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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02D 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02D |
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管理番号 | 1363548 |
審判番号 | 不服2018-15527 |
総通号数 | 248 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-22 |
確定日 | 2020-06-25 |
事件の表示 | 特願2014-214344「アイドルストップ制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月16日出願公開、特開2016-79934〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年10月21日の出願であって、その手続は以下のとおりである。 平成30年2月27日(発送日:同年3月6日) :拒絶理由通知書 平成30年4月26日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年8月16日(発送日:同年8月28日):拒絶査定 平成30年11月22日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和元年10月29日(発送日:同年11月5日):拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」という。) 令和元年12月25日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし5に係る発明は、令和元年12月25日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「自動停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させ、再始動条件が成立したときに前記エンジンを再始動させるアイドルストップ制御装置であって、 車両の操舵部材の操作量を取得する操作量取得部と、 前記自動停止条件が成立していないときに前記操作量取得部により取得された操作量が判定閾値を超えた場合、前記操作量が判定閾値を超え、その後、前記操作量が判定閾値を超える状態が継続した状態で規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定を中断し、前記操作量が判定閾値を超えた状態で規定時間継続したときに前記エンジンの自動停止を禁止する制御部とを有し、 前記制御部は、前記操作量が判定閾値を超えたときの車速が低いほど前記規定時間が長くなるよう前記規定時間を設定することを特徴とするアイドルストップ制御装置。」 第3 当審における拒絶の理由 当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。 「1 (委任省令要件)本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 2 (明確性)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 3 (進歩性)本願の請求項1ないし5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ● 理由3(進歩性)について ・請求項1ないし5 ・引用文献1 引 用 文 献 一 覧 1.特開2012-67702号公報」 第4 理由1(特許法第36条第4項第1号)の拒絶理由についての検討 当審拒絶理由における理由1は 「本願の発明の詳細な説明の段落【0073】ないし【0095】の記載、特に段落【0080】ないし【0082】、【0084】ないし【0086】及び【0092】ないし【0095】の記載の技術的意義を理解することができない。」というものである。 これに対し、請求人は令和元年12月25日の意見書(以下「意見書」という。)において 「本願明細書の段落【0080】には、「・・・ステアリング装置14の操作量が判定閾値よりも大きいと判定したときから、操作量が判定閾値よりも大きい状態における経過時間を計測する(ステップS7)。」とあります。つまり、ステアリング装置の操作量が判定閾値よりも大きいと判定され(ステップS6でYES)、そのステアリング装置の操作量が判定閾値よりも大きい状態が規定時間継続することを指したものです。本願明細書の段落【0060】には「操舵トルクセンサ42により検出された操舵トルクが設定された操舵トルクの閾値を超えた状態で比較的に長い時間継続しても、・・・」ともあり、運転者のステアリング操作が設定された操舵トルクの閾値を超えた状態が継続する状況下において、経過時間を計測することは明らかです。」と主張している。 しかしながら、段落【0080】の記載が請求人の主張通りであるとしても、ステアリング装置の操作量が判定しきい値よりも大きいか否かを判定するステップS6において用いられる判定しきい値はステップS3で取得され、判定しきい値と比較するステアリング装置の操作量はステップS4で取得されるものである。 そして、ステップS6からステップS9の間で、新たにステアリング装置の操作量の取得及び判定閾値の設定は行わない(ステップS3及びS4は行わない)以上、ステップS6で比較される操作量及び判定閾値は常に同じ値であり、経過時間は規定時間を必ず継続し、最終的にはステップS9でエンジン11の自動停止を禁止するようエンジンコントローラ15に出力するから、結局のところ、ステップS6でステアリング装置14の操作量が判定閾値より大きいと判定した場合、規定時間がどのような値であってもエンジンの自動停止が禁止されることになる。同様に、このような判定を行うための規定時間を段落【0079】に記載されるステップS5で設定することの技術的意義も不明である。 そうすると、請求人の上記主張を参酌しても、本願発明において、ステップS6ないしS9で経過時間が規定時間を継続したかを判定することの技術的意義が理解できない。 したがって、本願の発明の詳細な説明は、請求項1ないし5に係る発明について、特許法第36条第4項第1号に規定される経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)で定めるところにより記載されたものではない。 第5 理由2(特許法第36条第6項第2号)の拒絶理由についての検討 1 当審拒絶理由における理由2の1.は、 「請求項1の『前記自動停止条件が成立していないときに前記操作量取得部により取得された操作量が判定閾値を超えた場合、前記操作量が判定閾値を超えた状態で規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定を中断し、前記操作量が判定閾値を超えた状態で規定時間継続したときに前記エンジンの自動停止を禁止する』との記載は明確でない。」