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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G21F
管理番号 1366912
審判番号 不服2019-9235  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-10 
確定日 2020-10-08 
事件の表示 特願2015-192163号「放射性物質除去用の空気清浄装置を備えた一時避難施設、及び、その一時避難施設用システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年4月21日出願公開、特開2016-57305号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成27年9月8日(優先権主張 平成26年9月9日)を出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成30年12月21日付け:拒絶理由通知
平成31年 2月14日 :意見書及び手続補正書
平成31年 4月 3日付け:拒絶査定(謄本送達日 同年同月10日)
令和元年 7月10日 :審判請求及び手続補正書
令和2年 2月28日付け:拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由」とい
う。発送日 同年3月3日)
令和2年 5月 1日 :意見書及び手続補正書

2.本願発明
本願請求項1及び2に係る発明は、令和2年5月1日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである(A?Iは、本願発明を分説するために当審で付した。)。
「【請求項1】
A 放射性物質を含む大気中の気体の放射性物質を除去が可能な空気清浄装置本体を備えると共に、
B 上記空気清浄装置本体と同期して稼働される陽圧型の一時避難用施設を備え、
C かつ上記空気清浄装置本体のO N状態あるいはO F F 状態を指令する制御装置を備え、
D 上記空気清浄装置本体は、上方に配される高気密ダンパーとその下方に配される密閉交換型チャンバ一部とその下方であって水平方向に配置される高気密ダンパ一部とより構成される圧縮型で陽圧型の装置本体であって、
E 上記密閉交換型チャンバ一部は、50 m^(3)/ m i n 以上とする多風量型であって、
F 送流路の流入口側から流出口側に向けてプレフィルタとH E P Aフィルタとアミン類が添着されてなる活性炭素繊維フィルタとよりなる放射性物質除去用フィルタを順次配置し、
G 上記高気密ダンパ一部に続いて、高い気密性を有する送風機を有する と共に、上記一時避難用施設と連結され、
H 上記制御装置のO N状態下では、上記活性炭素繊維フィルタが非加熱状態下で稼働される
I ことを特徴とする放射性物質除去用の空気清浄装置を備えた一時避難施設。」

3.拒絶の理由
当審拒絶理由の理由3は、次のとおりのものである。
この出願の請求項1、2に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?5に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2014-35286号公報
引用文献2.特開平11-101893号公報
引用文献3.特開昭60-174444号公報
引用文献4.登録実用新案第3006848号公報
引用文献5.特開2013-40884号公報

4.引用文献の記載及び引用発明、引用文献に記載された事項
(1)引用文献1について
ア 引用文献1には下記の記載がある(なお、下線は当審が付した。以下同じ。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性ガスを除去する放射性ガス除去装置に関する。」

