ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N |
---|---|
管理番号 | 1364646 |
審判番号 | 不服2019-1943 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-02-12 |
確定日 | 2020-07-27 |
事件の表示 | 特願2017- 67232「画像処理装置、プロジェクタ装置、画像読取装置、画像処理方法、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 1日出願公開、特開2018-170667〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成29年3月30日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 5月22日付け:拒絶理由通知 平成30年 7月27日 :意見書,手続補正書の提出 平成30年11月 6日付け:拒絶査定 平成31年 2月12日 :審判請求書,手続補正書の提出 令和 1年12月10日付け:最後の拒絶理由通知(当審) 令和 2年 1月30日 :意見書,手続補正書の提出 第2 令和2年1月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年1月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正により,平成31年2月12日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下,「補正前発明」という。)は,以下のとおり補正された(以下,「本件補正発明」という。)。 なお,本件補正発明の下線は,補正箇所を示すものとして請求人が付したものである。 (補正前発明) 「 【請求項1】 プロジェクタ装置へ投影画像の投影を指示した後の投影タイミングにおいて画像読取装置へ撮影指示を行うと共に,前記プロジェクタ装置によって投影面に投影された前記投影画像を撮影する前記画像読取装置が前記投影画像を撮影した撮影画像に基づいて,前記撮影画像中の所望位置と前記投影画像の所望位置との対応関係を補正する補正部を備え, 前記補正部は,前記投影画像と前記撮影画像との比較に基づいて,前記撮影画像中の所望位置と前記投影画像の所望位置との対応関係を補正し,前記撮影画像において前記投影画像の一部が含まれない場合には,前記前記撮影画像に前記投影画像が含まれるまで前記プロジェクタ装置または前記画像読取装置の何れか一方に光軸方向の変更指示を出力する 画像処理装置。」 (本件補正発明) 「 【請求項1】 プロジェクタ装置へ投影画像の投影を指示した後の投影タイミングにおいて画像読取装置へ撮影指示を行うと共に,前記プロジェクタ装置によって投影面に投影された前記投影画像の範囲内の撮影範囲を撮影する前記画像読取装置が前記投影画像の範囲内の撮影範囲を撮影した撮影画像に基づいて,前記撮影画像の範囲の所望位置と前記投影画像の範囲の所望位置との対応関係を補正する補正部を備え, 前記補正部は,前記投影画像と前記撮影画像との比較に基づいて,前記投影画像の範囲内における前記撮影画像の範囲の所望位置と前記投影画像の範囲の所望位置との対応関係を補正し,前記撮影画像において前記投影画像の一部が含まれない場合には,前記前記撮影画像に前記投影画像が含まれるまで前記プロジェクタ装置または前記画像読取装置の何れか一方に光軸方向の変更指示を出力する 画像処理装置。」 2 補正の適否 本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記投影画像を撮影する前記画像読取装置」を「前記投影画像の範囲内の撮影範囲を撮影する前記画像読取装置」と限定し, 同じく「前記投影画像を撮影した撮影画像」を「前記投影画像の範囲内の撮影範囲を撮影した撮影画像」と限定し, 同じく「前記撮影画像中の所望位置」を「前記投影画像の範囲内における前記撮影画像の範囲の所望位置」と限定する補正を含むものであって, 補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1に記載したとおりのものであるが,以下に再掲する。 なお,以下の符号A?Fは説明のため当審で付与したものであり,以下,構成A?構成Fと称する。 (A)プロジェクタ装置へ投影画像の投影を指示した後の投影タイミングにおいて画像読取装置へ撮影指示を行うと共に, (B1)前記プロジェクタ装置によって投影面に投影された前記投影画像の範囲内の撮影範囲を撮影する前記画像読取装置が 前記投影画像の範囲内の撮影範囲を撮影した撮影画像に基づいて, (B2)前記撮影画像の範囲の所望位置と前記投影画像の範囲の所望位置との対応関係を補正する (C)補正部を備え, (C)前記補正部は, (B3)前記投影画像と前記撮影画像との比較に基づいて, (B4)前記投影画像の範囲内における前記撮影画像の範囲の所望位置と前記投影画像の範囲の所望位置との対応関係を補正し, (D1)前記撮影画像において前記投影画像の一部が含まれない場合には,前記前記撮影画像に前記投影画像が含まれるまで (D2)前記プロジェクタ装置または前記画像読取装置の何れか一方に光軸方向の変更指示を出力する (E)画像処理装置。 なお,構成D1の「前記撮影画像において前記投影画像の一部が含まれない場合には,前記前記撮影画像に前記投影画像が含まれるまで」は「前記撮影画像において前記投影画像の一部が含まれない場合には,前記撮影画像に前記投影画像が含まれるまで」の明らかな誤記である。 (2)引用文献1の記載及び引用発明 ア 引用文献1の記載事項 当審の拒絶理由で引用された,本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(特開2016-187145号公報)には,図面と共に次の事項が記載されている。 