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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25D
管理番号 1366908
審判番号 不服2019-6453  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-17 
確定日 2020-10-08 
事件の表示 特願2017-199140「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月11日出願公開、特開2018- 4250〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月28日に出願した特願2013-136856号の一部を、平成29年10月13日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成30年7月18日に手続補正書の提出
平成30年8月17日付けで拒絶理由の通知(平成30年8月21日発送)
平成30年10月5日に意見書及び手続補正書の提出
平成31年2月15日付けで拒絶査定(平成31年2月19日発送)
令和元年5月17日に拒絶査定不服審判の請求
令和2年3月11日付けで拒絶理由の通知(令和2年3月17日発送)
令和2年5月13日に意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、令和2年5月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
冷蔵庫本体の前面開口部に取り付けられた扉本体と、
前記扉本体の前面に設置された非導電性の前面板と、
前記扉本体における前記前面板の裏側に設置され、情報の無線通信を行う無線通信部と、を備え、
前記前面板の裏面の前記無線通信部に対向する位置には導電性部材が配置されておらず、前記前面板の裏面の当該位置と異なる位置に導電性部材が配置され、
前記扉本体は左右一対設けられ、
前記無線通信部は、前記左右一対の扉本体のうちの一方の扉本体に設けられ、かつ、前記冷蔵庫本体の左右の側壁のうち、当該一方の扉本体が位置する側の側壁に近い位置に設けられ、
前記導電性部材は、前記左右一対の扉本体のうちの他方に設けられていることを特徴とする冷蔵庫。」

第3 令和2年3月11日付けで通知した拒絶の理由
当審において、令和2年3月11日付けで通知した拒絶の理由における理由1は、概ね以下のとおりである。
<理由1(進歩性)>
本願の請求項1?3に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1?4に記載された発明に基いて、又は、引用文献2?4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開平5-133677号公報
引用文献2:特開2013-61133号公報
引用文献3:特開2005-260891号公報
引用文献4:特開2008-275267号公報

第4 引用文献
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
当審において通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献1には、「冷蔵庫の扉体」に関し、次の記載がある。なお、下線は当審において付したものである(他の引用文献についても同様。)。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は冷蔵庫の意匠性を向上した扉体の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、冷蔵庫の扉体は意匠性を向上するために、色数を増やし、その色に光沢をもたしてきた。そして、その光沢に深みをもたし、更に意匠性を向上する傾向にある。
【0003】従来この種の冷蔵庫の扉体としては、1990年2月発売の松下冷機株式会社製冷蔵庫「NRーF46K1」の扉体がある。以下、図面を参照しながら上述した従来の冷蔵庫の扉体の一例について説明を行なう。
【0004】図12は扉体の斜視図であり、図13は扉体の断面図である。図において、1は鉄板1aに、透明層1bと印刷層1cからなる厚み0.1mmの化粧フィルム1dを接着剤1eで貼付けた外面板である。2は外面板1に対向して配置された内板である。3は外面板1の全周に挿入する略コ字状の外面板挿入部3aを有する枠体である。4は外面板1と内板2と枠体3で出来る空間内に発泡充填された断熱材である。5は前記枠体3の断熱材4側に挿入された扉体の補強材である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記のような構成では、化粧フィルムにて光沢を出しているが、化粧フィルムを厚くできないため、光沢に深みをもたせることが出来ない。
【0006】また、化粧フィルムを鉄板に貼付ける時、気泡・ゴミを閉じ込める、接着剤の凹凸をひらう、また、鉄板の表面の凹凸をひらう等により、外面板の表面が凸凹になり平面にならない。
【0007】また扉体に冷熱を掛けると、鉄板と化粧フィルムの線膨張率の差により接着剤が剥がれ浮き上がり、扉体表面に凹凸が出来る。
【0008】また、発泡充填された断熱材により扉体表面の外面板が凹凸になるという問題点を有していた。
【0009】本発明は上記問題点に鑑み、扉体表面に凹凸がなく真直であり、しかも光沢に深みをもたすことが出来、デザイン的にも多種に対応できる冷蔵庫の扉体を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明の冷蔵庫の扉体は、前面に透明層と、裏面に着色層を有する着色ガラス板と、前記着色ガラス板の全周に設けた枠体と、前記着色ガラス化粧板に対向して設けた内板と、前記着色ガラス板・枠体・内板間に発泡充填された断熱材からなるという構成を備えたものである。」

