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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1364282
審判番号 不服2018-16120  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-04 
確定日 2020-07-16 
事件の表示 特願2016-543535「呼吸バースト活性促進剤及び免疫賦活剤」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月25日国際公開、WO2016/027334〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、2014年8月20日を国際出願日とする特許出願であり、その出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 2月 6日 : 国内書面の提出
平成29年 8月17日 : 手続補正書の提出、出願審査請求
平成30年 6月20日付け : 拒絶理由通知
平成30年 8月28日 : 意見書の提出
平成30年 8月31日付け : 拒絶査定
平成30年12月 4日 : 審判請求書及び手続補正書の提出
平成31年 1月17日 : 手続補正書(方式)の提出
平成31年 3月26日付け : 前置報告

第2 平成30年12月4日提出の手続補正書による手続補正についての
補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成30年12月4日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正の内容

本件補正は、特許法第17条の2第1項ただし書第4号に掲げる場合の、拒絶査定不服審判の請求と同時になされたものであって、本件補正前の特許請求の範囲(平成29年8月17日提出の手続補正書を参照。)に記載された請求項1:

「【請求項1】
パパイヤ発酵食品を有効成分として含有し、2型糖尿病患者において、NADPHオキシダーゼ誘導の活性酸素種(ROS)の産生を向上させ、呼吸バーストの活性を促進する、呼吸バースト活性促進剤。」

を、本件補正後の特許請求の範囲(平成30年12月4日提出の手続補正書を参照。)に記載された請求項1:

「【請求項1】
パパイヤ発酵食品を有効成分として含有し、2型糖尿病患者において、NADPHオキシダーゼ誘導の活性酸素種(ROS)の産生を向上させ、呼吸バーストの活性を促進する、呼吸バースト活性促進剤であって、前記パパイヤ発酵食品が体重70kgの成人に対して9?30g/日の用量で投与される、呼吸バースト活性促進剤。」
(当審注:下線部は本件補正による変更箇所であり、上記手続補正書に記載されたとおりである。)

とする補正を含むものである。

2 本件補正の適否

(1)本件補正の目的について

本件補正のうち、請求項1についての補正は、前記1で摘示したとおり、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「呼吸バースト活性促進剤」について、「パパイヤ発酵食品が体重70kgの成人に対して9?30g/日の用量で投与される」ものに限定する補正事項を含むものであり、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項によって特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(2)引用文献の記載事項

ア 引用文献1の記載事項

原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用された本願出願前に頒布された刊行物である「ANTIOXIDANTS & REDOX SIGNALING, 2012, Vol.17, No.3, P.485-491」(本願明細書の段落【0004】、【0008】、【0038】で引用されている「非特許文献4」である。)には、以下の事項が記載されている。なお、原文は英語であるため、当審合議体による和訳で摘記する。また、下線は当審合議体が付した。

(摘記1a)(485頁、表題)
「II型糖尿病患者の血液由来単核細胞における異常なNADPHオキシダーゼ活性のパパイヤ自然発酵食品による是正」

(摘記1b)(485頁、要約)
「要約
成体糖尿病マウスへの標準化されたパパイヤ発酵食品(FPP)の投与は、皮膚創傷治癒の効果を向上させる。II型糖尿病(T2DM)患者の末梢血単核細胞(PBMC)は、呼吸バースト活性の低下を引き起こし、糖尿病患者の感染リスクを高める。目的:今回の研究の目的は、ヒト糖尿病患者のPMBCの呼吸バースト活性におけるFPPの効果を確認し、FPPの当該作用の根底にあるメカニズムを理解することであった。結果:ホルボール 12-ミリステート 13-アセテートで刺激した場合に、T2DMのPBMCによる活性酸素種の産生は、非DMドナーのPBMCによるものと比べて著しく低下した。ex vivoで投与されたFPPは、T2DMのPBMCにおける呼吸バーストの効果を向上させた。FPPの投与は、NADPHオキシダーゼのp47phoxサブユニットのリン酸化を大幅に増加させた。加えて、Rac2のタンパク質及びmRNAの発現は、FPPの投与後に、顕著に上方調節された。・・・。」

