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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B03C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B03C
管理番号 1365541
審判番号 不服2018-12494  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-19 
確定日 2020-09-08 
事件の表示 特願2014-202824「回転ドラム型磁気分離装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月9日出願公開、特開2016-68057、請求項の数(11)〕についてした令和元年7月22日付けの審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(令和元年(行ケ)第10116号、令和2年5月20日判決言渡)があったので更に審理を行い、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
1 本願は、平成26年10月1日の出願であって、平成29年12月28日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成30年3月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月12日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされたので、同年9月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

2 上記1の審判の請求について審理の結果、令和元年7月22日にした先の審決では、本件補正を却下した上で、「本件審判の請求は、成り立たない。」とされたので、審判請求人は、これを不服とし、特許法第178条の規定に基づき、当該審決に対する訴えを東京高等裁判所に提起したところ、東京高等裁判所の特別の支部である知的財産高等裁判所において、令和元年(行ケ)第10116号事件として審理され、令和2年5月20日、「特許庁が不服2018-12494号事件について令和元年7月22日にした審決を取り消す。」との判決がされ、当該判決は確定した。

3 上記2のとおり、本件拒絶査定不服審判事件に係る先の審決は、特許法第181条第1項の規定により、裁判所において取り消され、その審決の取消しの判決は確定したので、同条第2項の規定により、審判官の合議体により、更に審理を行うこととなった。

第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、平成29年12月28日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2であり、要するに、新規性及び進歩性欠如に関する、次のとおりのものである。

1 本願請求項1、5、11に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2 本願請求項1、5、11に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び技術的事項に基いて、また、本願請求項2?4、6、7、9、10に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び技術的事項、並びに引用文献2?8に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献一覧
1.実願昭50-104558号(実開昭52-19080号)のマイクロフィルム
2.特開2007-978号公報
3.特開2011-25391号公報
4.特開2009-172589号公報
5.特開2014-151314号公報
6.登録実用新案第3050340号公報
7.特開昭52-50507号公報
8.特開2014-126140号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
複数の磁石を配置した第1の回転ドラムを備え、使用済みクーラント液中の磁性体を分離する回転ドラム型磁気分離装置において、
複数の磁石を配置した第2の回転ドラムを、前記第1の回転ドラムよりも使用済みクーラント液が流入してくる手前側に備え、
前記使用済みクーラント液は、第2の回転ドラムから第1の回転ドラムに向かって流れ、
前記第2の回転ドラムが使用済みクーラント液中の磁性体を磁化することで、該磁性体を互いに吸着させて大きくするとともに、
前記第2の回転ドラムに付着した磁性体を掻き取るスクレパーと、
前記第1の回転ドラム下部の流路を形成する底部材とを備え、
前記スクレパーにより掻き取られた磁性体が大きくなった状態のまま、前記使用済みクーラント液の流れに沿って前記第1の回転ドラムへ誘導されることを特徴とする回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項2】
前記第2の回転ドラムは、外筒と内筒とで構成されており、
前記外筒は固定されており、複数の磁石が配置された前記内筒は、前記外筒の内側を回転することができるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項3】
前記第2の回転ドラムは、外筒と内筒とで構成されており、
複数の磁石が配置された前記内筒は固定されており、前記外筒は、前記内筒の外側を回転することができるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項4】
前記第2の回転ドラムは、外筒と内筒とで構成されており、
複数の磁石が配置された前記内筒と前記外筒とは、互いに回転することができるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項5】
前記スクレパーは、前記第2の回転ドラム側から前記第1の回転ドラム側に向かって下降するよう傾斜していることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項6】
前記第2の回転ドラムは、磁力が周囲と比較して強い強磁部分と、磁力が周囲と比較して弱い弱磁部分とを有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項7】
前記第2の回転ドラムの前記内筒は、極性の異なる2つの磁石を一組とし、複数組の磁石が装着されていることを特徴とする請求項6に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項8】
前記第2の回転ドラムの前記内筒に装着された一組の磁石は、一方の磁石の厚みの方が他方の磁石の厚みよりも厚くなるよう構成されていることを特徴とする請求項7に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項9】
前記第2の回転ドラムの前記内筒に偶数組の磁石が装着された場合、互いに隣接する一組の磁石は、極性が逆になるよう構成されていることを特徴とする請求項7に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項10】
前記第1の回転ドラムは、使用済みクーラント液に一部が浸漬し、他部が浸漬しないように構成されており、
前記第2の回転ドラムは、使用済みクーラント液に全体が浸漬するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至第9のいずれか一項に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項11】
使用済みクーラント液は、前記第2の回転ドラムの上部の近傍を通過し、その後前記第1の回転ドラムの下部と前記底部材との間を通過するように流れが形成されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の回転ドラム型磁気分離装置。」

