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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1366918
審判番号 不服2019-14296  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-28 
確定日 2020-10-08 
事件の表示 特願2018- 27760「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月 9日出願公開、特開2018-124053〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年6月9日に出願した特願2014-118919号の一部を平成30年2月20日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成31年1月29日付けで拒絶理由の通知
平成31年3月19日に意見書及び手続補正書の提出
令和1年7月30日付けで拒絶査定
令和1年10月28日に拒絶査定不服審判の請求

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成31年3月19日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された明細書及び図面の記載によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項により特定されるものである。
「 【請求項1】
少なくとも1つの撮影範囲に区画された複数の貯蔵室と、
前記撮影範囲の少なくとも1つを撮影する複数の庫内カメラ、あるいは、複数の前記撮影範囲を撮影する少なくとも1つの庫内カメラと、
複数の前記撮影範囲の画像を記憶装置に記憶させ、前記画像を表示する操作表示装置と通信する制御装置と、
日時を計測する計時装置と、
を備え、
前記制御装置は、
撮影日時と関連づけて複数の前記画像を保存し、
撮影日時が異なる同一の前記撮影範囲の前記画像からこれらの画像の差分を抽出し、一定期間差分がない箇所がある場合、食品が一定期間以上保存されていることを報知する構成であり、
一定期間以上保存されている前記食品の保存箇所を指示した画像を表示させることを特徴とする冷蔵庫。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
<理由(特許法第29条第2項)について>
本願発明は、本願の出願前(原出願の出願前)に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基いて、本願の出願前(原出願の出願前)にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献一覧>
引用文献1:特開平5-45041号公報
引用文献2:特開2002-295959号公報(周知の技術を示す文献)

第4 引用文献
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献であって、原出願の出願日前に頒布された引用文献1には、「冷凍冷蔵庫の庫内管理装置」に関し、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷凍冷蔵庫内の場所を使用者に示す表示手段と、
庫内に入れられた食品を写すCCDカメラと、
該CCDカメラがとらえた画像を記憶する手段と、
該記憶手段により記憶された2種類の画像の差分をとる手段と、
庫内に入れられた食品のラベリングを行い、各食品毎に保存期間をカウントするタイマカウンタと、
冷凍冷蔵庫内の扉の開閉が行われたことを検知するドアスイッチと、を具備してなり、
扉が開閉される毎に、庫内の画像を記憶して画像の差分をとり、同一の食品が保存されている期間をタイマカウントして、上記表示手段にその場所を表示することを特徴とする冷凍冷蔵庫の庫内管理装置。」
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は冷凍冷蔵庫の庫内の食品の保存期間を管理するものである。」
「【0006】庫内をCCDカメラにより扉の開閉後の画像入力し、このデータを画像処理素子により特徴抽出と情報圧縮を行い、マイコンによって画像認識をして、扉の開閉後も同一画像がある場合には、タイマカウント積算を行いある一定時間以上になれば表示装置に表示する。」
