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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1366772
審判番号 不服2019-9461  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-16 
確定日 2020-10-02 
事件の表示 特願2017-20202号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月16日出願公開、特開2018-126244号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成29年2月7日の出願であって、平成30年9月13日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月15日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成31年4月17日付けで拒絶査定がなされた。これに対し令和1年7月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対して、令和2年2月27日付けで当審において拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年4月15日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年4月15日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A?Dは、本願発明を分説するため当審で付与した。)。

(本願発明)
「【請求項1】
A 識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示可能な表示手段と、この表示手段を制御する制御手段とを備え、
B 前記制御手段は、
B1 前記表示手段の表示領域に、
B11 未実施の前記変動表示ゲームの回数をアイコンの個数で示す保留表示と、
B12 未実施の前記変動表示ゲームの回数を数値で示す保留数表示と、
B13 前記変動表示ゲームの進行に応じて一方向に数値が変化する数値表示と、を表示可能であり、
B2 前記表示手段の表示領域における前記識別情報を表示している範囲を含む対象の領域の画像が2次元的または3次元的に所定の角度に回転しつつ縮小する縮小表示演出を実行可能であり、
C 前記縮小表示演出において、
C1 前記数値表示は、当該縮小表示演出の縮小割合に対応する大きさで表示されるとともに、当該縮小表示演出の表示角度に対応する角度で表示され、
C2 前記保留数表示は、当該縮小表示演出の縮小割合に影響されない大きさで表示されるとともに、当該縮小表示演出の表示角度に影響されない角度で表示されることを特徴とする
D 遊技機。」

3 拒絶の理由の概要
当審拒絶理由の概要は、令和1年7月16日に提出された手続補正書により補正がされた請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載の発明及び引用文献2記載の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものである、または、引用文献1に記載の発明、引用文献2記載の事項及び引用文献3記載の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特許第5953543号公報
引用文献2:特開2016-71号公報
引用文献3:特開2016-34567号公報

4 引用文献に記載された事項

(1) 引用文献1
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用文献1には、「遊技台」の発明に関し、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

ア 「【0009】
[第1の実施の形態]
以下、図面を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る遊技台(例えば、パチンコ機等の弾球遊技機やスロットマシン等の回胴遊技機)について説明する。まず、図1を用いて、本実施の形態によるパチンコ機100の全体構成について説明する。なお、同図はパチンコ機100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図である。パチンコ機100は、外部的構造として、外枠102と、本体104と、前面枠扉106と、発射装置110と、遊技盤200と、をその前面に備える。
・・・
【0015】
遊技盤200は、前面に遊技領域124を有し、本体104の空間部114に臨むように、所定の固定部材を用いて本体104に着脱自在に装着されている。・・・
・・・
【0021】
図3は、遊技盤200を正面から見た略示正面図である。遊技盤200には、外レール202と内レール204とを配設し、遊技球が転動可能な遊技領域124を区画形成している。遊技領域124の略中央には、演出装置206を配設している。演出装置206には、略中央に装飾図柄表示装置208を配設している。演出装置206は、演出可動体224を動作して演出を行うものであり、詳細については後述する。
・・・
【0024】
装飾図柄表示装置208は、装飾図柄ならびに演出に用いる様々な画像(動画像または静止画像)を表示するための表示装置であり、本実施の形態では液晶表示装置(Liquid Crystal Display)によって構成する。装飾図柄表示装置208は、左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cおよび演出表示領域208dの4つの表示領域に分割し、左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208bおよび右図柄表示領域208cはそれぞれ異なった装飾図柄を表示し、演出表示領域208dは演出に用いる画像を表示する。・・・」

イ 「【0039】
次に、図4を用いて、このパチンコ機100の制御部の回路構成について詳細に説明する。なお、同図は制御部の回路ブロック図を示したものである。パチンコ機100の制御部は、大別すると、遊技の中枢部分を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンド信号(以下、単に「コマンド」という)に応じて主に演出の制御を行う第1副制御部400と、第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500と、主制御部300が送信するコマンドに応じて主に遊技球の払出しに関する制御を行う払出制御部600と、遊技球の発射制御を行う発射制御部630と、パチンコ機100に供給される電源を制御する電源制御部660と、によって構成している。
・・・
【0047】
次に、パチンコ機100の第1副制御部400について説明する。第1副制御部400は、主に主制御部300が送信したコマンド等に基づいて第1副制御部400の全体を制御する基本回路402を備えている。基本回路402には、CPU404と、一時的にデータを記憶するためのRAM408と、各種デバイスの入出力を制御するためのI/O410と、時間や回数等を計測するためのカウンタタイマ412とを搭載している。この基本回路402のCPU404は、水晶発振器414が出力する所定周期のクロック信号をシステムクロックとして入力して動作する。また、基本回路402には、制御プログラムや各種演出データを記憶するためのROM406が設けられている。なお、ROM406は、制御プログラムと各種演出データとを別々のROMに記憶させてもよい。
【0048】
また、基本回路402には、スピーカ120(およびアンプ)の制御を行うための音源IC(S-ROM)416と、各種ランプ418(例えば、チャンスボタンランプ138)の制御を行うための駆動回路420と、遮蔽装置246の駆動制御を行うための駆動回路432と、遮蔽装置246の現在位置を検出する遮蔽装置センサ430と、チャンスボタン136の押下を検出するチャンスボタンセンサ426と、スピーカ120から出力される音量を調整する音量調整スイッチ161(図4では図示せず)と、設定操作部137の各ボタンの押下を検出する操作部センサ(図示せず)と、これらのセンサからの検出信号を基本回路402に出力するセンサ回路428と、CPU404からの信号に基づいてROM406に記憶された画像データ等を読み出してVRAM436のワークエリアを使用して表示画像を生成して装飾図柄表示装置208に画像を表示するVDP(ビデオ・ディスプレイ・プロセッサ)434と、を接続している。」

