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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1363702
審判番号 不服2018-6678  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-16 
確定日 2020-07-01 
事件の表示 特願2015-561924「パイロット信号を決定するシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月18日国際公開、WO2014/139435、平成28年 6月 9日国内公表、特表2016-517200〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2014年(平成26年)3月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年3月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年10月28日 手続補正書の提出
平成28年 9月 8日付け 拒絶理由通知書
平成28年12月13日 意見書、手続補正書の提出
平成29年 4月28日付け 拒絶理由通知書
平成29年 8月 9日 意見書の提出
平成29年12月28日付け 拒絶査定
平成30年 5月16日 拒絶査定不服審判の請求、
手続補正書の提出
令和 1年 6月12日付け 拒絶理由通知書(当審)
令和 1年 9月17日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願の特許請求の範囲に記載された発明
令和1年9月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。

「 パイロット信号を構成する方法であって、
通信コントローラが、特性セットに従って所定のパイロット信号配置セットから選択された決定パイロット信号配置を有するパイロット信号を送信するステップを有し、
前記所定のパイロット信号配置セットは、定義された第1及び第2パイロット信号配置を含み、前記定義された第1パイロット信号配置は第1OFDMシンボル数を含む第1TTI長と関連付けされ、前記定義された第2パイロット信号配置は、前記第1OFDMシンボル数とは異なる第2OFDMシンボル数を含む第2TTI長と関連付けされ、時間領域における前記定義された第1パイロット信号配置のパイロット密度は、前記時間領域における前記第2パイロット信号配置のパイロット密度とは異なり、前記特性セットは、ユーザ装置に割り当てられたリソースブロックのサイズ又は送信タイプを含み、前記送信タイプは、結合送信(JT)又は非JTである方法。」

第3 拒絶の理由
平成30年5月16日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に関して、令和1年6月12日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、「1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」であり、具体的には以下のとおりである。

「1.(略)

2.(略)

(1)所定のパイロット信号配置セットが、「定義された第1及び第2パイロット信号配置」以外のパイロット信号配置を含まない場合について検討すると、請求項1には、「前記定義された第1パイロット信号配置は第1シンボル数を含む第1TTI長と関連付けされ、前記定義された第2パイロット信号配置は異なる第2シンボル数を含む第2TTI長と関連付けされ」と記載されているから、本願発明は、ユーザ装置に割り当てられた時間周波数リソースユニットのサイズ又は送信タイプを含む特性セットに従って、第1TTI長及び第2TTI長と関連付けられた「定義された第1及び第2パイロット信号配置」を決定パイロット信号配置として選択するものであると認められる。
ここで、発明の詳細な説明の段落[0023]及び図8には、RBサイズや送信タイプを含む特性セットに従って決定されるパイロット信号配置は、周波数領域におけるパイロット密度の異なるパイロット信号配置であることが記載されている。また、段落[0024]及び図9には、TTI長に関連付けられたパイロット信号配置が、時間領域におけるパイロット信号配置であることが記載されている。周波数領域におけるパイロット密度と時間領域におけるパイロット密度とが関連付けされることが出願時の技術常識であるとはいえないから、ユーザ装置に割り当てられた時間周波数リソースユニットのサイズ又は送信タイプを含む特性セットに従って、第1TTI長及び第2TTI長と関連付けられた「定義された第1及び第2パイロット信号配置」を決定パイロット信号配置として選択することは、発明の詳細な説明に記載されていない。(サポート要件)

(2)所定のパイロット信号配置セットが、「定義された第1及び第2パイロット信号配置」以外のパイロット信号配置を含む場合について検討すると、請求項1には「所定のパイロット信号配置セット」が、他にどのようなパイロット信号配置セットを含むのか記載されておらず、周波数領域におけるパイロット密度の異なるパイロット信号配置を含むことが特定されていない。よって、「より良好なスループット及びスペクトル効率が実現されうる」という発明の課題を解決するための手段が反映されていない。
したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。(サポート要件)