というものである。 これに対し、請求人は、令和元年12月25日の手続補正において、当該補正前の「前記操作量が判定閾値を超えた状態で規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定を中断し」との記載を「前記操作量が判定閾値を超え、その後、前記操作量が判定閾値を超える状態が継続した状態で規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定を中断し」との記載に補正し、意見書において 「本願発明は、ステアリング装置の操作量が判定閾値よりも大きいと判定されてから、そのステアリング装置の操作量が判定閾値よりも大きい状態が規定時間継続する場合に、エンジンの自動停止の禁止を行うものです。この際、ステアリング装置の操作量が判定閾値を超える状態が継続しており、規定時間が未経過である場合は、ステップS6→ステップS7→ステップS8の処理を繰り返して、ステップS9への移行を行いません。これが請求項1の『規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定を中断し、』の処理となります。」と主張している。 しかしながら、一般に、「中断」は「途中でやめること」あるいは「途絶えること」を意味する。そして、「ステアリング装置の操作量が判定閾値を超える状態が継続しており、規定時間が未経過である場合は、ステップS6→ステップS7→ステップS8の処理を繰り返して、ステップS9への移行を行いません。」は、「操作量が判定閾値を超えた状態で規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定」を「繰り返して行う」ものであるから「中断」ではないと解するのが自然である。 したがって、意見書における請求人の主張を参酌しても、請求項1の「前記自動停止条件が成立していないときに前記操作量取得部により取得された操作量が判定閾値を超えた場合、前記操作量が判定閾値を超えた状態で規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定を中断し、前記操作量が判定閾値を超えた状態で規定時間継続したときに前記エンジンの自動停止を禁止する」との記載を明確に理解できない。 2 当審拒絶理由における理由2の2.は、 「請求項1の『操作量が判定閾値を超えたときの車速が低いほど前記規定時間が長くなるよう前記規定時間を設定する』との記載は明確でない。」というものである。 これに対し、請求人は意見書において 「本願発明は、車両が走行している際に、ステアリング装置の操作量が判定閾値よりも大きく、且つその判定閾値を超える状態が規定時間継続する所定条件が成立する場合に、予めエンジン自動停止を禁止するものです。上記の所定条件が成立すれば、エンジン自動停止を禁止することができ、運転者の走行意図に沿うようにできます。」と主張している。 しかしながら、当審拒絶理由で示したように、請求項1は車両が停車あるいは実質的に停車している状況でエンジンを自動停止させる「アイドルストップ制御装置」に係る発明である。そして、意見書における請求人の主張を参酌しても「アイドルストップ」を当該技術常識以外のものも含むと解すべき事情はないことに鑑みれば、車両が停車あるいは実質的に停車している状況でエンジンを自動停止させるアイドルステップにおいて、「車速が低いほど規定時間が長くなるよう規定時間を設定する」ことの技術的意味は依然として不明である。 したがって、意見書における請求人の主張を参酌しても、請求項1の「操作量が判定閾値を超えたときの車速が低いほど前記規定時間が長くなるよう前記規定時間を設定する」との記載を明確に理解できない。 3 当審拒絶理由の理由2の3.及び4.についても、意見書における請求人の主張を参酌しても、拒絶の理由が解消されているとはいえない。 したがって、請求項1、2及び4に係る発明並びにこれらの請求項を直接又は間接的に引用する請求項3及び5に係る発明は明確でない。 第6 理由3(特許法第29条第2項)についての検討 1 引用文献1の記載事項 当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献1(特開2012-67702号公報)には、「アイドルストップ車両のエンジン制御装置及びエンジン制御方法」に関して、図面(特に図1ないし図5を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。 ア 「【0005】 上記課題を解決するために、本発明は、運転者が操舵部材へ加える操舵トルクが、予め設定した第一エンジン自動停止禁止トルク以上であるとともに、エンジンが休止していない場合に、休止していないエンジンの作動を継続させる。これに加え、運転者が操舵部材へ加える操舵トルクが、第一エンジン自動停止禁止トルクよりも大きい値であり且つ予め設定した第二エンジン自動停止禁止トルク以上であるとともに、エンジンが休止している場合に、休止しているエンジンを再始動させる。 【発明の効果】 【0006】 本発明によれば、エンジンが休止しているか否かの状態と、運転者が操舵部材へ加える操舵トルクに応じて、エンジンを休止または再始動させるために用いる閾値の大きさを変えることが可能となる。 これにより、本発明によれば、エンジンの再始動時における操舵補助の喪失ショックを低減させることが可能となるとともに、エンジンの休止時における、運転者が意図していないエンジン再始動を抑制することが可能となる。」 イ 「【0008】 以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。 (第一実施形態) 以下、本発明の第一実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。 (構成) 図1は、本実施形態のエンジン制御装置1を備えた車両Vの概略構成を示す図である。 まず、図1を用いて、車両Vの概略構成を説明する。 図1中に示すように、車両Vは、エンジン2と、エンジンスタータ4と、オルタネータ6と、バッテリ8と、電動モータ10と、減速機12と、ステアリングホイール14を備えている。 エンジン2は、例えば、ガソリンエンジンであり、作動時にオルタネータ6を駆動する。 【0009】 また、エンジン2の始動及び停止は、後述するエンジンコントローラ16が出力するエンジン制御信号により制御する。 ここで、エンジン2の「始動」とは、駐車場等への駐車等、ある程度の時間に亘って停止しているエンジン2の始動に加え、走行時の信号待ち等、一時的に停止しているエンジン2の始動である「再始動」を含む。 エンジンスタータ4は、バッテリ8から供給される電力により作動して、停止状態のエンジン2を始動させるためのクランキングを行う。 ここで、上記の「停止状態」とは、駐車場等への駐車等、ある程度の時間に亘るエンジン2の停止に加え、走行時の信号待ち等、一時的なエンジン2の停止(アイドルストップ)である「休止」を含む。 【0010】 オルタネータ6は、電動モータ10へ電力を供給する発電機であり、作動中のエンジン2が発生する駆動力により駆動して、電力を発生させる。 