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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1366684
審判番号 不服2019-16117  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-29 
確定日 2020-10-20 
事件の表示 特願2015-555179「変形キューブコーナー素子を有する再帰反射性シート」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月31日国際公開、WO2014/116431、平成28年 3月31日国内公表、特表2016-509696、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)1月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年(平成25年)1月28日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年1月6日に上申書の提出と共に手続補正がなされ、同年8月22日付けで拒絶理由が通知され、平成30年2月26日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年7月31日付けで拒絶理由が通知され、平成31年2月1日に意見書の提出とともに、誤訳訂正がなされ、令和元年7月23日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し同年11月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本件発明
本願の請求項1?5に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明5」という。)は、平成31年2月1日に誤訳訂正とともに補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
再帰反射性シートであって、
キューブコーナー素子を含む構造化表面であって、該キューブコーナー素子の少なくとも一部は、熱的に剪断されたキューブコーナー素子である、構造化表面を含み、
該熱的に剪断されたキューブコーナー素子は、複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキングを形成している、再帰反射性シート。
【請求項2】
請求項1に記載の再帰反射性シートであって、前記グレースケールマーキングは、
第1の縮小光学的有効体積を有する、第1の複数の熱的に剪断されたキューブコーナー素子を含む、第1の画素と、
該第1の縮小光学的有効体積とは異なる、第2の縮小光学的有効体積を有する、第2の複数の熱的に剪断されたキューブコーナー素子を含む、第2の画素と、を更に含む、再帰反射性シート。
【請求項3】
前記グレースケールマーキングは、グラフィック画像、写真画像、セキュリティマーク、形状、図形、記号、デザイン、文字、数字、バーコード、QRコード、英数字、及び印のうちの1つである、請求項1に記載の再帰反射性シート。
【請求項4】
前記キューブコーナー素子は、熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載の再帰反射性シート。
【請求項5】
再帰反射性シートであって、
縮小光学的有効体積を有する変形キューブコーナー素子のアレイを含む構造化表面であって、該アレイは、複数の画素を含み、第1の画素は、第1の全光線リターン値を有するキューブコーナー素子を含み、該第1の画素に隣接する第2の画素は、該第1の全光線リターン値とは異なる第2の全光線リターン値を有するキューブコーナー素子を含む、構造化表面を含み、前記キューブコーナー素子が、熱的な剪断の程度に応じた複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキングを形成している、再帰反射性シート。」

3 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由の概要は、本願の請求項1?5に係る発明が、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献1又は引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
なお、原査定の拒絶理由に引用された引用文献は次のとおりであり、引用文献1及び引用文献2は、主引用発明が記載された文献として引用され、引用文献4?6は周知技術を示す文献として引用されたものである。

引用文献1:特開2009-134285号公報
引用文献2:特表2001-522060号公報
引用文献4:米国特許出願公開第2007/0209244号明細書
引用文献5:国際公開第2012/166447号
引用文献6:特表平10-506726号公報

4 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶理由に主引用発明が記載された文献として引用され、本願の優先権主張の日前の平成21年6月18日に頒布された刊行物である特開2009-134285号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載事項がある。なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。また、明らかな誤記(無用なスペース等)は注記なしで修正した。以下の文献についても同様である。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの頂点と3つの稜線により区画されてなる3つの直交反射側面(a面,b面,およびc面)からなるキューブコーナー素子と、該キューブコーナー素子の頂点の一部が切取られ非直交反射側面(d面)が設置された切頭型キューブコーナー素子とが設置されており、該非直交反射側面の面積率が5?70%であることを特徴とするキューブコーナー型再帰反射プリズムシート。

(中略)

【請求項5】
非直交反射側面(d面)の面積が異なる切頭型キューブコーナー素子が2種類以上設置されていることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載のキューブコーナー型再帰反射プリズムシート。
【請求項6】
一つの素子の非直交反射側面(d面)の面積と、その素子の底面の面積の比率で表される切頭率が、10?80%であることを特徴とする請求項5記載のキューブコーナー型再帰反射プリズムシート。
【請求項7】
該切頭型キューブコーナー素子が互に隣接した連続領域を形成することを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載のキューブコーナー型再帰反射プリズムシート。
【請求項8】
該切頭型キューブコーナー素子が互に隣接した連続網目領域を形成することを特徴とする請求項7に記載のキューブコーナー型再帰反射プリズムシート。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、交通標識、規制標識、案内標識や工事標識などの交通標識類や商業標識等あるいは、車両マーキングなどに好ましく用いられるキューブコーナー型再帰反射プリズムシートの提供にある。
【0002】
詳しくは、標識前面からの光に対して再帰反射性であり、標識内部からの光に対して光透過性であるキューブコーナー型再帰反射プリズムシートおよびそれを用いた内部照明型再帰反射標識の提供にある。

(中略)

【0012】
しかして、本発明の目的は、交通標識、規制標識、案内標識や工事標識などの交通標識類や商業標識等あるいは、車両マーキングなどに好ましく用いられるキューブコーナー型再帰反射プリズムシートの提供にある。
【0013】
以下に、本発明の課題を解決するための具体的な手段に関して詳細に説明を行う。
【0014】
本発明におけるキューブコーナー型再帰反射プリズムシートは、1つの頂点と3つの稜線により区画されてなる3つの直交反射側面(a面,b面,およびc面)からなるキューブコーナー素子と、該キューブコーナー素子の頂点の一部が切取られ非直交反射側面(d面)が設置された切頭型キューブコーナー素子とが設置されており、該非直交反射側面の面積率が5?70%であることを特徴とするキューブコーナー型再帰反射プリズムシートである。
【0015】
本発明でいう面積率とは、素子集合体の面積に対する素子集合体の中に含まれる非直交反射側面の面積の合計の比率をいう。
【0016】
非直交反射側面が形成されたキューブコーナー型再帰反射素子は、正規のキューブコーナー型再帰反射素子に比べ、内部からの光を透過する代わりに外部からの光に対する再帰反射性が劣るものである。
【0017】
それゆえ、本発明では、外部からの光に対する再帰反射性と内部からの光の透過性のバランスが良くなるように、面積率を5?70%とすることが好ましい。
【0018】
本発明では、さらに面積率を10?60%、特に15?50%とするのが、外部からの光に対する再帰反射性と内部からの光の透過性のバランスが良くする上で好ましい。
【0019】
本発明では、頂部の切り取り方の違いが、切頭型キューブコーナー型再帰反射素子の輝度特性に影響するので、色々な切り取り方をした素子が混在していることが、キューブコーナー型再帰反射プリズムシートの輝度の広角性の優れた再帰反射素子を得るために好ましく、該非直交反射側面(d面)が平面、基準平面に平行な平面、曲面およびこれら平面が混合された形状であることであることが好ましい。
【0020】
また、本発明においては、一つの素子の非直交反射側面(d面)の面積と、その素子の底面の面積の比率(以下、切頭率という)の違う素子を混在させることが、キューブコーナー型再帰反射プリズムシートの輝度の広角性の優れた再帰反射素子を得るために好ましく、切頭率の異なる切頭型キューブコーナー素子が2種類以上設置されていることが好ましい。
【0021】
本発明においては、切頭型キューブコーナー再帰反射素子を容易に形成できることに加え、面積率の制御が容易にするために、該切頭型キューブコーナー素子が互に隣接した連続領域を形成するように設置することが好ましい。
【0022】
本発明においては、切頭型キューブコーナー再帰反射素子を容易に形成できることに加え、キューブコーナー型再帰反射プリズムシートの外観を損なわない様にするために、上記該切頭型キューブコーナー素子が互に隣接した連続領域が、連続網目領域であることが好ましい。
【0023】
本発明に用いられるキューブコーナー型再帰反射素子の形状は、外部の光に対する再帰反射性能と内部の光の透過性をバランスよく得られる点で、キューブコーナー素子および切頭型キューブコーナー再帰反射素子の底面投影形状は、三角形、四角形、および六角形であることが好ましい。
【0024】
本発明においては、外部からの光に対する高い再帰反射性能と内部からの光に対する高い透過性を併せ持つことができるように、キューブコーナ型再帰反射プリズムシートが密封封入構造をもつ内部全反射型再帰反射プリズムシートであることが好ましい。
【0025】
本発明のキューブコーナー型再帰反射プリズムシートは、外部からの光に対する高い再帰反射性能と内部からの光に対する高い透過性を併せ持つことができるので、内部照明型再帰反射標識に好適に用いることができる。