第4 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。
1 「本考案は、マグネットドラムをタンク内に複数個設置しタンク底部に沈澱した鉄粉ならびに混濁液内に浮遊する微細な鉄粉までもマグネットドラムに吸着させ常時タンク外へ排出させることにより上述の欠点を解消しようとするものである。」(2頁15行?20行)

2 「第3図において15は工作機械(図示省略)に備えられたオイル排出口、17はオイルタンク、19はダーティオイル21とクリーンオイル23とを仕切る仕切板で、排出口15より排出される混濁液に含まれる鉄粉等が後述のマグネットドラム25の附近に落下しやすいように適宜傾斜して設けられている。」(3頁2行?8行)

3 「上記構成においてまずモーター36を駆動させると無端帯37を介してマグネットドラム25、27、29、31、32が同時に矢印方向に回転し始める。この回転速度は毎分3?5m程度が望ましい。一方クリーンオイル23はポンプPにより工作機械(図示省略)に送られ、所定の加工工程を経て排出口15より鉄粉等を含有した混濁液となってタンク17内に流下される。鉄粉等の不純物は液体より比重が大きいため排出口15からオイルと一諸に排出される不純物は仕切板19に沿って沈降し、最下端のマグネットドラム25の近辺に沈澱していく。沈降、沈澱した不純物はマグネットドラム25の外周面に吸着され、カキ取り板39にて分離されカキ取り板39の表面に沿って徐々に送り出されてゆく。このカキ取られた不純物がマグネットドラム25からかなりの間隔となった時点で次のマグネットドラム27の外周面に吸着され以下同様にカキ取り板39、マグネットドラム29、カキ取り板39、マグネットドラム31、カキ取り板39、マグネットドラム32、カキ取り板39を経て受け箱41に排出されるのである。」(4頁3行?5頁4行)

4 「以上のごとく本考案はマグネットドラムの組合せによりタンク底部に沈澱した不純物ならびにオイル内に浮遊する不純物までも容易にタンク内から分離排出することができ、従来、問題とされてきたポンプの故障、オイル劣化等の危惧をなくする。また不純物の沈澱する位置にマグネットドラムを設けたので不純物の分離排出作業が能率的でタンク内の掃除をする必要がない等著しい効果を奏する。」(5頁5行?13行)

5 第3図




第5 新規性及び進歩性についての検討
1 本願発明1について
ここで、本願発明1の新規性及び進歩性について検討するが、以下に示す引用発明の認定相違点の認定及び相違点についての判断は、上記確定判決における裁判所の事実認定及び法律判断に従うものである(行政事件訴訟法第33条第1項)。

(1)引用文献1に記載された発明(引用発明)の認定
上記「第4」で認定した引用文献1の記載からすると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていることが認められる。
「工作機械の切削油、冷却液等に混入する鉄粉等の磁性を有する切屑の分離排出装置であって、鉄粉等を含有するダーティオイルである混濁液を工作機械からオイルタンク中に排出するオイル排出口、ダーティオイル21とクリーンオイル23とを仕切る仕切板19、装置の側壁に回動自在に支承され、複数のパーマネントマグネットを配置したマグネットドラム25、27、29、31、32、マグネットドラム25、27、29、31、32の外周面に接するように固設されたカキ取り板39、及びクリーンオイル23を工作機械に送るポンプPを備え、オイル排出口から流下した混濁液中の鉄粉は仕切板19に沿って沈降し、マグネットドラム25の付近に落下して沈殿し、沈殿した鉄粉はマグネットドラム25の外周面に吸着され、鉄粉はカキ取り板にて分離されカキ取り板の表面に沿って徐々に送り出され、マグネットドラム25からかなりの間隔となった時点で次のマグネットドラム27の外周面に吸着される、装置。」

(2)本願発明1と引用発明との一致点及び相違点の認定
本願発明1と引用発明とを対比すると、一致点及び相違点は、以下のとおりである。
ア 一致点
「複数の磁石を配置した第1の回転ドラムを備え、使用済みクーラント液中の磁性体を分離する回転ドラム型磁気分離装置において、複数の磁石を配置した第2の回転ドラムを備え、前記第2の回転ドラムに付着した磁性体を掻き取るスクレパーと、前記第1の回転ドラム下部に底部材とを備え、前記スクレパーにより掻き取られた磁性体が前記第1の回転ドラムへ誘導される回転ドラム型磁気分離装置。」である点。