バッテリ8は、エンジンスタータ4及び電動モータ10に接続しており、エンジンスタータ4及び電動モータ10へ、充電されている電力を供給する。ここで、バッテリ8から電動モータ10への電力の供給は、例えば、オルタネータ6の発電量に応じて行う。 電動モータ10は、例えば、公知の電動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)を形成するモータである。 【0011】 電動モータ10は、後述する操舵コントローラ18から入力された制御信号に基づいて駆動し、運転者がステアリングホイール14を操舵するために加える操舵トルクを補助するためのトルクである、「操舵支援トルク」に応じたトルクを発生させる。 ここで、電動モータ10が発生させるトルク、すなわち、操舵支援トルクに応じたトルクは、減速機12に予め設定された減速比(後述)に応じた値である。 【0012】 本実施形態では、操舵支援トルクを発生させるか否かの判定は、運転者がステアリングホイール14を操舵するために加える操舵トルクに応じて行う。 減速機12は、電動モータ10とステアリングホイール14とを接続しており、電動モータ10が発生させたトルクを、予め設定した減速比で倍力して操舵支援トルクに変換する。そして、減速機12は、電動モータ10が発生させたトルクを変換した操舵支援トルクを、ステアリングホイール14の回転軸20へ伝達する。 【0013】 ステアリングホイール14(操舵部材、操舵輪)は、その回転軸20が、図示しないステアリングコラム(回転軸支持部材)により回転自在に支持されており、車両Vの運転者による操舵操作により回転する。 ステアリングホイール14の回転は、回転軸20と、ステアリングギヤ機構22やステアリングリンク機構24を介して、転舵輪26に伝達される。なお、本実施形態では、転舵輪26を、車両前後方向前方に配置された両前輪(左前輪、右前輪)とした場合について説明する。 【0014】 次に、図1を用いて、エンジン制御装置1の概略構成を説明する。 図1中に示すように、エンジン制御装置1は、操舵トルクセンサ28と、車速センサ30と、モータ状態検出センサ32と、各種状態検出センサ34と、エンジンコントローラ16と、操舵コントローラ18を備えている。 操舵トルクセンサ28は、ステアリングコラムに取り付けられ、公知のトルクセンサを用いて形成されており、運転者がステアリングホイール14へ入力した操舵トルクを検出する。そして、操舵トルクを検出した操舵トルクセンサ28は、この検出した操舵トルクを含む情報信号(操舵トルク情報)を、操舵コントローラ18へ出力する。 【0015】 車速センサ30は、例えば、公知の車速センサを用いて形成されており、車両Vの車速を検出する。そして、車両Vの車速を検出した車速センサ30は、この検出した車速を含む情報信号を、エンジンコントローラ16及び操舵コントローラ18へ出力する。 モータ状態検出センサ32は、例えば、公知のセンサを用いて形成されており、電動モータ10の状態、具体的には、モータ角速度、モータ角速度の変化量、モータトルク等を検出する。そして、電動モータ10の状態を検出したモータ状態検出センサ32は、この検出した電動モータ10の状態を含む情報信号(モータ情報)を、操舵コントローラ18へ出力する。 【0016】 状態検出センサ34は、例えば、公知の回転角度センサ等を用いて形成されており、車両Vの各種状態を検出する。そして、車両Vの各種状態を検出した状態検出センサ34は、この検出した各種状態を含む情報信号を、エンジンコントローラ16及び操舵コントローラ18へ出力する。ここで、状態検出センサ34が検出する車両Vの各種状態とは、例えば、運転者によるステアリングホイール14の操舵角速度や、運転者によるステアリングホイール14の操舵角速度の変化量、バッテリ8の充電率等である。」 ウ 「【0023】 (操舵コントローラ18の具体的な構成) 以下、操舵コントローラ18の具体的な構成について説明する。 図2は、操舵コントローラ18の具体的な構成を示す図である。 図2中に示すように、操舵コントローラ18は、操舵トルク検出部36と、トルク閾値記憶部38と、トルク比較部40と、経過時間計測部42と、エンジン休止検出部44と、状態切り替え判定部46を備えている。 操舵トルク検出部36は、操舵トルクセンサ28から入力された情報信号に基づいて、運転者がステアリングホイール14へ加えた操舵トルクを検出する。そして、操舵トルク検出部36は、検出した操舵トルクを含む情報信号を、トルク比較部40へ出力する。 【0024】 トルク閾値記憶部38は、予め設定したトルクの閾値である、エンジン自動停止許可トルク及びエンジン自動停止禁止トルクを記憶している。トルク閾値記憶部38が記憶している各閾値(エンジン自動停止許可トルク、エンジン自動停止禁止トルク)は、必要に応じて、トルク比較部40が取得する。 トルク比較部40は、操舵トルク検出部36が検出した操舵トルクと、トルク閾値記憶部38が記憶している各閾値(エンジン自動停止許可トルク、エンジン自動停止禁止トルク)とを比較する。そして、操舵トルク検出部36が検出した操舵トルクが、トルク閾値記憶部38が記憶している各閾値以下となっている場合、その状態を示す情報信号を、経過時間計測部42へ出力する。 【0025】 経過時間計測部42は、操舵トルク検出部36が検出した操舵トルクが、トルク閾値記憶部38が記憶している各閾値(エンジン自動停止許可トルク、エンジン自動停止禁止トルク)以下となっている時間(秒数)を計測する。 エンジン休止検出部44は、エンジンコントローラ16が出力した情報信号に基づいて、エンジン2が休止しているか否かを検出する。そして、エンジン2が休止しているか否かを示す情報信号を、状態切り替え判定部46へ出力する。 【0026】 具体的には、エンジンコントローラ16が出力した情報信号が、エンジン2が停止している状態を示している場合に、エンジン2が休止していることを検出する。 状態切り替え判定部46は、アイドルストップ制御信号を、上述した許可状態または禁止状態に切り替える。そして、許可状態または禁止状態に切り替えたアイドルストップ制御信号を、エンジンコントローラ16へ出力する。 ここで、アイドルストップ制御信号の切り替えは、経過時間計測部42が計測した時間と、エンジン休止検出部44から入力された情報信号と、予め設定した所定の経過時間に基づいて行う。 なお、状態切り替え判定部46が行う具体的な処理は、後述する。」 エ 「【0031】 本実施形態では、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1を、図3中に示す、操舵トルク(横軸)と操舵支援トルク/軸力(縦軸)との関係から、以下の式(2)が成立する値とする。なお、図3中では、以下の式(2)が成立する値を示す範囲を、二本の点線で上下から囲んだ領域により示している。 操舵支援トルク/軸力≒0.25±0.05[Nm] … (2) なお、図3中には、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1の範囲を、「第一エンジン自動停止禁止トルクバンド」と記載して示している。 