(摘記1c)(485頁左欄1、3?5、9行?486頁左欄16行)
「緒言
・・・。糖尿病(DM)の患者では感染の発生が増加することが知られている(42)。・・・。白血球の機能不全を含む免疫防御の低下は、DMの患者にみられる高い感染率の原因となる主要な機序を示している(7、8、19)。白血球(好中球及び単球)は、それらに特有の呼吸バースト活性を通じてスーパーオキシドアニオン(O_(2)^(・-))及び派生する活性酸素種(ROS)を産生し、これらは感染と闘う(4)。白血球のNADPHオキシダーゼは、専業食細胞中で発見されたもので、NADPHを電子供与体として用い、酸素の一電子還元によるO_(2)^(・-)の産生を触媒する(4、5)。 II型糖尿病(T2DM)の患者は全身的な酸化ストレスを抱えていることが広く報告されている(16)。しかし、T2DMの末梢血単核細胞の適切な病原性刺激に応じて呼吸バースト応答をしかける能力は低下しており、糖尿病患者における感染症関連合併症のリスクを増大させることが知られている(14)。
パパイヤ(Carica papaya Linn)は、薬用フルーツとして広く認識されている(2)。パパイヤ発酵食品(FPP)は、粒状物であり、店頭で入手可能である(32)。FPPは、抗酸化活性を有しており(3、11、22、35)、加齢性の合併症に対し利点を提供する(27)。FPPは、赤血球を、酸化ダメージから保護し(27、28)、重症型の地中海貧血から保護すること(1)も知られている。」

(摘記1d)(486頁左欄「Results」1行?同頁右欄5行)
「結果
ホルボール 12-ミリステート 13-アセテート(PMA)は、PBMCからのスーパーオキシドアニオン産生の強力な誘導を刺激した。この応答は、T2DM患者から分離されたPBMCでは、正常血糖の対照ヒト被験者からの結果と比較して、著しく鈍化した。意外なことに、T2DMのPBMCにおける誘導性の呼吸バースト活性の低下は、FPPに曝されることによって是正された(図1)。FPPは、正常血糖の被験者から採取された細胞におけるROSの発現を誘導した;しかし、誘導の程度は、T2DMからの細胞と比較して小さいものだった(20% vs. T2DMでの230%)(データ示さず)。NADPHオキシダーゼは、PBMCにおけるPMAによって誘導される呼吸バーストの生成を担う最重要の酵素の役割を果たしている。呼吸バーストへのFPPの作用の根底にあるメカニズムを調査するために、採取したPBMCをFPPの存在下で24時間培養した。NADPHオキシダーゼ複合体の主要なサブユニットの発現を、ウェスタンブロットを用いて特定した(図2)。興味深いことに、Rac2の発現は、FPPの投与後に著しく上方調節された(図3A)。FPPは多量(?90%)の炭水化物を含んでいる(29)。我々は、以前に、対応する量のグルコースの投与は、FPP投与後に見られるようなROSの産生をもたらさないことを報告した(15)。これらのヒトPBMCによるROS産生の観察結果の確証を得るため、PBMCへのグルコース(FPP中に存在する量に対応する)の処置を実施した(データ示さず)。グルコース処置は、単独では、FPP処置後に見られるようなPBMCでのPMA-誘導性のROSの産生を更に刺激しなかった。このことは、FPPは、ROS産生の誘導に特異的に有効であり、このROS産生は、この栄養サプリメント中に存在するグルコースと無関係であること示唆している。Rac2発現の上方調節に加えて、FPP暴露はまた、p47phoxのリン酸化の増大をもたらす(図3B)。」

(摘記1e)(486頁右欄「FIG.1」)


図1.パパイヤ発酵食品(FPP)のex vivoの投与は、II型糖尿病(T2DM)媒介性のヒト末梢血単核細胞(PBMC)による低下した呼吸バースト生成を是正する。末梢血は、良好な血糖コントロールのT2DMの提供者(ヘモグロビンA1c[HbA1c]<7)又は健康な正常血糖(NG)の被験者(CTL)から採取した。採取したばかりの単核細胞(PBMC)をFPP(3mg/ml)の存在下又は非存在下で24時間培養した。ホルボール 12-ミリステート 13-アセテート(PMA;1μg/ml)で30分の活性化をした後に、スーパーオキシドアニオンの産生を測定した。データは、PMA非刺激の対応する細胞と比較した百分率の変化として示した。データは平均±標準偏差(SD;n=5)である。^(★)p<0.05はCTLとの比較。^(+)p<0.005は非投与(NS)のT2DM群との比較。」

(摘記1f)(487頁左欄「FIG.2」)


図2.NADPHオキシダーゼのサブユニットの発現におけるFPP投与のの効果。PBMCをヒト抹消血軟膜画分から分離しFPP(3mg/ml)とともに24時間培養した。コントロールの細胞(CTL)はFPPなしの同1条件で培養した。全タンパク質の抽出の後にNADPHオキシダーゼ複合体の主要なタンパク質のウェスタンブロット分析を行った。・・・。」

(摘記1g)(488頁「FIG.3」)