(中略)

【発明の効果】
【0027】
標識前面からの光に対して再帰反射性であり、標識内部からの光に対して光透過性であるキューブコーナー型再帰反射プリズムシートおよびそれを用いた内部照明型再帰反射標識を提供できる。」

ウ 「【0034】
本発明においては、切頭型キューブコーナーのd面の面積率が、外部からの光に対する再帰反射性能と内部からの光に対する透過性のバランスを制御する上で重要であり、切頭率によって切頭型キューブコーナー再帰反射素子を設ける比率を変えて所望の面積率とすることができるので、切頭率は特に限定されるものではないが、10?80%であることが好ましく、更には、25?64%であることが、切頭型キューブコーナー再帰反射素子の形成のし易さ、および切頭型キューブコーナー再帰反射素子を設ける比率の制御のし易さの点で好ましい。
【0035】
本発明においては、キューブコーナー型再帰反射プリズムシートの輝度の広角性の優れた再帰反射素子を得るために、切頭率の異なる素子が混在していることが好ましい。
【0036】
図6は、本発明の再帰反射素子群を説明する図である。三角錐型キューブコーナー再帰反射素子群の中に、切頭型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに隣接した連続網目領域を形成するように設けられている。図面では網目の一部が記載されている。」
合議体注:図6は、次のとおりのものである。


エ 「【0039】
以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明する。
【0040】
比較例1
表面が平坦な100mm×100mmの真鍮板の上に、先端角度が70.539゜のダイヤモンドバイトを用いて169.706μmピッチにて深さが80.000μmとなるよう3方向に断面形状が対称形のV字型溝を切削した。3方向のV字溝群の交差角度は、全て60.000゜となるよう切削し、凸形状のキューブコーナー型再帰反射素子群を製作した。
【0041】
この凸形状の再帰反射素子群を用い、電鋳法により凹形状のプリズム集合体を作製し形状転写用金型とした。
【0042】
次に、三菱エンジニアリングプラスティック株式会社製ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂シート「ユーピロン FE2000URI」と形状転写用金型を用いて、成形温度200℃、成形圧力500N/cm^(2)の条件で圧縮成形し、30℃まで冷却してから樹脂シートを取り出し、表面に多数のキューブコーナー型再帰反射素子が最密充填状に配置されたキューブコーナー型再帰反射プリズムシートを得た。

(中略)

【0045】
実施例3
比較例1のキューブコーナー型再帰反射プリズムシートを、円柱状担持体構造を持つ網目状エンボス成型機にて温度を240℃、圧力を300kg・cm^(-2)としてでエンボス加工を施した。その際の非直交反射側面の面積率は約30%であった。」

オ 「【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、交通標識、規制標識、案内標識や工事標識などの交通標識類や商業標識等あるいは、車両マーキングなどに好ましく用いられるキューブコーナー型再帰反射プリズムシートを提供できる。
【0050】
さらに、標識前面からの光に対して再帰反射性であり、標識内部からの光に対して光透過性であるキューブコーナー型再帰反射プリズムシートおよびそれを用いた内部照明型再帰反射標識を提供できる。」

(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の記載事項アに基づけば、引用文献1には、請求項1の記載を引用する請求項5に係る発明として、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていたと認められる。
「1つの頂点と3つの稜線により区画されてなる3つの直交反射側面(a面,b面,およびc面)からなるキューブコーナー素子と、該キューブコーナー素子の頂点の一部が切取られ非直交反射側面(d面)が設置された切頭型キューブコーナー素子とが設置されており、非直交反射側面(d面)の面積が異なる切頭型キューブコーナー素子が2種類以上設置されている、該非直交反射側面の面積率が5?70%であるキューブコーナー型再帰反射プリズムシート。」

(3)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に主引用発明が記載された文献として引用され、本願の優先権主張の日前の平成13年11月13日に頒布された刊行物である特表2001-522060号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の記載事項がある。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも3つの鏡面反射面を有する少なくとも1つの幾何学的構造を備える構造化表面を有し、それら鏡面反射面が個々の該幾何学的構造の先端で収束するようになっている再帰反射製品であって、各々の先端から離間配置される複数のスポットをさらに備え、それらスポットが、前記3つの鏡面反射面とは異なる屈折率特性を有する製品。
【請求項2】 前記スポットが拡散反射する、請求項1記載の製品。
【請求項3】 前記構造化表面が複数の幾何学的構造を備え、該構造の各々が、個々の該幾何学的構造の先端で収束する少なくとも3つの鏡面反射面を有し、前記スポットの各々が前記先端の間に位置する、請求項1記載の製品。
【請求項4】 前記スポットが拡散反射し、前記構造化表面上に均一に分布する、請求項3記載の製品。
【請求項5】 前記複数のスポットが、巨視的パターンを画定するように分布する、請求項3記載の製品。」

イ 「 【0001】
技術分野
本発明は、一般に反射製品に関する。本発明は、微細複製技術を用いて製造される再帰反射シートに特に適用される。

(中略)

【0006】
キューブコーナーシートは、ビード付きシートよりもはるかに高度の再帰反射率を一般に有し、再帰反射率は、1平方メートル当たりのルクス当たりのカンデラの単位で表される。したがって、キューブコーナーシートは、再帰反射光の中でビード付きシートよりも一般に明るく見える。しかし、特定のグラフィックス用途では、高度の再帰反射率だけではなく、高度の日中「白色度」が必要である。物体の白色度は、物体に関する第2の三刺激値座標(X、Y、Z)について記述されることがあり、したがって「キャップ-Y」と呼ばれる。キャップ-Y目盛は、完全に黒色の物体に対する0から完全に白色の物体に対する100までの範囲である。物体の白色度は、0から1までの「輝度率」に関して記述されることもある。キューブコーナーシートの日中白色度が増加し、しかも再帰反射率が実質的に低下しなければ、こうしたシートは、グラフィックス用途にはるかに広範な用途を見出すことができる。アルミニウムまたはその他の金属蒸気塗膜が構造化表面に添着されたキューブコーナーシートは、多少グレーがかった外観を呈する傾向があり、白色度の増加の利益が特にある。