3.-6.(略)」

第4 当審の判断
1.本願の発明の詳細な説明の記載

本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。(下線は当審が付与した。)

「【0012】
従来のLTEシステムでは、大きなリソース量であるダウンロードリソースの約7%又は14%を消費する固定的なパイロット密度がある。可変的なパイロット密度は、通常はより少ないダウンロードリソースを消費すべきである。
【0013】
図1は、x軸が時間を表し、y軸が周波数を表す周波数領域におけるパイロット密度の3つの具体例を示す。暗いブロックはパイロットが送信されているシンボルを表す。高周波数密度100は3/12の直交周波数分割多重(OFDM)トーンの密度を有し、中密度102は2/12のOFDMトーンの密度を有し、低密度104は1/12のOFDMトーンの密度を有する。同様に、図2は、時間領域におけるパイロット密度の3つの具体例を示す。高時間密度110は4/14のOFDMシンボルの密度を有し、中時間密度112は2/14のOFDMシンボルの密度を有し、低密度114は1/14のOFDMシンボルの密度を有する。
【0014】
具体例では、周波数領域及び/又は時間領域におけるパイロット密度は、同じ基準を用いて通信コントローラ及びユーザ装置の双方によって独立して決定され、従って、それらは同じパイロット密度を決定する。通信コントローラ及びユーザ装置のパイロット密度は、通信コントローラとユーザ装置との間でパイロット密度を通信することなく決定されてもよい。パイロット密度を決定するのに利用される特性は、通信コントローラとユーザ装置との間で通信されてもよい。
【0015】
通信コントローラは、通信システムにおいて行われる通信を規制するよう構成される装置であってもよい。通信コントローラの具体例は、進化型ノードB(eNB)、eNBに結合され、制御するスイッチ、基地局、送信ポイント、リモート無線ヘッド、通信コントローラ、コントローラなどを含む。また、ユーザ装置の具体例は、移動局、加入者、ユーザ、端末、電話などを含む。
【0016】
適応的なパイロット密度は、通常はパイロット密度を減少させる。時間及び周波数領域においてパイロット密度を減少させることによって、より多くのリソースエレメント(RE)がデータ送信のため利用されうる。従って、より良好なスループット及びスペクトル効率が実現されうる。図3は、スペクトル効率対信号対ノイズ比(SNR)のグラフを示す。図3に示される具体例では、5つのリソースブロック(RB)、4つの通信コントローラのアンテナ、4つのユーザ装置のアンテナ、閉ループ空間多重(CLSM)、1つのレイヤ及びペデストリアンタイプB(PB)チャネルがある。曲線190は固定的なパイロット密度によるシステムのスペクトル効率を示し、曲線192は適応的なパイロット密度によるシステムのスペクトル効率を示す。以下の表1は、時間及び周波数領域における固定的なパイロット密度と比較して、適応的なパイロット密度からのパイロット密度ゲインを示す。ベースラインは高時間密度及び高周波数密度である。周波数領域における高パイロット密度について、時間領域において高パイロット密度による0.0%のゲイン、時間領域において中パイロット密度による12.1%のゲイン、及び時間領域において低パイロット密度による18.1%のゲインがある。また、周波数領域における中パイロット密度について、時間領域において高パイロット密度による3.4%のゲイン、時間領域において中パイロット密度による13.8%のゲイン、及び時間領域において低パイロット密度による19.1%のゲインがある。さらに、周波数領域における低パイロット密度について、時間領域において高パイロット密度による6.9%のゲイン、時間領域において中パイロット密度による15.5%のゲイン、及び時間領域において低パイロット密度による19.8%のゲインがある。
【表1】(略)
【0017】
