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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1364281 |
審判番号 | 不服2018-14217 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-26 |
確定日 | 2020-07-16 |
事件の表示 | 特願2016-510805「触覚セルのアレイを用いた有形のユーザ・インターフェース・インタラクション及びジェスチャのシミュレーション」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月30日国際公開、WO2014/176532、平成28年 7月14日国内公表、特表2016-520915〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は2014年(平成26年)4月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年4月26日,米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成27年12月17日 翻訳文提出 平成29年12月13日付け 拒絶理由通知書 平成30年 3月19日 意見書,手続補正書の提出 平成30年 6月20日付け 拒絶査定 平成30年10月26日 審判請求書,手続補正書の提出 令和 元年 8月14日 上申書の提出 第2 平成30年10月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成30年10月26日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。) 「ユーザー・インターフェース装置であって、 ユーザによるタッチ操作を受けるように構成されたタッチ表面を含むフレキシブル層と、 前記フレキシブル層によって被覆された複数の触覚セルであって、各触覚セルは触覚出力装置を含む、複数の触覚セルと、 ユーザが前記タッチ表面にタッチするときに、前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度を感知するように構成されたセンサと、 前記センサからの出力信号を受信し、前記センサからの前記出力信号に基づいて触覚制御信号を生成し、前記複数の触覚セルの少なくとも1つの触覚出力装置に対して前記触覚制御信号を出力することによって、前記触覚出力装置に、前記フレキシブル層の前記感知された変形に応答して対応する触覚セルを変形させることで、前記タッチ表面に前記ユーザが前記タッチ表面にタッチしたときの前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度に基づいて定められる所望の量の抵抗を提供するように構成されたプロセッサと、 を備えるユーザー・インターフェース装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,平成30年3月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。 「ユーザー・インターフェース装置であって、 ユーザによるタッチ操作を受けるように構成されたタッチ表面を含むフレキシブル層と、 前記フレキシブル層によって被覆された複数の触覚セルであって、各触覚セルは触覚出力装置を含む、複数の触覚セルと、 ユーザが前記タッチ表面にタッチするときに、前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度を感知するように構成されたセンサと、 前記センサからの出力信号を受信し、前記センサからの前記出力信号に基づいて触覚制御信号を生成し、前記複数の触覚セルの少なくとも1つの触覚出力装置に対して前記触覚制御信号を出力することによって、前記触覚出力装置に、前記フレキシブル層の前記感知された変形に応答して、対応する触覚セルを変形させ前記タッチ表面に所望の抵抗の感覚を提供するように構成されたプロセッサと、 を備えるユーザー・インターフェース装置。」 2 補正の適否 本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記触覚出力装置に、前記フレキシブル層の前記感知された変形に応答して、対応する触覚セルを変形させ前記タッチ表面に所望の抵抗の感覚を提供する」ことについて,「前記触覚出力装置に、前記フレキシブル層の前記感知された変形に応答して対応する触覚セルを変形させることで、前記タッチ表面に前記ユーザが前記タッチ表面にタッチしたときの前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度に基づいて定められる所望の量の抵抗を提供する」との限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下,「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 原査定の拒絶の理由で引用された特開2011-242386号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本出願は、米国特許仮出願第61/327,625号(2010年4月23日出願)に基づく優先権を主張し、その内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる。 