「【0024】
【実施例】以下本発明の一実施例について、図1から図11を参照しながら説明する。なお従来と同一部分については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
(実施例1)図1は第一の実施例における扉体の斜視図であり、図2は扉体の断面図である。図において、6は前面に透明層6aと、裏面に溶融着色した着色層6bを有する着色ガラス板である。2は着色ガラス板6に対向して配置された内板である。7は着色ガラス板6の全周に挿入する略コ字状の着色ガラス板挿入部7aを有する枠体である。4は着色ガラス板6と内板2と枠体7で出来る空間内に発泡充填された断熱材である。
【0025】第一の実施例の冷蔵庫の扉体において次の効果がある。
1.印刷部の前に位置するガラス板にて光沢を出すとともに、光沢に深みをもたすことが出来る。
【0026】2.表面を1部品で構成しているため、化粧フィルムを鉄板に貼付けることがなく、気泡・ゴミを閉じ込める、また、接着剤の凹凸をひらう、また、鉄板の表面の凹凸をひらう等がなく、扉体の表面が凸凹になることがない。
【0027】3.表面を1部品で構成している為、扉体に冷熱を掛けた時の線膨張率の差により接着剤が剥がれ浮き上がることがない。
【0028】4.扉体表面はガラス板で剛性があるため、発泡充填された断熱材により凹凸になることがなく、扉体表面が凹凸になることはない。
【0029】5.扉体表面がガラス板であり割れる心配があるが、ガラス板の裏には発泡断熱材があり、ガラス板に外力が加わわれば断熱材が外力を緩衝する、また、ガラスの最も弱い端面は枠体にて保護しているので割れることがない。
【0030】6.断熱材が発泡する時、ガラス板の着色層背面を滑っていき扉体への充填性がよい。
【0031】7.ガラス板に剛性があるため、従来、扉体に入っていた補強板を廃止することが出来る。」





(2)引用発明1
上記(1)によると、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認める。
「前面に透明層6aと、裏面に着色層6bを有する着色ガラス板6と、前記着色ガラス板6の全周に設けた枠体7と、前記着色ガラス板6に対向して設けた内板2と、前記着色ガラス板6・枠体7・内板2間に発泡充填された断熱材4からなる扉体を備えた、冷蔵庫。」

2 引用文献2
当審において通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献2には、「冷蔵庫」に関し、次の記載がある。なお、「・・・」は記載の省略を示す。
(1)引用文献2の記載
「【0001】
本発明は、貯蔵室を断熱扉により開閉する冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷蔵庫は特許文献1に開示されている。従来の冷蔵庫は貯蔵室の背後に蒸発器を備え、蒸発器と熱交換して生成される冷気によって貯蔵室が冷却される。貯蔵室の前面開口部は断熱扉により開閉される。
【0003】
断熱扉は前面に配されるガラス板と背面に配される樹脂成型品の内面板とを有する。ガラス板と内面板との間には発泡断熱材が充填される。ガラス板は四辺を覆う枠部材に挟持されることによって断熱扉に取り付けられている。
【0004】
ガラス板を断熱扉の前面に配することにより光沢感と高級感のある冷蔵庫となり、意匠性を向上させることができる。また、鋼板と比較して外面(前面)が滑らかであるので、清掃性を向上させることができる。」

「【0018】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1、図2は第1実施形態の冷蔵庫の正面図及び右側面断面図を示している。冷蔵庫1は上部に冷蔵室2が配され、冷蔵室2の下方には製氷室4及び第1冷凍室3が左右に並設される。製氷室4及び第1冷凍室3の下方には第2冷凍室5が配され、第2冷凍室5の下方に野菜室6が配されている。冷蔵室2、第1冷凍室3、製氷室4、第2冷凍室5、及び野菜室6はそれぞれ貯蔵室を構成する。
【0019】
冷蔵室2は発泡断熱材25(図4参照)を充填した断熱扉2a、2bにより開閉され、貯蔵物を冷蔵保存する。断熱扉2a、2bはそれぞれ右端及び左端を支点に回動する。これにより、冷蔵室2の中程を境に両側に開くことができる。断熱扉2a、2bの背面には貯蔵物を収納するドアポケット(不図示)が設けられる。
【0020】
第1冷凍室3、製氷室4及び第2冷凍室5は連通して氷点以下に維持される。第1冷凍室3及び第2冷凍室5は収納ケース(不図示)と一体の引き出し式の断熱扉3a、5aにより開閉され、貯蔵物を冷凍保存する。第2冷凍室5の容積は第1冷凍室3よりも大きく、貯蔵物をより多く冷凍保存できる。製氷室4は回動式の断熱扉4aにより開閉され、氷を製氷して貯氷する。野菜室6は収納ケース(不図示)と一体の引き出し式の断熱扉6aにより開閉され、冷蔵室2よりも高い室内温度(約8℃)で野菜を冷却保存する。
・・・
【0024】
図3は断熱扉2aの正面図を示している。図4、図5は図3のA-A断面図及びB-B断面図を示している。図6、図7は図4のV部及び図5のW部を拡大した拡大図を示している。断熱扉2aの前面にはガラス板20が配される。ガラス板20により断熱扉2aの前面が覆われる。ガラス板20は厚さ3.2mmのソーダライム系ガラスに熱強化処理を施して形成される。
【0025】
ガラス板20の背面には印刷塗料層(不図示)が設けられる。印刷塗料層によってガラス板20を不透明化するとともに所定の印字が施される。印刷塗料層の背面には保護フィルム(不図示)が貼着されている。保護フィルムはガラス板20が割れた場合にガラス片の飛散を防止するとともに印刷塗料層の剥離を防止する。保護フィルムは塩化ビニル製のシートから形成される。
【0026】
ガラス板20に貼着した保護フィルムの背面には金属板26が配される。ここで、発泡断熱材25の充填について説明する。ガラス板20及び金属板26を枠部材24に取り付けてガラス板20の前面側を下方にして設置し、内面板21を上方から被せる。内面板21の略中央部に設けた注入口(不図示)から発泡ウレタン等の発泡断熱材25の原液を注入する。発泡断熱材25の原液は流動して下方から順に発泡成長する。これにより、ガラス板20と内面板21との間には発泡断熱材25が充填される。また、ガラス板20と発泡断熱材25との間に金属板26が配される。
【0027】
金属板26は例えば厚さ0.45mmの鉄板から形成される。これにより、ガラス板20の前面にマグネットを付着させることができる。従って、使用者はマグネットを用いて断熱扉2aの前面にメモ等を掲示することができ、利便性が向上する。マグネットとしてはネオジム磁石等の希土類磁石やフェライト磁石を用いることができる。
【0028】
断熱扉2aの前面から見て金属板26はガラス板20と略同じ大きさに形成され、ガラス板20の背面側を覆う。」