(中略)

【0009】
キューブコーナーシートは、何らかの方法で、好ましくは実質的に再帰反射性能を低下しないようにマークして、不当な模倣者が、種型の製造に要する工具類および機械加工に投資せずにシートの構造化表面を複製するのを妨げることが望ましい。
【0010】
発明の開示
本明細書では、構造化表面を有する反射製品であって、少なくとも1つの幾何学的構造を備え、各々の構造が、個々の幾何学的構造の先端で収束する少なくとも3つの鏡面反射面を有する製品を開示する。こうした製品は、鏡面反射面とは異なる屈折率特性を有する複数のスポットが各々の先端から離間配置されている。一実施態様では、鏡面反射面は1つのキューブコーナー素子を備える。スポットは、製品の白色度を強化するために拡散反射することが好ましく、構造化表面上に均一に分布させる、または特定のパターンを画定するように分布させることができる。
【0011】
一実施態様では、製品は、第1の照明幾何形状に複数の第1活性領域を有し、スポットは、第1活性領域を回避するサイズおよび配置の第1スポット群を含む。製品は、第1活性領域に隣接して第1不活性領域を有することができ、第1群の各々のスポットは、1つの不活性領域の大部分を覆うことができる。あるいは、少なくともいくつかのスポットは、関連する第1不活性領域内の中心から外して配置すると、選択した照明幾何形状においてのみ再帰反射光内で見ることができる。
【0012】
マーク付きキューブコーナー製品の製造方法を開示する。この方法は、第1照明幾何形状に関連する複数の第1活性領域と第1不活性領域とを有する構造化表面を有する製品を提供することを含む。この方法は、第1活性領域よりも第1不活性領域に多く重なるように配置された限定領域の構造化表面をマークすることをさらに含む。マーキングステップは、1つまたは複数の第1不活性領域に限定されるスポットで、構造化表面を選択的に変更することを含むことができる。製品は、成形型に必要に応じてマークした後、公知の微細複製技術を用いて、多数のマーク済みキューブコーナー、たとえばキューブコーナーシートなどをマーク済み成形型から成形できるような成形型を構成することができる。あるいは、製品は、キューブコーナーシートを構成することができる。」

ウ 「 【0013】
例示的実施態様の詳細な説明
図1は、再帰反射シート層の構造化裏面2をその表面を通して見た拡大平面図を示す。平行な溝4、6、8の3つの集合は、構造化表面2内に形成され、各々頂点10a、12aで収束する3つの面を各々有する幾何学的構造10および12を画定する。頂点10a、12aは、構造10、12の最後部の先端であり、溝4、6、8の「底部」または「頂部」(対向する溝側面が交差する場合、最前部)は、構造10、12の三角形の基部を画定する。構造10の面は、溝の側面4a、6a、8aを備え、構造12の面は、溝の側面4b、6b、8bを備える。図示を容易にするため、溝4、6、8のいくつかの側面のみを図1に示す。
【0014】
溝の集合は、約60°の開先角度で互いに交差する。図示の幾何学的構造10、12はキューブコーナー素子であり、これは、各構造の3つの側面が互いにほぼ垂直であることを意味する。キューブコーナー素子の面は実質的に平滑であり、高度の鏡面反射性および小さいかまたは無視できる程度の拡散反射性を特徴とする。必要なら、頂点10a、12aのいくつかまたはすべてを切頭状にすると、構造化表面を部分的に透過性にすることができる。その場合、幾何学的構造の面はこうした構造の先端でさらに収束し、その先端は切頭状頂点になる。

(中略)

【0016】
図2は、図1に示す構造化表面2の同じ眺めの描写だが、溝の側面は示さない。これは、陰影が付いている「不活性領域」16および陰影が付いていない「活性領域」18を容易に示すためである。不活性領域16は、図2に示してあるかどうかに関わらず、3つの溝の集合4、6、8の交点20の各々の点に位置することが分かる。
【0017】
「不活性領域」という用語は、以下のとおり定義することができる:「不活性領域」内の構造化表面に衝突する光線は、さらには進まず、幾何学的構造の他の2つの反射面両方に衝突しない。キューブコーナー素子の場合、この状態は、再帰反射光内の暗い外観によって一般に表される。「活性領域」は、これと逆に定義される:「活性領域」内の構造化表面に衝突する光線は、さらに進んで他の2つの反射面両方に衝突する。活性領域は、再帰反射光内で明るく見える。
【0018】
活性領域および不活性領域は入射光に関して定義されるので、「照明幾何形状」の作用として、つまりシートまたは製品に関連する入射光の方向として変化することができ、変化する。入射光の方向は、入射角βおよび配向角度ω(ともに下記の用語集および図7参照)に関して一般に表される。図2は、シートに垂直に、つまりβ=0で入射する光の状態を表す。60-60-60°(非傾斜)キューブコーナー素子の場合、および垂直に入射する光の場合、不活性領域は、構造化表面の面積全体の約1/3を構成する。
【0019】
図3では、構造化表面2は、幾何学的構造の中に分散するとともに、不活性領域16内に位置する拡散反射スポット22を含むように変更した。スポット22は、粗くした表面組織、つまりこの表面組織上に入射する光線を多くの異なる方向に散乱させる品質を有する。これは、隣接スポット22である構造化表面2の表面、たとえば面4a、4b、6a、6b、8a、8bの変更されない部分と対照的である。こうした面は、高度に鏡面反射性であり、面のうちの3つから反射される光線の損失を最小限にし、それにより高度の再帰反射性能を維持する。スポット22は、幾何学的構造のサイズに応じて構造化表面2に添着される塗料、パターン化フォトレジストまたはその他の適切な拡散材料のスポットから構成できる。こうした材料は、影響を受ける領域からの内部全反射(TIR)を変動させて所望の拡散の質を生成し、影響を受ける領域の平滑な表面仕上げを実際に妨害することはない。スポット22は、構造化表面2の表面仕上げを隣接領域に関連して粗くした限定的な領域をさらに含むことができる。集中レーザエネルギーを使用してこうした物理的に粗くした領域を形成する方法について、以下に説明する。
【0020】
図3のスポット22は、入射光をあらゆる方向に反射するため、これらのスポットが適用される再帰反射シートの白色度を強化する。スポット22が、不活性領域に限定される程度まで、再帰反射性能を低下させない点は有利である。不活性領域16を完全に覆い、活性領域18の小部分を覆う比較的大きいスポットは、再帰反射率を犠牲にせずに白色度を高めることができれば使用しても良い。最大再帰反射率における最大白色度は、スポットが活性領域上に衝突せずに、不活性領域を充填する場合に達成される。
【0021】
図1、図2および図3から、スポット22が、頂点10a、12aと重ならない位置を占めることは明白である。スポット22は、頂点10aと12aとの間に位置する。」
合議体注:図1?図3は、次のとおりのものである。