(イ)「【0039】
[実施形態1]
図1は、本実施形態に係る放射性ガス除去装置の概略図である。図1に示すように、本実施形態の放射性ガス除去装置1は、ケーシング2と、送風機3と、放射性ガスフィルタ4と、下流側高性能フィルタ5と、ガス処理フィルタ6と、を含む。
【0040】
ケーシング2は、周囲が外壁2Aで囲まれた筒状に形成され、その一端側2Bおよび他端側2Cに開口部2Ba,2Caがそれぞれ形成されている。筒状は、例えば、円筒や矩形筒などがあり、その断面形状に限定はない。
【0041】
送風機3は、ケーシング2の他端側2Cに設けられている。そして、送風機3は、図1中に矢印で示すようにケーシング2の一端側2Bの開口部2Baから他端側2Cの開口部2Caにかけてケーシング2の内部にガスGを流通させる。
【0042】
放射性ガスフィルタ4は、ケーシング2の内部に設けられている。この放射性ガスフィルタ4は、ケーシング2の内部を流通されるガスG中に含まれる放射性よう素および放射性よう化メチルを吸着する。具体的に、放射性ガスフィルタ4は、母体を構成する基材と、この基材に添着される添着物質とを含む。基材に用いられる材料としては、特に限定されるものではなく、表面に複数の細孔を有するものであればよく、例えば、活性炭、アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、活性白土などが挙げられる。ゼオライトとしては、天然ゼオライトまたは合成ゼオライトのどちらでもよい。また、ゼオライトとして、モルデナイト系ゼオライトなどが挙げられる。基材は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、放射性ガスフィルタ4は、添着物質として、トリエチレンジアミン(TEDA:Tri-Ethylene-Di-Amine)またはよう化カリウム(KI)を含む。この放射性ガスフィルタ4は、上記構成により、放射性よう素および放射性よう化メチルの他、Cs(セシウム)などを含む放射性物質を吸着する。
【0043】
下流側高性能フィルタ5は、ケーシング2の内部であって放射性ガスフィルタ4よりもガスGの流通の下流側に設けられている。この下流側高性能フィルタ5は、放射性ガスフィルタ4から離散される粒子を捕集する。放射性ガスフィルタ4は、上述したように、例えば、活性炭、アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、活性白土などを基材としている。このため、下流側高性能フィルタ5は、何らかの事象により放射性ガスフィルタ4の基材が破砕されて離散した場合に、破砕片が放出されないように、破砕片を捕集する。下流側高性能フィルタ5は、例えば、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter;対象粒子径が0.15[μm]で99.97[%]の除去効率)が適用される。
【0044】 ガス処理フィルタ6は、ケーシング2の内部であって放射性ガスフィルタ4よりもガスGの流通の上流側に設けられている。このガス処理フィルタ6は、ケーシング2の内部を流通されるガスG中に含まれる有機溶剤ガス成分や酸性ガス成分を捕集する。具体的に、ガス処理フィルタ6は、母体を構成する基材と、この基材に添着される添着物質とを含む。基材に用いられる材料としては、特に限定されるものではなく、表面に複数の細孔を有するものであればよく、例えば、活性炭、アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、モレキュラーシーブなどが挙げられる。ゼオライトとしては、天然ゼオライトまたは合成ゼオライトのどちらでもよい。また、ゼオライトとして、モルデナイト系ゼオライトなどが挙げられる。基材は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、ガス処理フィルタ6は、添着物質として、酸性成分、アルカリ成分、トリエチレンジアミン(TEDA:Tri-Ethylene-Di-Amine)、よう化カリウム(KI)の少なくとも1つを含む。このガス処理フィルタ6は、上記構成により、放射性よう素および放射性よう化メチルならびにCs(セシウム)などを含む放射性物質を吸着する。・・・
【0048】
また、図2の本実施形態に係る放射性ガス除去装置の概略図に示すように、本実施形態の放射性ガス除去装置1は、図1に示す放射性ガス除去装置1において、ケーシング2の内部であってガス処理フィルタ6よりもガスGの流通の上流側に設けられておりガスG中に含まれる粒子を捕集する上流側高性能フィルタ7をさらに含むことが好ましい。
【0049】
上流側高性能フィルタ7は、下流側高性能フィルタ5と同様に、例えば、HEPAフィルタが適用される。・・・
【0056】
また、図4の本実施形態に係る放射性ガス除去装置の概略図に示すように、本実施形態の放射性ガス除去装置1は、図1に示す放射性ガス除去装置1において、ケーシング2の内部であってガス処理フィルタ6よりもガスGの流通の上流側に設けられておりガスG中に含まれる粒子を捕集する上流側高性能フィルタ7と、ケーシング2の内部であって上流側高性能フィルタ7よりもガスGの流通の上流側に設けられておりガスG中に含まれる粗粒子を捕集する粗フィルタ8と、をさらに含むことが好ましい。
【0057】
この放射性ガス除去装置1によれば、送風機3によりケーシング2の一端側2Bから他端側2Cにかけてケーシング2の内部を流通するガスGは、粗フィルタ8、上流側高性能フィルタ7、ガス処理フィルタ6、放射性ガスフィルタ4、下流側高性能フィルタ5を順次通過してケーシング2の外部に放出される。この際、まず、粗フィルタ8により、ガスG中に含まれる粗粒子(塵埃など)を捕集する。次に、上流側高性能フィルタ7により、ガスG中に含まれる粒子を捕集する。次に、ガス処理フィルタ6により、ガスG中に含まれる有機溶剤ガス成分や酸性ガス成分を吸着する。次に、放射性ガスフィルタ4により、ガスG中に含まれる放射性よう素および放射性よう化メチルならびに放射性物質を吸着する。次に、下流側高性能フィルタ5により、放射性ガスフィルタ4から離散される粒子を捕集する。・・・
【0059】
また、本実施形態の放射性ガス除去装置1では、ガス処理フィルタ6は、活性炭、アルミナ、シリカゲル、ゼオライトまたはモレキュラーシーブが、粒子状または繊維状あるいは粉末状に形成された基材により成形されることが好ましい。
【0060】
この放射性ガス除去装置1によれば、ガス処理フィルタ6により有機溶剤ガス成分や酸性ガス成分および水分ミストやミスト状成分とともに、放射性よう素ならびに放射性物質を吸着することができ、放射性ガスフィルタ4での放射性よう素および放射性よう化メチルの吸着性能を向上することが可能になるとともに、放射性ガスフィルタ4の性能低下をより抑えることが可能になる。
【0061】
さらに、ガス処理フィルタ6は、前記基材上に、酸性成分、アルカリ成分、トリエチレンジアミン、よう化カリウムの少なくとも1つを添着することが好ましい。」

