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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  C03C
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  C03C
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C03C
審判 全部申し立て 特29条の2  C03C
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  C03C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C03C
管理番号 1363970
異議申立番号 異議2018-701055  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-27 
確定日 2020-05-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6351626号発明「可塑剤含有ポリビニルアセタールより成る中間層フィルムを含有する蛍光ディスプレイ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6351626号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?15〕について訂正することを認める。 特許第6351626号の請求項1?15に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6351626号は、2014年(平成26年)1月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年1月11日 ドイツ(DE))を国際出願日とする特願2015-552055号の特許請求の範囲に記載された請求項1?15に係る発明について、平成30年6月15日に特許権の設定登録がされ、同年7月4日に特許掲載公報の発行がされたものであり、その後、その全請求項に係る特許に対して、同年12月27日付けで特許異議申立人森谷晴美(以下、「申立人」という。)により、甲第1?14号証を証拠方法とする特許異議の申立てがされ、平成31年3月13日付けで取消理由が通知され、令和元年6月3日に特許権者代理人との面接が行われ、さらに訂正案についての応対がされた後、指定期間内である同年6月13日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年8月1日付けで申立人より甲第15?18号証を添付した意見書の提出がされ、同年9月26日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、訂正案についての応対がされた後、指定期間内である令和2年1月6日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、令和2年1月15日に特許権者代理人との面接が行われたものである。
なお、本件訂正請求について、申立人に期間を指定して意見を求めたが応答はなかった。

(証拠方法)
甲第1号証:特開2008-285389号公報
甲第2号証:眞崎宏明ら「自動車用高性能UVカットコート強化ガラス」旭硝子研究報告(Res.Reports Asahi Glass Co.,Ltd.),61(2011)、3?9頁
甲第3号証:小平広和「自動車用高性能紫外線カットコート強化ガラス」NEW GLASS Vol.27 No.104 2012、70?74頁
甲第4号証:松堂真樹ら「(7)合わせガラス用機能性中間膜」日本接着学会誌、Vol.50 No.8(2014)、273?279頁
甲第5号証:国際公開2012/010444号
甲第6号証:国際公開2012/038170号
甲第7号証:特開2011-202144号公報
甲第8号証:特開2005-206453号公報
甲第9号証:特表2010-523449号公報
甲第10号証:特開平10-36146号公報
甲第11号証:特願2012-218737号(特開2014-24312号)
甲第12号証:JIS R 3205(表紙、目次、1?12頁、奥付)
甲第13号証:特開2012-46748号公報
甲第14号証:国際公開2011/141384号
甲第15号証:ISO 13837,Road vehicles-Safety glazing materials-Method for the determination of solar transmittance(2008)
甲第16号証:BS EN 410:2011(文献の添付は無し)
甲第17号証:株式会社ADEKAホームページ「プラスチック用添加剤」(https://www.adeka.co.jp/chemical/products/plastic/pro115c.html)
甲第18号証:フィルジェン株式会社ホームページ「PlasmaChem社製品 ナノ材料(量子ドット)(https://filgen.jp/Product/Bioscience4/PlasmaChem/index3.html)

(取消理由通知で提示した参考文献1?4)
参考文献1:特開2010-265170号公報
参考文献2:特開平5-271650号公報
参考文献3:特開平5-173000号公報
参考文献4:特開2003-213253号公報


第2 訂正の適否についての判断

1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)?(8)に示すとおりであり、訂正事項1?7からなるものである(下線は訂正箇所)。
なお、本件訂正請求により、令和元年6月13日付け訂正請求は取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
明細書の【0032】に記載された
「拡散蛍光」を、
「拡散傾向」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の記載において、
「日光の方を向いた側Sと、蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、」を、
「日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、」に訂正(以下、「訂正事項2-1」ということがある。)し、
「UV吸収剤、蛍光体及び可塑剤含有ポリビニルアセタールを含有する少なくとも1つの中間層フィルム」を、
「可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルム」に訂正(以下、「訂正事項2-2」といううことがある。)し、
「UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されていること」を、
「UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつUV吸収剤および/または蛍光体の拡散により前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがないこと」に訂正(以下、「訂正事項2-3」ということがある。)する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2の記載において、
「前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 蛍光体及び低分子量UV吸収剤のための拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム並びに
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、蛍光体を含有し、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層
を有することを特徴とする、請求項1記載の」を、
「日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 蛍光体及び低分子量UV吸収剤のための拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム並びに
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、蛍光体を含有し、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層
を有することを特徴とする、」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3の記載において、
「前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上又は前記第一の層に配置された拡散傾向の低い蛍光体
を有することを特徴とする、請求項1記載の」を、
「日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上に配置された拡散傾向の低い蛍光体
を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用することを特徴とする、」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4の記載において、
「前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、拡散傾向の低いUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上又は前記第一の層に配置された拡散傾向の低い蛍光体
を有することを特徴とする、請求項1記載の」を、
「日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、拡散傾向の低いUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体
を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用し、前記拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用する
ことを特徴とする、」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5の記載において、
「前記中間層フィルムが、
- 可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層の第一の側上又は前記第一の側に配置された拡散傾向の低い蛍光体
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、前記第一の層の第二の側上又は前記第二の側に配置された拡散傾向の低いUV吸収剤
を有することを特徴とする、請求項1記載の」を、
「日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層の第一の側上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、前記第一の層の第二の側上に配置された、拡散傾向の低いUV吸収剤
を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用し、前記拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用する
ことを特徴とする、」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6の記載において、
「前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、少なくとも1つの蛍光体を含有する拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム
- 低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層
を有することを特徴とする、請求項1記載の」を、
「日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 少なくとも1つの蛍光体を含有する拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層
を有することを特徴とする、」に訂正する。

(8)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の「蛍光体」についてする訂正であるから、全請求項について請求されたものである。そして、訂正前の請求項2?15が、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正事項1の訂正及び訂正事項2?7の特許請求の範囲の訂正は、何れも一群の請求項1?15について請求されたものである。

2.訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の本件明細書【0032】に記載された「拡散蛍光」が日本語として技術的な意味を成していないため、同じく【0031】、【0035】の関連した記載「拡散傾向の低い蛍光体」と整合させてこれを「拡散傾向」と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2-1は、側Sと側Bとの関係について、本件の図面【図2】に基づいて、側Bが側Sの反対側であることを明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項2-2は、UV吸収剤、蛍光体を含有するものが中間層フィルムであることを明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項2-3は、本件特許に係る発明が、本件明細書の【0008】?【0017】に記載された、蛍光体とUV吸収剤とがポリビニルアセタールの一種であるPVBフィルム中で拡散して混ざり合うという課題を解決するためのものであることに基づき、その解決された特性を明確に特定し、技術的に限定するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項とし、その訂正前の請求項1に係る記載について、上記訂正事項2-1?2-3と同様に明確にして、特定されている中間層フィルムの層構造に合わせて技術的に限定したものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項とし、その訂正前の請求項1に係る記載について、上記訂正事項2-1?2-3と同様に明確にして、特定されている中間層フィルムの層構造に合わせて技術的に限定し、さらに訂正前に特定されていた拡散傾向の低い蛍光体について、本件明細書の【0032】に基づいて、具体的な特定をして拡散傾向の低い蛍光体に含まれるものを明確にしたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項とし、その訂正前の請求項1に係る記載について、上記訂正事項2-1?2-3と同様に明確にして、特定されている中間層フィルムの層構造に合わせて技術的に限定し、さらに訂正前に特定されていた拡散傾向の低い蛍光体及び拡散傾向の低いUV吸収剤について、本件明細書の【0032】及び【0036】に基づいて、具体的な特定をして拡散傾向の低い蛍光体及びUV吸収剤それぞれに含まれるものを明確にしたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項とし、その訂正前の請求項1に係る記載について、上記訂正事項2-1?2-3と同様に明確にして、特定されている中間層フィルムの層構造に合わせて技術的に限定し、さらに訂正前に特定されていた拡散傾向の低い蛍光体及び拡散傾向の低いUV吸収剤について、本件明細書の【0032】及び【0036】に基づいて、具体的な特定をして拡散傾向の低い蛍光体及びUV吸収剤それぞれに含まれるものを明確にしたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項とし、その訂正前の請求項1に係る記載について、上記訂正事項2-1?2-3と同様に明確にして、特定されている中間層フィルムの層構造に合わせて技術的に限定し、さらに拡散ブロックとしての薄いフィルムが側Bに配置されていることが特定され、ポリビニルアセタールの第二の層は側Bとは明示的に特定されていなかったことで、両者の相対的な位置関係が明確でなかったものを、第二の層が側Bであることを明確にして、薄いフィルムが第一の層と第二の層との間に配置されて拡散ブロックの機能を果たすことを明確にしたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)独立特許要件について
本件訂正請求においては、全ての請求項に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1?4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?15〕について訂正を認める。


第3 本件特許発明
本件訂正が認められることは上記第2に記載のとおりであるので、本件特許の請求項1?15に係る発明は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?15に記載された以下のとおりのものである。
(以下、請求項1?15に係る発明を、それぞれ「本件発明1」?「本件発明15」、まとめて「本件発明」という。)