ウ 「【0060】
図5(c)は装飾図柄の一例を示したものである。本実施形態の装飾図柄には、「装飾1」?「装飾10」の10種類がある。「装飾1」?「装飾9」および「装飾10」は、それぞれ数字の「1」?「9」および「0」を表している。特図1始動口230または特図2始動口232に球が入賞したこと、すなわち、特図1始動口230に球が入球したことを第1始動口センサが検出したこと、あるいは特図2始動口232に球が入球したことを第2始動口センサが検出したことを条件にして、装飾図柄表示装置208の左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cの各図柄表示領域に、「装飾1」→「装飾2」→「装飾3」→・・・→「装飾9」→「装飾10」→「装飾1」→・・・の順番で表示を切り替える「装飾図柄の変動表示」を行う。」

エ 「【0115】
これらの特図関連抽選処理についても、主制御部300が特図2関連抽選処理を特図1関連抽選処理よりも先に行うことで、特図2変動遊技の開始条件と、特図1変動遊技の開始条件が同時に成立した場合でも、特図2変動遊技が先に変動中となるため、特図1変動遊技は変動を開始しない。また、特図2変動遊技の保留数が1以上の場合には、特図1変動遊技の保留に関する抽選処理や変動遊技は行われない。また、装飾図柄表示装置208による、特図変動遊技の当否判定の結果の報知は、第1副制御部400によって行われ、特図2始動口232への入賞に基づく抽選の抽選結果の報知が、特図1始動口230への入賞に基づく抽選の抽選結果の報知よりも優先して行われる。本実施の形態では、有利度の高い特図変動遊技(本例では特図2変動遊技)が有利度の低い特図変動遊技(本例では特図1変動遊技)よりも優先して行われる。このため、遊技状態の有利度に差を持たせ易くなる場合がある。」

オ 「【0213】
次に、本実施の形態によるパチンコ機100において実行される演出の具体例について説明する。
・・・
【0216】
また、各図における装飾図柄表示装置208の演出表示領域208dの左下の正方形の枠で囲まれた領域は、変動アイコンを表示可能な変動アイコン表示領域800になっている。・・・
【0217】
また、図16(a)に例示するように、演出表示領域208dの下部であって変動アイコン表示領域800の右側に隣接する横長の長方形の仮想の破線枠で囲まれた領域は、特図1保留アイコンと当該特図1保留アイコンを載置するように視認させる特図1台座画像900とを表示可能な特図1保留アイコン表示領域になっている。・・・
【0218】
特図1保留アイコン表示領域では、1つまたは複数の特図1保留アイコンを表示することが可能である。特図1保留アイコン表示領域では、特図1保留アイコンの個数によって特図1変動遊技の保留数を報知することが可能であるとともに、・・・
【0219】
特図1台座画像(以下、「特図1台座」と略称する場合がある)900は横長の長方形形状を有している。本例の特図1台座900は最大4つの特図1保留アイコンを載置するように表示可能であり、左から右に向かって、第1領域、第2領域、第3領域、第4領域の4つの領域に大まかに分かれている。第1?第4の各領域は、それぞれ1番目?4番目の保留順位に対応している。・・・本例では、特図1台座900の第1?第4領域にそれぞれ数字1?4が表示されており、表示された数字によって第1?第4領域の位置が明示されているが、・・・
・・・
【0226】
・・・特図1保留アイコン表示領域の特図1台座900の第1領域には特図1保留アイコン901が表示されている。・・・」

カ 「【0301】
(実施例5)
図21および図22は、本実施の形態の実施例5における演出表示の例を示している。図21(a)?(l)および図22(a)?(f)は、この順に時系列に並んで各時点毎の演出表示状態を示している。図21(a)?(l)および図22(a)?(f)の各図に示す構成は実施例1の図16(a)に示す構成と同一であり、また同一の動作および作用効果を奏するので、それらには同一の符号を付して説明は省略する。
・・・
【0303】
本実施例では、いわゆるシェイクビジョンを利用した画像表示による演出表示について説明する。シェイクビジョンでは、非シェイク状態の画像表示とシェイク状態の画像表示とを実行可能である。非シェイク状態は、例えば装飾図柄表示装置208の画像表示領域内の通常の長方形(または正方形)の表示領域の内部に複数の画像が表示されている状態である。シェイク状態は、非シェイク状態における長方形(または正方形)の表示領域を菱形(または台形)の表示領域に変形させることに応じて内部の複数の画像も変形させて表示させた状態である。・・・
・・・
【0309】
図21(c)は、非シェイク状態からシェイク状態に変更された状態を示している。画像表示領域を画定する枠表示は、シェイク状態での表示態様(第三の表示態様)として表示画面内で菱形状に表示されている。表示画面内の菱形形状枠の外部は黒表示がされている。また、枠内部の複数の画像の表示は、シェイク状態での表示態様(第四の表示態様)として、枠表示の変形に応じて変形させて表示されている。具体的には、画像表示領域を画定する枠表示はシェイク表示により右方よりも左方の方が奥まっているような表示がされている。画像表示領域を画定する枠表示がシェイク表示に変形された影響を受けて第二の表示としての例えば特図1保留アイコン903の表示が右方よりも左方の方が奥まっているように変形されて表示されている。また、変動中の装飾図柄、変動アイコン801および特図1台座900も画像表示領域を画定する枠表示がシェイク表示に変形された影響を受けて右方よりも左方の方が奥まっているような表示がされている。また、画像表示領域の上方左端に特図1の保留アイコンの数の画像を内方に示す白色正方形の画像(以下、「保留アイコン数表示」と称する場合がある)が表示されて特図1の保留アイコンの数が1であることを示している。また、特図1変動表示開始直後の低速の装飾図柄は、枠表示の変形に応じて変形させて表示されて、右方よりも左方の方が奥まっているような表示がされている。
・・・
【0311】
図21(e)は、シェイク状態から非シェイク状態に変更された状態を示している。画像表示領域を画定する枠表示は、非シェイク状態での表示態様(第一の表示態様)として表示画面一杯の長方形状に表示されている。また、枠内部の複数の画像の表示は、非シェイク状態での表示態様(第二の表示態様)として、無変形の通常表示がされている。例えば、特図1保留アイコン903の表示は通常の円形の形状で表示されている。本実施例では、非シェイク状態では保留アイコン数表示はされないが、常時表示するようにしてもよい。
【0312】
図21(f)?(k)は、特図1変動遊技が実行中であり、画像表示領域を画定する枠表示が第一の表示態様である非シェイク状態から第三の表示態様であるシェイク状態になってから、シェイク状態を継続させている状態を示している。」

