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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E02D
審判 全部申し立て 2項進歩性  E02D
管理番号 1363983
異議申立番号 異議2019-700863  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-01 
確定日 2020-05-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6515731号発明「山留め壁の支持構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6515731号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。 特許第6515731号の請求項2に係る特許を維持する。 特許第6515731号の請求項1に係る特許についての特許異議申立をを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6515731号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成27年8月7日に出願され、平成31年4月26日にその特許権の設定登録がされ、令和1年5月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和1年11月1日に特許異議申立人岡林茂により特許異議の申立てがされ、当審は、令和2年1月24日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和2年3月25日に意見書の提出及び訂正の請求を行ったものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「請求項1に記載の山留め壁の支持構造において、前記控え壁を貫通するように打設されてなる地盤アンカーを備え、該地盤アンカーが、頭部を山留め壁に設置された腹起しに定着されるとともに、定着体を前記芯材の背面に当接するように定着されることを特徴とする山留め壁の支持構造。」と記載されているのを、
「山留め壁の背面に直交して接合される地盤改良壁よりなる控え壁と、該控え壁の地山側側端部に備えられる芯材と、該芯材の頭部と前記山留め壁の頭部とを連結する緊張材と、を備える山留め壁の支持構造において、前記控え壁を貫通するように打設されてなる地盤アンカーを備え、該地盤アンカーが、頭部を山留め壁に設置された腹起しに定着されるとともに、定着体を前記芯材の背面に当接するように定着されることを特徴とする山留め壁の支持構造。」に訂正する。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0007】に「該芯材の頭部と前記山留め壁の頭部とを連結する緊張材と、を備えることを特徴とする。」と記載されているのを、「該芯材の頭部と前記山留め壁の頭部とを連結する緊張材と、を備える山留め壁の支持構造において、前記控え壁を貫通するように打設されてなる地盤アンカーを備え、該地盤アンカーが、頭部を山留め壁に設置された腹起しに定着されるとともに、定着体を前記芯材の背面に当接するように定着されることを特徴とする。」に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0012】の記載を削除する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項2は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項2は、実質的な内容の変更を伴うものではない。
したがって、訂正事項2は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

(3)訂正事項3及び4について
訂正事項3及び4は、訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の請求項1及び2の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 一群の請求項について
訂正前の請求項1?2について、請求項2は、直接的に請求項1を引用するものであって、請求項1に係る訂正事項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?2に対応する訂正後の請求項1?2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による上記訂正事項1?4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?2〕について訂正を認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
本件発明2
「【請求項2】
山留め壁の背面に直交して接合される地盤改良壁よりなる控え壁と、該控え壁の地山側側端部に備えられる芯材と、該芯材の頭部と前記山留め壁の頭部とを連結する緊張材と、を備える山留め壁の支持構造において、前記控え壁を貫通するように打設されてなる地盤アンカーを備え、該地盤アンカーが、頭部を山留め壁に設置された腹起しに定着されるとともに、定着体を前記芯材の背面に当接するように定着されることを特徴とする山留め壁の支持構造。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件請求項1に係る特許に対して令和1年1月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明である。または、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得ることである。したがって、その特許は、特許法第29条第1項第3号、または、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許の請求項1に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第1号証:田中大輔 外2名“控杭と山留め壁間を地盤改良したタイロ ッド工法による山留め挙動の評価”、日本建築学会、日本建 築学会大会学術講演梗概集、2001年9月、p.585? 586
(参考)甲第2号証:特開平7-279172号公報

2 各甲号証の記載
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は、当決定で付した。以下同様。)
(ア)「1.はじめに
軟弱地盤における大規模平面の掘削工事においては、掘削面内に切梁を架設しないで支保工として控杭を設けたタイロッド工法を用いる場合がある。この工法は、背面側に控杭を設けるため、敷地の余裕度がないと採用できない。そこで、控杭までの距離を削減するため、控杭と山留め壁間を地盤改良し、頭部をタイロッドで緊結した山留め工法を計画・実施した。このような山留め壁の挙動については計測事例がなく、また設計法も十分に確立されていない。本報告では、一般的な控杭とタイロッドで緊結した山留め挙動との比較から、控杭と山留め壁間を地盤改良した山留め挙動について、実測結果に基づいた評価方法を示す。」(第585頁左欄第1-第12行)