【0002】 本発明は、接触センサと触覚アクチュエータとの透明複合圧電材結合体を含む触覚装置に関する。 【背景技術】 【0003】 リッチなユーザインタフェースを作り出す努力が電子装置メーカによってなされている。従来の電子機器の多くは、ユーザへ情報を伝達するために、視覚フィードバック及び/又は音響フィードバックを提供している。幾つかのケースでは、ユーザ体験を向上させるために、運動感覚フィードバック(作用力フィードバック及び抵抗力フィードバック等)及び/又は触感フィードバック(振動、質感、及び熱等)もユーザに提供される。一般的に、運動感覚フィードバック及び触感フィードバックは「触覚フィードバック」又は「触覚効果」と総称される。触覚フィードバックは、ユーザに特定のイベントを通知したり、現実のフィードバック感覚を与えて優れたセンサ体験を作り出したりするキューを提供するために有用なものである。触覚フィードバックは、通常の電子装置とともに使用可能であり、模擬環境又は仮想環境を生成するための装置とともに使用することもできる。 【0004】 タッチスクリーン等の接触センサ装置へ振動触覚フィードバックを提供するために、従来から様々な触感作動技術が用いられている。公知の触覚フィードバック装置は、リニア共振アクチュエータ(「LRA」)装置や偏心回転質量(「ERM」)装置等の電気式アクチュエータを使用している。これらのアクチュエータは、しかしながら、一般に拡張性に乏しく、触感アプリケーションにおいて十分に性能を発揮するとは限らない。これらの装置の多くは嵩張るものであり、空間的な制約を満たすことが困難なこともある。 【0005】 上記以外にも、タッチセンサ装置における従来の触覚フィードバック技術として、電場応答性ポリマー(「EAP」)装置がある。しかしながら、EAPベースのアクチュエータは、触感アプリケーションに好適な効果を提供するために、通常、数千ボルトの電気を必要とするという欠点がある。 【0006】 触覚フィードバック構造の開発は、より小型の装置を作る方向へ向かっており、タッチセンサ装置において触覚フィードバックを提供する技術の他の路線として、モノリシック圧電セラミックがある。モノリシック圧電セラミックから作られるアクチュエータはモノリシック圧電アクチュエータと呼ばれ、拡張性に優れるとともに高速に動作するので、触覚フィードバックのために満足のいく解決策を提供する。しかしながら、かかるアクチュエータの機械的統合や製品への実装は困難なことが多い。また、モノリシック圧電セラミックは非常に脆く壊れやすいものであり、モノリシック圧電セラミックを含む電子装置が落下したり、落下と同様の力や応力を受けた場合には装置が破壊される可能性がある。モノリシック圧電セラミックを製品に実装することは困難なことがある。 【0007】 これらの触覚フィードバック装置においては、別個の接触センサを用いて、触覚フィードバック効果を発生させるか否かが検出される。 【発明の概要】 【0008】 本発明の一態様において、透明複合圧電材技術を用いて、接触センサと触覚アクチュエータとの透明複合圧電材結合体が作製される。この透明複合圧電材結合体は、タッチスクリーン等の触覚装置に用いられる。 【0009】 本発明の一実施形態において、基板と、前記基板を覆う実質的に透明な複合圧電セルとを含む触覚装置が提供される。この圧電セルは、変形時に第1の信号を生成するように構成されたセンサ圧電レイヤと、前記第1の信号に基づいている第2の信号を受信すると触覚効果を提供するように構成されたアクチュエータ圧電レイヤとを備える。 【0010】 本発明の一実施形態において、前記セルの表面の変形を測定するとともに前記変形の結果として触覚効果を提供するように構成された実質的に透明な複合圧電セルを含む触覚装置が提供される。このセルは、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間にある複数の圧電セラミック材とを含む。前記第1の電極と前記第2の電極との間に電場が生成されるときに、前記圧電セラミック材が作動して前記触覚効果を提供する。 【0011】 本発明の一実施形態において、センサ・セルのアレイを含む実質的に透明な圧電性センサ・レイヤと、独立に作動可能なアクチュエータ・セルのアレイを含む実質的に透明な圧電性アクチュエータ・レイヤと、前記実質的に透明な圧電性センサ・レイヤ及び前記実質的に透明な圧電性アクチュエータ・レイヤから可視の画像を表示するように構成されたディスプレイと、を含む触覚装置が提供される。 【0012】 本発明の一実施形態において、接触センサと触覚アクチュエータ・セルとの複数の結合体が、方形又は円形(又はこれら以外の形状)のセルのグリッド形状で用いられ、個別の局所的な触覚フィードバックを同時に提供できるタッチスクリーン/タッチパッド装置が作製される。 【0013】 このセンサ及びアクチュエータの機能性は、単一のモジュールで実現可能であるため、従来からある代替品と比較して、より簡便な実装方法により、より薄くて小型に作製することができる。この複合圧電センサ/アクチュエータは、様々な形状に形成することができるので(拡張性)、異なる用途に適用できる。複合圧電材は、各々の用途に適合する特定の電気機械的特性を実現することによって最適化される。