なお,下線は強調のために当審で付したものである。 (ア)<第1実施形態の例1> 「【0025】 <第1実施形態の例1> 図1は,第1実施形態の例1に係るプロジェクター1の使用状況の一例を示す図である。 第1実施形態の例1では,プロジェクター1が1台の撮像部10を備える場合について説明する。この一例におけるプロジェクター1は,図1に示すようにテーブルTB上に設置される。なお,プロジェクター1は,テーブルTBに代えて,天井や床面,壁面等のプロジェクター1を設置可能な他の場所に設置されてもよい。 (略) 【0030】 図1において,プロジェクター1は,スクリーンSCに投写画像P1を投写している。また,プロジェクター1は,ユーザーから受け付けた操作に基づいてレンズシフト機能により,投写可能領域PA内におけるユーザーが所望する位置に投写画像P1を投写している。なお,投写可能領域PAは,投写面の一例である。 (略) 【0032】 撮像部10は,撮像中心を移動させるための移動機構を備える。撮像中心とは,この一例において,撮像部10の撮像可能範囲CAの中心を示す。以下では,説明の便宜上,撮像部10が備えるレンズを撮像レンズと称して説明する。移動機構は,この一例において,撮像部10の位置や姿勢を変化させることによって撮像中心を移動する。移動機構が撮像中心を移動することにより,撮像可能領域CAが変更される。 (略) 【0034】 本実施形態では,撮像部10が備える移動機構が,撮像部10を移動させることによって撮像中心を移動する場合について説明する。撮像部10を移動させるとは,撮像部10の位置や姿勢(向き)を変更することを示す。なお,撮像部10が備える移動機構は,他の方法によって撮像中心を移動させる構成であってもよい。 (略) 【0036】 概略的には,プロジェクター1は,投写可能領域PAにパターン画像を投写する。プロジェクター1は,投写したパターン画像を,移動機構101により撮像中心を移動しながら撮像部10により撮像可能領域CAを撮像する。この際,プロジェクター1は,撮像部10が撮像した撮像画像に占めるパターン画像の割合が所定条件を満たすように移動機構101により撮像中心を移動する。そして,プロジェクター1は,例えば,投写可能領域PAに投写画像P1を投写し,当該割合が所定条件を満たす状態で撮像部10により撮像された投写画像P1を含む撮像画像に基づいて処理を行う。 【0037】 これにより,プロジェクター1は,投写画像P1の状態に応じて適した撮像画像に基づく処理を行うことができる。なお,投写画像P1の状態は,投写画像P1の全体が撮像可能領域CAの内側に含まれている状態と,投写画像P1の全体が撮像可能領域CAの内側に含まれていない状態のいずれかによって表される。また,適した撮像画像とは,この一例において,投写画像P1の全体が含まれた撮像画像を示す。また,投写画像P1の状態に応じて適した画像に基づく処理とは,例えば,画質調整や,スクリーンフィット(枠補正),自動台形補正,インタラクティブ操作に係る処理等である。インタラクティブ操作に係る処理とは,例えば,撮像画像からの指示体の位置の検出等である。なお,上記の所定条件については,後述する。 」 (イ)<プロジェクター1の構成> 「【0044】 次に,図4を参照して,第1実施形態の例1に係るプロジェクター1の構成について説明する。図4は,第1実施形態の例1に係るプロジェクター1の構成例を示す図である。プロジェクター1は,撮像部10と,記憶部12と,入力受付部13と,制御部16と,光源制御部17と,光源18と,光変調装置19と,レンズ部20と,画像入力部21と,画像処理部22と,OSD(On Screen Display)処理部23と,光変調装置駆動部24と,加速度センサー25を備える。 【0045】 撮像部10は,例えば,集光された光を電気信号に変換する撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を備えたカメラである。また,撮像部10は,移動機構101を内蔵する。移動機構101は,制御部16からの要求に応じて,撮像部10を移動することにより,撮像中心を移動する。なお,移動機構101は,撮像部10に内蔵される構成に代えて,撮像部10の外部に備えられる構成であってもよい。移動機構101は,移動部の一例である。 (略) 【0047】 制御部16は,プロジェクター1の全体を制御する。また,制御部16は,入力受付部13から受け付けられたユーザーからの操作に基づいて記憶部12から画像を読み込み,読み込んだ画像を投写画像として画像処理部22に出力する。また,制御部16は,入力受付部13から受け付けられたユーザーからの操作に基づいて,投写画像に重畳するメニュー画像やメッセージ画像等のOSD画像を投写画像に重畳させた画像情報を生成させる。また,制御部16は,撮像部10が撮像した撮像画像を撮像部10から取得する。 (略) 【0049】 制御部16が備える撮像制御部161と,撮像中心移動制御部163と,評価値検出部165と,判定部167は,連携して撮像位置設定処理を行う。 撮像制御部161は,撮像部10に撮像可能領域CAを撮像させる。」 (ウ)「図4」 (エ)<制御部16が行う撮像位置設定処理> 「【0057】 次に,図5を参照して,制御部16が行う撮像位置設定処理について説明する。図5は,制御部16が行う撮像位置設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。 まず,プロジェクター1は,入力受付部13から受け付けられたユーザーからの操作に基づいて,スクリーンSC上の投写可能領域PA内のユーザーが所望する位置にパターン画像を投写する(ステップS100)。以下では,ユーザーが所望する位置に投写されたパターン画像が,ステップS100の時点における撮像可能領域CAからはみ出ている場合について説明する。 【0058】 次に,撮像制御部161は,撮像部10に撮像可能領域CAを撮像させる(ステップS110)。そして,制御部16は,撮像部10から撮像画像を取得する。