パイロット密度は、周波数領域のみ、時間領域のみ又は時間及び周波数領域の双方において適応的であってもよい。パイロット密度は、複数の方法により通信コントローラとユーザ装置との間で通信されてもよい。一例では、通信コントローラが、パイロット密度を決定し、送信の全てのスタート時間においてパイロット密度をユーザ装置に送信する。他の例では、ユーザ装置が、パイロット密度を決定し、送信の全てのスタート時間にパイロット密度を通信コントローラに送信する。あるいは、通信コントローラ及びユーザ装置は、所定のパイロットコンフィギュレーションセットに基づき同じ決定手順を共有する。通信コントローラ及びユーザ装置は、当該手順を独立に実行してもよく、ここでは、送信の全てのスタート時間においてはシグナリングが行われるとは限らない。一実施例では、パイロット密度はツリー構造に基づき決定される。他の実施例では、パイロット密度は、ルックアップテーブル(LUT)を用いて決定されてもよい。ネットワーク及び通信コントローラは、頻繁なシグナリング又はフィードバックオーバヘッドなく、共通の決定手順を共有することによってパイロット密度を決定してもよい。具体例では、通信コントローラ及びユーザ装置の双方は、パイロット密度を通知することなくパイロット密度を独立に決定する。通信コントローラ又はユーザ装置の何れかが、パイロット密度を決定するのに用いられる手順を初期的に設定し、当該手順を初期的に送信してもよい。通信コントローラ及びユーザ装置が当該手順を有した後、それらの双方は同じ特性に基づきパイロット密度を独立に決定し、結果として同じパイロット密度を有することができる。通信コントローラ及びユーザ装置は、パイロット密度を決定するのに用いられる特性を送信してもよい。
【0018】
図4は、パイロット密度を適応的に決定するシステム120を示す。システム120は、ユーザ装置122及び通信コントローラ124を有する。ユーザ装置122はメッセージを通信コントローラ124に送信し、通信コントローラ124はメッセージをユーザ装置122に送信し、パイロット密度を決定するのに利用されてもよい特性を交換する。パイロット密度を決定するのにシステム120により用いられるファクタは、ネットワークファクタ、ユーザ装置ファクタ及び環境ファクタを含む。ネットワークファクタは、送信タイプ、ユーザ装置の割り当てられたリソースブロック(RB)サイズ、変調符号化方式(MCS)レベル及びユーザ装置の割り当てられたTTI長の1以上を含む。ユーザ装置ファクタは、ユーザ装置のモビリティ及びユーザ装置のチャネル推定能力を含む。ユーザ装置のチャネル推定能力に影響を与えるファクタは、ユーザ装置のアンテナ数及びユーザ装置により利用されるチャネル推定アルゴリズムを含む。環境ファクタは、チャネル遅延スプレッドを含む。
【0019】
図5は、通信コントローラによるパイロット信号配置を適応的に決定する方法を示すフローチャート200を示す。まず、ステップ201において、パイロット信号配置プール及び手順が通信コントローラにより定義される。例えば、パイロット信号配置プールは、時間領域、周波数領域又は時間領域と周波数領域との双方における高パイロット密度配置、中パイロット密度配置及び低パイロット密度配置を含むものであってもよい。パイロット信号配置手順は、ルックアップテーブル(LUT)又はツリー決定構造であってもよい。当該手順は、特性セットを利用してパイロット密度を決定する。当該特性セットは、ユーザ装置により決定される値を有する第1特性サブセットと、通信コントローラにより決定される値を有する第2特性サブセットとに分割できる。それから、通信コントローラは、ステップ202において、第2特性サブセットの値を決定する。ステップ204において、ユーザ装置は、第1特性サブセットの値を決定し、通信コントローラにフィードバックしてもよい。次に、ステップ182において、通信コントローラは、パイロット信号配置手順及び特性を利用して、パイロット信号配置プールからパイロット信号配置を決定する。パイロット信号配置を決定した後、通信コントローラは、ステップ206において、パイロット信号配置をユーザ装置に通知する。それから、ステップ208において、通信コントローラは、パイロット信号をユーザ装置に送信する。最後に、ステップ210において、ユーザ装置は、ユーザ装置から受信したパイロット信号に基づき信号を検出する。
【0020】
図6は、ユーザ装置によるパイロット信号配置を適応的に決定する方法のフローチャート220を示す。まず、ステップ221において、ユーザ装置は、パイロット信号配置プール及び手順を定義する。それから、ステップ222において、ユーザ装置は、パイロット信号手順により使用されるべき第1特性サブセットの値を決定する。通信コントローラは、第2特性サブセットの値を決定し、ユーザ装置に通知してもよい。次に、ステップ178において、ユーザ装置は、パイロット信号配置手順及び特性を利用して、パイロット信号配置プールからパイロット信号配置を決定する。パイロット信号配置を決定した後、ユーザ装置は、ステップ226において、パイロット信号配置を通信コントローラにフィードバックする。それから、ステップ208において、通信コントローラは、パイロット信号をユーザ装置に送信する。最後に、ステップ210において、ユーザ装置は、受信したパイロット信号に基づき信号を検出する。