「【0056】
図12は第2実施形態の冷蔵庫1の断熱扉2aを示す正面図である。説明の便宜上、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は断熱扉2aの前面から見た金属板26の大きさ及び配置箇所が第1実施形態と異なっている。また、溝部50が左辺部材24dの他に上辺部材24aにも形成されている点で第1実施形態と異なっている(図15、図16参照)。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0057】
破線Mは金属板26の外形を示している。金属板26は断熱扉2aの前面から見てガラス板20よりも小さく形成され、ガラス板20の一部を覆っている。図13、図14は図12のC-C断面図及びD-D断面図を示している。図15、図16は図13のX部及び図14のY部を拡大した拡大図を示している。金属板26は左右のドアライナー23a、23bの間に対向して配置されるとともに、上下の凸部28a、28bの間に対向して配置される。これにより、金属板26の端部は枠部材24から離れるため、金属板26は接着テープ(不図示)等でガラス板20の背面に貼着される。」

「【0067】
第1、第2実施形態において、冷蔵室2の断熱扉2aを例として説明したが、他の断熱扉2b、3a、4a、5a、6aを断熱扉2aと同様な構成にしてもよい。
【0068】
金属板26を他の磁性体、例えばマルテンサイト系のステンレス鋼により形成してもよい。また、金属板26を非磁性のアルミニウム、オーステナイト系のステンレス鋼等により形成してもよい。」





(2)引用発明2
上記(1)によると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認める。
「冷蔵室2を開閉し、それぞれ右端及び左端を支点に回動する左右一対の断熱扉2a、2bと、
右側の前記断熱扉2aの前面に配されたガラス板20と、を備え、
前記ガラス板20に貼着した保護フィルムの背面には、前記断熱扉2aの前面から見て前記ガラス板20よりも小さく形成され、厚さ0.45mmの鉄板から形成された金属板26が配されて、前記ガラス板20の前面にマグネットを付着できるようにされた冷蔵庫1。」

(3)引用文献2の事項
上記(1)によると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2の事項」という。)が記載されていると認める。
「左右一対の断熱扉2a、2bを設けた冷蔵庫において、右側の断熱扉2aにおけるガラス板20の裏面に、前面から見て前記ガラス板20よりも小さく形成され、厚さ0.45mmの鉄板から形成された金属板26を配置して、前記ガラス板20の前面にマグネットを付着できるようにすること。」

3 引用文献3
当審において通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献3には、「家電機器」に関し、次の記載がある。
(1)引用文献3の記載
「【0001】
本発明は、冷蔵庫、加熱調理器、洗濯機、乾燥機、洗濯乾燥機などのネットワーク家電機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、インターネット等の電気通信回線を介して、遠隔地から食品の在庫状況が確認できる冷蔵庫や(例えば、特許文献1参照)、この電気通信回線を介してレシピを受信し、そのレシピに基づいて調理を行なうことができる加熱調理器などが提案されている。
【特許文献1】 特開2002-236798公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
消費者は、上記のような無線通信機能を有したネットワーク家電機器を希望する場合には、予めその無線通信機能を内蔵した家電機器を購入しなければならない。しかし、冷蔵庫などの家電機器においては寿命が長く、高価なものであるため、単に無線通信機能を希望するためだけのために冷蔵庫などの家電機器を買い換えることは困難であるという問題点がある。
【0004】
また、冷蔵庫などの家電機器は、本体を構成するキャビネットは金属製であるため、無線通信機能を有する部分をこのキャビネットの外側に取り付ける必要があり、家電機器の外観を損なうという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、消費者が希望する場合には、無線通信機能を後から追加することができ、また、その外観の体裁も良い家電機器を提供する。」

