• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
管理番号 1362335
異議申立番号 異議2019-700644  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-13 
確定日 2020-03-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6468355号発明「樹脂組成物及びそれを用いた立体造形物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6468355号の特許請求の範囲を、令和1年12月18日提出の訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?9〕について訂正することを認める。 特許第6468355号の請求項1?9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6468355号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成29年3月23日を国際出願日とする出願(特願2017-522215号)に係るものであって、平成31年1月25日にその特許権の設定登録がされ、平成31年2月13日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和1年8月13日に、本件特許の請求項1?9に係る特許に対して、特許異議申立人である岡林 茂(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

1 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
令和1年 8月13日 特許異議申立書
同年10月21日付け 取消理由通知書
同年12月18日 特許権者による意見書の提出及び訂正
の請求
同年12月24日付け 訂正請求があった旨の通知
(なお、令和1年12月24日付け通知書に対して、申立人からの意見書の提出はなかった。)

2 申立人の証拠方法は、以下のとおりである。

甲第1号証:特開2016-65183号公報(以下、「甲1」という。)
甲第2号証:特開2014-91752号公報(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:河合道弘、「高温重合によるマクロモノマーとその反応性」、日本、東亞合成株式会社、2002年1月1日発行、東亞合成研究年報 TREND 2002年 第5号、p.2?10(以下、「甲3」という。)


第2 訂正の請求について

1 訂正の内容

令和1年12月18日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。
また、本件訂正前の請求項2?9は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項1?9は、一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項〔1?9〕に対して請求されたものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「前記マクロモノマー(A)が下記式(1)で示す構造である、樹脂組成物。」とあるのを、「前記マクロモノマー(A)が下記式(1)で示す構造であり、光学的立体造形法に用いる、樹脂組成物。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6に、「前記式(1)において、複数のR及び複数のXがすべてメチル基である請求項1?5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」とあるのを、「マクロモノマー(A)と、前記マクロモノマー(A)を除くラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)と、ラジカル重合開始剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、
前記ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりの前記マクロモノマー(A)の量をx質量部、前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量をyとした場合のxとyとの積が、10000以上13万以下であり、
前記ラジカル重合開始剤(C)が光重合開始剤であり、
前記マクロモノマー(A)が下記式(1)で示す構造である、樹脂組成物。

【化1】

式(1)において、複数のR及び複数のXがすべてメチル基であり、Zは末端基であり、nは2?10000である。」に訂正する。

2 訂正の適否についての当審の判断

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「樹脂組成物」について、「光学的立体造形法に用いる」という限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲(以下、「本件明細書等」という。)の段落【0086】に記載されているから、この訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1?5のいずれか一項を引用する訂正前の請求項6において、請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、訂正前の請求項1の記載を書き下して独立形式請求項へ改めたものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 まとめ

以上のとおり、訂正事項1?2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。

また、特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?9〕について訂正することを認める。


第3 本件発明

上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の訂正後の請求項1?9に係る発明(以下、順に「本件訂正発明1」のようにいい、総称して「本件訂正発明」という。)は、それぞれ、令和1年12月18日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
マクロモノマー(A)と、前記マクロモノマー(A)を除くラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)と、ラジカル重合開始剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、
前記ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりの前記マクロモノマー(A)の量をx質量部、前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量をyとした場合のxとyとの積が、10000以上13万以下であり、
前記ラジカル重合開始剤(C)が光重合開始剤であり、
前記マクロモノマー(A)が下記式(1)で示す構造であり、光学的立体造形法に用いる、樹脂組成物。
【化1】

式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環式基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Xは水素原子又はメチル基であり、複数のXはそれぞれ同じでも異なってもよく、Zは末端基であり、nは2?10000である。
【請求項2】
前記マクロモノマー(A)の量が、前記ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりの1質量部以上30質量部以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量が2,000以上40,000以下である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記マクロモノマー(A)が(メタ)アクリレート単位を繰り返し単位として有する請求項1?3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレート単位がメチルメタクリレート単位である請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
マクロモノマー(A)と、前記マクロモノマー(A)を除くラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)と、ラジカル重合開始剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、
前記ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりの前記マクロモノマー(A)の量をx質量部、前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量をyとした場合のxとyとの積が、10000以上13万以下であり、
前記ラジカル重合開始剤(C)が光重合開始剤であり、
前記マクロモノマー(A)が下記式(1)で示す構造である、樹脂組成物。
【化1】

式(1)において、複数のR及び複数のXがすべてメチル基であり、Zは末端基であり、nは2?10000である。
【請求項7】
さらに、単官能(メタ)アクリレートを含む請求項1?6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1?7のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる立体造形物。
【請求項9】
マクロモノマー(A)由来の微視的領域と化合物(B)由来の微視的領域とが相分離している請求項8に記載の立体造形物。」


第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要

1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由
申立人が特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において申立てた特許異議の申立ての理由は、概略、本件訂正前の請求項1?9に係る発明についての本件特許は、次の申立理由1?4により、取り消されるべきものであるというものである。

(1)申立理由1(新規性)
ア 申立理由1-1(甲1に基づく新規性)
本件訂正前の請求項1?4、7?9に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 申立理由1-2(甲2に基づく新規性)
本件訂正前の請求項1?2、4、8?9に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立理由2(進歩性)
ア 申立理由2-1(甲1に基づく進歩性)
本件訂正前の請求項1?9に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 申立理由2-2(甲2に基づく進歩性)
本件訂正前の請求項1?9に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)申立理由3(サポート要件)
本件訂正前の請求項1?9の記載は、いずれも記載不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項に規定する要件を満たしておらず、それらの請求項に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(4)申立理由4(委任省令要件)
本件特許明細書の発明の詳細な説明では、記載不備であり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件訂正前の請求項1?9に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

2 取消理由通知書に記載した取消理由
当審が通知した令和1年10月21日付け取消理由通知の要旨は、以下のとおりである。

(1)取消理由1(新規性)
ア 取消理由1-1(甲1に基づく新規性)
本件訂正前の請求項1?4、7?8に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

イ 取消理由1-2(甲2に基づく新規性)
本件訂正前の請求項1?2、4、8に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)取消理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項7?8に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。


第5 当審の判断

1 各甲号証の記載事項及び各甲号証に記載された発明

(1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
甲1には、以下の事項が記載されている。


「【請求項1】
(メタ)アクリル系モノマーから1工程で製造され、当該工程において当該モノマーの重合とラジカル重合性二重結合変性が生じることにより得られる、ラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A):10?90質量部、
ラジカル重合性二重結合を有するビニル化合物(B):10?90質量部、
及び光重合開始剤(C):0.01?10質量部、
を含有することを特徴とする接着剤組成物。」


「【0020】
ラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)は、(メタ)アクリル系モノマーを1工程で反応させることにより、当該工程においてモノマーの重合とラジカル重合性二重結合変性が生じることによって得られる。(メタ)アクリル系モノマーの種類は特に限定されない。
上記の1工程の反応条件は、高温もしくは高温高圧下とすることが望ましい。反応は一般的には溶媒中、重合開始剤及び連鎖移動剤を用いて行われるが、反応温度を200℃以上、望ましくは230?290℃とし、ジブチルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤を用いてラジカル重合反応させることにより、その天井温度において分子が切断し、末端にラジカル重合性二重結合が生成する。重合開始剤及び連鎖移動剤の使用量を、重合するモノマー全量に対して1質量%以下とし、ほとんど使用せずに高温もしくは高温高圧下で反応させることがより望ましい。
【0021】
ラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂の製造方法としては、例えば(メタ)アクリル系モノマーとして炭素数1?18のアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる化合物の1種もしくは2種以上の混合物、またはこれらとスチレン系モノマーの混合物を用い、それらを1工程で反応させる方法がある。これにより末端に不飽和結合を有する無官能基型のラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂が得られる。
別の製造方法としては、例えば(メタ)アクリル系モノマーとして、炭素数1?18のアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる化合物の1種もしくは2種以上の混合物、またはこれらとスチレン系モノマーの混合物と、グリシジル基、水酸基、シリル基から選ばれる官能基を有する(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アクリル酸を用い、それらを1工程で反応させる方法がある。これにより末端に不飽和結合を有する水酸基含有型、カルボキシル基含有型、エポキシ基含有型、アルコキシシリル基含有型のラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂が得られる。
上記の炭素数1?18のアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
この場合、ラジカル重合性基としては、CH2=C(COOR)-で示される不飽和基が挙げられる。ここで、Rは炭素数1?12のアルキル基である。二重結合数は、高分子鎖1個に対して約1個である。ラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、3,000?20,000の範囲が好ましく、室温において液状となるものが好ましいが、室温において液状とならないもの(例えば、フレーク状)は、ラジカル重合性二重結合を有するビニル化合物(B)に溶解させて使用することで、硬化遅延性を発現させることができる。
【0022】
本発明のラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)は、東亞合成(株)からARUFONの商品名で市販されている。ラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)の具体例としては、無官能基型であるARUFONUP1000、UP1010、UP1020、UP1061、UP1080、UP1110、UP1150、UP1170、UP1190、UP1500;水酸基含有型であるARUFONUH2000、UH2041、UH2170、UH2190;カルボキシル基含有型であるARUFON UC3000、UC3080、UC3900、UC3920、UC3510、UF5080、UF5022;エポキシ基含有型であるUG4010、UG4035、UG4040、UG4070;アルコキシシリル基含有型であるUS6100、US6170などを例として挙げることができる。これらの(メタ)アクリル樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記のラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂の中でも、遅延硬化性が高いという観点からは、無官能基型及び水酸基含有型(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。」


