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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
管理番号 1362300
異議申立番号 異議2019-700571  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-22 
確定日 2020-03-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6455367号発明「含フッ素樹脂組成物、成形品、電線および含フッ素樹脂組成物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6455367号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1?21〕について、訂正することを認める。 特許第6455367号の請求項1?2、4?21に係る特許を維持する。 特許第6455367号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由
第1 手続の経緯

特許第6455367号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成27年9月1日(優先権主張:平成26年9月16日)を出願日とする特許出願(特願2015-172083号)に係るものであって、平成30年12月28日にその特許権の設定登録がされ、平成31年1月23日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和1年7月22日に、本件特許の請求項1?11に係る特許に対して、特許異議申立人であるダイキン工業株式会社(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

1 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
令和1年 7月22日 特許異議申立書
同年10月 4日付け 取消理由通知書
同年12月 9日 特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
同年12月17日付け 訂正請求があった旨の通知
令和2年 1月17日 申立人による意見書の提出

2 申立人の証拠方法は、以下のとおりである。

甲第1号証:特表2014-516096号公報(以下、「甲1」という。)
甲第2号証:ダイキン工業株式会社 商品開発部 塩月 敬三が作成した、「Teflon(登録商標)PFA 340」のカルボニル基含有基の含有量を測定した実験成績報告書(作成日:2019年7月17日)(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:林剛、「無機素材の表面処理と液中分散」、Journal of the Society of Inorganic Materials,Japan、2006年、第13巻、p.5-15(以下、「甲3」という。)
甲第4号証:特開2004-277689号公報(以下、「甲4」という。)
甲第5号証:特開2013-191527号公報(以下、「甲5」という。)
甲第6号証:特表2010-527404号公報(以下、「甲6」という。)
甲第7号証:特開昭63-291941号公報(以下、「甲7」という。)
甲第8号証:特開平11-290215号公報(以下、「甲8」という。)
甲第9号証:特開2010-209216号公報(以下、「甲9」という。)
甲第10号証:特開平5-151846号公報(以下、「甲10」という。)

3 申立人は、令和2年1月17日提出の意見書において、以下の参考資料を提示した。

参考資料1:特開2001-192500号公報
参考資料2:国立研究開発法人産業技術総合研究所、“高い熱伝導率の無機粒子分散プラスチック複合フィルムを作製”、[online]、2008年10月15日、[令和2年1月7日検索]、インターネット<URL:https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2008/pr20081015/pr20081015.html>
参考資料3:山下 勲、外4名、「α-Si_(3)N_(4)粉末の低温熱容量」、Journal of the Ceramic Society of Japan、107[5]、p.472-475、1999年
参考資料4:特表2002-503204号公報
参考資料5:特開2010-24127号公報
参考資料6:藤 正督、「粒子表面の機能化」、表面科学、公益社団法人日本表面科学会、第24巻、第10号、p.625-634、2003年
参考資料7:国際公開第2014/058012号
参考資料8:特開平5-211015号公報
参考資料9:武井 孝、外5名、「シリカの表面水酸基の構造評価」、粉体工学会誌、一般社団法人粉体工学会、第36巻、第3号、p.179-184、1999年
参考資料10:フィラー研究会、「機能性フィラーの最新技術」、株式会社シーエムシー、1990年、p.34-47、p.264-275
参考資料11:佐野 正人、「カーボンナノチューブの化学修飾」、高分子論文集、第59巻、第10号、p.565-570、2002年
参考資料12:特開2013-168313号公報
参考資料13:山田保治、外1名、「界面制御による高熱伝導性材料の開発」、日本ゴム協会誌、第86巻、第5号、p.133-139、2013年
参考資料14:竹内 光二、外2名、「無機充填剤の表面改質」、表面科学、公益社団法人日本表面科学会、第3巻、第2号、p.65-74、1982年
参考資料15:渡邉 佑典、外2名、「親水性表面を有するシリカ粒子の高分子への分散」、高分子論文集、第63巻、第11号、p.737-744、2006年


第2 訂正の請求について

1 訂正の内容

令和1年12月9日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。
また、本件訂正前の請求項2?11は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項1?11は、一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項〔1?21〕に対して請求されたものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物。」
と記載されているのを、
「カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、および、オキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の合有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、合フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなる、含フッ素樹脂組成物。」
に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる、請求項1?3のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物。」
と記載されているのを、
「カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる、含フッ素樹脂組成物。」
に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、請求項1?4のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物。」
と記載されているのを、
「カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。」
に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1?5」
と記載されているのを、
「請求項1?2、および、4?5」
に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1?6」
と記載されているのを、
「請求項1?2、および、4?6」
に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項1?7」
と記載されているのを、
「請求項1?2、および、4?7」
に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に、
「請求項1?8」
と記載されているのを、
「請求項1?2、および、4?8」
に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に、
「請求項1?8」
と記載されているのを、
「請求項1?2、および、4?8」
に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11に、
「請求項1?8」
と記載されているのを、
「請求項1?2、および、4?8」
に訂正する。

(11)訂正事項11?13
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる、請求項1?3のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物。」
とあるうち、
請求項1を引用した請求項2を引用するものを、
「カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる、含フッ素樹脂組成物。」と記載し(訂正事項11)、
請求項1を引用した請求項3を引用するものを、
「カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを合み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる、含フッ素樹脂組成物。」と記載し(訂正事項12)、
請求項1を引用した請求項2を引用した請求項3を引用するものを、
「カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる、含フッ素樹脂組成物。」と記載し(訂正事項13)、
それぞれ、新たに請求項12?14とする。

(12)訂正事項14?20
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基合有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、請求項1?4のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物。」
とあるうち、
請求項1を引用した請求項2を引用するものを、
「カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを合み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。」
と記載し(訂正事項14)、
請求項1を引用した請求項3を引用するものについて、
「カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。」
と記載し(訂正事項15)、
請求項1を引用した請求項2を引用した請求項3を引用するものを、
「カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フイラー(B)とを含み、
前記無機フイラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フイラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フイラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フイラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基合有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。」
と記載し(訂正事項16)、
請求項1を引用した請求項4を引用するものを、
「カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基合有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。」
と記載し(訂正事項17)、
請求項1を引用した請求項2を引用した請求項4を引用するものを、
「カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フイラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。」
と記載し(訂正事項18)、
請求項1を引用した請求項3を引用した請求項4を引用するものを、
「カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。」
と記載し(訂正事項19)、
請求項1を引用した請求項2を引用した請求項3を引用した請求項4を引用するものを、
「カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。」
と記載し(訂正事項20)、
それぞれ、新たに請求項15?21とする。

2 訂正の適否についての当審の判断

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「無機フィラー(B)」について、「化学修飾により表面に結合された」「反応性官能基」からヒドロキシ基を削除し、さらに、「前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなる」という限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲(以下、「本件明細書等」という。)の請求項1、3、段落【0007】、【0048】?【0051】に記載されているから、この訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1?3のいずれか一項を引用する訂正前の請求項4において、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めた上、さらに、訂正前の請求項4の「無機フィラー(B)」からアルミナを削除したものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項3は、本件明細書等の請求項1、4、段落【0007】、【0047】に記載されているから、この訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項1?4のいずれか一項を引用する訂正前の請求項5において、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めたものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項5?10について
訂正事項5?10は、上記訂正事項2により、請求項3が削除されたことに伴い、その請求項の記載を引用しないものとするものであり、また、上記訂正事項1、3により、請求項1、4が減縮されていることから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項5?10は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)訂正事項11?13について
訂正事項11は、訂正前の請求項1?3のいずれか一項を引用する訂正前の請求項4において、請求項1を引用した請求項2を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めた上、さらに、訂正前の請求項4の「無機フィラー(B)」からアルミナを削除したものである。
訂正事項12は、上記訂正前の請求項4において、請求項1を引用した請求項3を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めた上、さらに、訂正前の請求項4の「無機フィラー(B)」からアルミナを削除したものである。
訂正事項13は、上記訂正前の請求項4において、請求項1を引用した請求項2を引用した請求項3を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めた上、さらに、訂正前の請求項4の「無機フィラー(B)」からアルミナを削除したものである。
したがって、訂正事項11?13は、特許請求の範囲の減縮、及び、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項11?13は、本件明細書等の請求項1、4、段落【0007】、【0047】に記載されているから、この訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(7)訂正事項14?20について
訂正事項14は、訂正前の請求項1?4のいずれか一項を引用する訂正前の請求項5において、請求項1を引用した請求項2を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めたものである。
訂正事項15は、上記訂正前の請求項5において、請求項1を引用した請求項3を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めたものである。
訂正事項16は、上記訂正前の請求項5において、請求項1を引用した請求項2を引用した請求項3を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めたものである。
訂正事項17は、上記訂正前の請求項5において、請求項1を引用した請求項4を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めたものである。
訂正事項18は、上記訂正前の請求項5において、請求項1を引用した請求項2を引用した請求項4を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めたものである。
訂正事項19は、上記訂正前の請求項5において、請求項1を引用した請求項3を引用した請求項4を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めたものである。
訂正事項20は、上記訂正前の請求項5において、請求項1を引用した請求項2を引用した請求項3を引用した請求項4を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めたものである。
したがって、訂正事項14?20は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項14?20は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 まとめ

以上のとおり、訂正事項1?20は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。

また、特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?21〕について訂正することを認める。


第3 本件発明

上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の訂正後の請求項1?2、4?21に係る発明(以下、順に「本件訂正発明1」のようにいい、総称して「本件訂正発明」という。)は、それぞれ、令和1年12月9日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?2、4?21に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、および、オキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなる、含フッ素樹脂組成物。
【請求項2】
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
【請求項4】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる、含フッ素樹脂組成物。
【請求項5】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
【請求項6】
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンに基づく構成単位(a21)と、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する環状炭化水素モノマーに基づく構成単位(a22)と、フッ素モノマー(ただし、テトラフルオロエチレンを除く。)に基づく構成単位(a23)とを有し、
前記構成単位(a21)と、前記構成単位(a22)と、前記構成単位(a23)の合計モル量に対して、構成単位(a21)が50?99.89モル%であり、構成単位(a22)が0.01?5モル%であり、構成単位(a23)が0.1?49.99モル%である、請求項1?2、および、4?5のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物。
【請求項7】
前記含フッ素共重合体(A)が有する前記カルボニル基含有基の少なくとも一部と、前記無機フィラー(B)の表面に結合された前記反応性官能基の少なくとも一部とが結合を形成している、請求項1?2、および、4?6のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物。
【請求項8】
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.01質量部以上1質量部以下である、請求項1?2、および、4?7のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1?2、および、4?8のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物を含む成形品。
【請求項10】
芯線と、前記芯線を被覆する絶縁層とを有する電線であって、前記絶縁層が請求項1?2、および、4?8のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物を含有することを特徴とする、電線。
【請求項11】
前記含フッ素共重合体(A)と前記無機フィラー(B)とを、前記含フッ素共重合体(A)の融点以上420℃未満で溶融混練する工程を有する、請求項1?2、および、4?8のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フイラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる、含フッ素樹脂組成物。
【請求項13】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる、含フッ素樹脂組成物。
【請求項14】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる、含フッ素樹脂組成物。
【請求項15】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
【請求項16】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
【請求項17】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
【請求項18】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
【請求項19】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フイラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
【請求項20】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
【請求項21】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。」


第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要

1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由
申立人が特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において申立てた理由は、概略、本件訂正前の請求項1?11に係る発明についての本件特許は、次の申立理由1?4により、取り消されるべきものであるというものである。