図3.FPP投与後のRac2及びp-p47phoxの発現。・・・。全タンパク質の抽出の後にRac2(A)及びリン酸化p47phox(B)のウェスタンブロット分析を行った。定量化のため濃度測定を行った(棒グラフ)。データは平均±SD(n=3)として示した。^(★)p<0.05は非FPPのCTLとの比較。」

(摘記1h)(487頁左欄「Discussion」1?10、20?末行)
「考察
呼吸バーストは、スーパーオキシド(O_(2)^(・-))及び派生する活性酸素種を産生するもので、感染と闘う主要な防衛メカニズムである(4)。免疫機能障害は、欠陥のある白血球の呼吸バースト活性を含め、T2DM患者について十分に文書化されてきた(14)。このような機能障害は、DM患者の高感染率の根底にある重要なメカニズムを示している(7、8、19)。本研究で得られた知見は、FPPが、T2DM患者から得られたPBMCのRac2発現を誘導することによって、呼吸バースト機能の欠陥を是正する可能性があることを初めて示した(図7)。NADPHオキシダーゼ複合体の機能は、呼吸バーストの鍵となる推進力である(6)。・・・。増加したp47phoxのリン酸化は、T2DMのPBMCの誘導性の呼吸バースト機能の是正におけるFPPの作用メカニズムの1つである可能性がある。」

(摘記1i)(490頁左欄「FIG.7」)


図7.要約図。ヒトPBMCにおける呼吸バースト活性を誘導するFPPの作用メカニズムの概略図。」

(摘記1j)(488頁左欄?右欄「Materials and Methods」
「Human subjects and sample collection」)
「材料及び方法
ヒト被験者及び試料採取
・・・。本研究に参加した被験者(成人40?60歳)は、健康な正常血糖の者であるか、良好な血糖コントロール、即ちヘモグロビンA1c(HbA1c)<7)のT2DMと診断された者であった。被験者背景は、表1に示したとおりである。・・・。末梢血(60cc)を静脈穿刺によって採取した。・・・。」

(摘記1k)(489頁右欄「TABLE 1」)
「 表1.ヒト被験者背景
正常血糖者(n=5) T2DM(n=5)
性別(男/女) 2/3 2/3
年齢(歳) 50.0±7.8 54.0±5.5
(平均±SD)
HbA1c(%) 該当なし 6.3±0.4
(平均±SD)
BMI 27.5±8.4 32.7±7.6
(平均±SD)
BMI、肥満度指数; HbA1c、ヘモグロビンA1c;
SD、標準偏差 」

(摘記1l)(488頁右欄?489頁左欄「Human PBMC Isolation and
culture」)
「ヒトPBMCの分離及び培養
採取直後の血液及び原料白血球を、滅菌したダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水(・・・)で1:1に希釈した。既述のとおり、フィコール密度遠心分離に続く抗CD14被覆磁気マイクロビーズ(・・・)を用いてPBMCを分離した(36)。次いで、精製したCD14^(+)のPBMCを、標準的条件下で培養した(・・・)。・・・。」

(摘記1m)(489頁左欄?右欄「FPP supplementation」)
「FPP投与
FPP(Immun' Age;大里インターナショナル、岐阜、日本)を所望の量で培地に加えて培地中に溶解させた後に、0.22μmの真空吸引濾過システム(・・・)を用い滅菌濾過した。先行研究(35)に基づき、FPPの用量(3mg/ml)を選択した。」

イ 引用文献2の記載事項

原査定の拒絶の理由において「引用文献2」(周知技術を示す文献)として引用された本願出願前に頒布された刊行物である「特開2011-041478号公報」には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付した。

(摘記2a)(請求項1?2)
「【請求項1】
ヒトの唾液と混ぜ合わせると、水と混ぜ合わせる場合に比べ、マルトースとマルトトリオースが増加することを特徴とするパパイヤ発酵食品。
【請求項2】
2型糖尿病患者の血糖値の上昇を抑制する作用を有することを特徴とする請求項1に記載のパパイヤ発酵食品。」

(摘記2b)(段落【0011】?【0012】)
「【0011】
パパイヤ発酵食品は、パパイヤの未熟果を糖と共に食用酵母菌で発酵させることにより製造される。パパイヤ発酵食品は、経口摂取に適するよう顆粒剤、散剤、細粒剤など種々の形態に適宜調製することができ、調製に際し、添加剤、例えば賦形剤、結合剤、滑沢剤など適宜加えることができる。
【0012】
上記のような特徴を有するパパイヤ発酵食品は、具体的には、株式会社大里ラボラトリーが製造し、株式会社大里インターナショナルが販売するもの(FPP/Fermented Papaya Preparation(登録商標)、Immun'Age(登録商標)、以下「FPP」ということがある)により容易に入手できる。・・・。」