次に,判定部167は,ステップS110において撮像部10から取得した撮像画像にパターン画像の少なくとも一部が撮像されているか否かを判定する(ステップS120)。なお,判定部167は,パターンマッチングによってこの判定を行うとするが,これに代えて,他の手法によってこの判定を行う構成であってもよい。 【0059】 撮像画像にパターン画像の少なくとも一部が撮像されていないと判定部167が判定した場合(ステップS120-No),撮像中心移動制御部163は,移動機構101により撮像中心を所定方向に所定移動量だけ移動させる(ステップS130)。その後,撮像制御部161は,ステップS110に遷移して再び撮像可能領域CAを撮像部10に撮像させる。 (略) 【0061】 従って,撮像中心移動制御部163は,移動機構101により撮像中心を所定方向の移動可能な限界点にまで移動させてもパターン画像の一部が撮像されない場合,移動機構101により撮像中心を所定方向とは異なる他の方向に移動させる。このような移動と撮像を繰り返すことにより,制御部16は,撮像画像にパターン画像の一部が撮像されるまで撮像中心を移動させる。 (略) 【0064】 ステップS120において,撮像画像にパターン画像の少なくとも一部が撮像されていると判定部167が判定した場合,評価値検出部165は,ステップS110において撮像部10から取得した撮像画像に基づいて評価値を検出する(ステップS140)。 (略) 【0067】 次に,判定部167は,ステップS140において評価値検出部165が検出した評価値が所定条件を満たすか否かを判定する(ステップS150)。評価値が所定条件を満たさないと判定した場合(ステップS150-No),撮像中心移動制御部163は,移動機構101に撮像中心を移動させる(ステップS160)。以下では,説明の便宜上,撮像中心移動制御部163が移動機構101に撮像中心を移動させることを,撮像中心移動制御部163が撮像中心を移動させると称して説明する。 (略) 【0070】 ステップS160の処理において撮像中心を移動させた後,撮像制御部161は,撮像可能領域CAを撮像部10に撮像させる(ステップS。170)。そして,制御部16は,撮像部10から撮像画像を取得する。ステップS170における処理の後,評価値検出部165は,ステップS140に遷移し,ステップS170において撮像部10から取得した撮像画像に基づいて評価値を再び検出する。 【0071】 一方,評価値が所定条件を満たすと判定部167が判定した場合(ステップS150-Yes),制御部16は,ステップS140からステップS170までの評価値反復検出処理を終了し,ステップS180に遷移する。評価値が所定条件を満たすと判定部167が判定した場合,撮像中心移動制御部163は,ステップS140において評価値検出部165が検出した1以上の評価値に基づいて,撮像中心を設定する位置を決定する。そして,撮像中心移動制御部163は,決定した位置に撮像中心を設定するように移動機構101を制御する(ステップS180)。撮像中心移動制御部163がステップS180において撮像中心が設定された撮像部10によって撮像した撮像画像は,すなわち,撮像画像に占めるパターン画像の割合が所定条件を満たす状態で撮像された撮像画像である。 【0072】 ここで,撮像中心移動制御部163が撮像中心を設定する位置を決定する処理について説明する。撮像中心移動制御部163は,ステップS140において評価値検出部165が検出した1以上の評価値に基づいて,撮像画像に占めるパターン画像の割合が所定値以上となる撮像画像が撮像された撮像中心の位置を特定する。そして,撮像中心移動制御部163は,特定した撮像中心の位置を,撮像中心を設定する位置として決定する。所定値は,撮像画像に占めるパターン画像の割合が所定値以上の場合に,パターン画像や投写画像P1等のプロジェクター1により投写された投写画像の全体が撮像可能領域CAに含まれるように予め決められる。なお,所定値についての具体例は,所定条件のバリエーション毎に異なるため,所定条件と同様に図6?図8において説明する。 【0073】 このようにステップS100からステップS180までの処理によって,プロジェクター1は,評価値反復検出処理により検出された1以上の評価値に基づいて撮像画像に占めるパターン画像の割合が所定条件を満たす状態を実現することができる。当該処理の後,プロジェクター1は,例えば,投写画像P1をパターン画像に代えて投写する。そして,プロジェクター1は,撮像部10により撮像可能領域CAを撮像することにより,撮像画像に占める投写画像P1の割合を,所定条件を満たす状態にすることができる。プロジェクター1は,撮像された投写画像P1に基づいて,投写画像P1の状態に応じて適した画像に基づく処理を行うことができる。 (略) 【0088】 なお,撮像中心移動制御部163は,撮像中心の位置毎に撮像部10が撮像した撮像画像のそれぞれからパターンマッチングによって,各撮像画像に占めるパターン画像の割合を検出し,検出した当該割合が所定値以上である撮像画像を検出する構成であってもよい。この場合,撮像中心移動制御部163は,検出した撮像画像を撮像した撮像中心の位置を特定する。そして,撮像中心移動制御部163は,特定した撮像中心の位置を,撮像中心を設定する位置として決定し,決定した位置に撮像中心を設定する。」 (オ)「図5」 (カ)<第3実施形態> 「【0174】 <第3実施形態> 以下,本発明の第3実施形態について図面を参照して説明する。図23は,第3実施形態に係るプロジェクター1により投写画像P12が投写されているスクリーンSCの一例を示す図である。プロジェクター1は,レンズシフト機能によりユーザーが所望する位置に投写画像P12を投写する。また,プロジェクター1は,投写可能領域PA内に投写画像P12を投写する。図23において,点線に囲まれた領域は,撮像部10による撮像可能領域CAを示す。