(1)申立理由1(新規性)
ア 申立理由1-1(甲1に基づく新規性)
本件訂正前の請求項1?4、7、9、11に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 申立理由1-2(甲7に基づく新規性)
本件訂正前の請求項1?2、7、9、11に係る発明は、甲7に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立理由2(進歩性)
ア 申立理由2-1(甲1及び甲4?甲6に基づく進歩性)
本件訂正前の請求項1?4、7?9、11に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前の請求項5?6に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲1、甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前の請求項10に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲1、甲5、甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 申立理由2-2(甲7及び甲4、甲5、甲10に基づく進歩性)
本件訂正前の請求項1?2、7、9、11に係る発明は、甲7に記載された発明及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前の請求項5?6に係る発明は、甲7に記載された発明及び甲7、甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前の請求項10に係る発明は、甲7に記載された発明及び甲7、甲5、甲10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)申立理由3(サポート要件)
本件訂正前の請求項1?11に係る特許は、特許請求の範囲の記載に不備があるため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(4)申立理由4(明確性)
本件訂正前の請求項3?11に係る特許は、特許請求の範囲の記載に不備があるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

2 取消理由通知書に記載した取消理由
当審が通知した令和1年10月4日付け取消理由通知の要旨は、以下のとおりである。

(1)取消理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1?4、7、9、11に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)取消理由2(進歩性)
ア 取消理由2-1(甲1に基づく進歩性)
本件訂正前の請求項1?4、7?9、11は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

イ 取消理由2-2(甲5に基づく進歩性)
本件訂正前の請求項1?3、7?11は、甲5に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

第5 当審の判断

1 各甲号証の記載事項及び各甲号証に記載された発明

(1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
甲1には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
微粒子充填材との混合でフルオロポリマーを含む物質の組成物であって、充填材粒子が、
(a)不規則形状、ならびに
(b)動的光散乱によって決定して体積d50値が約50nm?約500nmの範囲にある粒度分布、および/または静的光散乱によって決定して体積d50値が約80nm?約1500nmの範囲にある粒度分布
を特徴とする、上記組成物。
・・・
【請求項8】
フルオロポリマーが、熱可塑性の、溶融加工可能なおよび/または溶融成形加工可能なフルオロポリマーを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
フルオロポリマーが、TFEとTFE以外のフッ素化オレフィンおよびフッ素化不飽和エーテルの1つまたは両方とのコポリマーを含む請求項1に記載の組成物。
・・・
【請求項11】
微粒子充填材が酸化アルミニウムを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
微粒子充填材が、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との混合物を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
微粒子充填材が、ルチル型二酸化チタンを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
存在する微粒子充填材の量が、組成物の約0.1?30質量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物を含む物品であって、35nmの標準偏差の約R(rms)=161nmの値を特徴とする表面粗さを有するタイプ304ステンレス鋼対向面を使用する摩擦計で、かつ上記物品を6.25MPaの荷重下および50.8mm/秒の速度の往復運動で測定して、約1×10^(-6)mm^(3)/N-m未満の摩耗率、および約0.3未満の摩擦係数を特徴とする、上記物品。
・・・
【請求項20】
(a)溶融加工可能なフルオロポリマーと微粒子充填材とを含む前駆体を溶融配合する工程の、充填材粒子が、
(i)不規則形状、ならびに
(ii)動的光散乱によって決定して体積d_(50)値が約50nm?約500nmの範囲にある粒度分布、および/または静的光散乱によって決定して体積d_(50)値が約80nm?約1500nmの範囲にある粒度分布、
を特徴とする、該工程と、
(b)前駆体を溶融加工してフルオロポリマー複合体を製造する工程と
を含む、フルオロポリマー複合体の製造方法。」


「【0049】
熱可塑性の、溶融加工可能なおよび/または溶融二次加工可能なフルオロポリマーの例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)と、コポリマーの融点をPTFEのそれよりも下に、たとえば、315℃以下の溶融温度に下げるのに十分な量でポリマー中に存在する少なくとも1つのフッ素化共重合性モノマー(コモノマー)とのコポリマーが挙げられる。そのようなTFEコポリマーは、具体的なコポリマーにとって標準的である融解ポリマーへの荷重および溶融温度を用いてASTMD-1238-10に従って測定されるような、少なくとも約1、または少なくとも約5、または少なくとも約10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、なおかつ約100以下、または約90以下、または約80以下、または約70以下、または約60以下のメルトフローレイト(MFR)を有するコポリマーを提供するためにある量のコモノマーをコポリマーへ典型的には組み込んでいる。好ましくは、溶融粘度は、少なくとも約102Pa・sであり、より好ましくは、約102Pa・s?約106Pa・s、最も好ましくは約103?約105Pa・sの範囲であろう。Pa・s単位の溶融粘度は、g/10分単位の531,700/MFRである。
【0050】
一般に、本明細書で使用されるような熱可塑性の、溶融加工可能なおよび/または溶融二次加工可能なフルオロポリマーとしては、少なくとも約40モル%、または少なくとも約45モル%、または少なくとも約50モル%、または少なくとも約55モル%、または少なくとも約60モル%、なおかつ約99モル%以下、または約90モル%以下、または約85モル%以下、または約80モル%以下、または約75モル%以下のTFEと;少なくとも約1モル%、または少なくとも約5モル%、または少なくとも約10モル%、または少なくとも約15モル%、または少なくとも約20モル%、なおかつ約60モル%以下、または約55モル%以下、または約50モル%以下、または約45モル%以下、または約40モル%以下の少なくとも1つの他のモノマーとを含有するコポリマーが挙げられる。TFEと重合させて溶融加工可能なフルオロポリマーを形成するための好適なコモノマーとしては、式I、II、IIIおよび/またはIVの化合物;ならびに、特に、[ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの]3?8個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィン、および/または線状もしくは分岐アルキル基が1?5個の炭素原子を含有する、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)が挙げられる。好ましいPAVEモノマーは、アルキル基が1、2、3または4個の炭素原子を含有するものであり、コポリマーは、幾つかのPAVEモノマーを使用して製造することができる。好ましいTFEコポリマーとしては、FEP(TFE/HFPコポリマー)、PFA(TFE/PAVEコポリマー)、PAVEがPEVEおよび/またはPPVEであるTFE/HFP/PAVE、MFA(PAVEのアルキル基が少なくとも2個の炭素原子を有するTFE/PMVE/PAVE)ならびにTHV(TFE/HFP/VF2)が挙げられる。追加の溶融加工可能なフルオロポリマーは、エチレン(E)またはプロピレン(P)とTFEまたは塩素化TFE(CTFE)とのコポリマー、とりわけETFE、ECTFEおよびPCTFEである。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびフッ化ビニリデンのコポリマーならびにポリフッ化ビニル(PVF)およびフッ化ビニルのコポリマーのフィルム形成ポリマーがまた同様に有用である。
【0051】
本組成物およびそれで構築されたフルオロポリマー複合体は、微粒子充填材のような多種多様な材料を使用して形成されてもよい。本組成物に組み込まれてもよい微粒子充填材の非限定的な例としては、金属および無機物質の両方が挙げられる。
【0052】
例示的な金属としては、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、バナジウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、希土類金属、ならびに鋼およびステンレス鋼などの、それらの合金が挙げられるが、それらに限定されない。
【0053】
無機物質の非限定的な例としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛、ジルコニウム、アルカリ土類金属、およびホウ素の酸化物;ホウ素、アルミニウム、チタン、およびケイ素の窒化物;ランタンなどの希土類金属のホウ化物;ケイ素、ホウ素、鉄、タングステン、およびバナジウムの炭化物;モリブデン、タングステン、および亜鉛の硫化物;アルカリ土類および希土類金属のフッ化物;任意選択的に化学的に官能化されているグラフェンおよび黒鉛酸化物などの黒鉛材料、カーボンブラック、炭素繊維、ナノチューブ、および球状の、C60ベース材料などの、サブミクロンおよびナノスケールの炭素ベースの材料;ならびに酸素またはフッ素以外の少なくとも2つのカチオンを含有する化合物を意味する、混合酸化物およびフッ化物が挙げられる。例示的な混合酸化物としては、ケイ酸塩、バナジウム酸塩、チタン酸塩、およびフェライト、ならびに板状形態か棒様形態かのどちらかの天然または合成粘土が挙げられる。単一微粒子材料か2つ以上の微粒子材料の組み合わせかのどちらかが微粒子充填材として組み込まれてもよく、本明細書に列挙される材料は、ドーパントまたは付随的不純物を含んでもよいと理解されるべきである。
・・・
【0056】
幾つかの場合には、出発微粒子充填材の一部は、一次粒径よりも大きい、凝集したかまたは凝集塊になった粒子を含む。ある実施形態においては、少なくとも1つの次元で測定されるように、一次粒径は100nm以下であり得るが、凝集塊は2μm以上ほどに大きいものであり得る。別の実施形態においては、少なくとも1つの次元で一次粒径は50nm以下、凝集塊は10μm以上ほどに大きいものであり得る。幾らかまたはすべてのこれらの大きい粒子は、フルオロポリマー複合体の形成中か、摩耗プロセスが進行するにつれて粒子がベアリング面で新たに曝されるときにかのどちらかで、その後バラバラに壊れるかまたは解凝集塊し得ると考えられる。したがって、微粒子充填材が本フルオロポリマー複合体へ組み込まれる前の、その初期状態で微粒子充填材を特徴付けるために本明細書で用いられるより大きい尺度の粒径は、複合体中にまたはそれから形成される転移膜中に必ずしも存続せず、それによって形成されたより小さい粒子は、より小さいサイズを有し得る。」


「【0078】
本組成物およびフルオロポリマー複合体の様々な実施形態は、約0.1重量%?約50重量%の範囲であってもよいレベルの微粒子充填材ローディングを組み込んでいる。別の実施形態においては、フルオロポリマー中の微粒子充填材の最終ローディングは、約0.1?30重量%であってもよい。さらに他の実施形態においては、最終ローディングは、約0.1?20重量%、約0.1?10重量%、約0.5?10重量%、または約1?8重量%であってもよい。余りにも高いローディングは、引張強度および靱性などの、複合体の機械的特性を危うくし得る。低いローディングはそのような強度特性を有益に向上させ得るが、ローディングは、未充填フルオロポリマー体よりも摩耗特性の十分な向上を付随して生み出すように選択されてもよい。一般に、複合体は、粒子が十分に分散されるという条件で、機械的特性の過度の劣化なしにより大きい粒子よりも高いローディングのサブミクロンまたはナノスケール粒子を含んでもよい。」


「【0098】
原材料
実施例を実施するのに使用される原材料としては、下記が挙げられる:
イソプロピルアルコール(IPA):4Åモレキュラーシーブ上に保管されるOptima(登録商標)銘柄(H2O<0.020%、0.2μm濾過)(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)。
PTFE 7C粉末:Teflon(登録商標)PTFE 7Cポリテトラフルオロエチレン粒状樹脂(DuPont Corporation,Wilmington,DE)。
PFA 340:Teflon(登録商標)PFA 340:まだ溶融加工されていない、緩く詰められた毛羽である、パーフルオロアルコキシ樹脂(DuPont Corporation,Wilmington,DE)。
サブミクロンα-アルミナ:
試料A:60nmのおおよその粒径を有すると製造業者によって表される、ストック#44652,Alfa Aesar,Ward Hill,MA;
試料B:27?43nmのおおよその粒径を有すると製造業者によって表される、ストック#44653,Alfa Aesar,Ward Hill,MA;
試料C:350?490nmのおおよその粒径を有すると製造業者によって表される、ストック#42573,Alfa Aesar,Ward Hill,MA;
(測定方法は、平均粒径を測定することに関して製造業者によってまったく示されなかった)
ルチル型TiO_(2):動的光散乱によって測定されるように160nmのd_(50)値の粒度分布をもたらす、実験室沈澱法によって調製された。」


