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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F03D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 F03D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F03D
管理番号 1365289
審判番号 不服2019-6238  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-17 
確定日 2020-08-11 
事件の表示 特願2014-246281「風力、太陽光発電装置の既存電柱への設置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月26日出願公開、特開2016- 94931〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年11月17日の出願であって、平成30年8月10日付けの拒絶理由の通知に対し、同年9月28日付けで意見書が提出されたが、平成31年2月8日付けで拒絶査定がなされ(発送日 平成31年2月19日)、これに対して同年4月18日に審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、当該請求項に記載されたとおりの以下のものである。
「風力、太陽光発電装置の既存電柱への設置」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由の概要は、以下の通りである。
1.本願は、請求項1の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

請求項1に係る発明は、発明のカテゴリーが不明であり、また風力及び太陽光発電装置の既存電柱への設置、風力又は太陽光発電装置の既存電柱への設置のいずれであるのか、その構成も不明瞭であるから、明確ではない。
2.請求項1に係る発明は、本願出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、また本願出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
3.請求項1に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明に基いて、下記の引用文献2に記載された発明に基いて、また下記の引用文献1に記載された発明及び本願出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献3に記載された技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2005-36779号公報
引用文献2.特開2013-80845号公報
引用文献3.米国特許第7008171号明細書

第4 引用文献の記載及び引用発明

1.引用文献1
引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。)。
ア.「[課題を解決するための手段]
【0005】
前記課題を解決するため本発明は、少なくとも電柱1に風力発電装置2をソケット42、ボルト4で取り付ける。又、電柱1に太陽光発電装置5を取り付ける。
また、ブリッジ6を取り付ける。」
イ.「【0006】
以下に本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係わる電柱の正面図。図2は電柱の側面図。・・・(中略)・・・
【0007】
・・・(中略)・・・まず、図1、図2に基づき本発明の実施形態について説明する。この電柱1は上部に風力発電装置2を取り付ける。また電柱上部ないし側面に太陽発電装置5を取り付けてある。」
ウ.「【0022】
・・・(中略)・・・勿論、現在ある電柱にも施すこともできる。後付も十分できる。」
これらの記載からみて、引用文献1には、本願の請求項1の記載に沿って整理すれば、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。
「風力発電装置2及び太陽光発電装置5の現在ある電柱への取付」

2.引用文献2
引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。)。
ア.「【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る太陽光発電装置の第1実施形態を示す部分断面図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る太陽光発電装置100は、グランドGに固定された支柱1と、該支柱1に取り付けられた下側の太陽電池パネル体(以下便宜的に「下側太陽電池パネル体」ともいう。)10aと、該支柱1に取り付けられた上側の太陽電池パネル体(以下便宜的に「上側太陽電池パネル体」ともいう。)10bと、該支柱1の上端に取り付けられた風力発電機2と、を備える。」
イ.「【0049】
第1?第3実施形態に係る太陽光発電装置においては、円柱状の支柱1を用いているが、既存のポールや電柱、立木、鉄塔等を用いることも可能である。」
これらの記載からみて、引用文献2には、本願の請求項1の記載に沿って整理すれば、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。
「風力発電機2と太陽電池パネル体10a,10bの既存の電柱への取付」