「【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。また、文中の「部」、「%」は質量基準であるものとする。
【0064】
[遮光部を有する部材の紫外線硬化]
遮光部を有する部材の作成:遮光部を有するカバーガラスは以下の条件で作成した。
部材は10cm×10cm、厚さ1mmのガラス板を使用した。オリジツーク#100クロ(オリジン電気(株)製アクリルシリコン塗料)/硬化剤ポリハードGを混合比4/1で混合し、ガラス板の縁に沿って2cmの幅で、膜厚20μmになるように塗装し、遮光部を作製した。このときの、遮光部分の光線透過率は400?800nmの範囲で0%であった。
【0065】
(実施例1?7、比較例1?10)
表1、表2に示した各成分と量を配合し、接着剤組成物を調製した。部材は10cm×10cm、厚さ1mmのガラス板を使用した。
【0066】
[貼り合わせ工程]:調製した接着剤組成物を、遮光部を有するカバーガラスに滴下し、UV照射(Fusion製Dバルブ、積算光量:2,000mJ/cm^(2)、最大照度:600mW/cm^(2))をした後、もう一方の透明部材と貼り合わせを行い、接着剤を介して2枚の部材を貼り合わせた試験片を得た(工程1)。
【0067】
(実施例8)
実施例7の配合で同様の貼り合わせ工程(工程1)を行った後、さらに60℃30分の熱硬化を行った。
【0068】
評価結果を表1、表2に示す。表1、表2より、所定量のラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)を配合することにより、貼り合わせ後の塗布液の濡れ拡がりを長時間維持可能で、硬化膜の透明性が高く、かつ、伸び率、貯蔵弾性率及び硬化収縮率が所望の性能を有しており、耐湿性、耐沸騰水性に優れる接着剤組成物が得られた。また、硬化が遅い接着剤組成物の場合には、UV照射後に熱硬化させることにより(実施例8)、所望の遮光部硬化性を得ることができた。
・・・
【0071】
【表2】


【0072】
[表1、表2の成分詳細]
UH2000 :ARUFON UH-2000(高温連続塊状重合品で水酸基含有型、無溶剤、Mw:11,000、ガラス転移点:-55℃、水酸基価:20)(東亞合成(株)製)
UP1080 :ARUFON UP-1080(高温連続塊状重合品で無官能基型、無溶剤、Mw:6,000、ガラス転移点:-61℃(東亞合成(株)製)
RA3057 :オレスターRA3057、無溶剤型アクリル樹脂アクリレート(三井化学(株)製)
AB6 :マクロモノマーAB6、末端メタクリロイル基アクリルポリマー(東亞合成(株)製)
IBXA :イソボルニルアクリレート(ライトアクリレートIB-XA、共栄社化学(株)製)
UN6200 :アートレジンUN-6200(ポリエーテル系2官能ウレタンアクリレート、根上工業(株)製)
UMM1001 :アクトフローUMM1001(無溶剤アクリル樹脂、水酸基価:94)
UT1001 :アクトフローUT1001(無溶剤アクリル樹脂、水酸基価:58)
5018 :ニッポラン5018(ポリエステルポリオール、水酸基価:52?60、日本ポリウレタン工業(株)製)
PEG600 :ポリエチレングリコール600(ポリエーテルジオール、水酸基価:570?630、純正化学(株)製)
T5650J :デュラノールT5650J(ポリカーボネートジオール、水酸基価:51?61、旭化成(株)製)
184 :イルガキュア184(光開始剤、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製)」


摘記ウより、甲1には、比較例7として、以下の発明が記載されていると認められる。
「ラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)として、UH2000(ARUFON UH-2000(高温連続塊状重合品で水酸基含有型、無溶剤、Mw:11,000))を5質量部、ラジカル重合性二重結合を有するビニル化合物(B)として、IBXA(イソボルニルアクリレート(ライトアクリレートIB-XA、共栄社化学(株)製))42質量部及びUN6200(アートレジンUN-6200(ポリエーテル系2官能ウレタンアクリレート、根上工業(株)製))50質量部、光重合開始剤(C)として184(イルガキュア184(光開始剤、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製))を3質量部配合した接着剤組成物。」(以下、「甲1発明a」という。)

「甲1発明aの接着剤組成物を、遮光部を有するカバーガラスに滴下し、UV照射をして得られた硬化膜。」(以下、「甲1発明b」という。)


(2)甲2に記載された事項
甲2には、以下の事項が記載されている。


「【請求項1】
チオール系連鎖移動剤を使用せずに(メタ)アクリレートを含む単量体を重合して得られる重量平均分子量が500?5,000のアクリル系重合体(A)からなる光学フィルム又はシート形成用可塑剤。
・・・
【請求項3】
前記単量体が、(メタ)アクリレートとして少なくとも1種の炭素数1?18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a)(以下、「単量体(a)」という)を含む請求項1又は請求項2記載の光学フィルム又はシート形成用可塑剤。
【請求項4】
前記単量体(a)がメチルアクリレートを必須成分として含む請求項3記載の光学フィルム又はシート形成用可塑剤。
【請求項5】
前記(A)成分が、(メタ)アクリレートを含む単量体を180?350℃の温度で高温連続重合して得られる重合体である請求項1?請求項4のいずれか1項に記載の光学フィルム又はシート形成用可塑剤。
・・・
【請求項9】
請求項1?請求項5のいずれか1項に記載の可塑剤及びウレタン(メタ)アクリレート(C)を含む光学フィルム又はシート形成用活性エネルギー線硬化型組成物。
・・・
【請求項15】
請求項9?請求項13のいずれか1項に記載の組成物の硬化物が、フィルム状又はシート状に形成されてなる光学フィルム又はシート。」


「【0023】
1-2.単量体
(A)成分の原料化合物である単量体は、(メタ)アクリレートを含む。
(メタ)アクリレートとしては、少なくとも1種の炭素数1?18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、「単量体(a)」という)を含むものが、得られる重合体が可塑化効果が高いため好ましい。
単量体(a)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート及びn-ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、可塑化効果と光弾性係数低減効果のバランスに優れるという点で、メチルアクリレートが好ましい。
・・・
【0025】
1-3.(A)成分の製造方法
(A)成分の製造方法としては、チオール系連鎖移動剤を使用せずに単量体を重合し、得られる重合体のMwが500?5,000となる方法であれば、種々の重合方法が採用することができる。
(A)成分としては、チオール系連鎖移動剤を使用しなくとも前記したMwの重合体が得られるという理由で、上記単量体を180?350℃の温度で高温連続重合させて得られるものが好ましい。
・・・
【0034】
高温連続重合では、その末端に二重結合を有するアクリル系重合体を含む(A)成分が製造される。末端に二重結合を有するアクリル系重合体は、特に優れた相溶性を有し、又、表面のべとつきにくいフィルムを製造するのに効果的な可塑剤である。
この理由は、末端二重結合が、フィルム中において、熱可塑性樹脂組成物の場合には熱可塑性樹脂と何らかの反応をするためと推測され、AE硬化型組成物の場合にはウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基と反応をするためと推測される。
(A)成分中の全アクリル系重合体中における、末端に二重結合を有するアクリル系重合体の割合は、20重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましい。この割合は、GPCにより求められる数平均分子量及び核磁気共鳴スペクトルにより求められる二重結合の濃度から算出される。重合体1分子当たりの末端二重結合の平均個数は、末端二重結合の総数を重合体の分子数で除することにより得られ、以下末端二重結合指数と称する。
(A)成分における末端二重結合指数としては、0.2以上が好ましく、より好ましくは0.3?1.0である。
【0035】
2.可塑剤の使用方法
本発明の可塑剤は、熱可塑性樹脂組成物やAE硬化型組成物(活性エネルギー線硬化型組成物)に配合し、得られる光学フィルムを可塑化する目的で好適に使用できる。
以下、熱可塑性樹脂組成物及びAE硬化型組成物について説明する。」


「【0043】
2-2-1.(C)成分
(C)成分としては、ポリオール、有機ポリイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物等が挙げられる。
(C)成分としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましく、2個の(メタ)アクリロイル基をウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
(C)成分としては、芳香族基を有しないウレタン(メタ)アクリレートが、低光弾性となるため好ましい。芳香族基を有しないウレタン(メタ)アクリレートは、原料のポリオール及び有機ポリイソシアネートとして、芳香族基を有しない化合物を使用することにより製造することができる。
(C)成分のMwとしては、1,000?15,000のものが好ましく、より好ましくは1,000?10,000である。
(C)成分は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
以下、(C)成分の原料化合物である、ポリオール、有機ポリイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、並びに(C)成分の製造方法について説明する。」


「【0067】
2-2-2.その他の成分
AE硬化型組成物は、前記(C)成分を必須成分とするものであるが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
その他成分としては、具体的には、エチレン性不飽和基を有する(C)成分以外の化合物〔以下、(D)成分という〕、光重合開始剤〔以下、(E)成分という〕、有機溶剤〔以下、(F)成分という〕、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤、並びに耐光性向上剤等を挙げることができる。
以下、これらの成分について説明する。
【0068】
●(D)成分
(D)成分は、エチレン性不飽和基を有する(C)成分以外の化合物である。
(D)成分は、組成物全体の粘度を低下させる目的や、その他の物性を調整する目的で必要に応じて配合する成分である。
【0069】
(D)成分の具体例としては、(C)成分以外の(メタ)アクリレート〔以下、「その他(メタ)アクリレート」という〕やN-ビニル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0070】
その他(メタ)アクリレートとしては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「単官能(メタ)アクリレート」という〕や2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「多官能(メタ)アクリレート」という〕等が挙げられる。」