「【0111】
実施例4?5
溶融ブレンディングを用いるPFA-サブミクロン粒子複合体の調製
実験室規模の溶融加工技術を用いて表Iに述べられるようなトライボロジーおよび機械的検査のための試料AおよびBの5重量%のサブミクロンα-アルミナ粒子を充填したTeflon(登録商標)PFA340の複合体を調製した。
【0112】
【表3】

【0113】
試料は、サブミクロンα-アルミナ粒子とTeflon(登録商標)PFA 340マトリックス材料とを直接溶融ブレンドすることによって調製した。溶融ブレンディングは、再循環ループおよび試料抽気弁付きの15cc容量、共回転、相互かみ合いの円錐状二軸スクリューバッチミキサーを用いる、XploreTMミクロ配合システム(DSM Research,Galeen,NV)を使用して実施した。各試料について必要量の選択されるサブミクロンα-アルミナおよびTeflon(登録商標)PFA 340を手動混合し、スクリューが回転しながら、バレルのトップに取り付けられた漏斗およびプランジャーシステムによってミキサーへゆっくりロードした。ローディングが完了したとき、供給プランジャーを取り除き、プラグで置き換えた。混合時間は、プラグが確保されたときにマークした。
【0114】
ミクロ配合機は、400℃以下での制御および運転のために決められた3つのバレル加熱域(トップ-中央-ボトム)で配置構成された。温度は、スクリュー先端よりも下に配置された溶融熱電対で監視した。スクリューポンプ送液によって与えられるバレル上の駆動モーターアンペア数および力を、組成、温度、化学反応または分散の状態による粘度の変化を示すために監視した。温度、力およびアンペア数についての平均値を記録した。ミキサーからの押出物を、移動可能なプランジャー付きの加熱トランスファーシリンダーに集め、射出成形装置へ入れた。
【0115】
取り外し可能な2ピース金型を含有する加熱および水冷シリンダーを有する圧縮空気駆動式射出成形機を、仕上げ複合体を溶融加工するために用いた。成形機の運転を、射出圧力および時間、ならびにパックホールド圧力および時間などの、射出パラメータの事前選択を可能にするように制御した。
【0116】
各試料を順繰りに混合し、上に記載されたようにトランスファーシリンダーに入れ、次に成形機にロードし、確保した。圧縮空気駆動式シリンダーを、融解材料を金型キャビティの中に押し込むようにプランジャーを推し進めて、活性化した。射出成形サイクルの完了後に、金型を加熱されたキャビティから取り外し、金型部分を分離し、そのようにして成形品を金型から取り出し、周囲温度まで放冷することができた。
【0117】
摩耗試験実施に好適な試料は、従来の機械加工技術によって射出成形体から得られた。
・・・
【0123】
実施例7
α-アルミナ/PFA複合体の耐摩耗性
実施例4?6に述べられたように調製された溶融加工α-アルミナ/PFA複合体の試料の往復耐摩耗性を、上に記載された摩擦計システムを用いて試験し、対照例2の未充填PFA体についての耐摩耗性データと比較した。
【0124】
次の結果が、これらの試料の定常状態摩耗速度kおよび滑り摩擦係数μについて得られた。
【0125】
【表4】

【0126】
結果は、溶融加工可能なPFAマトリックスとアルミナ微粒子充填材とを含む複合体が、低い摩擦係数を危うくすることなく、比較の未充填Teflon(登録商標)PFA 340材料の摩耗速度の大きさよりも3桁ほどだけ低下した摩耗速度を示し得ることを示す。」


「【0134】
実施例14
TiO_(2)-PTFE複合体の調製および摩耗試験
5重量%のルチル型のTiO_(2)をTeflon(登録商標)PTFE 7C中に含む複合体を、実施例2に述べられたスラリープロセスを用いて、しかしTiO_(2)がα-アルミナと置き換わる状態で調製した。実施例3に従って実施された往復摩耗試験は、k=1.11×10^(-7)mm^(3)/N-mの低い摩耗速度およびμ=0.23の低い摩擦係数をもたらした。」


摘記エ、オより、甲1には、実施例4、5として、「試料AおよびB(合議体注:表Iから、「C」の誤記であると認められる。)の5重量%のサブミクロンα-アルミナ粒子を充填したTeflon(登録商標)PFA340の複合体」(段落【0111】)である以下の発明が記載されていると認められる。
「サブミクロンα-アルミナ粒子とTeflon(登録商標)PFA 340(まだ溶融加工されていない、緩く詰められた毛羽である、パーフルオロアルコキシ樹脂(DuPont Corporation,Wilmington,DE(以下、「PFA340」という。))マトリックス材料とを直接溶融ブレンドすることによって調製したPFA-サブミクロン粒子複合体であって、サブミクロンα-アルミナ粒子として試料A(60nmのおおよその粒径を有すると製造業者によって表される、ストック#44652,Alfa Aesar,Ward Hill,MA)又は試料C(350?490nmのおおよその粒径を有すると製造業者によって表される、ストック#42573,Alfa Aesar,Ward Hill,MA)を用い、サブミクロンα-アルミナ粒子を5重量%含有する複合体。」(以下、「甲1発明」という。)

(2)甲2に記載された事項
甲2には、以下の事項が記載されている。




(3)甲3に記載された事項
甲3には、以下の事項が記載されている。

「2 無機素材の表面化学的性質
無機素材表面が水にぬれやすいか、油にぬれやすいかは表面化学的性質の一つの指標である。おおまかには表面における元素の結合でイオン性の割合が多い物質は親水性であり、イオン性が少ない、つまり共有結合性の割合が大きい物質は疎水性を示す。たとえば元素間の結合のイオン性は、CaO(Ca-O)が80%、Al_(2)O_(3)(Al-O)が63%、SiO_(2)(Si-O)が50%、SiC(Si-C)が10%とさまざまである^(10))。実際の無機素材表面の親水性・疎水性は酸化状態や表面官能基の存在により著しく異なっている。たとえば、アルミナ、チタニアなどの金属酸化物表面には水酸基が生じており、さらに物理吸着水が存在している^(11),12))。また炭化ケイ素表面には酸化によって生成した水酸基が存在している^(13))。
固体表面の水酸基は液体中では溶媒和、電離による電荷形成に関与し、またアルコールの場合と類似した固有の化学反応性を有する^(11),12))ので、表面処理においては処理剤の吸着サイトとして,また化学反応による有機官能基の導入サイトとして機能する重要な標的である。」(第5頁左欄下から第11行?右欄第9行)


「7 メカノケミカル反応による表面処理と分散
たとえば、水中でアルミナやタルクを粉砕するときにせん断力により化学結合が破断されて生ずる新表面の表面酸素には水分子のH^(+)(プロトン)が結合して水酸基を形成し、他方の破断面の電子受容体(ルイス酸)となる金属原子には孤立電子対をもつOH^(-)が結合してそれぞれ静電ポテンシャルを低下させていると考えられる。」(第11頁左欄下から第12行?下から第5行)

(4)甲4に記載された事項
甲4には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
(a)テトラフルオロエチレン及び/又はクロロトリフルオロエチレンに基づく重合単位、(b)フッ素モノマー(ただし、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを除く。)に基づく重合単位、及び(c)イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸及び無水シトラコン酸からなる群から選ばれる1種以上に基づく重合単位を含有し、((a)+(b)+(c))に対して(a)が50?99.8モル%、(b)が0.1?49.99モル%、(c)が0.01?5モル%であり、容量流速が0.1?1000mm3/秒であることを特徴とする含フッ素共重合体。
【請求項2】
さらに(d)非フッ素モノマーに基づく重合単位を含有し、((a)+(b)+(c))/(d)のモル比が100/5?90である請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の含フッ素共重合体の層が基材の表面に形成されてなることを特徴とする物品。
【請求項4】
前記物品が、請求項1又は2に記載の含フッ素共重合体の層と該フッ素共重合体以外の合成樹脂の層とが直接積層されてなる積層体である請求項3に記載の物品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の含フッ素共重合体の層とポリアミドの層とが直接積層されてなる積層体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐薬品性、耐熱性、耐候性、耐ストレスクラック性に優れ、かつ合成樹脂、金属、金属酸化物、ガラス、セラミックス等の他材料との接着性に優れる含フッ素共重合体に関する。
・・・
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような背景のもとに開発が要請されている、耐熱性、耐薬品性、耐候性に優れ、かつ他材料との接着性に優れる含フッ素共重合体を提供することである。
・・・
【0012】
本発明の含フッ素共重合体は、(a)テトラフルオロエチレン(以下、TFEという。)及び/又はクロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEという。)に基づく重合単位を、(b)フッ素モノマー(ただし、TFE及びCTFEを除く。)に基づく重合単位、及び(c)イタコン酸(以下、IACという。)、無水イタコン酸(以下、IAHという。)、シトラコン酸(以下、CACという。)及び無水シトラコン酸(以下、CAHという。)からなる群から選ばれる1種以上に基づく重合単位を含有する。
【0013】
本発明の含フッ素共重合体において、((a)+(b)+(c))に対して(a)が50?99.8モル%、(b)が0.1?49.99モル%、(c)が0.01?5モル%である。ここで、((a)+(b)+(c))は、(a)と(b)と(c)との合計を表す。
【0014】
好ましくは、(a)が50?99モル%、(b)が0.5?49.9モル%、(c)が0.1?3モル%であり、より好ましくは(a)が50?98モル%、(b)が1?49.9モル%、(c)が0.1?2モル%である。(a)、(b)及び(c)のモル%がこの範囲にあると、含フッ素共重合体は、耐熱性、耐薬品性に優れる。さらに、(b)のモル比がこの範囲にあると、含フッ素共重合体は、成形性に優れ、耐ストレスクラック性等の機械物性に優れる。(c)のモル比がこの範囲にあると、含フッ素共重合体は、他材料との接着性に優れる。」


「【0032】
本発明の物品は、含フッ素共重合体の層が基材の表面に形成されてなる。
基材としては、前記含フッ素重合体以外の合成樹脂、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属、ガラス、セラミックス等が挙げられる。該基材を被覆する方法としては、静電粉体成形法、回転成形法、溶射成形法、流動浸漬法、ディスパージョン法、溶媒キャスト法等が採用できる。
・・・
【0043】
本発明の含フッ素共重合体の層が基材の表面に形成されてなる物品は、耐熱性、耐薬品性、耐食性、耐油性、耐候性、耐磨耗性、潤滑性等に優れることから、食品用、医療用、半導体用、化学プラント用等の反応器、容器、配管等、薬液輸送用タンクローリー、飛散防止ガラス板、飛散防止ガラスビン、耐磨耗性セラミックス部品等の用途に用いられる。」

(5)甲5に記載された事項
甲5には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
導体の周囲がフッ素樹脂を含む絶縁層により被覆されている絶縁電線であって、前記絶縁層が、フィラーとして酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群より選択される1種以上の金属酸化物の粉末を含有することを特徴とする絶縁電線。
【請求項2】
前記フィラーの含有量が前記フッ素樹脂100質量部に対し0.1?110質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の絶縁電線。
・・・
【請求項5】
前記フィラーの平均粒径が50μm以下であることを特徴とする請求項1記載の絶縁電線。」


