• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B05C
管理番号 1362676
審判番号 不服2019-4856  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-11 
確定日 2020-05-20 
事件の表示 特願2016-528641「容器閉鎖体を製造および印刷するためのプラント」拒絶査定不服審判事件〔平成27年1月29日国際公開、WO2015/011663、平成28年11月4日国内公表、特表2016-533879〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)7月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年7月25日、イタリア共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 2月13日付け:拒絶理由通知
平成30年 7月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年12月 5日付け:拒絶査定
平成31年 4月11日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成31年4月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年4月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成31年4月11日付けの手続補正の内容
平成31年4月11日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正により補正される前の(すなわち、平成30年7月19日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1の記載である、
「【請求項1】
カップ状本体を製造および印刷するためのプラント(1)であって、前記プラントは、少なくともプラスチック製の部分を含むカップ状本体(10)を製造するための装置(2)と、前記装置(2)によって製造された前記カップ状本体(10)を長手搬送方向(100)に沿って移動可能な搬送装置(3)とを備え、前記カップ状本体(10)は、自身の下縁(10b)が前記搬送装置(3)によって規定される載置面(3a)上に載置しており、自身の凹面が前記載置面(3a)に向かって方向付けられており、前記プラント(1)は、前記長手搬送方向(100)の延長に沿って、前記カップ状本体(10)のデジタル印刷装置(20)と、前記載置面(3a)上の前記カップ状本体(10)の上縁(10a)の位置を制御するために設けられる手段(40)とを備え、前記制御手段は前記デジタル印刷装置(20)に機能的に接続されており、前記カップ状本体(10)の表面処理用のステーションは、プラズマタイプの処理を実行するように意図されていることを特徴とする、プラント。」
を、
「【請求項1】
カップ状本体を製造および印刷するためのプラント(1)であって、前記プラントは、少なくともプラスチック製の部分を含むカップ状本体(10)を製造するための装置(2)と、前記装置(2)によって製造された前記カップ状本体(10)を長手搬送方向(100)に沿って移動可能な搬送装置(3)とを備え、前記カップ状本体(10)は、自身の下縁(10b)が前記搬送装置(3)によって規定される載置面(3a)上に載置しており、自身の凹面が前記載置面(3a)に向かって方向付けられており、前記プラント(1)は、前記長手搬送方向(100)の延長に沿って、前記カップ状本体(10)のデジタル印刷装置(20)と、前記載置面(3a)上の前記カップ状本体(10)の上縁(10a)の位置を制御するために設けられる手段(40)とを備え、前記制御手段は前記デジタル印刷装置(20)に機能的に接続されており、前記カップ状本体(10)の表面処理用のステーションは、プラズマタイプの処理を実行するように意図されており、
カップ状本体(10)を製造するための前記装置(2)は、加圧成形アセンブリを備えることを特徴とする、プラント。」
と補正する事項を含むものである(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。)。

2 本件補正の適否
2-1 本件補正の目的
特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「カップ状本体(10)を製造するための装置(2)」について、「カップ状本体(10)を製造するための前記装置(2)は、加圧成形アセンブリを備える」と、装置をさらに限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2-2 独立特許要件の検討
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、さらに検討する。

(1)引用文献1及び周知文献に記載された事項等
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明
(ア)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に日本国内において、頒布された特開2007-197022号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「合成樹脂製キャップ、閉止装置、飲料入り閉止装置、および合成樹脂製キャップの製造方法」に関して、おおむね次の記載がある。
なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。

・「【0030】
図2に示すように、天板部2の上面2bには、印刷15が施される。
【0031】
印刷15は、文字、記号、図形など(例えば商品名、社名)をなすものであり、平版印刷法(例えばオフセット印刷法)、凹版印刷法、凸版印刷法、インクジェット法などにより形成することができる。
【0032】
キャップ1を構成する合成樹脂材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレンを挙げることができる。
【0033】
次に、キャップ1を製造する方法の一例について説明する。
【0034】
キャップ1を成形した後、天板部2の上面2bに、次に示す表面処理を施す。
【0035】
図3は、天板部2の上面2bを処理する火炎処理装置である。この処理装置は、キャップ1を搬送するコンベア31と、火炎18を発するバーナー32とを備えている。
【0036】
コンベア31によって、キャップ1を紙面に対し垂直な方向に搬送しつつ、天板部2の上面2bを火炎18にさらす。これによって、上面2bは加熱されてその表面状態が変化し、濡れ性が高くなる。
(中略)
【0039】
次いで、平版印刷法(例えばオフセット印刷法)、凹版印刷法などによって、天板部2の上面2bに印刷15を施す。上面2bは火炎処理されているので、印刷15が強固に接着し、印刷15の剥離が起こりにくくなる。」