(摘記2c)(段落【0017】?【0019】「実施例2」)
「【0017】
〔実施例2〕(パパイヤ発酵食品の血糖値の上昇を抑制する作用の検討)
2型糖尿病モデル動物のdb/dbマウスの40匹を試験群(20匹)と対照群(20匹)に用い、パパイヤ発酵食品の血糖値の上昇を抑制する作用について検討を行った。試験群は、パパイヤ発酵食品(FPP)を0.2mg/1g体重当て8週間(1週間に5日間投与)に亘り強制経口投与を行った。また、対照群は、パパイヤ発酵食品中に存在するグルコースの作用と調整するため、パパイヤ発酵食品中に存在するグルコース量をHPLCにより測定し、これに相当する量のグルコースを対照としてdb/dbマウスに8週間(1週間に5日間投与)に亘り強制経口投与を行った。
【0018】
FPPの強制経口投与の直前、強制経口投与の4週後、8週後にdb/dbマウスから血液を採取し血糖値の測定を行った。血糖値の測定は、グルコース酸化酵素法で行った。結果は、図1に示した(平均値±SD(n=20)、*p<0.05VS対照)。
【0019】
図1に示されるように、試験群の血糖値の上昇は、対照群に比べ有意に抑制されていた。」

(摘記2d)(【図1】)




ウ 引用文献3の記載事項

前置報告において「引用文献3」(周知技術を示す文献)として引用された本願出願前に頒布された刊行物である「Annals of the New York Academy of Sciences, 2006, Vol.1067,No.1, P.400-407」には、以下の事項が記載されている。なお、原文は英語であるため、当審合議体による和訳で摘記する。また、下線は当審合議体が付した。

(摘記3a)(400頁、表題)
「栄養補助食品の投与:パパイヤ発酵食品の健康な高齢者における酸化還元状態及びDNA損傷への効果及びGSTM1遺伝子型との関係」

(摘記3b)(402頁4?6行)
「本研究の目的は、健康な高齢者における、加齢とともに生じうる酸化還元状態の異常への新規な栄養補助食品の効果を試験することであった。」

(摘記3c)(401頁4?7行)
「このような予備的データは、FPPが、高齢の患者において、何らの明白な抗酸化剤欠乏状態になることさえなく、抗酸化防御を向上させるために、有望な栄養補助食品であることを示す一方、若干矛盾する先行の介入試験の結果の説明を助けるものである。」

(摘記3d)(402頁11?12、18?24行)
「我々の研究グループは、60名の概ね高齢の者(平均年齢:72歳、年齢層72?84歳;男/女:36/24)からなっていた。・・・。患者らは、年齢/性別、生活スタイル、飲酒/喫煙、身体活動能力、及び薬物治療について、一致対応する2グループにランダムに分けられた。一方のグループには、GMP-、ISO9001/1400-認定された発酵パパイヤ食品(FPP、大里研究所、岐阜、日本;9g/日)を、経口で、朝、朝食から1時間後で、少なくとも更に30分の絶食をさせ、投与し、一方、対照グループには、同量のプラセボ(風味付けした粉砂糖)を投与した。」

エ 引用文献4の記載事項

前置報告において「引用文献4」(周知技術を示す文献)として引用された本願出願前に頒布された刊行物である「日本末病システム学会雑誌, 2006年, 12巻, 1号, 65?67頁」には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付した。

(摘記4a)(65頁、表題)
「肝硬変における酸化損傷に対するパパイヤ発酵食品(FPP)の影響」

(摘記4b)(65頁左欄14行?同頁右欄2行)
「今回,C型肝炎由来の肝硬変の患者に対し,免疫の調節や抗酸化作用を有し,胃の粘膜の酸化損傷を著しく減少させた報告のある,パパイヤ発酵食品(fermented papaya preparation:FPP)と,高い抗酸化作用をもつことが知られているビタミンEを比較した。
2.方法
過去10年間飲酒経験のないC型肝炎ウイルス由来の肝硬変患者50名(男性29名,女性21名,平均年齢62歳,年齢層54?75歳)を,1日600mgのビタミンEを就寝前に6カ月間摂取するグループと,1日9gのFPPを就寝前に6カ月間摂取するグループの2グループに無作為に分けた。」

(摘記4c)(66頁右欄「4.考察」1?7行)
「肝硬変の患者がFPPやビタミンEを摂取することで,GSHやMDAの値がコントロールグループの値に近づくことから,酸化還元のバランスを改善していることが示唆される。また,FPPはTNF-αやTNF-αRII,8-OHdGを改善することから,サイトカインのバランスを改善し,酸化損傷からDNAを保護し,修復に関与していると考えられる。」