「【0012】
請求項1に係る発明の家電機器においては、収納部に無線通信アダプターが収納されている時には、接続コネクターを介して制御手段に接続され、家電機器の制御手段は無線通信アダプターによって受信した情報に基づいて家電機器を制御すると共に、この家電機器に関する情報を無線通信アダプターを介して外部に送信できる。一方、収納部に無線通信アダプターが収納されていないときには、記憶手段に記憶された情報に基づいて従来と同様に家電機器を制御することができる。
【0013】
請求項2に係る発明の家電機器においては、無線通信アダプターが、省力無線、Bluetooth、無線LANの機能を有し、外部と容易に無線通信を行なうことができる。
【0014】
請求項3に係る発明の家電機器においては、この家電機器が冷蔵庫、空気調和機、加熱調理器、洗濯機、乾燥機、または洗濯乾燥機であり、消費者はこれらの家電機器を購入した場合に、後から無線通信アダプターを取り付けることにより、無線通信機能を追加することができる。
【0015】
請求項4に係る発明の冷蔵庫においては、貯蔵室のヒンジ開閉式の扉の下部に収納部が設けられているため、無線通信アダプター全体が金属板で覆われることなく、外部と電波によって通信することができ、冷蔵庫の外観を損なうことがない。また、防塵、防水の効果もある。」

「【0019】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態の家電機器である冷蔵庫10について図1?図5に基づいて説明する。
【0020】
(1)冷蔵庫10の構成
図1に示すように、冷蔵庫10のキャビネット12には、上段から冷蔵室14、野菜室16、切替室18、冷凍室20が設けられ、切替室18の左側には製氷室22が設けられている。
【0021】
冷蔵室14の前面には、ヒンジ開閉式の扉24が設けられ、野菜室16、切替室18、冷凍室20、製氷室22には、それぞれ引出し式の扉26,28,30,32が設けられている。
【0022】
キャビネット12の背面には、この冷蔵庫10を制御するための主制御部32が設けられている。
【0023】
(2)冷蔵室14の扉24の構造
冷蔵室14の扉24の構造について、図1?図3に基づいて説明する。
【0024】
扉24の前面は、金属製の前面板34によって覆われ、後面側は合成樹脂などによって形成された後面板36によって覆われており、この後面板に不図示の食品などを収納する棚などが形成されている。前面板34と後面板との間には断熱部材35が配されている。
【0025】
前面板34の下部には、切欠き部が設けられ、この位置に表示部36、操作部38が設けられている。表示部36は扉24の下部中央部に設けられ、液晶表示装置より構成されている。また、操作部38はこの表示部36の近傍に設けられ、表示部36と操作部38とは、合成樹脂製の固定部材44によって扉24の切欠き部に固定されている。
【0026】
表示部36の後面には、図4に示す操作制御部40を有した配線基板42が設けられている。この配線基板42は、図2に示すように、固定部材44から突出している枠部材46によって支持され、この枠部材46が、配線基板42の上面、両側面を支持するように囲んでいる。また、配線基板42の下面は、4つのリブ48によって支持されている。この配線基板42の下部中央部から、コネクター50が突出している。
【0027】
合成樹脂製の固定部材44の下面、すなわち、扉24の下部にはカード型の無線通信アダプター52を収納するための収納部54が設けられている。この収納部54は、扉24の下面に開口部56が開口し、この開口部56から無線通信アダプター52が収納できる。この収納部54に無線通信アダプター52を収納すると、無線通信アダプター52の接続端子にコネクター50が接続されて、操作制御部40と電気的に接続されると共に、無線通信アダプター52が収納部54から落下しない。配線基板42は、操作部48の各スイッチと接続されている。
【0028】
(3)冷蔵庫10の電気的構成
次に、図4のブロック図に基づいて冷蔵庫10の電気的構成について説明する。
【0029】
冷蔵庫10の主制御部32には、操作制御部40が接続されている。操作制御部40には、表示部36、操作部38が接続されている。操作制御部40には、コネクター50を介して、無線通信アダプター52の無線通信部53が接続される。この無線通信アダプター52は、カード型であって、省力無線、Bluetooth、無線LANの中の一つの機能を無線通信部53が有し、例えば、インターネットを介して情報を送受信することができる。
【0030】
操作制御部40は、主制御部32と、設定変更指示や状態通知の情報を送受信する。また、表示部36に対して、表示状態を変更するための状態変更通知を行なう。操作部38からは、スイッチの操作による設定変更指示の情報が入力される。無線通信アダプター52からは、外部の周辺機器からの遠隔指示に関する情報を受信し、外部周辺機器に対し状態変更や受信確認の信号を送信する。
【0031】
主制御部32は、冷蔵庫10のコンプレッサ、冷却ファン、ダンパー、製氷器などを制御するものであり、操作制御部40からの設定変更指示に関する情報に基づいて制御を行ない、また、操作制御部からこの設定変更指示情報がない場合には、主制御部32に設けられているメモリに内蔵されたプログラムに基づいてコンプレッサ、冷却ファン、ダンパー、製氷器などを制御する。主制御部32は、現在のコンプレッサの運転状況などの状態通知を操作制御部40に送信する。
【0032】
(4)無線通信アダプター52に関する動作内容
上記構成の冷蔵庫10において、無線通信アダプター52を用いた場合の動作内容について説明する。
【0033】
ステップ1において、冷蔵庫10の電源を初期投入したり、操作部38におけるリセットボタンを操作することにより、機器の設定開始を行なう。
【0034】
ステップ2において、操作制御部40は、無線通信アダプター52を接続されているか否かの信号を送信する。
【0035】
ステップ3において、収納部54に無線通信アダプター52が収納され接続されている場合には、無線通信アダプター52からの確認信号の応答が有るためステップ4に進み、収納部54に無線通信アダプター52が収納されていない場合には応答信号がないためステップ5に進む。
【0036】
ステップ4において、無線通信アダプター52からの応答信号が有ったため、外部からの情報に基づいて主制御部32が冷蔵庫10を制御する。すなわち、ネットワークモードにおいて制御を行なう。そして終了する。
【0037】
ステップ5において、無線通信アダプター52からの応答がないため、主制御部32は、自己が記憶しているプログラムに基づいて冷蔵庫10を単体として動作させる。そして終了する。
【0038】
以上のように本実施形態の冷蔵庫10であると、無線通信アダプター52が収納部54に収納されている場合には、ネットワークモードで遠隔操作による冷蔵庫10の制御が行なわれ、無線通信アダプター52が収納されていない場合には、冷蔵庫10の単体として動作を行なうことができる。
【0039】
無線通信アダプター52は、冷蔵庫10と同時に購入する必要はなく、消費者が無線通信機能を希望した場合に後から購入して取り付けることにより、無線通信機能を追加することができる。
【0040】
無線通信アダプター52は扉24の収納部54に収納されているため、外観上この無線通信アダプター52が収納されている状態が見えず、外観を損なう恐れがない。無線通信アダプター52が収納されている収納部54は合成樹脂製の固定部材44の位置に設けられているため、電波の送受信を行なうことができる。また、収納部54内部に無線通信アダプター52があるため、防塵及び防水の効果がある。」