・「【0045】
なお、天板部上面の表面処理法としては、火炎処理法のほかに、プラズマ処理法、オゾン処理法、コロナ放電処理法などがある。」

・「【図2】



・「【図3】



(イ)引用発明
引用文献1の段落【0030】?【0039】には、キャップを製造する方法の一例として、キャップの成形(段落【0034】)、キャップ天板部上面の火炎処理装置(段落【0034】)及び印刷(段落【0039】)に関する一連の記載がなされている(キャップの成形や印刷にあたっては当然、何らかのキャップ成形手段や印刷手段によって行われる)。
そして、段落【0039】には、印刷法に関し、「平版印刷法(例えばオフセット印刷法)、凹版印刷法など」と記載されるとともに、段落【0031】には、印刷にあたってインクジェット法を採用できることも記載されている。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「合成樹脂材料で構成されたキャップの成形手段、キャップを搬送するコンベアと火炎を発するバーナーとを備えた天板部の上面を処理する火炎処理装置、及び、平版印刷法(例えばオフセット印刷法)、凹版印刷法、インクジェット法などによって、天板部の上面に印刷を施す印刷手段を備える合成樹脂製キャップの製造装置。」

イ 周知文献に記載された事項
本願の優先日前に日本国内において、頒布された特開昭61-47231号公報(以下、「周知文献」という。)には、「合成樹脂製キャップの成型方法」に関して、おおむね次の記載がある。

・「2.特許請求の範囲
厚さ1.0?3.0mmの合成樹脂製シートを押出成形機から押出して成形する押出成形工程Aと;
該押出成形工程Aにより成形された前記シートを、円筒形状をした上クランプと下クランプとから成るクランプにより密に挟持保持して前記シートの成形部分を区割するクランプ工程Bと;
前記クランプ内に、円柱形状体の周面に螺溝もしくはアンダーカットを形成して成形型面を構成したコアを挿入位置させるコアセット工程Cと;
前記クランプ内に挿入位置されたコアの成形型面に前記成形部分を、真空成形とか圧空成形等の熱成形手段により押圧密接させて成形品であるキャップに成形する熱成形工程Dと;
該熱成形工程Dにより成形されたキャップから前記コアを抜き取るコア抜き工程Eと;
前記クランプによるシートに対するクランプを解除するクランプ解除工程Fと;
前記成形されたキャップをシートから切断離脱させて独立した成形品とする切断工程Gと;
の各工程を順に行なう合成樹脂製キャップの成形方法。」(第1ページ左下欄第5行?同ページ右下欄第5行)

(2)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明における「合成樹脂材料で構成されたキャップ」は、その形状から、本願補正発明における「少なくともプラスチック製の部分を含むカップ状本体」に相当し、以下、同様に引用発明における「キャップの成形手段」、「コンベア」及び「火炎処理装置」は、それぞれ本願補正発明における「カップ状本体(10)を製造するための装置(2)」、「長手搬送方向(100)に沿って移動可能な搬送装置(3)」、「カップ状本体(10)の表面処理用のステーション」に相当する。
また、引用文献1の図3の記載から、引用発明において、キャップは、天板部が上向きに載置されている、すなわち自身の凹面がコンベア31に向かって方向付けられている状態でコンベアの載置面に載置されている状態が看取できる。
さらに、引用発明の印刷手段は、火炎処理装置による表面処理に引き続いて天板上部に印刷を施すものであるから、長手搬送方向の延長に沿って備えられるものであり、キャップの成形手段、火炎処理装置及び印刷手段といった一連の装置及び手段を総合したものは「プラント」と解することができる。


したがって、両者は、

「カップ状本体を製造および印刷するためのプラントであって、前記プラントは、少なくともプラスチック製の部分を含むカップ状本体を製造するための装置と、前記装置によって製造された前記カップ状本体を長手搬送方向に沿って移動可能な搬送装置とを備え、前記カップ状本体は、自身の下縁が前記搬送装置によって規定される載置面上に載置しており、自身の凹面が前記載置面に向かって方向付けられており、前記プラントは、前記長手搬送方向の延長に沿って、前記カップ状本体の印刷装置を備え、前記カップ状本体の表面処理用のステーションを備えた、プラント。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願補正発明のプラントは、「デジタル印刷装置(20)」及び「載置面(3a)上の前記カップ状本体(10)の上縁(10a)の位置を制御するために設けられる手段(40)」とを備え、「前記制御手段は前記デジタル印刷装置(20)に機能的に接続されている」ものであるのに対し、引用発明では、「平版印刷法(例えばオフセット印刷法)、凹版印刷法、インクジェット法など」によって、キャップの天板部の上面に印刷を施す印刷手段を備えるものであり、また、キャップの上縁の位置制御手段についての特定がない点。