(3)引用文献1に記載された発明

前記(2)アによれば、引用文献1には、白血球(好中球及び単球)は、それらの呼吸バースト活性を通じてスーパーオキシドアニオン(O_(2)^(・-))及び派生する活性酸素種(ROS)を産生し、白血球のNADPHオキシダーゼは、O_(2)^(・-)の産生を触媒するところ、II型糖尿病(T2DM)患者の末梢血単核細胞(PBMC)の呼吸バースト応答をしかける能力は低下することが記載されており(摘記1b、1c)、パパイヤ発酵食品(FPP)を、II型糖尿病(T2DM)患者から採取した末梢血単核細胞(PBMC)にex vivoで投与することによって、ROSの産生が誘導され、低下した呼吸バースト活性が是正されることが記載されている(摘記1b、1d、1e、1h?1m)。
そして、図1(摘記1e)の記載からみて、FPPを投与したT2DM群では、非投与(NS)のT2DM群と比較して、ROSであるO_(2)^(・-)の産生が向上し、呼吸バーストの活性が促進されたことが読み取れる。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

≪引用発明≫
「パパイヤ発酵食品(FPP)を有効成分として含有し、II型糖尿病(T2DM)患者から採取した末梢血単核細胞(PBMC)において、ex vivoで投与することにより、NADPHオキシダーゼが触媒する活性酸素種(ROS)の産生を向上させ、呼吸バーストの活性を促進する、呼吸バースト活性促進剤。」

(4)本件補正発明と引用発明との対比

本件補正発明と引用発明を対比すると、引用発明における「パパイヤ発酵食品(FPP)」及び「II型糖尿病(T2DM)患者」は、それぞれ本件補正発明における「パパイヤ発酵食品」及び「2型糖尿病患者」に相当する。
本願明細書には、「白血球のNADPHオキシダーゼはNADPHを消費してスーパーオキシドアニオン産生を触媒する。」(段落【0047】)、及び、「T2DにおけるNADPHオキシダーゼを介した呼吸バーストROSの産生の上昇は、・・・。」(段落【0048】)と記載されていることからみて、本件補正発明における「NADPHオキシダーゼ誘導の活性酸素種(ROS)の産生」とは、「NADPHオキシダーゼが触媒する活性酸素種(ROS)の産生」を意味するものであると認められるので、引用発明における「NADPHオキシダーゼが触媒する活性酸素種(ROS)の産生」は、本件補正発明における「NADPHオキシダーゼ誘導の活性酸素種(ROS)の産生」に相当する。
そうすると、本件補正発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。

<一致点>
「パパイヤ発酵食品を有効成分として含有し、2型糖尿病患者において、又は、2型糖尿病患者から採取した末梢血単核細胞(PBMC)において、NADPHオキシダーゼ誘導の活性酸素種(ROS)の産生を向上させ、呼吸バーストの活性を促進する、呼吸バースト活性促進剤。」

<相違点1>
NADPHオキシダーゼ誘導の活性酸素種(ROS)の産生を向上させ、呼吸バーストの活性を促進するのが、本件補正発明では「2型糖尿病患者において」であるのに対し、引用発明では「2型糖尿病患者から採取した末梢血単核細胞(PBMC)において」である点。

<相違点2>
本件補正発明では「パパイヤ発酵食品が体重70kgの成人に対して9?30g/日の用量で投与される」と特定をしているのに対し、引用発明ではそのような特定をしていない点。

(5)相違点についての判断

ア 相違点1について
一般的に医薬品や栄養補助食品の技術分野においては、有効成分について細胞レベルの試験により特定の用途に良好な結果が得られた場合に、実際に当該有効成分をヒトに適用して当該用途の有効性を確認することは、当業者が通常行うことである。
そして、パパイヤ発酵食品(FPP)をex vivoで投与することにより、糖尿病(T2DM)患者の末梢血単核細胞(PBMC)において、活性酸素種(ROS)の産生が向上し呼吸バースト活性が促進される旨が記載されている引用文献1(摘記1b、1d、1e、1h?1m)に接した当業者においては、パパイヤ発酵食品の、活性酸素種(ROS)の産生の向上、呼吸バースト活性の促進、という作用が、実際にヒトに経口摂取させた場合にも有効であることを確認する、強い動機付けがあるといえる。
また、引用発明における「パパイヤ発酵食品」については、引用文献1に記載の試験で用いられたのは、「大里インターナショナル」から提供された「Immun' Age」なる製品であるところ(摘記1m)、引用文献2、3の記載によれば、当該製品は、既に経口摂取されている販売製品であり、安全面や品質面で保証されたものであることが、本願出願前に当業者に周知であったと認められる(摘記2b、摘記3d)。
そうすると、既に安全面や品質面で保証されており、経口投与されていることが周知のパパイヤ発酵食品を有効成分とする、引用発明で「2型糖尿病患者から採取した末梢血単核細胞(PBMC)において」ex vivoで投与されている呼吸バースト活性促進剤について、NADPHオキシダーゼ誘導の活性酸素種(ROS)の産生を向上させ、呼吸バーストの活性を促進するのを、「2型糖尿病患者において」とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