本発明の実施形態に係る接触センサは、接触を検知するだけでなく、入力された圧力の大きさを測定することもできる。また、本発明の実施形態においては、複合圧電材が持つ高速の動特性と良好な作動性能によって、振動、運動感覚効果(kinesthetic effect)、及び/又は静的もしくは動的な変形等の広範囲にわたるリッチな触覚効果を実現できる。」 「【発明を実施するための形態】 【0026】 本開示によって、触覚装置の実施形態が説明される。この触覚装置は、触覚フィードバック・アクチュエータを含む。触覚フィードバック・アクチュエータは、ユーザインタフェース又はヒューマン-コンピュータインタフェースを介してユーザに触覚効果を提供する。触覚フィードバック・アクチュエータは、アクチュエータが搭載されたユーザ装置における、ユーザインタフェース又はヒューマン-コンピュータインタフェース以外の部分を介してユーザに触覚効果を提供することもできる。特に、本明細書で開示される触覚装置の実施形態は、ユーザ装置の接触面に対して触覚効果を作動させる。この接触面は、幾つかの実施形態においては、視覚的な出力機構及び接触式入力機構をいずれも備えるディスプレイ装置の一部であってもよい。このように、触覚フィードバックは、リッチなセンサ体験をユーザに提供する携帯型電子装置等のユーザ装置に適用可能である。」 「【0029】 図1は、本発明の一実施形態における電子機器装置10のブロック図である。より具体的には、電子機器装置10は、処理装置12、メモリ装置14、及び入出力装置16を含む。これらの構成要素は、バス18によって互いに接続されている。また、入出力装置16は、タッチスクリーン装置20などのヒューマン-コンピュータインタフェース装置を含む。 【0030】 タッチスクリーン装置20は、ヒューマン-コンピュータインタフェース又は接触面アッセンブリ(touch/contactsurface assembly)として構成される。タッチスクリーン装置20は、任意のタッチスクリーン、タッチパッド、接触センサ構造、コンピュータモニター、ラップトップディスプレイ装置、ワークブック(workbook)ディスプレイ装置、キオスクの画面、携帯型電子装置の画面、又はこれら以外の好適な接触センサ装置であってもよい。タッチスクリーン装置20は、スタイラス等のユーザ操作用装置又はユーザの指と物理的に相互作用するように構成されてもよい。幾つかの実施形態において、タッチスクリーン装置20は、少なくとも一つの出力装置と少なくとも一つの入力装置とを含むことができる。例えば、タッチスクリーン装置20は、視覚的表示装置と、当該視覚的表示装置の上に重ね合わせられてユーザの指による入力を受容する接触センサ画面とを含むことができる。 【0031】 様々な実施形態において、タッチスクリーン装置20は、電子機器装置10の少なくとも一部分に触覚フィードバックを提供する。この触覚フィードバックは、電子機器装置10に接触しているユーザに伝達される。タッチスクリーン装置20は、ユーザがタッチスクリーンに接触しているときに、タッチスクリーン自体に触覚フィードバックを提供して接触効果を与えることができる。この触覚効果は、ユーザ体験を向上するために用いられる。ユーザは、この接触効果によって、タッチスクリーン装置20への接触が、検出のために十分なものであったことを確認できる。 【0032】 電子機器装置10は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、電子ワークブック(electronicworkbook)、携帯型電子装置(例えば、携帯電話、ゲーム装置、パーソナルデジタルアシスタンス(「PDA」)、携帯型電子メール装置、携帯型インターネットアクセス装置、計算機等)、キオスク(例えば、現金自動預入支払機、自動券売機等)、プリンタ、POS(point-of-sale)装置、ゲームコントローラ、これら以外の電子装置等の任意の装置である。 【0033】 処理装置12は、電子機器装置10の動作及び機能を管理又は制御する汎用又は専用のプロセッサ又はマイクロコントローラであってもよい。例えば、処理装置12は、触覚効果を提供するために入出力装置16のドライバへの出力信号を制御する特定用途向け集積回路(ASIC)として設計されてもよい。処理装置12は、所定のファクターに基づいて、どのような触覚効果を再生するか、どの順番で触覚効果を再生するか、並びに、触覚効果の大きさ、頻度、持続期間及び/又はこれら以外のパラメータを決定するように構成されてもよい。処理装置12は、特定の触覚効果を提供する触覚アクチュエータを駆動するために用いられるストリーミング動作指令を提供するように構成されてもよい。幾つかの実施形態に係る処理装置12は、各々が電子機器装置10の所定の機能を実行するように構成された複数のプロセッサを含んでいてもよい。」(なお,段落【0031】の「接触効果」(2箇所)は,「触覚効果」の誤記であると認められる。) 「【0036】 図2Aは、触覚装置30の一実施形態の断面図を示す。この触覚装置30は、図1に示したタッチスクリーン装置20等のタッチスクリーン装置であってもよい。図示のとおり、この触覚装置は、基板32を含む。この基板32は、後述するようにタッチスクリーン式のガラスプレート又は可撓性構造体であってもよい。複合圧電セル34は、実質的に透明、すなわち少なくとも40%の透明度である。この実質的に透明な複合圧電セル34が基板32を覆い又は基板32の上に配置されるので、ユーザは、タッチスクリーンと認識しつつ複合圧電セル34に触れることになる。 