「 【請求項1】
日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつUV吸収剤および/または蛍光体の拡散により前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがないことを特徴とする、前記蛍光ディスプレイ。
【請求項2】
日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 蛍光体及び低分子量UV吸収剤のための拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム並びに
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、蛍光体を含有し、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層
を有することを特徴とする、蛍光ディスプレイ。
【請求項3】
日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上に配置された拡散傾向の低い蛍光体
を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用することを特徴とする、蛍光ディスプレイ。
【請求項4】
日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、拡散傾向の低いUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体
を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用し、前記拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用する
ことを特徴とする、蛍光ディスプレイ。
【請求項5】
日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層の第一の側上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、前記第一の層の第二の側上に配置された、拡散傾向の低いUV吸収剤
を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用し、前記拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用する
ことを特徴とする、蛍光ディスプレイ。
【請求項6】
日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 少なくとも1つの蛍光体を含有する拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層
を有することを特徴とする、蛍光ディスプレイ。
【請求項7】
前記中間層フィルムが、0?50の範囲のアルカリ滴定値を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの層を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項8】
前記中間層フィルムが、ラジカル連鎖反応を抑制するための光安定剤を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの層を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項9】
前記中間層フィルムが、フェノール系酸化防止剤を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの層を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項10】
前記中間層フィルムが、少なくとも1つの音響減衰層を含んでおり、そうして前記中間層フィルムは、2.1mm厚のガラス2枚の間に貼り合わせて、かつ20℃にてISO TS 16940に準拠した測定を行った場合に0.15超の1次モードの損失係数を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項11】
前記日光の方を向いた側Sは、2.1mm厚の透明ガラス2枚の間に組み合わせてISO 13837,Convention“A”(2008)に準拠した測定を行った場合に30%未満のUV透過率T_(UV)(400)を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項12】
前記日光の方を向いた側Sは、2.1mm厚の透明ガラス2枚の間に組み合わせてISO 13837(2008)に準拠したUV/VIS透過率スペクトルの測定を行った場合に50%以下のUV透過率T_(UV)(400)を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項13】
自動車両のフロントウインドウ、自動車両のサイドウインドウ、飛行機、鉄道又は船舶用のウインドウのための、或いは建築領域において適用するためのディスプレイ系として用いるための、請求項1から12までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイの使用。
【請求項14】
ショーウインドウ、エレベーター又はファサードウインドウにおいて適用するためのディスプレイ系として用いるための、請求項13記載の蛍光ディスプレイの使用。
【請求項15】
請求項1から12までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイを含有するフロントウインドウと、UV吸収性ガラスより成るか又は当該UV吸収性ガラスを有するサイドウインドウとを有する自動車両のコンパートメントルーム。」


第4 取消理由について

1.令和元年9月26日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由について
(1)取消理由の概要
ア.取消理由1(明確性)特許法36条6項2号:令和元年6月13日付けの訂正特許請求の範囲の請求項1の記載において、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する中間層フィルムの層構造の特定がなく、「可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがない」は、混ざり合う要因が全くないことを意味しているのか、一定の時間が経過するまでは混ざり合うことがないことを意味しているのか、その他のことを意味しているのかが明瞭でない。

イ.取消理由2(進歩性)特許法29条2項:令和元年6月13日付けの訂正特許請求の範囲の請求項1、7?15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知慣用技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。

ウ.取消理由3(拡大先願)特許法29条の2:令和元年6月13日付けの訂正特許請求の範囲の請求項1、8?10、13、15に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前の特許出願であって、その優先日後に出願公開がされた甲第11号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一である。

(2)当審の判断
ア.取消理由1について
本件発明1は、訂正特許請求の範囲の請求項1の記載に係る「UV吸収剤および/または蛍光体の拡散により前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがない」という発明特定事項を有しており、「UV吸収剤および/または蛍光体の拡散により」とさらに特定されたことで、これらが拡散により混ざり合う要因は全くないことを意味することが明確となっている。
よって、本件発明1に係る訂正特許請求の範囲の請求項1の記載に不備はないから、取消理由1は理由がない。

イ.取消理由2について
(ア)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、以下の(1a)?(1d)の記載がある。

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配置されたときに車外側になる外側ガラス(12)と車内側になる内側ガラス(15)との間に樹脂製の中間層(13)を挟んだ車両用合わせガラスにおいて、
前記外側ガラス(12)と前記中間層(13)との間、あるいは前記内側ガラス(15)と前記中間層(13)との間に画像表示層(14)を挟み、前記外側ガラス(12)の厚さを前記内側ガラス(15)の厚さよりも小さくしたことを特徴とする車両用合わせガラス。
【請求項2】
前記画像表示層(14)を、前記内側ガラス(15)と前記中間層(13)との間に挟んだことを特徴とする、請求項1に記載の車両用合わせガラス。」

(1b)「【0014】
また請求項2の構成によれば、内側ガラスと中間層との間に画像表示層を挟んだので、車室内から画像表示層に投射される光や、画像表示層に表示した画像から運転者に向かって出た光が中間層を透過することがなくなり、中間層における減衰を最小限に抑えて鮮明な画像を視認することができる。しかも車外側から入ってくる外光は中間層を透過して減衰した状態で画像表示層に達するので、画像表示層に表示した画像を更に鮮明に視認することができる。更に、車外からの紫外線を中間層で遮って画像表示層に照射されるのを防止するとともに、車内から紫外線を励起光として照射する場合には、その紫外線を中間層で遮って車外に透過するのを防止することができる。」

(1c)「【0019】
図1に示すように、合わせガラスで構成される自動車のフロントガラス11は、車外側から車内側に向けて外側ガラス12と、ポリビニルブチラールや塩化ビニル等の樹脂で構成した中間層13と、ナノ粒子蛍光体を担持した透明膜よりなる画像表示層14と、内側ガラス15とを4層に積層して構成される。外側ガラス12の厚さは例えば1.5mmであり、中間層13の厚さは例えば0.8mmであり、画像表示層14の厚さは例えば100μmであり、内側ガラス15の厚さは例えば2.5mmである。ここで重要なのは、外側ガラス12の厚さが内側ガラス15の厚さよりも小さくなっていることである。
【0020】
中間層13は、フロントガラス11の破損時における外側ガラス12および内側ガラス15の破片の飛散を防止する機能を有する以外に、紫外線を遮断する効果を有する。また画像表示層14は、それに担持されたナノ粒子蛍光体が画像投射器16から投射される紫外光により励起して発光することで、運転者により視認可能な画像を生成する。
【0021】
図2に示すように、画像投射器16は、制御回路21と、紫外光発生手段22と、ガルバノミラー駆動回路23と、ガルバノミラー24とで構成される。制御回路21に接続された紫外光発生手段22がヘッドアップディスプレイに表示すべき所定の画像を生成するための紫外光を送光し、制御回路21に接続されたガルバノミラー駆動回路23により作動するガルバノミラー24が、前記紫外光を反射して上下方向および左右方向に走査する。その結果、紫外光が当たった画像表示層14のナノ粒子蛍光体が励起して発光することで、画像表示層14上に所定の画像を生成する。画像表示層14上に生成した画像は風景に重畳して運転者により目視される。」

(1d)「【図1】

【図2】



上記(1a)?(1d)の記載からみて、甲第1号証には、図1に示された請求項2に係る4層構造の自動車のフロントガラスの発明として以下のものが記載されていると認められる。
「合わせガラスで構成される自動車のフロントガラス(11)であって、車外側から車内側に向けて、外側ガラス(12)と、中間層(13)と、画像表示層(14)と、内側ガラス(15)とが順に4層に積層して構成され、
中間層(13)は、車外からの紫外線を遮って画像表示層(14)に照射されるのを防止するとともに、車内から紫外線を励起光として照射する場合には、その紫外線を遮って車外に透過するのを防止することができるものであって、ポリビニルブチラール等の樹脂で構成したものであり、
画像表示層(14)は、ナノ粒子蛍光体を担持した透明膜よりなり、車内側の画像投射器(16)から投射される紫外光により励起して発光することで、運転者により視認可能な画像を生成するものである、自動車のフロントガラス。」(以下、「引用発明1」という。)

(イ)本件発明1と引用発明1との対比・判断
本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「車外側」は本件発明1の「日光の方を向いた側S」に相当し、「車内側」は「日光の方を向いた側Sの反対側」である「蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側B」に相当し、「自動車のフロントガラス」は「ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイ」に相当する。また、引用発明1の空間的配置の構成上、車内側の画像投射器(16)からの紫外光が中間層(13)で遮断(UV吸収剤により吸収)されずに画像表示層(14)へ到達し、ナノ粒子蛍光体が紫外光により励起され得ることは自明であるから、引用発明1の「ポリビニルブチラール等の樹脂」は本件発明1の「ポリビニルアセタール」に相当し、以下同様に、「紫外線」は「UV線」、「ナノ粒子蛍光体」は「蛍光体」、「画像投射器(16)から投射される紫外光」は「蛍光体を励起するためのUV線」、「中間層(13)」と「画像表示層(14)」とが積層されたものは「中間層フィルム」にそれぞれ相当する。
そうすると、両者は、
「日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつポリビニルアセタールと、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおいて、前記蛍光体を励起するためのUV線がUV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイ」
の点で一致し、次の相違点1?3で相違する。