【0021】
図7は、パイロット信号配置を適応的に決定する方法を示すフローチャート170を示す。まず、ステップ172において、パイロット信号配置プール及び手順が定義される。これは、通信コントローラ、ユーザ装置又は双方により実行されてもよい。パイロット信号手順は、パイロット信号配置がパイロット信号配置プールセットからどのように選択されるかを定義する。例えば、パイロット信号配置プールは、周波数領域と時間領域との双方において高密度配置、中密度配置及び低密度配置を含むものであってもよい。それから、ステップ174において、パイロット信号配置及び手順を定義したノードは、他のノードとパイロット信号配置プール及び手順を共有する。例えば、ユーザ装置がパイロット信号配置プール及び手順を定義した場合、ユーザ装置はそれらを通信コントローラに送信する。しかしながら、通信コントローラがパイロット信号配置プール及び手順を決定した場合、通信コントローラはそれらをユーザ装置に送信する。
【0022】
それから、ステップ176において、通信コントローラは特性を決定し、ユーザ装置に通知し、ステップ178において、ユーザ装置は、パイロット信号配置プール、パイロット信号配置手順及び特性に基づきパイロット信号配置を決定する。また、ステップ180において、ユーザ装置は特性を決定し、通信コントローラにフィードバックする。次に、ステップ182において、通信コントローラは、特性、パイロット信号配置プール及び手順に基づきパイロット配置を決定する。従って、通信コントローラ及びユーザ装置は、パイロット信号配置を直接通信することなく、同一のパイロット信号配置手順、パイロット信号配置プール及び特性を利用するため、送信の必ずしも全てのスタート時間においてパイロット信号配置を直接通信することなく、同一のパイロット信号配置を決定してもよい。一例では、ステップ176及びステップ180の一方しか実行されない。あるいは、ステップ176及びステップ180の双方が実行される。それから、ステップ184において、通信コントローラはパイロット信号配置をユーザ装置に送信する。最後に、ステップ186において、ユーザ装置は、受信したパイロット信号に基づき信号を検出する。
【0023】
一実施例では、周波数領域パイロット密度は、チャネル遅延スプレッド、送信タイプ、通信コントローラの能力、RBサイズ及びMCSレベルに基づき決定される。周波数領域パイロット密度はツリー構造を用いて決定されてもよい。あるいは、周波数領域パイロット密度は、LUTを用いて決定されてもよい。図8は、周波数領域においてパイロット密度を決定するのに利用可能なツリー構造を示す。あるいは、他の決定木又はLUTが利用されてもよい。まず、ステップ130において、チャネル遅延スプレッドが決定される。チャネル遅延スプレッドが、例えば、7μsより大きい二乗平均平方根(RMS)など長い場合、高パイロット密度144が利用される。しかしながら、チャネル遅延スプレッドが、例えば、7μs以下のRMS値など短いとき、ステップ132において、送信タイプが更に評価される。ステップ132において、送信タイプが結合送信(JT)であるとき、高パイロット密度144が利用され、送信タイプがJT送信でないとき、ステップ134において、通信コントローラの能力が更に評価される。それから、ステップ134において、通信コントローラの能力が普通であるとき、ステップ136において、RBサイズが更に評価される。ステップ136において、RBサイズが小さいと判断された場合、例えば、RBサイズが5RB以下である場合、高パイロット密度144が利用される。しかしながら、ステップ136において、RBサイズが大きいと判断された場合、例えば、RBサイズが5RBより大きい場合、中パイロット密度146が利用される。ステップ134において決定された通信コントローラの能力が強い場合、ステップ138において、RBサイズが決定される。ステップ138において、RBサイズが小さいと判断されると、ステップ140において、MCSレベルが評価され、ステップ138において、RBサイズが大きいと判断されると、ステップ142において、MCSレベルが評価される。ステップ140において、MCSレベルが64-QAM又は16-QAMである場合、中パイロット密度146が利用され、MCSレベルがQPSKである場合、低パイロット密度148が利用される。しかしながら、ステップ142において、MCSレベルが64-QAMである場合、中パイロット密度146が利用され、MCSレベルがQPSK又は16-QAMである場合、低パイロット密度148が利用される。