キ 図4から、第1副制御部400はVDP434を備えることを見て取ることができる。

【図4】


ク 図21(c)から、画像表示領域の上方左端の白色正方形の画像内の表示は、数字であることを見て取ることができる。

【図21】


ケ 「画像表示領域を画定する枠表示がシェイク状態になる(【0312】)」図21(e)以降の、図21(f)?(k)から、画像表示領域を画定する枠表示のすべての頂点が装飾図柄表示装置208の画像表示領域の内部に表示されて枠の外部に黒表示がされて枠表示は縮小状態となり、枠表示内の装飾図柄表示装置208の左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cの各図柄表示領域の「装飾図柄」、及び枠表示内の特図1台座900に表示される数字1?4もまた縮小状態となることを見て取ることができる。

コ 図21(c)?(d)、(f)?(k)から、保留アイコン数表示は、画像表示領域を画定する枠表示がシェイク表示に変形され表示画面内で菱形状に表示されたときには略正方形の表示態様で菱形形状枠とは別に左上に表示され、表示画面内の菱形形状枠の外部に黒表示がされて菱形形状枠が変形しても、略正方形の同じ表示態様で菱形形状枠とは別に左上に表示されることを見て取ることができる。

そして、上記記載事項ア?カに記載された事項及び図面に記載された事項キ?コを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?dは、本願発明のA?Dに対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内に示された段落番号は、引用文献1における引用箇所を示す。)。

(引用発明)
「a 遊技盤200をその前面に備え(【0009】)、
遊技盤200は、前面に遊技領域124を有し(【0015】)、
遊技領域124の略中央には、演出装置206を配設し、演出装置206には、略中央に装飾図柄表示装置208を配設し(【0021】)、
装飾図柄表示装置208は、装飾図柄ならびに演出に用いる様々な画像(動画像または静止画像)を表示するための表示装置であり(【0024】)、
装飾図柄表示装置208の左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cの各図柄表示領域に装飾図柄の変動表示を行い(【0060】)、制御部は、遊技の中枢部分を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンド信号に応じて演出の制御を行う第1副制御部400と、各種機器を制御する第2副制御部500と、払出制御部600と、発射制御部630と、電源制御部660と、によって構成し(【0039】)、
装飾図柄表示装置208による、特図変動遊技の当否判定の結果の報知は、第1副制御部400によって行われ(【0115】)、
第1副制御部400は、第1副制御部400の全体を制御する基本回路402を備え、基本回路402には、CPU404を搭載し、基本回路402には、制御プログラムや各種演出データを記憶するためのROM406が設けられ(【0047】)、
第1副制御部400はVDP434を備え(図4)、VDP434は、CPU404からの信号に基づいてROM406に記憶された画像データ等を読み出して装飾図柄表示装置208に画像を表示し(【0048】)、

b11 装飾図柄表示装置208の演出表示領域208dの下部領域は、特図1保留アイコンと当該特図1保留アイコンを載置するように視認させる特図1台座画像900とを表示可能な特図1保留アイコン表示領域になっており(【0216】、【0217】)、
特図1保留アイコン表示領域では、1つまたは複数の特図1保留アイコンを表示することが可能であり(【0218】)、
特図1保留アイコン表示領域の特図1台座900は最大4つの特図1保留アイコンを載置するように表示可能であり、特図1台座900の第1?第4領域にそれぞれ数字1?4が表示されており、表示された数字によって第1?第4領域の位置が明示され(【0219】、【0226】)、

b12 画像表示領域の上方左端に特図1の保留アイコンの数の画像を内方に示す白色正方形の画像(以下、「保留アイコン数表示」と称する)が表示され(【0309】)、
画像表示領域の上方左端の白色正方形の画像内の表示は、数字であり(図21(c))、
非シェイク状態では保留アイコン数表示はされなくてもよく、保留アイコン数表示は常時表示するようにしてもよく(【0311】)、

b2 非シェイク状態の画像表示とシェイク状態の画像表示とを実行可能であり、シェイク状態は、非シェイク状態における長方形の表示領域を菱形の表示領域に変形させて表示させた状態であり(【0303】)、
非シェイク状態からシェイク状態に変更された状態では、画像表示領域を画定する枠表示は、シェイク状態での表示態様として表示画面内で菱形状に表示され、表示画面内の菱形形状枠の外部は黒表示がされ、また、枠内部の複数の画像の表示は、シェイク状態での表示態様として、枠表示の変形に応じて変形させて表示され、画像表示領域を画定する枠表示はシェイク表示により右方よりも左方の方が奥まっているような表示がされ(【0309】)、
画像表示領域を画定する枠表示がシェイク表示に変形された影響を受けて特図1保留アイコン903の表示が右方よりも左方の方が奥まっているように変形されて表示され、また、変動中の装飾図柄および特図1台座900も画像表示領域を画定する枠表示がシェイク表示に変形された影響を受けて右方よりも左方の方が奥まっているような表示がされ(【0309】)、
画像表示領域を画定する枠表示は、非シェイク状態での表示態様として表示画面一杯の長方形状に表示され(【0311】)、
画像表示領域を画定する枠表示がシェイク状態になると(【0312】)、 画像表示領域を画定する枠表示のすべての頂点が装飾図柄表示装置208の画像表示領域の内部に表示されて枠の外部に黒表示がされて枠表示は縮小状態となり、枠表示内の装飾図柄表示装置208の左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cの各図柄表示領域の「装飾図柄」、及び枠表示内の特図1台座900に表示される数字1?4もまた縮小状態となり(図21(e)?(l))、

c2 保留アイコン数表示は、画像表示領域を画定する枠表示がシェイク表示に変形され表示画面内で菱形状に表示されたときには略正方形の表示態様で菱形形状枠とは別に左上に表示され、表示画面内の菱形形状枠の外部に黒表示がされて菱形形状枠が変形しても、略正方形の同じ表示態様で菱形形状枠とは別に左上に表示される(図21(c)?(d)、(f)?(k))、

d パチンコ機100(【0009】)。」

(2) 引用文献2
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用文献2には、図面と共に以下の事項が記載されている。