(イ)「2.地下工事と地盤の概要
地盤概要と山留め壁の断面図及び平面図を図-1に示す。掘削平面は約160×100m、掘削深度はGL-3.2?-6.0mで、表層から約GL-25mまで埋土及びN値0?3程度の沖積粘性土における掘削工事である。一般部の山留め壁は、深層混合処理工法により施工し、H形鋼を芯材として挿入したものであり、支保工は地盤改良杭にC形鋼を芯材として挿入したものを控杭としたタイロッド工法である。一部敷地境界まで距離のない場所では、控杭の受働崩壊面と山留め壁の主働崩壊面が交差するため、H形鋼を芯材とした控杭と山留め壁間を地盤改良した山留め工法を採用した。・・・」(第585頁左欄第13-第23行)

(ウ)「3.山留め挙動の実測結果
・・・A点ではタイロッド軸力は掘削に伴う増加がほとんど見られず、地盤改良したGL-12m以浅における土留め壁の曲げ変形も非常に小さい。また、控杭の変位は山留め壁の変位とほぼ同程度である。よって、A点の控杭と山留め壁は一体として挙動していることがわかる。なお、A点における
タイロッド軸力は、控杭と山留め壁を一体化するため予め導入した引張り力程度で一定であった。」(第585頁左欄下から12行-右欄第8行)

(エ)「5.まとめ
控杭を用いたタイロッド工法による山留め工法において、控杭と山留め壁間を地盤改良して一体とした場合の山留め挙動の実測結果と評価結果をまとめると以下の通りである。
○1 敷地限界まで距離がない場合においても、控杭と山留め壁間を地盤改良によって一体とすることにより、変位が小さく安定した山留め工法が可能となる。
○2 控杭との間を地盤改良した山留め壁は一体に自立山留め壁として挙動し、改良体の底面抵抗とリバウンドによる変位戻り量を考慮することで、地盤改良した自立山留め壁の評価法に準じて評価が可能である。」(第586頁左欄下から11-1行)(なお、「○1」等は、○の中に数字の1等が入る。)

(オ)第585頁の図-1




なお、上記図中の枠は、申立人が記入したものであり、甲1発明の認定には考慮していない。

上記図-1の「(2)A点」の【断面図】又は【平面図】から、以下の点が看て取れる。
a【断面図】
(a)山留め壁芯材を含む縦方向の部材が、厚さ1mであり、地表面から地下16mまで延びている点。
(b)控杭芯材を含む控杭が、地表面から地下12mまで延びている点。
(c)山留め壁芯材を含む縦方向の部材と控杭芯材を含む控杭との間に位置する改良体が地表面から地下12mまで延びている点。
(d)山留め壁の改良体側の端部から、控杭の改良体とは反対側の端部までの水平距離が、5.5mである点。
(e)改良体が内部上部にタイロッドを配置している点。
(f)山留め壁芯材を含む縦方向の部材が、控杭芯材を含む控杭、山留め壁芯材を含む縦方向の部材と控杭芯材を含む控杭との間に位置する改良体、及び、改良体の内部上部に配置されたタイロッドと一体とされた構造。

b【平面図】
(a)山留め壁芯材を含む部材と、控杭芯材を含む部材と、山留め壁芯材を含む部材と控杭芯材を含む部材との間であってこれら両方の部材に接する、内部にタイロッドを含む部材が配置された点。
(b)山留め壁芯材を含む部材に対して、上記した内部にタイロッドを含む部材と、控杭芯材を含む部材とが一体となって直交するように設けられている点。
(c)上記した内部にタイロッドを含む部材の幅の寸法が1mである点。

(カ)上記(イ)並びに(オ)のa(a)、(c)、(f)及びb(a)、(b)からいえること

上記(イ)並びに(オ)のa及びbは、同一地下工事における山留め壁の構造についての記載であることから、上記(オ)のa(a)、(c)、(f)の「山留め壁芯材を含む縦方向の部材」、及びb(a)、(b)の「山留め壁芯材を含む部材」は、いずれも上記(イ)の「H形鋼を芯材として挿入した」「山留め壁」に対応する。