エ 「 【0026】
次に図8A?Cを参照すると、{β、ω}が各々{0、0}、{30、0}および{30、180}°の3つの照明幾何形状について、交点20の1つが示されている。拡散反射スポット48は、3つの隣接構造10および3つの隣接構造12の不活性部分を含む不活性領域16の殆ど(表面積の半分を超える)を覆う。破線は、図8Aおよび他の図の全体的な不活性領域の境界を画定するために示す。スポット48は、構造化表面上の傾斜面の間の縁部、たとえば面4a、4b、8b、8a、6a、6b(図1参照)の間の縁部を消去することができるが、必ずしも消去する必要はない。図8Bおよび図8Cは、軸外照明の場合、各々方向36および42、活性領域26および30がスポット48を侵食することを示す。当然、スポット48に重なる領域26、30の部分26a、30aは、少なくとも部分的に不活性になる。なぜなら、これらの位置に衝突する光線は、多くの異なる方向に拡散反射し、したがって効率的に再帰反射されないからである。重複部分26a、30aにより、照明方向36、42に対する再帰反射光はわずかに暗くなる。したがって、スポット48は、再帰反射器の白色度を強化するほか、指向性のパターンまたは画像を形成するために使用することができる。つまり、スポット48は、ある照明角度における再帰反射率を悪化させるが、他の照明角度の再帰反射率は悪化させないからである。選択した交点20に配置される複数のスポット48は、所望のパターンまたはハーフトーン画像を構成する個々のピクセルとして作用する。
【0027】
特定の照明幾何形状における再帰反射光の暗色化つまり減少は、(1)変更領域における鏡面反射が低下した程度、および(2)スポットの存在によって不活性になるわずかな活性領域の作用である。第2の要素は、スポットで被覆されない活性領域の他の部分が、それにも関わらず再帰反射光の生成時に被覆領域と正常に協力する場合、スポットで被覆された元の活性領域の割合より大きくて良い。この極端な例は、キューブコーナー素子の1つの面のほぼ全体が三角形のスポットにより変更される場合である。この場合、他の2つの面は、変更されないまま残った場合にも、再帰反射を停止して不活性になる。つまり、これらの面は、変更済みの面と協力して再帰反射光を生成することができないからである。
【0028】
最大白色度が不要であるかまたは望ましくない場合、本明細書に記載するスポットのいくつかまたはすべてが拡散反射以外の反射特性を有しても、なお識別可能なパターンを生成することができる。必要なことは、スポットの領域が、構造化表面上の隣接領域とは異なる反射特性を有することだけである。たとえば、スポットは、スポットにおける鏡面反射が減少するように、製品に選択的に添着される吸収性の塗料またはその他の物質で良い。」
合議体注:図8A?図8Cは、次のとおりのものである。

オ 「 【0040】
図14では、点124は、キューブコーナー再帰反射シート上の不活性領域の位置を表す。拡散反射スポット126は、点124のいくつかに選択的に適用されて、図示の「3M」という巨視的パターンを形成する。スポット126をこのようなパターンで配置して、シートの製造者を識別すると、競合相手がシートを複製して、自社の製品として販売するのを阻止するのに有利である。スポット126は、製品の型番もしくは製造日などのその他の情報、または傾斜しているかもしくはその他の方法で向きに感応するキューブコーナー素子の場合、シートの向きに関する情報(たとえば「この面を上→」もしくは「←垂直→」)を提供するように配置することもできる。上記のとおり、グラフィックス用途に使用するシートには、不活性領域のどこにでも大き目のスポット126を組み込んで白色度を強化するか、またはハーフトーン画像にスポット126を配置することができる。所望の画像領域外の不活性領域の数が、所望の画像領域内の不活性領域の数より多い場合、負の画像を形成して白色度を高めることができ、それにより、所望の画像領域外のすべての不活性領域に拡散反射スポットをマークして、所望の画像領域内の不活性領域を変更しない状態で残す。」
合議体注:図14は、次のとおりのものである。


カ 「 【0041】
図15および図16は、米国特許第4,588,258号(Hoopman)に記載されているものに類似する傾斜キューブコーナーシート132の主に不活性領域内に位置する2つの異なるタイプのスポット128、130の断面図を示す。シート132は、キューブコーナー素子136を含む構造化表面の反対側の表面134を有する。素子136の面は、キューブの頂点137で収束する。シート132は、構造化表面に均一に添着されたアルミニウムまたはその他の適切な金属の鏡面反射蒸気塗膜138をさらに有する。スポット128は、蒸気塗膜138の前に構造化表面上に最初に均一に添着されて、スポット128を除くすべての領域に標準の写真平版技術を用いて除去されたフォトレジスト層を含む。スポット130は、キューブコーナー素子136の局所的に粗い表面を含み、この表面は、たとえば集束レーザ光源からの局所的な加熱により形成されたものである。
【0042】
「シート」という用語は、厚さが約1mm以下程度であり、大型のサンプルの場合、搬送しやすくするために、緊密に巻いてロール状にできる製品を一般に意味する。再帰反射シートは、たとえば予備成形シートにキューブコーナー素子の配列をエンボス加工するか、または液体材料を型内に流延して、一体材料として製造することができる。あるいは、再帰反射シートは、キューブコーナー素子を予備成形フィルムに流延するか、または予備成形フィルムを予備成形キューブコーナー素子に積層することにより、層状製品として製造することができる。キューブコーナー素子は、約0.5mm厚で屈折率が約1.59のポリカーボネートフィルム上に成形することができる。再帰反射シートを製造するのに有用な材料は、寸法安定性、耐久性、耐候性があり、所望の構成に容易に成形可能な材料であることが好ましい。概して、一般に熱および圧力で成形可能な光透過性材料を使用することができる。シートは、着色剤、染料、紫外線吸収剤または別個の紫外線吸収層、および必要に応じてその他の添加剤を含むことができる。上記のとおり、添加剤層とともに、キューブコーナー素子を汚れに対して密封する裏材層を使用しても良い。」
合議体注:図15及び図16は、次のとおりのものである。


(4)引用文献2に記載された発明
引用文献2の記載事項オに基づけば、引用文献2には、図14に示されるキューブコーナー再帰反射シートとして、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていたと認められる。
「キューブコーナー再帰反射シート上に、不活性領域124が配置され、拡散反射スポット126が不活性領域124のいくつかに選択的に適用されて、巨視的パターンを形成するキューブコーナー再帰反射シートであって、
グラフィックス用途に使用するシートには、ハーフトーン画像に拡散反射スポット126を配置する、キューブコーナー再帰反射シート。」

(5)引用文献4の記載事項
原査定の拒絶理由に周知技術を示す文献として引用され、本願の優先権主張の日前の2007年9月13日に頒布された刊行物である、米国特許出願公開第2007/0209244号明細書(以下、「引用文献4」という。)には、次の記載事項がある。

ア 「1. FIELD OF THE INVENTION
[0001] The present invention relates to a license plate assembly that comprises a light source in front of which is arranged a license plate that comprises a retroreflective sheet. The retroreflective sheet is transparent and comprises on a base prismatic elements. The prismatic elements are truncated and/or contain separation surfaces between them. The present invention further relates to a method of making a retroreflective sheet.