「【0010】図1は冷凍冷蔵庫の横からみた断面図であり、図に示す位置に複数のCCDカメラが取りつけられているとする。各CCDカメラにはレンズ部分に発露しないように近傍にヒータが取りつけられていて、本体部分は冷蔵庫の断熱材部分にうめこまれている(図2)。
【0011】図3は簡単なシステムブロック図であり、図4は庫内管理を中心とした処理のフローチャートであり、更に図5は扉の開閉毎にCCDカメラから入力した画像の一例である。
【0012】図4のフローチャートに従って説明すると、ステップS1では、あらかじめ庫内の画像をCCDカメラより入力しておく(画像1)。ステップS2では食品を入れられた状態で画像を入力し(画像2)、ステップS3で画像1と画像2の差部をとり、庫内の食品のみを抽出し(画像3)、ステップS4で縮退、膨張をくり返すことにより、ゴミ等を除去し、それぞれの食品の特徴を抽出してステップS5でラベリング(画像3の3つの食品を各々a,b,cとする)を行う。マイコンは内部メモリに抽出された各食品a,b,c毎のその食品が保存されているというフラグ及び保存期間をカウントするカウンタをそれぞれ設定する。
【0013】以上の動作により、現時点で庫内に保存されている食品が入力される。次に、ステップS6でドアスイッチ7によりドアが開閉されたかどうかをチェックし、開閉されていなければ時間の経過に従ってステップS14にて保存されている食品(a,b,c)のそれぞれのタイマーをカウントアップし、ステップS15にて、一定期間を過ぎている食品があれば液晶表示素子等よりなる表示装置6にて一定期間が過ぎたタイマーに対応する食品を画像3より選択して表示または点滅表示したり、もしくはその食品の中心付近を表示または点滅表示したりすることによって一定期間が経過していることを示す。」
「【0015】
【発明の効果】以上説明したようにこの発明によれば冷蔵庫の使用者が食品管理をするのにひとつひとつ入力する必要はなく、一定期間を過ぎた食品を自動的に使用者に報知することができる。さらに一定期間が過ぎた食品の形状と場所が表示されるので、同一の種類と形状を有する複数の食品であっても新旧の判別を行うことが容易となる。古くなると悪臭を発する食品には一定期間後表示を点滅して他の古いものと区別して表示すれば、庫内の一層の浄化がはかれる。」






(2)上記(1)記載から認められること
ア 上記(1)(特に、【請求項1】、【0010】、【図1】の記載)によれば、引用文献1には、1つの撮影範囲に区画された上部の貯蔵室と2つの撮影範囲に区画された下部の貯蔵室とを有する冷凍冷蔵庫が記載されていることが認められる。
イ 上記(1)(特に、【請求項1】、【0010】、【図1】の記載)によれば、引用文献1には、複数の撮影範囲にある食品を撮影する、庫内に設けられた複数のCCDカメラが記載されていることが認められる。
ウ 上記(1)(特に、【請求項1】、【0006】、【0011】、【図3】の記載)によれば、引用文献1には、複数の該CCDカメラが撮影範囲を撮影した画像を画像メモリに記憶させ、表示装置に画像を表示させるマイコンが記載されていることが認められる。
エ 上記(1)(特に、【請求項1】、【0006】、【0011】、【図3】の記載)によれば、引用文献1には、同一の食品が保存されている期間をカウントするタイマカウンタが記載されている。
オ 上記(1)(特に、【請求項1】、【0006】、【0011】、【0013】、【0015】、【図3】の記載)によれば、引用文献1には、マイコンは、扉が開閉される毎に、庫内の複数の画像を記憶して画像の差分をとり、同一の食品が保存されている期間をタイマカウントして、一定期間を過ぎている食品を報知する構成であり、一定期間が過ぎて保存されている食品の場所を表示装置に表示させることが記載されている。
(3)引用発明
上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「 1つの撮影範囲に区画された上部の貯蔵室と2つの撮影範囲に区画された下部の貯蔵室と、
複数の撮影範囲にある食品を撮影する、庫内に設けられた複数のCCDカメラと、
複数の該CCDカメラが撮影範囲を撮影した画像を画像メモリに記憶させ、表示装置に画像を表示させるマイコンと、
同一の食品が保存されている期間をカウントするタイマカウンタと
を備え、
前記マイコンは、
扉が開閉される毎に、庫内の複数の画像を記憶して画像の差分をとり、同一の食品が保存されている期間をタイマカウントして、一定期間を過ぎている食品を報知する構成であり、
一定期間が過ぎて保存されている食品の場所を表示装置に表示させる冷凍冷蔵庫。」
2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献であって、原出願の出願日前に頒布された引用文献2には、「撮影装置付き冷蔵庫」に関し、次の記載がある。