(キ)上記(イ)並びに(オ)のa(b)、(c)、(f)及びb(a)、(b)からいえること

上記(イ)並びに(オ)a及びbは、同一地下工事における山留め壁の構造についての記載であることから、(オ)のa(b)、(c)、(f)の「控杭芯材を含む控杭」及びb(a)、(b)の「控杭芯材を含む部材」は、上記(イ)における「C形鋼を芯材として挿入した」「地盤改良杭」に対応する。また、(オ)a(b)、(c)、(f)及びb(a)、(b)の「控杭芯材」は、上記(イ)における「地盤改良杭」に芯材として挿入された「C形鋼」に対応する。

(ク)上記(ア)並びに(オ)a(c)、(e)、(f)及びb(a)、(b)、(c)からいえること

上記(ア)及び(オ)のa及びbは、同一地下工事における山留め壁の構造についての記載であることから、上記(オ)のa(c)、(f)の「山留め壁芯材を含む縦方向の部材と控杭芯材を含む控杭との間に位置する改良体」、(オ)のa(e)の「内部上部にタイロッドを配置し」た「改良体」、及び(オ)のb(a)、(b)、(c)の「内部にタイロッドを含む部材」は、(ア)の「控杭と山留め壁間」において改良された地盤に対応する。

(ケ)上記(オ)?(ク)を総合すると、上記(オ)の第585頁の図-1の「(2)A点」の【断面図】又は【平面図】には、以下の事項が記載されている。

a【断面図】
(a)「H形鋼を芯材として挿入した」「「山留め壁」が、厚さ1mであり、地表面から地下16mまで延びている点。
(b)「C形鋼を芯材として挿入した」「地盤改良杭」が、地表面から地下12mまで延びている点。
(c)「H形鋼を芯材として挿入した」「山留め壁」と、「C形鋼を芯材として挿入した」「地盤改良杭」との間に位置する「改良体」が地表面から地下12mまで延びている点。
(d)山留め壁の改良体側の端部から、地盤改良杭の改良体とは反対側の端部までの水平距離が、5.5mである点。
(e)改良体の内部上部にタイロッドを配置している点。
(f)山留め壁が、「C形鋼を芯材として挿入した」「地盤改良杭」、「H形鋼を芯材として挿入した」「山留め壁」と「地盤改良杭」との間にある「改良体」、及び、「改良体」の内部上部に配置された「タイロッド」と一体とされた構造。

b【平面図】
(a)「山留め壁」と、「地盤改良杭」と、「山留め壁」と「地盤改良杭」との間であってこれら両方に接する「改良体」が配置された点。
(b)「山留め壁」に対して、「改良体」と、「地盤改良杭」とが一体となって直交するように設けられている点。
(c)「改良体」の幅の寸法が1mである点。

イ 甲第1号証に記載された発明
上記ア(ア)?(エ)及び(ケ)より、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「C形鋼を芯材として挿入した地盤改良杭とH形鋼を芯材として挿入した山留め壁間を地盤改良し、頭部をタイロッドで緊結した山留め工法を実施したものであって、
前記山留め壁と、前記地盤改良杭と、前記山留め壁と前記地盤改良杭との間であってこれら両方に接する改良体が配置され、前記山留め壁に対して、改良体と、前記地盤改良杭とが一体となって直交するように設けられ、
前記山留め壁と前記地盤改良杭との間に位置する改良体は、地表面から地下12mまで延びており、
前記山留め壁の改良体側の端から、前記地盤改良杭の改良体とは反対側の端までの水平距離が、5.5mであり、前記改良体の幅の寸法が1mであり、
前記地盤改良杭が、地表面から地下12mまで延びており、
タイロッド軸力が、前記地盤改良杭と前記山留め壁を一体とするため予め導入される、
山留め壁の構造。」