ア 「【0010】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の遊技機の一実施形態に係るパチンコ遊技機1について説明する。
【0011】
[パチンコ遊技機の基本構成]
まず、図1又は図2を参照しつつ、パチンコ遊技機1の各構成について説明する。・・・
・・・
【0024】
[パチンコ遊技機の演出手段の構成]
図1に示すように、遊技盤2又は枠部材3には、各種の演出を行うものとして、液晶表示器5、可動役物7、スピーカ24、盤ランプ25、及び、回転演出装置38,39が設けられている。また、枠部材3には、図1には示されていない枠ランプ37(図4参照)が内蔵されている。
【0025】
液晶表示器5は、演出画像を表示する画像表示装置であり、遊技者によって視認され易い位置に設けられている。液晶表示器5には、例えば、特別図柄判定の判定結果を報知する装飾図柄、予告演出などを行うキャラクタやアイテム、特別図柄判定が保留されている数だけ表示される保留画像等の各種表示オブジェクトを含む演出画像が表示される。なお、画像表示装置は、EL表示装置等の他の種類の画像表示装置によって構成されてもよい。」

イ 「【0040】
以下、図4を参照しつつ、パチンコ遊技機1の制御装置の構成について説明する。ここで、図4は、パチンコ遊技機の制御装置の構成例を示すブロック図である。図4に示すように、パチンコ遊技機1の制御装置は、判定(抽選)の実行や大当たり遊技の制御、演出制御部130へのコマンド送信処理等を制御する遊技制御部100、遊技制御部100から受信したコマンドに基づいて演出を統括的に制御する演出制御部130、画像や音による演出を制御する画像音響制御部140、及び、各種のランプや可動役物7による演出を制御するランプ制御部150を備えている。・・・
・・・
【0057】
演出制御部130は、演出制御部100(当審注:当該「演出制御部100」は「遊技制御部100」の明らかな誤記である。)から送られる特別図柄判定の結果等を示すデータに基づいて、演出内容を設定する。その際、演出ボタン26又は演出キー27からの操作情報を受け付けて、その操作情報に応じた演出内容を設定する場合もある。演出制御部130は、設定した演出内容の演出の実行を指示するコマンドを画像音響制御部140及びランプ制御部150に送信する。
【0058】
[画像音響制御部の構成]
画像音響制御部140は、CPU141、ROM142、及び、RAM143を備えている。CPU141は、ROM142に記憶されたプログラムに基づいて、演出内容を表現する画像を制御する際の演算処理を行う。図に示されていないが、画像音響制御部140は、液晶表示器5に表示される演出画像を生成するVDP(Video Display Processor)、及び、スピーカ24から出力される音響データを生成する音響DSP(Digital Signal Processor)を備えている。CPU141は、演出制御部130からのコマンド及びROM142に記憶されているプログラムに基づいて、制御信号を生成してVDP及び音響DSPに出力し、VDP及び音響DSPの動作を制御する。」

ウ 「【0087】
これに対して、第1特別図柄判定の結果が大当たりと判定されているが、図柄揃い大当たりではない場合、つまり潜伏確変大当たり又は2R通常大当たりと判定されている場合は、第1特別図柄表示器41には潜伏確変大当たりに対応する判定図柄(大当たり図柄X3)又は2R通常大当たりに対応する判定図柄(大当たり図柄X4)が表示され、液晶表示器5においては、図8(a)に示すように、所定の位置(例えば、液晶表示器5の中央)に特定図柄57が停止表示される。ここで、特定図柄57は、通常スクロール表示される装飾図柄51とは異なる図柄であり、例えば、図8(a)に示すような所定の図形やキャラクタ等の画像が用いられる。
【0088】
特定図柄57が停止表示された場合は、大当たり遊技後(短開放ラウンド遊技が行われた後)の特別図柄の変動開始から、図8(b)に示すように、通常モードの背景画像(通常遊技状態において通常用いられる背景画像又は高確時短遊技状態において通常用いられる背景画像)とは異なる背景画像を用いた特定モードに移行する。すなわち、本実施形態では、潜伏確変大当たりと2R通常大当たりの何れが判定された場合にも、特定図柄57が停止表示されて大当たり遊技が行われ、その後の特別図柄の変動開始から特定モードに移行する。そして、特定モードでは、特定モードに移行してからの特別図柄の変動回数が所定回数(例えば、30回)に達するまで、当該特定モードが行われる残りの期間(以下、特定期間ともいう)を報知する演出(以下、特定期間報知演出ともいう)が行われる。特定期間報知演出では、特定期間をカウントダウン形式(30→29…)で報知する。つまり、特定モードでは、特別図柄の変動回数が所定回数に到達すれば、特定期間報知演出によって特定期間が「0」と報知され、次回の特別図柄の変動から通常モードにて演出が制御されるか、特定モードが継続する。・・・」

エ 特定モードである図8(b)(【0088】参照)から、特定モードでは、液晶表示器5に装飾図柄及び保留画像とともに特定期間(左上に表示された「29」)を表示することを見て取ることができる。

【図8】


そして、上記記載事項ア?ウに記載された事項及び図面に記載された事項エを総合すると、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2記載の事項」という。)が記載されていると認められる(a?eは、本願発明のA?Eに対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内に示された段落番号は、引用文献2における引用箇所を示す。)。