(ウ)「【0063】
[実施形態2]
図5は、本実施形態に係る放射性ガス除去装置の概略図である。本実施形態の放射性ガス除去装置1は、図1に示す放射性ガス除去装置1において、加熱手段9をさらに含む。・・・
【0070】
このように、本実施形態の放射性ガス除去装置は、加熱手段9を含むことにより、放射性ガスフィルタ4への湿分による影響を抑え、放射性ガスフィルタ4での放射性よう素および放射性よう化メチルならびに放射性物質の吸着性能を向上することが可能になる。」

(エ)「【0123】
[実施形態5]
図12および図13は、本実施形態に係る放射性ガス除去装置の概略図である。図12および図13は、上述した実施形態1や実施形態2における放射性ガス除去装置1の使用方法を示す。図12および図13では、図8に示す放射性ガス除去装置1を適用した例を示している。
【0124】
図12に示すように、放射性ガス除去装置1は、ケーシング2の筒状の一端側2Bが放射性ガスを含む局所空間12に接続され、ケーシング2の筒状の他端側2Cが外気に開放される。放射性ガスを含む局所空間12は、例えば、放射性ガスの発生源となり得る原子力発電所の原子炉格納容器の内部がある。すなわち、原子炉格納容器の内部で放射性ガスが発生した場合、当該放射性ガスが原子炉格納容器の外部に漏洩しないように、放射性ガス除去装置1により放射性ガスを除去することが可能である。
【0125】
また、図13に示すように、放射性ガス除去装置1は、ケーシング2の筒状の一端側2Bが放射性ガスを含む外気に開放され、ケーシング2の筒状の他端側2Cが局所空間13に接続される。局所空間13は、例えば、原子力災害時に原子力防災対策活動を推進するための緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)などや避難施設などを含む。すなわち、放射性ガスが外気に漏洩した場合、当該放射性ガスが局所空間13に浸入しないように、放射性ガス除去装置1により放射性ガスを除去することが可能である。」

(オ)図4及び図13は次のとおりである。


イ 上記「ア」「(エ)」「【0123】」には「[実施形態5]」として、「図12および図13は、本実施形態に係る放射性ガス除去装置の概略図である。図12および図13は、上述した実施形態1や実施形態2における放射性ガス除去装置1の使用方法を示す。図12および図13では、図8に示す放射性ガス除去装置1を適用した例を示している。」と記載されている。
以下、後記引用発明を認定するにあたり、上記の「[実施形態5]」として記載されている、「図8に示す放射性ガス除去装置1を適用した例を示している」図13に示される放射性ガス除去装置において、図8に示す放射性ガス除去装置1に代えて図4に示す放射性ガス除去装置1を適用したものに基づいて引用発明を認定する。

上記のように認定するに際しては、引用文献1における下記の記載を踏まえた。
(ア)図13に示される放射性ガス除去装置において、図8に示す放射性ガス除去装置1に代えて図4に示す放射性ガス除去装置1を適用できる点について。
後記a及びbのとおり、図13は、実施形態1における放射性ガス除去装置1の使用方法を示すところ(後記a)、当該実施形態1は図4に示す放射性ガス除去装置1を含んでいる。
a 「図12および図13は、上述した実施形態1や実施形態2における放射性ガス除去装置1の使用方法を示す。図12および図13では、図8に示す放射性ガス除去装置1を適用した例を示している。」(上記「ア」「(エ)」【0123】)
b 「【0039】
[実施形態1]
図1は、本実施形態に係る放射性ガス除去装置の概略図である。図1に示すように、本実施形態の放射性ガス除去装置1は、ケーシング2と、送風機3と、放射性ガスフィルタ4と、下流側高性能フィルタ5と、ガス処理フィルタ6と、を含む。・・・
【0056】
また、図4の本実施形態に係る放射性ガス除去装置の概略図に示すように、本実施形態の放射性ガス除去装置1は、図1に示す放射性ガス除去装置1において、ケーシング2の内部であってガス処理フィルタ6よりもガスGの流通の上流側に設けられておりガスG中に含まれる粒子を捕集する上流側高性能フィルタ7と、ケーシング2の内部であって上流側高性能フィルタ7よりもガスGの流通の上流側に設けられておりガスG中に含まれる粗粒子を捕集する粗フィルタ8と、をさらに含むことが好ましい。」(上記「ア」「(イ)」)