(2)甲第2号証
ア 甲第2号証の記載
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の方法にあっては、アンカーの定着長さを確保しなければならず、しかも地盤強度が弱い軟弱地盤ではアンカー体としての機能は期待できなかった。
・・・・
【0013】タイロッド5の先端には支圧用座金付きナット5aが設けられている。また、5bはアンカー孔4からのセメントミルクの噴出を防止するためにタイロッド5の周囲に設けたパッカーである。
・・・・
【0016】この鋼杭8は、先端部をテーパ状に切欠いた一対の鋼材8a同士を前記切欠き部8b同士が拡開すべく対向配置し、長手方向に沿って中割れ部となる所定の隙間8cを保持して上部を連結板8dによって連結したものある。
・・・・
【0018】押し込まれた鋼杭8は最終的にはフック部6aの位置まで下降し、その先端切欠き部8bをガイドとしてタイロッド5の先端部を隙間8cの内部に挿通する。このときナット5aは隙間8cの外側より突出している。このように鋼杭8によってタイロッド5を捕捉した後さらに鋼杭8を下降させると、各ガイドパイプ9は棒鋼6のフック部6の曲げの部分に当接して変形または破壊されるため、下降動作の障害とはならない。
・・・・
【0020】この後は経時変化によるソイルセメント柱3aの硬化により鋼杭8は耐荷体杭の芯材としてそのまま活用され、タイロッド5のアンカー体として機能する。
【0021】最後に図5に示すようにタイロッド5の山留壁1側突出端を油圧ジャッキなどで緊張し、既に山留壁1の外側面に組付けられた腹起こし10に支圧金物11を介して固定することによってタイロッド5の緊張作業を完了し、山留壁1の支圧造成を完了する。」

(イ)図面
a 図2




b 図3の(a)及び(b)




c 図4




d 図5




3 当審の判断
(1)特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項について
ア 本件発明1
上記第2のとおり本件訂正請求により請求項1は削除された。

その結果、請求項1に係る特許についての特許異議申立ては、その対象を欠くこととなったので、不適法な申立てであり、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人が主張する特許異議申立理由
申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項2に係る発明について、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨、主張している。

2 判断
本件発明2と甲1発明とを対比すると、
(1)甲1発明の「山留め壁の構造」において、「控杭」は、山留め壁の支保工となっており、また、「改良体」は、上記第4の2(1)のア(エ)にあるように、山留め壁と一体となって、安定した山留めを可能としている。このことから、「控杭」及び「改良体」は「山留め壁」を安定するよう支持している構造体であるといえる。
したがって、甲1発明は、本件発明2の「山留め壁の支持構造」に相当する構成を備えている。

(2)甲1発明において、「改良体」は、「地表面から地下12mまで延び」たものであるとともに、「前記山留め壁の改良体側の端から、前記地盤改良杭の改良体とは反対側の端までの水平距離」は、「5.5m」とされている。この「5.5m」のうち「改良体」の水平方向の長さについては、図-1の断面図(上記第4の2(1)のア(オ)参照)により、「前記山留め壁の改良体側の端から、前記地盤改良杭の改良体とは反対側の端までの水平距離」から、1mとされた山留め壁の厚さと同程度であることが推認される「地盤改良杭」の厚さを除いた長さであり、また「幅の寸法」は「1m」であることから、「改良体」は、壁状のものであるといえる。さらに、「改良体」は、「山留め壁」と「一体となって直交するように設けられ」ていて、「山留め壁」を安定するよう支持していることから、「控え」として機能しているものである。
したがって、甲1発明の「改良体」は、本件発明2の「地盤改良壁よりなる控え壁」に相当する。

また、甲1発明の「改良体」は、「山留め壁」からみて、山留めすべき地盤側にあることから、山留め壁の背面に存在していることは明らかである。また、「改良体」は、前記したように「山留め壁」に対して「一体となって直交するように設けられ」たものである。
したがって、甲1発明は、本件発明2の「地盤改良壁」が「山留め壁の背面に直交」する構成を有している。

そうすると、甲1発明は、本件発明2の「山留め壁の背面に直交」する「地盤改良壁よりなる控え壁」に相当する構成を備えている。

(3)甲1発明の「地盤改良杭」は、「改良体」における「山留め壁」が存在する側と反対側に配置される、すなわち、「改良体」の地山側に配置されることは明らかである。また、「地盤改良杭」は、芯材として「C形鋼」が挿入されて備えられるものである。そして、芯材として挿入される前記「C形鋼」は、本件発明2の「芯材」に相当する。

そうすると、甲1発明の「改良体」の地山側に配置される「地盤改良杭」に芯材として挿入されて備えられる「C形鋼」と、本件発明2の「該控え壁の地山側側端部に備えられる芯材」とは、「控え壁の地山側」に「備えられる芯材」である点で共通する。

(4)甲1発明の「タイロッド」は、上記第4の2(1)のア(ウ)によれば、「軸力」が「控杭と山留め壁を一体化するため予め導入」されるものであるから、本件発明2の「緊張材」に相当する。

