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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M |
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管理番号 | 1362669 |
審判番号 | 不服2018-14473 |
総通号数 | 247 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-01 |
確定日 | 2020-05-20 |
事件の表示 | 特願2017- 23811「皮膚用針」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月15日出願公開、特開2017-104592〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2005年(平成17年)12月28日(優先権主張 平成16年12月28日)を国際出願日とする特願2006-553853号の一部を平成27年5月29日に新たな特許出願とした特願2015-110337号の一部をさらに平成29年2月13日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 3月13日 :手続補正書の提出 平成30年 1月11日付け:拒絶理由通知 平成30年 3月19日 :意見書の提出 平成30年 3月19日 :手続補正書の提出 平成30年 7月27日 :拒絶査定 平成30年11月 1日 :審判請求書及び審判請求書と同時に手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出 平成31年 1月21日 :上申書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1-4に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 側面から見て輪郭が湾曲したくびれ部分を有し、 前記くびれ部分よりも先端側の少なくとも一部が、機能性物質を含む、 皮膚用針。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献:特開2003-238347号公報 第4 引用文献の記載事項及び引用発明等 1 引用文献には、「機能性マイクロパイル」に関し、【図2】とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。 「【請求項1】 一辺又は直径が0.1?100μmの正方形又は円形の断面形状であり、長さが0.5?500μmの正方柱状、又は円柱状のパイルを基板上に設けた構造を有すること、を特徴とする機能性マイクロパイル。」 「【請求項6】 該マイクロパイル中間部にくびれ部を設け、該くびれ部において容易に折れて該マイクロパイル先端部のみが皮膚角質層内に残留すること、を特徴とする請求項1?5記載の機能性マイクロパイル。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、皮膚表層及び/又は皮膚角質層において、簡便に、安全にかつ効率的に修飾効果及び/又は機能効果を与えるための冶具である機能性マイクロパイル、更にはその機能性マイクロパイルの製造方法に関するものである。」 「【0007】すなわち、本発明を要約すると、その主旨は、(1)一辺又は直径が0.1?100μmの正方形又は円形の断面形状であり、長さが0.5?500μmの正方柱状、又は円柱状のパイルを基板上に設けた構造を有すること、を特徴とする機能性マイクロパイル、並びに、(2)一短辺又は短直径が0.1?100μmの長方形又は楕円形の断面形状であり、長さが0.5?500μmの長方柱状、又は楕円柱状のパイルを基板上に設けた構造を有すること、を特徴とする機能性マイクロパイル、並びに、(3)主成分素材が生体内において溶解、消失する糖質からなる方柱状、又は円柱状のパイルであること、を特徴とする上記(1)又は(2)の機能性マイクロパイル、並びに、(4)機能性物質を内包及び/又は含有した該マイクロパイルを、皮膚に接触させることにより皮膚角質層内に到達する経路を設けて機能性物質を角質層に限定して挿入すること、を特徴とする上記(1)?(3)の機能性マイクロパイル、並びに、(5)長方形又は楕円形の断面形状にすることにより、折れる方向性を制御することができる上記(2)?(4)の機能性マイクロパイル、並びに、(6)マイクロパイル中間部にくびれ部を設け、くびれ部において容易に折れてマイクロパイル先端部のみが皮膚角質層内に残留すること、を特徴とする上記(1)?(5)の機能性マイクロパイル・・・」 「【0009】本機能性マイクロパイルは、機能粉黛を皮膚角質層の限って挿入する高精度の技術を提供するものである。目的の機能物質を十分に提供するために、多数のマイクロパイルを設けた基板として使用する。例えば、1cm正方形の基板上に1万個以上の機能性マイクロパイルを皮膚上に軽く叩くようにスタンプ押しを行うことによって、マイクロパイル内に混在させた機能性物質を皮膚角質内に挿入しでき、所定機能を皮膚角質で発揮させることが好ましい。また、単体のマイクロパイルの形状は、特に限定されないが、正方柱状、長方柱状、円柱状、楕円柱状、それらの錐状などが好ましい。 【0010】目的の機能施行行為を行う場合、特に限定されないが、機能性マイクロパイルの先端だけに機能性物質を付加しておいて行うことが好ましい。」 