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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E04G |
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管理番号 | 1365896 |
審判番号 | 不服2020-1840 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-02-10 |
確定日 | 2020-09-29 |
事件の表示 | 特願2015- 42922「コンクリート成形用型枠およびその製造方法ならびに表面に段差を有するコンクリートの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 5日出願公開、特開2016-160715、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年3月4日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年10月25日付け:拒絶理由通知書 平成30年12月27日 :意見書、手続補正書の提出 平成31年 4月16日付け:拒絶理由通知書 令和 1年 6月24日 :意見書の提出 令和 1年11月18日付け:拒絶査定 令和 2年 2月10日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和1年11月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開平03-151441号公報 2.特開2003-147340号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2007-238931号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2010-185598号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって請求項1に「コンクリートまたはモルタルからなる表面層をあらかじめ多孔質層の表面に形成することなく1回の打込みでコンクリートを成形する際に用いられ」るという事項を追加する補正は、「コンクリート成形用型枠」の用途を限定したものといえるから、発明特定事項を限定するものである。 そして、補正後の請求項2-6についての補正は、補正後の請求項1を引用する発明特定事項に係る補正のみであるから、上記と同様に、発明特定事項を限定するものである。 また、審判請求時の補正によって請求項7において、補正後の請求項1を引用する発明特定事項に係る補正は、上記と同様に、発明特定事項を限定するものであり、「多孔質層の表面にコンクリートまたはモルタルからなる表面層をあらかじめ形成することなく、・・・直接・・・」という事項を追加する補正は、「コンクリートの製造方法」について限定するものである。 そうすると、補正後の請求項1-7についての補正は,その発明特定事項を限定するものであって、補正前と補正後でその発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一のものであるので、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-7に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、令和2年2月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 コンクリート成形用の型枠であって、 コンクリート表面に段差を付与可能な段差部を有する型面と、 硬化後のコンクリート表面の空気あばたの原因となる気泡を低減するためにこの型面の少なくとも段差部に設けられ、疎水性酸化物微粒子から形成される多孔質層とを備え、 多孔質層は、コンクリートが硬化した後の脱型時に型面から剥離してコンクリート表面に付着しないものであり、 コンクリートまたはモルタルからなる表面層をあらかじめ多孔質層の表面に形成することなく1回の打込みでコンクリートを成形する際に用いられることを特徴とするコンクリート成形用型枠。 【請求項2】 型面と多孔質層との間に、充填粒子含有層が介在することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート成形用型枠。 【請求項3】 型面と多孔質層との間に、下地層が介在することを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート成形用型枠。 【請求項4】 多孔質層は、水に対する接触角が150°以上の撥水層であることを特徴とする請求項1?3のいずれか一つに記載のコンクリート成形用型枠。 【請求項5】 段差部の高さが15mm以下であることを特徴とする請求項1?4のいずれか一つに記載のコンクリート成形用型枠。 【請求項6】 請求項1?5のいずれか一つに記載のコンクリート成形用型枠を製造する方法であって、 少なくとも段差部に、疎水性酸化物微粒子から形成される多孔質層を設けることを特徴とするコンクリート成形用型枠の製造方法。 