また、甲1発明は「C形鋼を芯材として挿入した地盤改良杭とH形鋼を芯材として挿入した山留め壁間」において「頭部をタイロッドで緊結した」ものであるから、「タイロッド」が「緊結」される部位が、「山留め壁」の「頭部」と、「C形鋼が芯材として挿入される」「地盤改良杭」の「頭部」との間であることは明らかである。
そして、甲1発明における、「改良体」の地山側にあって、「改良体」に「接するように」「配置され」るものであるところの、「C形鋼を芯材として挿入した地盤改良杭」の「頭部」と、本件発明2の「該控え壁の地山側側端部に備えられる芯材」(該芯材)の「頭部」とは、「該控え壁の地山側」に「備えられる部材の頭部」である点で共通する。

そうすると、甲1発明と、本件発明2は、「該控え壁の地山側」に「備えられる部材の頭部」と、「前記山留め壁の頭部とを連結する緊張材」である点で共通する。

したがって、本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「山留め壁の背面に直交する地盤改良壁よりなる控え壁と、
該控え壁の地山側に備えられる芯材と、
該控え壁の地山側に備えられる部材の頭部と、前記山留め壁の頭部とを連結する緊張材と、
を備える山留め壁の支持構造。」

<相違点1>
地盤改良壁よりなる控え壁が、本件発明2では、山留め壁の背面に直交して「接合」されるのに対して、甲1発明では、山留め壁の背面に直交しているものの、「接合」されるとの特定がなされていない点。

<相違点2>
芯材について、本件発明2では、控え壁の地山側側端部に備えられるのに対して、甲1発明では、「改良体」の地山側に配置される「地盤改良杭」に芯材として挿入されている点。

<相違点3>
緊張材を連結する部位が、本件発明2では、芯材の頭部であるのに対して、甲1発明では、C形鋼を芯材として挿入した地盤改良杭である点。

<相違点4>
本件発明2は、前記控え壁を貫通するように打設されてなる地盤アンカーを備え、該地盤アンカーが、頭部を山留め壁に設置された腹起しに定着されるとともに、定着体を前記芯材の背面に当接するように定着されるものであるのに対して、甲1発明は、そのような特定がなされていない点。

事案に鑑み、上記相違点4について検討する。
甲第2号証には、山留壁1、タイロッド5、及び耐荷体杭の芯材として活用される鋼杭8が記載され、タイロッド5の山留壁1側突出端を緊張し、山留壁1の外側面に組み付けられた腹起こし10に固定される点や、当該鋼杭8がタイロッド5のアンカー体として機能する点が記載されている。これらの点をふまえると、前記タイロッド5は、一応、地盤アンカーに相当するものといえる。
しかしながら、甲第2号証には、「山留め壁の背面に直交して接合される地盤改良壁よりなる控え壁」に相当する構成が記載されていないので、タイロッド5は控え壁を貫通するように打設されるものではない。
よって、甲第2号証に記載の控え壁を貫通しないタイロッド5を甲1発明に適用したとしても、甲1発明の改良体を貫通するようにタイロッド5を打設するものとはならない。また、タイロッド5を改良体を貫通するように打設することが自明であるとも認められない。
よって、甲1発明に甲第2号証に記載された事項を適用しても、本件発明2に想到することはできない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲第2号証の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

以上のとおりであるから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由を採用することができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、及び各証拠によっては、本件請求項2に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