【0024】
あるいは、時間領域パイロット密度がLUTを用いて決定されてもよい。図9は、時間領域パイロット密度を決定するのに用いられるLUTを示すテーブル150を示す。しかしながら、他のLUT又はツリー構造が、時間領域パイロット密度を決定するのに利用されてもよい。ユーザ装置のモビリティが低く、TTI長が長いとき、低パイロット密度が利用される。例えば、低モビリティユーザ装置は固定的又は移動的であり、30km/時未満の速度で移動するかもしれない。高モビリティユーザ装置は、30km/時以上の速度で移動するかもしれない。具体例では、長いTTI長は56個のOFDMシンボルを有し、中程度のTTI長は28個のOFDMシンボルを有し、短いTTI長は14個のOFDMシンボルを有する。ユーザ装置のモビリティが低く、TTI長が中程度又は短いとき、中パイロット密度が利用される。また、ユーザ装置のモビリティが高く、TTI長が長いとき、中パイロット密度が利用される。しかしながら、ユーザ装置のモビリティが高く、TTI長が中程度又は短いとき、高パイロット密度が利用される。
【0025】
具体例では、ユーザ装置がネットワークに入ると、それはそれのチャネル推定能力をネットワークに送信する。全てのデータ送信において、ネットワークがMCSレベル及びRBサイズを決定した後、通信コントローラはパイロット密度を決定してもよい。ユーザ装置が、例えば、物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)などからMCSレベル及びRBサイズを知った後、ユーザ装置はパイロット密度を決定してもよい。さらに、送信モードなどの明示的なシグナリング情報が、密度決定に役立つよう利用されてもよい。ユーザ装置は、パイロット密度に基づきデータを復調してもよい。
【0026】
ユーザ装置は、それが結合送信によりサービス提供される可能性があることに気付いてもよい。結合送信を可能にするため、ユーザ装置のフィードバックは、例えば、ユーザ装置のフィードバック及び通信コントローラ間のフィードバックなどに基づく特別なモードを有する。結合送信モードがネットワークにより設定されると、通信コントローラは、それが結合送信によりサービス提供される可能性があることを知る。
【0027】
チャネル遅延スプレッドは、主として通信コントローラの周囲の環境により決定される。通信コントローラの近傍のユーザ装置は同様のチャネル遅延スプレッドを有する。通信コントローラは、全ての近傍のユーザ装置からのチャネル遅延スプレッドを平均することによって共通のチャネル遅延スプレッドを推定してもよい。例えば、通信コントローラは、ユーザ装置のアップリンク信号のサイクリックプリフィックス(CP)に基づきチャネル遅延スプレッドを推定してもよい。1つの通信コントローラにより受信される全てのユーザ装置からのアップリンク信号に基づき、通信コントローラは、チャネル遅延スプレッドを推定し、それのカテゴリを決定してもよい。通信コントローラは、多数のユーザ装置のアップロード信号を累積し、チャネルランダム性を平均し、良好なチャネル遅延スプレッド推定を取得できる。推定後、チャネル遅延スプレッドは通信コントローラに記憶可能である。チャネル遅延スプレッドは必要に応じて更新されてもよい。【0028】 ユーザ装置のチャネル推定能力は、普通又は強力としてカテゴリ化されてもよい。ユーザ装置は、例えば、チャネル推定による信号対ノイズ比(SNR)損失などに基づき、標準的な方法又は指標に基づき自らの能力を決定してもよい。
【0029】
ユーザ装置のモビリティ及びTTI長は、時間領域においてパイロット密度に影響を与える。ユーザ装置が低モビリティを有するとき、通信コントローラは時間領域においてパイロット密度を低下させることができる。ユーザ装置が低モビリティを有するとき、それのチャネルは経時的にゆっくりと変化し、時間領域におけるパイロット密度は低下可能である。長いTTI長によると、より低いパイロット密度によってさえ良好なチャネル推定が時間補間により依然として実現される。」