【図4】



(2)引用文献3の事項
上記(1)によると、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3の事項」という。)が記載されていると認める。
「冷蔵庫の扉24における金属製の前面板34の下部に設けられた切欠き部の位置において、合成樹脂製の固定部材44の位置に設けられた収納部54に、無線通信アダプター52を収納することにより、電波の送受信を行なうことができるようにすること。」

4 引用文献4
(1)引用文献4の記載
当審において通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献4には、「冷蔵庫」に関し、次の記載がある。なお、「・・・」は記載の省略を示す。
「【請求項1】
冷蔵庫本体の前面に扉を配した冷蔵庫において、
前記扉に内蔵した無線タグと、
前記冷蔵庫本体に内蔵され、前記無線タグと通信を行う第1リードライタと、
前記冷蔵庫本体に内蔵され、前記第1リードライタを介して前記無線タグとデータを送受信する第1制御部と、
前記冷蔵庫と別体であり、前記無線タグと通信を行う第2リードライタと、前記第2リードライタを介して前記無線タグと前記データを送受信する第2制御部を有する端末と、
を有する冷蔵庫。
・・・
【請求項4】
前記無線タグを内蔵した前記扉付近の材質が、合成樹脂製である、
請求項1記載の冷蔵庫。」

「【0001】
本発明は、家庭用の冷蔵庫に関するものである。
・・・
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、扉の構成を簡素化することができると共に、コストを低く抑えて外部から冷蔵庫を操作することができる冷蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、冷蔵庫本体の前面に扉を配した冷蔵庫において、前記扉に内蔵した無線タグと、前記冷蔵庫本体に内蔵され、前記無線タグと通信を行う第1リードライタと、前記冷蔵庫本体に内蔵され、前記第1リードライタを介して前記無線タグとデータを送受信する第1制御部と、前記冷蔵庫と別体であり、前記無線タグと通信を行う第2リードライタと、前記第2リードライタを介して前記無線タグと前記データを送受信する第2制御部を有する端末と、を有する冷蔵庫である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、扉内部には無線タグを内蔵するのみであるため、扉の構造が簡素化され、また、無線タグと2個のリードライタを用いるだけであるためコストを削減することができる。」

「【0015】
冷蔵室14の扉26の上部であって、かつ、幅方向の中央部には無線タグ38が内蔵され、この無線タグ38に対応する冷蔵室14の上部中央部には本体リードライタ40が設けられている。
【0016】
無線タグ38が設けられている近傍における扉26の前面パネルは、他の部分の金属板とは異なり、非金属製である合成樹脂板54によって形成されており、また、無線タグ38が配されている扉26の裏面側も合成樹脂板によって形成されている。
・・・
【0019】
扉26に内蔵された無線タグ38は、その検出範囲が10cm程度の電磁誘導方式近傍型のものである。
【0020】
本体リードライタ40は、本体制御部36と接続され、この本体リードライタ40を介して無線タグ38とデータを送受信することができる。
【0021】
本体制御部36は、マイコンより構成され、データを格納するためのメモリ52が設けられている。
【0022】
小型端末42は、図3に示すように内部に端末制御部44を内蔵し、この端末制御部44に、操作用のスイッチ46とディスプレイ48と、端末リードライタ50が設けられている。この端末リードライタ50は、無線タグ38とデータの送受信をすることができる。」