ここで,第3実施形態に係るプロジェクター1が備える撮像部10は,図1に示したように,投写可能領域PAの全体を含む領域を撮像可能な広角レンズを撮像レンズとして備える場合について説明する。 (略) 【0179】 次に,図26を参照して,第3実施形態に係るプロジェクター1の構成について説明する。図26は,第3実施形態に係るプロジェクター1の構成例を示す図である。プロジェクター1は,記憶部12と,入力受付部13と,制御部16dと,光源制御部17と,光源18と,光変調装置19と,レンズ部20と,画像入力部21と,画像処理部22と,OSD処理部23と,光変調装置駆動部24と,撮像部100を備える。なお,第3実施形態では,第1実施形態と同様な構成部には,同じ符号を付して説明を省略する。 【0180】 制御部16dは,撮像制御部161と,投写条件取得部164と,撮像画像処理部166と,処理領域画像取得部168を備える。撮像画像処理部166は,投写条件取得部164が取得した投写条件と,撮像部100から取得した撮像画像とに基づいて,処理領域画像を生成する。撮像画像処理部166は,特定部の一例である。処理領域画像取得部168は,撮像画像処理部166が生成した処理領域画像を取得する。 (略) 【0186】 処理領域画像取得部168は,ステップS850において撮像画像処理部166が生成した処理領域画像を撮像画像処理部166から取得する。そして,処理領域画像取得部168は,取得した処理領域画像を記憶部12に記憶させる(ステップS860)。 このように,ステップS800からステップS860までの処理によって,制御部16dは,処理領域画像を記憶部12に記憶させる。その結果,制御部16dは,記憶部12に記憶された処理領域画像に基づく処理を行うことができる。なお,処理領域画像は,第1実施形態において説明した,適した撮像画像の一例である。また,制御部16dは,処理部の一例である。 (略) 【0188】 また,撮像画像処理部166は,制御部16dが備える構成に代えて,撮像部10が備える構成であってもよい。その場合,ステップS850における処理は,撮像部10により行われる。また,処理領域画像取得部168は,撮像部10が生成した処理領域画像を取得する。これにより,プロジェクター1は,撮像部10が撮像画像処理部166を備えていた場合であっても,同様の効果を得ることができる。」 (キ)<第3実施形態の最低限必要となる領域> 「【0194】 上記の第3実施形態では,処理領域画像P14に,少なくとも投写画像P12の全体が含まれるようにしているが,撮像画像に基づく処理(画質調整等)に最低限必要となる領域が含まれていれば,投写画像P12の全体が含まれていなくてもよい。また,処理領域画像P14は,制御部16dに入力可能な解像度以内で,撮像画像に基づく処理(画質調整等)に最低限必要となる領域を含む所定サイズの画像としてもよい。この場合の所定サイズは,製造時の組み立てばらつき等を考慮したマージンを含んでいることが望ましい。 (略) 【0196】 上記の第3実施形態に代えて,制御部16dが,取得した投写条件に基づいて処理領域を特定した後,撮像部100が撮像した撮像画像のうち処理領域に含まれる画像のみを出力するよう撮像部100を制御するようにしてもよい。この場合,制御部16dは,撮像部100から取得した画像を処理領域画像として記憶部12に記憶させ,記憶させた処理領域画像に対して画質調整等の処理を行う。」 (ク)「図25」<プロジェクター1が取得する処理領域画像> イ 引用発明 引用文献1に記載されている事項について検討する。 (ア)上記ア(ア)?(オ)には,第1実施形態の例1に係るプロジェクター1が記載され,上記ア(カ)及び(キ)には,第3実施形態が記載されている。 そして,上記ア(カ)の段落0174に「第3実施形態に係るプロジェクター1が備える撮像部10は,図1に示したように,投写可能領域PAの全体を含む領域を撮像可能な広角レンズを撮像レンズとして備える場合について説明する。」, 同段落0179に「第3実施形態では,第1実施形態と同様な構成部には,同じ符号を付して説明を省略する。」と記載されていることから, 引用文献1に記載されている事項として,第1実施形態の例1の構成及び処理内容を加えて第3実施形態に記載されている制御部16dに係る事項を認定する。 (イ)まとめ そうすると,上記ア(ア)?(ク)に摘記した引用文献1の記載事項から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 なお,引用発明の各構成を,それぞれに付した符号(a)?(k)により,以下,構成a?構成kと称する。 (引用発明) (a)プロジェクター1が1台の撮像部10を備え,プロジェクター1は,スクリーンSCに投写画像P1を投写し,撮像部10は,撮像中心を移動させるための移動機構を備え,撮像中心とは,撮像部10の撮像可能範囲CAの中心を示し,移動機構は,撮像部10の位置や姿勢を変化させることによって撮像中心を移動し,移動機構が撮像中心を移動することにより,撮像可能領域CAが変更され, (b)プロジェクター1は,投写可能領域PAにパターン画像を投写し,投写したパターン画像を,移動機構101により撮像中心を移動しながら撮像部10により撮像可能領域CAを撮像し,この際,プロジェクター1は,撮像部10が撮像した撮像画像に占めるパターン画像の割合が所定条件を満たすように移動機構101により撮像中心を移動し, そして,プロジェクター1は,投写可能領域PAに投写画像P1を投写し,当該割合が所定条件を満たす状態で撮像部10により撮像された投写画像P1を含む撮像画像に基づいて処理を行い, (c)これにより,プロジェクター1は,投写画像P1の状態に応じて適した撮像画像に基づく処理を行うことができ,なお,投写画像P1の状態は,投写画像P1の全体が撮像可能領域CAの内側に含まれている状態と,投写画像P1の全体が撮像可能領域CAの内側に含まれていない状態のいずれかによって表され,また,適した撮像画像とは,投写画像P1の全体が含まれた撮像画像を示し,投写画像P1の状態に応じて適した画像に基づく処理とは,例えば,画質調整や,スクリーンフィット(枠補正),自動台形補正,インタラクティブ操作に係る処理等であり, (d)プロジェクター1は,撮像部10と,記憶部12と,入力受付部13と,制御部16と,光源制御部17と,光源18と,光変調装置19と,レンズ部20と,画像入力部21と,画像処理部22と,OSD(On