「【0109】
3-2.AE硬化型組成物を使用する光学フィルムの製造方法
AE硬化型組成物を使用する光学フィルムの製造方法としては、基材に前記したAE硬化型組成物を塗工し、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法、基材に組成物を塗工し別の基材と貼り合せた後さらに活性エネルギー線を照射して硬化させる方法、凹部を有する型枠に組成物を流し込み、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法等が挙げられる。
活性エネルギー線としては、電子線、紫外線及び可視光線等を照射する方法が挙げられる。
【0110】
基材としては、剥離可能な基材及び離型性を有しない基材(以下、「非離型性基材」という)のいずれも使用することができる。
剥離可能な基材としては、離型処理されたフィルム及び剥離性を有する表面未処理フィルム(以下、まとめて「離型材」という)等が挙げられる。
・・・
【0116】
3-2-1.より具体的な光学フィルムの製造方法
AE硬化型組成物を使用する光学フィルムの製造方法について、上記に概要を説明したが、以下、より具体的な光学フィルムの製造方法について説明する。
尚、以下においては、図1?図2に基づき一部説明する。
【0117】
図1は、離型材/硬化物から構成される光学フィルムの好ましい製造方法の一例を示す。
図1において、(1)は離型材を意味する。
組成物が無溶剤型の場合(図1:F1)は、組成物を離型材〔図1:(1)〕に塗工する。組成物が有機溶剤等を含む場合(図1:F2)は、組成物を離型材〔図1:(1)〕に塗工した後に、乾燥させて有機溶剤等を蒸発させる(図1:1-1)。
離型材に組成物層(2)が形成されてなるシートに対して活性エネルギー線を照射することで、離型材/硬化物から構成される光学フィルムが得られる。活性エネルギー線の照射は、通常、組成物層側から照射するが、離型材側からも照射できる。
上記において、基材(1)として離型材を使用すれば、離型材/硬化物から構成される光学フィルムを製造することができる。
・・・
【0121】
図2は、離型材/硬化物/離型材から構成される光学フィルムの好ましい製造方法の一例を示す。
【0122】
図2において、(1)、(3)、(4)は離型材を意味する。
組成物が無溶剤型の場合(図2:F1)は、組成物を離型材〔図2:(1)〕に塗工する。組成物が有機溶剤等を含む場合(図2:F2)は、組成物を離型材〔図2:(1)〕に塗工した後に、乾燥させて有機溶剤等を蒸発させる(図2:2-1)。組成物層(2)には離型材(3)をラミネートした後活性エネルギー線照射したり、活性エネルギー線照射した後に離型材(4)をラミネートすることで、離型材、硬化物及び離型材が、この順に形成されてなる光学フィルムが得られる。
【0123】
上記図1及び2では基材として離型材を使用した例を記載したが、非離型性基材を使用して、光学フィルムを製造することもできる。
例えば、図1において、(1)の離型材に代え非離型性基材を使用し、前記と同様に活性エネルギー線照射して硬化させ、非離型性基材/硬化物から構成される光学フィルムを製造することもできる。
又、図2において、(1)、(3)及び(4)のいずれかの離型材として、非離型性基材を使用し、前記と同様の方法で活性エネルギー線照射して硬化させ、離型材/硬化物/非離型性基材から構成される光学フィルムや、非離型性基材/硬化物/非離型性基材から構成される光学フィルムを製造することもできる。
【0124】
又、前記の例では、組成物を基材に塗工して光学フィルムを製造する例を挙げたが、膜厚が大きい光学フィルムを製造する場合は、特定の凹部を有する型枠等に組成物を流し込み、前記と同様にして活性エネルギー線を照射して組成物を硬化させ光学フィルムを製造することもできる。」


「【0126】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、下記において「部」とは、重量部を意味する。
【0127】
○実施例1〔(A)成分(可塑剤)の製造〕
まず、モノマー混合溶液を調製し、原料タンクに貯蔵する。モノマー混合溶液は、アクリル酸メチル(以下、MAという):2,000g、メチルエチルケトン(以下、MEKという):48g及びジターシャリブチルパーオキサイド(以下、DTBPという):42gを含む。
次に、電熱式ヒータを備えた容量300mlの加圧式攪拌槽型反応器を、3-エトキシプロピオン酸エチルで満たした。反応器内温度を240℃に維持し、圧力調節器により反応器内の圧力を2.7MPaに調整した。
反応器の圧力を一定に保ちながら、モノマー溶液を原料タンクから反応器に連続的に供給した。このとき、モノマー溶液の反応器内での滞留時間が12分となるように供給速度を設定した。詳しくは、モノマー溶液は一定の供給速度(25g/分)で反応器に供給された。又、単量体混合物の供給体積と等しい体積の反応物を反応器の出口から連続的に抜き出した。単量体混合物の供給開始直後に、反応器内温度が一旦低下した。その後、重合熱により、反応器内温度が上昇した。ヒータの制御により、反応温度は244℃に保持された。反応温度が安定した時点から、反応液の回収を開始した(回収開始時)。回収開始時から60分間にわたって、反応を継続した。これにより、2,180gの単量体混合液が供給され、2,130gの反応液が回収された。
回収した反応液を薄膜蒸発器に導入した。250℃、20kPaの雰囲気下で、反応液から未反応単量体および溶剤等の揮発成分を除去した。これにより、約1.900gのアクリル系重合体(以下、「PLA-1」という)を得た。
PLA-1のガスクロマトグラフ分析の結果によれば、未反応単量体は0.5%以下であることがわかった。
PLA-1のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、Mwという)を、GPC(溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:東ソー製TSKgelSuperMultiporeHZ-M)により測定した結果、1,400であった。
又、末端二重結合指数は0.4であった。
・・・
【0129】
○製造例1〔(C)成分の製造〕
攪拌機、温度計、冷却器を備えた500mL反応容器に、室温で化合物(C)としてIPDI:138.4g、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(以下、「BHT」という):0.07g、触媒としてジブチルスズジラウレート(以下、「DBTDL」という):0.07gを仕込み、5容量%の酸素を含む窒素の雰囲気下、これらを攪拌しながら液温が70℃になるまで加温した。
化合物(a)としてトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール(オクセア社製TCDDM)(水酸基価:572mgKOH/g、P-Mn:196):77.0g、化合物(c)としてHEA:54.6g及びMEK:85.0gの混合溶液を内温が75℃以下となるように一括添加した後、内温80℃で2時間反応させた。
その後、DBTDL:0.07g及びMEK:5.0gの混合溶液を添加し、赤外線吸収スペクトル装置(PerkinElmer製FT-IR Spectrum100)によりスペクトルを測定し、イソシアネート基が完全に消費されたことを確認し、ウレタンアクリレート(以下、「UA-1」という)を含むMEK溶液(固形分80%)を得た。
UA-1のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、Mwという)を、GPC(溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:Waters製HSPgelHR MB-L)により測定した結果、2,300であった。
・・・
【0135】
(2)実施例A1?同A8、比較例A1?同A5(AE硬化型組成物の製造)
後記表2に示す成分を表2に示す割合でステンレス製容器に投入し、加温しながらマグネチックスターラーで均一になるまで撹拌し、組成物を得た。
【0136】
【表2】

【0137】
表2における略号は、下記を意味する。
・Dc1173:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、BASFジャパン(株)製DAROCUR-1173
・・・
【0139】
(4)実施例AF1?同AF3及び同AF5?同AF8、比較例AF1?同AF3及び同AF5(電子線硬化による光学フィルムの製造)
幅300mm×長さ300mmの東レ(株)製フィルム「ルミラー50-T60」(表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ50μm、以下「ルミラー」という)に、実施例A1?同A3及び同A5?同A8、比較例A1?同A3及び同A5で得られた組成物を、80℃で10分乾燥した後の膜厚が40μmになるようアプリケーターで塗工した。
その後、組成物層に、(株)NHVコーポレーション製の電子線照射装置により、加速電圧200kV、線量150kGy(ビーム電流及び搬送速度により調整)、酸素濃度300ppm以下の条件下で電子線照射を行い、光学フィルムを得た。
硬化後、ルミラーから剥離し、後記する評価に用いた。その結果を表4に示す。
【0140】
(5)実施例AF4、比較例AF4(紫外線硬化による光学フィルムの製造)
幅300mm×長さ300mmのルミラーに、実施例A4、比較例A4で得られた紫外線硬化型組成物を、80℃で10分乾燥した後の膜厚が40μmになるようアプリケーターで塗工した。
その後、組成物層に、アイグラフィックス(株)製のコンベア式紫外線照射装置(高圧水銀灯、ランプ高さ12cm、365nmの照射強度400mW/cm^(2)(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)社製UVPOWER PUCKの測定値))によりコンベア速度を調整して、積算光量1,000mJ/cm^(2)の紫外線照射を行い、紫外線硬化型光学フィルムを得た。
硬化後、ルミラーから剥離し、後記する評価に用いた。その結果を表3(当審注:「表4」の誤記と認められる。)に示す。
・・・
【0147】
【表4】