【0037】 図2Aに示すとおり、複合圧電セル34は、異なる電気機械的特徴を有するレイヤを含むことができる。この異なる電気機械的特徴を有するレイヤは、上部複合レイヤ36及び底部複合レイヤ38を含む。上部複合レイヤ36は、幅広のレイヤであって、触れられると微視的に変形してセンサとして機能することができる。底部複合レイヤ38は、アクチュエータとして機能することができる。上部レイヤ36が可撓性を有するため、底部レイヤ38において生成された触覚効果を、装置に接触している人間の手に伝達することができる。かみ合わされた(interdigitated)電極システムを用いることにより、直接圧電効果を利用して、上部レイヤ36によって接触を検知し、この検知された接触により生成された信号を用いて底部レイヤ38を作動させるための信号を提供することができる。一実施形態においては、上部複合レイヤ36がアクチュエータとして機能し、底部複合レイヤ38がセンサとして機能してもよい。」 「【0039】 図2Bは、基板132及び及び実質的に透明な複合圧電セル134を含む触覚装置130の実施形態を示す。基板132は、図2Aの基板32と同様に構成される。複合圧電セル134は、基板132を覆い又は基板132の上に配置されるので、ユーザは、触覚装置130の表面に接触するときに複合圧電セル134に接触することができる。一実施形態において、基板132は、圧電セル134を通して画像を表示するように構成されたディスプレイであってもよい。圧電セル134が透明であるため、ユーザは、ディスプレイ自体に接触していると認識することになる。図2Bに示すとおり、実質的に透明な複合圧電セル134は、基板132を覆う第1レイヤ136と、第1レイヤ136を覆う第2レイヤ138と、第2レイヤ138を覆う第3レイヤ140と、第3レイヤ140を覆う第4レイヤ142とを含む。図示された実施形態は、いかなる意味においても本発明を限定することを意図するものではなく、図示の4層よりも少ない数又は多い数のレイヤを設けることができる。実施形態は、例えば、3層、5層、6層等のレイヤから成るものであってもよい。 【0040】 一実施形態において、4層のレイヤのうちの一つのレイヤ、例えば、第4レイヤ142がセンサとして機能するように構成され、それ以外のレイヤ、すなわち、第1レイヤ136、第2レイヤ138、及び第3レイヤ140がアクチュエータとして機能するように構成されてもよい。かみ合わされた電極システムを用いることにより、直接圧電効果を利用して、センサとして機能するレイヤによって接触を検知し、この検出された接触により生成された信号を用いてアクチュエータとして機能するレイヤを作動させるための独立の信号を提供することができ、これにより所望の触覚効果を生成することができる。例えば、一実施形態においては、アクチュエータとして機能する3つのレイヤに必要に応じて同時に信号を提供することにより、一つのレイヤによって生成される場合よりも強い触覚効果を生成することができる。」 「【0042】 図3及び図4に示すとおり、センサとして機能するように構成されたレイヤ、及び、アクチュエータとして機能するように構成されたレイヤを組み合わせて、複合圧電アクチュエータ/センサ・セルの形状を有する単一のモジュールにすることができる。図3及び図4は、複合圧電アクチュエータ/センサ・セル40の断面図を、関連づけられた電極42とともに示す。複合圧電セル40は、エポキシ材等の構造用接着剤46内に圧電セラミック繊維44のアレイを含む。この複合圧電セル40の一実施形態を図5に示す。一実施形態において、繊維の断面は、図示された円形ではなく方形であってもよい。図示のとおり、各電極42を用いて個別の制御信号を送信することにより、2つの隣接する電極42間の構造用接着剤46に埋め込まれている繊維44の各片を駆動し、対応する位置に局所的な触覚効果を生成することができる。矢印48は、印加された電場に応答して分極した圧電セラミック材がどのように伸縮するかを示す。また、矢印50は、電極42によって生成された圧電セラミックの分極を示す。 【0043】 同様に、ユーザが装置40を操作している間に電極42間の電圧が各々監視・測定される場合には、装置40に組み込まれた圧電繊維44の各片において発生する圧電効果に基づき、相互作用(接触)の位置を決定することができる。例えば、マルチプレクサを用いることにより、個別の制御信号を制御し、センサ信号を測定することができる。」 「【0051】 図7Aは、実質的に透明な複数の圧電レイヤを含む触覚装置80の実施形態を示す。この圧電レイヤは、各々、実質的に透明な圧電セルのアレイを含む。例えば、第1のレイヤ82は、セル82a-iから成る3x3アレイを含み、第2のレイヤ84は、セル84a-iから成る3x3アレイを含み、第3のレイヤ86は、セル86a-iから成る3x3アレイを含む。3層のレイヤが図示されているが、2層から成るレイヤ、又は追加の層を含むレイヤであってもよい。 【0052】 セル82a-i、84a-i、及び86a-iは、実質的に互いに整列している。図2Bに示した実施形態と同様に、一つのレイヤ、例えば第1のレイヤ82が、センサとして機能するように構成され、他のレイヤ、すなわち、第2のレイヤ84及び第3のレイヤ86が、アクチュエータとして機能するように構成されてもよい。一実施形態において、各々のレイヤ、及び、各レイヤの各々のセルは、検出された接触に応答して所望の触覚効果を提供できるように、互いに独立に作動することができる。