Screen Display)処理部23と,光変調装置駆動部24と,加速度センサー25を備え, (e)撮像部10は,移動機構101を内蔵し,移動機構101は,制御部16からの要求に応じて,撮像部10を移動することにより,撮像中心を移動し, (f)制御部16は,プロジェクター1の全体を制御し,また,制御部16は,撮像部10が撮像した撮像画像を撮像部10から取得し, 制御部16が備える撮像制御部161と,撮像中心移動制御部163と,評価値検出部165と,判定部167は,連携して撮像位置設定処理を行い, 撮像制御部161は,撮像部10に撮像可能領域CAを撮像させるものであり, (g)制御部16が行う撮像位置設定処理は,以下のステップを含み, (g1)入力受付部13から受け付けられたユーザーからの操作に基づいて,スクリーンSC上の投写可能領域PA内のユーザーが所望する位置にパターン画像を投写し(ステップS100), (g2)撮像制御部161は,撮像部10に撮像可能領域CAを撮像させ,そして,制御部16は,撮像部10から撮像画像を取得し(ステップS110), (g3)次に,判定部167は,ステップS110において撮像部10から取得した撮像画像にパターン画像の少なくとも一部が撮像されているか否かを判定し(ステップS120), (g4)撮像画像にパターン画像の少なくとも一部が撮像されていないと判定した場合(ステップS120-No),撮像中心移動制御部163は,移動機構101により撮像中心を所定方向に所定移動量だけ移動させ(ステップS130),その後,撮像制御部161は,撮像可能領域CAを撮像部10に撮像させ(ステップS110), (g5)撮像中心移動制御部163は,移動機構101により撮像中心を所定方向の移動可能な限界点にまで移動させてもパターン画像の一部が撮像されない場合,移動機構101により撮像中心を所定方向とは異なる他の方向に移動させ,このような移動と撮像を繰り返すことにより,制御部16は,撮像画像にパターン画像の一部が撮像されるまで撮像中心を移動させ, (g6)ステップS120において,撮像画像にパターン画像の少なくとも一部が撮像されていると判定部167が判定した場合,評価値検出部165は,ステップS110において撮像部10から取得した撮像画像に基づいて評価値を検出し(ステップS140), (g7)次に,判定部167は,ステップS140において評価値検出部165が検出した評価値が所定条件を満たすか否かを判定し(ステップS150),評価値が所定条件を満たさないと判定した場合(ステップS150-No),撮像中心移動制御部163は移動機構101に撮像中心を移動させ(ステップS160), (g8)ステップS160の処理において撮像中心を移動させた後,撮像制御部161は,撮像可能領域CAを撮像部10に撮像させ(ステップS170),そして,制御部16は,撮像部10から撮像画像を取得し,ステップS170における処理の後,評価値検出部165は,ステップS140に遷移し,ステップS170において撮像部10から取得した撮像画像に基づいて評価値を再び検出し(ステップS140), (g10)一方,評価値が所定条件を満たすと判定部167が判定した場合(ステップS150-Yes),制御部16は,ステップS140からステップS170までの評価値反復検出処理を終了し,ステップS180に遷移し,評価値が所定条件を満たすと判定部167が判定した場合,撮像中心移動制御部163は,ステップS140において評価値検出部165が検出した1以上の評価値に基づいて,撮像中心を設定する位置を決定し,そして,撮像中心移動制御部163は,決定した位置に撮像中心を設定するように移動機構101を制御し(ステップS180), (g11)撮像中心移動制御部163は,ステップS140において評価値検出部165が検出した1以上の評価値に基づいて,撮像画像に占めるパターン画像の割合が所定値以上となる撮像画像が撮像された撮像中心の位置を特定し,そして,撮像中心移動制御部163は,特定した撮像中心の位置を,撮像中心を設定する位置として決定し,所定値は,撮像画像に占めるパターン画像の割合が所定値以上の場合に,パターン画像や投写画像P1等のプロジェクター1により投写された投写画像の全体が撮像可能領域CAに含まれるように予め決められるものであり, (g12)このようにステップS100からステップS180までの処理によって,プロジェクター1は,評価値反復検出処理により検出された1以上の評価値に基づいて撮像画像に占めるパターン画像の割合が所定条件を満たす状態を実現することができ,そして,プロジェクター1は,撮像部10により撮像可能領域CAを撮像することにより,撮像画像に占める投写画像P1の割合を,所定条件を満たす状態にすることができ,プロジェクター1は,撮像された投写画像P1に基づいて,投写画像P1の状態に応じて適した画像に基づく処理を行うことができ, (g13)撮像中心移動制御部163は,撮像中心の位置毎に撮像部10が撮像した撮像画像のそれぞれからパターンマッチングによって,各撮像画像に占めるパターン画像の割合を検出し,検出した当該割合が所定値以上である撮像画像を検出する構成であって (h)プロジェクター1が備える撮像部10は,投写可能領域PAの全体を含む領域を撮像可能な広角レンズを撮像レンズとして備え, (i)制御部16dは,撮像画像処理部166と,処理領域画像取得部168を備え,撮像画像処理部166は,投写条件と,撮像部100から取得した撮像画像とに基づいて,処理領域画像を生成し,処理領域画像取得部168は,撮像画像処理部166が生成した処理領域画像を取得し,そして,処理領域画像取得部168は,取得した処理領域画像を記憶部12に記憶させ(ステップS860),その結果,制御部16dは,記憶部12に記憶された処理領域画像に基づく処理を行うことができ,なお,処理領域画像は,適した撮像画像の一例であり, (j)撮像画像処理部166は,制御部16dが備える構成に代えて,撮像部10が備える構成であってもよく,その場合,ステップS850における処理は,撮像部10により行われ,また,処理領域画像取得部168は,撮像部10が生成した処理領域画像を取得し, (k)処理領域画像P14に,少なくとも投写画像P12の全体が含まれるようにしているが,撮像画像に基づく処理(画質調整等)に最低限必要となる領域が含まれていれば,投写画像P12の全体が含まれていなくてもよく,処理領域画像P14は,制御部16dに入力可能な解像度以内で,撮像画像に基づく処理(画質調整等)に最低限必要となる領域を含む所定サイズの画像としてもよく, 制御部16dが,取得した投写条件に基づいて処理領域を特定した後,撮像部100が撮像した撮像画像のうち処理領域に含まれる画像のみを出力するよう撮像部100を制御するようにしてもよく,この場合,制御部16dは,撮像部100から取得した画像を処理領域画像として記憶部12に記憶させ,記憶させた処理領域画像に対して画質調整等の処理を行う, (f)制御部16。 (3)引用文献2の記載及び技術 ア 引用文献2の記載事項 当審の拒絶理由で引用された,本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2(特開2014-203174号公報)には,図面と共に次の事項が記載されている。 なお,下線は強調のために当審で付したものである。 (ア)「【0010】 [情報操作表示システムの構成] 図1は,情報操作表示システムの全体の概略構成の一例を示す図である。図1に示すように,情報操作表示システム100は,カメラ1,2と,プロジェクタ(表示装置)3と,情報処理装置10とを有する。情報処理装置10は,カメラ1,2およびプロジェクタ3とネットワーク(図示省略)を介して通信可能に接続される。プロジェクタ3は,所定の投影面上にバーチャル画像を投影する。カメラ1,2は,投影面上に投影された画像と該画像上に置かれた操作対象物(例えば,操作者の手や指)との画像を撮影する。」 (イ)「【0014】 また,情報操作表示システム100では,あらかじめカメラ1,2の認識座標系とプロジェクタ3の表示座標系の間の位置合わせ(キャリブレーション)を行う。情報操作表示システム100では,カメラ1,2とプロジェクタ3の位置関係が変化するたびに,キャリブレーションを一回行う。具体的なキャリブレーションの方法について,プロジェクタ3の出力画像をカメラ1,2で読み取ることで,システム内部でキャリブレーションを実行する方法を説明する。なお,キャリブレーションの方法は,この方法に限らない。また,情報操作表示システム100では,2台のカメラそれぞれについて,キャリブレーションを実行する。 【0015】 はじめに,情報操作表示システム100では,プロジェクタ3の表示座標系において,ある任意の座標値(x_p,y_p)にマーカを表示させる。このマーカは,周囲の背景と区別しやすいような任意の色・形状が可能である。そして,カメラ1,2は,投影面に投影させた状況を撮影する。続いて,情報処理装置10は,マーカを画像処理手法によって読み取る。マーカに円形の模様を用いたときは,例えば「Kimmeら,”Finding circles by an array of accumulators”, Communications of the Association for Computing Machinery”, #18, pp.120-122, 1975.」に開示されるハフ円変換により円形状を読み取るようにすればよい。そして,読み取った際の座標値を(x_i,y_i)とする。 【0016】 情報処理装置10は,上記したマーカを読み取る処理を任意の場所で4点分繰り返す。そして,情報処理装置10は,このようにして得られた(x_p,y_p)に対応する(x_i,y_i)の組4組から,3行3列のホモグラフィ行列Hの各成分を8次元連立一次方程式で求める。ここでホモグラフィ行列Hとは,三次元空間上のある平面から別の平面への射影変換を表す行列である。ここではカメラ座標平面とプロジェクタ座標平面との対応付けを求める。そして,情報処理装置10は,以上のようにして求めたホモグラフィ行列を保存しておき,バーチャル画像の投影時に利用する。」 イ 引用文献2記載技術 上記アの記載から,引用文献2には,次の技術が記載されている。 (引用文献2記載技術) カメラとプロジェクタ(表示装置)と情報処理装置とを有する情報操作表示システムにおいて, あらかじめカメラの認識座標系とプロジェクタの表示座標系の間の位置合わせ(キャリブレーション)を行うものであって,プロジェクタの出力画像をカメラで読み取ることで,システム内部でキャリブレーションを実行する技術であって, プロジェクタの表示座標系においてある任意の座標値にマーカを表示させ, カメラが投影面に投影させた状況を撮影し,情報処理装置はマーカを画像処理手法によって読み取り, 情報処理装置は,読み取った際の座標値からカメラ座標平面とプロジェクタ座標平面との対応付けを求める技術。 (4)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)「プロジェクタ装置」,「投写可能領域PA」,「画像読取装置」及び「画像処理装置」について 引用発明の「プロジェクター1」,「投写可能領域PA」,「撮像部10」はそれぞれ,本件補正発明の「プロジェクタ装置」,「投影面」,「画像読取装置」に相当する。 引用発明の「制御部16d」は,プロジェクター1及び撮像部10を制御している点で,本件補正発明の「画像処理装置」に相当する。 (イ)「投影画像」,「撮影画像」について 構成b及び構成gのプロジェクター1が投写可能領域PAに投写する「パターン画像」は,本件補正発明のプロジェクタ装置が投影面に投影する「投影画像」に相当する。 