【0148】
実施例AF1?同AF8は、本発明の可塑剤を含むAE硬化型組成物である実施例A1?同A8の組成物から得られた光学フィルムであり、光弾性係数が低く、破断強度及び破断伸度のバランスに優れ、柔軟性に優れるものであった。
これに対して、比較例AF1及び同AF2は、可塑剤を含まない組成物から製造された光学フィルムであるため、フィルムは非常に脆く、光弾性係数及び引張試験の評価ができなかった。比較例AF3?同AF5は、チオール系連鎖移動剤を用いて分子量調整された可塑剤を含む組成物から製造された光学フィルムであるため、破断強度及び破断伸度のバランスに優れ、柔軟性に優れるものの、本発明の可塑剤を含む場合よりも光弾性係数が高かった。」


摘記ア、イより、甲2には、アクリル系重合体(A)からなる可塑剤及びウレタン(メタ)アクリレート(C)を含む光学フィルム又はシート形成用活性エネルギー線硬化型組成物(AE硬化型組成物)が記載され、摘記エより、該AE硬化型組成物は、光重合開始剤(E)や有機溶剤(F)を含有することができるものであるところ、摘記カより、甲2には、実施例A4として、以下の発明が記載されていると認められる。
「可塑剤(A)として、アクリル酸メチルを重合して得られた、ポリスチレン換算重量平均分子量(以下、Mwという)が1,400であり、末端二重結合指数0.4であるアクリル系重合体「PLA-1」20重量部、ウレタン(メタ)アクリレート(C)として、ウレタンアクリレート「UA-1」80重量部、光重合開始剤(E)として、「Dc1173」(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、BASFジャパン(株)製DAROCUR-1173)1重量部、及び、有機溶剤(F)としてMEK25重量部を含有する光学フィルム又はシート形成用AE硬化型組成物(活性エネルギー線硬化型組成物)。」(以下、「甲2発明a」という。)

また、摘記カより、甲2には、実施例AF4として、以下の発明が記載されていると認められる。
「実施例A4で得られた紫外線硬化型組成物を、幅300mm×長さ300mmの東レ(株)製フィルム「ルミラー50-T60」(表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ50μm)に塗工し、紫外線照射を行って得られた、紫外線硬化型光学フィルム。」(以下、「甲2発明b」という。)

2 判断

(1)取消理由1-1について
取消理由1-1は、甲1に基づく新規性に関するものであるから、同じく甲1に基づく新規性及び進歩性に関するものである申立理由1-1及び申立理由2-1と、以下にまとめて検討する。

ア 本件訂正発明1について

(ア)対比
本件訂正発明1と甲1発明aとを対比する。
甲1発明aの「UH2000」は、「ラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)」であるので、本件訂正発明1の「マクロモノマー(A)」と、「マクロモノマー」の限りにおいて一致する。また、甲1発明aの「UN6200」は、「ポリエーテル系2官能ウレタンアクリレート」であるので、本件訂正発明1の「マクロモノマー(A)を除くラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)」に相当し、甲1発明aの「184」は、「光重合開始剤」であるので、本件訂正発明1の「ラジカル重合開始剤(C)」であって、「ラジカル重合開始剤(C)が光重合開始剤であ」ることに相当し、甲1発明aの「接着剤組成物」は、本件訂正発明1の「樹脂組成物」と、樹脂組成物である限りにおいて一致する。
そして、甲1発明aの「UN6200」100質量部あたりの「UH2000」の量は、10(=5/50×100)質量部であり、これが本件訂正発明1の「x」に相当し、また、「UH2000」のMw(重量平均分子量)は11,000であり、これが本件訂正発明1の「y」に相当する。してみると、甲1発明aにおけるこれらの積は、11万であり、本件訂正発明1の「xとyとの積が、10000以上13万以下」と重複する。

そうすると、本件訂正発明1と甲1発明aとは、
「マクロモノマー(A)と、前記マクロモノマー(A)を除くラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)と、ラジカル重合開始剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、
前記ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりの前記マクロモノマー(A)の量をx質量部、前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量をyとした場合のxとyとの積が、10000以上13万以下であり、
前記ラジカル重合開始剤(C)が光重合開始剤である、樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件訂正発明1は、マクロモノマー(A)が下記式(1)で示す構造であるのに対し、甲1発明aは、「UH2000」の化学構造が明らかでない点。
【化1】


式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環式基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Xは水素原子又はメチル基であり、複数のXはそれぞれ同じでも異なってもよく、Zは末端基であり、nは2?10000である。

<相違点2>
本件訂正発明1は、樹脂組成物が、「光学的立体造形法に用いる」ものであるのに対し、甲1発明aは、「接着剤組成物」である点。

(イ)相違点についての判断
まず、上記相違点2について検討する。
甲1発明aの「接着剤組成物」は、接着剤に用いるものであって、本件訂正発明1の「光学的立体造形法に用いる」ものと相違することは、明らかである。
よって、上記相違点2は、実質的な相違点である。

次に、上記相違点2に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるか否かについて検討する。
甲1発明aは、甲1において比較例として記載されたものであるところ、比較例とは通常、実施例等で具体化される発明の効果等を説明するための具体例であることからすると、特段の事情がない限り、当業者が当該発明に基いて新たな発明を想起するものではない。
したがって、甲1発明aにおいて、上記相違点2に係る事項を本件訂正発明1に係る事項とする動機付けがあるとはいえない。
また、念のため、甲1に記載された「接着剤組成物」を「光学的立体造形法」に転用することが容易であるか否かについても以下に検討する。
甲1には、甲1に記載された「接着剤組成物」を接着剤に用いることが記載されるものの、同組成物を他の用途に用いることは記載されておらず、ましてや「光学的立体造形法」に用いることは、記載も示唆もされていない。
また、「接着剤組成物」を「光学的立体造形法」に転用することが、本件優先日時点での技術常識であるともいえない。
してみると、甲1発明aの「接着材組成物」を、「光学的立体造形法に用いる」ことを、当業者が容易に想到し得るとはいえない。
さらに、本件訂正発明1が奏する効果について検討する。
本件訂正発明1は、本件明細書の段落【0007】、【0010】、【0070】、【表1】等に記載されるとおり、「得られる立体造形物の機械的特性(引張強度、及び引張伸度)が高い」という効果を奏するものである。
これに対し、甲1の【表2】には、甲1発明aである「比較例7」は、何らの有利な効果も奏さない旨記載されている。
したがって、本件訂正発明1の上記効果は、甲1の記載から予測し得るものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、少なくとも上記相違点2の点で実質的に相違するから、上記相違点1について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明1は、上記相違点2に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、上記相違点1について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件訂正発明2?5について
本件訂正発明2?5は、本件訂正発明1を引用するものであり、上記アで述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件訂正発明6について

(ア)対比
本件訂正発明6と甲1発明aとを対比すると、上記ア(ア)で述べたのと同様の理由により、両者は、
「マクロモノマー(A)と、前記マクロモノマー(A)を除くラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)と、ラジカル重合開始剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、
前記ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりの前記マクロモノマー(A)の量をx質量部、前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量をyとした場合のxとyとの積が、10000以上13万以下であり、
前記ラジカル重合開始剤(C)が光重合開始剤である、樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3>
本件訂正発明6は、マクロモノマー(A)が下記式(1)で示す構造であるのに対し、甲1発明aは、「UH2000」の化学構造が明らかでない点。
【化1】