「【請求項1】 冷蔵庫内部の所定位置に撮影装置を備え、当該撮影装置によって撮影された前記冷蔵庫内部の画像を、冷蔵庫から離れた場所にある所定の機器に転送するための画像転送手段を備えることを特徴とする撮影装置付き冷蔵庫。」
「【0006】このような構成であれば、冷蔵庫の内容物を、例えばカメラなどの撮影装置によって撮影し、その画像を冷蔵庫から離れた場所にある機器に転送することが可能となるので、その機器が表示装置を有するものであれば、その表示部に画像を表示することができ、出先などで冷蔵庫の内容物の確認が可能となるので、帰り際に足りない食材を買い足すなどができ、便利である。」
「【0009】また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の撮影装置付き冷蔵庫において、前記撮影装置によって撮影された画像を記憶するための画像記憶手段を備えたことを特徴としている。つまり、画像記憶手段によって、冷蔵庫本体に、例えばカメラなどの撮影装置で撮影した画像を記憶するようにしたので、大きな冷蔵庫などでは冷蔵室がいくつにも分割されているので、室毎に画像を保存するようにしておき、例えば、メモリの少ない携帯電話などに画像を転送して表示する場合には、いっぺんに全ての画像を送らずに、記憶されている分割された画像うち任意の一枚を転送できるようにすることで、画像を受信する側の機器のメモリ不足を補うことが可能となる。」
「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1ないし図4は、本発明に係る撮影装置付き冷蔵庫の実施の形態を示す図である。
まず、本発明に係る撮影装置付き冷蔵庫の外観構成を図1を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る撮影装置付き冷蔵庫の扉が開状態時の内部を正面から見た図である。
【0013】撮影装置付き冷蔵庫1は、アイスクリームや冷凍食品などを冷凍保存するための冷凍室1aと、低温保存の必要な、主に食品などを冷蔵保存するための第1の冷蔵室1b及び第2の冷蔵室1cと、野菜などを適度な温度で冷蔵保存するための野菜室1dと、扉内側にポケットの配設された冷凍室用開閉扉1eと、扉内側に卵等を置くための棚及びペットボトル等を置くためのポケットの配設された冷蔵室用開閉扉1fとから構成され、冷凍室用開閉扉1eには、同開閉扉1eのポケット内及び冷凍室1a内を撮影するための冷凍室用ビデオカメラ2が配設され、冷蔵室用開閉扉1fには、同開閉扉1fの前記棚及び第1の冷蔵室1b内を撮影するための第1の冷蔵室用ビデオカメラ3が配設され、冷蔵室用開閉扉1fには、同開閉扉1fのポケット内及び第2の冷蔵室1c内を撮影するための第2の冷蔵室用ビデオカメラ4が配設され、野菜室1dには、同1d内を撮影するための野菜室用ビデオカメラ5が配設されている。
【0014】更に、撮影装置付き冷蔵庫1には、上記した各ビデオカメラによって撮影された映像を記憶、伝送するための制御回路11を内臓している。図2は制御回路11の構成を示すブロック図である。以下、図2に基づいて、制御回路11の構成を説明する。制御回路11は、上記各ビデオカメラからの映像信号を受け取り、アナログ信号をディジタル信号に変換する他、色数の削減や適切な画像形式への変換等を行うための画像変換部6と、変換された画像を記憶するための画像記憶部7と、同記憶部7に記憶された画像を転送するためのデータ処理を行う画像転送部8と、電話機能を有し、画像データを携帯電話等の外部機器に伝送するための送受信部9と、外部機器からのビデオカメラ操作要求を受け付け、カメラのレンズ位置の制御を行うビデオカメラ制御部10とから構成されている。」
「【0017】そして、利用者が、撮影装置付き冷蔵庫1の内容物を確認する場合には、図示しない、付属の表示機能の付いた携帯型コントローラか、あるいは、携帯電話やモデムを備えたPC(Personal Computer)等の、画像表示部及び電話機能を有する機器によって、専用の電話番号を入力して送受信部9を呼び出す。すると、その呼び出しに応じて、画像転送部8が、送受信部9を介して音声によるガイドを開始する。利用者は、その音声ガイドに従って、番号を選択していき、画像転送部8は、選択された番号に対応する内容物の画像を、画像記憶部7より読み出し、利用者の有する機器へと転送する。」
(2)引用文献2記載の技術
上記(1)を総合すると、引用文献2には、次の技術が記載されていると認める。
