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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1366390
審判番号 不服2019-15805  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-25 
確定日 2020-09-17 
事件の表示 特願2016- 28107「画像読取装置、ステープル判定方法およびステープル判定プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月24日出願公開、特開2017-147604〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年2月17日の出願であって、令和1年6月4日付けで拒絶理由が通知され、令和1年8月8日付けで手続補正がされ、令和1年8月19日付けで拒絶査定がされ、これを不服として令和1年11月25日に本件審判請求がされ、同時に手続補正がされたものである。

第2 令和1年11月25日にされた手続補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和1年11月25日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
令和1年11月25日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和1年8月8日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を、本件補正後の請求項1の記載にする補正を含むものであり、本件補正前と本件補正後の請求項1の記載は、それぞれ、次のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)

[本件補正前の請求項1]
原稿積載台に積載される原稿を原稿搬送路に搬送し、前記原稿に形成された画像を読み取る画像読取装置であって、
前記原稿積載台に積載される原稿を前記原稿搬送路に送り出す原稿送出部と、
前記原稿送出部により前記原稿が送り出される際、原稿搬送方向と逆方向に向けて超音波または赤外を送信して当該原稿の跳ね上げを検知する跳ね上げ検知部と、
前記原稿送出部により前記原稿が送り出される際、当該原稿に付されている金属を検知する金属検知部と、
前記跳ね上げ検知部による検知結果および前記金属検知部による検知結果に基づいて、前記原稿にステープル処理が施されているか否かについて判定するステープル判定部と、
を備える画像読取装置。

[本件補正後の請求項1]
原稿積載台に積載される原稿を原稿搬送路に搬送し、前記原稿に形成された画像を読み取る画像読取装置であって、
前記原稿積載台に積載される原稿を前記原稿搬送路に送り出す原稿送出部と、
前記原稿送出部により前記原稿が送り出される際、当該原稿に付されている金属を検知する金属検知部と、
前記金属検知部よりも原稿搬送方向の上流側に配置され、前記原稿送出部により前記原稿が送り出される際、原稿搬送方向と逆方向に向けて超音波または赤外を送信して当該原稿の跳ね上げを検知する跳ね上げ検知部と、
前記金属検知部による検知結果および前記跳ね上げ検知部による検知結果に基づいて、前記原稿にステープル処理が施されているか否かについて判定するステープル判定部と、
を備える画像読取装置。

2 補正の適否
(1)補正の目的について
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明特定事項である「跳ね上げ検知部」を、「前記金属検知部よりも原稿搬送方向の上流側に配置され、」と限定する補正事項を含むものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第17条の2第5項第2号の規定に適合するものである。

(2)独立特許要件について
以上のように、本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものであるので、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記本件補正後の請求項1の記載により特定される次のとおりのものである。なお、本願発明の各構成について(A)?(E)の符号を付し、以下、構成A?Eと称する。

[本件補正発明]
(A)原稿積載台に積載される原稿を原稿搬送路に搬送し、前記原稿に形成された画像を読み取る画像読取装置であって、
(B)前記原稿積載台に積載される原稿を前記原稿搬送路に送り出す原稿送出部と、
(C)前記原稿送出部により前記原稿が送り出される際、当該原稿に付されている金属を検知する金属検知部と、
(D)前記金属検知部よりも原稿搬送方向の上流側に配置され、前記原稿送出部により前記原稿が送り出される際、原稿搬送方向と逆方向に向けて超音波または赤外を送信して当該原稿の跳ね上げを検知する跳ね上げ検知部と、
(E)前記金属検知部による検知結果および前記跳ね上げ検知部による検知結果に基づいて、前記原稿にステープル処理が施されているか否かについて判定するステープル判定部と、
(A)を備える画像読取装置。

イ 引用文献、引用発明
(ア)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-149407号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は強調のために当審で付したものである。