<相違点2>
本願補正発明のカップ状本体(10)の表面処理用のステーションは、プラズマタイプの処理を実行するように意図されているものである一方、引用発明では、火炎処理である点。

<相違点3>
本願補正発明のカップ状本体(10)を製造するための装置(2)は、加圧成形アセンブリを備える一方、引用発明には、そのような特定がない点。

(3)相違点についての判断
そこで、相違点について、以下に検討する。

ア 相違点1について
引用発明には、インクジェット法による印刷が含まれ、インクジェット法は、製版を伴わない、デジタル印刷法の代表的な印刷法であるから、印刷装置の点は、実質的な相違点ではない。
また、デジタル印刷にあたり、印刷対象物の位置を整えるためセンサ設置や位置制御を行うものとすることは、改めて示すまでもなく、当業者において当然のことである(さもなければ、印刷位置がずれることとなる。)。
よって、引用発明において、印刷物対象物の位置調整といった事項を、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

イ 相違点2について
引用文献1の段落【0045】に「なお、天板部上面の表面処理法としては、火炎処理法のほかに、プラズマ処理法、オゾン処理法、コロナ放電処理法などがある。」と同列に列挙されるように、印刷前の表面処理として、これらの処理は、いずれも本件特許の優先日において、当業者にとって一般的な周知技術であり、プラズマ処理法の選択は、当業者にとって単なる設計的事項に過ぎず、引用発明において、かかる周知技術を適用して、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

ウ 相違点3について
カップ状の樹脂製品の成形技術において、加圧による成形は、例えば周知文献に示されるように周知の成形技術に過ぎず、引用発明において、かかる周知技術を適用して、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

エ 効果について
本願補正発明の効果について、本願明細書の段落【0021】記載の「発明の目的は、印刷対象の画像の非常に迅速な変更を可能にするカップ状本体を製造および印刷するためのプラントを提供することである」ことから鑑みるに、上記相違点1?3の検討において記載した引用発明等に基づく効果の寄せ集めを超えるものでもなく、格別顕著なものとはいえない。

(4)審判請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、デジタル印刷装置と加圧成形アセンブリの組み合わせに起因する効果として、成形完了時におけるカップ状本体の配置による印刷の容易化、印刷実行時のカップ状本体の温度、及び成形後に用いられるグリップの簡素化の点を主張する。
しかし、請求人が主張する上記効果はいずれも、請求項1において、カップ状本体(10)を製造するための装置(2)と搬送装置(3)との相互関係が特定されないことから、請求項の記載に基づかないものである。
また、請求人は、平成30年7月19日に提出された意見書において、「引用文献1は、プラズマ処理のみを施した場合よりも、プラズマ処理とコロナ処理とを併用することにより、単独の処理よりも濡れ性が向上することを強調しており、たとえ当業者であっても、引用文献9を参照してプラズマタイプの処理のみを実行することは想起し得ない」旨主張する。
しかし、プラズマ処理やコロナ処理それぞれの単独の処理自体、印刷前の表面処理として周知の手段であるとともに、上記(3)イで述べたように、引用文献1の記載も、プラズマ処理やコロナ処理の単独使用を好ましくないとするものではない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(5)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

2-3 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたため、本願の請求項1ないし20に係る発明は、平成30年7月19日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲のとおりであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1に摘記したとおりである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし20に係る発明は、本願の優先日前に頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献1:特開2007-197022号公報

3 引用文献1の記載事項及び引用発明
引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2 2-2(1)アのとおりである。

4 対比・判断
上記第2[理由]2 2-1で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項に「カップ状本体(10)を製造するための前記装置(2)は、加圧成形アセンブリを備える」という限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に上記限定を加えた本願補正発明が、上記第2[理由]2 2-2(2)ないし(4)のとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定のない本願発明もまた、引用発明等から当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 結語
上記第3のとおり、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-12-13 
結審通知日 2019-12-17 
審決日 2020-01-06 
出願番号 特願2016-528641(P2016-528641)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B05C)
P 1 8・ 575- Z (B05C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高崎 久子  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 大畑 通隆
植前 充司
発明の名称 容器閉鎖体を製造および印刷するためのプラント  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