(中略)

3. SUMMARY OF THE INVENTION
[0010] In one aspect, the present invention provides a license plate assembly comprising a light source and a license plate suitable for back illumination, said license plate comprising
[0011] (i) a retroreflective sheet having on a base prismatic elements having lateral faces intersecting the base at base edges, wherein said prismatic elements are truncated having elevated edges and truncated surfaces that are transparent and bounded by the elevated edges of the prismatic elements and/or said retroreflective sheet comprises transparent separation surfaces between said prismatic elements, said separation surfaces being bounded by the base edges of said prismatic elements;
[0012] (ii) and one or more indicia;
and said retroreflective sheet being arranged on said light source such that said prismatic elements of said retroflective sheet are facing the light source.
[0013] The reflective sheet used in the license plate should generally be a transparent retroreflective sheet. By the term ‘transparent' as used in this application is generally meant that the respective sheet or layer allows sufficient light to pass there through such that a required amount of illumination of the license plate, for example as set by regulatory authorities, can be achieved. Accordingly, transparent materials in connection with the present invention can be optically clear and have a visible light transmission of 80 to almost 100%. The term transparent is however not meant to exclude translucent materials. Translucent materials may have a visible light transmission of only 30 to 80%.
[0014] By the term ‘transparent retroreflective sheet' is meant that the sheet is capable of retroreflecting light that impinges on the surface of the sheet and is further transparent in the sense set forth above. A transparent retroreflective sheet in accordance with the invention may be highly transparent (transmission for visible light of 80 to 99%) or may be translucent.
[0015] In a particular aspect of the invention, the retroreflective sheet comprises truncated prismatic elements.
[0016] By the term ‘truncated' in relation to prismatic elements is meant that the tops of the prismatic elements have been deformed such that the retroreflective performance of the individual prismatic elements reduces. The resulting truncated surfaces of the prismatic elements may be flat or curved including a displacement of the top of a prismatic element. Truncated prismatic elements include those that can be obtained by heat deforming non-truncated prismatic elements.」
翻訳文「1.技術分野
[0001] 本発明は、光源を含み、その前方に再帰反射シートを含むライセンスプレートが配置されているライセンスプレート組立体に関する。この再帰反射シートは透明であり、底面上にプリズム要素を含む。これらのプリズム要素は、切頭され、および/またはそれらの間に分離面を有する。本発明はさらに、再帰反射シートの製造方法にも関する。

(中略)

3.発明の要旨
[0010] 一態様において、本発明は、光源と、背面照明に好適なライセンスプレートとを含み、上記ライセンスプレートが、
[0011] (i)底面縁端部において底面と交差する側面を有するプリズム要素を底面上に有する再帰反射シートであって、上記プリズム要素が、切頭されており、隆起した縁端部と、透明でありプリズム要素の隆起した縁端部を境界とする切頭面とを有し、および/または上記再帰反射シートが、上記プリズム要素の間に透明な分離面を含み、上記分離面が上記プリズム要素の底面縁端部を境界とする、再帰反射シートと;
[0012] (ii)1つ以上の表示とを含み;
上記再帰反射シートの上記プリズム要素が光源と面するように、上記光源上に上記再帰反射シートが配置される、ライセンスプレート組立体を提供する。
[0013] ライセンスプレート中に使用される反射シートは、一般に透明な再帰反射シートであるべきである。本出願において使用される用語「透明」は、一般に、規制当局などによって設定されるライセンスプレートの必要照明量を実現できるのに十分な光をそれぞれのシートまたは層が透過できることを意味する。したがって、本発明と関連する透明材料は、光学的に透明であり、80からほぼ100%の可視光透過率を有することができる。しかし、透明という用語は、半透明材料を排除することを意味するものではない。半透明材料は、わずか30?80%の可視光透過率を有することができる。
[0014] 用語「透明再帰反射シート」は、そのシートが、シート表面に当たる光を再帰反射することができ、さらに上記の意味で透明であることを意味する。本発明による透明再帰反射シートは、高透明性(可視光透過率が80?99%)であってよいし、半透明であってもよい。
[0015] 本発明の特定の態様においては、再帰反射シートが、切頭プリズム要素を含む。
[0016] プリズム要素と関連する用語「切頭」は、個々のプリズム要素の再帰反射性能が低下するように、プリズム要素の上部を変形させていることを意味する。この結果得られるプリズム要素の切頭面は、平坦であっても湾曲していてもよく、プリズム要素の上部の除去を伴う。切頭されたプリズム要素としては、非切頭プリズム要素の熱変形によって得ることができるプリズム要素が挙げられる。」

イ 「5. DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Retroreflective Sheet
[0032] The retroreflective sheet for use with this invention comprises on a base a plurality of prismatic elements having lateral faces intersecting the base at base edges. The prismatic elements may be truncated and/or separation surfaces may be provided between the prismatic elements.

(中略)

[0041] In another embodiment, the retroreflective sheet comprises a base and prismatic elements formed on the base in which the elements are truncated prismatic elements, in particular truncated cube-corner elements, having lateral faces, base edges, elevated edges, and truncated surfaces whereby the truncated surfaces are transparent and bounded by the elevated edges of the prismatic elements. The truncated surfaces may be flat or they may be curved.

(中略)

[0044] This embodiment removes retroreflective portions of the truncated full cube-corner elements, but in samples of the invention prepared in this manner the remaining portions of the elements provided sufficient retroreflectivity for many applications.
[0045] The concept of partial removal of retroreflective elements is not limited to the full cube-corner embodiment.

(中略)

[0051] In a particularly preferred embodiment of the present invention, retroreflective sheeting having truncated prismatic elements is made by providing a retroreflective sheet of non-truncated prismatic elements and deforming the tops of the prismatic elements by application of heat and/or pressure. Thus, by the application of heat and/or pressure, the tops of the prismatic elements are deformed such that their optical performance is reduced, i.e. the retroreflectivity of the individual elements is reduced. It has been found that heat and pressure can deform the tops of prismatic elements by flattening them and/or displacing the top of the prismatic element. Generally, the deformation will not result in flat truncated surfaces in the truncated prismatic elements but rather the tops of the prismatic elements may be displaced, e.g. pushed somewhat into the prismatic element.