イ 相違点2について
一般的に医薬品や栄養補助食品の技術分野において、有効成分を投与する際の1日あたりの用量について、目的とする効果が発揮され、かつ副作用が許容される程度である、適切な範囲を確認し設定することは、当業者が通常行うことである。
また、「パパイヤ発酵食品」については、引用発明とは用途が異なるが、引用文献3には、「健康な高齢者における、加齢とともに生じうる酸化還元状態の異常」(摘記3b)への効果を、引用文献4には、「肝硬変における酸化損傷」(摘記4a)に対する影響を、それぞれ試験をするために、成人に対して「9g/日の用量」で投与したこと(摘記3d、摘記4b)が記載されており、「パパイヤ発酵食品」を成人に「9g/日」程度の用量で投与した例も既に知られていたことから、そのような例も参考にしながら用量の最適化を検討することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、成人の平均的な体重を「70kg」とすることがあるのは周知であり(要すれば、特表2013-523763号公報の段落【0160】、特表2014-515374号公報の段落【0260】、特表2004-536812号公報の段落【0081】を参照)、目的とする効果の発揮と副作用とのバランス等を考慮して、前記「9g/日」程度の用量を増加させることにも、特に困難性は見い出せない。
そうすると、引用発明の呼吸バースト活性促進剤について、NADPHオキシダーゼ誘導の活性酸素種(ROS)の産生を向上させ、呼吸バーストの活性を促進するのを、「2型糖尿病患者において」とするに際し、投与用量の範囲を「パパイヤ発酵食品が体重70kgの成人に対して9?30g/日の用量で投与される」ものとすることは、当業者ならば容易になし得たことである。

(6)本件補正発明の効果について

ア 本願明細書等における効果に関する記載事項

本願明細書の段落【0012】には、【発明の効果】として、
「本発明の呼吸バースト活性促進剤によれば、2型糖尿病(T2D)患者の血糖値に悪影響を与えることなく、呼吸バースト活性を促進することができる。」
「このことにより、特に呼吸バースト活性が低下するT2D患者において、“良いROS”(呼吸バースト)の促進と“悪いROS”(酸化ストレス)の除去により、T2D患者に有益である。」
「このことにより、2型糖尿病患者の免疫を高めることができる。」
と記載されている。
そして、同明細書には、上記「効果」の具体的な裏付けとして、概ね以下の(ア)?(エ)のような実施例の記載がある。なお、下線は当審合議体が付した。

(ア)
[実施例1]T2D患者におけるFPPの安全性(段落【0033】?
【0037】、【図1】)
T2Dと診断された患者17名について、FPP摂取開始前の血液(ベースライン(BL))を採取し、その後、6週間、FPPを摂取させ(9g/日)、その間の2週目と6週目に採血し、更にその後、2週間のウォッシュアウト期間を設け、その間の1週目と2週目に採血した。
上記の採取した血液について、呼吸バーストROS産生、空腹時血糖、脂質値、糖化ヘモグロビン(HbA1c)、脂質/タンパク質過酸化反応を、測定した。
測定結果を示した【図1】の記載からみて、FPPの摂取により、血糖値及び総脂質値に影響はなく(図1A?F)、FPPはT2D患者が安全に摂取できることが示唆され、血糖値への長期的影響は、HbA1c値が示すように(図1B、E)、研究期間を通して変化は見られなかった。

(イ)
[実施例2]FPPによるT2D患者の末梢血単核細胞における呼吸バースト活性の改善(【0038】?【0043】、【図2】)
T2D患者から末梢血単核細胞(PBMC)を、ベースライン時、FPPの摂取を始めてから2週間後と6週間後、ウォッシュアウトの2週間後に、それぞれ採取した。
上記の採取したPBMCについて、ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)による30分の刺激の後、呼吸バースト中の活性酸素種(ROS)スーパーオキシドアニオンの産生を測定した。
FPPによるNADPHオキシダーゼを介したROSの産生が全身の酸化ストレスを増加させるかどうかを検証するため、上記の採取したPBMCについて、カルボニルタンパク質の量、及び、過酸化脂質反応マーカーである4-ヒドロキシノネナール(HNE-4)の量も、それぞれ測定した。
測定結果を示した【図2】の記載からみて、ROSの産生は、各患者のベースライン時と比較して有意に促進され(図2A)、FPPはT2D患者において必要な呼吸バーストROSを増加させた一方、FPPの摂取期間中を通じて酸化ストレスに悪影響を与えることはなかった(図2B?C)。