「【0027】
(4)効果
本実施形態の冷蔵庫10であると、ユーザがデータの読み書きを行う際に扉26を開けることがなく、扉26に小型端末42をかざすだけでよい。
【0028】
また、扉26の構造も、従来のように操作パネルや束線を設けることなく、無線タグ38を1枚埋め込むだけでよいため、構造を簡素化することができ、取り付け作業も煩雑にならない。
【0029】
また、無線タグ38が取り付けられている扉26の近傍は金属製ではなく非金属製であるため、送受信を確実に行うことができる。
【0030】
また、冷蔵庫10の扉26には右開きと左開きのものがあるが、無線タグ38は扉26の中央に設置されているため、どちらの扉26にも対応でき、製造時の取り付けの構成を簡素化することができる。」





(2)引用文献4の事項
上記(1)によると、引用文献4には、次の事項(以下「引用文献4の事項」という。)が記載されていると認める。
「冷蔵庫の扉26の非金属製である合成樹脂板によって形成された前面パネルの部分に無線タグ38を設けることにより、送受信を確実に行うことができるようにすること。」

第5 対比・判断
1 引用発明1を主とした理由について
(1)対比
本願発明と引用発明1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者の「冷蔵庫」は、前者の「冷蔵庫」に相当する。
・後者の「前面に透明層6aと、裏面に着色層6bを有する着色ガラス板6と、前記着色ガラス板6の全周に設けた枠体7と、前記着色ガラス板6に対向して設けた内板2と、前記着色ガラス板6・枠体7・内板2間に発泡充填された断熱材4からなる扉体」は、冷蔵室等の貯蔵室の前面開口部を覆うように取り付けられるもの、すなわち、冷蔵庫本体の前面開口部に取り付けられるものであるから、前者の「冷蔵庫本体の前面開口部に取り付けられた扉本体」に相当する。
そして、後者の「扉体」における「前面に透明層6aと、裏面に着色層6bを有する着色ガラス板6」は、ガラス製であるために非導電性であることは明らかであり、「扉体」の前面に設置されるから、前者の「前記扉本体の前面に設置された非導電性の前面板」に相当する。

したがって、両者は、
「冷蔵庫本体の前面開口部に取り付けられた扉本体と、
前記扉本体の前面に設置された非導電性の前面板と、を備えた冷蔵庫。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点A]
本願発明では、「前記扉本体における前記前面板の裏側に設置され、情報の無線通信を行う無線通信部と、を備え、
前記前面板の裏面の前記無線通信部に対向する位置には導電性部材が配置されておらず、前記前面板の裏面の当該位置と異なる位置に導電性部材が配置され、
前記扉本体は左右一対設けられ、
前記無線通信部は、前記左右一対の扉本体のうちの一方の扉本体に設けられ、かつ、前記冷蔵庫本体の左右の側壁のうち、当該一方の扉本体が位置する側の側壁に近い位置に設けられ、
前記導電性部材は、前記左右一対の扉本体のうちの他方に設けられている」のに対して、引用発明1では、そのような特定はされていない点。

(2)判断
ア 相違点Aの検討
冷蔵庫において、扉本体を左右一対設けることは、本願の出願前にごく普通に行われていることであり、引用発明1においても、「扉体(扉本体)を左右一対設け」たものが当然に想定される。
そして、引用文献2の事項は、右側の断熱扉2a(扉本体)におけるガラス板20(非導電性の前面板)の前面にマグネットを付着できるところ、使用者はマグネットを用いて断熱扉2aの前面にメモ等を掲示することができ、冷蔵庫の利便性が向上するのであるから、冷蔵庫という共通の技術分野に属する引用発明1において、引用文献2の事項を適用し、左右一対設けられた扉体のいずれかにおける「着色ガラス板6(前面板)の裏面」に「金属板26(導電性部材)」を配置することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、無線通信部が金属製の部材で覆われると情報の無線通信が妨げられてしまうことが、本願の出願前に技術常識であることを考慮すると、引用文献3の事項及び引用文献4の事項は、冷蔵庫の扉本体における金属製の部材(導電性部材)によって前面が覆われない箇所に無線通信アダプターや無線タグ等の無線通信部を配置することにより情報の無線通信を行うことを可能とするものといえる。
そして、引用文献3の事項及び引用文献4の事項は、遠隔地から冷蔵庫の食品の在庫状況が確認できたり(引用文献3の段落0002)、外部から冷蔵庫を操作することができる(引用文献4の段落0006)ようにするものであり、冷蔵庫の利便性を向上するものであるから、冷蔵庫という共通の技術分野に属する引用発明1において、引用文献3の事項及び引用文献4の事項を適用し、「扉体(扉本体)における着色ガラス板6(前面板)の裏側に設置され、情報の無線通信を行う無線通信部」を、左右一対設けられた扉体のいずれかにおける金属製の部材(導電性部材)によって前面が覆われない箇所に設けて、情報の無線通信が妨げられないようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用発明1において、着色ガラス板6(前面板)の裏面に金属板(導電性部材)と無線通信部を配置する際に、冷蔵庫の前面からみて金属板(導電性部材)と無線通信部とが重ならず、無線通信部による情報の無線通信を妨げないようにすること以外、無線通信部は、左右一対設けられた扉体のいずれかにおける任意の箇所に配置できるのであるから、「着色ガラス板6(前面板)の裏面の無線通信部に対向する位置には金属板(導電性部材)が配置されておらず、前記着色ガラス板6の裏面の当該位置と異なる位置に金属板が配置され」、「前記無線通信部は、左右一対の扉体(扉本体)のうちの一方の扉体に設けられ、かつ、冷蔵庫本体の左右の側壁のうち、当該一方の扉体が位置する側の側壁に近い位置に設けられ、前記金属板は、前記左右一対の扉体のうちの他方に設けられている」ようにすることは、冷蔵庫の利便性、無線通信部への配線のし易さ、コスト等を考慮して、当業者が適宜なし得たことである。
そうすると、引用発明1において、上記相違点Aに係る本願発明の構成とすることは、引用文献2の事項、引用文献3の事項及び引用文献4の事項に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