「【0028】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態であるシート給送装置を説明するための断面図、図2は図1のシート給送装置を備えるスキャナを説明するための断面図である。
【0029】
図1及び図2に示すように、本実施形態のシート給送装置は、給紙トレイ(積載台)101、ピックアップローラ102、給送ローラ104、分離ローラ105、重送検知手段107、及び戻しローラ108を備える。ここで、本実施形態では、給送ローラ107と分離ローラ105とによって本発明の分離給送手段を構成している。
【0030】
ピックアップローラ102は、給紙トレイ101に積載された原稿(シート)束100の上面に当接して原稿100aを搬送方向に送り出す。ピックアップローラ102は、揺動アーム103に回転自在に支持されており、揺動アーム103は、支軸103aによって揺動可能に支持されている。
【0031】
ピックアップローラ102により送り出された原稿100aは、給送ローラ104及び分離ローラ105によって1枚ずつ分離されて搬送路に給送される。搬送路の上下には、搬送路を搬送される原稿の姿勢を規制しつつ該原稿を搬送路に沿って案内する搬送ガイド113が配置されている。
【0032】
給送ローラ104及び分離ローラ105とレジストローラ対115との間には、原稿の重送を検知する重送検知手段107が配置されている。
【0033】
重送検知手段107には、原稿が一枚の場合と複数枚の場合とで透過する光量の変化により重送を検知する透過型光センサ等の光学式重送検知センサが知られている。また、重送検知手段107には、原稿の搬送路を間に挟んで超音波の発信器と受信器とを配置し、原稿が一枚給送されているときの超音波の減衰を基準として、これより大きい減衰を検知したときに重送と判断する超音波式重送検知センサが知られている。
【0034】
給送ローラ104及び分離ローラ105と重送検知手段107との間には、レジストセンサ106が配置されており、レジストセンサ106による原稿の検知結果を基に不図示の制御手段により次の原稿の給紙タイミング等が決定される。
【0035】
給送ローラ104の軸方向の両端側には、原稿の給紙方向に対して少なくとも逆の方向に回転駆動される一対の戻しローラ(逆搬送手段)108が略対称な位置に配置されている。
【0036】
図1に示すように、一対の戻しローラ108は、その軸線が給送ローラ104の軸線と略同等の位置、すなわち、軸方向から見て給送ローラ104に重なるように配置されている。なお、一対の戻しローラ108は、その軸線が給送ローラ104の軸線より搬送路の上流側に配置されていてもよい。
【0037】
また、一対の戻しローラ108は、それぞれアーム109に支軸109aを介して回転可能に支持されており、アーム109は、給紙された原稿の状態に応じて戻しローラ108を原稿に当接する位置と退避する位置とに移動可能に配置されている。
【0038】
アーム109には、不図示の駆動手段により駆動される駆動プーリ110aが取り付けられており、駆動プーリ110aの回転駆動力がタイミングベルト110bを介して戻しローラ108に取り付けられた従動プーリ110cに伝達される。これにより、戻しローラ108が原稿の給紙方向に対して逆の方向に回転駆動される。
【0039】
また、アーム109は、引張りコイルばね112によって戻しローラ108が一定の荷重で原稿に当接する方向に付勢された状態で、回転レバー111のカム作用によって戻しローラ108が原稿に当接する位置と、原稿から退避する位置とに揺動する。
【0040】
即ち、アーム109は、原稿の正常な分離給送が行われているときは、回転レバー111とカム係合することで給紙された原稿から戻しローラ108を退避させる位置に変位する。
【0041】
この状態で、回転レバー111が回転してアーム109とのカム係合が解除されると、アーム109は、引張りコイルばね112の付勢力により、戻しローラ108が給紙された原稿に対して一定の荷重で押圧接触する位置まで揺動する。なお、回転レバー111の回転制御及び駆動プーリ110aの駆動手段の制御は、不図示の制御手段によって行われる。
【0042】
戻しローラ108に対して搬送路を挟んで対向する位置には、戻し従動ローラ114が配置されている。戻し従動ローラ114は、搬送ガイド113に回転可能に支持されている。
【0043】
レジストローラ対115の下流側には、搬送路を搬送される原稿の画像を光電変換により読み取って画像データとして取り込むための画像読取部116が配置されている。画像読取部116で画像が読み取られた原稿は、搬送ローラ対117及び排紙ローラ対118を介して排紙トレイ119に排出される。
【0044】
次に、上記構成のスキャナの一連の動作例について説明する。なお、ここで説明するスキャナの一連の動作は、不図示の記憶手段(ROMやハードディスク等)に記憶された制御プログラムが不図示のRAMにロードされて、不図示の制御手段(CPU等)により実行される。
【0045】
まず、制御手段は、不図示のPC等の外部装置からの画像読取命令が入力されると、揺動アーム103及びピックアップローラ102の不図示の駆動機構を制御してピックアップローラ102を図1の矢印a方向に移動させると共に回転させる。これにより、ピックアップローラ102が給紙トレイ101に積載された原稿束100の上面に当接して、原稿を送り出す動作が開始される。
【0046】
ピックアップローラ102によって送り出された原稿は、制御手段の制御により駆動される給送ローラ104及び分離ローラ105によって1枚ずつ分離されて搬送路に給送される。」