第5 当審の判断

1.理由1について
(1)請求項1の記載は、前記「第3」にあるとおり、その末尾が「設置」となっている。「設置」とは「もうけおくこと。ある目的のために機関・施設などをつくること。」(広辞苑 第七版)を意味するにとどまるから、請求項1の記載のみによっては、請求項1に係る発明が方法の発明であるのか、物の発明であるのか、いずれであるのかを特定することができない。
更に、発明の詳細な説明には、技術分野として、段落0001に「この発明は、風力、太陽光発電装置の既存電柱への設置に関する。」と記載され、課題を解決するための手段として、段落0005に「以上の課題を解決するために、本発明は風力、太陽光発電装置を膨大に存在する既存の電柱を利用して設置することを特徴とする。」と記載され、発明を実施するための形態として、段落0008に「この発明の一実施形態を、図1に示す。風力、太陽光発電装置を既存の電柱に設置する。」と、段落0013に「図1の実施形態では、送電用電柱への風力、太陽光発電装置の設置であるが,送信用電柱への設置でもよい。」と記載されており、発明の詳細な説明を参照しても、請求項1に係る発明が方法の発明であるのか、物の発明であるのか、いずれであるのかを特定することができない。
そして、特許法は、第68条で「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」とし、第2条第3項では「実施」を物の発明、方法の発明及び物を生産する方法の発明に区分して定義している。これらを考慮すれば、原査定においても指摘しているとおり、発明の属するカテゴリーが不明確である本請求項に係る発明に特許を付与することは権利の及ぶ範囲が不明確になり適切でない。
なお、請求人は、この点に関し、「これは、鉛筆の片方の先に消しゴムをつけた特許と同様、既存電柱の先に風力 太陽光発電装置をつけた特許である。したがって、消しゴム付き鉛筆特許のように消しゴムを、付ける方法を言っているのでもなく又、消しゴムが取りつけられた鉛筆の何らかの物の発明を言っているのでもなく、消しゴムを、鉛筆につけたように、風力、太陽光発電装置を既存電柱につけたものである。」と主張しており(「審判請求書【請求の理由】3.(3)」参照)、請求人自ら、請求項1に係る発明は方法の発明又は物の発明のいずれでもない旨を主張している。
(2)読点「、」は「一つの文の内部で、語句の断続を明らかにするために、切れ目に施す点。」(広辞苑 第七版)であり、「及び」と「又は」のいずれを意味するとも決することができないから、請求項1の記載のみでは、同請求項に記載された「風力、太陽光発電装置」が「風力及び太陽光発電装置」又は「風力又は太陽光発電装置」のいずれを意味するのか特定できない。
そして、明細書及び図面には、発明の実施するための形態として、風力、太陽光一体型発電装置の既存電柱への設置が記載されている。しかしながら、これは請求項1に係る発明の一実施形態であるから、これをもって請求項1に記載された「風力、太陽光発電装置」が「風力及び太陽光発電装置」を意味すると決することはできない。更に、明細書には「一体型にせず風力発電装置と太陽光発電装置を別々に設けてもよい。」(段落0012)との記載があるから、明細書及び図面の記載全体を考慮すれば、請求項1に係る発明の範囲から、風力発電装置と太陽光発電装置のいずれか一方のみの既存電柱への設置が排除されているとはいえない。
そうすると、明細書及び図面の記載を考慮しても、請求項1の「風力、太陽光発電装置」との記載が「風力及び太陽光発電装置」又は「風力又は太陽光発電装置」のいずれを意味するとも特定することができない。
これに対し、請求人は、「これは本願〔0012〕で、図1の実施形態では、・・・風力、太陽光一体型発電装置であるが・・・と、風力及び太陽光発電装置であることは明確に記載している。」(審判請求書【請求の理由】3.(3))と主張しているが、請求人が指摘する前記記載を含め、明細書及び図面の記載を考慮しても、請求項1に記載された「風力、太陽光発電装置」が「風力及び太陽光発電装置」又は「風力又は太陽光発電装置」のいずれを意味するとも特定することができないことは、先に検討したとおりである。
したがって、請求項1の記載では、同請求項に係る発明の範囲を特定することができない(特に、請求項1に係る発明が風力発電装置と太陽光発電装置のいずれか一方のみの既存電柱への設置を包含するのか否かを特定することができない。)。
(3)以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は明確でない。