「【0014】
本発明の絶縁電線は、導体の周囲がフッ素樹脂を含む絶縁層により被覆されている絶縁電線であって、前記絶縁層が、フィラーとして酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群より選択される1種以上の金属酸化物の粉末を含有するものであるから、耐摩耗性に優れると共に、コストを低減することが可能である。特に上記フィラーの添加は、フッ素樹脂を含む絶縁層の薄肉の場合の耐摩耗性を向上させるのに効果的である。
・・・
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施例の絶縁電線は、導体と、該導体の周囲を被覆する絶縁層とを有している。絶縁層は、フッ素樹脂と、フィラーとして、少なくとも酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化チタン粉末、酸化亜鉛粉末のいずれか1種を含有している。また絶縁層のフィラーは、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化チタン粉末、酸化亜鉛粉末の中の2種以上を併用してもよい。
・・・
【0018】
絶縁層に用いられるフッ素樹脂は、特に限定されるものではない。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンン(PTFE)、フッ化エチレン-ポリプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。フッ素樹脂は、使用する絶縁電線の耐熱区分等に応じて、適宜、選択することができる。
【0019】
フッ素樹脂は、市販品として例えば、ダイキン工業社の商品名として、NP-20、NP-21、NP-30、NP-101(以上、FEP)、AP-201、AP-202、AP-210(以上、PFA)、EP-506、EP-521、EP-526(以上、ETFE)、旭硝子社の商品名として、C-55AP、C88AP、C-55AXP(以上、ETFE)、CD1、CD141、CD145(以上、PTFE)、P-66PT、P-63PT、P-62XPT(以上、PFA)等を用いることができる。」


「【0025】
酸化チタン粉末を絶縁層に添加することで、耐摩耗性を向上させることができる。酸化チタン粉末は、ルチル型、アナターゼ型、硫酸法によるもの、塩素法によるものなど、いずれでもよい。
【0026】
酸化チタン粉末の市販品として例えば、堺化学社の商品名で、「GTR-100(0.3μm)」、「D-918(0.3μm)」、「FTR-700(0.2μm)」、また石原産業社の商品名で「PFC104(0.3μm)」、「TTO-51(0.03μm」、また富士チタン工業社の商品名で、「TA-100(0.6μm」、「TA-500(0.7μm)」、またテイカ社の商品名で「JR-301(0.3μm)」、「JA-1(0.2μm)」などを用いることができる。上記括弧内は平均粒径である。
【0027】
酸化亜鉛粉末を絶縁層に添加することで、耐摩耗性を向上させることができる。酸化亜鉛粉末は、特に限定されるものではない。酸化亜鉛は、金属亜鉛からの間接法、亜鉛鉱石からの間接法、湿式法などのいずれの方法で製造したものでもよい。
【0028】
酸化亜鉛粉末の市販品として例えば、堺化学社の商品名で、「酸化亜鉛1種(0.6μm)」、「微細酸化亜鉛(0.3μm)」、「超微粒子酸化亜鉛(0.04μm)」、「大粒子酸化亜鉛(11μm)」、宇部マテリアルズ社の商品名で、「Z020(0.51μm)」、「Z015(0.32μm)」などを用いることができる。上記括弧内は平均粒径である。
・・・
【0030】
上記フィラーの平均粒径は、50μm以下であるのが好ましい。フィラーの平均粒径が50μmを超えると、絶縁層が外観不良となる虞がある。
【0031】
上記フィラーの添加量は、フッ素樹脂100質量部に対し、110?0.1質量部の範囲内であるのが好ましい。フィラーが110質量部を超えると、耐寒性が低下する虞がある。また、フィラーが0.1質量部未満では、耐摩耗性を向上させる効果や、コストを低減する効果が得られない虞がある。
【0032】
上記フィラーは、シランカップリング剤により表面処理されているものが好ましい。フィラーの表面がシランカップリング剤により表面処理が施されていると、フッ素樹脂に対する分散性が向上し、フッ素樹脂との間の接着力が向上する。その結果、絶縁電線の耐寒性、耐摩耗性等の特性を更に良好とすることができる。
【0033】
フィラーの表面処理に用いられるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン(KBM-1003)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM-803)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(KBE-846)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(KBM-7103)等を挙げることができる。尚、括弧内は、信越化学社の商品名である。これらは、単独で使用しても、2種以上併用してもいずれでも良い。」


「【0038】
以下、上記の絶縁電線の製造方法について説明する。絶縁電線は、フッ素樹脂とフィラーを含む組成物を混練し均一に分散し、導体の周囲に押し出して絶縁層を形成することで得られる。
【0039】
上記混練方法としては、例えば、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、混練押し出し機、二軸混練押し出し機、ロール等の通常の混練機で溶融混練して均一に分散して、その後ペレタイズ化することで均一に分散させることができる。
【0040】
絶縁層の組成物は、混合機で均一に分散させることが可能であるが、フッ素樹脂の融点が高いこともあり押出時に混合させることが効率的である。
【0041】
絶縁層組成物を導体の周囲に押し出して絶縁層を形成するには、通常の絶縁電線の製造に用いられる電線押出成形機等を用いることができる。絶縁電線に用いられる導体は、通常の絶縁電線に使用されるものが利用できる。また絶縁電線の導体の径や絶縁層の厚み等は、特に限定されず、絶縁電線の用途等に応じて適宜決めることができる。」


「【0044】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。
〔実施例1-1?1-7〕
表1の絶縁層の成分組成に示すフッ素樹脂1?4のフッ素樹脂ペレットと、酸化マグネシウム粉末1?2又は表面処理酸化マグネシウム粉末1をドライブレンドさせて押出機のホッパーに投入し、その後押出し成形機により、軟銅線を7本撚り合わせた軟銅より線の導体(断面積0.5mm^(2))の外周に0.2mm厚で押出被覆して絶縁層を形成して実施例1-1?1-7の絶縁電線を得た。
【0045】
〔実施例2-1?2-7〕
表2に示す絶縁層の成分組成のフッ素樹脂1?4のフッ素樹脂ペレットと、酸化アルミニウム粉末1?2又は表面処理酸化アルミニウム粉末1を用いた以外は、実施例1-1?1-7と同様にして絶縁層を形成して実施例2-1?2-7の絶縁電線を得た。
【0046】
〔実施例3-1?3-7〕
表3に示す絶縁層の成分組成のフッ素樹脂1?4のフッ素樹脂ペレットと、酸化チタン粉末1?2又は表面処理酸化チタン粉末1を用いた以外は、実施例1-1?1-7と同様にして絶縁層を形成して実施例3-1?3-7の絶縁電線を得た。
【0047】
〔実施例4-1?4-7〕
表4に示す絶縁層の成分組成のフッ素樹脂1?4のフッ素樹脂ペレットと、酸化亜鉛粉末1?2又は表面処理酸化亜鉛粉末1を用いた以外は、実施例1-1?1-7と同様にして絶縁層を形成して実施例4-1?4-7の絶縁電線を得た。
・・・
【0049】
実施例1-1?1-7、2-1?2-7、3-1?3-7、4-1?4-7、比較例1?4の絶縁電線について、耐寒性試験、摩耗性試験を行い評価した。その結果を表1?5に合わせて示す。尚、表1?5の各成分組成、試験方法及び評価方法は、以下の通りである。
【0050】
〔表1?5の成分〕
・フッ素樹脂1:ダイキン社製、商品名NP20
・フッ素樹脂2:ダイキン社製、商品名AP-201
・フッ素樹脂3:旭硝子社製、商品名C-55AP
・フッ素樹脂4:旭硝子社製、商品名P-66PT
【0051】
・酸化マグネシウム粉末1:タテホ化学社製、商品名FNM-G(平均粒径70μm)
・酸化マグネシウム粉末2: タテホ化学社製、商品名U-10(平均粒径200μm)
・表面処理酸化マグネシウム粉末1:酸化マグネシウムをシランカップリング剤5%で表面処理したもの。酸化マグネシウムは宇部マテリアルズ社製、商品名UCM-150(平均粒径1.9μm)を用いた。シランカップリング剤は、信越化学社製、商品名KBM7103(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)を用いた。尚、シランカップリング剤の使用量は酸化マグネシウムとシランカップリング剤の合計量に対する5質量%である。
【0052】
・酸化アルミニウム粉末1:昭和電工社製、商品名A-13H(平均粒径57μm)
・酸化アルミニウム粉末2:昭和電工社製、商品名A-12C(平均粒径85μm)
・表面処理酸化アルミニウム粉末1:酸化アルミニウムをシランカップリング剤5%で表面処理したもの。酸化アルミニウムは昭和電工社製、商品名AS-50(平均粒径9μm)を用いた。シランカップリング剤は、信越化学社製、商品名KBM7103(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)を用いた。尚、シランカップリング剤の使用量は酸化アルミニウムとシランカップリング剤の合計量に対する5質量%である。
【0053】
・酸化チタン粉末1:石原産業社製、商品名TTO-51(平均粒径0.03μm)
・酸化チタン粉末2:富士チタン工業社製、商品名TA-100(平均粒径0.6μm)
・表面処理酸化チタン粉末1:酸化チタンをシランカップリング剤5%で表面処理したもの。酸化チタンは堺化学社製、商品名GTR-100(平均粒径0.3μm)を用いた。シランカップリング剤は、信越化学社製、商品名KBM7103(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)を用いた。尚、シランカップリング剤の使用量は酸化チタンとシランカップリング剤の合計量に対する5質量%である。
【0054】
・酸化亜鉛粉末1:宇部マテリアルズ社製、商品名Z020(平均粒径0.51μm)
・酸化亜鉛粉末2:堺化学社製、商品名酸化亜鉛1種(平均粒径0.6μm)
・表面処理酸化亜鉛粉末1:酸化亜鉛をシランカップリング剤5%で表面処理したもの。
酸化亜鉛は宇部マテリアルズ社製、商品名Z015(平均粒径0.32μm)を用いた。シランカップリング剤は、信越化学社製、商品名KBM7103(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)を用いた。尚、シランカップリング剤の使用量は酸化亜鉛とシランカップリング剤の合計量に対する5質量%である。
【0055】
〔耐寒性試験方法〕
JIS C3055に準拠して行った。すなわち実施例、比較例の絶縁電線を38mmの長さに切り出して試験片とした。この試験片を耐寒性試験機に装着し、所定の温度まで冷却し、打撃具で打撃して、試験片の打撃後の状態を観察した。5本の試験片を用いて、5本の試験片が全て割れた温度を耐寒温度とした。
【0056】
〔摩耗性試験方法〕
摩耗性試験は、社団法人自動車技術会規格「JASO D618」に準拠し、ブレード往復法により試験を行った。すなわち実施例及び比較例の絶縁電線を750mmの長さに切り出して試験片とした。そして23±5℃の室温下で絶縁層表面を軸方向に10mm以上の長さでブレードを毎分50回の速さで往復させ、導体に接するまでの往復回数を測定して、耐摩耗性を評価した。この際ブレードにかかる加重は7Nとした。回数については、200回以上のものを○(合格)とし、300回以上のものを◎(良好)とし、200回未満のものを×(不合格)とした。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

・・・
【0062】
実施例1-1?1-7、2-1?2-7、3-1?3-7、4-1?4-7の絶縁電線は、表1?表4に示すように、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛の何れかの金属酸化物の粉末をフィラーとして含有するものであるから、いずれも耐寒性が-20℃以下と良好であり、更に摩耗性が合格又は良好であった。これに対し比較例1?4の絶縁電線は表5に示すように、耐寒性が-45℃以下と良好であるが、フィラーを含有しないので、摩耗性の評価が不合格であった。」


摘記ア?ウの、特に請求項1を引用する請求項5より、甲5には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「フッ素樹脂100質量部に対し、平均粒径が50μm以下である、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群より選択される1種以上の金属酸化物の粉末を0.1?110質量部の範囲内で含有する絶縁層。」(以下、「甲5発明」という。)

(6)甲7に記載された事項
甲7には、以下の事項が記載されている。

「2.特許請求の範囲
パーフルオロアルコキシ樹脂に耐熱性繊維粉末および硫化化合物粉末を添加したことを特徴とするパーフルオロアルコキシ樹脂組成物。」(第1頁左下欄第4?7行)