また、請求項1に対する本件特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
山留壁の支持構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背面に控え壁を備えた山留め壁の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤を掘削して地下構造物を築造する場合、山留め壁を構築した後に、その内側の地盤の掘削工事を行なう。このとき、根切り部分において山留め壁が周囲の土圧により変形もしくは転倒し、これに伴って周辺地盤に沈下等の大規模な変状が発生するおそれがある。このような山留め壁の変形もしくは転倒を抑制するべく、山留め壁の背面に控え壁を設置する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、山留め壁本体の背面に複数の控え壁を構築することにより、地山から側圧が作用した際の山留め壁本体の変形もしくは転倒を抑制するとともに、複数の控え壁を、隣り合う控え壁に挟まれた地山にアーチング作用を発生させることのできる間隔をもって配置し、掘削工事に伴って山留め壁本体に作用する側圧を小さくしている。これにより、山留め壁本体と控え壁との接続部に作用する引張力を低減させ、山留め壁本体と控え壁との接続部に生じやすい引張り破壊を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-152841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、地山にアーチング作用を期待する場合、複数の控え壁を非常に狭い間隔で配置する必要があり、控え壁を構築するために多大な作業時間や材料コストを費やすこととなる。また、地山に対して確実にアーチング作用を発生させるための、控え壁の配置間隔を算定する方法が確立されておらず、ましてや、地山が軟弱地盤である場合には、アーチング作用が発生しない場合も想定される。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、地盤条件によることなく、地山から山留め壁に側圧が作用した際に、山留め壁とその背面に構築した控え壁を確実に一体に挙動させ、経済的かつ効率よく山留め壁を支持することの可能な、山留め壁の支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため本発明の山留め壁の支持構造は、山留め壁の背面に直交して接合される地盤改良壁よりなる控え壁と、該控え壁の地山側側端部に備えられる芯材と、
該芯材の頭部と前記山留め壁の頭部とを連結する緊張材と、を備える山留め壁の支持構造において、前記控え壁を貫通するように打設されてなる地盤アンカーを備え、該地盤アンカーが、頭部を山留め壁に設置された腹起しに定着されるとともに、定着体を前記芯材の背面に当接するように定着されることを特徴とする。
【0008】
本発明の山留め壁の支持構造によれば、控え壁に備えた芯材と山留め壁とを緊張材にて連結することにより、掘削工事の進行に伴って山留め壁に地山から側圧が作用した際に、山留め壁と控え壁との接合部の剥離を防止できる。このため、山留め壁と控え壁の接合部に引張り破壊を生じさせることなく、両者を確実に一体となって挙動させることでき、控え壁にて高められた山留め壁の曲げ剛性と、控え壁と地山との周面摩擦抵抗にて、効率よく山留め壁を支持し、変形および転倒を抑止することが可能となる。
【0009】
また、山留め壁と控え壁の接合部に発生する引張力を低減するべく、控え壁を狭い間隔で配置して地山にアーチング作用を発生させる必要がないため、地山と控え壁との間に生じる周面摩擦力や、山留め壁の曲げ剛性等を考慮し、経済的かつ効率のよい配置間隔で控え壁を構築することが可能となる。
【0010】
さらに、緊張材による山留め壁と控え壁に備えた芯材との連結を、頭部にて行うことにより、施工性良くまた確実に山留め壁と控え壁に備えた芯材とを連結することが可能となる。
【0011】
また、控え壁の地山側側端部に芯材を備えることで、掘削領域の掘削工事に起因して山留め壁に側圧が作用することに伴い、控え壁の地山側側端部に鉛直方向の引張力が作用して控え壁の地山側側端部近傍にひび割れが発生しても、一気にひび割れが進展して破壊する現象を抑止することが可能となる。加えて、芯材を備えない場合と比較して、控え壁の剛性が高まることにより、控え壁の平面視長さを短くすることができ、山留め壁と敷地境界との間隔が狭隘な場合にも、控え壁を用いた山留め壁の支持構造を採用することも可能となる。
【0012】(削除)
【0013】