「【0054】
次に、制御手段は、重送検知手段107からの検知信号を基に原稿が重送されているか否かを判断する。そして、原稿が重送されていないと判断した場合は、制御手段は、原稿の搬送を継続して、原稿がレジストローラ対115に到達した後、原稿を一定の速度で画像読取部116へ搬送して該画像読取部116によって原稿の画像の読取処理を行う。
【0055】
画像読取部116を通過した原稿は、搬送ローラ対117及び排紙ローラ対118により排紙トレイ119へ排出される。以上の動作を原稿1枚ごとに行うことで、給紙トレイ101に積載された原稿の画像が画像読取部116により全て読取られる。
【0056】
一方、重送検知手段107からの検知信号を基に制御手段が原稿が重送されていると判断した場合は、制御手段は、給送ローラ104及び分離ローラ105による原稿の分離給送動作を一旦停止するように各ローラ104,105の駆動系を制御する。
【0057】
このとき、重送した複数枚の原稿は搬送路で停止させられ、それ以前に搬送路に給送された原稿は上記同様にして、画像読取部116で画像が読み取られた後、搬送ローラ対117及び排紙ローラ対118を介して排紙トレイ119に排出される。
【0058】
次に、制御手段は、回転レバー111とアーム109とのカム係合が解除されるように回転レバー111の回転位置を制御する。これにより、アーム109が引張りコイルばね112の付勢力により図1の反時計回り方向に回動して、戻しローラ108が重送した複数枚の原稿を戻し従動ローラ114との間で挟み込んだ状態で該原稿に対して一定の荷重で押圧接触する。
【0059】
そして、制御手段は、重送した複数枚の原稿を給紙トレイ101側(図3の矢印D方向)に戻すように、給送ローラ104と分離ローラ105と戻しローラ108との駆動系を制御して各ローラ104,105,108を原稿の給送方向と逆方向に回転させる。これにより、重送した複数枚の原稿を給紙トレイ101側に戻すための搬送力を十分に得ることができる。
【0060】
このとき、重送した複数枚の原稿は重送検知手段107又はレジストセンサ106を抜けた後、例えば、所定時間又は戻しローラ108の駆動モータの所定回転量だけ搬送されて停止する。
【0061】
また、制御手段は、原稿の重送を検知するか否かに関わらず、戻しローラ108を原稿の給送方向と逆方向に回転させるようにしておき、アーム109の回動により戻しローラ108を当接させたり退避させたりするようにしてもよい。
【0062】
重送した複数枚の原稿を給紙トレイ101側に戻した後、制御手段は、回転レバー111がアーム109にカム係合するように該回転レバー111の回転位置を制御する。これにより、戻しローラ108の外周部が上側の搬送ガイド113と略同一面上の位置まで退避する。
【0063】
そして、制御手段は、給紙トレイ101側へ戻された原稿を、再度、上記同様にして、搬送路へ分離給送するように、ピックアップローラ102、給送ローラ104及び分離ローラ105等の駆動系を制御する。
【0064】
ここで、本実施形態では、ピックアップローラ102の原稿の幅方向の両側に、搬送路に給送中の原稿の状態を検知する跳ね上がり検知センサ(シート状態検知手段)201を配置している。
【0065】
跳ね上がり検知センサ201の検知結果に基づいて、制御手段が、重送した複数枚の原稿を給送方向とは逆の方向へ戻す際に、原稿の破損を引き起こす可能性があるか否かを判断する。跳ね上がり検知センサ201としては、例えば、特開2004-182449号公報に開示されている跳ね上がり検知センサが使用可能である。
【0066】
なお、シート状態検知手段には、跳ね上がり検知センサ201の他に、例えば、原稿の斜行を検知するセンサ、原稿の搬送ガイドへの乗り上げを検知するセンサ、紙種を検知するセンサ、レジストセンサ近傍での紙詰まりを検知するセンサを例示できる。
【0067】
ところで、複数枚の原稿を順次分離給送しているときにステープルで束ねられた原稿が混入していると、給送方向へ回転する給送ローラ104と、給送方向と逆方向に回転駆動される分離ローラ105との作用により、原稿の跳ね上がりが生じる。
【0068】
跳ね上がりが発生した状態で原稿の給送を続けると、原稿が搬送路に詰まり、原稿が破損する。このため、制御手段は、跳ね上がり検知センサ201の信号によって原稿の跳ね上がりを検知した場合は、給送ローラ104及び分離ローラ105の回転を停止させるように各ローラ104,105の駆動系を制御して原稿の給送を中断する。