【請求項7】 請求項1?5のいずれか一つに記載のコンクリート成形用型枠を用いて表面に段差を有するコンクリートを製造する方法であって、 多孔質層の表面にコンクリートまたはモルタルからなる表面層をあらかじめ形成することなく、コンクリート成形用型枠に直接フレッシュコンクリートを打ち込み、コンクリートが硬化した後で脱型することを特徴とする表面に段差を有するコンクリートの製造方法。」 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。以下同様。) (1)「〔産業上の利用分野〕 この発明は、コンクリート成形板、つまり工場において型枠を用い形成されるコンクリート製品の形成方法に関する。」(第1頁左下欄第18行目から右下欄第1行目) (2)「そこで、この発明では、離型剤による処理をその都度行う必要がなく、またピンホールやジャンカーが発生しないようなコンクリート成形板の形成方法を提供しようとするものである。」(第2頁左上欄第7行目から第10行目) (3)「〔課題を解決するための手段〕 具体的には、先ず、型枠内にモルタルスラリまたはコンクリートスラリを表面層として薄く形成し、次いで表面層が適度に硬化した後、表面層の裏にコンクリートスラリで本体層を密着・形成するようにしてなり、型枠として、水に対する接触角の大きな被膜層が表面に硬化・形成された型枠を用いるようにしたコンクリート成形板の形成方法を提供し、さらにこの方法を前提とし、モルタルスラリまたはコンクリートスラリを型枠に対し吹き付けて表面層を形成するようにしたコンクリート成形板の形成方法を提供する。」(第2頁左上欄第11行目から右上欄第2行目) (4)「〔作 用〕 この方法によると、型枠の表面に水に対する接触角の大きな被膜層を硬化・形成するようにしているので、その都度の離型剤による処理が不要となって作業性が向上し、また離型剤の影響による製品表面の品質低下などを招くこともない。 また、この方法によると、ピンホールやジャンカーの発生を防げその補修作業が無くて済むので、従来の方法に比べ生産性を大きく向上させることができる。 ここで、ピンホールやジャンカーの発生を防げるのは以下の理由によるものと考えられる。すなわち、先ず表面層を型枠に対し密接させて形成するが、この表面層が薄いために気泡の抜けがよくなって型枠との間に気泡がほとんど残留しなくなり、その結果ピンホールやジャンカーの発生を見ないものと考えられる。」(第2頁右上欄第3行目から第19行目) (5)「このコンクリート成形板1の形成方法は大まかに別けて表面層2の形成と本体層3の形成という二つの工程からなり、先ず型枠Mを構成する外型枠Moに表面層2を形成し、次いで表面層2が適度に、つまり鉄筋Fを載せても傷が付かない程度に硬化した後、表面層2の裏にコンクリートスラリを流し込んで本体層3を密着・形成してコンクリート成形板1を形成するものである。」(第2頁右下欄第13行目から第20行目) (6)「外型枠Moの表面、つまり表面層2と接触する側の面には、表面層2と外型枠Moとの離型性をよくするために、水に対する接触角の大きな被膜層、つまりセメント硬化物に対し離型性のよい被膜層を恒常的な層として硬化・形成している。被膜層の材料としては、例えばフッソ樹脂あるいはシリコーン樹脂を用いる。また、被膜層の形成の際には、予め外型枠Moの表面に例えばエポキシ系の樹脂でプライマー処理を施すようにするのが好ましい。 このように離型性のよい被膜層を恒常的な層として硬化・形成すれば、その都度の離型剤による処理が不要となって作業性が向上し、また離型剤の影響による製品表面の品質低下なども有効に防止することができる。」(第3頁左上欄第6行目から第20行目) (7)「コンクリート成形板1の表面、つまり表面層2に第2図に示すような立体模様(凹凸模様)を与える場合に、この立体模様をより鮮明なものにできるという大きなメリットをもたらす。」(第3頁左下欄第13行目から16行目) (8)上記(6)及び(7)の記載から、コンクリート成形板を形成する外型枠が表面層と接触する側の面を有し、当該面は、コンクリート成形板の表面層に立体模様(凹凸模様)を与える面であることが認められる。 (9)上記(1)ないし(8)からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「コンクリート成形板を形成する形成方法に用いられる型枠であって、 コンクリート成形板の表面層と接触する側の面を備え、当該面が、コンクリート成形板の表面層に立体模様(凹凸模様)を与える面である外型枠と、 前記表面層と接触する側の面に設けられ、水に対する接触角の大きな、セメント硬化物に対し離型性のよい被膜層とを備え、 当該被膜層により、前記表面層と外型枠との離型性をよくし、離型剤による処理が不要となって作業性が向上し、離型剤の影響によるコンクリート成形板表面の品質低下を防ぐことができ、 先ず型枠を構成する前記外型枠に表面層を形成し、次いで前記表面層が適度に硬化した後、表面層の裏にコンクリートスラリを流し込んで本体層を密着・形成してコンクリート成形板を形成する方法に用いられる、 コンクリート成形板を形成する形成方法に用いられる型枠。」 2.引用文献2について 原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献2(特開2003-147340号公報)には、次の事項が記載されている。 (1)「【0009】・・・その課題は、基材に対し、撥水性及び透明性に優れた低温乾燥型の超撥水塗料組成物および該塗膜を被覆した超撥水材を提供することにある。」 (2)「【0017】・・・ここで超撥水という言葉には、学術的な定義はないが、一般的には、固体表面の水との接触角が150°以上の状態をいう。