「つぎに、この発明における耐熱性とは、パーフルオロアルコキシ樹脂の成形温度(通常330?440℃)に耐えることを意味するものであって、耐熱性繊維の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、ウオラストナイト、チタン酸カリウムホイスカー、シリコンカーバイドホイスカー、サファイアホイスカーなどの無機繊維およびホイスカー類、鋼線、銅線、ステンレス線などの金属繊維、タングステン心線または炭素繊維などにボロン、炭化ケイ素などを蒸着したいわゆるボロン繊維、炭化ケイ素繊維などの複合繊維および芳香族ポリアミド繊維などの耐熱性有機繊維を挙げることが出来る。繊維の形態としては、押出しおよび射出などの熔融成形の容易さの面から、10mm以下の好ましくは5mm以下の繊維長の粉末であることが望ましい、また繊維と樹脂との親和性を増加させる目的で、シランカップリング剤などの処理剤で繊維を処理しておくことも望ましい。」(第2頁右上欄第10行?左下欄第8行)


「〔実施例〕
実施例および比較例に用いた原材料を一括して示すとつぎのとおりである。なお、〔 〕内に略号を記した。
A.パーフルオロアルコキシ樹脂〔PFA〕
〇1(合議体注:〇1は、〇の中に1。以下同様。)三井デュポンフロロケミカル社製:テフロンPFA340-J、
B.耐熱性繊維粉末
〇2ガラス繊維〔GF-1〕旭ファイバーグラス社製:MF-β(平均径3μm)、
〇3ガラス繊維〔GF-2〕旭ファイバーグラス社製:MF-KAC(平均径13μm)
〇4チタン酸カリウム繊維〔テイスモ〕大塚化学薬品社製:テイスモD101(平均径0.35μm)、
〇5ウオラストナイト〔ケモリット〕丸和バイオケミカル社製:ケモリットASB-8(平均径3μm)、
C.硫化化合物粉末
〇6二硫化モリブデン〔MoS_(2)〕ダウコーニング社製:モリコートマイクロサイズ(平均粒径3μm)、
〇7硫化カドミウム〔CdS〕1三菱金属社製:ボンレッドマルーン850(平均粒径8μm)、
〇8芳香族ポリエステル樹脂〔エコノール〕住友化学工業社製:エコノールE101SS(平均粒径12.5μm)であり、これら原材料の配合割合はすべて重量%で示した。
実施例1?4:
前記の各原材料を第1表に示す割合でトライブレンドした後、二輪溶融押出機(池貝鉄工社製:PCM-30)に供給して360℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練しながら径3mmの穴5個のストランドダイから押出し、押出されたストランドを連続的に切断してペレットを作製した。得られたペレットを射出成形機(バレル温度320?380℃、金型温度210℃、射出圧カ800kg/cm^(3))にかけて定められた試験片を成形した。成形品の物性はつぎのようにして求めた。なお、得られた結果は第1表に併記した。
第 1 表

・・・
第1表および第2表から明らかなように、実施例1?4はいずれも摩耗係数がかなり優れており、さらに摩擦係数、曲げ強度も優れているが、比較例1?4はいずれも摩耗係数ががなり劣り、曲げ強度、摩擦係数も劣っていて、この発明における耐熱性繊維粉末と硫化化合物とが共存する効果の大きいことが分かった。」(第2頁右下欄第8行?第3頁右下欄第4行)


摘記ア、ウより、甲7には、実施例3として、以下の発明が記載されていると認められる。
「パーフルオロアルコキシ樹脂〔PFA〕(三井デュポンフロロケミカル社製:テフロンPFA340-J)75重量%に、チタン酸カリウム繊維〔テイスモ〕(大塚化学薬品社製:テイスモD101、平均径0.35μm)15重量%及び二硫化モリブデン〔MoS_(2)〕(ダウコーニング社製:モリコートマイクロサイズ)10重量%を添加したパーフルオロアルコキシ樹脂組成物。」(以下、「甲7発明」という。)


2 判断

本件の請求項3に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除され、申立ての対象が存在しないものとなったため、請求項3に係る特許に対する異議申立ては却下する。
したがって、本件訂正発明1?2、4?21に対する上記第4の取消理由及び申立理由について、以下に検討する。

(1)取消理由1、取消理由2-1について
取消理由1、取消理由2-1は、甲1に基づく新規性及び進歩性に関するものであるから、申立理由1-1、申立理由2-1と、以下にまとめて検討する。
そして、取消理由1、取消理由2-1、申立理由1-1及び申立理由2-1は、本件訂正前の請求項1?11に係るものであるところ、上記第2で示したとおり、本件訂正発明12?14は、本件訂正前の請求項4に対応し、本件訂正発明15?21は、本件訂正前の請求項5に対応するから、本件訂正発明1?2、4?21について、以下に検討する。

ア 本件訂正発明1について

(ア)対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「PFA340」は、甲1の段落【0049】?【0050】の記載(摘記1(1)イ)より、「溶融加工可能なおよび/または溶融二次加工可能なフルオロポリマー」であって、テトラフルオロエチレン(TFE)と線状もしくは分岐アルキル基が1?5個の炭素原子を含有する、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)とのコポリマー(TFE/PAVEコポリマー)であるので、本件訂正発明1の「溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)」に相当する。また、甲1発明の「試料A(60nmのおおよその粒径を有すると製造業者によって表される、ストック#44652,Alfa Aesar,Ward Hill,MA)又は試料C(350?490nmのおおよその粒径を有すると製造業者によって表される、ストック#42573,Alfa Aesar,Ward Hill,MA)」の「サブミクロンα-アルミナ粒子」は、一次粒子径が500nm以下であり、金属原子であるアルミニウム原子を含んでいるから、本件訂正発明1の「一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)」であって、「前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり」に相当する。
そして、甲1発明の「複合体」は、「サブミクロンα-アルミナ粒子」を5重量%と「PFA340」を含有するから、「PFA340」100質量部に対して、「サブミクロンα-アルミナ粒子」を5.3(=5/95×100)質量部含有するものといえるから、甲1発明の「サブミクロンα-アルミナ粒子を5重量%含有する」は、本件訂正発明1の「無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である」と、重複一致する。
さらに、甲1発明の「複合体」は、含フッ素樹脂である「PFA340」を含有する組成物であるから、本件訂正発明1の「含フッ素樹脂組成物」に相当する。

そうすると、本件訂正発明1と甲1発明とは、
「溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでいる、含フッ素樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
含フッ素共重合体に関し、本件訂正発明1は、「カルボニル基含有基を有する」のに対し、甲1発明は、「カルボニル基含有基を有する」ことが明らかでない点。

<相違点2>
「無機フィラー」に関し、本件訂正発明1は、「化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、および、オキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し」、「前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなる」のに対し、甲1発明は、反応性官能基を有することが明らかでない点。

(イ)相違点についての判断
まず、上記相違点2について検討する。
甲1発明の「サブミクロンα-アルミナ粒子」は、「無機フィラー(B)の表面において」「前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなる」「化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、および、オキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基」を有さないことは、明らかである。
よって、上記相違点2は、実質的な相違点である。

次に、上記相違点2に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるか否かについて検討する。
a 甲1の段落【0053】には、微粒子充填材の無機物質として、各種の具体的な化合物が記載されるものの、これらの微粒子充填材が表面に反応性官能基を有するか否かについては、何ら記載も示唆もされていない。
b また、同【0053】には、微粒子充填材として、数多くの具体的な化合物が記載され、「ホウ素、アルミニウム、チタン、およびケイ素の窒化物」が記載されるところ、このうち、ホウ素およびケイ素の窒化物である、窒化ホウ素や、窒化ケイ素は、その粒子表面にアミノ基が原子(M)に他の原子を介することなく共有結合していることは、当業者に周知の技術事項である(必要であれば、参考資料1の段落【0006】、参考資料2の第2頁第13?15行、参考資料3の第472頁左欄第7?12行を参照。)。そして、窒化ホウ素又は窒化ケイ素が有する「アミノ基」は、「化学修飾により表面に結合された」ものではないが、「化学修飾により表面に結合された」「アミノ基」と、区別することができない。
しかしながら、甲1の請求項11?13、実施例4?5、7、14等には、微粒子充填材として酸化アルミニウムやルチル型二酸化チタンを用いることによって、得られる複合体が、摩擦係数μは小さいままで、摩耗速度が低下するという有利な効果が奏されることが具体的に示されている(摘記1(1)ア、オ、カ)ものの、列挙されている多数の微粒子充填材の中から窒化ホウ素や窒化ケイ素を選択することは記載されていないし、ましてや窒化ホウ素や窒化ケイ素が、酸化アルミニウムやルチル型二酸化チタンと同等に、上記の有利な効果が奏されることは示されていない。
してみると、甲1発明において、微粒子充填材として「サブミクロンα-アルミナ粒子」に代えて、アミノ基がSi原子又はB原子に他の原子を介することなく共有結合してなる窒化ホウ素又は窒化ケイ素を用いることは、何ら動機付けられない。
c 上記a、bのとおりであるから、甲1発明において、微粒子充填材として「化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、および、オキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し」、「前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなる」ものを用いることを、当業者が容易に想到し得るとはいえない。
d さらに、本件訂正発明1が奏する効果について検討する。
本件訂正発明1は、本件明細書の段落【0006】、【0010】、実施例等に記載されるとおり、「表面平滑性と耐摩耗性に優れた成形品を製造することができる」という効果を奏するものである。
これに対し、甲1の実施例等には、得られる複合体が耐摩耗性に優れることは記載されるものの、表面平滑性については何らの記載も示唆もない。
してみると、本件訂正発明1の「表面平滑性」「に優れた成形品を製造することができる」という効果は、甲1の記載から予測し得るものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、少なくとも上記相違点2の点で実質的に相違するから、上記相違点1について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明1は、上記相違点2に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、上記相違点1について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用するものであり、上記アで述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件訂正発明4について

(ア)対比
本件訂正発明4と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「PFA340」は、上記ア(ア)で述べたのと同様に、本件訂正発明4の「溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)」に相当する。また、甲1発明の「試料A(60nmのおおよその粒径を有すると製造業者によって表される、ストック#44652,Alfa Aesar,Ward Hill,MA)又は試料C(350?490nmのおおよその粒径を有すると製造業者によって表される、ストック#42573,Alfa Aesar,Ward Hill,MA)」の「サブミクロンα-アルミナ粒子」は、本件訂正発明4の「一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)」に相当する。
そして、上記ア(ア)で述べたのと同様に、甲1発明の「サブミクロンα-アルミナ粒子を5重量%含有する」は、本件訂正発明4の「無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である」と、重複一致し、甲1発明の「複合体」は、本件訂正発明4の「含フッ素樹脂組成物」に相当する。

そうすると、本件訂正発明4と甲1発明とは、
「溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1a>
含フッ素共重合体に関し、本件訂正発明4は、「カルボニル基含有基を有する」のに対し、甲1発明は、「カルボニル基含有基を有する」ことが明らかでない点。

<相違点3>
「無機フィラー」に関し、本件訂正発明4は、「化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、」「前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる」のに対し、甲1発明は、反応性官能基を有することが明らかでない「アルミナ」である点。

(イ)相違点についての判断
まず、上記相違点3について検討する。
甲3に、「たとえば、アルミナ、チタニアなどの金属酸化物表面には水酸基が生じており」と記載されるとおり(摘記1(3)ア)、アルミナ等の金属酸化物表面には、水酸基が生じていることが、本件優先日時点での技術常識であり、また、甲3の「たとえば、水中でアルミナやタルクを粉砕するときにせん断力により化学結合が破断されて生ずる新表面の表面酸素には水分子のH^(+)(プロトン)が結合して水酸基を形成し」との記載(摘記1(3)イ)からも推認できるとおり、アルミナが有するヒドロキシ基は一般に、アルミニウム原子に他の原子を介することなく共有結合しているものといえる。
してみると、甲1発明の「サブミクロンα-アルミナ粒子」は、「表面に結合されたヒドロキシ基」である「反応性官能基を有し、」「前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなる」ものと解するのが自然である。そして、甲1発明の「サブミクロンα-アルミナ粒子」が有する「ヒドロキシ基」は、「化学修飾により表面に結合された」ものではないが、「化学修飾により表面に結合された」「ヒドロキシ基」と、区別することができない。
そうすると、甲1発明の「サブミクロンα-アルミナ粒子」は、「無機フィラー(B)の表面において」「前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなる」「化学修飾により表面に結合された」「ヒドロキシ基」を反応性官能基として有しているものの、これは、本件訂正発明4の「前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる」ものではないことは明らかである。
よって、上記相違点3は、実質的な相違点である。