【0032】 ここで、上記の「軸力」とは、ステアリングホイール14の据え切り時において、ステアリングコラムに回転自在に支持されている回転軸20の軸周りに発生するトルクの換算値である。なお、ステアリングホイール14の据え切りとは、車両Vの停車時に、ステアリングホイール14を大きく操舵して、転舵輪26を転舵する操舵操作である。 また、上記の式(2)が成立する第一エンジン自動停止禁止トルクTc1とは、電動モータ10による操舵支援トルクが小さい状態における、操舵トルクの値である。 【0033】 また、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1を、上記の式(2)が成立する範囲とする理由は、電動モータ10による操舵支援トルク出力を停止した時点において、運転者が感じる操舵補助の喪失ショックを低減させるためである。これは、操舵補助の喪失ショックが発生する状態では、エンジン2を休止させないようにするためである。 ここで、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1は、車両Vの車重や、転舵輪26へ加わる荷重によって異なる値とする。これは、一般的に、転舵輪26へ加わる荷重が増加するほど、操舵補助に必要な操舵支援トルクが大きくなるためである。すなわち、運転者がステアリングホイール14に加える操舵トルクが等しくても、車重が重い車両では、操舵補助に必要な操舵支援トルクが大きくなり、車重が軽い車両では、操舵補助に必要な操舵支援トルクが小さくなる。 【0034】 したがって、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1を設定する際には、車両のVの車重や、転舵輪26へ加わる荷重に応じた値に設定する。 以上により、本実施形態では、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1を、車両Vの据え切り時にステアリングコラムにおいて回転軸20の軸周りに発生するトルクに、転舵輪26へ加わる荷重に応じて予め設定した倍率を乗算して設定した値とする。 【0035】 第二エンジン自動停止禁止トルクTc2は、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1よりも大きい値であり、エンジン2を休止させている状態で、操舵トルク検出部36が検出した操舵トルクとの比較に用いる閾値である。 本実施形態では、第二エンジン自動停止禁止トルクTc2を、図3中に示す、操舵トルク(横軸)と操舵支援トルク/軸力(縦軸)との関係から、以下の式(3)が成立する値とする。 操舵トルク≒2.50±0.75[Nm] … (3) 【0036】 なお、図3中には、第二エンジン自動停止禁止トルクTc2の範囲を、「第二エンジン自動停止禁止トルクバンド」と記載して示している。 ここで、第二エンジン自動停止禁止トルクTc2を、上記の式(3)が成立する範囲とする理由を、以下に記載する。 発明者等が、実際の車両を用いて評価試験を行った結果、運転者に操舵操作の意図が無い状態で、ステアリングホイール14に加わる操舵トルクの値が、2.50[Nm]前後であることが確認された。 なお、運転者に操舵の意図が無い状態とは、例えば、ステアリングホイール14に手を添えながら助手席の鞄を取る状態、ステアリングホイール14に寄り掛かる状態、チルト・テレスコピック機構を操作する状態等である。 【0037】 したがって、本実施形態では、運転者に操舵の意図が無い状態において、エンジン2が再始動しないように、第二エンジン自動停止禁止トルクTc2を、上記の式(3)が成立する範囲とする。 すなわち、本実施形態では、第二エンジン自動停止禁止トルクTc2を、ステアリングホイール14の操舵操作をする意図が無い状態の運転者がステアリングホイール14へ加えると推定される操舵トルクに対して、予め設定した倍率を乗算して設定した値とする。 【0038】 また、本実施形態では、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1と、第二エンジン自動停止禁止トルクTc2との関係を、以下の式(4)が成立する関係とする。 Tc1+TassistTc1<Tc2 … (4) ここで、上記の「TassistTc1」は、運転者が、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1と同じ大きさの操舵トルクをステアリングホイール14へ加えている状態で発生する、操舵支援トルクである。 以上により、本実施形態では、第二エンジン自動停止禁止トルクTc2を、上述した操舵支援トルクである「TassistTc1」に、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1を加算した値よりも大きい値とする。 【0039】 (操舵コントローラ18が行う具体的な処理) 以下、図1から図3を参照しつつ、図4を用いて、操舵コントローラ18が行う処理について、詳細に説明する。 図4は、操舵コントローラ18が行う処理を示すフローチャートである。 図4中に示すように、操舵コントローラ18が行う処理を開始(START)すると、まず、ステップS10において、操舵トルク検出部36が、操舵トルクTを検出する。ステップS10において、操舵トルク検出部36が操舵トルクTを検出すると、操舵コントローラ18が行う処理は、ステップS12へ移行する。 【0040】 ステップS12では、トルク比較部40が、操舵トルク検出部36が検出した操舵トルクTと、トルク閾値記憶部38が記憶している各閾値のうち、エンジン自動停止許可トルクTaとを比較する。そして、操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下である場合、経過時間計測部42が、操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下となっている時間を計測する。 【0041】 さらに、ステップS12では、状態切り替え判定部46が、経過時間計測部42が計測した時間、すなわち、操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下となっている時間が、予め設定した所定の経過時間ta秒以上であるか否かを判定する。そして、操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下となっている時間が経過時間ta秒以上である場合(図中に示す「Yes」)、操舵コントローラ18が行う処理は、ステップS14へ移行する。 【0042】 一方、操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下となっている時間が経過時間ta秒未満である場合(図中に示す「No」)、操舵コントローラ18が行う処理は、ステップS10へ復帰する。 ステップS14では、ステップS12における判定結果に基づき、状態切り替え判定部46が、アイドルストップ制御信号を許可状態に切り替える。そして、状態を切り替えたアイドルストップ制御信号を、エンジンコントローラ16へ出力する。