(イ)図13に示される放射性ガス除去装置において、図8に示す放射性ガス除去装置1に代えて図4に示す放射性ガス除去装置1を適用したものは、加熱手段9を含まない点について。
後記のとおり、[実施形態1]に対して、[実施形態2]は、「加熱手段9をさらに含む」ことで、「放射性ガスフィルタ4での放射性よう素および放射性よう化メチルならびに放射性物質の吸着性能を向上する」ものであるから、図4に示す放射性ガス除去装置1を含む[実施形態1]は「加熱手段9」を含まないものである。
「【0063】
[実施形態2]
図5は、本実施形態に係る放射性ガス除去装置の概略図である。本実施形態の放射性ガス除去装置1は、図1に示す放射性ガス除去装置1において、加熱手段9をさらに含む。・・・
【0070】
このように、本実施形態の放射性ガス除去装置は、加熱手段9を含むことにより、放射性ガスフィルタ4への湿分による影響を抑え、放射性ガスフィルタ4での放射性よう素および放射性よう化メチルならびに放射性物質の吸着性能を向上することが可能になる。」(上記「ア」「(ウ)」)

(ウ)図4に示される放射性ガス除去装置を認定するにあたり、図1に示される放射性ガス除去装置を参酌する点について。
後記のとおり、図4に示される放射性ガス除去装置は図1に示される放射性ガス除去装置にさらに「上流側高性能フィルタ7」及び「粗フィルタ8」をさらに含むものであるから、その余の構成は図1に準拠している。
「また、図4の本実施形態に係る放射性ガス除去装置の概略図に示すように、本実施形態の放射性ガス除去装置1は、図1に示す放射性ガス除去装置1において、ケーシング2の内部であってガス処理フィルタ6よりもガスGの流通の上流側に設けられておりガスG中に含まれる粒子を捕集する上流側高性能フィルタ7と、ケーシング2の内部であって上流側高性能フィルタ7よりもガスGの流通の上流側に設けられておりガスG中に含まれる粗粒子を捕集する粗フィルタ8と、をさらに含むことが好ましい。」(上記「ア」「(イ)」【0056】)

(エ)図4に示される放射性ガス除去装置を認定するにあたり、図2に示される放射性ガス除去装置を参酌する点について。
後記のとおり、図4に示される放射性ガス除去装置の「上流側高性能フィルタ7」については、既に、図2に示される放射性ガス除去装置で説明がなされている。
「【0048】
また、図2の本実施形態に係る放射性ガス除去装置の概略図に示すように、本実施形態の放射性ガス除去装置1は、図1に示す放射性ガス除去装置1において、ケーシング2の内部であってガス処理フィルタ6よりもガスGの流通の上流側に設けられておりガスG中に含まれる粒子を捕集する上流側高性能フィルタ7をさらに含むことが好ましい。
【0049】
上流側高性能フィルタ7は、下流側高性能フィルタ5と同様に、例えば、HEPAフィルタが適用される。・・・」(上記「ア」「(イ)」)

したがって、上記アによれば、引用文献1には下記の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ケーシング2の一端側2Bから他端側2Cにかけてケーシング2の内部に(【0057】)、
ガスG中に含まれる粗粒子(塵埃など)を捕集する粗フィルタ8と(【0057】)、
HEPAフィルタが適用される上流側高性能フィルタ7と(【0049】)、
ガス処理フィルタ6と、
母体を構成する活性炭、アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、活性白土等の基材と、この基材に添着されるトリエチレンジアミン(TEDA:Tri-Ethylene-Di-Amine)またはよう化カリウム(KI)を含む添着物質とを含み、放射性よう素及び放射性よう化メチルを吸着する放射性ガスフィルタ4と(【0042】)、
下流側高性能フィルタ5、及び、
ケーシング2の他端側2Cに設けられ、ケーシング2の一端側2Bの開口部2Baから他端側2Cの開口部2Caにかけてケーシング2の内部にガスGを流通させる送風機3と(【0041】)、を順に備える、放射性ガスフィルタ4での放射性よう素および放射性よう化メチルならびに放射性物質の吸着性能を向上する加熱手段9を含まない、放射性ガス除去装置1であって、
ケーシング2の筒状の一端側2Bが放射性ガスを含む外気に開放され、ケーシング2の筒状の他端側2Cが接続される、原子力災害時に原子力防災対策活動を推進するための緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)などや避難施設などである局所空間13(【0125】)。」