次に、上記相違点3に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるか否かについて検討する。
甲1の段落【0053】には、微粒子充填材の無機物質として、「ケイ素、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛、ジルコニウム、アルカリ土類金属、およびホウ素の酸化物」、「ホウ素、アルミニウム、チタン、およびケイ素の窒化物」、「カーボンブラック、炭素繊維、ナノチューブ、および球状の、C_(60)ベース材料などの、サブミクロンおよびナノスケールの炭素ベースの材料」、「ケイ酸塩」等が記載されている(摘記1(1)イ)。
ここで、上記ア(イ)で述べたとおり、上記の無機物質のうち、窒化ホウ素は、表面にアミノ基を有することが当業者に周知の技術事項であり、また、ケイ素酸化物(シリカ)、ケイ酸塩等の金属酸化物が表面にヒドロキシ基を有することや、ナノチューブが表面にアミノ基を有することも、当業者に周知の技術事項である(必要であれば、参考資料6の第626頁左欄第1?4行、参考資料7の段落【0057】、参考資料8の段落【0010】、参考資料9の第179頁左欄第2?9行、参考資料10の第37頁第12行?第38頁第6行を参照。)。
しかしながら、上記ア(イ)で述べたのと同様に、甲1には、列挙されている多数の微粒子充填材の中からナノチューブや、シリカ、窒化ホウ素、ケイ酸塩としてマイカを選択することは記載されていないし、ましてやナノチューブや、シリカ、窒化ホウ素、マイカが、酸化アルミニウムやルチル型二酸化チタンと同等に、摩擦係数μは小さいままで、摩耗速度が低下するという有利な効果が奏されることは示されていない。
さらに、反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、フェロセン、酸化銅は、甲1に記載も示唆もされていない。
してみると、甲1発明において、微粒子充填材として「サブミクロンα-アルミナ粒子」に代えて、「化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、」前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカ又は窒化ホウ素を用いることは、何ら動機付けられない。
また、本件訂正発明4が奏する効果について検討するに、上記ア(イ)で述べたのと同様に、本件訂正発明4の「表面平滑性」「に優れた成形品を製造することができる」という効果は、甲1の記載から予測し得るものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明4は、少なくとも上記相違点3の点で実質的に相違するから、上記相違点1について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明4は、上記相違点3に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、上記相違点1について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件訂正発明5について

(ア)対比
本件訂正発明5と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「PFA340」は、上記ア(ア)で述べたのと同様に、本件訂正発明5の「溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)」に相当する。
また、甲1発明の「試料A(60nmのおおよその粒径を有すると製造業者によって表される、ストック#44652,Alfa Aesar,Ward Hill,MA)又は試料C(350?490nmのおおよその粒径を有すると製造業者によって表される、ストック#42573,Alfa Aesar,Ward Hill,MA)」の「サブミクロンα-アルミナ粒子」は、本件訂正発明5の「一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)」に相当する。
そして、上記ア(ア)で述べたのと同様に、甲1発明の「サブミクロンα-アルミナ粒子を5重量%含有する」は、本件訂正発明5の「無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である」と、重複一致し、甲1発明の「複合体」は、本件訂正発明5の「含フッ素樹脂組成物」に相当する。

そうすると、本件訂正発明5と甲1発明とは、
「溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点4>
「含フッ素共重合体」に関し、本件訂正発明5は、「カルボニル基含有基を有」し、「テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する」のに対し、甲1発明は、「PFA340」である点。

<相違点5>
「無機フィラー」に関し、本件訂正発明5は、「化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有」するのに対し、甲1発明は、反応性官能基を有することが明らかでない点。

(イ)相違点についての判断
まず、上記相違点4について検討する。
甲1発明の「PFA340」は、上記ア(ア)で述べたとおり、テトラフルオロエチレン(TFE)と線状もしくは分岐アルキル基が1?5個の炭素原子を含有する、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)とのコポリマー(TFE/PAVEコポリマー)であるので、本件訂正発明5の「カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)」を有さず、本件訂正発明5の「カルボニル基含有基を有」し、「テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する」含フッ素共重合体とは相違する。
よって、上記相違点4は、実質的な相違点である。

次に、上記相違点4に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるか、すなわち、甲1発明において、「PFA340」に代えて、本件訂正発明5の「カルボニル基含有基を有」し、「テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する」含フッ素共重合体(以下、「本件訂正発明5の特定の含フッ素共重合体(A)」ということもある。)を用いることが、当業者が容易に想到し得たものであるか否かについて検討する。
甲1の段落【0050】には、「熱可塑性の、溶融加工可能なおよび/または溶融二次加工可能なフルオロポリマー」として、TFEと、コモノマーとして、3?8個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィン、および/または線状もしくは分岐アルキル基が1?5個の炭素原子を含有するパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)等とを含有するコポリマーは記載されるものの、コモノマーとして「カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)」を含有するコポリマーは、記載も示唆もされていない。
一方、甲4の請求項1には、「(a)テトラフルオロエチレン及び/又はクロロトリフルオロエチレンに基づく重合単位、(b)フッ素モノマー(ただし、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを除く。)に基づく重合単位、及び(c)イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸及び無水シトラコン酸からなる群から選ばれる1種以上に基づく重合単位を含有」する「含フッ素共重合体」が記載されており(摘記1(4)ア)、ここで、該「(a)テトラフルオロエチレン及び/又はクロロトリフルオロエチレンに基づく重合単位」、「(b)フッ素モノマー(ただし、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを除く。)に基づく重合単位」、「(c)イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸及び無水シトラコン酸からなる群から選ばれる1種以上に基づく重合単位」はそれぞれ、本件訂正発明5の「テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)」、「テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)」、「カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)」に相当する。
そして、甲4には、該「含フッ素共重合体」が耐薬品性、耐熱性、耐候性、耐ストレスクラック性に優れ、かつ他材料との接着性に優れ、該「含フッ素共重合体」の層を基材の表面に形成して物品とすることが記載されている(摘記1(4)ア)。また、甲4の段落【0032】には、該基材を被覆する方法として、静電粉体成形法、回転成形法、溶射成形法、流動浸漬法、ディスパージョン法、溶媒キャスト法等が記載され、同【0043】には、該物品が耐熱性、耐薬品性、耐食性、耐油性、耐候性、耐磨耗性、潤滑性等に優れることも記載されている(摘記1(4)イ)。さらに、同【0014】には、該「含フッ素共重合体」の重合単位(c)のモル比が特定の範囲にあると、含フッ素共重合体は、他材料との接着性に優れる旨記載されている(摘記1(4)ア)ことから、含フッ素共重合体に重合単位(c)を導入することによって、甲4に記載される、他材料との接着性を向上するという課題を解決しているものといえる。
しかしながら、甲4には、該「含フッ素共重合体」に微粒子充填材を配合して溶融成形を行うことによって成形体を得ることは記載されておらず、ましてや、それにより耐摩耗性に優れる成形品が得られることは、以下のとおり、示唆されているとはいえない。つまり、上記のとおり、甲4の含フッ素共重合体は、重合単位(c)を導入することによって、他材料との接着性が向上されたものであることから、甲4には、該「含フッ素共重合体」を基材の表面に被覆して得られた物品が耐磨耗性に優れることは記載されるものの、耐磨耗性が向上するという効果が、含フッ素共重合体として特定の重合単位(c)を導入することによって奏されたものであるとはいえない。してみると、甲4には、該「含フッ素共重合体」に微粒子充填材を配合して溶融成形を行うことによって、耐摩耗性に優れる成形品が得られることが示唆されているとはいえない。
したがって、耐摩耗性に優れる成形品が得られるという効果を奏する甲1発明において、「PFA340」に代えて、本件訂正発明5の特定の含フッ素共重合体(A)を用いることは、何ら動機付けられない。
また、本件訂正発明5が奏する効果について検討するに、上記ア(イ)で述べたとおり、甲1には、表面平滑性について何らの記載も示唆もない。さらに、甲4をみても、表面平滑性に優れる成形品が得られることは、何ら記載も示唆もされていない。
よって、本件訂正発明5の「表面平滑性」「に優れた成形品を製造することができる」という効果は、甲1及び甲4の記載から予測し得るものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明5は、少なくとも上記相違点4の点で実質的に相違するから、上記相違点5について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明5は、上記相違点4に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、上記相違点5について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲1、甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 本件訂正発明6?9、11について
本件訂正発明6?9、11は、本件訂正発明1、4?5を直接又は間接的に引用するものであり、上記ア、ウ、エで述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項、又は、甲1に記載された発明及び甲1、甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

カ 本件訂正発明10について
本件訂正発明10は、本件訂正発明1、4?5を直接又は間接的に引用するものであり、上記ア、ウ、エで述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではない。
また、甲5、甲6に記載された事項を検討したとしても、本件訂正発明10は、上記ア、ウ、エで述べたのと同様の理由により、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、本件訂正発明10は、甲1に記載された発明及び甲1、甲5、甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

キ 本件訂正発明12?14について
本件訂正発明12は、本件訂正発明4に対し、「カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であ」ることをさらに限定したものである。
また、本件訂正発明13は、本件訂正発明4に対し、「無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してな」ることをさらに限定したものである。
さらに、本件訂正発明14は、本件訂正発明4に対し、「カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、」「無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してな」ることをさらに限定したものである。
したがって、本件訂正発明12?14は、上記ウで示したのと同様の理由により、少なくとも上記相違点3の点で実質的に相違するから、他の相違点について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明12?14は、上記ウで示したのと同様の理由により、上記相違点3に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