イ 効果について
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明1、引用文献2の事項、引用文献3の事項及び引用文献4の事項から予測し得る範囲のものである。

ウ 小括
したがって、本願発明は、引用発明1、引用文献2の事項、引用文献3の事項及び引用文献4の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用発明2を主とした理由について
(1)対比
本願発明と引用発明2とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者の「冷蔵庫1」は、前者の「冷蔵庫」に相当する。
・後者の「冷蔵室2を開閉し、それぞれ右端及び左端を支点に回動する左右一対の断熱扉2a、2b」は、冷蔵室の前面開口部を覆うように取り付けられるもの、すなわち、冷蔵庫本体の前面開口部に取り付けられるものであるから、前者の「冷蔵庫本体の前面開口部に取り付けられた扉本体」に相当する。
そして、後者においても、「左右一対の断熱扉2a、2b」を備えることから、前者の「前記扉本体は左右一対設けられ」る態様を備えている。
・後者の「右側の前記断熱扉2aの前面に配されたガラス板20」は、ガラス製であるために非導電性であることは明らかであり、「断熱扉2a」の前面に設置されるから、前者の「前記扉本体の前面に設置された非導電性の前面板」に相当する。
・後者の「前記ガラス板20に貼着した保護フィルムの背面には、前記断熱扉2aの前面から見て前記ガラス板20よりも小さく形成され、厚さ0.45mmの鉄板から形成された金属板26が配されて、前記ガラス板20の前面にマグネットを付着できるようにされた」態様は、前者の「前記前面板の裏面の前記無線通信部に対向する位置には導電性部材が配置されておらず、前記前面板の裏面の当該位置と異なる位置に導電性部材が配置され」、「前記導電性部材は、前記左右一対の扉本体のうちの他方に設けられている」に、「前記前面板の裏面に導電性部材が配置され」、「前記導電性部材は、前記左右一対の扉本体のうちの少なくとも一方に設けられている」ている、という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「冷蔵庫本体の前面開口部に取り付けられた扉本体と、
前記扉本体の前面に設置された非導電性の前面板と、を備え、
前記前面板の裏面に導電性部材が配置され、
前記扉本体は左右一対設けられ、
前記導電性部材は、前記左右一対の扉本体のうちの少なくとも一方に設けられている冷蔵庫。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点B-1]
本願発明では、「前記扉本体における前記前面板の裏側に設置され、情報の無線通信を行う無線通信部」を備え、「前記無線通信部は、前記左右一対の扉本体のうちの一方の扉本体に設けられ、かつ、前記冷蔵庫本体の左右の側壁のうち、当該一方の扉本体が位置する側の側壁に近い位置に設けられ」るのに対して、引用発明2では、そのような無線通信部を備えていない点。

[相違点B-2]
「前記前面板の裏面に導電性部材が配置され」、「前記導電性部材は、前記左右一対の扉本体のうちの少なくとも一方に設けられている」ことに関し、本願発明では、「前記前面板の裏面の前記無線通信部に対向する位置には導電性部材が配置されておらず、前記前面板の裏面の当該位置と異なる位置に導電性部材が配置され」、「前記導電性部材は、前記左右一対の扉本体のうちの他方に設けられている」のに対して、引用発明2では、「前記ガラス板20に貼着した保護フィルムの背面には、前記断熱扉2aの前面から見て前記ガラス板20よりも小さく形成され、厚さ0.45mmの鉄板から形成された金属板26が配されて、前記ガラス板20の前面にマグネットを付着できるようにされた」点。