ステップS14において、許可状態のアイドルストップ制御信号を、エンジンコントローラ16へ出力すると、操舵コントローラ18が行う処理は、ステップS16へ移行する。 【0043】 ステップS16では、ステップS10と同様、操舵トルク検出部36が、操舵トルクTを検出する。ステップS16において、操舵トルク検出部36が操舵トルクTを検出すると、操舵コントローラ18が行う処理は、ステップS18へ移行する。 ステップS18では、エンジン休止検出部44が、状態切り替え判定部46が切り替えたアイドルストップ制御信号の状態と、エンジンコントローラ16が出力した情報信号を読み込む。ステップS18において、エンジン休止検出部44が情報信号を読み込むと、操舵コントローラ18が行う処理は、ステップS20へ移行する。 【0044】 ステップS20では、エンジン休止検出部44が、ステップS18で読み込んだ情報に基づいて、エンジン2が休止している(アイドルストップ中)か否かを判定する。そして、エンジン2が休止していると判定した場合(図中に示す「Yes」)、操舵コントローラ18が行う処理は、ステップS22へ移行する。 一方、エンジン休止検出部44が、エンジン2が休止していないと判定した場合(図中に示す「No」)、操舵コントローラ18が行う処理は、ステップS24へ移行する。 【0045】 ステップS22では、トルク比較部40が、操舵トルク検出部36が検出した操舵トルクTと、トルク閾値記憶部38が記憶している各閾値のうち、第二エンジン自動停止禁止トルクTc2とを比較する。そして、操舵トルクTが第二エンジン自動停止禁止トルクTc2以上である場合、経過時間計測部42が、操舵トルクTが第二エンジン自動停止禁止トルクTc2以上となっている時間を計測する。 【0046】 さらに、ステップS22では、状態切り替え判定部46が、経過時間計測部42が計測した時間、すなわち、操舵トルクTが第二エンジン自動停止禁止トルクTc2以上となっている時間が、予め設定した所定の経過時間tc2秒以上であるか否かを判定する。そして、操舵トルクTが第二エンジン自動停止禁止トルクTc2以上となっている時間が経過時間tc2秒以上である場合(図中に示す「Yes」)、操舵コントローラ18が行う処理は、ステップS26へ移行する。 【0047】 一方、操舵トルクTが第二エンジン自動停止禁止トルクTc2以上となっている時間が経過時間tc2秒未満である場合(図中に示す「No」)、操舵コントローラ18が行う処理は、ステップS16へ復帰する。 ステップS24では、トルク比較部40が、操舵トルク検出部36が検出した操舵トルクTと、トルク閾値記憶部38が記憶している各閾値のうち、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1とを比較する。そして、操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上である場合、経過時間計測部42が、操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となっている時間を計測する。 【0048】 さらに、ステップS24では、状態切り替え判定部46が、経過時間計測部42が計測した時間、すなわち、操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となっている時間が、予め設定した所定の経過時間tc1秒以上であるか否かを判定する。そして、操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となっている時間が経過時間tc1秒以上である場合(図中に示す「Yes」)、操舵コントローラ18が行う処理は、ステップS28へ移行する。 【0049】 一方、操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となっている時間が経過時間tc1秒未満である場合(図中に示す「No」)、操舵コントローラ18が行う処理は、ステップS16へ復帰する。 ステップS26では、ステップS22における判定結果に基づき、状態切り替え判定部46が、アイドルストップ制御信号を禁止状態に切り替える。そして、状態を切り替えたアイドルストップ制御信号を、エンジンコントローラ16へ出力する。ステップS26において、禁止状態のアイドルストップ制御信号を、エンジンコントローラ16へ出力すると、操舵コントローラ18が行う処理は、ステップS10へ復帰する。 【0050】 ステップS28では、ステップS24における判定結果に基づき、状態切り替え判定部46が、アイドルストップ制御信号を禁止状態に切り替える。そして、状態を切り替えたアイドルストップ制御信号を、エンジンコントローラ16へ出力する。ステップS28において、禁止状態のアイドルストップ制御信号を、エンジンコントローラ16へ出力すると、操舵コントローラ18が行う処理は、ステップS10へ復帰する。 上述したように、操舵コントローラ18は、エンジンコントローラ16から入力される、エンジン2の動作状態を示す情報信号を読み取ることによって、エンジン2の状態を検出する。」 オ 「【0055】 (動作) 次に、図1から図4を参照しつつ、図5を用いて、本実施形態のエンジン制御装置1が行なう動作の一例について説明する。 図5は、本実施形態のエンジン制御装置1を備えた車両Vの動作を示すタイムチャートである。 図5のタイムチャートは、車両Vが走行している状態、すなわち、エンジン2が回転している(作動中)状態からスタートする。 ここで、エンジン2の作動中は、トルク比較部40は、操舵トルク検出部36が検出した操舵トルクTとの比較に用いる閾値を、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1としている。 【0056】 したがって、車両Vの走行中において、操舵トルク検出部36が検出した操舵トルクTが低下して、エンジン自動停止許可トルクTa以下となると、経過時間計測部42が、操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下となっている時間を計測する。なお、図5中では、操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下となった時点を、符号「P1」により示している。 【0057】 そして、操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下となっている時間が、ta秒以上となった時点で、状態切り替え判定部46が、許可状態に切り替えたアイドルストップ制御信号を、エンジンコントローラ16へ出力する。なお、図5中では、操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下となっている時間が、ta秒以上となった時点を、符号「P2」により示している。 【0058】 このとき、操舵トルクT以外の状態が、エンジン2を休止(停止)させることができない状態である場合、状態切り替え判定部46は、アイドルストップ制御信号の出力を行わない。なお、操舵トルクT以外の状態とは、運転者によるステアリングホイール14の操舵角速度や操舵角速度の変化量、バッテリ8の充電率等である。 