【0069】
また、本実施形態では、制御手段は、重送検知手段107からの信号により原稿が重送していると判断した場合は、上述したように、重送した複数枚の原稿を給紙トレイ101側に戻すように、分離ローラ105と戻しローラ108との駆動系を制御する。即ち、分離ローラ105及び戻しローラ108が原稿の給送方向と逆方向に回転駆動される。
【0070】
このとき、制御手段は、跳ね上がり検知センサ201からの信号により原稿の跳ね上がりが検知されていた場合は、原稿を給紙トレイ101側に戻すと原稿を破損する可能性が高いため、原稿の給紙トレイ101側への搬送を中断する。
【0071】
即ち、制御手段は、分離ローラ105及び戻しローラ108の回転を停止させるように各ローラ105,108の駆動系を制御する。
【0072】
一方、原稿の重送をできるだけ素早く検知するように重送検知手段107は原稿の給送方向のできるだけ上流に配置されている。そのため、原稿の重送を検知した時点では、ステープル止めされた原稿であっても跳ね上がり検知センサ201で原稿の跳ね上がりが検知できないことがある。
【0073】
この場合、本実施形態では、重送検知手段107からの信号により制御手段が原稿が重送していると判断して、上述したように、重送した複数枚の原稿が給紙トレイ101側に戻されることになる。
【0074】
ステープル止めされた位置が搬送方向から見て原稿の左上であるとして説明すると、原稿の重送を検知した時点では、原稿のステープル止め部は給送ローラ104を通過している可能性が高い。
【0075】
この状態で、原稿を給紙トレイ101側に戻す逆搬送を行った場合、原稿のステープル止め部付近が給送ローラ104と分離ローラ105との間に詰まり、ステープル止めされていない原稿の右側部分のみが、給紙トレイ101側に戻されることになる。
【0076】
結果的に、原稿は左側が詰まりによって停止させられた状態で、右側のみが給紙トレイ101側に戻され、跳ね上がりが生じる。原稿の跳ね上がりが発生した状態で原稿を給紙トレイ101側に戻す逆搬送を続けると、原稿が破損する可能性がある。
【0077】
また、原稿の跳ね上がりが発生しない場合においても、給紙トレイ101側に逆搬送される原稿が給紙トレイ101に積載された原稿束の中に入り込んだり、他の原稿を押し出したりして積載順が乱れたりする可能性がある。
【0078】
図4及び図5は、給紙トレイ101に積載された原稿の積載順が乱れてしまう現象を説明するための説明図である。
【0079】
図4において、重送原稿100aの後端が原稿束100の前端よりも下流側へ送られてから重送原稿100aが逆搬送される場合、原稿束100の一部を押し上げて、原稿束100の間に入り込む場合がある。
【0080】
図5に示すように、跳ね上がり検知センサ201は、給紙トレイ101の給紙口側の端部にできるだけ近い位置、すなわち原稿束100の先端に対して近い位置に配置される。跳ね上がり検知センサ201の発光部201aから発光される光は矢印Eで示される方向に照射され、跳ね上がり検知センサ201の受光部201bで受光される。
【0081】
ここで、給紙トレイ101側に逆搬送された重送原稿100aが原稿束100の先端部を押して原稿束100の間に入り込む動作が行われると、原稿束100の一部の原稿は上方向に押し上げられ、発光部201aから照射される光が遮られる。これにより、受光部201bの出力信号が変化するため、跳ね上がり検知センサ201を用いることで、原稿の積載順が乱れた状態を検知することができる。
【0082】
そこで、本実施形態では、制御手段は、原稿の分離給送動作中のみならず、重送した原稿を給紙トレイ101側に戻す逆搬送中にも跳ね上がり検知センサ201の出力信号を監視する。
【0083】
そして、制御手段は、原稿を給紙トレイ101側に戻す逆搬送中に跳ね上がり検知センサ201からの信号により原稿の跳ね上がりや原稿の積載順の乱れを検知した場合は、原稿を給紙トレイ101側へ戻す逆搬送を中断する。又は原稿の逆搬送を開始しようとする場合に、原稿の跳ね上がりを検知したときは、逆搬送を開始しないようにする。
【0084】
即ち、制御手段は、給送ローラ104、分離ローラ105及び戻しローラ108の回転を停止させるように各ローラ104、105,108の駆動系を制御する。」