(引用文献2記載の事項)
「a 液晶表示器5が設けられ(【0024】)、
液晶表示器5は、特別図柄判定の判定結果を報知する装飾図柄を含む演出画像が表示され(【0025】)、
判定(抽選)の実行や大当たり遊技の制御、演出制御部130へのコマンド送信処理等を制御する遊技制御部100、遊技制御部100から受信したコマンドに基づいて演出を統括的に制御する演出制御部130、画像による演出を制御する画像音響制御部140を備え(【0040】)、
演出制御部130は、遊技制御部100から送られる特別図柄判定の結果等を示すデータに基づいて、演出内容を設定し、設定した演出内容の演出の実行を指示するコマンドを画像音響制御部140に送信し(【0057】)、
画像音響制御部140は、CPU141、ROM142を備え、CPU141は、ROM142に記憶されたプログラムに基づいて、演出内容を表現する画像を制御する際の演算処理を行い(【0058】)、
画像音響制御部140は、液晶表示器5に表示される演出画像を生成するVDPを備え、CPU141は、演出制御部130からのコマンド及びROM142に記憶されているプログラムに基づいて、制御信号を生成してVDPに出力し、VDPの動作を制御し(【0058】)、

b11 液晶表示器5は、特別図柄判定が保留されている数だけ表示される保留画像等の各種表示オブジェクトを含む演出画像が表示され(【0025】)、

b13 潜伏確変大当たり又は2R通常大当たりと判定されている場合は、液晶表示器5の中央に特定図柄57が停止表示され(【0087】)、
特定図柄57が停止表示された場合は、大当たり遊技後の特別図柄の変動開始から、通常モードの背景画像とは異なる背景画像を用いた特定モードに移行し、特定モードでは、特定モードに移行してからの特別図柄の変動回数が所定回数(30回)に達するまで、当該特定モードが行われる残りの期間(以下、特定期間ともいう)を報知する演出(以下、特定期間報知演出ともいう)が行われ、特定期間報知演出では、特定期間をカウントダウン形式(30→29・・・)で報知し(【0088】)、
特定モードでは、液晶表示器5に装飾図柄及び保留画像とともに特定期間を表示する(図8(b))、

d パチンコ遊技機1(【0011】)。」

(3) 引用文献3
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用文献3には、図面と共に以下の事項が記載されている。

ア 「【0011】
[パチンコ遊技機1の概略構成例]
まず、図1及び図2を参照しつつ、パチンコ遊技機1の概略構成について説明する。ここで、図1は、パチンコ遊技機1の概略正面図である。図2は、パチンコ遊技機1の一部を示す概略平面図である。図1に例示されるように、パチンコ遊技機1は、入賞や判定(抽選)に関する役物等が設けられた遊技盤2と、遊技盤2を囲む枠部材3とを備えている。枠部材3は、遊技盤2と所定の間隔を隔てて平行配置された透明なガラス板を支持しており、このガラス板と遊技盤2とによって、遊技球が流下可能な遊技領域10が形成されている。」

イ 「【0188】
一方、特定モード中は、図23(B)に示すような画像が液晶表示器5の画面に表示される。具体的には、液晶表示器5には、保留画像52と、特定モード表示画像55と、小図柄56と、背景画像61とが表示され、表示領域54が設けられる。表示領域54には、通常モードにおける画像と同様の画像であって、通常モードよりも縮小された画像が表示される。具体的には、表示領域54には、通常モードと同様に装飾図柄51と背景画像60とが表示され、図示はされていないが上記予告画像も表示されることがある。」

【図23】


ウ「【0194】
図25に示すように、特定モードにおいて特別図柄の変動が開始されると、表示領域54内の装飾図柄51が変動開始し、小図柄56も変動開始する(図25(A))。例えば、特別図柄の変動開始から所定時間が経過すると、表示領域54が縮小されるとともに、表示領域54が縮小されたことによって拡張された周囲の表示領域に示唆画像57aが表示される(図25(B))。例えば、示唆画像57aとして「チャ」と書かれた画像が、表示領域54が縮小されたことによって生じた領域(縮小前の表示領域54から縮小後の表示領域54を除いた領域)を利用して表示される。また、表示領域54の縮小および示唆画像57aの表示のタイミングで、表示領域54に表示された左装飾図柄51aが停止するとともに、左小図柄56aが停止する。なお、図25(A)から図25(B)の状態になるときに、表示領域54は例えば時計回りに回転する。具体的には、表示領域54が時計回りに回転するか否かの演出が行われ、表示領域54が回転すると、当該表示領域54が縮小されて、示唆画像57aが表示される。表示領域54が時計回りに回転するか否かの演出が行われた後に、表示領域54が回転しない場合は、当該表示領域54は縮小されず、示唆画像57aも表示されない。」

【図25】



そして、上記記載事項ア?ウに記載された事項を総合すると、引用文献3には、次の事項(以下、「引用文献3記載の事項」という。)が記載されていると認められる(b2及びdは、本願発明のB2及びDに対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内に示された段落番号は、引用文献3における引用箇所を示す。)。

(引用文献3記載の事項)
「b2 特定モード中は、液晶表示器5には、表示領域54が設けられ、表示領域54には装飾図柄51と背景画像60とが表示され(【0188】、図23(B))、
特定モードにおいて特別図柄の変動が開始されると、表示領域54内の装飾図柄51が変動開始し、変動開始から所定時間が経過すると、表示領域54が縮小されるとともに当該状態になるときに、表示領域54が時計回りに回転し、示唆画像57aが表示される(【0194】、図25)、

d パチンコ遊技機1(【0011】)。」

5 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明とを分説にしたがって対比する。

(a) 引用発明の構成aの「装飾図柄」、「左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cの各図柄表示領域に装飾図柄の変動表示を行」うこと、「装飾図柄表示装置208」は、それぞれ本願発明の構成Aの「識別情報」、「識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示」すること、「表示手段」に相当する。
また、引用発明の構成aの「第1副制御部400」は、「基本回路402を備え、基本回路402には、CPU404を搭載し」「ROM406が設けられ」「VDP434を備え」、「VDP434は、CPU404からの信号に基づいてROM406に記憶された画像データ等を読み出して装飾図柄表示装置208に画像を表示し」ているのだから、「第1副制御部400」は「装飾図柄表示装置208」(表示手段)を制御するものであり、本願発明の構成Aの「表示手段を制御する制御手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成aの、「制御部」を「第1副制御部400と」「によって構成」することは、本願発明の構成Aの「表示手段を制御する制御手段とを備え」ることに相当する。
してみると、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する構成を備えるものである。