エンジン2の作動を継続している状態で、操舵トルクTが増加して、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となると、経過時間計測部42が、操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となっている時間を計測する。なお、図5中では、操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となった時点を、符号「P3」により示している。 【0059】 そして、操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となっている時間が、tc1秒以上となった時点で、状態切り替え判定部46が、禁止状態に切り替えたアイドルストップ制御信号を、エンジンコントローラ16へ出力する。なお、図5中では、操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となっている時間が、tc1秒以上となった時点を、符号「P4」により示している。 【0060】 ここで、時点P4では、図5中に示すように、操舵トルクT以外の状態が、エンジン2を休止させることができない状態であり、状態切り替え判定部46が、アイドルストップ制御信号を出力しておらず、エンジン2の作動が継続している。このため、時点P4において、状態切り替え判定部46が、禁止状態に切り替えたアイドルストップ制御信号を、エンジンコントローラ16へ出力した後も、エンジン2の作動は継続中である。 【0061】 そして、時点P4の後も、上記のようにエンジン2の作動を継続している状態で、操舵トルクTが低下して、エンジン自動停止許可トルクTa以下となると、経過時間計測部42が、操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下となっている時間を計測する。なお、図5中では、時点P4の後に、操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下となった時点を、符号「P5」により示している。 【0062】 そして、時点P4の後に、操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下となっている時間が、ta秒以上となった時点で、状態切り替え判定部46が、許可状態に切り替えたアイドルストップ制御信号を、エンジンコントローラ16へ出力する。なお、図5中では、時点P4の後に、操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下となっている時間が、ta秒以上となった時点を、符号「P6」により示している。 【0063】 このとき、操舵トルクT以外の状態が、エンジン2を休止させることが可能な状態である場合は、操舵トルクT以外の状態がエンジン2を休止させることができない状態である場合と異なり、状態切り替え判定部46は、アイドルストップ制御信号の出力を行う。 したがって、許可状態に切り替えられたアイドルストップ制御信号の入力を受けたエンジンコントローラ16は、エンジン2を停止させるエンジン制御信号を生成し、この生成したエンジン制御信号を、エンジン2へ出力する。 【0064】 エンジン2を停止させるエンジン制御信号の入力を受けたエンジン2は、時点P6において、運転者の操作によらずに休止(自動停止、アイドリングストップ)する。 このとき、操舵トルクTの低下に伴い、操舵支援トルクも低下している状態で、エンジン2が休止するため、エンジン2の休止により操舵支援トルクの出力が停止しても、運転者が感じる違和感は小さなものとなる。 【0065】 これにより、本実施形態のエンジン制御装置1を用いたエンジン制御方法であれば、従来と比較して、エンジン2の停止時において、運転者が受ける操舵補助の喪失ショックを低減することが可能である。 ここで、エンジン2を休止させると、トルク比較部40は、操舵トルク検出部36が検出した操舵トルクTとの比較に用いる閾値を、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1から、第二エンジン自動停止禁止トルクTc2に切り替える。 【0066】 したがって、エンジン2を休止させた状態(エンジン自動停止状態)において、操舵トルクTが増加して、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となっても、経過時間計測部42による時間の計測は行わない。なお、図5中では、エンジン2を休止させた状態において、操舵トルクTが増加して、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となった時点を、符号「P7」により示している。 【0067】 これにより、運転者が、操舵支援トルクの喪失分をステアリングホイール14に加えた場合であっても、トルク比較部40が操舵トルクTとの比較に用いる閾値が、エンジン2の作動中に用いる閾値よりも大きい値となる。このため、エンジン2を休止させた状態において、操舵トルクTが増加して、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となっても、エンジン2は始動しないため、運転者が意図していないエンジン2の再始動を抑制することが可能である。 【0068】 そして、エンジン2を休止させた状態において、操舵トルクTが増加して、第二エンジン自動停止禁止トルクTc2以上となると、経過時間計測部42が、操舵トルクTが第二エンジン自動停止禁止トルクTc2以上となっている時間を計測する。なお、図5中では、エンジン2を休止させた状態において、操舵トルクTが第二エンジン自動停止禁止トルクTc2以上となった時点を、符号「P8」により示している。 【0069】 そして、操舵トルクTが第二エンジン自動停止禁止トルクTc2以上となっている時間が、tc2秒以上となった時点で、状態切り替え判定部46が、禁止状態に切り替えたアイドルストップ制御信号を、エンジンコントローラ16へ出力する。なお、図5中では、操舵トルクTが第二エンジン自動停止禁止トルクTc2以上となっている時間が、tc2秒以上となった時点を、符号「P9」により示している。 【0070】 禁止状態に切り替えられたアイドルストップ制御信号の入力を受けたエンジンコントローラ16は、エンジン2を始動させるエンジン制御信号を生成し、この生成したエンジン制御信号を、エンジン2へ出力する。 エンジン2を始動させるエンジン制御信号の入力を受けたエンジン2は、時点P9において、エンジンスタータ4を作動させる。これにより、エンジンスタータ4は、バッテリ8から供給される電力により作動して、停止状態のエンジン2を始動させるためのクランキングを開始する。すなわち、時点P9では、運転者の操作によらずに、停止状態のエンジン2を始動させるためのクランキング(エンジンクランキング)を行う。 【0071】 時点P9においてクランキングを開始した後、例えば、エンジン2の構成やエンジンスタータ4のクランキング能力に関連した、エンジン2が始動するまでに必要な時間が経過すると、この時点において、エンジン2が回転を開始する。