「【図2】



(イ)引用文献1に記載された発明
上記(ア)の記載事項の特に下線部によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、引用発明の各構成の符号は、説明のために当審にて付したものであり、以下、構成aないし構成eと称する。また、【】内は、対応する構成が記載された引用文献1の段落番号を示す。

[引用発明]
(a)シート給送装置を備えるスキャナであって、【0028】
(a1)シート給送装置は、給紙トレイ(積載台)101、ピックアップローラ102、給送ローラ104、分離ローラ105、重送検知手段107、及び戻しローラ108を備え、【0029】
(a2)ピックアップローラ102は、給紙トレイ101に積載された原稿(シート)束100の上面に当接して原稿100aを搬送方向に送り出し、【0030】
(a3)ピックアップローラ102により送り出された原稿100aは、給送ローラ104及び分離ローラ105によって1枚ずつ分離されて搬送路に給送され、【0031】
(a4)給送ローラ104及び分離ローラ105とレジストローラ対115との間には、原稿の重送を検知する重送検知手段107が配置され、【0032】
(a5)給送ローラ104の軸方向の両端側には、原稿の給紙方向に対して少なくとも逆の方向に回転駆動される一対の戻しローラ(逆搬送手段)108が略対称な位置に配置され、【0035】
(a6)レジストローラ対115の下流側には、搬送路を搬送される原稿の画像を光電変換により読み取って画像データとして取り込むための画像読取部116が配置され、【0043】

(b)上記構成のスキャナの一連の動作は、記憶手段(ROMやハードディスク等)に記憶された制御プログラムがRAMにロードされて、制御手段(CPU等)により実行され、【0044】
(b1)まず、制御手段は、画像読取命令が入力されると、ピックアップローラ102を移動させると共に回転させ、これにより、ピックアップローラ102が給紙トレイ101に積載された原稿束100の上面に当接して、原稿を送り出す動作が開始され、【0045】
(b2)ピックアップローラ102によって送り出された原稿は、制御手段の制御により駆動される給送ローラ104及び分離ローラ105によって1枚ずつ分離されて搬送路に給送され、【0046】
(b3)次に、制御手段は、重送検知手段107からの検知信号を基に原稿が重送されているか否かを判断し、そして、原稿が重送されていないと判断した場合は、制御手段は、原稿の搬送を継続して、原稿がレジストローラ対115に到達した後、原稿を一定の速度で画像読取部116へ搬送して該画像読取部116によって原稿の画像の読取処理を行い、【0054】
(b4)一方、重送検知手段107からの検知信号を基に制御手段が原稿が重送されていると判断した場合は、制御手段は、給送ローラ104及び分離ローラ105による原稿の分離給送動作を一旦停止するように各ローラ104,105の駆動系を制御し、【0056】
(b5)このとき、重送した複数枚の原稿は搬送路で停止させられ、【0057】
(b6)そして、制御手段は、重送した複数枚の原稿を給紙トレイ101側に戻すように、給送ローラ104と分離ローラ105と戻しローラ108との駆動系を制御して各ローラ104,105,108を原稿の給送方向と逆方向に回転させ、【0059】
(b7)ピックアップローラ102の原稿の幅方向の両側に、搬送路に給送中の原稿の状態を検知する跳ね上がり検知センサ(シート状態検知手段)201を配置し、【0064】
(b8)跳ね上がり検知センサ201の検知結果に基づいて、制御手段が、重送した複数枚の原稿を給送方向とは逆の方向へ戻す際に、原稿の破損を引き起こす可能性があるか否かを判断し、【0065】
(b9)ところで、複数枚の原稿を順次分離給送しているときにステープルで束ねられた原稿が混入していると、給送方向へ回転する給送ローラ104と、給送方向と逆方向に回転駆動される分離ローラ105との作用により、原稿の跳ね上がりが生じ、【0067】
(b10)跳ね上がりが発生した状態で原稿の給送を続けると、原稿が搬送路に詰まり、原稿が破損するため、制御手段は、跳ね上がり検知センサ201の信号によって原稿の跳ね上がりを検知した場合は、給送ローラ104及び分離ローラ105の回転を停止させるように各ローラ104,105の駆動系を制御して原稿の給送を中断し、【0068】
(b11)また、制御手段は、重送検知手段107からの信号により原稿が重送していると判断した場合は、上述したように、重送した複数枚の原稿を給紙トレイ101側に戻すように、分離ローラ105と戻しローラ108との駆動系を制御し、即ち、分離ローラ105及び戻しローラ108が原稿の給送方向と逆方向に回転駆動され、【0069】
(b12)このとき、制御手段は、跳ね上がり検知センサ201からの信号により原稿の跳ね上がりが検知されていた場合は、原稿を給紙トレイ101側に戻すと原稿を破損する可能性が高いため、原稿の給紙トレイ101側への搬送を中断し、【0070】
(b13)即ち、制御手段は、分離ローラ105及び戻しローラ108の回転を停止させるように各ローラ105,108の駆動系を制御し、【0071】
(b14)一方、原稿の重送をできるだけ素早く検知するように重送検知手段107は原稿の給送方向のできるだけ上流に配置され、そのため、原稿の重送を検知した時点では、ステープル止めされた原稿であっても跳ね上がり検知センサ201で原稿の跳ね上がりが検知できないことがあり、【0072】
(b15)この場合、重送検知手段107からの信号により制御手段が原稿が重送していると判断して、上述したように、重送した複数枚の原稿が給紙トレイ101側に戻されることになり、【0073】
(b16)そこで、制御手段は、原稿の分離給送動作中のみならず、重送した原稿を給紙トレイ101側に戻す逆搬送中にも跳ね上がり検知センサ201の出力信号を監視し、【0082】
(b17)そして、制御手段は、原稿を給紙トレイ101側に戻す逆搬送中に跳ね上がり検知センサ201からの信号により原稿の跳ね上がりや原稿の積載順の乱れを検知した場合は、原稿を給紙トレイ101側へ戻す逆搬送を中断する、【0083】
(a)スキャナ。