(ウ)
[実施例3]FPPによる細胞内のATP及びNADPHの産生の促進
(【0044】?【0049】、【図3】)
ヒト単球細胞株THP-1細胞を、グルコース不含培地で48時間培養して細胞からグルコースを除いてから、正常グルコースレベル基質(NG)、高グルコースレベル基質(HG)、FPP、又は、NG+FPPが含まれる培地で24時間培養した後、それぞれの物質グループの細胞について、細胞内のATP、NADP、及び、NADPHを測定した。
測定結果を示した【図3】の記載からみて、グルコース培地のみ(NG)に比べ、FPPを与えたグルコース培地(NG+FPP)では、ATP値が75%高く(図3A)、FPPが単球におけるATP産生を促進したことが示唆され、高グルコース培地(HG)では、同様の結果は観察されなかったので(図3A)、ATP値の上昇はFPPに含まれるグルコースに依存するものではなく、FPPの特定の成分が単球における細胞内のATPの産生を促進していることが示唆された。
白血球のNADPHオキシダーゼはNADPHを消費してスーパーオキシドアニオン産生を触媒するところ、THP-1細胞をFPPで処理すると、総NADP値はわずかに増えただけだったが、細胞のNADPH値は30%上昇した(図3B?C)。
NADPH/総NADPの割合の劇的な推移が観察され(図3D)、T2DにおけるNADPHオキシダーゼを介した呼吸バーストROSの産生の上昇は、細胞のATP及びNADPHの値の上昇の結果である可能性が示唆された。
これらの結果は、FPPが細胞のATP及びNADPHの値を上昇させることによりNADPHオキシダーゼの活性を促進していることを示唆した。

(エ)
[実施例4]FPPによるミトコンドリア膜電位差の上昇及び呼吸の活性化(【0050】?【0055】、【図4】)
ミトコンドリア膜電位差(MMP)と呼吸が原因で細胞のATP値が上昇するのかを検証するため、MMPを測定した。
実施例3と同様の条件で、ヒト単球細胞株THP-1細胞を培養した後、それぞれの物質グループの細胞について、MMP及び酸素消費を測定した。
測定結果を示した【図4】の記載からみて、NG+FPPの条件下で培養した単球細胞は、NGの条件下で培養した単球細胞に比べて、?20%のMMPの上昇が認められた(図4B)。
FPPの投与によりミトコンドリア呼吸が増え、そのためATP産生が上昇するという仮説を裏付けるために、FPPを投与した場合と投与していない場合の単球細胞の酸素消費を測定したところ(図4C)、NGに比べて、NG+FPPでは、脱共役呼吸率/State IV呼吸率が上昇したことにより、培養細胞の酸素消費が上昇することがわかった(図4D)。

イ 本件補正発明の効果についての判断

(ア)
前記ア(ア)の[実施例1]には、2型糖尿病(T2D)患者において、パパイヤ発酵食品(FPP)の摂取により、血糖値及び総脂質値には影響がなかった、との結果が示されていると認められるが、パパイヤ発酵食品が、2型糖尿病モデル動物(マウス)において、血糖値の上昇を抑制する作用を有することが、引用文献2に記載されているから(摘記2a、2c)、上記実施例1の結果のうち、血糖値への影響がなかったことは、当業者が予測し得ないものとはいえず、また、総脂質値にも影響がないことも、格別顕著な効果であるとは認められない。

(イ)
前記ア(イ)の[実施例2]に示されている結果のうち、パパイヤ発酵食品(FPP)を摂取した2型糖尿病(T2D)患者から採取した末梢血単核細胞(PBMC)において、呼吸バースト中の活性酸素種(ROS)としてのスーパーオキシドアニオンの産生が促進されたこと(“良いROS”(呼吸バースト)の促進)については、引用文献1に記載された、パパイヤ発酵食品(FPP)をex vivo投与した場合の効果が、in vivo投与した場合にも得られることを単に確認したに過ぎず、当業者が予測し得ないものであるとはいえない。
また、同[実施例2]に示された結果のうち、カルボニルタンパク質及びHNE-4の量に変化がなかったこと(“悪いROS”(酸化ストレス)がないこと)については、パパイヤ発酵食品(FPP)の抗酸化活性が周知であったことからすれば(摘記1c、摘記3c、摘記4b、4c)、当業者が予測し得ないものとはいえないし、引用発明において、ex vivo投与されたパパイヤ発酵食品(FPP)を、in vivo投与とすること自体の容易想到性を左右する程の格別顕著な効果であるとは認められない。