イ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1は「第2の回転ドラムが使用済みクーラント液中の磁性体を磁化することで、該磁性体を互いに吸着させて大きく」なるものであるが、引用発明は磁性体が互いに吸着して大きくなっているか否かが不明な点。

(イ)相違点2
本願発明1は、「複数の磁石を配置した第2の回転ドラムを、前記第1の回転ドラムよりも使用済みクーラント液が流入してくる手前側に備え、使用済みクーラント液は、第2の回転ドラムから第1の回転ドラムに向かって流れ」ることにより、スクレパーにより掻き取られた磁性体が大きくなった状態のまま「使用済みクーラント液の流れに沿って前記第1の回転ドラムへ誘導される」ものであるが、引用発明は、マグネットドラム25からマグネットドラム27に向かって混濁液が流れているか否かが明らかでなく、また、カキ取り板39によって掻き取られた鉄粉が大きくなった状態のまま、混濁液の流れに沿ってマグネットドラム25からマグネットドラム27へ誘導されるものであるかが不明である点。

(ウ)相違点3
本願発明1では、第1の回転ドラムと底部材との間にクーラント液の流路を形成するのに対し、引用発明は、上記のような流路を形成しているか否かが不明な点。

(3)相違点2、3についての判断
ア 本願発明1におけるクーラント液の流れについて
本願発明1に係る特許請求の範囲の記載は、「・・・前記使用済みクーラント液は、第2の回転ドラムから第1の回転ドラムに向かって流れ、・・・前記第2の回転ドラムに付着した磁性体を掻き取るスクレパーと、前記第1の回転ドラム下部の流路を形成する底部材とを備え、前記スクレパーにより掻き取られた磁性体が大きくなった状態のまま、前記使用済みクーラント液の流れに沿って前記第1の回転ドラムへ誘導されることを特徴とする回転ドラム型磁気分離装置。」(当審注:「・・・」は省略を表す。以下同じ。)というものであり、同記載からすると、第2の回転ドラムから第1の回転ドラムに向かうクーラント液は、第1の回転ドラム下部に第1の回転ドラムと底部材との間に形成された流路を流れるものであって、スクレパーによって掻き取られた磁性体を第1の回転ドラムに誘導するものであると解される。そして、このことは、本件明細書に、「スクレパー27は、第1の回転ドラム13の下部の流路を形成する底部材30に連結されており、掻き取られた不要物(磁性体)は第1の回転ドラム13へと誘導される。」(段落【0041】)、「スクレパー27は、第1の回転ドラム13の下部の流路を形成する底部材に連結されていれば足りるので、第2の回転ドラム21側から第1の回転ドラム13に向かって下降するよう傾斜していても良い。」(段落【0053】)、「図7に示すように、本実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置は、第2の回転ドラム21の外筒29に当接するスクレパー27が、第2の回転ドラム21側から第1の回転ドラム13側へ傾斜するよう設けられている。」(段落【0054】)、「これにより、スクレパー27で書き取られた第2の回転ドラム21に付着した不要物が、傾斜に沿って第1の回転ドラム13側へと流れに乗って移動しやすく、第1の回転ドラム13により確実に回収することが可能となる。」(段落【0055】)と記載されていることからも、裏付けられているということができる。

イ 引用文献1におけるタンク17内の混濁液の流れについて
(ア)前記「第4」の5のとおり、引用文献1の第3図には、鉄粉等を含有した混濁液をタンク17内に投入するためのオイル排出口15、仕切板19で仕切られた左側の区域にあるクリーンオイルをタンク17内から外へ排出するためのポンプP及び仕切板19の上端と液面との間には間隙があることが記載されていることからすると、排出口15からタンク17内に混濁液が投入され、仕切板19で仕切られた右側の区域において、鉄粉等を含有したダーティオイルから鉄粉等が除かれ、除かれたクリーンオイルは、仕切板19の上端と液面との間の間隙を越流して、左側の区域に移り、同区域にあるクリーンオイルはポンプによって吸い上げられてタンク17の外の工作機械に送られることが認められ、このような混濁液の流れに伴い、タンク17内に混濁液の流れが生じることが認められる。
しかし、排出口15からタンク17内に投入された混濁液の流れの具体的な方向や大きさについては、投入される混濁液や排出されるクリーンオイルの量や勢い、タンク17内の各部材の具体的な位置関係等によって変わるものと考えられるから、引用文献1の記載のみから、タンク17内の特定の範囲における特定の流れの方向や大きさを読み取ることは困難である。