例えば、センサとして構成されたレイヤは、直接圧電効果を利用して接触を検知して信号を生成し、生成した信号をかみ合わされた電極システムに送信する。そして、検出された接触により生成された信号を使用し、駆動可能なレイヤの一部分である任意のセル又はセルの任意の組み合わせを駆動する信号を供給する。より具体的に説明すると、非限定的な例において、ユーザは、センサとして機能するように構成された第1のレイヤ82のセル82aに対応する領域に接触することができ、この接触に応答して、所望の触覚効果がセル84a、又は、セル84aとセル86aの組み合わせによって生成される。所望の触覚効果は、セル84i、又は、セル84iとセル86eとの組み合わせによって生成されてもよい。実質的に透明な圧電レイヤ82、84、86は、基板88によって支持されてもよい。この基板88は、実質的に透明な圧電レイヤ82、84、86を通して画像を表示するように構成されたディスプレイであってもよい。」 「【0055】 一実施形態において、センサとして機能するように構成されたレイヤ、すなわちセンサ・レイヤは、触覚装置への接触を認識するとともに、触覚装置への接触の位置及び強さを認識するように構成されてもよい。例えば、センサ・レイヤは、レイヤが接触されたときに、当該レイヤの変位を測定するように構成され、この測定結果を用いて、当該レイヤに加えられた圧力を導き出すことができる。接触に対応する信号(すなわち、変位及び/又は圧力)は、上述した処理装置12等の処理装置に送信される。処理装置は、この接触を解釈し、当該接触に応答して所望の触覚効果を生成する。触覚装置は、センサ・レイヤ及び処理装置を通してマルチタッチによる接触を検出し、実質的に同時に起こる複数の接触を識別できるように構成されてもよい。」 【図1】 【図2A】 【図7A】 (ア)上記「センサとして機能するように構成された第1のレイヤ82のセル82aに対応する領域に接触することができ、この接触に応答して、所望の触覚効果がセル84a、又は、セル84aとセル86aの組み合わせによって生成される。」(段落【0052】)及び【図7A】の記載から,引用文献1には,センサとして構成されたレイヤを構成するセルの接触に応答して,接触されたセンサとして構成されたセルの下の,触覚効果を生成するセルが触覚効果を生成することが記載されている。 (イ)上記「本発明の一態様において、透明複合圧電材技術を用いて、接触センサと触覚アクチュエータとの透明複合圧電材結合体が作製される。この透明複合圧電材結合体は、タッチスクリーン等の触覚装置に用いられる。」(段落【0008】)の記載から,【図2A】に記載された「触覚装置30」の「触れられると微視的に変形してセンサとして機能する」「上部複合レイヤ36」及び「アクチュエータとして機能する」「底部複合レイヤ38」は,それぞれ「接触センサ」及び「触覚アクチュエータ」として機能していると認められる。 してみると,上記記載から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「電子機器装置10であって, 電子機器装置10は,処理装置12及びタッチスクリーン装置20などのヒューマン-コンピュータインタフェース装置を含み, タッチスクリーン装置20は,ユーザがタッチスクリーンに接触しているときに,タッチスクリーン自体に触覚フィードバックを提供して触覚効果を与え, 処理装置12は,電子機器装置10の動作及び機能を管理又は制御する汎用又は専用のプロセッサであって, 処理装置12は,所定のファクターに基づいて,どのような触覚効果を再生するか,どの順番で触覚効果を再生するか,並びに,触覚効果の大きさ,頻度,持続期間及び/又はこれら以外のパラメータを決定するように構成され,特定の触覚効果を提供する触覚アクチュエータを駆動するために用いられるストリーミング動作指令を提供するように構成され, タッチスクリーン装置20は,触れられると微視的に変形して,ユーザの指による入力を受容する接触センサとして機能する上部複合レイヤ36と,触覚アクチュエータとして機能する底部複合レイヤ38を含み,上部複合レイヤ36は底部複合レイヤ38を覆い, 各レイヤは,圧電セルのアレイを含み, 上部複合レイヤ36が可撓性を有し,底部レイヤ38において生成された触覚効果を,装置に接触している人間の手に伝達し, 上部複合レイヤ36は,レイヤが接触されたときに,当該レイヤの変位を測定するように構成され,この測定結果を用いて,当該レイヤに加えられた圧力を導き出し,接触に対応する信号(すなわち、変位及び/又は圧力)を,処理装置12に送信し, 処理装置12は,この接触を解釈し,当該接触に応答して,上部複合レイヤ36を構成する接触されたセル82aの下の,底部複合レイヤ38を構成するせるセル84a,86aにより所望の触覚効果を生成する, 電子機器装置10。」 また,上記記載から,引用文献1には,以下の事項(以下,「引用文献1記載事項」という。)が記載されている。 「運動感覚フィードバック(作用力フィードバック及び抵抗力フィードバック等)及び触感フィードバック(振動、質感、及び熱等)は,「触覚フィードバック」又は「触覚効果」と総称されること。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明の「ユーザによるタッチ操作を受けるように構成されたタッチ表面を含むフレキシブル層」と引用発明の「タッチスクリーン装置20」を構成し,「触れられると微視的に変形して,ユーザの指による入力を受容する接触センサとして機能」し,「可撓性を有し,底部レイヤ38において生成された触覚効果を,装置に接触している人間の手に伝達」する「上部複合レイヤ36」とを対比する。 