(2)引用文献2について
ア 引用文献2には下記の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原子力発電プラント等の原子炉を有する原子力設備において、定期点検時等に用いられる移動式の沃素除去局所排気装置に関する。」
「【0006】
【発明の実施の形態】図1及び図2を参照して本発明の沃素除去局所排気装置の実施例を説明する。ミキシングチャンバ1と、第1フィルタチャンバ2と、第2フィルタチャンバ3とを直列に配設してボルト22で連結し、第2フィルタチャンバ3の流出口側を連結筒4を介して吸引ファン5の吸入口51に接続されている。ミキシングチャンバ1は、風量調整ダンパ7及び逆流防止ダンパ8とを備えた外部空気導入口6と、汚染された空気を排出すべき任意の場所に接続する接続口9とが突設されるとともに、内部にミストを除去するデミスタフィルタ10が配置され、側壁に覗き窓11とドレン抜き孔12が設けられている。
【0007】第1フィルタチャンバ2内に、上流側に設けられた電気ヒータ13と、下流側に設けられた前置高性能フィルタ14とが配設されている。第2フィルタチャンバ3内には、上流側に設けられたチャコールフィルタ15と、下流側に設けられた後置高性能フィルタ16とが配設され、下流側端部側壁に風量測定口17が穿設されており、連結筒4の側壁に温度測定口18が開設されている。
【0008】吸引ファン5はモータ50で駆動され、その吹出口には風量調整ダンパ19が設けられており、第1フィルタチャンバ2の上に電気ヒータ13及び吸引ファン5の制御盤20が配設され、制御盤20の操作により、起動・停止を行なう。なお、ミキシングチャンバ1と、第1フィルタチャンバ2と、第2フィルタチャンバ3と、吸引ファン5とは、それぞれ下部にキャスタ21を有している。」

イ 上記アを踏まえると、引用文献2には下記の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されている。
「ミキシングチャンバと、第1フィルタチャンバと、第2フィルタチャンバとを直列に配設してボルトで連結し、第2フィルタチャンバの流出口側を連結筒を介して吸引ファンの吸入口に接続されている沃素除去局所排気装置の外部空気導入口は風量調整ダンパ及び逆流防止ダンパとを備え、吹出口には風量調整ダンパが設けられている点。」

(3)引用文献3について
ア 引用文献3には下記の記載がある。
「本発明は、僻地の観測所1通信中継所およびこれに類する無人の電気機器収納機械室のメインテナンスフリー化と3機器の寿命や耐用年数の向上を図った。かような屋外設置型無人電気機械室の防護装置に関する」(1頁左欄下から4行?右欄1行)。
「1は既述の如き山岳地帯などの屋外に設置される無人制御室を示しており、この中には、制御器や通信器などの電子機器類が設置される。この無人制御室1は外気と遮断される密閉構造となっており、扉は内開きとなっている。本発明においては、この無人制御室用の特殊な空調設備2を設置するのであるが、まず、この空調設備2から無人制御室1への給気ダクト3にコントロールダンパ5を取りつける。このコントロールダンパ5はその開度を電気信号により自動制御できる自動ダンパであり、この制御信号として、室の内外の差圧を検出する差圧計4の検出信号を使用する。そしてこのコントロールダンパ5の制御により、無人制御室1内の圧力が室外の圧力より常に若干高くなるが、或る一定値例えば5mmAqを越えない値となる状態が維持できるようにする。
空調設備2には、外気取入口9と給気口10との間に、プレフイルタ6、化学吸着フイルタ7、冷却コイル8およびファン11が空気流れの順に設置され、化学吸着フイルタ7と冷却コイル8との間に、還気吸込口12があり、この還気吸込口12は、還気ダクト14を経て無人制御室1の空気吸込口13に連結されている。15はこの還気量を制御するダンパである。またプレフイルタ6の上流側には外気取入れ量を制御する外気ダンパ17が取付けてあり、その上流側には外気に伴って流入する大型のごみ類を除去する金網やパンチングボードなどの粗フイルタ16が設けてある。」
化学吸着フイルタ7は、SO_(X)やNO_(X)などの機器の接点に対して酸化性の有害物質を化学的に吸着除去するエアフイルタであり、例えば過マンガン酸カリなどのを含む化学吸着剤がその中に含浸させてある。プレフイルタ6は外路塵や既述のHC等を除去する。」(2頁右上欄15行?右下欄8行)

イ 上記アを踏まえると、引用文献3には下記の事項(以下「引用文献3に記載された事項」という。)が記載されている。
「空調設備2には、外気取入れ量を制御する外気ダンパ17が取付けてあり、空調設備2から無人制御室1への給気ダクト3にその開度を電気信号により自動制御できる自動ダンパであるコントロールダンパ5を取りつけてある点。」

(4)引用文献4について
ア 引用文献4には下記の記載がある。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】
本願考案は、ダストや有害ガス等の捕集機能を有する排風機に関し、特に原子力施設で有効に機能する排風機に関するものである。」
(イ)「【0037】
この第1実施例の排風機Z_(1)は、次のようにして使用される。即ち、例えば原子力施設内において、図1に示すように、入口フード2の吸気口21に吸気ダクト20を接続し、排気ファン5の排気口51に排気ダクト50を接続する。吸気ダクト20は、直接グリーンハウス(ポリシートで囲った作業室)内に接続される。又、排気ダクト50の先端側は大気中に開放されている。」
(ウ)図1は次のとおりである。