構成a?構成gの撮像部10が撮像した「撮像画像」は,本件補正発明の画像読取装置が撮影した画像である点で「撮影画像」と共通する。 また,構成a?構成gの撮像部10が撮像する「撮像可能領域CA」は,本件補正発明の画像読取装置が撮影する範囲である点で「撮影範囲」と共通する。 しかしながら,「撮影画像」について, 本件補正発明は,「投影画像の範囲内の撮影範囲を撮影した撮影画像」であるのに対して, 引用発明は,撮像可能領域CAの内側に含まれている画像である点,即ち,「投影画像の範囲内の撮影範囲を撮影した撮影画像」でない点で相違する(相違点1)。 (ウ)構成Aについて 構成fに記載のとおり,引用発明の「制御部16は,プロジェクター1の全体を制御」するから,構成g1の「パターン画像を投写する」は,引用発明の制御部16の指示による処理といえる。 よって,構成g1は構成Aの「プロジェクタ装置へ投影画像の投影を指示した」に相当する。 そして,構成g2の「撮像部10に撮像可能領域CAを撮像させ」は,制御部16が備える撮像制御部161が撮像させることであるから,構成g2は制御部16が「プロジェクタ装置へ投影画像の投影を指示した後の投影タイミングにおいて画像読取装置へ撮影指示を行う」といえる。 よって,構成g2は構成Aに相当する。 (エ)構成Cについて 構成gの「制御部16が行う撮像位置設定処理」は,撮像中心を移動するものであるから,撮像位置を補正するものといえる。 よって,構成gの撮像位置設定処理を行う「制御部16」は,撮像位置を補正するものとして構成Cの「補正部」に相当する。 (オ)構成B1?構成B4について 上記(ウ)及び(エ)のとおり,引用発明は,構成A及び構成Cに対応する補正部を備えている。 しかしながら,「補正部」について,本件補正発明は,上記(イ)の相違点1を除いて, 「(B1)前記プロジェクタ装置によって投影面に投影された前記投影画像の撮影範囲を撮影する前記画像読取装置が前記投影画像の撮影範囲を撮影した撮影画像に基づいて, (B2)前記撮影画像の範囲の所望位置と前記投影画像の範囲の所望位置との対応関係を補正する」,及び, 「(B3)前記投影画像と前記撮影画像との比較に基づいて, (B4)前記撮影画像の範囲の所望位置と前記投影画像の範囲の所望位置との対応関係を補正」するのに対し,引用発明は,そのような構成を備えていない点で相違している(相違点2)。 (カ)構成D1及び構成D2について 構成gの「撮影画像」に基づく撮像位置設定処理は,構成g4において,撮像画像にパターン画像の少なくとも一部が撮像されていないと判定した場合には,構成g4の「撮像中心を所定方向に所定移動量だけ移動させ」,構成g5?構成10の処理を行って,パターン画像の全体が撮像可能領域CAに含まれるようにするものであるから, 「前記撮影画像において前記投影画像の一部が含まれない場合には,前記撮影画像に前記投影画像が含まれるまで」撮像中心を移動させるといえる。 よって,構成gは,構成D1と,「前記撮影画像において前記投影画像の一部が含まれない場合には,前記撮影画像に前記投影画像が含まれるまで」,前記撮影画像に前記投影画像が含まれるようにするための処理を実行する点で一致する。 構成g4及び構成g7の「移動機構101」に「撮像中心を移動させる」ことは,構成D2の「前記画像読取装置」に「光軸方向」を変更させる指示を出力することに相当する。 また,構成D2の発明特定事項の「前記プロジェクタ装置または前記画像読取装置の何れか一方に」は,「プロジェクタ装置」の選択肢と「画像読取装置」の選択肢を含む選択的記載であるから,構成D2の「画像読取装置」の選択肢を発明特定事項として,引用発明と対比する。 そうすると,構成gの「移動機構101」に「撮像中心を移動させる」ことと構成D2とは,「前記画像読取装置に光軸方向の変更指示を出力する」点で一致する。 (キ)以上の検討から,引用発明と本件補正発明とは以下の点で一致し,また,相違する。 [一致点] (A)プロジェクタ装置へ投影画像の投影を指示した後の投影タイミングにおいて画像読取装置へ撮影指示を行う (C)補正部を備え, (C)前記補正部は, (D1)前記撮影画像において前記投影画像の一部が含まれない場合には,前記撮影画像に前記投影画像が含まれるまで (D2)前記画像読取装置に光軸方向の変更指示を出力する (E)画像処理装置。 [相違点1] 「撮影画像」について, 本件補正発明は,「投影画像の範囲内の撮影範囲を撮影した撮影画像」であるのに対して, 引用発明は,「投影画像の範囲内の撮影範囲を撮影した撮影画像」でない点 [相違点2] 「補正部」について,本件補正発明は, 「(B1)前記プロジェクタ装置によって投影面に投影された前記投影画像の撮影範囲を撮影する前記画像読取装置が前記投影画像の撮影範囲を撮影した撮影画像に基づいて, (B2)前記撮影画像の範囲の所望位置と前記投影画像の範囲の所望位置との対応関係を補正する」,及び, 「(B3)前記投影画像と前記撮影画像との比較に基づいて, (B4)前記撮影画像の範囲の所望位置と前記投影画像の範囲の所望位置との対応関係を補正」するのに対し,引用発明は,そのような構成を備えていない点 (5)判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点1について 構成iの「処理領域画像」は「適した撮像画像」であるから,構成c及び構成g12の画質調整等である「適した画像に基づく処理」に用いられる画像である。 また,構成jのとおり,処理領域画像を生成する撮像画像処理部166は,撮像部10が備え,処理領域画像取得部168は,撮像部10が生成した処理領域画像を取得する構成である。 