2.理由2及び理由3について
(1)引用発明1との対比・判断
本願発明と引用発明1を対比すると、引用発明1の「風力発電装置2」、「太陽光発電装置5」及び「現在ある電柱」は、それぞれ、本願発明の「風力」「発電装置」、「太陽光発電装置」及び「既存電柱」に相当する。
本願発明の「風力、太陽光発電装置」は、前記「1.(2)」で検討したように、「風力及び太陽光発電装置」又は「風力又は太陽光発電装置」のいずれであるのか特定することはできないが、「風力及び太陽光発電装置」が本願発明の「風力、太陽光発電装置」に包含されることは、明らかである。そうすると、引用発明1の「風力発電装置2及び太陽光発電装置5」は、本願発明の「風力、太陽光発電装置」に相当する。
引用発明1において、風力発電装置2及び太陽光発電装置5を現在ある電柱に取り付けることは、風力発電装置2及び太陽光発電装置5を現在ある電柱に設置することにほかならないから、引用発明1の「現在ある電柱への取付」は、本願発明の「既存電柱への設置」に相当する。
そうすると、引用発明1の「風力発電装置2及び太陽光発電装置5の現在ある電柱への取付」は、本願発明の「風力、太陽光発電装置の既存電柱への設置」に相当する。
以上のとおり、引用発明1は、本願発明を特定する事項の全てを備えているから、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。
(2)引用発明2との対比・判断
本願発明と引用発明2を対比すると、引用発明2の「風力発電機2」、「太陽電池パネル体10a,10b」及び「既存の電柱」は、それぞれ、本願発明の「風力」「発電装置」、「太陽光発電装置」及び「既存電柱」に相当する。
本願発明の「風力、太陽光発電装置」は、前記「1.(2)」で検討したように、「風力及び太陽光発電装置」又は「風力又は太陽光発電装置」のいずれであるのか特定することはできないが、「風力及び太陽光発電装置」が本願発明の「風力、太陽光発電装置」に包含されることは、明らかである。そうすると、引用発明2の「風力発電機2と太陽電池パネル体10a,10b」は、本願発明の「風力、太陽光発電装置」に相当する。
引用発明2において、風力発電機2と太陽電池パネル体10a,10bとを既存の電柱に取り付けることは、風力発電機2と太陽電池パネル体10a,10bとを既存の電柱に設置することにほかならないから、引用発明2の「既存の電柱への取付」は、本願発明の「既存電柱への設置」に相当する。
そうすると、引用発明2の「風力発電機2と太陽電池パネル体10a,10bの既存の電柱への取付」は、本願発明の「風力、太陽光発電装置の既存電柱への設置」に相当する。
以上のとおり、引用発明2は、本願発明を特定する事項の全てを備えているから、本願発明は、引用文献2に記載された発明である。
(3)請求人の主張
請求人は、「本発明は特許請求の範囲に記載された「既存電柱への設置」の構成のうち膨大な数の既存電柱に設置するようにした事を特徴とするものであって、このような構成を採用したことにより、従来、家庭用電力等小規模な、風力太陽光再生可能エネルギーしか、発電利用できていなかったものを、原発33基分の膨大な風力太陽光再生可能エネルギーを、発電利用できるようにするという顕著な作用効果を奏するものである。経済効果も高める。」(審判請求書【請求の理由】3.(1))と主張している。
しかしながら、原査定においても指摘されているように、本願発明は、請求項1に記載された事項により特定されるものであって、請求項1の記載は、前記「第2」に記載したとおりの「風力、太陽光発電装置の既存電柱への設置」であって、いくつの既存電柱に風力、太陽光発電装置を設置するのかについて何ら記載がない。
したがって、本願発明を、風力、太陽光発電装置の複数の既存電柱への設置と限定的に解することはできず、ましてや風力、太陽光発電装置の膨大な数の既存電柱への設置と限定的に解することはできない。
加えて、本願の発明の詳細な説明には、「膨大にある既存電柱を利用することから、発電できる電気の量も膨大な量となる。」(段落0009)と、確かに、風力、太陽光発電装置を膨大な数の既存電柱に設置することを示唆する記載がある。しかしながら、本願の発明の詳細な説明の「本発明によれば、膨大にある既存の電柱に風力、太陽光発電装置を設置する事で全く最初から風力、太陽光発電装置の設置場所を探すのではなく既存の電柱の中から発電に適した場所を選定すればよく、新たに風力、発電装置用に地面から垂直に伸びる支柱を設置工事する必要がなく、経済的に設置することができる。」(段落0006。下線は当審で付加した。)との記載を参照すれば、本願の発明の詳細な説明には、風力、太陽光発電装置を膨大な数の既存電柱のうちの特定の既存電柱に設置することも記載又は示唆されているといえる。
以上のとおりであるから、本願発明を、風力、太陽光発電装置の膨大な数の既存電柱への設置と限定的に解することはできず、請求人の前記主張は、採用することができない。

仮に、本願発明が風力、太陽光発電装置を膨大な数の既存電柱へ設置するものと限定的に解することができたとしても、既存電柱が膨大な数存在することは常識であるし、日本の各地に数多くの風力発電装置や太陽光発電装置が設置されていることからすれば、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明も風力、太陽光発電装置を膨大な数の既存電柱へ設置するものを含意しているといえるし、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、また引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえる。

第6 むすび

以上のとおり、本願は、請求項1の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-05-22 
結審通知日 2020-06-02 
審決日 2020-06-17 
出願番号 特願2014-246281(P2014-246281)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (F03D)
P 1 8・ 537- Z (F03D)
P 1 8・ 121- Z (F03D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田谷 宗隆  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 久保 竜一
松本 泰典
発明の名称 風力、太陽光発電装置の既存電柱への設置  

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