相違点1:本件発明1では、ポリビニルアセタールは可塑剤を含有するのに対し、引用発明1では、ポリビニルブチラ-ルが可塑剤を含有することは明示されていない点

相違点2:本件発明1では、中間層フィルムはUV吸収剤を含有しており、UV吸収剤が蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されているのに対し、引用発明1では、中間層(13)が紫外線を遮断するポリビニルブチラールで構成されている点

相違点3:本件発明1では、UV吸収剤および/または蛍光体の拡散により可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがないのに対し、引用発明1では、紫外線を遮断する中間層(13)とナノ粒子蛍光体を有する画像表示層(14)とが積層されている点

まず、相違点1、2について検討するに、自動車のフロントガラスの中間層として利用するポリビニルブチラールに可塑剤を含有させることは技術常識であるから、相違点1は実質的な差異ではない。次に、自動車のフロントガラスの中間層として利用するポリビニルブチラールにUV吸収剤を含有させることは周知慣用技術であるから、引用発明1の中間層(13)が紫外線を遮断するようにUV吸収剤を含有させることは設計的事項であり、また、引用発明1の中間層(13)は画像表示層(14)との関係で「車外側」、即ち、「日光の方を向いた側S」に配置されているから、引用発明1において、相違点2を解消することは、当業者であれば容易になし得る程度のことである。
そこで、相違点3について検討するに、本件発明1で「UV吸収剤および/または蛍光体の拡散により可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがない」ことは、上記ア.のとおり、可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが拡散により混ざり合う要因は全くないことを意味するものである。これに対し、引用発明1において、上記で相違点1、2について検討したように、周知慣用技術を適用してUV吸収剤を可塑剤含有ポリビニルブチラールの中間層(13)に含有させたときには、この中間層(13)と蛍光体を含有する画像表示層(14)とは別の層を構成していることになるものの両層は接しており、甲第1号証にはUV吸収剤と蛍光体とが拡散により混ざり合わないようにすることの記載も示唆もないから、両者が混ざり合わないとまではいえないし、そのようにする動機付けもない。しかも、引用発明1の中間層(13)と透明膜の画像表示層(14)とを同じポリビニルブチラール樹脂で構成する態様は普通に想定され、この場合にはUV吸収剤および/または蛍光体の拡散により可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが時間の経過と共に混ざり合うこととなるのは自明だから、相違点3は実質的なものであり、当業者であってもその解消は容易なことではない。

よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)本件発明7?15について
本件発明7?15のうち、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものについては、本件発明1と同様、甲第1号証に記載された発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、取消理由2は理由がない。

ウ.取消理由3について
(ア)甲第11号証に記載された発明
甲第11号証には、以下の(11a)?(11c)の記載がある。

(11a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材料自身が発光することにより、高いコントラストで画像を表示することができる発光シート、該発光シートを含む合わせガラス用中間膜、合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車等の車両のフロントガラス、サイドガラス、リアガラスや、航空機、建築物等の窓ガラス等として広く使用されている。合わせガラスとして、少なくとも一対のガラス間に、例えば、液状可塑剤とポリビニルブチラール樹脂とを含む合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させた合わせガラス等が挙げられる。
【0003】
近年、自動車用のフロントガラスについて、このフロントガラスと同じ視野内に自動車走行データである速度情報等の計器表示をヘッドアップディスプレイ(HUD)として表示させようとする要望が高まっている。
HUDとしては、これまでに数々の形態が開発されている。最も一般的なHUDとしてコントロールユニットから送信される速度情報等をインストゥルメンタル・パネルの表示ユニットからフロントガラスに反射させることにより、運転者がフロントガラスと同じ位置、すなわち、同一視野内で速度情報等を視認できるHUDがある。
HUD用の合わせガラス用中間膜として、例えば特許文献1には、所定の楔角を有する楔形合わせガラス用中間膜等が提案されており、合わせガラスにおいて計器表示が二重に見えるというHUDの欠点を解決することが提案されている。」

(11b)「【0053】
本発明の発光シートの用途は特に限定はされず、商業ビルや住宅用の窓材、自動車の窓等に貼付される広告媒体等の用途に用いることができる。なかでも、車両用窓材、建築用窓材等における情報表示機能を有する合わせガラス用中間膜として好適である。本発明の発光シートからなる合わせガラス用中間膜もまた、本発明の1つである。
【0054】本発明の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に挟み込まれている合わせガラスもまた、本発明の1つである。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層が形成された紫外線遮蔽ガラスも用いることができる。更に、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板とで、本発明の合わせガラス用中間膜を挟持した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。」

(11c)「【0071】
(実施例10)
(1)発光層の調製
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)4.00gに、発光材料としてペリレン系化合物(セントラルテクノ社製品、品番名ルミシスB-800)0.02gを溶解して発光溶液を調製した。
得られた発光溶液の全量と、アセチル基量1mol%、水酸基量31mol%、平均重合度が2300のポリビニルブチラール樹脂10.00gとをミキシングロールで充分に混練することにより、樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートに挟み、厚さ400μmのスペーサを介して、熱プレスにて150℃、100kg/cm^(2)の条件で15分間加圧し、厚さ400μmの発光層を得た。
【0072】
(2)紫外線遮断層の調製
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)4.00gに、紫外線吸収剤として2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(BASF社製、T-326)0.05gを溶解して溶液を調製した。
得られた溶液の全量と、アセチル基量13mol%、水酸基量22mol%、平均重合度が2300のポリビニルブチラール樹脂10.00gとをミキシングロールで充分に混練することにより、樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートに挟み、厚さ400μmのスペーサを介して、熱プレスにて150℃、100kg/cm^(2)の条件で15分間加圧し、厚さ400μmの紫外線遮断層を得た。
【0073】
(3)発光シートの製造
得られた発光層と紫外線遮断層とを積層し積層体を得た。得られた積層体を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートに挟み、厚さ7800μmのスペーサを介して、熱プレスにて150℃、100kg/cm^(2)の条件で5分間加圧し、厚さ800μmの発光シートを得た。
【0074】
(4)合わせガラスの作製
得られた発光シートを縦5cm×横5cmのサイズに切断し、これを合わせガラス用中間膜とした。合わせガラス用中間膜を、縦5cm×横5cmの一対のクリアガラスで挟み込み積層した。得られた積層体を、真空ラミネーターにて90℃下、30分保持しつつ真空プレスを行い圧着した。圧着後140℃、14MPaの条件でオートクレーブを用いて20分間圧着を行い、合わせガラスを得た。」

甲第11号証には、特に、(11c)の記載からみて、実施例10に係る合わせガラスの発明として以下のものが記載されていると認められる。
「発光材料とトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含むポリビニルブチラール樹脂を有する発光層と、紫外線吸収剤とトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含むポリビニルブチラール樹脂を有する紫外線遮断層とを積層した発光シートからなる中間膜を、クリアガラスで挟み積層した合わせガラス。」 (以下、「引用発明2」という。)

(イ)本件発明1と引用発明2との対比・判断
本件発明1と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「ポリビニルブチラール樹脂」は本件発明1の「ポリビニルアセタール」に相当し、以下同様に、「紫外線」は「UV線」、「紫外線吸収剤」は「UV吸収剤」、「発光材料」は「蛍光体」、「トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート」は「可塑剤」、「発光シートからなる中間膜」は「中間層フィルム」、「合わせガラス」は「蛍光ディスプレイ」に相当する。
そして、引用発明2では、積層した中間膜が紫外線遮断層側と発光層側とを有し、発光層側からの紫外線は紫外線遮断層の紫外線吸収剤により吸収されずに発光材料を励起し得る空間的配置であるといえるから、両者は、
「側Sと、側Sの反対側の側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイ」
の点で一致し、次の相違点4、5で相違する。

相違点4:本件発明1は、中間層フィルムが日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有するのに対して、引用発明2では、日光の方を向いた側と蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側との相対配置、即ち、日光の方を向いた側が「紫外線吸収剤」を含む紫外線遮断層の側と発光層側のどちらの側であるのか、について明示されていない点。

相違点5:本件発明1では、UV吸収剤および/または蛍光体の拡散により可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがないのに対して、引用発明2では、紫外線遮断層と発光層とが積層されている点

まず、相違点4について検討するに、甲第11号証の上記摘示(11a)、(11b)から、引用発明2の合わせガラスは、自動車用のフロントガラスとして応用され得るものである。そして、その場合、中間膜には、車外から日光を受ける側と、運転席の観察者を向いた側を観念することができるといえ、引用発明2では、紫外線遮断層の機能からみて、紫外線が多く放射される日光の側に紫外線遮断層を設け、発光層を観察者の方に向けて設けるのが自然であるから、相違点4は実質的な相違点であるとはいえない。
そこで、相違点5に関し検討するに、本件発明1で「UV吸収剤および/または蛍光体の拡散により可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがない」ことは、上記ア.のとおり、可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが拡散により混ざり合う要因は全くないことを意味するものである。これに対し、引用発明2においては、紫外線吸収剤を含有する紫外線遮断層と、発光材料を含有する発光層とは別の層を構成しているが、両層は接していて、しかも同じ可塑剤含有ポリビニルブチラール樹脂を有する層であるから、紫外線(UV)吸収剤および/または発光材料(蛍光体)の拡散により可塑剤含有ポリビニルブチラール(アセタール)中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うこととなるのは自明である。してみれば、相違点5は実質的なものである。