図8は以下のとおりである。


図9は以下のとおりである。


2.発明の詳細な説明に発明として記載されたもの

上記「1.」の段落【0012】、【0016】、【0017】によれば、発明の詳細な説明に記載された発明は、可変的なパイロット密度を提供するという課題を有するものであるといえ、そして、そのような課題を解決するために、周波数領域のみ、時間領域のみ又は時間及び周波数領域の双方において、パイロット密度を適応的とするものであるといえる。
具体的には、段落【0024】、【0029】及び図9によれば、ユーザ装置のモビリティ及びTTI長に基づき、時間領域におけるパイロット密度を決定することが示されている。
また、段落【0023】及び図8によれば、チャネル遅延スプレッド、結合送信(JT)であるかJTでないかに関する送信タイプ、通信コントローラの能力、RBサイズ及びMCSレベルに基づき、周波数領域におけるパイロット密度を決定することが示されている。

3.請求項1に係る発明

請求項1の「前記定義された第1パイロット信号配置は第1OFDMシンボル数を含む第1TTI長と関連付けされ、前記定義された第2パイロット信号配置は、前記第1OFDMシンボル数とは異なる第2OFDMシンボル数を含む第2TTI長と関連付けされ、時間領域における前記定義された第1パイロット信号配置のパイロット密度は、前記時間領域における前記第2パイロット信号配置のパイロット密度とは異なり」との事項から、「定義された第1パイロット信号配置」と「定義された第2パイロット信号配置」とは、TTI長が異なり、かつ、時間領域におけるパイロット密度が異なることが特定されていると認められる。

また、請求項1の「前記所定のパイロット信号配置セットは、定義された第1及び第2パイロット信号配置を含み」との記載は、所定のパイロット信号配置セットが、「定義された第1及び第2パイロット信号配置」以外のパイロット信号配置を含むのか否か特定していない。したがって、請求項1は下記(1)、(2)を含むと認められる。