「表示装置を有する携帯型コントローラか、あるいは、携帯電話やモデムを備えたPCに伝送する制御回路11を備えた冷蔵庫。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
後者における「1つの撮影範囲に区画された上部の貯蔵室と2つの撮影範囲に区画された下部の貯蔵室と」は、前者における「少なくとも1つの撮影範囲に区画された複数の貯蔵室と」に相当し、同様に、「複数の撮影範囲にある食品を撮影する、庫内に設けられた複数のCCDカメラ」は「前記撮影範囲の少なくとも1つを撮影する複数の庫内カメラ」に、「画像メモリ」は「記憶装置」に、「マイコン」は「制御装置」に、「庫内の複数の画像を記憶して」は「複数の前記画像を保存し」に、それぞれ相当する。
また、後者の「表示装置」と前者の「操作表示装置」とでは、「画像を表示する表示装置」という点でのみ一致する。
また、後者の「扉が開閉される毎に、庫内の複数の画像を記憶して画像の差分をとり」は、「扉が開閉される毎に」、「画像の差分をと」るので、異なる時間帯に撮影した同一箇所の画像を用いて、その差分を抽出している。したがって、前者の「複数の前記画像を保存し、撮影日時が異なる同一の前記撮影範囲の前記画像からこれらの画像の差分を抽出し」に相当する。
また、後者の「同一の食品が保存されている期間をタイマカウントして、一定期間を過ぎている食品を報知する構成」は、前者の「一定期間差分がない箇所がある場合、食品が一定期間以上保存されていることを報知する構成」に相当する。
したがって、両者は、以下の一致点で一致し、相違点1及び2で相違し、相違点3で一応相違する。
[一致点]
「 少なくとも1つの撮影範囲に区画された複数の貯蔵室と、
前記撮影範囲の少なくとも1つを撮影する複数の庫内カメラと、
複数の前記撮影範囲の画像を記憶装置に記憶させ、前記画像を表示装置に表示させる制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
複数の前記画像を保存し、
撮影日時が異なる同一の前記撮影範囲の前記画像からこれらの画像の差分を抽出し、一定期間差分がない箇所がある場合、食品が一定期間以上保存されていることを報知する構成である冷凍冷蔵庫。」

[相違点1]
制御装置により画像を表示装置に表示させる際に、本願発明は、画像を表示するのが「操作表示装置」であり、「制御装置」が「前記画像を表示する操作表示装置と通信する」のに対し、引用発明では、画像を表示するのが「表示装置」であり、通信する構成を有していない点。
[相違点2]
食品が保存されている期間を推測するのに、本願発明は、「日時を計測する計時装置」を備え、「撮影日時と関連づけて複数の前記画像を保存」しているのに対し、引用発明では、「期間をカウントするタイマカウンタ」を備えている点。
[相違点3]
食品を報知する際に、本願発明では、「前記食品の保存箇所を指示した画像を表示させる」のに対し、引用発明では、「食品の場所」を「表示させる」点。

第6 判断
1 相違点1について
表示装置を有する携帯型コントローラか、あるいは、携帯電話やモデムを備えたPCなどの画像を表示する操作表示装置と通信し、画像を伝送することは、引用文献2記載の技術に示されているように、当業者にとって周知の技術である。
してみると、引用発明において、上記周知の技術を採用して、「制御装置」が「前記画像を表示する操作表示装置と通信する」ことは、当業者が容易になし得た事項である。
2 相違点2について
引用発明の「タイマカウンタ」は、食品が保存されている期間をカウントするものである。一方、本願発明の「日時を計測する計時装置」も画像に関連づけられて、引用発明と同様に、食品の保存されている期間を推測するものである。そして、日時を計測する計測装置を設けて、複数の画像情報を撮影日時と関連づけて保存することで、保存期間を推測することは、例えば、特開2010-121784号公報の段落【0037】、特開平10-9753号公報の段落【0043】、【0045】にも記載されているとおり周知の技術である。
よって、引用発明において、食品が保存されている期間を計測する場合に、「タイマカウンタ」に代えて、周知の技術である「日時を計測する計時装置」を設けるとともに、「撮影日時と関連づけて複数の前記画像を保存」することは、当業者が容易になし得た事項である。
3 相違点3について
引用文献1には、「食品の場所を表示させる」方法として、「もしくはその食品の中心付近を表示または点滅表示したりすることによって一定期間が経過していることを示す」(【0013】)、「さらに一定期間が過ぎた食品の形状と場所が表示されるので、同一の種類と形状を有する複数の食品であっても新旧の判別を行うことが容易となる。」(【0015】)と記載されている。