よって、本件発明1は、甲第11号証に記載された発明と同一ではない。

(ウ)本件発明8?10、13、15について
本件発明8?10、13、15のうち、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものについては、本件発明1と同様、甲第11号証に記載された発明と同一ではない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、取消理由3は理由がない。

2.平成31年3月13日付け取消理由通知書で通知した取消理由について
(1)取消理由の概要
ア.取消理由4(明確性)特許法36条6項2号:訂正前の特許請求の範囲の記載について下記(ア)?(オ)の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない不備がある。

(ア)「中間層フィルム」は、「日光を向いた側S」と、「蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側B」とで構造が特定されているが、観察者の位置が特定されていないため、「蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側B」は、「日光を向いた側S」と同じ側にあるのか、その反対側にあるのか明らかでない。

(イ)請求項1では、「UV吸収剤、蛍光体及び可塑剤含有ポリビニルアセタールを含有する少なくとも1つの中間層フィルム」と記載されているが、何が何を含有するのかが多義的である。また、請求項1を引用する他の請求項も含め、全体として、中間層フィルムの構造が不明であり、特に、「蛍光体」、「UV吸収剤」の態様が明確でない。

(ウ)請求項2、6では、拡散ブロックとしての「薄いフィルム」を設ける旨が記載されているが、第一の層、第二の層、薄いフィルムの位置が明示的に特定されていないため、中間層フィルムの構造が明確でない。
また、上記(イ)と相俟って「薄いフィルム」の役割、材質等も明確でない。

(エ)請求項3?5には、「拡散傾向の低い」蛍光体又はUV吸収剤を利用する旨が記載されているが、発明の詳細な説明を参照しても、如何なる指標により拡散傾向を低いと判断するのか不明である。

(オ)請求項8には、光安定剤を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの層を設ける旨が特定されているが、これは、既存のポリビニルアセタールの層の1つに光安定剤の粒子を混練することを意味するのか、光安定剤を有するポリビニルアセタールの層を追加的に積層することを意味するのか判然としない。請求項9のフェノール系酸化防止剤についても同様である。

イ.取消理由5(進歩性)特許法29条2項:訂正前の特許請求の範囲の請求項1?15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明並びに参考文献1?4、甲第9号証及び甲第10号証に記載された技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。

ウ.取消理由6(拡大先願)特許法29条の2:訂正前の特許請求の範囲の請求項1、8?10、13、15に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前の特許出願であって、その優先日後に出願公開がされた甲第11号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一である。

(2)当審の判断
ア.取消理由4について
(ア)本件発明1に係る請求項1は、訂正により「日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側B」と特定されており、側Sと側Bとの位置関係が明確であるから不備はない。
(イ)本件発明1に係る請求項1は、訂正により「可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルム」と特定されており、何が何を含有するのかが明確であるから不備はない。また、本件発明2?6に係る請求項2?6において、「UV吸収剤」及び「蛍光体」は、訂正により何れの層あるいは層上に配置されているのかが明確となっているから不備はない。
(ウ)本件発明2、6に係る請求項2、6は、訂正により何れも「可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがない」と特定されたことにより、「薄いフィルム」の拡散ブロックとしての役割等が明確となっており、また、請求項6では「第二の層」が「蛍光ディスプレイの側Bに配置されている」ことが特定されて「薄いフィルム」と各層との位置関係も明確となっているから、不備はない。
(エ)本件発明3?5に係る請求項3?5は、訂正により「拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用すること」、「拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用すること」がそれぞれ特定され、「拡散傾向の低い」蛍光体又はUV吸収剤が具体的に列挙されているから明確であり、不備はない。
(オ)請求項8の「光安定剤を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの層」、請求項9の「フェノール系酸化防止剤を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの層」は、既存のポリビニルアセタールの層の1つに光安定剤の粒子を混練すること、あるいは、光安定剤を有するポリビニルアセタールの層を追加的に積層することの何れをも意味することは技術常識から明らかであるから、記載に不備があるとはいえない。

申立人は、令和元年8月1日付けで甲第15?18号証を添付した意見書で、蛍光性ナノ粒子あるいは蛍光性無機ナノ粒子の拡散傾向やUV線の定義において依然として明確でない点がある旨主張している。しかし、蛍光性ナノ粒子は訂正後の請求項3等で特定されているとおり拡散傾向の低い蛍光体の一例であることは明確であって、蛍光性無機ナノ粒子も同様であることは技術常識から明らかであるし、UV線については、UV吸収剤が日光を向いた側Sに配置されていて、本件明細書【0016】、【0019】に蛍光体の日光による変色の可能性とそこからの保護とが示唆されていること等からみて、どの程度の波長のものが含まれるのかは技術常識から自ずと明らかといえるから、主張は採用できない。

以上のとおりであるから、取消理由4は理由がない。

イ.取消理由5について
(ア)本件発明1について
甲第1号証に記載された発明との対比・判断については、上記1.で取消理由2について検討したと同様である。そして、参考文献1?4、甲第9号証及び甲第10号証の記載を参酌しても、引用発明1において「UV吸収剤および/または蛍光体の拡散により可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがない」こととする技術思想を導出することはできないから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明並びに参考文献1?4、甲第9号証及び甲第10号証に記載された技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(イ)本件発明2?6について
本件発明2?6は、何れも「可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、」という発明特定事項を有しており、上記1.で検討した甲第1号証に記載された引用発明1と対比したときには、相違点3と同様の相違点(以下、「相違点3’」という。)があり、上記1.で検討したと同様に、甲第1号証にはUV吸収剤と蛍光体とが可塑剤含有ポリビニルアセタール中で混ざり合わないようにすることの記載も示唆もないから、引用発明1において、UV吸収剤と蛍光体とが混ざり合わないとまではいえないし、参考文献1?4、甲第9号証及び甲第10号証の記載を参酌しても、そのようにする動機付けはない。
そして、可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する中間層フィルムの層構造については、
本件発明2は、
「- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 蛍光体及び低分子量UV吸収剤のための拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム並びに
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、蛍光体を含有し、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層」を有することと特定されており、
本件発明3は、
「- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上に配置された拡散傾向の低い蛍光体
を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用する」ことと特定されており、
本件発明4は、
「- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、拡散傾向の低いUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体
を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用し、前記拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用する
」ことと特定されており、
本件発明5は、
「- 可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層の第一の側上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、前記第一の層の第二の側上に配置された、拡散傾向の低いUV吸収剤
を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用し、前記拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用する
」ことと特定されており、
本件発明6は、
「- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 少なくとも1つの蛍光体を含有する拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層」を有することと特定されており、
本件発明2?6については、このような具体的に特定された中間層フィルムの層構造により、
「可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがな」いという相違点3’に係る発明特定事項を満たしているものである。
よって、本件発明2?6は、甲第1号証に記載された発明並びに参考文献1?4、甲第9号証及び甲第10号証に記載された技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)本件発明7?15について
本件発明7?15は、何れも本件発明1?6の何れかの発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えたものであるから、上記(ア)又は(イ)で検討したと同様に、甲第1号証に記載された発明並びに参考文献1?4、甲第9号証及び甲第10号証に記載された技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、取消理由5は理由がない。

ウ.取消理由6について
(ア)本件発明1について
甲第11号証に記載された発明との対比・判断については、上記1.で取消理由3について検討したと同様であり、本件発明1は、甲第11号証に記載された発明と同一ではない。

(イ)本件発明8?10、13、15について
本件発明8?10、13、15のうち、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものについては、本件発明1と同様、甲第11号証に記載された発明と同一ではない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、取消理由6は理由がない。


第5 特許異議申立理由について

1.申立人の主張について
申立人が、甲第1?14号証に基づき主張する申立理由は以下のとおりである。

(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
訂正前の本件請求項1、3、15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。

(2)申立理由2(特許法第29条第2項)
訂正前の本件請求項1?15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?10号証に記載された技術事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)申立理由3(特許法第29条の2)
訂正前の本件請求項1、7?15に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前の特許出願であって、その優先日後に出願公開がされた甲第11号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一である。

(4)申立理由4(特許法第36条第6項第2号)
訂正前の特許請求の範囲の記載は、以下のア.及びイ.の点で不明確であるから不備がある。
ア.請求項1に「蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側B」と特定されているが、観察者の位置が特定されていないため、「蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側B」と「日光を向いた側S」との区別が明らかでない。
イ.請求項3?5に「拡散傾向の低い」と特定されているが、どの程度の拡散傾向を包含するのか不明である。

2.各申立理由についての判断
(1)申立理由1及び2について
本件発明1?15と甲第1号証に記載された発明との対比については、上記第4で取消理由2及び取消理由5について検討したと同様である。
そして、特に、甲第1号証に記載された発明との相違点3又は3’に係る「可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがな」い点については、甲第2?10号証並びに周知慣用技術を参酌しても、当業者が容易に導出できることであるとはいえない。
よって、申立理由1及び2は何れも理由がない。

(2)申立理由3について
本件発明1、7?15と甲第11号証に記載された発明との対比・判断については、甲第12?14号証の記載を参酌したとしても、上記第4で取消理由3及び取消理由6について検討したと同様である。
よって、申立理由3は理由がない。

(3)申立理由4について
上記第4の2.(2)ア.(ア)及び(エ)で取消理由4について検討したとおりである。
よって、申立理由4は理由がない。


第6.むすび

以上のとおり、請求項1?15に係る特許については、取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1?15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。