(ウ)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-263339号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は強調のために当審で付したものである。

「【0001】
本発明は、原稿等の画像を読み取るイメージスキャナや複写機などの、原稿等を分離して画像処理部へ搬送する給紙装置及びそれを備えた画像読取装置に関する。」

「【0021】
図1は本発明の一実施の形態である異物検知手段を示す断面図、図2は図1の異物検知手段の分解斜視図、図3は図1の異物検知手段の給紙分離機構部への一搭載例を示す図」

「【0026】
更に図2及び図3を用いて詳細に説明すると、上記状態で原稿105が給紙され原稿搬送パス5を原稿105が通過する。原稿105にステープル200などの金属異物が付着していない場合は、磁束10のφの変化は小さいので、検知コイル6には電流はほとんど発生しない。一方、原稿105がステープル止めをされている場合は、図6に示すようにステープル200が磁束10を横切るように通過することによってステープル200に渦電流が発生し、渦電流が発生する磁界が検知コイル6を通過する磁束10を変化させ、検知コイル6にはこの磁束10の変化を打ち消す方向に電流生起する。つまり、励磁コイル1に直流電流を印加すると、電流値とコイルの巻き数に比例した強さで磁界が発生し、電流値が一定になると磁界の強さも一定になる。検知コイル6には、磁束10の変化を打ち消すように誘導電流が流れるので、電流値が一体の場合には、誘導電流はほとんど流れない。発生した磁界の中を金属の異物が通過すると、その金属異物に渦電流を生起するため磁界が変化し、その結果、検知コイル6に磁界の変化を打ち消すような電流が流れる。従って、図1の検知回路に検知抵抗13の両端に電位差Vrを発生するので、これを増幅しADコンバータなどでディジタル変換すれば、ステープルなどの金属異物が存在するとして検出することができる。」

「【0028】
また、本発明は、連続的に原稿を給紙しなければならない場合においても、その給紙速度を低下させることなく、金属で形成されているステープルやクリップなど金属異物を原稿105が給紙される前に検出して、給紙動作を停止させ、警告を表示するなど、重要原稿の保護および装置や装置内部の重要部位の破損を未然に防止することができる。
【0029】
つまり、原稿搬送パス5をはさんで、一方に磁界を生起する励磁コイル1を、対向する他方に励磁コイル1の磁界による磁束10を通過させる検知コイル6を配置し、これらの2つのコイル1、コイル6で形成する磁気回路が原稿搬送パス5を横切るように構成して一定の強度の磁界を発生させ、磁界を横切るように原稿等105を搬送させることにより、原稿搬送パスに搬送される原稿105に残ったステープルなどの金属異物が付着している場合には、磁界を移動する金属異物に誘起される渦電流により発生する磁界の変化が検知コイル6で検知して電流の変化を検出することにより異物の存在を検出することができるものである。」

「【図3】



(エ)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-226980号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は強調のために当審で付したものである。


「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、複写機等の装置に対して原稿を1枚ずつ供給する自動原稿送り装置に関し、特に、原稿トレイに綴じ原稿が載置されたこと検出する機能を備えた自動原稿送り装置に関する。」

「【0032】
また、図11に示すように、原稿トレイ2上において略水平方向に対向して配置された発光素子81と受光素子82とにより持ち上げ検出センサを構成することもできる。」

「【図11】



ウ 本件補正発明と引用発明との対比
(ア)構成Aについて
構成aの「シート給送装置を備えるスキャナ」は、構成a1?構成a6によれば、「給紙トレイ(積載台)101に積載された・・原稿100aを搬送方向に送り出し、・・送り出された原稿100aは、・・搬送路に給送され、・・搬送路を搬送される原稿の画像を・・読み取って画像データとして取り込む」ものであり、「給紙トレイ(積載台)101」、「搬送路」、「スキャナ」は、それぞれ、構成Aの「原稿積載台」、「原稿搬送路」、「画像読取装置」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、構成Aで一致する。