(ウ)
前記ア(ウ)の[実施例3]及び前記ア(エ)の[実施例4]に示された結果については、いずれも、活性酸素種(ROS)の産生を向上させ、呼吸バースト活性を促進するという、引用発明の用途の作用メカニズムを、単に確認したものに過ぎず、引用発明において、ex vivo投与されたパパイヤ発酵食品(FPP)を、in vivo投与とすること自体の容易想到性を左右するような効果であるとは認められない。

(エ)
したがって、本件補正発明は、引用文献1の記載及び周知技術から、当業者が予測し得ずかつ格別顕著な効果を奏したものとは認められない。

(7)請求人の主張について

請求人は、平成31年1月17日提出の手続補正書(方式)により補正された審判請求書において、「添付資料」(本願と同じ国際出願に基づく国内段階の米国特許出願(US,15/062,912)の審査手続において提出した宣誓書(Declaration)であり、発明者であるセンチャンダンケイの研究チームによる実験結果を示すもの。)を提出し、同「添付資料」には、マウスマクロファージを用いたin vitro実験において、3g/日/70kgヒトに相当する用量であるFPP_(lo)に比べて、9g/日/70kgヒトに相当する用量であるFPP_(hi)の用量は、マウスのマクロファージにおいて、より高いROS産生促進活性を有することが証明されているところ(Fig.1)、この用量による格別な効果は、引用文献1及び2のいずれにも記載されていない、旨を主張している。

当該「添付資料」のFig.1の記載によれば、ROS産生量は、3g/日/70kgヒトに相当する用量のFPPloでは、プラセボとの有意差はなかったのに対し、9g/日/70kgヒトに相当する用量のFPPhiでは、プラセボと比較して有意な増加を示したことが読み取れるが、有効成分であるパパイヤ発酵食品の1日あたりの用量について、3g/日/70kgを9g/日/70kgへと増量すれば、それに応じて、よりROS産生量が増すことは、当業者が容易に予測し得ることである。
また、本願明細書の段落【0019】には、「有効成分として、体重70kgの成人に対して、0.5?30g/日であればよく、好ましくは1?20g/日、さらに好ましくは3?15g/日、最も好ましくは3?9g/日である。」と記載されていることから、9gを超えた範囲において、さらに格別顕著な効果を奏するものとも認められない。

(8)小括

以上のとおり、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 補正の却下の決定のむすび

前記2のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、他の補正事項について検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

前記第2のとおり、平成30年12月4日提出の手続補正書による手続補正は却下されたので、本願に係る発明は、当該補正前の平成29年8月17日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1に記載した、次のとおりのものである。

「【請求項1】
パパイヤ発酵食品を有効成分として含有し、2型糖尿病患者において、NADPHオキシダーゼ誘導の活性酸素種(ROS)の産生を向上させ、呼吸バーストの活性を促進する、呼吸バースト活性促進剤。」

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?4に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものであり、その対象とされた請求項1に係る発明は、前記1で認定した本願発明である。

3 当審の判断

(1)引用文献の記載事項等

原査定の拒絶の理由で引用された「引用文献1」は、前記第2[理由]2(2)アで引用した引用文献1(ANTIOXIDANTS & REDOX SIGNALING, 2012, Vol.17, No.3, P.485-491)であって、同文献に記載された事項は、同第2[理由]2(2)アに摘記したとおりであり、引用発明は、同第2[理由]2(3)で認定したとおりである。

(2)対比・判断

本願発明は、本件補正発明における「前記パパイヤ発酵食品が体重70kgの成人に対して9?30g/日の用量で投与される、」という限定条件が付されていないものである。
そして、前記第2[理由]2(4)?(8)で説示したとおり、「前記パパイヤ発酵食品が体重70kgの成人に対して9?30g/日の用量で投与される、」という限定条件が付された本件補正発明が、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該限定条件が付されていない本願発明も、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-04-23 
結審通知日 2020-05-12 
審決日 2020-05-28 
出願番号 特願2016-543535(P2016-543535)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鶴見 秀紀  
特許庁審判長 藤原 浩子
特許庁審判官 井上 典之
穴吹 智子
発明の名称 呼吸バースト活性促進剤及び免疫賦活剤  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 阿部 寛  
代理人 渡辺 欣乃  

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