
内藤 真徳
登録日 2018-04-13 
登録番号 特許第6320731号(P6320731)
権利者 三菱重工サーマルシステムズ株式会社
発明の名称 空気調和機  
代理人 藤田 考晴  
代理人 藤田 考晴  
代理人 三苫 貴織  
代理人 川上 美紀  
代理人 三苫 貴織  
代理人 長田 大輔  
代理人 川上 美紀  
代理人 長田 大輔  

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