引用発明の「上部複合レイヤ36」は,「タッチスクリーン装置20」を構成し,「触れられると微視的に変形して,ユーザの指による入力を受容する接触センサとして機能」しているから,引用発明の「上部複合レイヤ36」は,本件補正発明の「ユーザによるタッチ操作を受けるように構成されたタッチ表面」と同様の構成を備えていると認められる。 また,引用発明の「上部複合レイヤ36」は,「可撓性を有し,底部レイヤ38において生成された触覚効果を,装置に接触している人間の手に伝達」するから,「フレキシブル」(柔軟)であるといえる。 そうすると,引用発明の「タッチスクリーン装置20」を構成し,「触れられると微視的に変形して,ユーザの指による入力を受容する接触センサとして機能」し,「可撓性を有し,底部レイヤ38において生成された触覚効果を,装置に接触している人間の手に伝達」する「上部複合レイヤ36」は,本件補正発明の「ユーザによるタッチ操作を受けるように構成されたタッチ表面を含むフレキシブル層」に相当する。 イ 本件補正発明の「前記フレキシブル層によって被覆された複数の触覚セルであって、各触覚セルは触覚出力装置を含む、複数の触覚セル」と引用発明の「上部複合レイヤ36」に覆われ,「触覚アクチュエータとして機能する底部複合レイヤ38」をアレイにより構成する「圧電セル」とを対比する。 上記アで検討したように,引用発明の「上部複合レイヤ36」は,本件補正発明の「フレキシブル層」に相当するから,引用発明の「上部複合レイヤ36」に覆われることは,本件補正発明の「前記フレキシブル層によって被覆され」ることに相当する。 また,引用発明の「触覚アクチュエータ」は,本件補正発明の「触覚出力装置」に相当する。 さらに,引用発明の「触覚アクチュエータとして機能する底部複合レイヤ38」は,「圧電セル」のアレイにより構成されているから,引用発明の「底部複合レイヤ38」が「触覚アクチュエータ」として機能するためには,「圧電セル」が「触覚アクチュエータ」の機能を備えることは明らかである。 そうすると,引用発明の「上部複合レイヤ36」に覆われ,「触覚アクチュエータとして機能する底部複合レイヤ38」をアレイにより構成する複数の「圧電セル」は,本件補正発明の「前記フレキシブル層によって被覆された複数の触覚セルであって、各触覚セルは触覚出力装置を含む、複数の触覚セル」に相当する。 ウ 本件補正発明の「ユーザが前記タッチ表面にタッチするときに、前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度を感知するように構成されたセンサ」と引用発明の「レイヤが接触されたときに,当該レイヤの変位を測定するように構成され」た「上部複合レイヤ36」とを対比する。 引用発明の「当該レイヤの変位」は,本件補正発明の「前記フレキシブル層」の「変位の量」に相当する。 そうすると,引用発明の「レイヤが接触されたときに,当該レイヤの変位を測定するように構成され」た「上部複合レイヤ36」は,本件補正発明の「ユーザが前記タッチ表面にタッチするときに、前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度を感知するように構成されたセンサ」に相当する。 エ 本件補正発明の「前記センサからの出力信号を受信し、前記センサからの前記出力信号に基づいて触覚制御信号を生成し、前記複数の触覚セルの少なくとも1つの触覚出力装置に対して前記触覚制御信号を出力することによって、前記触覚出力装置に、前記フレキシブル層の前記感知された変形に応答して対応する触覚セルを変形させることで、前記タッチ表面に前記ユーザが前記タッチ表面にタッチしたときの前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度に基づいて定められる所望の量の抵抗を提供するように構成されたプロセッサ」と引用発明の「電子機器装置10の動作及び機能を管理又は制御する汎用又は専用のプロセッサであって」,「所定のファクターに基づいて,どのような触覚効果を再生するか,どの順番で触覚効果を再生するか,並びに,触覚効果の大きさ,頻度,持続期間及び/又はこれら以外のパラメータを決定するように構成され,特定の触覚効果を提供する触覚アクチュエータを駆動するために用いられるストリーミング動作指令を提供するように構成され」,「上部複合レイヤ36」から送信された「接触に対応する信号(すなわち、変位及び/又は圧力)」を「解釈し,当該接触に応答して,上部複合レイヤ36を構成する接触されたセル82aの下の,底部複合レイヤ38を構成するせるセル84a,86aにより所望の触覚効果を生成する」「処理装置12」とを対比する。 (ア)上記ウで検討したように,引用発明の「上部複合レイヤ36」は,本件補正発明の「センサ」に相当するから,引用発明の「上部複合レイヤ36」から送信された「接触に対応する信号(すなわち、変位及び/又は圧力)」は,本件補正発明の「前記センサからの出力信号」に相当する。 そして,引用発明の「上部複合レイヤ36」から送信された「接触に対応する信号(すなわち、変位及び/又は圧力)」を解釈するためには,「処理装置12」は,「接触に対応する信号」を受信する必要があることは明らかであるから,この「接触に対応する信号」を受信することは,本件補正発明の「前記センサからの出力信号を受信」することに相当する。 (イ)引用発明は,「所定のファクターに基づいて,どのような触覚効果を再生するか,どの順番で触覚効果を再生するか,並びに,触覚効果の大きさ,頻度,持続期間及び/又はこれら以外のパラメータを決定するように構成され,特定の触覚効果を提供する触覚アクチュエータを駆動するために用いられるストリーミング動作指令を提供」しているから,引用発明の「ストリーミング動作指令」により「触覚アクチュエータ」を制御している。 そして,引用発明の「触覚アクチュエータ」は,上記イで検討したように「圧電セル」のアレイにより構成されており,引用発明の「ストリーミング動作指令」により,「触覚アクチュエータとして機能する底部複合レイヤ38」の複数の「圧電セル」を制御している。 加えて,上記イで検討したように,引用発明の「触覚アクチュエータとして機能する底部複合レイヤ38」をアレイにより構成する複数の「圧電セル」は,本件補正発明の「前記フレキシブル層によって被覆された複数の触覚セルであって、各触覚セルは触覚出力装置を含む、複数の触覚セル」に相当するから,引用発明の「ストリーミング動作指令」は,本件補正発明の「前記複数の触覚セルの少なくとも1つの触覚出力装置に対して」出力されると同様の動作をしている。 そして,引用発明は「上部複合レイヤ36」から送信された「接触に対応する信号(すなわち、変位及び/又は圧力)」を「解釈し,当該接触に応答して,上部複合レイヤ36を構成する接触されたセル82aの下の,底部複合レイヤ38を構成するせるセル84a,86aにより所望の触覚効果を生成」しているから,引用発明の「ストリーミング動作指令」は,「上部複合レイヤ36」から送信された「接触に対応する信号(すなわち、変位及び/又は圧力)」に基づいて生成されている。 そうすると,引用発明の「処理装置12」は,本件補正発明の「前記センサからの前記出力信号に基づいて触覚制御信号を生成し、前記複数の触覚セルの少なくとも1つの触覚出力装置に対して前記触覚制御信号を出力する」ことと同様の動作を行っていると認められる。 (ウ)引用発明が「当該接触に応答して,上部複合レイヤ36を構成する接触されたセル82aの下の,底部複合レイヤ38を構成するせるセル84a,86aにより所望の触覚効果を生成する」ためには,接触されたセル82aに対応するセルである84a,86aを変形させる必要があることは明らかであるから,この変形させることは,本件補正発明の「前記触覚出力装置に、前記フレキシブル層の前記感知された変形に応答して対応する触覚セルを変形させること」に相当する。 そして,引用発明の「接触に対応する信号(すなわち、変位及び/又は圧力)」を「解釈し,当該接触に応答して,」「所望の触覚効果を生成する」ことと,本件補正発明の「前記タッチ表面に前記ユーザが前記タッチ表面にタッチしたときの前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度に基づいて定められる所望の量の抵抗を提供する」こととは,「前記タッチ表面に前記ユーザが前記タッチ表面にタッチしたときの前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度に基づいて定められる所望の量の効果を提供する」点で一致する。 (エ)引用発明の「処理装置12」は「プロセッサ」であるから,本件補正発明の「プロセッサ」に相当する。 (オ)してみると,引用発明の「電子機器装置10の動作及び機能を管理又は制御する汎用又は専用のプロセッサであって」,「所定のファクターに基づいて,どのような触覚効果を再生するか,どの順番で触覚効果を再生するか,並びに,触覚効果の大きさ,頻度,持続期間及び/又はこれら以外のパラメータを決定するように構成され,特定の触覚効果を提供する触覚アクチュエータを駆動するために用いられるストリーミング動作指令を提供するように構成され」,「上部複合レイヤ36」から送信された「接触に対応する信号(すなわち、変位及び/又は圧力)」を「解釈し,当該接触に応答して,上部複合レイヤ36を構成する接触されたセル82aの下の,底部複合レイヤ38を構成するせるセル84a,86aにより所望の触覚効果を生成する」「処理装置12」と,本件補正発明の「前記センサからの出力信号を受信し、前記センサからの前記出力信号に基づいて触覚制御信号を生成し、前記複数の触覚セルの少なくとも1つの触覚出力装置に対して前記触覚制御信号を出力することによって、前記触覚出力装置に、前記フレキシブル層の前記感知された変形に応答して対応する触覚セルを変形させることで、前記タッチ表面に前記ユーザが前記タッチ表面にタッチしたときの前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度に基づいて定められる所望の量の抵抗を提供するように構成されたプロセッサ」とは,「前記センサからの出力信号を受信し、前記センサからの前記出力信号に基づいて触覚制御信号を生成し、前記複数の触覚セルの少なくとも1つの触覚出力装置に対して前記触覚制御信号を出力することによって、前記触覚出力装置に、前記フレキシブル層の前記感知された変形に応答して対応する触覚セルを変形させることで、前記タッチ表面に前記ユーザが前記タッチ表面にタッチしたときの前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度に基づいて定められる所望の量の効果を提供するように構成されたプロセッサ」である点で共通する。 