(イ)前記「第4」の2、3のとおり、引用文献1には、「第3図において15は工作機械(図示省略)に備えられたオイル排出口、17はオイルタンク、19はダーティオイル21とクリーンオイル23とを仕切る仕切板で、排出口15より排出される混濁液に含まれる鉄粉等が後述のマグネットドラム25の附近に落下しやすいように適宜傾斜して設けられている。」、「鉄粉等の不純物は液体より比重が大きいため排出口15からオイルと一諸に排出される不純物は仕切板19に沿って沈降し、最下端のマグネットドラム25の近辺に沈澱していく。沈降、沈澱した不純物はマグネットドラム25の外周面に吸着され、カキ取り板39にて分離されカキ取り板39の表面に沿って徐々に送り出されてゆく。」との記載があり、同記載からすると、排出口15からタンク17内に投入された混濁液の流れが存し、その流れに含まれる鉄粉等の不純物は、仕切板19に沿って真下に沈降するものと認められるから、排出口15からタンク17内に投入された混濁液の流れの勢いは比較的緩やかなものであると考えられ、したがって、排出口15からタンク17内に投入された混濁液の流れがマグネットドラム27とカキ取り板39の間隙にまで流れ込み、カキ取り板39に沿って不純物をマグネットドラム27に誘導するかどうかは明らかではないというべきである。
また、前記「第4」の3で認定した引用文献1の記載からすると、排出口15からタンク17内に投入された混濁液に含まれる鉄粉等の不純物は、マグネットドラム25に吸着され、その後、カキ取り板39によって分離され、マグネットドラム27に吸着されることが認められるが、前記「第4」の3で認定した引用文献1の「沈降、沈澱した不純物はマグネットドラム25の外周面に吸着され、カキ取り板39にて分離されカキ取り板39の表面に沿って徐々に送り出されてゆく。」との記載からすると、上記の不純物がマグネットドラム25からマグネットドラム27に移動するのは、カキ取り板39の表面に沿って送り出されることによるものであり、混濁液の流れに誘導されるものとは必ずしも認められない。
さらに、引用文献1の各マグネットドラムの回転により、同マグネットドラムの周囲の混濁液に流れが生じることも考えられるが、仮に、マグネットドラム25の回転方向に混濁液の流れが生じるとしても、引用文献1の第3図によると、マグネットドラム27の回転方向は、マグネットドラム25とマグネットドラム27との間の部分においては、マグネットドラム25とは逆方向の上側方向であると認められること、マグネットドラム25の右側部分においては、カキ取り板39の存在により、マグネットドラム25の回転が混濁液の流れに与える影響は小さいものと認められることからすると、マグネットドラム25とマグネットドラム27の間にあるカキ取り板39の右側(上側)の部分においては、マグネットドラム27の回転方向である下から上に向かった混濁液の流れが生じる可能性が高く、したがって、カキ取り板39に沿ってマグネットドラム27に不純物を誘導する混濁液の流れが生じているとは必ずしも認められない。

(ウ)その他、引用文献1には、マグネットドラム27とタンク17の底部の間に、マグネットドラム25からマグネットドラム27に向かう、スクレパーによって掻き取られた磁性体を誘導する混濁液の流れが生じていることを読み取ることができる記載があるとは認められないから、当業者が、引用文献1の記載から、引用発明について、上記の流れが生じていることを読み取ることはできず、また、上記の流れが生じる構成とすることを容易に想到するということもできないというべきである。
したがって、相違点2、3は、いずれも実質的な相違点であり、かつ、当業者が引用文献1に記載された発明及び技術的事項に基いて、これらを容易に想到することができたとは認められない。
よって、本願発明1が新規性又は進歩性を欠如するということはできない。

2 本願発明2?11について
本願発明2?11は、本願発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、引用文献2?8について精査するまでもなく、本願発明1と同様、新規性又は進歩性を欠如するということはできない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-08-18 
出願番号 特願2014-202824(P2014-202824)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (B03C)
P 1 8・ 121- WY (B03C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小久保 勝伊  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 村岡 一磨
後藤 政博
発明の名称 回転ドラム型磁気分離装置  
代理人 特許業務法人雄渾  

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