なお、図5中では、クランキングを開始した後に、エンジン2が回転を開始した時点を、符号「P10」により示している。 【0072】 時点P10において、エンジン2が回転を開始した後、車両Vの状態は、エンジン2の回転により走行する状態(エンジン回転状態)となる。 なお、上述したように、本実施形態のエンジン制御装置1の動作で実施するエンジン制御方法は、エンジン2が休止しているか否かと、運転者がステアリングホイール14へ加える操舵トルクTに応じて、エンジン2を休止または再始動させる方法である。 【0073】 具体的には、エンジン2が休止しておらず、さらに、運転者がステアリングホイール14へ加える操舵トルクTが、第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上である場合に、エンジン2の作動を継続させる方法である。これに加え、エンジン2が休止しており、さらに、運転者がステアリングホイール14へ加える操舵トルクTが、第二エンジン自動停止禁止トルクTc2以上である場合に、エンジン2を再始動させる方法である。 【0074】 ここで、エンジンコントローラ16及び操舵コントローラ18は、エンジン制御手段に対応しており、操舵トルクセンサ28は、操舵トルク検出手段に対応している。 また、車速センサ30は、車速検出手段に対応しており、モータ状態検出センサ32は、モータ状態検出手段に対応している。 また、状態検出センサ34は、各種状態検出手段に対応しており、エンジン休止検出部44は、エンジン休止検出手段に対応している。」 以上から、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「エンジン2を停止可能な内容の信号であればエンジン2を停止させるエンジン制御信号を生成し、エンジン2を停止不可能な内容の信号であればエンジン2を始動させるエンジン制御信号を生成するエンジン制御装置1であって、 アイドルストップ車両の操舵トルクTを検出する操舵トルク検出部36と、 操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下となっている時間が経過時間ta秒以上である場合に前記操舵トルク検出部36により検出された操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上になると、前記操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となっている時間がtc1秒以上となったときに禁止状態に切り替えたアイドルストップ制御信号を出力する操舵コントローラ18とを有するエンジン制御装置1。」 2 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「エンジン制御装置1」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「アイドルストップ制御装置」に相当し、以下同様に「エンジン2」は「エンジン」に、「アイドルストップ車両」は「車両」に、「操舵トルクT」は「操舵部材の操作量」及び「操作量」に、「検出」は「取得」に、「操舵トルク検出部36」は「操作量取得部」に、「第一エンジン自動停止禁止トルクTc1」は「判定閾値」に、「tc1秒」は「規定時間」に、「操舵コントローラ18」は「制御部」にそれぞれ相当する。 後者の「エンジン2を停止可能な内容の信号であれば」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「自動停止条件が成立したとき」に相当し、以下同様に「エンジン2を停止させるエンジン制御信号を生成し」は「エンジンを自動停止させ」に、「エンジン2を停止不可能な内容の信号であれば」は「再始動条件が成立したとき」に、「エンジン2を始動させるエンジン制御信号を生成する」は「エンジンを再始動させる」に、「禁止状態に切り替えたアイドルストップ制御信号を出力する」は「エンジンの自動停止を禁止する」にそれぞれ相当する。 後者の「操舵トルクTがエンジン自動停止許可トルクTa以下となっている時間が経過時間ta秒以上である場合」は前者の「自動停止条件が成立していないとき」に相当し、同様に「第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上になると」は「判定閾値を超えた場合」に相当する。 そして、後者の「操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となっている時間がtc1秒以上となったとき」と前者の「前記操作量が判定閾値を超え、その後、前記操作量が判定しきい値を超える状態が継続した状態で規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定を中断し、前記操作量が判定閾値を超えた状態で規定時間継続したとき」とは、「前記操作量が判定閾値を超えた状態で規定時間継続したとき」という限りで一致する。 したがって、両者は、 「自動停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させ、再始動条件が成立したときに前記エンジンを再始動させるアイドルストップ制御装置であって、 車両の操舵部材の操作量を取得する操作量取得部と、 前記自動停止条件が成立していないときに前記操作量取得部により取得された操作量が判定閾値を超えた場合、前記操作量が判定閾値を超えた状態で規定時間継続したときに前記エンジンの自動停止を禁止する制御部とを有するアイドルストップ制御装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 操作量取得部により取得された操作量が判定閾値を超えた場合、前者は「前記操作量が判定閾値を超え、その後、前記操作量が判定しきい値を超える状態が継続した状態で規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定を中断し」、前記操作量が判定閾値を超えた状態で規定時間継続したときに前記エンジンの自動停止を禁止するものであるのに対し、後者は、操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となっている時間がtc1秒以上となったときに禁止状態に切り替えたアイドルストップ制御信号を出力するもので、「前記操作量が判定閾値を超え、その後、前記操作量が判定しきい値を超える状態が継続した状態で規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定を中断し」に係る事項を備えていない点。 [相違点2] 前者は、「制御部は、前記操作量が判定閾値を超えたときの車速が低いほど前記規定時間が長くなるよう前記規定時間を設定する」ものであるのに対し、後者はかかる事項を備えていない点。 3 判断 上記相違点について検討する。 相違点1について検討するに、自動停止条件が成立したか否かの判定を中断することは、アイドリングストップ車両において、車両の状況、外気等の状態に応じて当業者が通常の創作能力の範囲で適宜採用し得ることである。 