(b)(b1)(b11) 引用発明の構成b11の「1つまたは複数の特図1保留アイコン」の「表示」は、本願発明の構成B11の「未実施の前記変動表示ゲームの回数をアイコンの個数で示す保留表示」に相当する。
そして、引用発明の構成b11の「装飾図柄表示装置208の演出表示領域208dの下部領域」の「特図1保留アイコン表示領域」に「1つまたは複数の特図1保留アイコンを表示すること」は、本願発明の構成B1、B11の「前記表示手段の表示領域に、」「未実施の前記変動表示ゲームの回数をアイコンの個数で示す保留表示と、」「を表示」することに相当する。
そして、上記(a)にて説示のとおり、「装飾図柄表示装置208」(表示手段)を制御するのは「第1副制御部400」(制御手段)であるから、引用発明1の構成b11の「装飾図柄表示装置208の演出表示領域208dの下部の領域」の「特図1保留アイコン表示領域」に「1つまたは複数の特図1保留アイコンを表示すること」(前記表示手段の表示領域に、未実施の前記変動表示ゲームの回数をアイコンの個数で示す保留表示と、を表示すること)もまた、「第1副制御部400」(制御手段)によるものといえる。
してみると、引用発明の構成a、b11は、本願発明の構成B、B1、B11に相当する構成を備えるものである。

(b)(b1)(b12) 引用発明の構成b12の「特図1の保留アイコンの数の画像を内方に示す白色正方形の画像(「保留アイコン数表示」)が表示され」ることは、「白色正方形の画像内の表示は、数字であ」ることから、本願発明の構成B1、B12の「前記表示手段の表示領域に、」「未実施の前記変動表示ゲームの回数を数値で示す保留数表示と、」「を表示」することに相当する。
そして、上記(a)にて説示のとおり、「装飾図柄表示装置208」(表示手段)を制御するのは「第1副制御部400」(制御手段)であるから、引用発明の構成b12の「画像表示領域の上方左端に特図1の保留アイコンの数の画像を内方に示す白色正方形の画像(「保留アイコン数表示」)が表示され」ること(前記表示手段の表示領域に、未実施の前記変動表示ゲームの回数を数値で示す保留数表示と、を表示すること)もまた、「第1副制御部400」(制御手段)によるものといえる。
してみると、引用発明の構成a、b12は、本願発明の構成B、B1、B12に相当する構成を備えるものである。

(b)(b2) 引用発明の構成b2の「非シェイク状態からシェイク状態に変更された状態で」「画像表示領域を画定する枠表示は、シェイク状態での表示態様として表示画面内で菱形状に表示され、」「枠内部の複数の画像の表示は、シェイク状態での表示態様として、枠表示の変形に応じて変形させて表示され、画像表示領域を画定する枠表示はシェイク表示により右方よりも左方の方が奥まっているような表示がされ、」「また、変動中の装飾図柄および特図1台座900も画像表示領域を画定する枠表示がシェイク表示に変形された影響を受けて右方よりも左方の方が奥まっているような表示がされ」ることは、本願発明の構成B2の「前記表示手段の表示領域における前記識別情報を表示している範囲を含む対象の領域の画像が」「3次元的に所定の角度に回転」「する」「表示演出」に相当する。
また、引用発明の構成b2の「画像表示領域を画定する枠表示は、非シェイク状態での表示態様として表示画面一杯の長方形状に表示され、画像表示領域を画定する枠表示がシェイク状態になると、画像表示領域を画定する枠表示のすべての頂点が装飾図柄表示装置208の画像表示領域の内部に表示されて枠の外部は黒表示がされて枠表示は縮小状態とな」ることは、本願発明の構成B2の「前記表示手段の表示領域における」「対象の領域の画像が」「縮小する縮小表示演出」に相当する。
そうすると、引用発明の構成b2において「非シェイク状態からシェイク状態に変更され」ることは、本願発明の構成B2の「前記表示手段の表示領域における前記識別情報を表示している範囲を含む対象の領域の画像が」「3次元的に所定の角度に回転しつつ縮小する縮小表示演出を実行」することに相当する。
そして、上記(a)にて説示のとおり、「装飾図柄表示装置208」(表示手段)を制御するのは「第1副制御部400」(制御手段)であるから、引用発明の構成b2において「非シェイク状態からシェイク状態に変更され」ること(前記表示手段の表示領域における前記識別情報を表示している範囲を含む対象の領域の画像が3次元的に所定の角度に回転しつつ縮小する縮小表示演出を実行すること)もまた、「第1副制御部400」(制御手段)によるものといえる。
してみると、引用発明の構成a、b2は、本願発明の構成B、B2に相当する構成を備えるものである。

(c)(c2) 引用発明の構成c2の「画像表示領域を画定する枠表示がシェイク表示に変形され表示画面内で菱形状に表示され」、「表示画面内の菱形形状枠の外部に黒表示がされ」た状態は、本願発明の構成Cの「縮小表示演出」に相当し、引用発明の構成c2の「保留アイコン数表示は」「菱形形状枠が変形しても、略正方形の同じ表示態様で菱形形状枠とは別に左上に表示される」ことは、本願発明の構成C2の「保留数表示は」「縮小表示演出の表示角度に影響されない角度で表示される」ことに相当する。

一方、引用発明の構成b12によれば、「保留アイコン数表示」(保留数表示)については、「非シェイク状態では保留アイコン数表示はされなくてもよく、保留アイコン数表示は常時表示するようにしてもよく」、当該構成は、「非シェイク状態では保留アイコン数表示はされない」構成と、「保留アイコン数表示は常時表示する」構成を、択一的に選択できる構成であるということができる。
そして、引用発明の構成b12の当該択一的に選択可能な構成のうち、「非シェイク状態では保留アイコン数表示はされない」構成を選択した場合には、「シェイク状態」でのみ「保留アイコン数表示」がされるのだから、「シェイク状態」である「表示画面内の菱形形状枠の外部に黒表示がされて菱形形状枠が変形」した状態について、引用発明の構成c2の「画像表示領域を画定する枠表示がシェイク表示に変形され表示画面内で菱形状に表示され」、「表示画面内の菱形形状枠の外部に黒表示がされて菱形形状枠が変形しても、略正方形の同じ表示態様で菱形形状枠とは別に左上に表示される」ことは、本願発明の構成C2の「前記保留数表示は、当該縮小表示演出の縮小割合に影響されない大きさで表示される」ことに相当する。
してみると、引用発明の構成b12、c2は、本願発明の構成C、C2に相当する構成を備えるものである。