キ 本件訂正発明15?21について
本件訂正発明15は、本件訂正発明5に対し、「カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であ」ることをさらに限定した(以下、「カルボニル基含有基を限定した」という。)ものである。
本件訂正発明16は、本件訂正発明5に対し、「無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してな」ることをさらに限定した(以下、「反応性官能基の共有結合を限定した」という。)ものである。
本件訂正発明17は、本件訂正発明5に対し、カルボニル基含有基を限定し、反応性官能基の共有結合を限定したものである。
本件訂正発明18は、本件訂正発明5に対し、「無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からな」ることをさらに限定した(以下、「無機フィラー(B)を限定した」という。)ものである。
本件訂正発明19は、本件訂正発明5に対し、カルボニル基含有基を限定し、無機フィラー(B)を限定したものである。
本件訂正発明20は、本件訂正発明5に対し、反応性官能基の共有結合を限定し、無機フィラー(B)を限定したものである。
本件訂正発明21は、本件訂正発明5に対し、カルボニル基含有基を限定し、反応性官能基の共有結合を限定し、無機フィラー(B)を限定したものである。
したがって、本件訂正発明15?21は、上記エで示したのと同様の理由により、少なくとも上記相違点4の点で実質的に相違するから、他の相違点について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明15?21は、上記エで示したのと同様の理由により、上記相違点4に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲1、甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ク 申立人の主張について
(ア)申立人の主張
申立人は、令和2年1月17日提出の意見書において、概略、以下のa?bの点を主張する。

a 甲1には、「サブミクロンα-アルミナ粒子」以外にも、微粒子充填材として、段落【0053】に記載の無機物質が記載されており、それらの無機物質の、例えば窒化ホウ素、Si_(3)N_(4)等の表面において、反応性官能基として、ヒドロキシル基に加えてアミノ基が原子(M)に他の原子を介することなく共有結合していることは、技術常識であるから、甲1発明において、サブミクロンα-アルミナ粒子に代えて、反応性官能基として、アミノ基が原子(M)に他の原子を介することなく共有結合している無機物質を用いることは、当業者が容易になし得ることである。
また、参考資料4、5に記載されるとおり、反応性官能基としてアミノ基を無機物質に導入することによって、無機物質の凝集を防止したり、無機物質の有機材料に対する分散性を向上させたりすることは、周知の技術であるから、充填材として無機物質を用いる場合に、無機物質の凝集を防止したり、無機物質の有機材料に対する分散性を高めたりするために、無機物質の表面を改質して、反応性官能基として、アミノ基を導入することは、当業者が容易になし得ることである。
また、無機フィラー(B)を用いることによる、本件訂正発明1の有利な効果を認めることもできない。
よって、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

b 甲1には、「サブミクロンα-アルミナ粒子」以外にも、微粒子充填材として、段落【0053】に記載の無機物質が記載されているところ、同段落に記載される化合物のうち、ケイ素の酸化物がシリカに相当し、ホウ素の窒化物が窒化ホウ素に相当し、ナノチューブがカーボンナノチューブに相当し、ケイ酸塩がマイカに相当することは明らかであって、これらの無機物質が、表面に結合されたアミノ基又はヒドロキシ基を有していることは、技術常識である。
また、参考資料4、5、11に記載されるとおり、無機物質に反応性官能基を導入することによって、無機物質の凝集を防止したり、無機物質の有機材料に対する分散性を向上させたりすることは、周知の技術であり、さらには、シランカップリング剤を用いて、無機物質に反応性官能基を導入することによって、無機物質の凝集を防止したり、無機物質の有機材料に対する分散性を向上させたりすることも、例えば甲5、参考資料12?15に記載されるとおり、周知の技術である。
したがって、甲1発明において、サブミクロンα-アルミナ粒子に代えて、アミノ基又はヒドロキシ基が表面に結合されたシリカ、窒化ホウ素、ナノダイヤモンドまたはマイカを用いることは、当業者が容易になし得ることである。
また、無機フィラー(B)を用いることによる、本件訂正発明4の有利な効果を認めることもできない。
よって、本件訂正発明4は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(イ)申立人の主張に対する検討
申立人の上記主張a及びbについて以下に検討する。

a 主張aについて
甲1には、微粒子充填材として、例えば窒化ホウ素、窒化ケイ素等の、アミノ基が原子(M)に他の原子を介することなく共有結合している無機物質が記載されるものの、列挙されている多数の微粒子充填材の中から窒化ホウ素や窒化ケイ素を選択することが、当業者が容易になし得るものではないことは、上記ア(イ)で述べたとおりである。
また、甲1には、微粒子充填材の表面に反応性官能基を導入することは記載されておらず、ましてや、ポリマーへの分散性を向上させるために微粒子充填材の表面に反応性官能基を導入することは、記載も示唆もされていない。してみると、反応性官能基としてアミノ基を無機物質に導入することによって、無機物質の凝集を防止したり、無機物質の有機材料に対する分散性を向上させたりすることが当業者に周知の技術事項であったとしても、甲1発明において、ポリマーへの分散性を向上させるために、微粒子充填材の表面にアミノ基等の反応性官能基を導入することが動機付けられるとはいえない。
さらに、本件訂正発明1が奏する効果が、甲1の記載から予測できないことも、上記ア(イ)で述べたとおりである。
したがって、申立人の上記主張aは採用しない。

b 主張bについて
甲1には、微粒子充填材として、シリカ、窒化ホウ素、カーボンナノチューブ、ケイ酸塩等の、表面に結合されたアミノ基又はヒドロキシ基を有している無機物質が記載されるものの、列挙されている多数の微粒子充填材の中からこれらの無機物質を選択することが、当業者が容易になし得るものではないことは、上記ウ(イ)で述べたとおりである。
また、上記aで述べたのと同様の理由により、甲1発明において、ポリマーへの分散性を向上させるために、微粒子充填材の表面にアミノ基等の反応性官能基を導入することが動機付けられるともいえない。
さらに、本件訂正発明4が奏する効果が、甲1の記載から予測できないことも、上記ウ(イ)で述べたとおりである。
したがって、申立人の上記主張bは採用しない。

ケ まとめ
以上のとおり、取消理由1、取消理由2-1、申立理由1-1及び申立理由2-1は、理由がない。

(2)取消理由2-2について
取消理由2-2は、本件訂正前の請求項1?3、7?11に係るものであるところ、上記第2で示したとおり、本件訂正発明12?21は、本件訂正前の請求項4又は5に対応するから、本件訂正発明1?2、7?11について、以下に検討する。

ア 本件訂正発明1について

(ア)対比
本件訂正発明1と甲5発明とを対比する。
甲5発明の「絶縁層」は、甲5の段落【0038】?【0041】の記載(摘記1(5)エ)より、溶融混練して形成されるものであるから、甲5発明の「フッ素樹脂」は、本件訂正発明1の「溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)」に相当する。また、甲5発明の「酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群より選択される1種以上の金属酸化物の粉末」は、本件訂正発明1の「Si原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んで」いる「無機フィラー(B)」に相当する。
そして、甲5発明の「絶縁層」は、フッ素樹脂を含有する組成物であるから、本件訂正発明1の「含フッ素樹脂組成物」に相当する。

そうすると、本件訂正発明1と甲5発明とは、
「溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでいる、含フッ素樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点6>
含フッ素共重合体に関し、本件訂正発明1は、「カルボニル基含有基を有する」のに対し、甲5発明は、「カルボニル基含有基を有する」ことが明らかでない点。

<相違点7>
「無機フィラー」に関し、本件訂正発明1は、「一次粒子径が500nm以下」であるのに対し、甲5発明は、「平均粒径が50μm以下である」点。

<相違点8>
「無機フィラー」に関し、本件訂正発明1は、「化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、および、オキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し」、「前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなる」のに対し、甲5発明は、これらの反応性官能基に関する特定がない点。

<相違点9>
無機フィラーの含有量に関し、本件訂正発明1は、「含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である」のに対し、甲5発明は、「フッ素樹脂100質量部に対し、」「0.1?110質量部の範囲内で」ある点。

(イ)相違点についての判断
まず、上記相違点8について検討する。
甲5発明の「酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群より選択される1種以上の金属酸化物」は、「無機フィラー(B)の表面において」「前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなる」「化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、および、オキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基」を有さないことは、明らかである。
よって、上記相違点8は、実質的な相違点である。

次に、上記相違点8に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるか否かについて検討する。
甲5には、フィラーとして「酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群より選択される1種以上の金属酸化物」が記載され、段落【0032】には、フィラーをシランカップリング剤により表面処理することが好ましい旨記載され、同【0033】には、該シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903)等が記載されている(摘記1(5)ア、ウ)。そして、これらのシランカップリング剤で表面処理することにより、フィラーの表面には、エポキシ基やアミノ基が表面に結合される。
しかしながら、シランカップリング剤により表面に結合された上記エポキシ基やアミノ基は、フィラー中の金属原子に他の原子を介して共有結合したものである。
してみると、甲5には、フィラーとして、「化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、および、オキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基」を、金属原子に「他の原子を介することなく共有結合してなる」ものは記載も示唆もされていない。
したがって、甲5発明において、フィラーとして「化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、および、オキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し」、「前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなる」ものを用いることは、何ら動機付けられない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、上記相違点8に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、上記相違点6、7、9について検討するまでもなく、甲5に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用するものであり、上記アで述べたのと同様の理由により、甲5に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件訂正発明7?11について
本件訂正発明7?11は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記アで述べたのと同様の理由により、甲5に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ まとめ
以上のとおり、取消理由2-2は、理由がない。

(3)取消理由通知で採用しなかった申立理由について

ア 申立理由1-2及び申立理由2-2について
申立理由1-2及び申立理由2-2は、甲7に基づく新規性及び進歩性に関するものであるから、以下にまとめて検討する。
そして、申立理由1-2及び申立理由2-2は、本件訂正前の請求項1?2、5?7、9?11に係るものであるところ、上記第2で示したとおり、本件訂正発明12?14は、本件訂正前の請求項4に対応し、本件訂正発明15?21は、本件訂正前の請求項5に対応するから、本件訂正発明1?2、5?7、9?11、15?21について、以下に検討する。

(ア)本件訂正発明1について

a 対比
本件訂正発明1と甲7発明とを対比する。
甲7発明の「樹脂組成物」は、摘記1(6)イ、ウに記載されるとおり、溶融混練されるものであるから、甲7発明の「パーフルオロアルコキシ樹脂〔PFA〕」は、本件訂正発明1の「溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)」に相当する。また、甲7発明の「チタン酸カリウム繊維〔テイスモ〕」は、本件訂正発明1の「Si原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んで」いる「無機フィラー(B)」に相当する。
そして、甲7発明は、「PFA」を75重量%と「テイスモ」を15重量%含有するから、「PFA」100質量部に対して、「テイスモ」を20(=15/75×100)質量部含有するものといえるから、本件訂正発明1の「無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である」と重複一致する。
さらに、甲7発明の「パーフルオロアルコキシ樹脂組成物」は、本件訂正発明1の「含フッ素樹脂組成物」に相当する。

そうすると、本件訂正発明1と甲7発明とは、
「溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでいる、含フッ素樹脂組成物」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点10>
含フッ素共重合体に関し、本件訂正発明1は、「カルボニル基含有基を有する」のに対し、甲7発明は、「カルボニル基含有基を有する」ことが明らかでない点。

<相違点11>
「無機フィラー」に関し、本件訂正発明1は、「一次粒子径が500nm以下」であるのに対し、甲7発明は、「平均径0.35μm」である点。

<相違点12>
「無機フィラー」に関し、本件訂正発明1は、「化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、および、オキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し」、「前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなる」のに対し、甲7発明は、これらの反応性官能基に関する特定がない点。

b 相違点についての判断
まず、上記相違点11について検討する。
繊維は、太さと長さを有するものであるところ、繊維における「平均径」とは通常、繊維の「太さ」を示すものである。そして、繊維における「一次粒子径」が何を指すのか、必ずしも明らかではないが、平均径(太さ)と繊維長(長さ)の平均値を指すものとして、以下検討する。
そうすると、甲7発明の「チタン酸カリウム繊維〔テイスモ〕」は、平均径が0.35μm、すなわち350nmであって、その太さが350nmであると認識できるものの、その長さは明らかでないから、「一次粒子径」は明らかでない。
したがって、上記相違点11は、実質的な相違点である。

次に、上記相違点11に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるかについて検討する。
甲7の摘記1(6)イには、耐熱性繊維について、「繊維の形態としては、押出しおよび射出などの熔融成形の容易さの面から、10mm以下の好ましくは5mm以下の繊維長の粉末であることが望ましい」と記載されており、実施例においては、具体的に、平均径が3μm、13μm、0.35μmの耐熱性繊維粉末が記載されていることから、甲7には、耐熱性繊維として、平均径(太さ)が0.35?13μm程度、繊維長(長さ)が10mm以下の繊維粉末が記載されているものといえる。
そうすると、甲7に記載されている上記繊維粉末の「一次粒子径」が500nm以下でないことは明らかであり、また、これらの記載から「一次粒子径」を500nm以下とすることは、何ら動機付けられない。
したがって、甲7発明において、チタン酸カリウム繊維の「一次粒子径」を500nm以下とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。

c 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、少なくとも上記相違点11の点で実質的に相違するから、上記相違点10、12について検討するまでもなく、甲7に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明1は、上記相違点11に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、上記相違点10、12について検討するまでもなく、甲7に記載された発明及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用するものであり、上記(ア)で述べたのと同様の理由により、甲7に記載された発明ではなく、また、甲7に記載された発明及び甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)本件訂正発明5について
本件訂正発明5と甲7発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点11の点で相違する。
そして、上記(ア)で述べたのと同様の理由により、上記相違点11は、実質的な相違点である。