本発明の山留め壁の支持構造によれば、控え壁に備えた芯材と山留め壁とが、緊張材と地盤アンカーにより、高さ方向に少なくとも2カ所で連結されるため、山留め壁と控え壁の接合部について、上端から下端に至るまで引張り破壊を生じさせることなく、山留め壁と控え壁との一体性をより高めることが可能となるだけでなく、山留め壁のはらみ出しを抑制することも可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、緊張材を介して控え壁と山留め壁を連結することにより、山留め壁に側圧が作用した際にも確実に両者を一体に挙動させ、控え壁にて高められた山留め壁の曲げ剛性と、控え壁と地山との周面摩擦抵抗にて、経済的かつ効率よく山留め壁の変形および転倒を抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における山留め壁の支持構造の概略を示す図である。
【図2】本発明における山留め壁の支持構造の平面を示す図である。
【図3】本発明における地盤アンカーを設置した事例を示す図である。
【図4】本発明における地盤アンカーを設置した他の事例(その1)を示す図である。
【図5】本発明における地盤アンカーを設置した他の事例(その1)の平面を示す図である。
【図6】本発明における地盤アンカーを設置した他の事例(その2)の平面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の山留め壁の支持構造は、山留め壁の背面に地盤改良壁よりなる控え壁を構築するにあたり、控え壁に芯材を備えるとともに、芯材と山留め壁とを緊張材にて連結することで、山留め壁と控え壁を一体に挙動させるものである。
【0017】
以下に、本発明の山留め壁の変形抑止構造を、図1?図5を用いて説明する。
なお、山留め壁の支持構造が適用される山留め壁は、ソイルセメント壁、コンクリート壁、泥水固化壁等、いずれにて構築されたものでもあってもよい。
【0018】
〈第1の実施の形態〉
図1及び図2で示すように、山留め壁1には、背面に接合するように地盤改良壁よりなる控え壁2が間隔を有して複数構築されており、控え壁2の地山側側端部2aには、鉛直状に立設された2本のH鋼材によりなる芯材3が備えられている。
【0019】
また、控え壁2に備えた芯材3の頭部は、アンボンド処理を施した緊張材4を介して山留め壁1の頭部に連結されている。具体的には、図1で示すように、控え壁2の地山側側端部2a近傍に地山をすき取ったすき取り部5が形成されており、このすき取り部5に芯材3の頭部が露出している。そして、山留め壁1の掘削領域6に面する前面であって、山留め壁1の頭部近傍に備えられている腹起し7と控え壁2の芯材3の頭部とが、緊張材4にて連結されている。このとき、緊張材4には必ずしも緊張力は導入されていない。
【0020】
このように、緊張材4にて山留め壁1と控え壁2に備えた芯材3とを連結することで、掘削領域6における掘削工事の進行に伴って、山留め壁1に地山から側圧が作用した際に、山留め壁1と控え壁2との接合部2bに発生する剥離を防止できる。
【0021】
このため、山留め壁1と控え壁2の接合部2bに引張り破壊を生じさせることなく、山留め壁1と控え壁2を確実に一体となって挙動させることができる。これにより、控え壁2にて高められた山留め壁1の曲げ剛性と、控え壁2と地山との周面摩擦抵抗にて、効率よく山留め壁1を支持し、山留め壁1の変形および転倒を抑止することが可能となる。
【0022】
また、山留め壁1と控え壁2の接合部2bに発生する引張力を低減するべく、控え壁2を狭い間隔で配置して地山にアーチング作用を発生させる必要がないため、地盤条件に影響されることなく、地山と控え壁2との間に生じる周面摩擦力や、山留め壁1の曲げ剛性等を考慮し、経済的かつ効率のよい配置間隔で控え壁2を構築することが可能となる。
【0023】
さらに、緊張材4による連結を、山留め壁1と控え壁2に備えた芯材3との頭部にて行うことにより、施工性良くまた確実に山留め壁1と控え壁2に備えた芯材3とを連結することが可能となる。
【0024】
また、控え壁2の地山側側端部2aに芯材3を備えることで、掘削領域6の掘削工事に起因して山留め壁に側圧が作用することに伴い、控え壁2の地山側側端部2aに鉛直方向の引張力が作用して、控え壁2の地山側側端部2a近傍に水平方向のひび割れが発生しても、一気にひび割れが進展して破壊する現象を抑止することが可能となる。
【0025】
加えて、芯材3を備えない場合と比較して控え壁2の剛性が高まることにより、控え壁2の平面視長さを短くすることができ、山留め壁1と敷地境界との間隔が狭隘な場合にも、控え壁2を用いた山留め壁1の支持構造を採用することが可能となる。
【0026】
なお、本実施の形態では、控え壁2をなす地盤改良壁を柱列式地盤改良工法にて構築したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、高圧噴射工法、壁式地盤改良工法等いずれの地盤改良工法にて構築されるものでもよい。また、芯材3は、必ずしも2本のH鋼材に限定されるものではなく、地盤改良壁の芯材として一般に用いられている鋼材であれば、いずれを採用してもよい。さらに、緊張材4についても、高い引張強さを備える部材でれば、タイロッドやPC棒鋼等いずれを採用してもよい。
【0027】
〈第2の実施の形態〉
ところで、地山が軟弱な場合において掘削領域6の掘削工事が進行すると、地山からの側圧により山留め壁1の中間高さ位置にはらみ出しを生じやすい。そこで、図3で示すように本実施の形態では、地盤アンカー8を採用している。
【0028】