(中略)

[0052] The prismatic elements may be deformed by heat and pressure by pressing a hot plate against the non-truncated prismatic elements of a retroreflective sheet. Alternatively, the retroflective sheeting may be guided between two rolls, at least one of which is heated so as to apply heat and optional pressure to the non-truncated prismatic elements of the retroreflective sheet.」
翻訳文「5.発明の詳細な説明
再帰反射シート
[0032] 本発明に使用される再帰反射シートは、底面縁端部において底面と交差する側面を有する複数のプリズム要素を底面上に含む。これらのプリズム要素は、切頭されていてもよいし、および/またはプリズム要素の間に分離面を提供してもよい。

(中略)

[0041] 別の実施態様においては、再帰反射シートは、底面と、底面上に形成されたプリズム要素とを含み、これらの要素は、側面、底面縁端部、隆起した縁端部、および切頭面を有する切頭プリズム要素、特に切頭キューブコーナー要素であり、切頭面は透明であり、プリズム要素の隆起した縁端部を境界としている。切頭面は平坦であってもよいし、湾曲していてもよい。

(中略)

[0044] この実施態様では、切頭フルキューブコーナー要素の再帰反射部分が除去されているが、この方法で作成した本発明のサンプルにおいては、要素の残りの部分で、多くの用途に十分となる再帰反射性が得られた。
[0045] 再帰反射要素を部分的に除去するという考えは、フルキューブコーナーの実施態様に限定されるものではない。

(中略)

[0051] 本発明の特に好ましい実施態様においては、切頭プリズム要素を有する再帰反射シーティングは、非切頭プリズム要素の再帰反射シートを提供し、熱および/または圧力を適用することによってそのプリズム要素の上部を変形させることによって製造される。したがって、熱および/または圧力を適用することによって、光学的性能が低下するように、すなわち個々の要素の再帰反射性が低下するようにプリズム要素の上部が変形する。熱および圧力により、プリズム要素の上部を平坦化するおよび/または移動することによって、プリズム要素の上部を変形できることが分かった。一般に、この変形では、切頭プリズム要素中の平坦な切頭面とはならずに、プリズム要素の上部は、たとえばプリズム要素内にある程度押し込まれたりして移動する場合がある。

(中略)

[0052] プリズム要素は、再帰反射シートの非切頭プリズム要素にホットプレートを押し付けることで、熱および圧力によって変形させることができる。あるいは、再帰反射シーティングは、少なくとも一方が加熱されている2つのロールの間に案内することによって、再帰反射シートの非切頭プリズム要素に熱、および場合により圧力を適用することができる。」

(6)引用文献5の記載事項
原査定の拒絶理由に周知技術を示す文献として引用され、本願の優先権主張の日前の2012年(平成24年)12月6日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、国際公開第2012/166447号(以下、「引用文献5」という。)には、以下の記載事項がある。

ア 「[0004] Prismatic retroreflective sheeting, in contrast to beaded retroreflective sheeting, is generally rotationally non-symmetric. Thus, when viewing or measuring R_(A) at presentation angles from 0 to 360 degrees, or when measuring at orientation angles from 0 to 360, there is significant variation in the retroreflectivity of prismatic sheeting. Therefore, prismatic sheeting has a higher sensitivity to the orientation at which the sheeting is placed on a surface than beaded sheeting.」
翻訳文「[0004]プリズムの再帰反射シートは、ビーズの再帰反射シートとは対照的に、一般に回転非対称である。したがって、0?360度の表示角度でR_(A)を観測または測定する場合、又は、0?360度の配向角度で測定する場合、プリズム状シートの再帰反射率は大きく変動する。したがって、プリズム状シートは、ビーズ状シートよりも、シートが表面に配置される方向に対する感度が高い。」

イ 「[0040] FIG. 4 illustrates an exemplary embodiment of retroreflective sheeting 400, having optically variable mark 450 and background area 460. Optically variable mark 450 has a linear sequence of optically variable mark elements 1 to 13, each optically variable mark element having an associated visual feature (generally indicated by gray scale shading) that is visually distinguishable from the corresponding visual feature associated with adjacent optically variable mark element(s).
[0041] Referring again to FIG. 4, the arrangement of optically variable mark elements in optically variable mark 450 in a linear sequence provides an "appearance of motion" effect under some conditions. For example, in embodiments where the associated visual feature is retroreflectance at a given observation angle, and where the optically variable mark elements are arranged in a sequence such that each successive optically variable mark element requires an increase in observation angle to achieve maximal retroreflectance, a viewer can direct a light source (e.g., a flashlight) at the reflective sheeting and sweep the light source through a range of observation angles selected to include maximal retroflectance for each of the optically variable mark elements, and the viewer will observe an apparent motion of maximal retroreflectance along the optically variable mark (i.e., maximal retroreflectance will appear to progress from one optically variable mark element to the next). A typical range of observation angles for observing maximal retroreflectance includes 0.5 degree to 15 degrees. The range of observation angles is readily achieved by a viewer positioned about 10 feet away from the retroreflective sheeting and extending an arm to one side (while holding the light source in the hand of the extended arm), although other distances may also be used.」
翻訳文「[0040]図4は、光学的可変マーク450および背景領域460を有する再帰反射シート400の例示的な実施形態を示す。光学的可変マーク450は、光学的可変マーク要素1?13の線形配列を有し、それぞれの光学的可変マーク要素は、関連する視覚的特徴(一般的にグレースケールシェーディングとして示される)を有し、これは、隣接する光学的可変マーク要素に関連付けられた対応する視覚的特徴を視覚的に区別する。
[0041]再び図4を参照すると、光学的可変マーク450における光学的可変マーク要素の線形配置は、いくつかの条件下で「動きの演出」効果をもたらす。例えば、関連する視覚的特徴が、ある観察角度での再帰反射であり、光学可変マーク要素が、観察角度を大きくすると最大再帰反射が得られるように線形配置された実施形態では、観察者が、反射シートに対し、各光学的可変マーク要素の最大再帰反射を含む観察角度の範囲で光源(例えば、懐中電灯)の向きを走査することができ、観察者は、光学的可変マークに沿った最大再帰反射の動きの演出を観察する(つまり、最大再帰反射が、1つの光学的可変マーク要素から次の要素に進行するように見える)。通常、最大再帰反射を観察する観察角度範囲は、0.5°?15°である。観察角度範囲は、再帰反射シートから約10フィート離れた位置の観察者が、腕を片側に伸ばした状態(光源を腕を伸ばして保持しながら)で直ちに得られるものであるが、他の距離での使用も可能である。」

(7)引用文献6の記載事項
原査定の拒絶理由に周知技術を示す文献として引用され、本願の優先権主張の日前の平成10年6月30日に頒布された刊行物である特表平10-506726号公報(以下、「引用文献6」という。)には、以下の記載事項がある。

ア 「また、本発明の別の実施の形態では前述した従来技術で示唆されているところとは違って、眺望平面がどうであろうとも広観測角性能、均一な向き角度性能、高円摩度、優れたホワイト値特性およびリアルな色を有する角錐型再帰反射性構造体は、プリズム対に形成された反射プリズムのアレーからなり、前記プリズム対が互いに負方向に傾斜しているとともに、プリズム対の交差点近傍の一部のプリズム対におけるプリズムの内の一つに窓が形成されてなる前記アレーにより得られる」(第7頁第13?19行)

イ 「改変した溝の間の間隔に応じて、再帰反射部域にもたせる窓の数を所望値にすることができ、従って、その再帰反射部域を所望の背面光(後述する)が得られるように調整することができる。二回目の操作で除去した角錐の部域と一回目の操作で作製した角錐の大きさとは、窓の大きさと、作製される異なった大きさの角錐が醸し出す再帰反射光分布を最適化すべく設定することができる。窓10Fは、「キャップY」ないし非金属化及び金属化した再帰反射(non-metallized and metallized retroreflections)のホワイト値の調節ができるようにする効果を有している。」(第24頁第24行?第25頁第4行)