そこで、上記相違点11に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるかについて検討する。
まず、甲7に記載された事項を検討すると、上記(ア)で述べたのと同様の理由により、繊維粉末の「一次粒子径」を500nm以下とすることは、何ら動機付けられない。
次に、甲4に記載された事項を検討するに、甲4には、フッ素樹脂に対して繊維粉末を配合することが何ら記載されていないから、その「一次粒子径」についても何らの記載も示唆もない。
したがって、甲7発明において、チタン酸カリウム繊維の「一次粒子径」を500nm以下とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。
よって、本件訂正発明5は、上記相違点11に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲7に記載された発明及び甲7、甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)本件訂正発明6について
本件訂正発明6は、本件訂正発明1、5を直接又は間接的に引用するものであり、上記(ア)、(ウ)で述べたのと同様の理由により、甲7に記載された発明及び甲7、甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(カ)本件訂正発明7、9、11について
本件訂正発明7、9、11は、本件訂正発明1、5を直接又は間接的に引用するものであり、上記(ア)、(ウ)で述べたのと同様の理由により、甲7に記載された発明ではなく、また、甲7に記載された発明及び甲7、甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(キ)本件訂正発明10は、本件訂正発明1、5を直接又は間接的に引用するものであり、上記(ア)、(ウ)で述べたのと同様の理由により、甲7に記載された発明と相違する。
そして、甲5、甲10に記載された事項を検討したとしても、本件訂正発明10は、上記(ア)、(ウ)で述べたのと同様の理由により、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、本件訂正発明10は、甲7に記載された発明及び甲7、甲5、甲10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ク)本件訂正発明15?21について
上記(1)キで述べたとおり、本件訂正発明15?21は、本件訂正発明5をさらに限定したものである。
したがって、本件訂正発明15?21は、上記(ウ)で示したのと同様の理由により、上記相違点11に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲7に記載された発明及び甲7、甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ケ)まとめ
以上のとおり、申立理由1-2及び申立理由2-2は、理由がない。

イ 申立理由3について

(ア)特許法第36条第6項第1号について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(平成17年(行ケ)第10042号、「偏光フィルムの製造法」事件)。そこで、この点について、以下に検討する。

(イ)本件訂正発明の課題について
本件訂正発明が解決しようとする課題は、本件明細書の段落【0006】等の記載から、「表面平滑性と耐摩耗性に優れた成形品を製造することができる、含フッ素樹脂組成物を提供すること」であると解される。

(ウ)本件訂正発明1?2、4?8、12?21について
本件明細書の段落【0066】には、上記(ア)の「表面平滑性と耐摩耗性」について、「これらの特性は、含フッ素樹脂組成物中の含フッ素共重合体(A)がカルボニル基含有基を有し、無機フィラー(B)に反応性官能基が結合されていることによるものと推定される。具体的には、含フッ素樹脂組成物の製造において溶融混練する際に、含フッ素共重合体(A)が有するカルボニル基含有基と、無機フィラー(B)に結合された反応性官能基とが結合を形成することにより、無機フィラー(B)が含フッ素樹脂組成物中で凝集しにくく分散しやすくなる。そのため、含フッ素樹脂組成物から得られた成形品が表面平滑性と耐摩耗性に優れたものになる」と記載されている。これらの記載から、「含フッ素共重合体(A)がカルボニル基含有基を有」すること、及び「無機フィラー(B)に反応性官能基が結合されていること」により、上記(ア)の課題が解決できるものと解される。
そして、本件明細書の段落【0067】?【0081】、【0086】及び【表1】の実施例1?5には、カルボニル基含有基を有する含フッ素共重合体(A)と、無機フィラー(B)として、「表面がアミノ基により化学修飾されたナノダイヤモンド」又は「表面が-NH_(2)、-OH、-COOHの官能基によって化学修飾されたナノダイヤモンド」とを用いることによって、表面平滑性と耐摩耗性に優れた成形品である電線が得られたことが、具体的なデータとともに示されている。
してみると、当業者であれば、本件訂正発明1?2、4?8、12?21に係る「含フッ素樹脂組成物」において、含フッ素共重合体(A)を「カルボニル基含有基を有」するものとし、無機フィラー(B)を「反応性官能基が結合されている」ものとすることによって、表面平滑性及び耐摩耗性に優れる成形品を製造することができる、含フッ素樹脂組成物を得られることが、本件明細書の記載から理解できるものといえる。
以上のとおり、本件訂正発明1?2、4?8、12?21は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件訂正発明1?2、4?8、12?21は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。

(エ)本件訂正発明9?11について
本件訂正発明9?11は、本件訂正発明1、4?5を直接又は間接的に引用するものであり、上記(イ)で示したのと同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。

(オ)申立人の主張について
申立人は、令和2年1月18日提出の意見書において、本件明細書には、反応性官能基としてアミノ基を有するナノダイヤモンド以外の無機フィラー(B)(たとえば、ヒドロキシ基が結合したナノダイヤモンド、アミノ基が結合した窒化ホウ素など)を用いた場合にも、上記の課題が解決できることが記載されていないところ、無機フィラーは一般的にフルオロポリマーなどの有機材料に対する分散性が劣ること、及び、分散性に無機フィラーの表面特性が大きく影響することは技術常識であり、また、無機フィラーの種類によって、フルオロポリマーに添加した場合の耐摩耗性に与える影響が異なることも技術常識であるから、本件訂正発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない旨主張する。
申立人の上記主張について、検討する。
本件明細書には、アミノ基等の反応性官能基を有する「ナノダイヤモンド」以外の、他の反応性官能基を有する他の化合物の具体的なデータは示されていない。しかしながら、上記の段落【0066】に記載されるとおり、含フッ素共重合体(A)中のカルボニル基含有基と、無機フィラー(B)中の反応性官能基が結合されることにより、上記(ア)の課題が解決できるものといえるところ、含フッ素樹脂組成物の製造において溶融混練すれば、該組成物中のカルボニル基含有機と反応性官能基が結合されることは、当業者に明らかな技術事項であり、また、無機フィラー(B)が他の化合物である場合にそのような結合が生じないという技術常識も見当たらない。
また、申立人も、無機フィラー(B)として、アミノ基を有するナノダイヤモンド以外の無機フィラー(B)を用いることによって、上記(ア)の課題を解決できないことについて、技術的根拠を具体的に示していない。
してみると、無機フィラー(B)が、アミノ基等の反応性官能基を有する「ナノダイヤモンド」以外の他の化合物であったとしても、反応性官能基を有してさえいれば、含フッ素共重合体(A)を「カルボニル基含有基を有」するものすることにより、該組成物中のカルボニル基含有基と反応性官能基が結合され、上記(ア)の課題が解決できるものといえる。
よって、申立人の上記主張は、採用しない。

(オ)まとめ
以上のとおりであるから、申立理由3は、理由がない。

ウ 申立理由4について

(ア)申立人の主張について
申立人は、申立書において、以下のとおり主張する。
仮に、甲1発明の「サブミクロンα-アルミナ粒子」の表面の水酸基が、アルミニウム原子に他の原子を介することなく共有結合していないとするのであれば、本件訂正前の請求項3に記載される「反応性官能基が前記原子(B)に他の原子を介することなく共有結合している」ことが、具体的にどのような状態であるかについて、当業者が把握できるように記載されておらず、その確認方法も記載されていないから、本件訂正前の請求項3の記載では、同項に記載された事項で特定される発明が明確でない。
この点について検討するに、上記(1)ウ(イ)で述べたとおり、技術常識を参酌すれば、甲1発明の「サブミクロンα-アルミナ粒子」の表面の水酸基は、アルミニウム原子に他の原子を介することなく共有結合していると解される。
したがって、本件訂正後の請求項1、13、16、20?21の「反応性官能基が前記原子(B)に他の原子を介することなく共有結合している」との記載が明確であることは明らかであり、同項に記載された事項で特定される発明が明確でないということはできない。
よって、申立人の上記主張は、採用しない。

(イ)まとめ
以上のとおりであるから、申立理由4は、理由がない。


第6 むすび

以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件訂正発明1?2、4?21に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件訂正発明1?2、4?21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件の請求項3に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項3に係る特許に対する申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、および、オキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなる、含フッ素樹脂組成物。
【請求項2】
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる、含フッ素樹脂組成物。
【請求項5】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
【請求項6】
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンに基づく構成単位(a21)と、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する環状炭化水素モノマーに基づく構成単位(a22)と、フッ素モノマー(ただし、テトラフルオロエチレンを除く。)に基づく構成単位(a23)とを有し、
前記構成単位(a21)と、前記構成単位(a22)と、前記構成単位(a23)の合計モル量に対して、構成単位(a21)が50?99.89モル%であり、構成単位(a22)が0.01?5モル%であり、構成単位(a23)が0.1?49.99モル%である、請求項1?2、および、4?5のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物。
【請求項7】
前記含フッ素共重合体(A)が有する前記カルボニル基含有基の少なくとも一部と、前記無機フィラー(B)の表面に結合された前記反応性官能基の少なくとも一部とが結合を形成している、請求項1?2、および、4?6のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物。
【請求項8】
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.01質量部以上1質量部以下である、請求項1?2、および、4?7のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1?2、および、4?8のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物を含む成形品。
【請求項10】
芯線と、前記芯線を被覆する絶縁層とを有する電線であって、前記絶縁層が請求項1?2、および、4?8のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物を含有することを特徴とする、電線。
【請求項11】
前記含フッ素共重合体(A)と前記無機フィラー(B)とを、前記含フッ素共重合体(A)の融点以上420℃未満で溶融混練する工程を有する、請求項1?2、および、4?8のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる、含フッ素樹脂組成物。
【請求項13】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる、含フッ素樹脂組成物。
【請求項14】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなる、含フッ素樹脂組成物。
【請求項15】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
【請求項16】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
【請求項17】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
【請求項18】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
【請求項19】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
【請求項20】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
【請求項21】
カルボニル基含有基を有する溶融成形加工可能な含フッ素共重合体(A)と、一次粒子径が500nm以下の無機フィラー(B)とを含み、
前記無機フィラー(B)が、化学修飾により表面に結合されたアミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、
前記無機フィラー(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上30質量部未満である、含フッ素樹脂組成物であって、
前記カルボニル基含有基が、カルボキシ基、酸無水物残基、カーボネート基、カルボニルジオキシ基およびハロホルミル基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機フィラー(B)がSi原子、C原子、B原子および金属原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子(M)を含んでおり、前記無機フィラー(B)の表面において前記反応性官能基が前記原子(M)に他の原子を介することなく共有結合してなり、
前記無機フィラー(B)は、前記反応性官能基が化学修飾により表面に結合されたナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フェロセン、酸化銅、アルミナ、シリカ、マイカおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種からなり、
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンに基づく構成単位(a11)と、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく構成単位(a12)と、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびカルボニル基含有基を有するモノマー以外のモノマーに基づく構成単位(a13)とを有する、含フッ素樹脂組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-06 
出願番号 特願2015-172083(P2015-172083)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長岡 真  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 橋本 栄和
武貞 亜弓
登録日 2018-12-28 
登録番号 特許第6455367号(P6455367)
権利者 AGC株式会社
発明の名称 含フッ素樹脂組成物、成形品、電線および含フッ素樹脂組成物の製造方法  
代理人 竹本 洋一  
代理人 竹本 洋一  
代理人 蜂谷 浩久  
代理人 とこしえ特許業務法人  
代理人 蜂谷 浩久  
代理人 伊東 秀明  
代理人 伊東 秀明  

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