(エ)上記(ア)及び(イ)の記載を踏まえて、上記(ウ)の図1をみると、吸気口21は排風機Z_(1)の上方に配され、排気口51は排風機Z_(1)の下方であって水平方向に配置されることが見てとれる。

イ 上記アを踏まえると、引用文献4には下記の事項(以下「引用文献4に記載された事項」という。)が記載されている。
「原子力施設で有効に機能する排風機において、吸気口は排風機の上方に配され、排気口は排風機の下方であって水平方向に配置される点。」

(5)引用文献5について
ア 引用文献5には下記の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質を放出する危険性を有する施設に設置される放射性物質除去装置に関する。」
(イ)「【発明を実施するための形態】
【0035】
一例として示す放射性物質除去装置10の正面図である図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかる放射性物質除去装置の詳細を説明すると、以下のとおりである。・・・
【0039】
ケーシング12は、鉄やアルミニウム、合金等の金属または合成樹脂から作られている。ケーシング12の頂壁19には、所定面積の空気流入口27を有する上下方向へ長い円筒状の吸気管28が設置(固定)されている。吸気管28は、鉄やアルミニウム、合金等の金属または合成樹脂から作られている。空気流入口27は、図4に示すように、その平面形状が円形に成形されている。ケーシング12の底壁20には、所定面積の空気流出口(図示せず)が形成されている。・・・
【0049】
送風機13は、機器設置用架台11の下部に配置(固定)されている。送風機13は、ケーシング12の底壁20に形成された空気流出口に気密に連結され、ケーシング12に空気を強制的に流入させる。送風機13は、インターフェイスを介してコントロールボックス17に接続されている。送風機13には、排気管46が連結されている。送風機13には、遠心型送風機が使用されているが、軸流送風機や、斜流送風機を使用することもできる。」
(ウ)図1、2は次のとおりである。


(エ)上記(ア)及び(イ)の記載を踏まえて、上記(ウ)の図1、2をみると、放射性物質除去装置10の上方のケーシング12の頂壁19には、空気流入口27を有する上下方向へ長い円筒状の吸気管28が設置され、放射性物質除去装置10の下方の送風機13には、水平方向に排気管46が連結されていることが見てとれる。

イ 上記アを踏まえると、引用文献5には下記の事項(以下「引用文献5に記載された事項」という。)が記載されている。
「放射性物質除去装置の上方のケーシングの頂壁には、空気流入口を有する上下方向へ長い円筒状の吸気管が設置され、放射性物質除去装置の下方の送風機には、水平方向に排気管が連結されている点。」

5.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「放射性よう素及び放射性よう化メチルを吸着する放射性ガスフィルタ4」を備えた「放射性ガス除去装置1」は、本願発明の「放射性物質を含む大気中の気体の放射性物質を除去が可能な」「空気清浄装置本体」(構成A)に相当する。

(イ)引用発明の「放射性ガス除去装置1」は、「ケーシング2の他端側2Cに設けられ、ケーシング2の一端側2Bの開口部2Baから他端側2Cの開口部2Caにかけてケーシング2の内部にガスGを流通させる送風機3」を備え、「ケーシング2の筒状の一端側2Bが放射性ガスを含む外気に開放され、ケーシング2の筒状の他端側2Cが(局所空間13に)接続され」るものであるから、「局所空間13」には「放射性ガス除去装置1」の「送風機3」で空気を送り込まれるものであり、よって、「局所空間13」は「陽圧型」であるといえる。
また、引用発明の「局所空間13」は「原子力災害時に原子力防災対策活動を推進するための緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)などや避難施設などである」から、本願発明の「一時避難用施設」に相当する。
したがって、引用発明の「ケーシング2の他端側2Cに設けられ、ケーシング2の一端側2Bの開口部2Baから他端側2Cの開口部2Caにかけてケーシング2の内部にガスGを流通させる送風機3」を備える「放射性ガス除去装置1」が「接続され」る「局所空間13」は、本願発明の「上記空気清浄装置本体と同期して稼働される陽圧型の」「一時避難用施設」(構成B)に相当する。