つまり、山留め壁1の掘削領域6に面する前面であって、山留め壁1の中間高さ近傍に腹起し7を設置するとともに、控え壁2内に地盤アンカー8を打設し、地盤アンカー8の頭部を腹起し7に定着させるとともに、定着体81を控え壁2の内部に定着させている。
【0029】
なお、地盤アンカー8は、一般に広く知られているアンボンドシースに被覆された緊張材を採用し、緊張材の先端部近傍をアンボンドシースから露出させて定着体81を形成している。しかし、必ずしもこれに限定されるものではなく、一般に地盤アンカー工法にて採用されているアンカー部材であれば、地盤アンカー8にいずれを用いてもよい。また、地盤アンカー8における定着体81の定着位置は、控え壁2の内部であればいずれでもよい。
【0030】
さらに、図4および図5で示すように、地盤アンカー8そのものは控え壁2の内部に打設するものの、定着体9を控え壁2の地山側側端部2aより地山側へ突出させてもよい。この場合には、例えば、地盤アンカー8に拡径型アンカーを採用するとよい。
【0031】
具体的には、地盤アンカー8の先端に、アンボンドシースから露出させた緊張材を覆う拡径可能な袋体91を設置しておき、控え壁2に備えた芯材3の背面側に袋体91の基端部が当接するよう、控え壁2を貫通して地盤アンカー8を打設した後、袋体91にグラウト材92を充填する。すると、地盤アンカー8には、グラウト材92の充填により拡径した袋体91よりなる定着体9が構築される。なお、地盤アンカー8は、上記の拡径型アンカーに限定されるものではなく、地盤アンカー8にて山留め壁1と控え壁2に備えた芯材3とを連結できる構成を有していれば、いずれを採用してもよい。
【0032】
これにより、控え壁2に備えた芯材3と山留め壁1とが、緊張材4と地盤アンカー8により、高さ方向に少なくとも2カ所で連結されるため、接合部2bの上端から下端に至るまで、引張り破壊を生じることなく、山留め壁1と控え壁2との一体性をより高めることができるだけでなく、山留め壁1のはらみ出しを抑制することも可能となる。
【0033】
また、地盤アンカー2は必ずしも控え壁2の内部に打設する必要はなく、図6で示すように、隣り合う控え壁2の間の地山に打設してもよい。この場合には、地盤アンカー8の定着体81が位置する領域に定着用地盤改良体10を構築し、この定着用地盤改良体10に定着体81を定着させるとよい。そして、地山が軟弱地盤である場合には、地盤アンカー8に緊張力が導入された際に定着体81を介して定着用地盤改良体10に発生する反力が、山留め壁1に伝達されることを考慮し、山留め壁1の掘削領域6側に面する前面と接するように、掘削領域6の根切り底以深に地盤改良体11を構築しておくとよい。
【0034】
なお、本発明における山留め壁1の支持構造は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0035】
例えば、本実施の形態において、控え壁2は、地山側側端部2aにのみ芯材3を備える構成としたが、必ずしもこれに限定するものではなく、地山側側端部2aから山留め壁1に向かって芯材3を複数並列配置し、これらと山留め壁1とを緊張材4にて連結してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 山留め壁
11 芯材
2 控え壁
3 芯材
4 緊張材
5 すき取り部
6 掘削領域
7 腹起し
8 地盤アンカー
81 定着体
9 定着体
91 袋体
92 グラウト
10 定着用地盤改良体
11 地盤改良体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
山留め壁の背面に直交して接合される地盤改良壁よりなる控え壁と、
該控え壁の地山側側端部に備えられる芯材と、
該芯材の頭部と前記山留め壁の頭部とを連結する緊張材と、
を備える山留め壁の支持構造において、
前記控え壁を貫通するように打設されてなる地盤アンカーを備え、
該地盤アンカーが、頭部を山留め壁に設置された腹起しに定着されるとともに、定着体を前記芯材の背面に当接するように定着されることを特徴とする山留め壁の支持構造。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-05-15 
出願番号 特願2015-157263(P2015-157263)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (E02D)
P 1 651・ 113- YAA (E02D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 荒井 良子  
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 土屋 真理子
西田 秀彦
登録日 2019-04-26 
登録番号 特許第6515731号(P6515731)
権利者 株式会社大林組
発明の名称 山留め壁の支持構造  
代理人 一色国際特許業務法人  
代理人 一色国際特許業務法人  

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