(d) 引用発明の構成dの「パチンコ機100」は、本願発明の構成Dの「遊技機」に相当するから、引用発明の構成dは、本願発明の構成Dに相当するものである。

そうすると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「A 識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示可能な表示手段と、この表示手段を制御する制御手段とを備え、
B 前記制御手段は、
B1 前記表示手段の表示領域に、
B11 未実施の前記変動表示ゲームの回数をアイコンの個数で示す保留表示と、
B12 未実施の前記変動表示ゲームの回数を数値で示す保留数表示と、
B2 前記表示手段の表示領域における前記識別情報を表示している範囲を含む対象の領域の画像が3次元的に所定の角度に回転しつつ縮小する縮小表示演出を実行可能であり、
C 前記縮小表示演出において、
C2 前記保留数表示は、当該縮小表示演出の縮小割合に影響されない大きさで表示されるとともに、当該縮小表示演出の表示角度に影響されない角度で表示される
D 遊技機。」

(相違点)(構成B13、C、C1)
本願発明は、
「B13 前記変動表示ゲームの進行に応じて一方向に数値が変化する数値表示と、を表示可能であり、」
「C 前記縮小表示演出において、
C1 前記数値表示は、当該縮小表示演出の縮小割合に対応する大きさで表示されるとともに、当該縮小表示演出の表示角度に対応する角度で表示され」るのに対し、引用発明は、そのような構成を備えない点。

6 相違点の検討
(1) 相違点について(構成B13、C、C1)
ア 引用文献2記載の事項は、上記「4 引用文献に記載された事項」「(2) 引用文献2」に示したとおりである。

イ 引用文献2記載の事項の構成aの「特別図柄判定の判定結果を報知する装飾図柄を含む演出画像が表示され」る「液晶表示器5」は、本願発明の構成Aの「識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示可能な表示手段」に相当する。
また、引用文献2記載の事項の構成aの「遊技制御部100から送られる特別図柄判定の結果等を示すデータに基づいて、演出内容を設定し、設定した演出内容の演出の実行を指示するコマンドを画像音響制御部140に送信」する「演出制御部130」は、当該「画像音響制御部140」が、「液晶表示器5に表示される演出画像を生成するVDPを備え」「演出制御部130からのコマンド及びROM142に記憶されているプログラムに基づいて、制御信号を生成してVDPに出力し、VDPの動作を制御」するものであることから、本願発明の構成Aの「表示手段を制御する制御手段」に相当する。
また、引用文献2記載の事項の構成b11の「液晶表示器5に」「特別図柄判定が保留されている数だけ表示される保留画像等の各種表示オブジェクトを含む演出画像が表示」されることは、本願発明の構成B1、B11の「前記表示手段の表示領域に、未実施の前記変動表示ゲームの回数をアイコンの個数で示す保留表示と、」「を表示可能であ」ることに相当する。
また、引用文献2記載の事項の構成b13の「特定期間報知演出」が、「特定モードに移行してからの特別図柄の変動回数が所定回数(30回)に達するまで、当該特定モードが行われる残りの期間(特定期間)を報知する演出」であり「特定期間をカウントダウン形式(30→29・・・)で報知」し「液晶表示器5に」「特定期間を表示する」ことは、本願発明の構成B13の「前記変動表示ゲームの進行に応じて一方向に数値が変化する数値表示と、を表示」することに相当する。
また、引用文献2記載の事項の構成dの「パチンコ遊技機1」は本願発明の「遊技機」に相当する。

そうすると、引用文献2記載の事項は、本願発明の構成A、B、B1、B11、B13及びDである、
「A 識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示可能な表示手段と、この表示手段を制御する制御手段とを備え、
B 前記制御手段は、
B1 前記表示手段の表示領域に、
B11 未実施の前記変動表示ゲームの回数をアイコンの個数で示す保留表示と、
B13 前記変動表示ゲームの進行に応じて一方向に数値が変化する数値表示と、を表示可能である、
D 遊技機。」
に相当する構成を備えるものである。
そして、引用発明と引用文献2記載の事項とはいずれも、保留表示を表示可能である遊技機である点において共通するとともに、興趣の向上という共通の課題(引用文献1については【0005】を、引用文献2については【0005】を参照。)を解決しようとするものである。
してみれば、引用発明において、装飾図柄表示装置208(表示手段)における、「装飾図柄」(識別情報)及び「特図1保留アイコン」(保留表示)による表示態様を、引用文献2記載の事項のように「装飾図柄」(識別情報)及び「保留画像」(保留表示)に加えて「特定期間報知演出」(変動表示ゲームの進行に応じて一方向に数値が変化する数値表示)を表示する態様とすることは、当業者が容易に想到することである。
そして、引用発明において、引用文献2記載の事項のように「特定期間報知演出」(変動表示ゲームの進行に応じて一方向に数値が変化する数値表示)を表示する態様としようとすれば、引用発明における「枠表示」の外側で、「菱形形状枠」の変形とは関係なく同じ表示態様で菱形形状枠とは別に表示するか、引用発明における「枠表示」の内側で、「枠表示がシェイク状態にな」り「枠の外部は黒表示がされて枠表示は縮小状態とな」ること(縮小表示演出)に合わせて、「装飾図柄」、及び「数字1?4」が「表示される」「特図1台座900」(構成b2)と同じく縮小して「縮小状態縮小割合に対応する大きさで表示するとともに、当該縮小表示演出の表示角度に対応する角度で表示」するようにするかの二者択一であるのだから、そのうちの後者を選択して本願発明の構成C1のようにすることは、当業者が適宜なしうる設計的事項である。