式(1)において、複数のR及び複数のXがすべてメチル基であり、Zは末端基であり、nは2?10000である。

(イ)相違点についての判断
上記相違点3について検討する。
まず、上記式(1)における「X」及び「R」について検討する。
本件訂正発明6の上記式(1)で示す構造のマクロモノマー(A)は、「複数のR及び複数のXがすべてメチル基」である。
一方、甲1発明aの「UH2000」は、「水酸基含有型」である(甲1の段落【0072】、摘記1(1)ウ)ところ、甲1の段落【0021】には、「ラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)」の製造方法として、「(メタ)アクリル系モノマーとして、炭素数1?18のアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる化合物の1種もしくは2種以上の混合物、またはこれらとスチレン系モノマーの混合物と、グリシジル基、水酸基、シリル基から選ばれる官能基を有する(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アクリル酸を用い、それらを1工程で反応させる方法がある。これにより末端に不飽和結合を有する水酸基含有型、カルボキシル基含有型、エポキシ基含有型、アルコキシシリル基含有型のラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂が得られる。」と記載されている(摘記1(1)イ)ことからすると、「水酸基含有型」とは、炭素数1?18のアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる化合物の1種もしくは2種以上の混合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレートを用いて1工程で反応させて得られたラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂であるものと解される。してみると、「UH2000」は、繰り返しモノマー単位として炭素数1?18のアルキル(メタ)アクリレートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートを有するものであるから、上記式(1)において、「X」が水素原子またはメチル基であり、「R」がアルキル基又は水酸基を有するアルキル基であるものに相当する。
そうすると、本件訂正発明6の「マクロモノマー(A)」と甲1発明aの「UH2000」とは、上記式(1)において、少なくとも「R」及び「X」の基が相違し、すなわち繰り返しモノマー単位が相違する。
そこで、甲1発明aにおいて、「UH2000」の繰り返しモノマー単位を、「複数のR及び複数のXがすべてメチル基」である単位、すなわちメチルメタクリレートとすることが、当業者が容易に想到し得たものであるか否かについて検討する。
甲1発明aは、甲1において、比較例として記載されたものであるから、上記ア(イ)で述べたのと同様の理由により、当業者であれば通常、当該発明に基いて新たな発明を想起するものではない。
したがって、甲1発明aにおいて、上記相違点3に係る事項を本件訂正発明6に係る事項とする動機付けがあるとはいえない。
また、念のため、甲1発明aの「UH2000」の繰り返しモノマー単位を、メチルメタクリレートとすることが、容易であるか否かについても以下に検討する。
甲1の段落【0021】には、ラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂の製造方法として、「(メタ)アクリル系モノマーとして炭素数1?18のアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる化合物の1種もしくは2種以上の混合物、またはこれらとスチレン系モノマーの混合物を用い、それらを1工程で反応させる方法」が記載され、別の製造方法として、「(メタ)アクリル系モノマーとして、炭素数1?18のアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる化合物の1種もしくは2種以上の混合物、またはこれらとスチレン系モノマーの混合物と、グリシジル基、水酸基、シリル基から選ばれる官能基を有する(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アクリル酸を用い、それらを1工程で反応させる方法」により、末端に不飽和結合を有する水酸基含有型、カルボキシル基含有型、エポキシ基含有型、アルコキシシリル基含有型のラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂が得られることが記載されている。そして、同段落には、上記の炭素数1?18のアルキル(メタ)アクリレートとして、メチル(メタ)アクリレートが記載されている(摘記1(1)イ)。また、同【0022】には、「上記のラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂の中でも、遅延硬化性が高いという観点からは、無官能基型及び水酸基含有型(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。」と記載されている(摘記1(1)イ)。
ここで、甲1発明aの「UH2000」は、上記のとおり、「水酸基含有型」(メタ)アクリル系樹脂であるところ、上記の段落【0021】?【0022】の記載から、「水酸基含有型」の(メタ)アクリル系樹脂と同様に、「無官能基型」(メタ)アクリル系樹脂が有利な効果を奏する旨示唆されているといえる。
しかしながら、甲1には、「無官能基型」(メタ)アクリル系樹脂の(メタ)アクリル系モノマーとして、メチルメタクリレートを選択することは記載されていないし、ましてや、メチルメタクリレートを選択することによって、有利な効果を奏することは、記載も示唆もされていない。
してみると、甲1発明aにおいて、「UH2000」の繰り返しモノマー単位を、メチルメタクリレートとすることを、当業者が容易に想到し得るとはいえない。
以上のとおり、本件訂正発明6は、甲1発明aにおいて、少なくとも上記式(1)における「X」及び「R」の点で、これらをメチル基とすることが動機付けられるとはいえないので、上記式(1)の他の部分の化学構造について検討するまでもなく、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
また、本件訂正発明6が奏する効果について検討するに、上記ア(イ)で述べたのと同様に、本件訂正発明6の「得られる立体造形物の機械的特性(引張強度、及び引張伸度)が高い」という効果は、甲1の記載から予測し得るものとはいえない。

(ウ)申立人の主張について
申立人は、申立書において、甲1の段落【0021】には、ラジカル重合性基を有する(メタ)アクリレート系樹脂を製造する(メタ)アクリル系モノマーとして、メチル(メタ)アクリレートが挙げられているから、甲1発明aにおいて、(メタ)アクリル系モノマーとしてメチル(メタ)アクリレート1種のみを選択することが、当業者であれば容易になし得ることである旨主張する。
しかしながら、上記(イ)で述べたとおり、比較例である甲1発明aに基いて新たな発明を想起することが容易であるとはいえないし、甲1発明aの「UH2000」の繰り返しモノマー単位を、メチルメタクリレートとすることが、当業者が容易に想到し得るともいえない。
よって、申立人の上記主張は、採用しない。

(エ)小括
以上のとおり、本件訂正発明6は、上記相違点3に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件訂正発明7について
本件訂正発明7は、本件訂正発明1、6を直接又は間接的に引用するものであり、上記ア、ウで述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 本件訂正発明8について
本件訂正発明は、独立請求項に係る発明である本件訂正発明1と本件訂正発明6とを直接または間接的に引用するものであるから、本件訂正発明1を引用する場合と本件訂正発明6を引用する場合とに分けて、以下検討する。

(ア)本件訂正発明1を引用する本件訂正発明8について

a 対比
(a)まず、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明8は、請求項1の記載を書き下すと、
「マクロモノマー(A)と、前記マクロモノマー(A)を除くラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)と、ラジカル重合開始剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、
前記ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりの前記マクロモノマー(A)の量をx質量部、前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量をyとした場合のxとyとの積が、10000以上13万以下であり、
前記ラジカル重合開始剤(C)が光重合開始剤であり、
前記マクロモノマー(A)が下記式(1)で示す構造であり、光学的立体造形法に用いる、樹脂組成物の硬化物からなる立体造形物。
【化1】

式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環式基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Xは水素原子又はメチル基であり、複数のXはそれぞれ同じでも異なってもよく、Zは末端基であり、nは2?10000である。」
である。

(b)ここで、本件訂正発明8の「立体造形物」について検討する。
本件訂正発明1を直接又は間接的に引用する本件訂正発明8は、本件訂正発明1に記載の、「光学的立体造形法に用いる、樹脂組成物」「の硬化物からなる立体造形物」である。
ここで、本件明細書の段落【0002】、【0086】の記載によれば、上記「光学的立体造形法」とは、当該「樹脂組成物からなる薄膜を形成する工程と、該薄膜に対して光エネルギーを照射し硬化させる工程とを複数回繰り返すことにより、硬化した薄膜を複数積層させ、所望の形状の立体造形物を製造する」方法であるものといえる。
そうすると、本件訂正発明8の「光学的立体造形法に用いる、樹脂組成物の硬化物からなる立体造形物」とは、該樹脂組成物の硬化物である薄膜が複数積層されたものであると認められる。

(c)そこで、上記(a)で示した本件訂正発明8と甲1発明bとを対比すると、両者は、上記ア(ア)で示したとおりの一致点を有する。また、甲1発明bの「硬化膜」は、本件訂正発明8の「樹脂組成物の硬化物からなる立体造形物」と、「硬化物」である限りにおいて一致する。

してみると、本件訂正発明8と甲1発明bとは、
「マクロモノマー(A)と、前記マクロモノマー(A)を除くラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)と、ラジカル重合開始剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、
前記ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりの前記マクロモノマー(A)の量をx質量部、前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量をyとした場合のxとyとの積が、10000以上13万以下であり、
前記ラジカル重合開始剤(C)が光重合開始剤である、樹脂組成物の硬化物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1’>
本件訂正発明8は、マクロモノマー(A)が下記式(1)で示す構造であるのに対し、甲1発明bは、「UH2000」の化学構造が明らかでない点。
【化1】


式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環式基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Xは水素原子又はメチル基であり、複数のXはそれぞれ同じでも異なってもよく、Zは末端基であり、nは2?10000である。

<相違点4>
本件訂正発明8は、樹脂組成物が、「光学的立体造形法に用いる」ものであり、該樹脂組成物の「硬化物からなる立体造形物」であるのに対し、甲1発明bは、「接着剤組成物」を「滴下し、UV照射をして得られた硬化膜」である点。

b 相違点についての判断
上記相違点4について検討する。
本件訂正発明8の「立体造形物」は、上記a(b)で述べたとおり、光学的立体造形法に用いる、樹脂組成物の硬化物である薄膜が複数積層されたものであるのに対し、甲1発明bの「硬化膜」は、組成物を硬化して得られた硬化膜であり、該硬化膜を複数積層したものではないので、両者は相違する。
よって、上記相違点4は、実質的な相違点である。

次に、上記相違点4に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるか否かについて検討する。
甲1発明bは、甲1において、比較例として記載されたものであるから、上記ア(イ)で述べたのと同様の理由により、当業者であれば通常、当該発明に基いて新たな発明を想起するものではない。
したがって、甲1発明bにおいて、上記相違点4に係る事項を本件訂正発明8に係る事項とする動機付けがあるとはいえない。
また、念のため、甲1発明bの「接着剤組成物」を「光学的立体造形法」に転用し、甲1発明bの「UV照射して得られた硬化膜」を、樹脂組成物の硬化物である薄膜が複数積層されたものとすることが容易であるか否かについても以下に検討する。
上記ア(イ)で述べたのと同様の理由により、甲1発明bの「接着剤組成物」を、「光学的立体造形法に用いる」ことは、当業者が容易になし得ることではない。また、甲1には、該「接着剤組成物」を硬化して得られた「硬化膜」を積層することは記載も示唆もされていないし、「接着剤組成物」を積層することが本件優先日時点において技術常識であるともいえない。
したがって、甲1発明bの「接着剤組成物」を「滴下し、UV照射をして得られた硬化膜」を、「光学的立体造形法に用いる、樹脂組成物の硬化物からなる立体造形物」とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
また、上記ア(イ)で述べたのと同様の理由により、本件訂正発明8が奏する効果は、甲1の記載から予測し得るものではない。

c 小括
以上のとおり、本件訂正発明8は、少なくとも上記相違点4の点で実質的に相違するから、上記相違点1’について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明8は、上記相違点4に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、上記相違点1’について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件訂正発明6を引用する本件訂正発明8について
本件訂正発明8は、本件訂正発明6を直接又は間接的に引用するものであり、上記ウで述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

カ 本件訂正発明9について
本件訂正発明9は、本件訂正発明8を引用するものであり、上記オで述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

キ まとめ
よって、取消理由1-1、申立理由1-1及び申立理由2-1は、理由がない。

(2)取消理由1-2、取消理由2について
取消理由1-2、取消理由2は、甲2に基づく新規性及び進歩性に関するものであるから、申立理由1-2及び申立理由2-2と、以下にまとめて検討する。