5 引用発明1との対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。

(ア)再帰反射性シート
引用発明1の「キューブコーナー型再帰反射プリズムシート」は、技術的にみて、本件発明1の「再帰反射性シート」に相当する。

(イ)構造化表面
引用発明1の「1つの頂点と3つの稜線により区画されてなる3つの直交反射側面(a面,b面,およびc面)からなるキューブコーナー素子」は、技術的にみて、本件発明1の「キューブコーナー素子」に相当する。また、引用発明1の「該キューブコーナー素子の頂点の一部が切取られ非直交反射側面(d面)が設置された切頭型キューブコーナー素子」は、頂点の一部が剪断されたものといえる。そうすると、引用発明1の「該キューブコーナー素子の頂点の一部が切取られ非直交反射側面(d面)が設置された切頭型キューブコーナー素子」と本件発明1の「熱的に剪断されたキューブコーナー素子」とは、「剪断されたキューブコーナー素子」である点で共通する。
引用発明1の「キューブコーナー型再帰反射プリズムシート」は、「1つの頂点と3つの稜線により区画されてなる3つの直交反射側面(a面,b面,およびc面)からなるキューブコーナー素子」と「該キューブコーナー素子の頂点の一部が切取られ非直交反射側面(d面)が設置された切頭型キューブコーナー素子」とが配置されることにより、構造化された表面を有するといえる。そうすると、引用発明1の「キューブコーナー型再帰反射プリズムシート」は、本件発明1の「再帰反射性シート」における、「キューブコーナー素子を含む構造化表面であって、該キューブコーナー素子の少なくとも一部は」、「剪断されたキューブコーナー素子である、構造化表面を含み」とする要件を満たしている。

(ウ)一致点及び相違点
以上より、本件発明1と引用発明1とは、
「再帰反射性シートであって、
キューブコーナー素子を含む構造化表面であって、該キューブコーナー素子の少なくとも一部は、剪断されたキューブコーナー素子である、構造化表面を含む再帰反射性シート。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-1]「剪断されたキューブコーナー素子」が、本件発明1は、「熱的に」剪断されたキューブコーナー素子であるのに対し、引用発明1は、「キューブコーナー素子の頂点の一部」がどのように「切取られ」たものであるかを特定していない点。
[相違点1-2]「剪断されたキューブコーナー素子」が、本件発明1は、「複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキングを形成している」のに対し、引用発明1は、「切頭型キューブコーナー素子が2種類以上設置されている」ものの、「複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキング」を形成しているか明らかでない点。

イ 判断
事案に鑑みて、[相違点1-2]について検討する。
引用文献1には、「本発明でいう面積率とは、素子集合体の面積に対する素子集合体の中に含まれる非直交反射側面の面積の合計の比率をいう。」(段落【0015】)「非直交反射側面が形成されたキューブコーナー型再帰反射素子は、正規のキューブコーナー型再帰反射素子に比べ、内部からの光を透過する代わりに外部からの光に対する再帰反射性が劣るものである。」(段落【0016】)、「本発明では、さらに面積率を10?60%、特に15?50%とするのが、外部からの光に対する再帰反射性と内部からの光の透過性のバランスが良くする上で好ましい。」(段落【0018】)、「本発明においては、一つの素子の非直交反射側面(d面)の面積と、その素子の底面の面積の比率(以下、切頭率という)の違う素子を混在させることが、キューブコーナー型再帰反射プリズムシートの輝度の広角性の優れた再帰反射素子を得るために好ましく、切頭率の異なる切頭型キューブコーナー素子が2種類以上設置されていることが好ましい。」(段落【0020】)と記載されている。当該記載に基づけば、引用発明1における2種類以上の「非直交反射側面(d面)の面積が異なる切頭型キューブコーナー素子」は、「キューブコーナー型再帰反射プリズムシートの輝度の広角性の優れた再帰反射素子を得るため」に「混在」させて用いられるものである。そうすると、引用文献1には、「非直交反射側面(d面)の面積が異なる切頭型キューブコーナー素子」を用いて「複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキング」を構成することが、記載又は示唆されていたということはできず、「複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキング」を構成する動機付けがあるとはいえない。
(当合議体注:「切頭型キューブコーナー素子」の個々のグレー値は、「非直交反射側面(d面)の面積」に応じて異なると考えられる。しかしながら、これらを「混在」させて得られる「マーキング」は、混在の結果の「グレー」値を持つ「マーキング」にとどまる。「複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキング」を得るためには「混在」を不均一とする必要があると考えられるが、「輝度の広角性の優れた再帰反射素子を得るため」の「混在」は、均一と考えるのが自然である。)
また、引用文献5には、記載事項イに「光学的可変マーク450は、光学的可変マーク要素1?13の線形配列を有し、それぞれの光学的可変マーク要素は、関連する視覚的特徴(一般的にグレースケールシェーディングとして示される)を有し、これは、隣接する光学的可変マーク要素に関連付けられた対応する視覚的特徴を視覚的に区別する。」と記載されているものの、2種類以上の「切頭型キューブコーナー素子」を用いて複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキングを構成することについて何ら記載されていない。また、引用文献6には、記載事項イに「再帰反射部域」について「所望の背面光」が得られるように調整すること、「ホワイト値の調節ができるようにする」ことが記載されているものの、切頭型キューブコーナー素子を用いて「複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキング」を構成することについて、何ら記載されていない。
そうすると、「切頭型キューブコーナー素子」を用いて「複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキング」を構成することについては、何れの文献にも記載されておらず、当業者にとって自明であったということもできない。したがって、当業者であったとしても、引用発明1に基づいて、相違点1-2に係る本件発明1の構成を採用することが、容易になし得たということができない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、[相違点1-1]について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明できたものではない。

(2)本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1と同じ、「該熱的に剪断されたキューブコーナー素子は、複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキングを形成している」とする要件を具備している。そうすると、本件発明2?4も、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明できたものではない。

(3)本件発明5について
本件発明5は、「再帰反射性シート」に関する発明であって、「キューブコーナー素子が、熱的な剪断の程度に応じた複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキングを形成している」とする要件を具備しており、本件発明1の「該熱的に剪断されたキューブコーナー素子は、複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキングを形成している」とする要件に対応するものである。そうすると、本件発明5も、本件発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明できたものではない。

6 引用発明2との対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明2とを対比する。

(ア)再帰反射性シート
引用発明2の「キューブコーナー再帰反射シート」は、技術的にみて、本件発明1の「再帰反射性シート」に相当する。

(イ)構造化表面
引用発明2の「キューブコーナー再帰反射シート」は、技術的にみて、「キューブコーナー」を有する構造化表面を有するといえる。そして、引用発明2の「キューブコーナー」は、本件発明1の「キューブコーナー素子」に相当する。
そうすると、引用発明2の「キューブコーナー再帰反射シート」は、本件発明1の「キューブコーナー素子を含む構造化表面」を含むとする要件を満たしている。