そうすると、引用発明における食品の場所の表示は、食品の中心付近を表示または点滅表示すること、同一の種類と形状を有する複数の食品であっても新旧の判別を行える表示であることより、その食品そのものだけ抽出して表示するのではなく、食品が存在する庫内における位置も表示するものであるから、実質的に保存箇所も表示することは明らかである。
したがって、一応の相違点3は実質的な相違点ではない。
仮に、引用発明が保存箇所を表示するものではないとしても、引用文献1の図1では、冷蔵庫内の収納棚ごとにCCDカメラが設けられているため、表示装置は収納棚ごとに表示するはずであるから、一定期間を過ぎた食品が入った収納棚を表示することで保存箇所を表示するように構成することは当業者が容易になし得たことである。
4 効果について
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び周知の技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 まとめ
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第7 請求人の主張について
請求人は、令和1年10月28日に提出された審判請求書において、
「(2)本願発明と引用文献との対比(特許法第29条第2項)
(2.1)請求項1について
請求項1に係る発明(以下、本願発明1と称します)は、一定期間以上保存されている食品がある場合、「一定期間以上保存されている前記食品の保存箇所を指示した画像を表示させる」という構成(以下、構成Aと称します)を採用しております。本願発明1に係る冷蔵庫は、複数の貯蔵室を備えています。このように複数の貯蔵室を備えた冷蔵庫の場合、一定期間が過ぎた食品を直接表示しても、当該食品がどの貯蔵室に保存されているのかがわからず、当該食品を見つけ出すことが困難になる場合があります。これに対して、本願発明1は、一定期間が過ぎた食品の保存箇所を指示した画像を表示させます。このため、本願発明1は、複数の貯蔵室を備えていても、一定期間が過ぎた食品を見つけ出すことが容易になるという効果が得られます。
一方、拒絶理由の根拠として審査官殿が提示された引用文献1には、一定期間以上保存されている食品がある場合、その食品そのものを表示する冷蔵庫が開示されています。この引用文献1には、本願発明1の上記構成Aは開示も示唆もされておりません。また、拒絶理由の根拠として審査官殿が提示された引用文献2には、貯蔵室内の画像を表示する表示装置として、携帯電話等を用いる技術が開示されています。引用文献2に開示されたこの技術は、保存されている貯蔵室内の画像を携帯電話等に表示させるのみであり、一定期間以上保存されている食品がある場合にその旨を報知するような構成は備えていません。すなわち、引用文献2にも、本願発明1の上記構成Aは開示も示唆もされておりません。このため、審査官殿は、本願発明1の特徴部分である上記構成Aは設計事項であるとして、本願発明1の進歩性を否定しております。
しかしながら、何らの根拠文献も示さずに、本願発明1の特徴部分である上記構成Aが設計事項であるとする審査官殿の判断には承伏しかねます。本願発明1の特徴部分である上記構成Aが設計事項であると判断できる根拠がなければ、本願発明1の特徴部分である上記構成Aは設計事項ではなく、本願発明1は進歩性を有するものと思料いたします。
したがいまして、本願発明1は、引用文献1,2に基づいて想到できるものではなく、特許法第29条第2項の規定に該当しないものと思料いたします。」(第3ページ第24行?第4ページ第25行)という主張をする。
しかしながら、上記第5 対比、第6 判断で検討したとおり、「一定期間以上保存されている前記食品の保存箇所を指示した画像を表示させる」構成は、引用発明においても備えている。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-08-03 
結審通知日 2020-08-04 
審決日 2020-08-21 
出願番号 特願2018-27760(P2018-27760)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久島 弘太郎  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 槙原 進
塚本 英隆
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  

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