 
発明の名称 (54)【発明の名称】
可塑剤含有ポリビニルアセタールより成る中間層フィルムを含有する蛍光ディスプレイ
【技術分野】
【0001】
ドライバー視野領域に情報を映し出すために、近年、自家用車においていわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD)が用いられている。これに関して、下方から-ダッシュボードブラケットに設けられているプロジェクターユニットから-虚像としてドライバーのシートから見られることができる画像がフロントウインドウ(WSS/Windschutzscheibe)に投影される。この効果は、車内の方を向いたガラス面並びに車外の方を向いたガラス面の反射作用に基づいている。内側のガラス面は、ほとんど反射には寄与せず、なぜなら、これらは、法律により定められている合わせ安全ガラスにおいて、ガラス層の間に設けられているガラスと似た屈折率を有するPVBフィルムと貼り合わされているからである。
【0002】
通常の構造のフロントウインドウの4つのガラス面をより簡素化して名称付けるために、図1に示される以下の取り決めが用いられる:
第1の側 車外に向いた複合体の板の外側の面
第2の側 複合体において中間層フィルムに向いた外側の板の内側の面
第3の側 複合体において中間層フィルムに向いた内側の板の内側の面
第4の側 複合体の内側の板の車内の方を向いた面
【0003】
通例、中間層フィルムとして、可塑化されたポリビニルブチラール、略してPVBフィルムより成るフィルムが使用される。
【0004】
上記の機能原理を持った慣用のHUDにおける二重像を取り除くために、第1と第4の側に属するガラス面は、互いに一定の角度を有していなければならない。これは、くさび形の厚さプロファイルを有するPVBフィルムの使用によって実現される。しかしながら、このようなフィルムは、加工し難く、かつ製造が煩雑であり、くさび形ではないフィルム補完物(Folienpendant)よりずっと高価なものになる。
【0005】
慣用のHUDの更なる欠点は、制限された視野領域においてのみドライバーの前方に情報が直接可視化されることができ、またこれについてのみ見ることができる点にある。実際にはしかし、情報が同乗者にも見られることができるか若しくはフロントウインドウの別の箇所に表示されることが望ましい状況が数多く存在する。例えば、安全に関わる警告情報として、車線上又は車線の横にある障害物の輪郭-例えば、これらは最新の乗り物においては暗視装置システムにより検知され得る-をフロントウインドウに直接投影することが考えられる。それに、慣用のHUDの場合、フロントウインドウ上の雨粒によって画像が歪められる。なぜなら、この場合、最適化されたシステム構成の基になるガラスと空気との間の屈折率の移行に狂いが生じるからである。
【0006】
この慣用のHUDの代わりとして、フロントウインドウの平面に配置された蛍光材料及び適切なその励起によって画像を作り出すことが提案されていた(いわゆる蛍光HUD)。これらの物質の励起は、人間の目では見ることのできないUV線により行われ、それによって、ドライバーだけに限られず見ることが可能な実際の画像をフロントウインドウの平面に作り出すことができる。蛍光材料として、例えば、相応する有機染料、無機粒子等が提案されていた。
【背景技術】
【0007】
蛍光HUDの製造のために、フロントウインドウの第4の側に蛍光顔料又は染料を、被覆、積層フィルム等の形で施与することが知られている。代替案として、第3の側とPVB中間層との間に、蛍光体を含有するフィルムを位置決めするか若しくは第3の側の方を向いたPVBフィルムの表面に蛍光体を印刷することが提案されていた。
【0008】
WO2012/072950A1は、PVBフィルムに特定の低分子量蛍光体を印刷することを開示しており、該蛍光体がオートクレーブ処理中に均一にフィルム中に分散するように印刷が行われている。この場合、蛍光体は、UV吸収剤として同時に作用している。これに加えて、WO2012/072950A1は、蛍光体として低分子量ヒドロキシテレフタレート、殊に2,5-ジヒドロキシジエチルテレフタレート並びに酸化防止剤の使用を記載しており、これらはPVBフィルム上に施与される。この場合、蛍光体は、PVBフィルム中に分散し、かつそれ自体UV吸収剤として作用するか又はフィルム中に存在する低分子量UV吸収剤と混ざり合う可能性がある。
【0009】
WO2008132368A9からは、蛍光HUDが、従来のPVBフィルムに加えて1つ以上の無機発光体を含有する層を複合体の第3の側に20μm未満の厚さで含んでよいことが知られている。しかしながら、従来のPVBフィルムは少ない量で低分子量UV吸収剤を含有しているので、そのような低分子量UV吸収剤は、発光体を含有する層中に拡散し易く、そこで蛍光を吸収する可能性がある。そのうえ、制御されない外部からの日光による励起が部分的に起こり得るというリスクが存在し、なぜなら、従来のPVBフィルムの場合、UV線の残留透過率が通常見出されるからである。さらに、曇りにつながる、不適格に大きい粒子による光散乱が起こらないように注意が向けられなければならない。発光体を含有する20μmの層の僅かな層厚では使用可能な蛍光体の量は限られており、なぜなら、濃度が高すぎると曇りにつながるからである。それゆえ、最大で到達可能な蛍光発光の強度も限られている。
【0010】
US2002/0120916A1には、蛍光染料を有するヘッドアップディスプレイが記載されており、該ディスプレイにおいて観察者の方を向いた側はUV吸収剤を含有する。これにより、蛍光染料のための励起線がディスプレイを貫通して外側に放射されるのが防がれることになる。この目的のために、US2011/1073773A1には、観察者から離れたディスプレイ側に不透明な材料を有する蛍光ディスプレイが開示されている。
【0011】
EP2409833には、蛍光染料が日光の方を向いた側に配置されている蛍光ディスプレイが記載されている。
【0012】
これらの公知の蛍光ディスプレイは、蛍光染料が不所望にも日光によって励起される可能性があることである。そのような励起は、外観上ディスプレイの曇りにつながり、自動車両のフロントウインドウにおける使用には適していない。
【0013】
公知の先行技術における問題のほかに、ディスプレイに表示された情報の光沢度及び鮮明度並びに持ちを損なうという問題が生じる。自動車ガラスの製造のために入手可能な慣用のPVBフィルムは、少ない量の低分子量UV吸収剤、殊にTinuvin 326若しくはTinuvin 327型のUV吸収剤を含有している。
【0014】
UV吸収剤は、蛍光体の励起も行われるちょうど同じ波長領域で作用することから、UV線の大部分は、蛍光体の励起のために利用されるのではなく吸収される。
【0015】
つまり、UV吸収剤を既に含有している低分子量蛍光体がPVBフィルムの表面上に単純に施与される場合、蛍光体は拡散によってフィルムの厚さ全体にわたって分散する。しかし、その場合、蛍光体はガラス表面のすぐ近くでしか放射することができず、なぜなら、ここでしかUV線は、存在するUV吸収剤に基づきフィルム層の深さにたいして入り込むことができないため、十分な強度で蛍光体に当たることができないからである。これにより、十分な光沢度を得るために高濃度の蛍光体が不可欠となり、この場合はまたフィルム若しくはガラスの黄色度及びディスプレイ系のコストに悪影響を及ぼし得る。当然の事ながら、蛍光体がPVBフィルムの製造に際して添加剤としてこれに直接導入される場合にも同じことが言える。
【0016】
特に厄介なのは、蛍光体が拡散によってフロントウインドウの第2の側(図1を参照されたい)にも達してしまうことであり、そこで、一方では、蛍光体は日光によって変色する可能性があり(なぜなら、この箇所ではフィルム中に含まれるUV吸収剤によってもはや保護されないからである)、他方では、制御されずに日射のUV割合によって励起発光させられる可能があることである。
【0017】
課題
それゆえ、これらの欠点が構造的に生じ得ない、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイ用の中間層フィルムを提供するという課題が存在していた。
【0018】
本発明の枠内では、図1に示されるガラス/ガラスラミネートの面を名称付けるための上記取り決めが、更に別の適用分野、例えば建築及び広告領域等において使用するためのディスプレイユニット用のガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイの場合にも用いられる。この場合、第4の側は、励起線源に向いた側を意味する。
【0019】
殊に、蛍光ディスプレイの第2の側に接している中間層膜は、高い光透過率と同時に低いUV透過率とを有しているべきである。これによって、以下の効果、すなわち、その背後にある蛍光体を変色から保護する効果、励起源のUV線が抜け出すことを防止する効果、日射のUV割合による制御されない励起を防止する効果及び全体のコンポーネントに関して通常要求される低いUV透過率を保証する効果が得られる。
【0020】
本発明の説明
層の基本的な配置は、図2に描写している。
【0021】
UV吸収剤と蛍光体とが持続的に互いに空間的に分離して存在するか又は高濃度の蛍光体が第3の側で持続的に保持され続ける中間層又は中間層組合せ物がこの要件を具備することを見出した。
【0022】
それゆえ、本発明の対象は、日光の方を向いた側Sと蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、UV吸収剤、蛍光体及び可塑剤含有ポリビニルアセタールを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有するガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであり、ここで、中間層フィルムにおけるUV吸収剤と蛍光体とは、蛍光体がUV線によって、UV吸収剤が当該UV線を吸収することなく励起され得るように空間的に配置されており、ここで、UV吸収剤は、蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されている。
【0023】
自動車両のフロントウインドウとしての蛍光ディスプレイの例示的な適用においては、この配置により、蛍光体をUV線によって車内から若しくはディスプレイユニットの第4の側から励起させることが可能となり、その際、励起のために実際に供給された放射線が早くもUV吸収剤により吸収されることはない。
【0024】
本発明の第一の実施形態においては、蛍光ディスプレイは、
- 蛍光ディスプレイ側Sに配置されている、慣用の低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 蛍光体及び低分子量UV吸収剤のための拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄い層並びに
- 蛍光ディスプレイ側Bに配置されている、1つ以上の蛍光体を含有し、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤をそのつど含有する、可塑剤含有ポリビニルアセタール及び/又はポリウレタン及び/又はEVAより成る少なくとも1つの第二の層
を有する中間層フィルムを含有する。
【0025】
拡散ブロックとして作用する薄い層は、好ましくはPET又は変性PETより成る薄いフィルムである。
【0026】
有利には、非変性PETの場合には二軸延伸PETが使用され、かつ変性PETの場合にはPETG(ポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタレート-co-エチレンテレフタレート)が使用される。さらに、拡散ブロックとして、ポリビニルアルコール若しくはエチレン変性ポリビニルアルコール(例えばExceval^((R)))より成る層並びにエチレンビニルアルコールコポリマー(例えばEVAL^((R)))が用いられることができる。
【0027】
1つ又は複数の蛍光体は、中間層組合せ物若しくは第二の層の製造に際して、例えば押出プロセスにおいてこれに導入してよい。その代わりに、第二の層の面の1つに施与することも可能である。これに関して、原則的に、すべての適した被覆法、印刷法、転写法、噴霧法等が考慮に入れられる。施与は、積層工程の段階になって初めて、1つ又は複数の蛍光体をまず、複合体における第3の側に相当する表面上又は拡散ブロックとして作用する層上に供給することによって行ってもよい。