してみると、相違点1に係る本願発明の発明特定事項である「前記操作量が判定閾値を超え、その後、前記操作量が判定しきい値を超える状態が継続した状態で規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定を中断し」は、第4、及び第5で上述したとおり、その技術的意義及び記載の内容が不明な事項を含むものの、引用発明において、当業者の通常の創作能力の範囲で適宜設計変更を行い、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、容易に想到し得たことである。 なお、「前記操作量が判定閾値を超え、その後、前記操作量が判定しきい値を超える状態が継続した状態で規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定を中断し」の意図について、請求人は意見書において「本願発明は、ステアリング装置の操作量が判定閾値よりも大きいと判定されてから、そのステアリング装置の操作量が判定閾値よりも大きい状態が規定時間継続する場合に、エンジンの自動停止の禁止を行うものです。この際、ステアリング装置の操作量が判定閾値を超える状態が継続しており、規定時間が未経過である場合は、ステップS6→ステップS7→ステップS8の処理を繰り返して、ステップS9への移行を行いません。これが請求項1の『規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定を中断し、』の処理となります。」と主張する。そこで、当該主張を踏まえてさらに検討する。 引用文献1の段落【0058】の「経過時間計測部42が、操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となっている時間を計測する。」との記載及び【0059】の「操舵トルクTが第一エンジン自動停止禁止トルクTc1以上となっている時間が、tc1秒以上となった時点で、状態切り替え判定部46が、禁止状態に切り替えたアイドルストップ制御信号を、エンジンコントローラ16へ出力する。」との記載(1 オを参照。)からみて、引用発明もまた、「前記操作量が判定閾値を超え、その後、前記操作量が判定しきい値を超える状態が継続した状態で規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定を中断し」に係る事項を備えているといえる。 そうすると、請求人の主張を踏まえて検討する場合、相違点1は実質的な相違ではない。 相違点2について検討するに、アイドリングストップ車両において、運転の状況に応じてエンジンの自動停止条件を設定することは、当業者の通常の創作能力の範囲で適宜なし得たことである。 してみると、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、第4、及び第5で上述したとおり、その技術的意義あるいは技術的意味が不明な事項を含むものの、引用発明において、当業者の通常の創作能力の範囲で相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、容易になし得たことである。 また、本願発明は、全体としてみても、引用発明から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。 したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 意見書における請求人の主張について 請求人は意見書において、 「すなわち、引用例1には本願発明の前記構成要件c)、d)を示唆するいかなる記載もなく、本願発明と引用例1に記載のものとはこの点で構成が顕著に相違します。このため該引用例に記載のものから本願発明の前記作用効果イ)を期待することはできません。 したがって、本願発明は構成および作用効果において引用例1に記載されたものとは顕著な差異を有しています。」と主張している。 しかしながら、構成要件c)(「前記自動停止条件が成立していないときに前記操作量取得部により取得された操作量が判定閾値を超えた場合、前記操作量が判定閾値を超え、その後、前記操作量が判定閾値を超える状態が継続した状態で規定時間経過するまでの間は前記自動停止条件が成立したか否かの判定を中断し、前記操作量が判定閾値を超えた状態で規定時間継続したときに前記エンジンの自動停止を禁止する制御部とを有し、」)については第4、及び第5 1において上述したように、意見書における主張を参酌しても、その技術的意義及び記載の内容が不明であって、特有の作用効果を奏するかも明らかでない事項といえる。 同様に、構成要件d)(「前記制御部は、前記操作量が判定閾値を超えたときの車速が低いほど前記規定時間が長くなるよう前記規定時間を設定する」)についても、第4、及び第5 2において上述したように、意見書の主張を参酌しても、技術的意義及び技術的意味が不明であり、特有の作用効果を奏するかも明らかでない事項といえる。 してみると、引用発明が本願発明の構成要件c)及びd)を備えない点で相違するとしても、上述したとおりこれら構成要件c)及びd)の技術的意義及び記載が不明であり、さらに、アイドルストップ装置のような装置において、制御内容および制御を行う際の条件を制御目的に応じて最適化することは当業者の通常の創作能力の範囲で適宜行われるものであるから、当該相違は、相違点1及び相違点2における検討で上述したとおり、引用発明の構成及び効果を踏まえ、当業者の通常の創作能力の範囲でなし得た程度のものといえる。 したがって、意見書における請求人の主張は当を得ない。 5 小括 したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第6 まとめ 以上のとおり、本願の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号に規定される経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)で定めるところにより記載されたものではないから、本願は拒絶をすべきものである。 また、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶をすべきものである。 さらに、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-03-12 |
結審通知日 | 2020-03-17 |
審決日 | 2020-05-08 |
出願番号 | 特願2014-214344(P2014-214344) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(F02D)
P 1 8・ 536- WZ (F02D) P 1 8・ 121- WZ (F02D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 戸田 耕太郎 |
特許庁審判長 |
金澤 俊郎 |
特許庁審判官 |
鈴木 充 渡邊 豊英 |
発明の名称 | アイドルストップ制御装置 |
代理人 | 特許業務法人日誠国際特許事務所 |