ここで,構成kに「処理領域画像P14は,制御部16dに入力可能な解像度以内で,撮像画像に基づく処理(画質調整等)に最低限必要となる領域を含む所定サイズの画像としてもよく」と示唆があるから,引用発明において,撮像部10が生成する「処理領域画像」を「投写画像全体のうちの処理に最低限必要となる領域」,すなわち,「投写画像の範囲内の撮影範囲」とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 したがって,引用発明の「撮影画像」について,「投影画像の範囲内の撮影範囲を撮影した撮影画像」とするように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 上記(3)イの引用文献2記載技術の「カメラ」,「プロジェクタ(表示装置)」,「情報処理装置」,「プロジェクタの出力画像」及び「カメラが投影面に投影された状況を撮影する」は,それぞれ,本件補正発明の「画像読取装置」,「プロジェクタ装置」,「画像処理装置」,「投影画像」及び「投影面に投影された投影画像を撮影する」ことに相当する。 また,引用文献2記載技術における「「認識座標系」の「座標値」」,「「表示座標系」の「座標値」」及び「カメラ座標平面とプロジェクタ座標平面との対応付け」は,それぞれ,本件補正発明の「撮影画像の範囲の所望位置」,「投影画像の範囲の所望位置」及び「撮影画像の範囲の所望位置と投影画像の範囲の所望位置との対応関係」に相当する。 また,引用文献2記載技術における「マーカを画像処理手法によって読み取り,・・・読み取った際の座標値からカメラ座標平面とプロジェクタ座標平面との対応付けを求め」,「カメラの認識座標系とプロジェクタの表示座標系の間の位置合わせ(キャリブレーション)を行う」ことは,本件補正発明の「投影画像と撮影画像との比較に基づいて」,「撮影画像の範囲の所望位置と投影画像の範囲の所望位置との対応関係を補正する」ことに相当する。 そして,引用発明と引用文献2記載技術とは,ともに投写画像を撮像して投写画像と撮像画像の位置関係を補正する技術である点で一致しているから,引用発明の「適した画像に基づく処理」として,引用文献2記載技術を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得たことである。 したがって,引用発明に,引用文献2記載技術を組み合わせて,「補正部」を,「(B1)前記プロジェクタ装置によって投影面に投影された前記投影画像の撮影範囲を撮影する前記画像読取装置が前記投影画像の撮影範囲を撮影した撮影画像に基づいて, (B2)前記撮影画像の範囲の所望位置と前記投影画像の範囲の所望位置との対応関係を補正する」,及び, 「(B3)前記投影画像と前記撮影画像との比較に基づいて, (B4)前記撮影画像の範囲の所望位置と前記投影画像の範囲の所望位置との対応関係を補正」するように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。 ウ そして,上記相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献2記載技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 エ したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用文献2記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和2年1月30日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成31年2月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1の「(補正前発明)」に記載のとおりのものである。 2 令和1年12月10日付けの当審の拒絶理由 令和1年12月10日付けで通知した本願発明に対する当審の拒絶理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明と引用文献2に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 引用文献1:特開2016-187145号公報 引用文献2:特開2014-203174号公報 3 引用文献 当審の拒絶の理由で引用された引用文献1,2及びその記載事項は,前記第2[理由]2の(2),(3)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,「前記投影画像を撮影する前記画像読取装置」を「前記投影画像の範囲内の撮影範囲を撮影する前記画像読取装置」とする限定事項,「前記投影画像を撮影した撮影画像」を「前記投影画像の範囲内の撮影範囲を撮影した撮影画像」とする限定事項,及び「前記撮影画像中の所望位置」を「前記投影画像の範囲内における前記撮影画像の範囲の所望位置」とする限定事項を削除したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2[理由]2の(3),(4)に記載したとおり,引用発明及び引用文献2記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明及び引用文献2記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-05-14 |
結審通知日 | 2020-05-19 |
審決日 | 2020-06-02 |
出願番号 | 特願2017-67232(P2017-67232) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04N)
P 1 8・ 575- WZ (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大西 宏 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 樫本 剛 |
発明の名称 | 画像処理装置、プロジェクタ装置、画像読取装置、画像処理方法、プログラム |
代理人 | 伊藤 英輔 |
代理人 | 松沼 泰史 |
代理人 | 森 隆一郎 |
代理人 | 棚井 澄雄 |