(ウ)グレースケールマーキング
引用発明2の「巨視的パターン」と本件発明1の「グレースケールマーキング」とは、「マーキング」である点で共通する。
そして、引用発明2の「巨視的パターン」は、「キューブコーナー再帰反射シート上に、不活性領域124が配置され、拡散反射スポット126が不活性領域124のいくつかに選択的に適用されて」形成されるものである。そうすると、引用発明2の「巨視的パターン」は、「キューブコーナー」に「不活性領域124」が配置され、「拡散反射スポット126」が「不活性領域124」に選択的に適用されて形成されるものであるから、引用発明2の「巨視的パターン」は、「不活性領域124」が配置され、「拡散反射スポット126」が「不活性領域124」に選択的に適用された「キューブコーナー」によって形成されているといえる。したがって、引用発明2の「キューブコーナー」は、本件発明1の「マーキングを形成している」との要件を満たしている。

(エ)一致点及び相違点
以上より、本件発明1と引用発明2とは、
「再帰反射性シートであって、
キューブコーナー素子を含む構造化表面を含み、
キューブコーナー素子は、マーキングを形成している、再帰反射性シート。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点2]本件発明1は、キューブコーナー素子の少なくとも一部が「熱的に剪断されたキューブコーナー素子」であり、「熱的に剪断されたキューブコーナー素子」が「複数の中間グレースケール値」を含む「グレースケール」マーキングを形成するのに対し、引用発明2は、「ハーフトーン画像に拡散反射スポット126を配置する」ものであって、「熱的に剪断されたキューブコーナー素子」が「複数の中間グレースケール値」を含む「グレースケール」マーキングを形成するものでない点。

イ 判断
上記[相違点2]について検討すると、引用発明2の「ハーフトーン画像」は、「キューブコーナー再帰反射シート上に、不活性領域124が配置され」て形成されるものである。また、引用発明2の「巨視的パターン」は、「拡散反射スポット126が不活性領域124のいくつかに選択的に適用されて」形成されるものである。
引用文献2には、「不活性領域」について、記載事項イに「「不活性領域」内の構造化表面に衝突する光線は、さらには進まず、幾何学的構造の他の2つの反射面両方に衝突しない。キューブコーナー素子の場合、この状態は、再帰反射光内の暗い外観によって一般に表される。」(段落【0017】)と記載されている。当該記載に基づけば、引用発明は、「不活性領域124」によって、「再帰反射光内の暗い外観」を作りだし、「ハーフトーン画像」を形成していることが理解できる。
また、引用文献2には、「スポット」について、記載事項イに「鏡面反射面とは異なる屈折率特性を有する複数のスポットが各々の先端から離間配置されている。・・・スポットは、製品の白色度を強化するために拡散反射することが好ましく、・・・、または特定のパターンを画定するように分布させることができる。」(段落【0010】)及び「マーキングステップは、1つまたは複数の第1不活性領域に限定されるスポットで、構造化表面を選択的に変更することを含むことができる。」(段落【0012】)と記載され、記載事項ウに「不活性領域16内に位置する拡散反射スポット22を含むように変更した。スポット22は、粗くした表面組織、つまりこの表面組織上に入射する光線を多くの異なる方向に散乱させる品質を有する。」及び「スポット22は、幾何学的構造のサイズに応じて構造化表面2に添着される塗料、パターン化フォトレジストまたはその他の適切な拡散材料のスポットから構成できる。」(段落【0019】)、「スポット22は、入射光をあらゆる方向に反射するため、これらのスポットが適用される再帰反射シートの白色度を強化する。」(段落【0020】)と記載され、記載事項エに「活性領域26および30がスポット48を侵食することを示す。当然、スポット48に重なる領域26、30の部分26a、30aは、少なくとも部分的に不活性になる。なぜなら、これらの位置に衝突する光線は、多くの異なる方向に拡散反射し、したがって効率的に再帰反射されないからである。重複部分26a、30aにより、照明方向36、42に対する再帰反射光はわずかに暗くなる。したがって、スポット48は、再帰反射器の白色度を強化するほか、指向性のパターンまたは画像を形成するために使用することができる。つまり、スポット48は、ある照明角度における再帰反射率を悪化させるが、他の照明角度の再帰反射率は悪化させないからである。選択した交点20に配置される複数のスポット48は、所望のパターンまたはハーフトーン画像を構成する個々のピクセルとして作用する。」(段落【0026】)と記載されている。これらの記載に基づけば、引用発明は、「拡散反射スポット126」によって、入射光をあらゆる方向に反射させ、「白色度を強化」し、「特定のパターン」を作り出していることが理解でき、活性領域と重複させることにより「所望のパターンまたはハーフトーン画像を構成する個々のピクセル」として作用させることが可能なことが理解できる。
しかしながら、引用文献2には、上記「不活性領域」及び「スポット」以外の手段によって「パターン」又は「ハーフトーン画像」を形成することについて何ら開示がない。
(当合議体注:「不活性領域」ないし「スポット」は、先端から離間配置されるものであり、熱的な剪断により形成されるものではない。)
また、「熱的に剪断されたキューブコーナー素子」によって「複数の中間グレースケール値」を含む「グレースケール」マーキングを形成することが周知技術であったということもできない。原査定の拒絶理由において、「再帰反射性シートにおいて、トーンや明るさの調節等が可能な切頭によりパターンを形成する手法」が周知であることを示す文献としても引用された引用文献1には、2種類以上の「非直交反射側面(d面)の面積が異なる切頭型キューブコーナー素子」が記載されているものの、前記5(1)イに記載したとおり、「キューブコーナー型再帰反射プリズムシートの輝度の広角性の優れた再帰反射素子を得るため」に「混在」させて用いられるものであり、「非直交反射側面(d面)の面積が異なる切頭型キューブコーナー素子」を用いて「グレースケールマーキング」を構成するものでなく、トーンや明るさを調整するものでもない。また、引用文献4には、記載事項アに「光源を含み、その前方に再帰反射シートを含むライセンスプレートが配置されているライセンスプレート組立体」(段落[0001])に関する発明が記載されており、記載事項イに「熱および/または圧力を適用することによってそのプリズム要素の上部を変形させることによって製造される」、「切頭プリズム要素」(段落[0051])も記載されているが、「グレースケールマーキング」について何ら記載も示唆もない。さらに、引用文献5及び引用文献6にも、前記5(1)イに記載したとおり、「切頭型キューブコーナー素子」を用いて「グレースケールマーキング」を構成することについて記載されていない。
そうすると、引用発明2に、引用文献1、4?6に記載された技術事項を組み合わせたとしても、本件発明1の構成には至らない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、当業者であっても、引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明できたものではない。

(2)本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1と同じ、「該熱的に剪断されたキューブコーナー素子は、複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキングを形成している」とする要件を具備している。そうすると、本件発明2?4も、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明できたものではない。

(3)本件発明5について
本件発明5は、「再帰反射性シート」に関する発明であって、「キューブコーナー素子が、熱的な剪断の程度に応じた複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキングを形成している」とする要件を具備しており、本件発明1の「該熱的に剪断されたキューブコーナー素子は、複数の中間グレースケール値を含むグレースケールマーキングを形成している」とする要件に対応するものである。そうすると、本件発明5も、本件発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明できたものではない。

7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-09-29 
出願番号 特願2015-555179(P2015-555179)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池田 博一  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 関根 洋之
宮澤 浩
発明の名称 変形キューブコーナー素子を有する再帰反射性シート  
代理人 野村 和歌子  
代理人 浅村 敬一  
代理人 赤澤 太朗  
代理人 佃 誠玄  

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