(1)所定のパイロット信号配置セットが、「定義された第1及び第2パイロット信号配置」以外のパイロット信号配置を含まない場合

(2)所定のパイロット信号配置セットが、「定義された第1及び第2パイロット信号配置」以外のパイロット信号配置を含む場合

4.当審拒絶理由の「2.」「(1)」(サポート要件)について

上記「3.」の(1)所定のパイロット信号配置セットが、「定義された第1及び第2パイロット信号配置」以外のパイロット信号配置を含まない場合について検討する。
請求項1に係る発明は、ユーザ装置に割り当てられたリソースブロックのサイズ又は送信タイプを含む特性セットに従って、TTI長が異なり、かつ、時間領域におけるパイロット密度が異なる「定義された第1及び第2パイロット信号配置」セットから、決定パイロット信号配置を選択するものであると認められる。
ここで、上記「2.」のとおり、発明の詳細な説明に発明として記載されたものは、ユーザ装置のモビリティ及びTTI長に基づき、時間領域におけるパイロット密度を決定すること、及び、チャネル遅延スプレッド、結合送信(JT)であるかJTでないかに関する送信タイプ、通信コントローラの能力、RBサイズ及びMCSレベルに基づき、周波数領域におけるパイロット密度を決定することであり、ユーザ装置に割り当てられたリソースブロックのサイズ又は送信タイプを含む特性セットに従って、TTI長が異なり、かつ、時間領域におけるパイロット密度が異なる「定義された第1及び第2パイロット信号配置」セットから決定パイロット信号配置を選択することは、発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。
したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであって、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない。

5.当審拒絶理由の「2.」「(2)」(サポート要件)について

上記「3.」の(2)所定のパイロット信号配置セットが、「定義された第1及び第2パイロット信号配置」以外のパイロット信号配置を含む場合について検討する。
請求項1の「前記特性セットは、ユーザ装置に割り当てられたリソースブロックのサイズ又は送信タイプを含み、前記送信タイプは、結合送信(JT)又は非JTである」との記載及び発明の詳細な説明の段落【0023】の記載から、上記「2.」で述べた、可変的なパイロット密度を提供するという課題を解決する手段は、リソースブロックのサイズ又は送信タイプに基づき、周波数領域におけるパイロット密度を決定することと認める。

しかしながら、請求項1には、「所定のパイロット信号配置セット」が、「第1TTI長」「第2TTI長」と関連付けされること、すなわち、時間領域におけるパイロット密度と関連付けされることは記載されているものの、周波数領域におけるパイロット密度と関連付けられた「所定のパイロット信号配置セット」は記載されておらず、さらに、上記した課題を解決する手段である、リソースブロックのサイズ又は送信タイプに基づき、周波数領域におけるパイロット密度を決定することも記載されていない。
このため、請求項1は発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなるものであって、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない。

[請求人の主張について]
当審拒絶理由の「2.」について、請求人は、令和1年9月17日に提出された意見書において、「明細書の記載から、図8及び図9は必ずしも組み合わせて用いられる必要がないことは明確であるものと思料します。すなわち、周波数領域においてパイロット密度が異なることは必須の構成要件ではありません。したがって、補正後の請求項に記載の発明は、図9及び対応する発明の詳細な説明に記載されており、明確であるものと思料します。」と主張している。
しかし、まず、当審拒絶理由において、図8及び図9を組み合わせて用いる必要性については指摘していない。
本願の請求項1に係る発明において、「決定パイロット信号配置」は「特性セットに従って所定のパイロット信号配置セットから選択され」るものであり、上記「4.」の項で検討したとおり、本願の請求項1の、ユーザ装置に割り当てられたリソースブロックのサイズ又は送信タイプを含む特性セットに従って、TTI長が異なり、かつ、時間領域におけるパイロット密度が異なる「定義された第1及び第2パイロット信号配置」セットから決定パイロット信号配置を選択することは、図9及び対応する発明の詳細な説明を含む本願の明細書等に記載されておらず、また、自明な事項でもない。
よって、「補正後の請求項に記載の発明は、図9及び対応する発明の詳細な説明に記載されており、明確であるものと思料します。」との主張は採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-01-27 
結審通知日 2020-01-28 
審決日 2020-02-13 
出願番号 特願2015-561924(P2015-561924)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 真治▲郎▼  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 本郷 彰
原田 聖子
発明の名称 パイロット信号を決定するシステム及び方法  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  

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