(ウ)引用発明の「放射性ガス除去装置1」は、「ケーシング2」の内部に構成されているから、密閉機能を有する(密閉型)チャンバー部であるといえる。
したがって、引用発明の「ケーシング2の他端側2Cに設けられ、ケーシング2の一端側2Bの開口部2Baから他端側2Cの開口部2Caにかけてケーシング2の内部にガスGを流通させる送風機3」を備える「放射性ガス除去装置1」は、本願発明の「上記空気清浄装置本体は、上方に配される高気密ダンパーとその下方に配される密閉交換型チャンバ一部とその下方であって水平方向に配置される高気密ダンパ一部とより構成される圧縮型で陽圧型の装置本体」(構成D)と、「上記空気清浄装置本体は、密閉型チャンバー部より構成される圧縮型で陽圧型の装置本体」(以下「構成D´」という。)である点で一致する。

(エ)引用発明の「ケーシング2の一端側2Bから他端側2Cにかけてケーシング2の内部に、ガスG中に含まれる粗粒子(塵埃など)を捕集する粗フィルタ8と、HEPAフィルタが適用される上流側高性能フィルタ7と、」「母体を構成する活性炭、アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、活性白土等の基材と、この基材に添着されるトリエチレンジアミン(TEDA:Tri-Ethylene-Di-Amine)またはよう化カリウム(KI)を含む添着物質とを含み、放射性よう素及び放射性よう化メチルを吸着する放射性ガスフィルタ4」「を順に備える放射性ガス除去装置1」は、本願発明の「送流路の流入口側から流出口側に向けてプレフィルタとH E P Aフィルタとアミン類が添着されてなる活性炭素繊維フィルタとよりなる放射性物質除去用フィルタを順次配置」(構成F)することに相当する。

(オ)引用発明の「ケーシング2の他端側2Cに設けられ、ケーシング2の一端側2Bの開口部2Baから他端側2Cの開口部2Caにかけてケーシング2の内部にガスGを流通させる送風機3」であって「ケーシング2の筒状の他端側2Cが(局所空間13に)接続され」ることは、本願発明の「上記高気密ダンパ一部に続いて、高い気密性を有する送風機を有する と共に、上記一時避難用施設と連結され」(構成G)ることと、「送風機を有すると共に、上記一時避難用施設と連結され」(以下「構成G´」という。)ることの点で一致する。

(カ)引用発明の「母体を構成する活性炭、アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、活性白土等の基材と、この基材に添着されるトリエチレンジアミン(TEDA:Tri-Ethylene-Di-Amine)またはよう化カリウム(KI)を含む添着物質とを含み、放射性よう素及び放射性よう化メチルを吸着する放射性ガスフィルタ4」に関して、引用発明は「放射性ガスフィルタ4での放射性よう素および放射性よう化メチルならびに放射性物質の吸着性能を向上する加熱手段9を含まない」から、当該構成は、本願発明の「上記制御装置のO N状態下では、上記活性炭素繊維フィルタが非加熱状態下で稼働される」(構成H)のうち、「上記活性炭素繊維フィルタが非加熱状態下で稼働される」(以下「構成H´」という。)ことに相当する。

(キ)引用発明の「ケーシング2の筒状の一端側2Bが放射性ガスを含む外気に開放され、ケーシング2の筒状の他端側2Cが接続される、原子力災害時に原子力防災対策活動を推進するための緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)などや避難施設などである」「局所空間13」は、本願発明の「放射性物質除去用の空気清浄装置を備えた一時避難施設」(構成I)に相当する。

(ク)以上(ア)ないし(キ)によれば、本願発明と引用発明は、下記点で一致するとともに、下記各点で相違すると認められる
〈一致点〉
「A 放射性物質を含む大気中の気体の放射性物質を除去が可能な空気清浄装置本体を備えると共に、
B 上記空気清浄装置本体と同期して稼働される陽圧型の一時避難用施設を備え、
D´ 上記空気清浄装置本体は、密閉型チャンバー部より構成される圧縮型で陽圧型の装置本体であって、
F 送流路の流入口側から流出口側に向けてプレフィルタとH E P Aフィルタとアミン類が添着されてなる活性炭素繊維フィルタとよりなる放射性物質除去用フィルタを順次配置し、
G´ 送風機を有すると共に、上記一時避難用施設と連結され、
H´ 上記活性炭素繊維フィルタが非加熱状態下で稼働される
I 放射性物質除去用の空気清浄装置を備えた一時避難施設。」

〈相違点〉
(相違点1)
本願発明は、「空気清浄装置本体のO N状態あるいはO F F 状態を指令する制御装置を備え」、「上記制御装置のO N状態下では」、上記活性炭素繊維フィルタが非加熱状態下で稼働されるのに対して、引用発明はこのようなものを備えると特定されない点。