・・・」 (3)「【0018】本発明の疎水処理が施されたシリカ微粒子は、微粒子粉末および市販の微粒子を分散させた分散体が使用できるが、溶媒の選択性および分散性および塗膜形成後の撥水性の点で微粒子粉末が好ましい。」 (4)「【0019】微粒子の平均1次粒子径は、1nm?20nmが好ましく、より好ましくは1nm?16nm、さらに好ましくは1nm?12nmである。・・・」 (5)上記(1)ないし(4)からみて、引用文献2には、「所定の平均1次粒子径の疎水処理が施されたシリカ微粒子から形成される超撥水塗料組成物の塗膜」という技術的事項が記載されていることが認められる。 3.引用文献3について 原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献3(特開2007-238931号公報)には、次の事項が記載されている。 (1)「【0006】本発明は・・・疎水性が要求される様々な材質及び表面構造を有する被処理材に対して、疎水性、防汚性及びそれらの耐久性に優れた均一な疎水性コーティング膜をより簡単に且つ効率良く形成することを可能とする疎水性コーティング膜形成組成物及びその形成方法、並びにそれによって得られた疎水性コーティング膜及び機能性材料を提供することを目的とする。」 (2)「【0007】・・・ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物を樹脂化合物及び揮発性溶媒と組み合わせた疎水性コーティング膜形成組成物を用いることにより、様々な被処理材に対して疎水性及びそれらの耐久性に優れた均一な疎水性コーティング膜をより簡単に且つ効率良く形成することが可能となり、さらに特異的に防汚、超撥水、防水、防雪、防氷、防錆、防藻、防菌、防カビ等の機能が発揮されるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。」 (3)「【0016】・・・かかる疎水性微細シリカ化合物の一次粒子の平均粒子径は5?50nmであることが好ましい。・・・」 (4)上記(1)ないし(3)からみて、引用文献3には、「所定の平均粒子径の一次粒子の疎水性微細シリカ化合物から形成される超撥水機能を発揮する疎水性コーティング膜」という技術的事項が記載されていることが認められる。 4.引用文献4について 原査定において引用された引用文献4(特開2010-185598号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0012】・・・撥水化成分として・・・疎水性シリカを皮膜に適用する・・・」 (2)「【0021】(粗面化皮膜) 粗面化皮膜2は、基板1に後記の撥水性皮膜3を固定するための下地層であり、プライマー塗膜21と、プライマー塗膜21中に分散させた粒子22とからなり・・・」 (3)「【0023】・・・プライマー塗膜21の粒子22の含まれない部分の厚さ(以下、プライマー塗膜21の厚さという)としては、0.1μm程度以上になるようにする。・・・」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (ア)引用発明における「コンクリート成形板を形成する形成方法に用いられる型枠」は、本願発明1における「コンクリート成形用の型枠」に相当する。 (イ)引用発明の「外型枠」における「コンクリート成形板の表面層に立体模様(凹凸模様)を与える面」は、コンクリート表面に段差を付与可能であるから、本願発明1の「コンクリート表面に段差を付与可能な段差部を有する型面」に相当する。 (ウ)引用発明における「前記表面層と接触する側の面に設けられ、水に対する接触角の大きな、セメント硬化物に対し離型性のよい被膜層」は表面層に立体模様(凹凸模様)を与える面に設けられる被膜層である。また、当該「被膜層」は、水に対する接触角の大きな層であるから、疎水性を有する層であることは明らかである。 そうすると、引用発明における「前記面に設けられ、水に対する接触角の大きな、セメント硬化物に対し離型性のよい被膜層」と本願発明1における「硬化後のコンクリート表面の空気あばたの原因となる気泡を低減するためにこの型面の少なくとも段差部に設けられ、疎水性酸化物微粒子から形成される多孔質層」とは、「型面の少なくとも段差部に設けられ、疎水性を有する層」である点で共通する。 (エ)引用発明においては、「外型枠」が、「水に対する接触角の大きな、セメント硬化物に対し離型性のよい被膜層」により、「前記表面層と型枠との離型性をよくして、離型剤による処理が不要となって作業性が向上し、離型剤の影響によるコンクリート成形板表面の品質低下を防ぐことができる」から、「外型枠」は、離型性がよく、離型剤による処理が不要となる以上、脱型時に型面から剥離してコンクリート表面に付着しないといえる。 そうすると、引用発明における「外型枠」が、「水に対する接触角の大きな、セメント硬化物に対し離型性のよい被膜層」により、「前記表面層と型枠との離型性をよくして、離型剤による処理が不要となって作業性が向上し、離型剤の影響によるコンクリート成形板表面の品質低下を防ぐことができる」ことと、本願発明1における「多孔質層は、コンクリートが硬化した後の脱型時に型面から剥離してコンクリート表面に付着しないものである」こととは、「疎水性を有する層は、コンクリートが硬化した後の脱型時に型面から剥離してコンクリート表面に付着しないものである」点で共通する。 (オ)したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「コンクリート成形用の型枠であって、 コンクリート表面に段差を付与可能な段差部を有する型面と、 この型面の少なくとも段差部に設けられ、疎水性を有する層とを備え、 疎水性を有する層は、コンクリートが硬化した後の脱型時に型面から剥離してコンクリート表面に付着しないものである コンクリート成形用型枠。」 ・相違点1 「型面の少なくとも段差部に設けられ、疎水性を有する層」について、本願発明1は、「疎水性酸化物微粒子から形成される多孔質層」であり、「硬化後のコンクリート表面の空気あばたの原因となる気泡を低減するために」設けられるものであるのに対し、引用発明は、「水に対する接触角の大きな被膜層」であり、「疎水性酸化物微粒子から形成される多孔質層」であることは特定されておらず、また、当該「被覆層」は、離型剤による処理を不要とし、離型剤の影響によるコンクリート成形板表面の品質低下を防ぐために設けられるものであって、「硬化後のコンクリート表面の空気あばたの原因となる気泡を低減するために」設けられるものではない点。 ・相違点2 コンクリート成形用型枠の用途について、本願発明1は、「コンクリートまたはモルタルからなる表面層をあらかじめ多孔質層の表面に形成することなく1回の打込みでコンクリートを成形する際に用いられる」とされるのに対し、引用発明は、先ず型枠を構成する外型枠に表面層を形成し、次いで表面層が適度に硬化した後、表面層2の裏にコンクリートスラリを流し込んで本体層3を密着・形成してコンクリート成形板を形成する方法に用いられる点。 (2)相違点についての判断 上記相違点1について検討する。 相違点1に係る本願発明1の「疎水性酸化物微粒子から形成される多孔質層」という構成について、上記「第5」2.及び3.の引用文献2、3に記載されているように、「所定の平均1次粒子径の疎水性酸化物微粒子から形成される超撥水機能を有する層」という技術的事項は、本願出願日前において周知技術であったといえるし、所定の平均1次粒子径の疎水性酸化物微粒子を用いた超撥水性を示す多孔質層は広く知られている(例えば、特開平10-273617号公報【0021】?【0023】や特開2010-254377号公報【0066】?【0067】等参照)。 そうすると、「疎水性酸化物微粒子から形成される多孔質層」という点は周知技術であるといえるから、引用発明の「水に対する接触角の大きな被覆層」として、「部材の表面に疎水性を有する層を形成する」という技術分野及び作用機能が共通する上記周知技術を適用することは当業者が容易に想到し得ることである。 しかしながら、本願発明1は、「疎水性酸化物微粒子から形成される段差部の多孔質層の持つ超撥水効果によって、成形後のコンクリート表面の段差に生じる空気あばた等の窪みの発生が大幅に低減」する効果を奏するものであるところ、引用文献1-4には、型枠の表面に超撥水材料を設けることにより、成形後のコンクリート表面の段差に生じる空気あばた等の窪みの発生を低減することを開示または示唆する記載はないから、当該効果は、当業者が引用発明及び上記周知技術から予測し得るものであるとはいえない。また、本願発明1の上記効果は、引用発明における効果、すなわち、上記第5の1.(4)に示した、先ず表面層を型枠に対し密接させて形成し、この表面層が薄いために気泡の抜けがよくなって型枠との間に気泡がほとんど残留しなくなるという効果とは異質なものである。 そうすると、本願発明1は、当業者が引用発明及び上記周知技術から予測し得ない格別顕著な効果を奏するということができる。 したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-5について 本願発明2-5も、本願発明1の「疎水性酸化物微粒子から形成される多孔質層」と同一の構成を備えるとともに、同一の効果を奏するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明6について 本願発明6は、本願発明1-5に対応するコンクリート成形用型枠の製造方法の発明であり、本願発明1の「疎水性酸化物微粒子から形成される多孔質層」に対応する構成を備え、同一の効果を奏するものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4.本願発明7について 本願発明7は、本願発明1-5に対応するコンクリート成形用型枠を用いるコンクリートの製造方法の発明であり、本願発明1の「疎水性酸化物微粒子から形成される多孔質層」に対応する構成を備え、同一の効果を奏するものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について 上記第6で検討したとおり、本願発明1-7は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-09-14 |
出願番号 | 特願2015-42922(P2015-42922) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(E04G)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 五十幡 直子 |
特許庁審判長 |
森次 顕 |
特許庁審判官 |
西田 秀彦 秋田 将行 |
発明の名称 | コンクリート成形用型枠およびその製造方法ならびに表面に段差を有するコンクリートの製造方法 |
代理人 | 特許業務法人酒井国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人酒井国際特許事務所 |