(2) 本願発明の構成B2「2次元的または3次元的」について
上記「3 本願発明1と引用発明の対比」(b)(b2)にて説示のとおり、引用発明の構成b2において「非シェイク状態からシェイク状態に変更され」ることは、本願発明の構成B2の「前記表示手段の表示領域における前記識別情報を表示している範囲を含む対象の領域の画像が」「3次元的に所定の角度に回転しつつ縮小する縮小表示演出を実行」することに相当するものである。
一方、引用文献3記載の事項の「液晶表示器5には、表示領域54が設けられ、表示領域54には装飾図柄51と背景画像60とが表示され、」「変動開始から所定時間が経過すると、表示領域54が縮小されるとともに、当該状態になるときに、表示領域54が時計回りに回転」することは、本願発明の構成B2の「表示手段の表示領域における前記識別情報を表示している範囲を含む対象の領域の画像が2次元的に所定の角度に回転しつつ縮小する縮小表示演出」に相当し、引用発明の構成b2において「非シェイク状態からシェイク状態に変更され」ること(「前記表示手段の表示領域における前記識別情報を表示している範囲を含む対象の領域の画像が」「3次元的に所定の角度に回転しつつ縮小する縮小表示演出を実行」すること)に変えて2次元的に回転しつつ縮小表示を行うようにすることもまた、当業者が容易に想到することである。

(3) 本願発明の構成C2「前記保留数表示は、当該縮小表示演出の縮小割合に影響されない大きさで表示される」について
引用発明の構成b12の、「保留アイコン数表示」(保留数表示)について、「非シェイク状態では保留アイコン数表示はされなくてもよく、保留アイコン数表示は常時表示するようにしてもよく」との構成は、「非シェイク状態では保留アイコン数表示はされない」構成と、「保留アイコン数表示は常時表示する」構成を、択一的に選択できる構成であることは上記「5 本願発明と引用発明の対比」「(c)(c2)」にて説示のとおりであるが、仮に当該択一的に選択できる構成のうち「保留アイコン数表示は常時表示するように」する構成を選択した場合には、「保留アイコン数表示は常時表示」することになるのだから、「シェイク状態」及び「非シェイク状態」でともに「保留アイコン数表示」をするものといえる。
一方、引用発明の構成c2では、「シェイク状態」である「画像表示領域を画定する枠表示がシェイク表示に変形され表示画面内で菱形状に表示され」たとき及び「表示画面内の菱形形状枠の外部に黒表示がされて菱形形状枠が変形し」たときに、「保留アイコン数表示」は「略正方形の同じ表示態様で菱形形状枠とは別に左上に表示される」(保留数表示は、当該縮小表示演出の縮小割合に影響されない大きさで表示される)ものの、「非シェイク状態」において、「保留アイコン数表示」(保留数表示)がいかなる大きさで表示されるのか不明であるから、引用発明の構成b12の択一的に選択できる構成のうち、仮に「保留アイコン数表示は常時表示するように」する構成を選択した場合には、本願発明の構成C2について、本願発明は、「前記保留数表示は、当該縮小表示演出の縮小割合に影響されない大きさで表示される」のに対し、引用発明は係る構成を有するか否か不明である、とのさらなる相違点(以下、「相違点2」という。)が存在することになる。

そこで、相違点2について一応検討すると、引用発明は、「画像表示領域を画定する枠表示がシェイク表示に変形され表示画面内で菱形状に表示され」「菱形形状枠が変形」する「シェイク状態」において、「保留アイコン数表示」(保留数表示)については「略正方形の表示態様」の「同じ表示態様」という、1種類の表示態様しか存在せず、「非シェイク状態」において「シェイク状態」と同じ表示態様を使用することに阻害要因などなく、むしろそのような表示態様の方が自然であるから、「保留アイコン数表示」(保留数表示)については「非シェイク状態」においても「シェイク状態」と同じ表示態様を使用して1種類の表示態様とし、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が適宜なしうる設計的事項の範囲というべきである。

そして、本願発明の作用効果は、引用発明及び引用文献2記載の事項、又は引用発明、引用文献2記載の事項及び引用文献3記載の事項から当業者が予測可能なものである。

してみると、本願発明は、当業者が引用発明及び引用文献2記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。
また、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の事項及び引用文献3記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

7 請求人の主張について
審判請求人は、令和2年4月15日提出の意見書の「(2)本願発明が特許されるべき理由」「(2-4)本願発明と引用文献との対比」にて、
本願発明の遊技機は、
「前記縮小表示演出において、
前記数値表示は、当該縮小表示演出の縮小割合に対応する大きさで表示されるとともに、当該縮小表示演出の表示角度に対応する角度で表示され、」という構成と、
「前記縮小表示演出において、
前記保留数表示は、当該縮小表示演出の縮小割合に影響されない大きさで表示されるとともに、当該縮小表示演出の表示角度に影響されない角度で表示される」という構成を有し、特に、
「前記数値表示は、当該縮小表示演出の縮小割合に対応する大きさで表示されるとともに、当該縮小表示演出の表示角度に対応する角度で表示され、」
によれば、縮小表示演出において、変動表示ゲームに密接に関係する数値表示を、縮小表示演出の縮小割合に対応する大きさで表示するとともに縮小表示演出の表示角度に対応する角度で表示することにより、ダイナミックな表示演出にさらに一体感を加えることができる効果を主張するとともに、各引用文献には、少なくとも上記構成
「前記数値表示は、当該縮小表示演出の縮小割合に対応する大きさで表示されるとともに、当該縮小表示演出の表示角度に対応する角度で表示され、」
について明示又は示唆する記載が見当たらず、各引用文献に記載された発明を組み合わせることができたとしても、本願発明と同等の構成及び効果を実現することができない旨を主張している。

しかし、上記主張については、上記「6 相違点の検討」(1)にて説示のとおりであって、この主張を採用して本願について特許をすべきものとする審決をすることはできない。

8 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-07-22 
結審通知日 2020-07-27 
審決日 2020-08-18 
出願番号 特願2017-20202(P2017-20202)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥井 俊輔貝沼 憲司松平 佳巳  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 石井 哲
小島 寛史
発明の名称 遊技機  
代理人 鹿嶋 英實  

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