オ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。 [一致点] 「ユーザー・インターフェース装置であって, ユーザによるタッチ操作を受けるように構成されたタッチ表面を含むフレキシブル層と, 前記フレキシブル層によって被覆された複数の触覚セルであって,各触覚セルは触覚出力装置を含む,複数の触覚セルと, ユーザが前記タッチ表面にタッチするときに,前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度を感知するように構成されたセンサと, 前記センサからの出力信号を受信し,前記センサからの前記出力信号に基づいて触覚制御信号を生成し,前記複数の触覚セルの少なくとも1つの触覚出力装置に対して前記触覚制御信号を出力することによって,前記触覚出力装置に,前記フレキシブル層の前記感知された変形に応答して対応する触覚セルを変形させることで,前記タッチ表面に前記ユーザが前記タッチ表面にタッチしたときの前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度に基づいて定められる所望の量の効果を提供するように構成されたプロセッサと, を備えるユーザー・インターフェース装置。」 [相違点] 「前記センサからの出力信号を受信し,前記センサからの前記出力信号に基づいて触覚制御信号を生成し,前記複数の触覚セルの少なくとも1つの触覚出力装置に対して前記触覚制御信号を出力することによって,前記触覚出力装置に,前記フレキシブル層の前記感知された変形に応答して対応する触覚セルを変形させることで,前記タッチ表面に前記ユーザが前記タッチ表面にタッチしたときの前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度に基づいて定められる所望の量の効果を提供するように構成されたプロセッサ」について,本件補正発明は「前記センサからの出力信号を受信し、前記センサからの前記出力信号に基づいて触覚制御信号を生成し、前記複数の触覚セルの少なくとも1つの触覚出力装置に対して前記触覚制御信号を出力することによって、前記触覚出力装置に、前記フレキシブル層の前記感知された変形に応答して対応する触覚セルを変形させることで、前記タッチ表面に前記ユーザが前記タッチ表面にタッチしたときの前記フレキシブル層の変形及び/又は変位の量及び/又は速度に基づいて定められる所望の量の抵抗を提供するように構成されたプロセッサ」であるのに対して,引用発明の「情報処理装置12」は,「所望の量の効果」について,「所望の触覚効果を生成する」ように構成されているものの,「触覚効果」が「抵抗」であるのか否か不明である点。 (4)判断 以下,上記[相違点]について検討する。 引用文献1記載事項にあるように,「触覚効果」は,抵抗力フィードバック,作用力フィードバック,振動,質感及び熱等のフィードバックを含むものであるから,引用発明において,「触覚効果」を抵抗力フィードバックとして,[相違点]に係る構成とすることは,当業者が適宜選択する事項である。 そして,相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献1に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用文献1に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年10月26日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成30年3月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし18に係る発明は,その優先権主張日前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 <引用文献等一覧> 1.特開2011-242386号公報 2.特開2005-78644号公報 3.米国特許第6509892号明細書 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,「前記触覚出力装置に、前記フレキシブル層の前記感知された変形に応答して、対応する触覚セルを変形させ前記タッチ表面に所望の抵抗の感覚を提供する」ことに係る限定事項を削除したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用発明及び引用文献1に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明及び引用文献1に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-02-13 |
結審通知日 | 2020-02-17 |
審決日 | 2020-02-28 |
出願番号 | 特願2016-510805(P2016-510805) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 若林 治男、鈴木 大輔 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
小田 浩 白井 亮 |
発明の名称 | 触覚セルのアレイを用いた有形のユーザ・インターフェース・インタラクション及びジェスチャのシミュレーション |
代理人 | 岡部 憲昭 |
代理人 | 穐場 仁 |