ア 本件訂正発明1について

(ア)対比
本件訂正発明1と甲2発明aとを対比する。

甲2発明aの「「Dc1173」(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン)」は、本件訂正発明1の「ラジカル重合開始剤(C)」であって、「ラジカル重合開始剤(C)が光重合開始剤であ」ることに相当し、甲2発明aの「光学フィルム又はシート形成用AE硬化型組成物」は、本件訂正発明1の「樹脂組成物」と、「樹脂組成物」である限りにおいて一致する。
また、甲2発明aの「ウレタンアクリレート(C)」について、甲2の段落【0043】(摘記1(2)ウ)には、「(C)成分としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましく、2個の(メタ)アクリロイル基をウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましい」と記載されており、甲2発明aの「ウレタンアクリレート「UA-1」」は、同【0129】(摘記1(2)カ)の記載から、IPDI(イソホロンジイソシアネート)138.4g、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール(TCDDM)77.0g及びHEA(合議体注:「ヒドロキシエチルアクリレート」であると解される。)54.6gを反応させて得られたものであり、ジオールであるTCDDMの水酸基に対して、IPDIのイソシアネート基が過剰であることからすると、HEAに由来するアクリレート基を両末端に有するものと考えられるから、甲2発明aの「ウレタンアクリレート「UA-1」」は、本件訂正発明1の「ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)」に相当する。
さらに、甲2発明aの「PLA-1」は、末端二重結合指数が0.4であるところ、該「末端二重結合指数」は、甲2の段落【0034】の記載(摘記1(2)イ)によれば、「重合体1分子当たりの末端二重結合の平均個数」であるから、甲2発明aの「PLA-1」20重量部は、末端二重結合を有するアクリル系重合体を8(=20×0.4)重量部含有するものと考えられる。
そうすると、甲2発明aの「アクリル系重合体「PLA-1」」が含有する、末端二重結合を有するアクリル系重合体(以下、「PLA-1’」という。)は、本件訂正発明1の「マクロモノマー(A)」と、「マクロモノマー」の限りにおいて一致する。そして、「ウレタンアクリレート「UA-1」」100重量部あたりの「PLA-1’」の量は、10(=8/80×100)重量部であり、これが本件訂正発明1の「x」に相当し、また、甲2発明aの「PLA-1」のMwは1,400であることから、「PLA-1’」のMwも約1,400であると解され、これが本件訂正発明1の「y」に相当する。してみると、甲2発明aにおけるこれらの積は、14000であり、本件訂正発明1の「xとyとの積が、10000以上13万以下」と重複する。

してみると、本件訂正発明1と甲2発明aとは、
「マクロモノマー(A)と、前記マクロモノマー(A)を除くラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)と、ラジカル重合開始剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、
前記ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりの前記マクロモノマー(A)の量をx質量部、前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量をyとした場合のxとyとの積が、10000以上13万以下であり、
前記ラジカル重合開始剤(C)が光重合開始剤である、樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点5>
本件訂正発明1は、マクロモノマー(A)が下記式(1)で示す構造であるのに対し、甲2発明aの「PLA-1’」の化学構造が明らかでない点。
【化1】


式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環式基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Xは水素原子又はメチル基であり、複数のXはそれぞれ同じでも異なってもよく、Zは末端基であり、nは2?10000である。

<相違点6>
本件訂正発明1は、樹脂組成物が、「光学的立体造形法に用いる」ものであるのに対し、甲2発明aは、「光学フィルム又はシート形成用」である点。

(イ)相違点についての判断
まず、上記相違点6について検討する。
本件訂正発明1の「光学的立体造形法」とは、上記(1)オ(ア)a(b)で示したとおり、「樹脂組成物からなる薄膜を形成する工程と、該薄膜に対して光エネルギーを照射し硬化させる工程とを複数回繰り返すことにより、硬化した薄膜を複数積層させ、所望の形状の立体造形物を製造する」方法であるものといえる。
してみると、本件訂正発明1の「光学的立体造形法に用いる」ことと、甲2発明aの「光学フィルム又はシート形成用」とが相違することは明らかである。
よって、上記相違点6は、実質的な相違点である。

次に、上記相違点6に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるか否かについて検討する。
甲2には、得られたAE硬化型組成物を「光学フィルム又はシート形成」に用いることが記載されるものの、他の用途は記載されておらず、ましてや上記「光学的立体造形法」に用いることは、記載も示唆もされていない。
また、「光学フィルム又はシート形成用」のAE硬化型組成物を上記「光学的立体造形法」に用いることが、本件優先日時点における技術常識であるともいえない。
したがって、甲2発明aの「光学フィルム又はシート形成用AE硬化型組成物」を、「光学的立体造形法に用いる」ことは、何ら動機付けられない。
さらに、本件訂正発明1が奏する効果について検討する。
本件訂正発明1は、上記(1)ア(イ)で述べたとおり、「得られる立体造形物の機械的特性(引張強度、及び引張伸度)が高い」という効果を奏するものである。そして、本件明細書の【表1】には、本件訂正発明1の組成物から得られた硬化物が39.6MPa?44.8MPaの降伏強度(引張強度)と、119%?148%の破断伸度を有することが示されている。
これに対し、甲2の段落【0148】には、甲2発明aから得られた光学フィルム(実施例AF4)が、破断強度及び破断伸度のバランスに優れる旨記載され、【表4】には、その具体的データとして、破断強度が81MPaであり、破断伸度が3%であることが記載されている(摘記1(2)カ)。
これらを比較してみるに、本件訂正発明1の破断伸度と、甲2に記載される破断伸度とは、その測定条件が異なるので、それらの数値を直接比較することはできないものの、甲2発明aの3%という値と比較して、本件訂正発明1の119%?148%という値は、顕著に大きい値であるということができる。
してみると、本件訂正発明1の上記効果、特に引張伸度が高いという効果は、甲2の記載から予測し得るものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、少なくとも上記相違点6の点で実質的に相違するから、上記相違点5について検討するまでもなく、甲2に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明1は、上記相違点6に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、上記相違点5について検討するまでもなく、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件訂正発明2?5について
本件訂正発明2?5は、本件訂正発明1を引用するものであり、上記アで述べたのと同様の理由により、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件訂正発明6について

(ア)対比
本件訂正発明6と甲2発明aとを対比すると、上記ア(ア)で述べたのと同様の理由により、両者は、
「マクロモノマー(A)と、前記マクロモノマー(A)を除くラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)と、ラジカル重合開始剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、
前記ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりの前記マクロモノマー(A)の量をx質量部、前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量をyとした場合のxとyとの積が、10000以上13万以下であり、
前記ラジカル重合開始剤(C)が光重合開始剤である、樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点7>
本件訂正発明6は、マクロモノマー(A)が下記式(1)で示す構造であるのに対し、甲2発明aは、「PLA-1’」の化学構造が明らかでない点。
【化1】



式(1)において、複数のR及び複数のXがすべてメチル基であり、Zは末端基であり、nは2?10000である。

(イ)相違点についての判断
上記相違点7について検討する。
まず、上記式(1)における「X」及び「R」について検討する。
本件訂正発明6の上記式(1)で示す構造のマクロモノマー(A)は、「複数のR及び複数のXがすべてメチル基」である。
一方、甲2発明aの「PLA-1’」は、甲2の段落【0127】の記載(摘記1(2)カ)から、アクリル酸メチルを重合した重合体であるので、上記式(1)において、Xが水素、Rがメチル基のものに相当する。
そうすると、本件訂正発明6の「マクロモノマー(A)」と甲2発明aの「PLA-1’」とは、上記式(1)において、少なくとも「R」及び「X」の基が相違し、すなわち繰り返しモノマー単位が相違する。
そこで、甲2発明aにおいて、「PLA-1’」の繰り返しモノマー単位を、「複数のR及び複数のXがすべてメチル基」である単位、すなわちメチルメタクリレートとすることが、当業者が容易に想到し得たものであるか否かについて検討する。
甲2の段落【0127】に記載されるとおり、甲2発明aの「PLA-1」は、甲2における「(A)成分(可塑剤)」、すなわち「アクリル系重合体(A)」に相当するものであるところ、同【0023】には、該アクリル系重合体(A)の原料化合物である(メタ)アクリレートの具体例として、メチル(メタ)アクリレート等が記載され、「これらの中でも、可塑化効果と光弾性係数低減効果のバランスに優れるという点で、メチルアクリレートが好ましい。」と記載されている(摘記1(2)イ、カ)。
しかしながら、甲2には、該(メタ)アクリレートとして、メチルメタクリレートを選択することは記載されていないし、ましてや、メチルメタクリレートが、メチルアクリレートと同様に優れた効果を奏することも記載されていない。また、アクリレート系の重合体とメタクリレート系重合体とは、組成物における可塑化効果が異なることが、当業者にとっての技術常識である。
してみると、甲2発明aにおいて、可塑剤として用いられる「PLA-1」の繰り返しモノマー単位を、メチルアクリレートからメチルメタクリレートに代えることは、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
以上のとおり、本件訂正発明6は、甲2発明aにおいて、少なくとも上記式(1)における「X」及び「R」の点で、これらをメチル基とすることが動機付けられるとはいえないので、上記式(1)の他の部分の化学構造について検討するまでもなく、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
また、本件訂正発明6が奏する効果について検討するに、上記ア(イ)で述べたのと同様の理由により、本件訂正発明6の「得られる立体造形物の機械的特性(引張強度、及び引張伸度)が高い」という効果は、甲2の記載から予測し得るものとはいえない。