(イ)構成Bについて
構成a2、a3によれば、「ピックアップローラ102は、給紙トレイ101に積載された・・原稿100aを搬送方向に送り出し」、「送り出された原稿100aは、給送ローラ104及び分離ローラ105によって1枚ずつ分離されて搬送路に給送され、」るから、「ピックアップローラ102」及び「給送ローラ104及び分離ローラ105」は、構成Bの「原稿送出部」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、構成Bで一致する。

(ウ)構成Cについて
本件補正発明は、「(C)前記原稿送出部により前記原稿が送り出される際、当該原稿に付されている金属を検知する金属検知部」を備えるのに対し、引用発明は、そのような金属検知部を備えない点(相違点1)で両者は相違する。

(エ)構成Dについて
構成b7によれば、「ピックアップローラ102の原稿の幅方向の両側に、搬送路に給送中の原稿の状態を検知する跳ね上がり検知センサ(シート状態検知手段)201」が配置されており、この「跳ね上がり検知センサ201」は、構成Dの「原稿の跳ね上げを検知する跳ね上げ検知部」に相当する。
構成b9によれば、「跳ね上がり検知センサ201」は、「複数枚の原稿を順次分離給送しているときに・・、原稿の跳ね上がりが生じ、」原稿の跳ね上げを検知する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「(D’)前記原稿送出部により前記原稿が送り出される際、当該原稿の跳ね上げを検知する跳ね上げ検知部」を備えるといえる点で共通する。
しかしながら、跳ね上げ検知部について、本件補正発明は、「前記金属検知部よりも原稿搬送方向の上流側に配置され」るものであるのに対し、引用発明は、金属検知部を備えないため、金属検知部よりも原稿搬送方向の上流側に配置されるとはいえない点(相違点2)、及び、跳ね上げ検知部について、本件補正発明は、「原稿搬送方向と逆方向に向けて超音波または赤外を送信して当該原稿の跳ね上げを検知する」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものではない点(相違点3)で両者は相違する。

(オ)構成Eについて
構成b9、b10によれば、「複数枚の原稿を順次分離給送しているときにステープルで束ねられた原稿が混入していると、・・原稿の跳ね上がりが生じ、跳ね上がりが発生した状態で原稿の給送を続けると、原稿が搬送路に詰まり、原稿が破損するため、制御手段は、跳ね上がり検知センサ201の信号によって原稿の跳ね上がりを検知した場合は、・・原稿の給送を中断」するから、制御手段は、跳ね上がりを検知することで、原稿がステープルで束ねられたものか否かを判定しているともいえる。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「(E’)前記跳ね上げ検知部による検知結果に基づいて、前記原稿にステープル処理が施されているか否かについて判定するステープル判定部」を備えるといえる点で共通する。
しかしながら、ステープル判定部について、本件補正発明は、「前記金属検知部による検知結果および前記跳ね上げ検知部による検知結果に基づいて、前記原稿にステープル処理が施されているか否かについて判定する」ものであるのに対し、引用発明は、跳ね上がりを検知することで、原稿がステープルで束ねられたものか否かを判定するものではあるが、金属検知部を備えないため、金属検知部による検知結果には基づかない点(相違点4)で両者は相違する。

(カ)一致点、相違点
以上をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
(A)原稿積載台に積載される原稿を原稿搬送路に搬送し、前記原稿に形成された画像を読み取る画像読取装置であって、
(B)前記原稿積載台に積載される原稿を前記原稿搬送路に送り出す原稿送出部と、
(D’)前記原稿送出部により前記原稿が送り出される際、当該原稿の跳ね上げを検知する跳ね上げ検知部と、
(E’)前記跳ね上げ検知部による検知結果に基づいて、前記原稿にステープル処理が施されているか否かについて判定するステープル判定部と、
(A)を備える画像読取装置。

[相違点]
相違点1
本件補正発明は、「(C)前記原稿送出部により前記原稿が送り出される際、当該原稿に付されている金属を検知する金属検知部」を備えるのに対し、引用発明は、そのような金属検知部を備えない点。

相違点2
跳ね上げ検知部について、本件補正発明は、「前記金属検知部よりも原稿搬送方向の上流側に配置され」るものであるのに対し、引用発明は、金属検知部を備えないため、金属検知部よりも原稿搬送方向の上流側に配置されるとはいえない点。

相違点3
跳ね上げ検知部について、本件補正発明は、「原稿搬送方向と逆方向に向けて超音波または赤外を送信して当該原稿の跳ね上げを検知する」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものではない点。

相違点4
ステープル判定部について、本件補正発明は、「前記金属検知部による検知結果および前記跳ね上げ検知部による検知結果に基づいて、前記原稿にステープル処理が施されているか否かについて判定する」ものであるのに対し、引用発明は、跳ね上がりを検知することで、原稿がステープルで束ねられたものか否かを判定するものではあるが、金属検知部を備えないため、金属検知部による検知結果には基づかない点。