(相違点2)
空気清浄装置本体が、本願発明は、「上方に配される高気密ダンパーとその下方に配される密閉交換型チャンバ一部とその下方であって水平方向に配置される高気密ダンパ一部とより構成され」、「上記高気密ダンパ一部に続いて、高い気密性を有する送風機を有する」のに対して、引用発明はこのような高気密ダンパーを備えると特定されず、送風機が高い気密性を有すると特定されず、さらに、チャンバー部が交換可能(交換型)とも特定されない点。

(相違点3)
本願発明は、「密閉交換型チャンバ一部は、50 m^(3)/ m i n 以上とする多風量型であ」るのに対して、引用発明は風量が特定されない点。

(2)判断
ア 上記相違点1について検討する。
引用発明は、送風機3をどのように制御するか特定しないが、送風機のON状態あるいはOFF状態を指令する制御装置(電源スイッチ)を備えることは常套手段にすぎず、引用発明においてもそのような構成を有している蓋然性は高い。
また、引用発明は、「加熱手段9を含まない、放射性ガス除去装置1であ」るから、制御装置(電源スイッチ)のON状態下であっても、「母体を構成する活性炭、アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、活性白土等の基材と、この基材に添着されるトリエチレンジアミン(TEDA:Tri-Ethylene-Di-Amine)またはよう化カリウム(KI)を含む添着物質とを含み、放射性よう素及び放射性よう化メチルを吸着する放射性ガスフィルタ4」が、非加熱状態下で稼働されることは明らかである。
したがって、上記相違点1は実質的な相違点ではないし、仮に相違点であるとしても、当業者が適宜なし得たことにすぎない。

イ 上記相違点2について検討する。
引用発明のようなガス除去装置の入口及び出口に適宜の気密性能のダンパーを備えることは、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に見られるとおり従来周知の技術的事項にすぎない。
ここで、適宜の気密性能のダンパーにあわせて送風機を適宜の気密性能とすることも従来周知の技術的事項にすぎない。
また、引用発明のようなガス除去装置の入口を「上方に配置」し、出口を「下方であって水平方向に配置」することも引用文献4に記載された事項及び引用文献5に記載された事項に見られるとおり従来周知の技術的事項にすぎない。
さらに、引用発明の「放射性ガス除去装置1」のフィルタは、使用に伴い劣化し交換を必要とすることは、本願出願当時の技術常識であるところ、これらのフィルタを交換可能な構造とすること(チャンバー部を交換可能とすること)は例を挙げるまでもなく従来周知の技術的事項にすぎない。
したがって、引用発明において、放射性ガス除去装置の入口を「上方に配置」した上で、放射性ガス除去装置の入口及び出口に適宜の性能のダンパーを備え、フィルターを交換可能な構成となし、本願発明に係る上記相違点2の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 上記相違点3について検討する。
放射性ガス除去装置1における風量をどの程度とするかは、「原子力災害時に原子力防災対策活動を推進するための緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)などや避難施設などである」「局所空間13」の大きさ等によって適宜定められる設計的事項にすぎない。
また、50m^(3)/min以上の多風量型とする点も通常の風量の範疇にすぎない。
したがって、本願発明に係る上記相違点3の構成となすことは設計的事項にすぎない。

エ よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(3)請求人の主張
ア 請求人は、令和2年5月1日提出の意見書の【意見の内容】、「(4)」の最終段落において下記のとおり主張する。
「しかしながら、このたび補正された本願発明より勘案するならば、本願出願人は充分許可性を有するものと思料します。
また、このように補正いたしましたので、本願発明は充分に進歩性を有することが明らかになったと思料する所存です。」と主張する。

イ 請求人の主張について
(ア)本願発明は、令和元年7月10日になされた手続補正を令和2年5月1日になされた手続補正で補正したものであって、その実質的な補正箇所は次の3カ所である。
(a)「気体の除去が可能な」を「気体の放射性物質を除去が可能な」
(b)「圧縮型の装置本体」を「圧縮型で陽圧型の装置本体」
(c)「高気密ダンパー部は、高い気密性を有する送風機を有する」を「高気密ダンパ一部に続いて、高い気密性を有する送風機を有する」

(イ)上記(ア)の補正は、いずれも、当審拒絶理由の理由1及び2で指摘した、サポート要件及び明確性の拒絶理由に対しての補正であるから、明りようでない記載を釈明した程度にとどまる。そして、上記補正後の本願発明が進歩性を欠如することについては、上記(2)で判断したとおりである。
したがって、請求人の上記アの主張は採用できない。

(4)本願発明の奏する作用効果について
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2ないし5に記載された事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-07-29 
結審通知日 2020-08-05 
審決日 2020-08-19 
出願番号 特願2015-192163(P2015-192163)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G21F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大門 清  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 山村 浩
松川 直樹
発明の名称 放射性物質除去用の空気清浄装置を備えた一時避難施設、及び、その一時避難施設用システム  

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