(ウ)申立人の主張について
申立人は、申立書において、甲2には、(A)成分の単量体としてメチル(メタ)アクリレートが記載されていることから、甲2発明aにおいて、(メタ)アクリル系モノマーとしてメチル(メタ)アクリレート1種のみを選択し、上記式(1)において、複数のR及び複数のXがすべてメチル基であるマクロモノマーを製造して用いることは当業者であれば容易になし得る旨主張する。
しかしながら、上記(イ)で述べたとおり、甲2発明aにおいて、メチルアクリレートに代えてメチルメタクリレートを選択して用いることに動機付けがあるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は、採用しない。

(エ)小括
以上のとおり、本件訂正発明6は、上記相違点7の点で実質的に相違するから、甲2に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明6は、上記相違点7に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件訂正発明7について
本件訂正発明7は、本件訂正発明1、6を直接又は間接的に引用するものであり、上記ア、ウで述べたのと同様の理由により、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 本件訂正発明8について
本件訂正発明は、独立請求項に係る発明である本件訂正発明1と本件訂正発明6とを直接または間接的に引用するものであるから、本件訂正発明1を引用する場合と本件訂正発明6を引用する場合とに分けて、以下検討する。

(ア)本件訂正発明1を引用する本件訂正発明8について

a 対比
(a)まず、上記(1)オ(ア)a(b)で述べたとおり、本件訂正発明8の「光学的立体造形法に用いる、樹脂組成物の硬化物からなる立体造形物」とは、該樹脂組成物の硬化物である薄膜が複数積層されたものであると認められる。

(b)そこで、上記(1)オ(ア)a(a)で示した本件訂正発明8と甲2発明bとを対比する。
まず、本件訂正発明8の「マクロモノマー(A)と、・・・樹脂組成物」と甲2発明bの「実施例A4で得られた紫外線硬化型組成物」とを対比すると、甲2発明bの「実施例A4で得られた紫外線硬化型組成物」は、すなわち、「甲2発明a」であるので、両者は、上記ア(ア)で示したとおりの一致点を有する。
そして、甲2発明bの「紫外線硬化型光学フィルム」は、上記「実施例A4で得られた紫外線硬化型組成物」を紫外線照射によって硬化したものであるから、本件訂正発明8の「樹脂組成物の硬化物からなる立体造形物」と、「硬化物」である限りにおいて一致する。

してみると、本件訂正発明8と甲2発明bとは、
「マクロモノマー(A)と、前記マクロモノマー(A)を除くラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)と、ラジカル重合開始剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、
前記ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりの前記マクロモノマー(A)の量をx質量部、前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量をyとした場合のxとyとの積が、10000以上13万以下であり、
前記ラジカル重合開始剤(C)が光重合開始剤である、樹脂組成物の硬化物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点5’>
本件訂正発明1は、マクロモノマー(A)が下記式(1)で示す構造であるのに対し、甲2発明bの「PLA-1’」の化学構造が明らかでない点。
【化1】


式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環式基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Xは水素原子又はメチル基であり、複数のXはそれぞれ同じでも異なってもよく、Zは末端基であり、nは2?10000である。

<相違点8>
本件訂正発明8は、樹脂組成物が、「光学的立体造形法に用いる」ものであり、該樹脂組成物の「硬化物からなる立体造形物」であるのに対し、甲2発明bは、「紫外線硬化型組成物」をフィルムに「塗工し、紫外線照射を行って得られた、紫外線硬化型光学フィルム」である点。

b 相違点についての判断
上記相違点8について検討する。
本件訂正発明8の「立体造形物」は、上記a(a)で述べたとおり、光学的立体造形法に用いる、樹脂組成物の硬化物である薄膜が複数積層されたものであるのに対し、甲2発明bの「紫外線硬化型光学フィルム」は、組成物を表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルム塗工し、紫外線照射を行って得られた光学フィルムであって、基材フィルムと硬化膜からなるものであり、該硬化膜を複数積層したものではないので、両者は相違する。
よって、上記相違点8は、実質的な相違点である。

次に、上記相違点8に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるか否か、すなわち、甲2発明bの「紫外線硬化型組成物」を「光学的立体造形法」に転用し、甲2発明bの「紫外線硬化型光学フィルム」を、樹脂組成物の硬化物である薄膜が複数積層されたものとすることが容易であるか否かについて、以下に検討する。
上記ア(イ)で述べたのと同様の理由により、甲2発明bの「紫外線硬化型組成物」を、「光学的立体造形法に用いる」ことは、何ら動機付けられない。
また、甲2の段落【0109】?【0123】には、該組成物に活性エネルギー線照射して得られた硬化物を離型材又は非離型性基材と積層して光学フィルムとすることが記載され、同【0124】には、特定の凹部を有する型枠等に組成物を流し込み、活性エネルギー線を照射して組成物を硬化させ光学フィルムを製造することも記載される(摘記1(2)オ)ものの、該硬化物を複数積層することは記載されていない。
してみると、甲2には、該「紫外線硬化型組成物」を硬化して得られた硬化膜を積層することは記載も示唆もされていないし、光学フィルム又はシート形成用「紫外線硬化型組成物」を積層することが本件優先日時点において技術常識であるともいえない。
したがって、甲2発明bの「紫外線硬化型光学フィルム」を「光学的立体造形法に用いる、樹脂組成物の硬化物からなる立体造形物」とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
また、上記ア(イ)で述べたのと同様の理由により、本件訂正発明8が奏する効果は、甲2の記載から予測し得るものではない。

c 小括
以上のとおり、本件訂正発明8は、少なくとも上記相違点8の点で実質的に相違するから、上記相違点5’について検討するまでもなく、甲2に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明8は、上記相違点8に係る事項が、当業者が容易に想到し得るといえないので、上記相違点5’について検討するまでもなく、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件訂正発明6を引用する本件訂正発明8について
本件訂正発明8は、本件訂正発明6を直接又は間接的に引用するものであり、上記ウで述べたのと同様の理由により、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

カ 本件訂正発明9について
本件訂正発明9は、本件訂正発明8を引用するものであり、上記オで述べたのと同様の理由により、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

キ まとめ
よって、取消理由1-2、取消理由2、申立理由2-1及び申立理由2-2は、理由がない。

(3)取消理由通知で採用しなかった申立理由について

ア 申立理由3について

(ア)特許法第36条第6項第1号について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(「当業者」)が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁平成17年(行ケ)第10042号判決、「偏光フィルムの製造法」事件)。そこで、この点について、以下に検討する。

(イ)本件訂正発明の課題について
本件訂正発明が解決しようとする課題は、本件明細書の段落【0007】等の記載から、「速硬化性を有し、得られる造形物の機械的特性(引張強度、及び引張伸度)が良好な樹脂組成物、及びこれを用いた立体造形物を提供すること」であると解される。

(ウ)本件訂正発明1について
本件明細書の段落【0008】には、「マクロモノマーと、他のラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤(光重合開始剤)とを合わせて配合し、マクロモノマーの重量平均分子量と組成比の関係を適正とすることで、上記課題を解決し得る」と記載され、同【0014】には、該マクロモノマーとして式(1)(化学構造式は省略)で表されるものが好ましい旨記載され、同【0033】には、「樹脂組成物に含まれるラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりのマクロモノマー(A)の量をx質量部、前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量をyした場合のxとyとの積(以下、積xyともいう)が、10000以上13万以下である。積xyの値が10000以上であると降伏強度が向上し機械強度に優れ、積xyの値が13万以下であると、破断歪みが向上し機械強度に優れる」と記載されている。
これらの記載から、式(1)(化学構造式は省略)で表されるマクロモノマー(A)と、他のラジカル重合性性化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含有し、積xyが10000以上13万以下である樹脂組成物が、上記(イ)の課題を解決するものと解される。
そして、本件明細書の段落【0075】?【0085】及び【表1】には、マクロモノマー(A)としてポリメチルメタクリレートであるELVACITE1010(A-1)、ELVACITE1020(A-2)、WHP-264O(A-3)を使用し、(B)成分としてウレタンアクリレート(B-1)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε-カプロラクトン反応物のジアクリレート(B-2)を使用し、(C)成分として2、4、6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(C-1)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(C-2)を使用し、積xyが17733?116751である樹脂組成物により得られたフィルムが、良好な引張伸度及び引張強度を有することが、具体的なデータ(実施例1?7参照。)とともに示されている。
してみると、本件訂正発明1の特定の(A)?(C)成分を含有し、積xyを10000以上13万以下とすることにより、機械的特性(引張強度、及び引張伸度)が良好な造形物が得られることが、本件明細書の記載から理解できるものといえる。
したがって、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。

(エ)本件訂正発明2?5について
本件訂正発明2?5は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記(ウ)で示したのと同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。

(オ)本件訂正発明6について
本件明細書の段落【0027】?【0028】には、式(1)の「R」について、「アルキル基」が好ましく、「メチル基、が特に好ましい」と記載され、同【0029】には、式(1)の「X」について、「メチル基が好ましい」と記載されている。
そして、上記(ウ)で示した実施例1?10では、マクロモノマー(A)としてポリメチルメタクリレートが使用されており、これは、式(1)の「複数のR及び複数のXがすべてメチル基であ」るものである。
してみると、上記(ウ)で述べたのと同様の理由により、本件訂正発明6の特定の(A)?(C)成分を含有し、積xyを1000以上13万以下とすることにより、機械的特性(引張強度、及び引張伸度)が良好な造形物が得られることが、本件明細書の記載から理解できるものといえる。
したがって、本件訂正発明6は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件訂正発明6は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。