エ 判断
(ア)相違点についての検討
・相違点1、2、4について
引用発明は、上述したように、「跳ね上げ検知部による検知結果に基づいて、前記原稿にステープル処理が施されているか否かについて判定する」ものであるといえるが、構成b14によれば、「原稿の重送を検知した時点では、ステープル止めされた原稿であっても跳ね上がり検知センサ201で原稿の跳ね上がりが検知できないこと」があるものであり、構成b16によれば、「そこで、制御手段は、原稿の分離給送動作中のみならず、重送した原稿を給紙トレイ101側に戻す逆搬送中にも跳ね上がり検知センサ201の出力信号を監視」するものである。
したがって、引用発明は、原稿を給送しているときにステープル処理が施されているか否かについて判定できない場合があり、この課題を解決しようとする動機があるといえる。
一方、引用文献2に記載されているような、原稿搬送パスに搬送される原稿にステープルなどの金属異物が付着していることを検出する手段(本願補正発明でいう「原稿送出部により原稿が送り出される際、当該原稿に付されている金属を検知する金属検知部」)は、古くから用いられている周知の手段である。
したがって、引用発明において、原稿を給送しているときにステープル処理が施されているか否かについて判定するために、「跳ね上げ検知部」に加えて、「金属検知部」をも備え、「前記金属検知部による検知結果および前記跳ね上げ検知部による検知結果に基づいて、前記原稿にステープル処理が施されているか否かについて判定する」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、また、金属検知部を備えた具体的な構造を、引用文献1の【図2】及び引用文献2の【図3】に基づいて想定すると、金属検知部は給紙ローラの下流側に、跳ね上げ検知部は給紙ローラの上流側に配置されると想定されるから、「跳ね上げ検知部」は、「前記金属検知部よりも原稿搬送方向の上流側に配置され」ることとなるのは明らかである。

・相違点3について
原稿送り装置(スキャナ)に備えられる原稿の跳ね上げを検知するセンサの構成として、原稿搬送方向と逆方向に向けて光を送信する構成は、例えば、引用文献3に記載されているように周知のものであり、また、上記光の代わりに超音波や赤外を採用することも普通に行われることである。
さらに、引用発明における跳ね上がり検知センサとして、必要に応じて任意の構成が採用可能であることは当業者に明らかである。
したがって、引用発明において、跳ね上がり検知センサとして、原稿搬送方向と逆方向に向けて超音波や赤外を送信して当該原稿の跳ね上げを検知する構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることであり、そのことを阻害する要因もない。

(イ)効果について
本件補正発明が奏する効果は、上記容易想到である構成から当業者が予測し得るものである。

(ウ)判断のむすび
よって、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明および引用文献2、3に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)補正却下の決定の理由のむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和1年11月25日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-6に係る発明は、令和1年8月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

[本願発明]
原稿積載台に積載される原稿を原稿搬送路に搬送し、前記原稿に形成された画像を読み取る画像読取装置であって、
前記原稿積載台に積載される原稿を前記原稿搬送路に送り出す原稿送出部と、
前記原稿送出部により前記原稿が送り出される際、原稿搬送方向と逆方向に向けて超音波または赤外を送信して当該原稿の跳ね上げを検知する跳ね上げ検知部と、
前記原稿送出部により前記原稿が送り出される際、当該原稿に付されている金属を検知する金属検知部と、
前記跳ね上げ検知部による検知結果および前記金属検知部による検知結果に基づいて、前記原稿にステープル処理が施されているか否かについて判定するステープル判定部と、
を備える画像読取装置。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1-4に記載された発明及び技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1 特開2009-149407号公報
引用文献2 特開平9-226980号公報
引用文献3 特開2005-263339号公報
引用文献4 特開平11-331482号公報

3 引用発明
引用文献1には、上記「第2 2(2)イ(イ)」の引用発明が記載されている。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2 2(2)」で検討した本件補正発明から、「跳ね上げ検知部」について、「前記金属検知部よりも原稿搬送方向の上流側に配置され、」との限定事項を省いたものであるから、上記引用発明とは、上記相違点1、3、4で相違し、その余の点で一致する。
したがって、上記「第2 2(2)エ」と同様の検討により、本願発明は、引用文献1に記載された発明および引用文献2、3(原査定における引用文献3、2)に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-07-14 
結審通知日 2020-07-21 
審決日 2020-08-03 
出願番号 特願2016-28107(P2016-28107)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 花田 尚樹  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 渡辺 努
千葉 輝久
発明の名称 画像読取装置、ステープル判定方法およびステープル判定プログラム  
代理人 特許業務法人鷲田国際特許事務所  

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