「【図2】本発明の請求項6におけるくびれ部を有する機能性マイクロパイルの一例を示す概略図である。」 「【符号の説明】 ・・・ 4 くびれ部」 「 」 2 上記引用文献に記載されたマイクロパイルは、「機能性物質を内包及び/又は含有した」「マイクロパイル」(【0001】)であり、「マイクロパイル中間部にくびれ部を設け、くびれ部において容易に折れてマイクロパイル先端部のみが皮膚角質層内に残留」させること、「マイクロパイル内に混在させた機能性物質を皮膚角質内に挿入しでき、所定機能を皮膚角質で発揮させる」ことができること(【0009】)、及び「機能性マイクロパイルの先端だけに機能性物質を付加しておいて行うことが好ましい」(【0010】)ことから、くびれ部より先端に位置するマイクロパイル先端部は、機能性物質を含んでいるといえる。 3 【図2】から、くびれ部4は、側面から見て輪郭が直線の組合せにより外径の小さい部分が形成されていると認められる。 4 上記1及び2より、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「側面から見て輪郭が直線の組合せであるくびれ部を有し、前記くびれ部より先端に位置するマイクロパイル先端部は機能性物質を含む、マイクロパイル。」 第5 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「くびれ部」は、その文言の意味、機能または構成等からみて、本願発明の「くびれ部分」に相当する。以下同様に、「マイクロパイル」は「皮膚用針」にそれぞれ相当する。 また、引用発明の「前記くびれ部より先端側に位置するマイクロパイル先端部は機能性物質を含む」態様は、本願発明の「くびれ部分よりも先端側の少なくとも一部が、機能性物質を含む」態様に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、 「くびれ部分を有し、 前記くびれ部分よりも先端側の少なくとも一部が、機能性物質を含む、 皮膚用針。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) くびれ部分について、本願発明は「側面から見て輪郭が湾曲」しているのに対して、引用発明は、「側面から見て輪郭が直線の組合せ」である点。 2 判断 (1)相違点の検討 引用発明において、「くびれ部」が側面から見て輪郭が直線の組合せにより外径の小さな部分が形成されたものであるところ、その「くびれ部」は「くびれ部において容易に折れてマイクロパイル先端部のみが皮膚角質層内に残留」させるために設けられている(【0007】)ものである。 そうすると、引用発明の「くびれ部」は、「くびれ部」、すなわち、外径の小さな部分において、容易に折れることを目的として設けられたものであるといえること、及び直線又は湾曲の形状により構成されたくびれ部はいずれもありふれた形状であるといえることから、引用発明において、容易に折れるための外径の小さな部分に至る輪郭として、直線の形状に代えて湾曲の形状を採用することは、当業者が通常の創作能力を発揮することにより適宜なし得る程度の設計的事項にすぎず、上記相違点に係る本願発明の構成とすることに格別な困難性があるとはいえない。 本願発明の奏する効果について、審判請求人は、審判請求書(3.本願発明が特許されるべき理由)において、「側面から見て輪郭が湾曲したくびれ部分を有」することにより、(1)くびれ部分の著しい強度低下を防ぐ、(2)くびれ部分に生じる応力のばらつきの低減(すなわち、くびれ部分の強度のばらつきの低減)を可能にする旨主張している。 しかしながら、くびれ部分を側面から見て輪郭が湾曲したものとすることと、くびれ部分の著しい強度低下を防ぐことの関係は不明であるし、仮に、両者に関係があるとしても、引用発明は、「マイクロパイル内に混在させた機能性物質を皮膚角質内に挿入しでき、所定機能を皮膚角質で発揮」(【0009】)できることを踏まえると、くびれ部の著しい強度低下を防ぐという課題は、引用発明において内在する課題といえ、該課題に基づいてくびれ部の側面から見た輪郭をありふれた湾曲液状とする程度のことは、当業者が容易になし得たことであるから、当該主張を採用することはできない。 また、審判請求人は、「くびれ部分に生じる応力のばらつきの低減(すなわち、くびれ部分の強度のばらつきの低減)を可能にする、」と主張するが、くびれ部分を有する円柱状等の材料を折るべく荷重を付与する際、応力は外径の小さい部分において集中するものであり、側面から見た輪郭の形状に依存するものではない。 そして、発明の詳細な説明においても、くびれ部分を側面から見て輪郭が湾曲したことにより、「くびれ部分の著しい強度低下を防ぐ」、「くびれ部分に生じる応力のばらつきの低減(すなわち、くびれ部分の強度のばらつきの低減)を可能にする」ことについての記載も示唆もない。 してみると、本願発明の奏する効果は格別なものということはできない。 よって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえる 3 小括 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-03-18 |
結審通知日 | 2020-03-23 |
審決日 | 2020-04-06 |
出願番号 | 特願2017-23811(P2017-23811) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 安田 昌司 |
特許庁審判長 |
内藤 真徳 |
特許庁審判官 |
沖田 孝裕 莊司 英史 |
発明の名称 | 皮膚用針 |
代理人 | 松岡 修平 |