(カ)本件訂正発明7?9について
本件訂正発明7?9は、本件訂正発明1、6を直接又は間接的に引用するものであり、上記(ウ)、(オ)で示したのと同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。

(キ)申立人の主張について
申立人は、申立書において、以下のa?eの理由により、本件訂正発明1?9が発明の詳細な説明に記載したものでない旨主張する。
a 式(1)で示す構造を有するマクロモノマーは数多く存在するにもかかわらず、本件明細書の実施例で用いられているのは「ポリメチルメタクリレート」のみであり、マクロモノマーのラジカル共重合性及び樹脂組成物の物性は、式(1)におけるR及びXの種類によって大きく異なることが技術常識であるから、ポリメチルメタクリレート以外のマクロモノマー(A)を用いた場合にも本件明細書の実施例で示される効果と同様の効果が奏されるとはいえない。
b ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)は数多く存在するにもかかわらず、本件明細書の実施例で用いられているのは、ウレタンアクリレート(B-1)、及び、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε-カプロラクトン反応物のジアクリレート(B-2)のみであり、これらは、ラジカル重合性基を2つ有する化合物のみであり、ラジカル重合性基を3つ以上有する化合物はない。ここで、ラジカル重合性基を2つ有する化合物とラジカル重合性基を3つ有する化合物とでは、得られる硬化物の引張強度及び引張伸度が異なることは当業者にとって技術常識であり、また、ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物の物性は、重合性基以外の構造によって、大きく異なることも当業者にとって技術常識である。
してみると、上記(B-1)及び(B-2)以外のラジカル重合性基を2つ以上有する化合物を用いた場合にも本件明細書の実施例で示される効果と同様の効果が奏されるとはいえない。
c 本件発明が規定する「積xy」の範囲は広範囲であるのに対して、本件特許の実施例は不十分である。本件明細書の段落【0076】には、「WHP-264O(重量平均分子量(Mw)=2200)(A-3)」に関して製造元の記載も合成例の記載もないので、マクロモノマー(A)に該当するか不明であるから、これを用いた実施例8?10は、本件特許の実施例として認められず、本件特許の実施例には、yが5000、10000である例しかない。
これに対し、yが非常に小さくxが大きい場合、yが非常に大きくxが小さい場合等にも本件明細書の実施例で示される効果と同様の効果が奏されるとはいえない。
d 本件明細書に記載される全ての実施例には、(D)成分としてアクリロイルモルフォリンが含まれており、アクリロイルモルフォリンを含まない場合にも、本件明細書の実施例で示される効果と同様の効果が奏されるとはいえない。
e 本件訂正発明7の「単官能(メタ)アクリレート」は数多く存在するにもかかわらず、本件明細書の実施例で用いられているのは「アクリロイルモルフォリン」のみであり、単官能(メタ)アクリレートの物性は、構造によって大きく異なることが技術常識であるから、アクリロイルモルフォリン以外の単官能(メタ)アクリレートを用いた場合にも本件明細書の実施例で示される効果と同様の効果が奏されるとはいえない。

上記主張a?eについて検討する。
まず、上記主張a、b、d及びeについてまとめて検討する。
申立人は、(A)?(C)成分の化学構造が異なれば、硬化物の物性が異なることを、一般的に述べているだけで、本件明細書の実施例で具体的に使用された(A)?(C)成分以外の(A)?(C)成分を用いた場合に、本件訂正発明の上記(イ)の課題を解決できないことについて、技術的な根拠を何ら具体的に示していないので、上記(イ)の課題を解決できると認識できるとはいえない証拠を挙げているとはいえない。
一方、本件訂正発明の特定の(A)?(C)成分を含有し、積xyを10000以上13万以下とすることにより、本件訂正発明の上記(イ)の課題を解決できると認識できることは、上記(ウ)、(オ)で述べたとおりである。
よって、上記主張a、b、d及びeは採用しない。

次に、上記主張cについて検討する。
本件明細書に記載される実施例8?10を本件訂正発明の実施例として認めないとしても、実施例1?7における「積xy」は、17733?116751なる範囲であるので、本件訂正発明が規定する「10000?13万」なる範囲に対して不十分であるとはいえない。
また、「y」はマクロモノマー(A)の重量平均分子量であるところ、本件訂正発明の式(1)において、繰り返し単位「n」が「2?10000」であることが規定されているので、マクロモノマー(A)の重量平均分子量「y」の範囲は、「n」の「2?10000」という範囲から自ずと限定され、一定値以上一定値以下の値であるといえる。さらに、本件訂正発明は、積xyの範囲を特定したのであって、xとyのそれぞれの範囲を特定した発明ではない。
そして、積xyが10000以上13万以下とすることにより、上記(イ)の課題を解決できると認識できることは、上記(ウ)、(オ)で述べたとおりである。
そうすると、上記主張cは的外れな主張であり、採用できない。

以上のとおりであるから、申立人の上記主張は、採用しない。

(ク)まとめ
以上のとおり、申立理由3は、理由がない。

イ 申立理由4について

(ア)申立人の主張について
申立人は、申立書において、以下のとおり主張する。
本件明細書の比較例には、xとyとの積が10000未満(0を除く)である例がなく、xとyとの積が0である比較例1と、xとyとの積が17733である実施例4とを比較したとき、降伏強度及び破断強度の差はわずかであり、xとyとの積を10000以上13万以下に特定することの技術的意義が認められないので、本件発明1?9は、いわゆる委任省令要件違反に該当する。

(イ)申立人の主張に対する検討
本件訂正発明において、xとyとの積を10000以上13万以下と特定することの、発明の技術上の意義について検討する。
本件明細書の段落【0033】には、「本発明はマクロモノマーの質量平均分子量に対して添加率の割合に着目したものであり、」「積xyの値が10000以上であると降伏強度が向上し機械強度に優れ、積xyの値が13万以下であると、破断歪みが向上し機械強度に優れる。」と記載されていることから、xとyとの積を10000以上13万以下と特定することにより、降伏強度及び破断歪みの点において優れた機械強度を有する樹脂組成物が得られるという技術上の意義を有するものと解される。
また、本件明細書には、xとyとの積が10000以上13万以下ではない例のうち、xとyとの積が10000未満である例として、少なくとも、xとyとの積が0である比較例1が記載されており、これと実施例4とを比較すると、前者は降伏強度が38.8Mpa、破断伸度が119%であるのに対し、後者は降伏強度が42.0Mpa、破断伸度が129%であり、前者と比較して後者が、降伏強度及び破断伸度の点において優れていることが具体的に示されているといえる。
以上のとおり、本件明細書には、xとyとの積を10000以上13万以下と特定することについて、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているといえる。
よって、申立人の上記主張は、採用しない。

(ウ)まとめ
以上のとおりであるから、申立理由4は、理由がない。


第6 むすび

以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件訂正発明1?9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件訂正発明1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロモノマー(A)と、前記マクロモノマー(A)を除くラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)と、ラジカル重合開始剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、
前記ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりの前記マクロモノマー(A)の量をx質量部、前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量をyとした場合のxとyとの積が、10000以上13万以下であり、
前記ラジカル重合開始剤(C)が光重合開始剤であり、
前記マクロモノマー(A)が下記式(1)で示す構造であり、光学的立体造形法に用いる、樹脂組成物。
【化1】

式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環式基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Xは水素原子又はメチル基であり、複数のXはそれぞれ同じでも異なってもよく、Zは末端基であり、nは2?10000である。
【請求項2】
前記マクロモノマー(A)の量が、前記ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりの1質量部以上30質量部以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量が2,000以上40,000以下である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記マクロモノマー(A)が(メタ)アクリレート単位を繰り返し単位として有する請求項1?3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレート単位がメチルメタクリレート単位である請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
マクロモノマー(A)と、前記マクロモノマー(A)を除くラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)と、ラジカル重合開始剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、
前記ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物(B)100質量部あたりの前記マクロモノマー(A)の量をx質量部、前記マクロモノマー(A)の重量平均分子量をyとした場合のxとyとの積が、10000以上13万以下であり、
前記ラジカル重合開始剤(C)が光重合開始剤であり、
前記マクロモノマー(A)が下記式(1)で示す構造である、樹脂組成物。
【化1】

式(1)において、複数のR及び複数のXがすべてメチル基であり、Zは末端基であり、nは2?10000である。
【請求項7】
さらに、単官能(メタ)アクリレートを含む請求項1?6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1?7のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる立体造形物。
【請求項9】
マクロモノマー(A)由来の微視的領域と化合物(B)由来の微視的領域とが相分離している請求項8に記載の立体造形物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-18 
出願番号 特願2017-522215(P2017-522215)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08F)
P 1 651・ 113- YAA (C08F)
P 1 651・ 121- YAA (C08F)
P 1 651・ 536- YAA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡辺 陽子  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 橋本 栄和
武貞 亜弓
登録日 2019-01-25 
登録番号 特許第6468355号(P6468355)
権利者 三菱ケミカル株式会社
発明の名称 樹脂組成物及びそれを用いた立体造形物  
代理人 志賀 正武  
代理人 高橋 詔男  
代理人 伏見 俊介  
代理人 志賀 正武  
代理人 大浪 一徳  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 鈴木 三義  
代理人 大浪 一徳  
代理人 高橋 詔男  
代理人 伏見 俊介  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 鈴木 三義  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