【0028】
同様に、1つ又は複数の蛍光体は、フィルム形で供給された、拡散ブロックとして用いられる薄い層の励起源の方を向いた面上に、印刷又は被覆の形で持続的に施与されていてよい。付加的に又はその代わりに、拡散ブロックとして用いられる薄い層は、励起源から離れたその面上に、赤外線吸収性被覆又は反射性被覆を備えていてよい。
【0029】
第二の層は、蛍光体を省いた場合、0.38mmの層厚において2mm厚のPlanilux2枚の間で測定して10%超、有利には20%超、有利には35%超、最も有利には50%超のEN 410に準拠したUV透過率を有してよい。
【0030】
好ましくは、第一及び第二の層は、可塑化されたポリビニルアセタール、殊に可塑剤含有ポリビニルブチラール(n-ブチラール及び/又はイソブチラール)、PU又はEVAから成る。
【0031】
本発明の第二の実施形態においては、本発明による蛍光ディスプレイは、
- 蛍光ディスプレイ側Sに配置されている、慣用の低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 蛍光ディスプレイ側Bに配置されている、この層上又はこの層に配置された拡散傾向の低い蛍光体
を有する中間層フィルムを含有する。
【0032】
拡散傾向の低い蛍光体は、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、従来のフィルムの可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)であってよい。
【0033】
この実施形態の利点は、蛍光体が高い局所濃度で第3の側に直接接する境界面に留まることである。その後ろにあるフィルム層は、たしかに移動可能なUV吸収剤を含有するが、しかしこれは蛍光体の前には到達し得ない。
【0034】
蛍光体は、印刷されてよいか、被覆又は噴霧によって施与されていてよいか、又は従来のフィルムとガラス側3との間のガラス/ガラスラミネート中に付加的に積層された薄いフィルムの形で導入されてよいか、又は従来のフィルム上に押出された層に導入されていてよい。
【0035】
本発明の第三の実施形態においては、本発明による蛍光ディスプレイは、
- 蛍光ディスプレイ側Sに配置されている、拡散傾向の低いUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 蛍光ディスプレイ側Bに配置されている、この層上又はこの層に配置された拡散傾向の低い蛍光体
を有する中間層フィルムを含有する。
【0036】
殊に、拡散し得ないか又は非常に僅かしか拡散し得ないUV吸収剤は、ポリマーUV吸収剤、例えばHallstar社のPolycrylene S1、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、フィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤であってよい。この第一のフィルムには、慣用の低分子量UV吸収剤は含まれていないか、若しくは蛍光体の励起波長では吸収しないUV吸収剤のみを含有する(例えばUV-B-吸収剤、例示的に挙げるとすればSandovur VSUC)。
【0037】
この実施形態の第一の変形例においては、第一の層/フィルムに、拡散傾向の低い蛍光体が印刷される。
【0038】
この実施形態の第二の変形例においては、第3の側で、拡散傾向の低い蛍光体を含有する第二のフィルム又は層が導入される。
【0039】
本発明の第四の実施形態においては、本発明による蛍光ディスプレイは、
- 蛍光ディスプレイ側Sに配置されている、拡散し得ないか又は非常に僅かしか拡散し得ないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 蛍光ディスプレイ側Bに配置されている、UV吸収剤は含まないが、一方で蛍光体、有利には拡散傾向の低い蛍光体を含有する少なくとも第二の層
を有する中間層フィルムを含有する。
【0040】
この実施形態においては、蛍光体は、層の部分領域中にのみ含まれていてよく、これは、フロントウインドウにおいて通常用いられるシェードバンド/カラーバンド(Farbkeil/Farbband)の代わりに蛍光バンドを生む。層の内側では蛍光バンドを、かつ外側では顔料着色されたシェードバンドをコントラスト強調のために備えることも可能である。
【0041】
本発明の第五の実施形態においては、本発明による蛍光ディスプレイは、
- 蛍光ディスプレイ側Sに配置されている、慣用の低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 蛍光ディスプレイ側Bに配置されている、少なくとも1つの蛍光体を含有する拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム
- UV吸収剤を含有しないか又は蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層
を有する中間層フィルムを含有する。第二の層において用いられる蛍光体は、拡散を抑制するものであってはならない。
【0042】
本発明の上記実施形態においては、高い拡散能を有する低分子量(慣用の)UV吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール型の化合物、例えばTinuvin P型、Tinuvin 328型、Tinuvin 326型、Tinuvin 327型の化合物又はTinuvin 1577型又はCyasorb 1164型の置換されたフェニルトリアジンを用いてよい。
【0043】
本発明の上記実施形態においては、拡散能を有さないか又は低い拡散能のみを有するUV吸収剤として、例えば、ナノ粒子、例えばナノTiO_(2)、UV吸収性ポリマー、存在するマトリックスに難溶性のUV吸収剤、例えばベンゾオキサジノン型、僅かに置換されたジフェニルヒドロキシフェニルトリアジン型のUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、ポリビニルアセタールに化学的に結びついたUV吸収剤、例えばベントリアゾール系UV吸収剤、ポリマーに結合したクリレン基又はアルコキシクリレン基、殊にフェニル環の1つにアルコキシ基を有するもの(例えばUS7,964,245B2に記載)、例えばUS7008618B1に挙げられているUV吸収性ポリマー、又は置換された2-ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールであって、例えば、エステル基によって、ポリマー、殊にポリビニルアセタールに結合しているものを使用してよい。
【0044】
可塑化されたポリビニルアセタールの場合、UV吸収剤は難溶性と見なされ、そのつど可塑剤中で20℃にて5g/L未満の溶解度を有する。これに関する一例がCyasorb UV 3638Fである。
【0045】
UV吸収剤は、本発明によれば、0.005?5質量%、有利には0.1?2質量%、特に有利には0.2?1.0質量%、殊に0.1?0.8質量%の濃度で用いられることができる(そのつどUV吸収剤が含まれている層を基準として)。
【0046】
本発明の上記実施形態においては、低分子量の蛍光体として、公知のレーザー染料、典型的な蛍光染料、例えば置換されたクマリン、アクリジン並びに希土類金属の錯体が用いられることができる。
【0047】
本発明の上記実施形態においては、拡散傾向を有さないか又は僅かしか拡散傾向を有さない蛍光体として、例えば、蛍光性無機ナノ粒子、周囲マトリックスに難溶性の蛍光染料、例えば置換されたペリレン若しくはリレン又はキナクリドン誘導体、イオン基又はイオン特性を有する、例えばウラニンを有する蛍光染料並びにポリマー蛍光体が用いられることができる。
【0048】
一般に、ポリマーの蛍光体として、発光単位をポリマー鎖内に又はポリマー鎖に結合して含む蛍光性ポリマーが用いられることができる。周囲マトリックス中でのそのようなポリマーの拡散傾向が最小となるように、本発明により使用可能な蛍光性ポリマーは、2000g/モル超、有利には5000g/モル超、最も有利には10000g/モル超のモル質量Mnを有しているべきである。
【0049】
周囲マトリックス中若しくは周囲マトリックス表面の蛍光性ポリマーの局所濃度は、高い蛍光性が得られ、かつ強い蛍光消光が起こらないように選択される。
【0050】
本発明の枠内で用いられることができる蛍光性ポリマーの例は、数ある中でも、ポリ(9-アントラセニルメチルアクリレート)、ポリ(9-アントラセニルメチルメタクリレート)、ポリ(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物-alt-アクリジンイエローG)、ポリ(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物-alt-3,6-ジアミノアクリジンヘミスルフェート)、ポリ(フルオロセインO-アクリレート)、ポリ(フルオロセインO-メタクリレート)、ポリ[(メチルメタクリレート)-co-(7-(4-トリフルオロメチル)クマリンアクリルアミド)]、ポリ[(メチルメタクリレート)-co-(9-アントラセニルメチルメタクリレート)]、ポリ[(メチルメタクリレート)-co-(7-(4-トリフルオロメチル)クマリンメタクリアミド)]、ポリ(ピロメリット酸二無水物-alt-アクリジンイエローG)、ポリ(1,4-フェニレン)(PPP)、ポリフルオレン(PFO)、ポリ(チオフェン)、ポリキノリン、ポリ[2,5-ビス(3’,7’-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[9,9-ビス-(2-エチルヘキシル)-9H-フルオレン-2,7-ジイル]、ポリ[2-(2’,5’-ビス(2’’-エチルヘキシルオキシ)フェニル)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ{[2-[2’,5’-ビス(2’’-エチルヘキシルオキシ)フェニル]-1,4-フェニレンビニレン]-co-[2-メトキシ-5-(2’-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]}、ポリ[(2,5-ビスオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ(2,5-ビス(1,4,7,10-テトラオキサウンデシル)-1,4-フェニレンビニレン)、ポリ(3-シクロヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)、ポリ(9,9-ジ-n-ドデシルフルオレニル-2,7-ジイル)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(アントラセン-9,10-ジイル)]、ポリ(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-alt-(2,5-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(9,9-n-ジヘキシル-2,7-フルオレン-alt-9-フェニル-3,6-カルバゾール)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(9-エチルカルバゾール-2,7-ジイル)]、ポリ(2,5-ジヘキシルオキシ-1,4-フェニレンビニレン)、ポリ(9,9-ジ-n-オクチルフルオレニル-2,7-ジイル)、ポリ(3-オクチルチオフェン-2,5-ジイル)、ポリ(3-オクチルチオフェン-2,5-ジイル)、ポリ[(o-フェニレンビニレン)-alt-(2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-p-フェニレンビニレン)]、ポリ[トリス(2,5-ビス(ヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン)-alt-(1,3-フェニレンビニレン)]、ポリ[(1,4-フェニレン-1,2-ジフェニルビニレン)]、ポリキノリンである。