(2)判断
ア 相違点の検討
上記相違点B-1及びB-2について検討する。
引用発明2の左側の断熱扉2bについては、引用文献2の段落0067に「第1、第2実施形態において、冷蔵室2の断熱扉2aを例として説明したが、他の断熱扉2b、3a、4a、5a、6aを断熱扉2aと同様な構成にしてもよい。」と記載されているように、金属板26を設けることは任意であって、金属板26を設けない態様が想定され、また、断熱扉の前面にガラス板を配することが従来より行われていること(引用文献2の段落0002?0004)を考慮すると、前面にガラス板を配する態様が想定される。
また、無線通信部が金属製の部材で覆われると情報の無線通信が妨げられてしまうことが、本願の出願前に技術常識であることを考慮すると、引用文献3の事項及び引用文献4の事項は、冷蔵庫の扉本体における金属製の部材(導電性部材)によって前面が覆われない箇所に無線通信アダプターや無線タグ等の無線通信部を配置することにより情報の無線通信を行うことを可能とするものといえる。
そして、引用文献3の事項及び引用文献4の事項は、遠隔地から冷蔵庫の食品の在庫状況が確認できたり(引用文献3の段落0002)、外部から冷蔵庫を操作することができる(引用文献4の段落0006)ようにするものであり、冷蔵庫の利便性を向上するものであるから、冷蔵庫という共通の技術分野に属する引用発明2において、引用文献3の事項及び引用文献4の事項を適用し、「断熱扉(扉本体)におけるガラス板(前面板)の裏側に設置され、情報の無線通信を行う無線通信部」を、左右一対設けられた断熱扉2a、2bのいずれかにおける金属版26(導電性部材)によって前面が覆われない箇所に設けて、情報の無線通信が妨げられないようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用発明2において、ガラス板(前面板)の裏面に金属板26(導電性部材)と無線通信部を配置する際に、冷蔵庫の前面からみて金属板26(導電性部材)と無線通信部とが重ならず、無線通信部による情報の無線通信を妨げないようにすること以外、無線通信部は、左右一対設けられた断熱扉2a、2bのいずれかにおける任意の箇所に配置できるのであるから、「ガラス板(前面板)の裏面の無線通信部に対向する位置には金属板26(導電性部材)が配置されておらず、前記ガラス板の裏面の当該位置と異なる位置に金属板26(金属板)が配置され」、「前記無線通信部は、左右一対の断熱扉2a、2b(扉本体)のうちの左側の断熱扉2b(一方の扉本体)に設けられ、かつ、冷蔵庫本体の左右の側壁のうち、当該左側の断熱扉2bが位置する側の側壁に近い位置に設けられ、前記金属板26は、前記左右一対の断熱扉2a、2bのうちの右側の断熱扉2a(他方)に設けられている」ようにすることは、冷蔵庫の利便性、無線通信部への配線のし易さ、コスト等を考慮して、当業者が適宜なし得たことである。
そうすると、引用発明2において、上記相違点B-1及びB-2に係る本願発明の構成とすることは、引用文献3の事項及び引用文献4の事項に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

イ 効果について
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明2、引用文献3の事項及び引用文献4の事項から予測し得る範囲のものである。

ウ 小括
したがって、本願発明は、引用発明2、引用文献3の事項及び引用文献4の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 請求人の主張について
なお、請求人は、令和2年5月13日に提出された意見書において、「このように、引用文献1?4のいずれにも、本願発明の特に前記した構成『F』、すなわち『前記無線通信部は、前記左右一対の扉本体のうちの一方の扉本体に設けられ、かつ、前記冷蔵庫本体の左右の側壁のうち、当該一方の扉本体が位置する側の側壁に近い位置に設けられ、前記導電性部材は、前記左右一対の扉本体のうちの他方に設けられている』ことの記載がない。
このため、引用文献1?4に記載の発明をどのように組み合わせても、本願発明に想到することはない。
本願発明は、左右一対の扉本体のうちの一方の扉本体に設けた無線通信部を、冷蔵庫本体の左右の側壁のうち、当該一方の扉本体が位置する側の側壁に近い位置に設けることで、無線通信部が他方の扉に設けた導電性部材からより離れた位置に配置されることとなる。これにより、前面板の裏側に配置した無線通信部は、導電性部材の影響を受けにくくなって通信機能を維持できるのであり、このような点については引用文献1?4には一切開示がない。」(2頁18行?同頁30行)という主張をする。
しかしながら、本願発明において、「前記無線通信部は、前記左右一対の扉本体のうちの一方の扉本体に設けられ、かつ、前記冷蔵庫本体の左右の側壁のうち、当該一方の扉本体が位置する側の側壁に近い位置に設けられ、前記導電性部材は、前記左右一対の扉本体のうちの他方に設けられている」ことについては、無線通信部が導電性の部材(金属製の部材)で覆われると情報の無線通信が妨げられてしまうことが、本願の出願前に技術常識であり、無線通信部を情報の無線通信が妨げられないように導電性部材から離して配置することは設計上考慮されることであるから、上記1及び2で検討したとおり、当業者が適宜なし得たことである。
また、「前面板の裏側に配置した無線通信部は、導電性部材の影響を受けにくくなって通信機能を維持できる」という効果についても、引用発明1において、着色ガラス板6(前面板)の裏面に金属板(導電性部材)と無線通信部を配置する際に考慮されることであり、また、引用発明2において、ガラス板(前面版)の裏面に金属板26(導電性部材)と無線通信部を配置する際に考慮されることであって、格別なものとは認めることができない。
そうすると、上記請求人の主張は採用することができない。

4 まとめ
上記1ないし3の検討によれば、本願発明は、引用発明1、引用文献2の事項、引用文献3の事項及び引用文献4の事項に基いて、又は、引用発明2、引用文献3の事項及び引用文献4の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-08-03 
結審通知日 2020-08-04 
審決日 2020-08-20 
出願番号 特願2017-199140(P2017-199140)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 塚本 英隆
槙原 進
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 三好 秀和  

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