【0051】
本発明により用いられる蛍光体の励起は、有利には、光の非可視領域、例えば300?420nmの波長領域、有利には350?400nmの波長領域における照射によって行われる。照射源として、殊にUVレーザーまたはUVLEDを用いてよい。
【0052】
本発明により使用される中間層フィルム、殊に蛍光体が中に又は表面に配置されている中間層フィルムは、有利には、可塑剤含有ポリビニルアセタールより成る1つ以上の層を含んでいてよく、これらは、
a. 0?50、0?40、0?35、5?35の範囲のアルカリ滴定値(Alkalititer)を有する。これによって、遊離酸又は高いアルカリ度による蛍光体の分解が回避される。
b. 光安定剤、例えばHAS/HALS/NOR-HALS(立体障害アミノエーテル)をラジカル連鎖反応の抑制のために含有し、
c. フェノール系酸化防止剤、例えばLowinox 44B25又はIrganox 245型のBHTを含有し、
d. 音響減衰層を含有し、そうして本発明よる中間層フィルムは、2.1mm厚のガラス2枚の間に貼り合わせて、かつ20℃でISO TS 16940に準拠した測定を行った場合に0.15超、有利には0.20超、有利には0.25超の1次モードの損失係数を有する。音響減衰層も同様に可塑剤含有ポリビニルアセタールから成っていてよい。
【0053】
光安定剤は、殊にHAS/HALS/NOR-HALS(立体障害アミノエーテル)型の立体障害アミン、例えばCiba Specialities社の市販製品Tinuvin 123(NOR-HALS)、Tinuvin 144、Tinuvin 622、Tinuvin 770及びそのジ-N-メチル化された誘導体であってよい。特に良く適しているのは、旭電化社のADK Stab LA-57、LA-52若しくはLA-62又はBASF AGのUVINUL 4050Hである。
【0054】
光安定剤は、殊に0.001?1質量%(フィルム混合物を基準として)の割合で用いられる。
【0055】
日光の方を向いた側又は層Sは、2.1mm厚の透明ガラス2枚の間に組み合わせてISO 13837,Convention“A”(2008)に準拠した測定を行った場合に30%未満、20%未満、15%未満、8%未満、6%未満、5%未満、有利には4%未満、有利には3%未満、最も有利には2%未満のUV透過率T_(UV)(400)を有する。
【0056】
日光の方を向いた側又は層Sは、2.1mm厚の透明ガラス2枚の間に組み合わせて、かつISO 13837(2008)に準拠したUV/VIS透過スペクトルの測定を行った場合に50%以下、30%以下、15%以下、10%以下、5%以下、有利には3%以下、有利には2%以下、最も有利には1%以下のUV透過率T_(UV)を有する。
【0057】
本発明の更なる対象は、自動車両のフロントウインドウ、自動車両のサイドウインドウ、飛行機、鉄道又は船舶用のグレイジングとしての、及び建築領域、例えばショーウインドウ、エレベーター又はファサードグレイジングにおいて適用するための、上記特性及び/又は組成を有する中間層フィルムを使用したガラス/ガラスラミネートより成る本発明による蛍光ディスプレイの使用である。
【0058】
これに加えて、更なる1つの変形例においては、ガラス/ガラスラミネートの第4の側に、280?420nmの波長領域で反射防止作用のある面(コーティング)が備わっていてよい。
【0059】
更に別の変形例においては、このガラス/ガラスラミネートは、光線の通り抜けを簡単にするために、内側のガラス板について、外側のガラス板より小さい厚みを有してよい。自動車両への適用のために、外側の板は、3m以下、有利には2.6mm未満、有利には2mm未満の厚みを有する。関連する内側の板は、有利には、2.6mm以下、2.2mm以下、2.0mm以下、1.8mm以下、1.6mm以下の厚みを有する。
【0060】
本発明の更なる対象は、上記の特性及び/又は組成を有する中間層フィルムを使用したガラス/ガラスラミネートより成る本発明による蛍光ディスプレイを有するフロントウインドウ及びサイドウインドウ及び場合によりUV吸収性ガラスより成るか又は当該ガラスを有する透明なルーフモジュールを備えた自動車両のコンパートメントルーム(KFZ-Fahrgastzelle)である。
【0061】
これによって、フロントウインドウにおける蛍光ディスプレイは、外光の入射及びそれが原因であるコントラスト損失又は制御されない励起から保護される。UV吸収性ガラスは、例えば、UV吸収性の一体式ガラス、又はUV吸収剤を含有する慣用のPVBフィルムを有する複合ガラスであってよい。有利には、上述のUV吸収性ガラスは、ISO 13837,Convention“A”(2008)に準拠した評価及び測定を行った場合に10%未満、有利には4%未満のUV透過率を有する。
【0062】
本発明により使用される中間層フィルムは、個々に押出された部分フィルムを一つにすることによって、又は有利には部分フィルムの共押出によって製造することができる。
【0063】
ポリビニルアセタールより成る本発明により使用される中間層フィルムは、PBVフィルムのために公知の以下の可塑剤の少なくとも1つより成る可塑剤又は可塑剤混合物を含有してよい:ジ-2-エチルヘキシルセバケート(DOS)、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジヘキシルアジペート(DHA)、ジブチルセバケート(DBS)、トリエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート(3G7)、テトラエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート(4G7)、トリエチレングリコール-ビス-2-エチルヘキサノエート(3GO若しくは3G8)、テトラエチレングリコール-ビス-n-2-エチルヘキサノ-エト(4GO若しくは4G8)、ジ-2-ブトキシエチルアジペート(DBEA)、ジ-2-ブトキシエトキシエチルアジペート(DBEEA)、ジ-2-ブトキシエチルセバケート(DBES)、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、トリエチレングリコール-ビス-イソノナノエート、トリエチレングリコール-ビス-2-プロピルヘキサノエート、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TOF)及びジプロピレングリコールベンゾエート。
【0064】
ポリビニルアセタールより成る本発明により使用される中間層フィルムは、18?36質量%、有利には22?30質量%の可塑剤含有率を有してよい。
【0065】
本発明により使用される中間層フィルムは、当業者の公知の更に別の添加剤、例えば、水の残留量、UV吸収剤、酸化防止剤、接着調整剤、蛍光増白剤、安定剤、染料、加工助剤、有機若しくは無機ナノ粒子、熱分解法シリカ及び/又は表面活性物質を含有してよい。
【0066】
接着調整剤(粘着防止剤)とは、本発明の枠内では、ガラス面に対する可塑剤含有ポリビニルアセタールフィルムの粘着性を調整することができる化合物を意味する。この種類の化合物は当業者に知られており、実際に、このために有機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、例えば酢酸カリウム/マグネシウム又は相応する2個より多い炭素原子を有するカルボン酸塩が用いられる。
【0067】
ポリビニルアセタールの製造のために、ポリビニルアルコールが水に溶解され、かつアルデヒド、例えばブチルアルデヒドにより酸触媒の添加の下でアセタール化される。沈殿したポリビニルアセタールは分離され、中性に洗浄され、場合によりアルカリ性に調整された水性媒体に懸濁され、その後、新たに中性に洗浄され、かつ乾燥される。
【0068】
ポリビニルアセタールのポリビニルアルコール含有率は、アセタール化の際に用いられるアルデヒドの量によって調整されることができる。アセタール化を2?10個の炭素原子を有する他の又は複数のアルデヒド(例えばn-ブチルアルデヒド及び/又はイソブチルアルデヒド)、バレルアルデヒド)を用いて実施することも可能である。
【0069】
可塑剤含有ポリビニルアセタールをベースとするフィルムは、有利には架橋されていないポリビニルブチラール(PVB)を含有し、これはポリビニルアルコールのブチルアルデヒドによるアセタール化によって取得される。
【0070】
架橋されたポリビニルアセタール、殊に架橋されたポリビニルブチラール(PVB)の使用も同様に可能である。適した架橋されたポリビニルアセタールは、例えばEP1527107B1及びWO2004/063231A1(カルボキシル基含有ポリビニルアセタールの熱的自己架橋)、EP1606325A1(ポリアルデヒドと架橋したポリビニルアセタール)及びWO03/020776A1(グリオキシル酸と架橋したポリビニルアセタール)に記載されている。これらの特許出願の全開示内容を、参照をもって本開示に含める。
【0071】
ポリビニルアルコールとして、本発明の枠内では、加水分解された酢酸ビニル/エチレン-コポリマーより成るターポリマーも用いられることができる。これらの化合物は、一般に92モル%超が加水分解されており、かつエチレンをベースとする単位(例えばKuraray Europe GmbHの“Exceval”型)1?10質量%を含有する。
【0072】
さらに、ポリビニルアルコールとして、本発明の枠内では、酢酸ビニルと少なくとも1種の更なるエチレン性不飽和モノマーとより成る加水分解されたコポリマーも用いることができる。
【0073】
ポリビニルアルコールは、本発明の枠内では、純粋に又は異なる重合度又は加水分解度を有するポリビニルアルコールの混合物として用いられることができる。
【0074】
本発明により使用される中間層フィルムは、殊に、0.1?11モル%、ここで、有利には0.1?4モル%、特に有利には0.1?2モル%の、若しくは音響を減衰する付加的な層として使用される場合は5?8モル%の割合のポリビニルアセテート基を有するポリビニルアセタールを含有してよい。
【0075】
本発明により使用される中間層フィルムの製造のために、部分フィルムをまず個々に押出によって製造し、引き続き機械的に、例えばフィルムロールに一緒に巻き取ることによってつなぎ合わせてよい。
【0076】
中間層フィルムを部分フィルムの同時共押出によって製造することも可能である。共押出は、例えば、相応して備え付けられた多層ノズル又はフィードブロックにより行ってよい。
【0077】
自動車領域においては、上方領域にいわゆるカラーバンドを有するフィルムが頻繁に使用される。このために、相応して着色された溶融ポリマーを有するフィルムの上部が共押出されるか、又は多層系において部分フィルムの1つが異なる色を有していてよい。本発明において、これは少なくとも1つの部分フィルムを完全に又は部分的に着色することによっても実現可能である。
【0078】
本発明により使用される中間層フィルムの製造は、一般に押出又は共押出によって行われ、これにより、特定の条件下(溶融圧力、溶融温度及びツール温度)で、溶融損傷表面、すなわち確率論的な表面粗さ(stochastische Oberflaechenrauheit)が得られる。
【0079】
代替案として、既に製造された中間層フィルムに、少なくとも1つのロール対の間への型押しプロセスによって、非確立論的な、規則的な粗さを付与してもよい。型押しされたフィルムは、一般に複合ガラス製造において改善された脱気挙動を有し、有利には自動車領域において用いられる。
【0080】
本発明により使用される中間層フィルムは、製造法とは無関係に、15?150μmの粗さR_(z)、有利には15?100μmの粗さR_(z)、特に有利には20?80μmの粗さR_(z)、殊に30?75μmの粗さR_(z)を有する表面構造を片側若しくは特に有利には両側に持つ。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】通常の構造のフロントウインドウの4つのガラス面を有するガラス/ガラスラミネートの基本的な配置を示す図
【図2】本発明による中間層フィルムを有するガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイの基本的な配置を示す図
【0082】

蛍光体の不所望の励起はフィルムの曇りにつながり、これはColorquest XE機器、光源C/2°を用いて測定したヘイズ値により、ASTM D 1003に従って測定することができる。
【0083】
染料の不所望の励起によって得られる蛍光を模擬実験するために、蛍光染料を含有する中間層フィルムのヘイズ値を測定した。中間層フィルムは、2枚の、すなわち2mm厚のPlaniluxガラス板2枚の間に貼り合わせた。
【0084】
この測定においては、測定装置の光源は、日射(可視光+UV)を表し、これは外側(S側)から蛍光性フィルムに当たり、かつ不自然なヘイズにつながる。なぜなら、染料は意図せず励起されるからである。検出器は、B側(観察者)に配置している。
【0085】
比較例V1では、光源の前に、蛍光性フィルム/PETフィルムと、標準UV保護(V2)を備えたフィルムとより成るラミネートを配置した。
【0086】
例1では、光源の前に、蛍光性フィルム、PETフィルム及び本発明によるUV保護を備えたフィルムより成るラミネートを配置した。
【0087】
PETフィルムは23μm厚であり、蛍光体とUV吸収剤との空間的な分離に用いた。
【0088】
【表1】

【0089】
標準UV保護を使用した場合、意図しない染料の励起は十分には防止されない。これによって、曇りは1の値を上回り、これは光学的に透明なガラス板には許容され得ない値となる。
【0090】
本発明によるUV保護によって初めて、UV光が必要な程度でフィルタリングされ、その結果、不所望の蛍光が抑制され、かつ曇り/ヘイズが許容され得る値にまで下がる。
【符号の説明】
【0091】
B 蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側、 S 日光の方を向いた側
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつUV吸収剤および/または蛍光体の拡散により前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがないことを特徴とする、前記蛍光ディスプレイ。
【請求項2】
日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 蛍光体及び低分子量UV吸収剤のための拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム並びに
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、蛍光体を含有し、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層
を有することを特徴とする、蛍光ディスプレイ。
【請求項3】
日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体
を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用することを特徴とする、蛍光ディスプレイ。
【請求項4】
日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、拡散傾向の低いUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体
を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用し、前記拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用することを特徴とする、蛍光ディスプレイ。
【請求項5】
日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層の第一の側上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、前記第一の層の第二の側上に配置された、拡散傾向の低いUV吸収剤
を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用し、前記拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用することを特徴とする、蛍光ディスプレイ。
【請求項6】
日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、
前記中間層フィルムが、
- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
- 少なくとも1つの蛍光体を含有する拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム
- 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層
を有することを特徴とする、蛍光ディスプレイ。
【請求項7】
前記中間層フィルムが、0?50の範囲のアルカリ滴定値を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの層を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項8】
前記中間層フィルムが、ラジカル連鎖反応を抑制するための光安定剤を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの層を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項9】
前記中間層フィルムが、フェノール系酸化防止剤を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの層を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項10】
前記中間層フィルムが、少なくとも1つの音響減衰層を含んでおり、そうして前記中間層フィルムは、2.1mm厚のガラス2枚の間に貼り合わせて、かつ20℃にてISO TS 16940に準拠した測定を行った場合に0.15超の1次モードの損失係数を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項11】
前記日光の方を向いた側Sは、2.1mm厚の透明ガラス2枚の間に組み合わせてISO 13837,Convention“A”(2008)に準拠した測定を行った場合に30%未満のUV透過率T_(UV)(400)を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項12】
前記日光の方を向いた側Sは、2.1mm厚の透明ガラス2枚の間に組み合わせてISO 13837(2008)に準拠したUV/VIS透過率スペクトルの測定を行った場合に50%以下のUV透過率T_(UV)(400)を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項13】
自動車両のフロントウインドウ、自動車両のサイドウインドウ、飛行機、鉄道又は船舶用のウインドウのための、或いは建築領域において適用するためのディスプレイ系として用いるための、請求項1から12までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイの使用。
【請求項14】
ショーウインドウ、エレベーター又はファサードウインドウにおいて適用するためのディスプレイ系として用いるための、請求項13記載の蛍光ディスプレイの使用。
【請求項15】
請求項1から12までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイを含有するフロントウインドウと、UV吸収性ガラスより成るか又は当該UV吸収性ガラスを有するサイドウインドウとを有する自動車両のコンパートメントルーム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-04-21 
出願番号 特願2015-552055(P2015-552055)
審決分類 P 1 651・ 857- YAA (C03C)
P 1 651・ 853- YAA (C03C)
P 1 651・ 851- YAA (C03C)
P 1 651・ 121- YAA (C03C)
P 1 651・ 852- YAA (C03C)
P 1 651・ 537- YAA (C03C)
P 1 651・ 16- YAA (C03C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増山 淳子  
特許庁審判長 服部 智
特許庁審判官 菊地 則義
宮澤 尚之
登録日 2018-06-15 
登録番号 特許第6351626号(P6351626)
権利者 クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
発明の名称 可塑剤含有ポリビニルアセタールより成る中間層フィルムを含有する蛍光ディスプレイ  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  
代理人 バーナード 正子  
代理人 バーナード 正子  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  

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