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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1367299
審判番号 不服2019-11565  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-03 
確定日 2020-10-15 
事件の表示 特願2015- 19889「通信装置、通信システム、通信方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 8日出願公開、特開2016-144107〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年2月4日の出願であって,その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成30年10月 5日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月13日 :意見書,手続補正書の提出
令和 1年 5月30日付け:拒絶査定
令和 1年 9月 3日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提

令和 2年 4月15日付け:拒絶理由通知書(当審)
令和 2年 6月19日 :意見書,手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明は,令和2年6月19日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項9に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものと認める。

「 端末の属性に基づいて,第1のオペレータが管理する第1のネットワークと,前記第1のオペレータから第2のオペレータに貸し出され所定の信号処理を実行するネットワークノードを利用して通信サービスを提供する,第2のオペレータが管理する第2のネットワークとを含む複数のネットワークのうち,当該端末に対応するネットワークを識別する第1のステップと,
前記第2のネットワークの加入者端末に対して,識別された前記第2のネットワークにおいて前記所定の信号処理を実行するネットワークノードと,前記第2のネットワークの加入者端末とを前記第1のネットワークを介さずに接続させる第2のステップと,を含み,
前記第1のステップにおいて,前記第2のオペレータの加入者端末に対して,前記第2のオペレータが管理する前記第2のネットワークを識別可能であり,
前記通信サービスは,前記第2のオペレータの加入者端末の位置情報に基づく前記第2のオペレータの加入者端末が移動するための制御データを提供するサービスである
ことを特徴とする通信方法。」

第3 拒絶の理由
令和2年4月15日付けで当審が通知した拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)の概要は,
「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものであり,本願の請求項9に係る発明に対して,以下の引用例5,3,6が引用されている。

引用例5:特表2013-541289号公報
引用例3:特表2014-534676号公報
引用例6:特開2003-141676号公報

第4 引用発明
1 引用発明1
当審拒絶理由に引用された特表2013-541289号公報(以下,「引用例5」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「【0003】
知られている基地局仮想化の提案のうちには,アナログ・レイヤを仮想化すること,基地局の大部分をクラウド・コンピュータ・システムにおいて動作させること,およびモバイル仮想ネットワーク・オペレータ(MVNO:Mobile Virtual Network Operator)のような構造を経由して基地局と,関連する無線アクセス・ネットワークとを仮想化することがある。これらの伝統的なアプローチのどれも,技術的に簡単であり,しかも既存のネットワークにおいて簡単に統合することを可能にするのに十分に柔軟性があり,また異なるビジネス機会を開発する可能性を提供する解決法を提供してはいない。
(中略)
【0013】
仮想オペレータのサービス・プロバイダ(すなわち,ホーム・オペレータ)は,差別化されたサービスをその加入者に対して提供するためにリソースの割付けを制御できることは,この実施形態の1つの利点である。仮想オペレータのサービス・プロバイダと,スペクトルを制御するベース・トランシーバ基地局の所有者とは,このようにして,例えば,価格と,持続期間と,チャネルがセットアップされるべき許容可能なパワー・レベルとについてネゴシエートすることができる。
(中略)
【0028】
以降では,セルラー方式通信プロトコルにおける4つの基本的な役割が,以下のもの,すなわち(a)ベース・トランシーバ基地局,無線ネットワーク制御装置(RNC:Radio Network Controllers),および認可されたスペクトルを所有する無線アクセス・ネットワーク(RAN:Radio Access Network)所有者と,(b)それらの(ローミング)ユーザがどこに存在するとしても仮想サービスを提供することに興味のあるホーム・オペレータと,(c)ホーム・オペレータからRAN所有者のネットワークおよび要求サービスへとローミングするそのユーザ装置(UE:User Equipment)を有するローミング・ユーザ自身と,(d)RAN所有者のインフラストラクチャにおいて展開される必要のあるホーム・オペレータからの仮想化されたプロトコル・スタックとして定義されることになる。説明が,ある種のオペレーションを加入者,オペレータ,装置の所有者などによるものと考える場合には,そのようなオペレーションは,適切なネットワーク接続を経由して適切な装置によって技術的に実行されるものと理解されるべきである。
【0029】
図1は,共通の無線制御装置110によって制御され,コア・ルータ120に接続され,訪問されたネットワークをサーブする基地局100を備えるモバイル・ネットワークを概略的に示すものである。一般性を失うことなく,2つの要素のユーザ装置31,32だけが,2つの基地局100と通信するように示されている。図1に示されるシナリオにおいては,ローミング・ユーザに属する,異なる要素のユーザ装置31,32が,基地局100によってサーブされるネットワークを訪問しており,ローミングを経由して彼らのそれぞれのホーム・オペレータのネットワーク131,132のサービスを使用して,回路交換された通信サービス,インターネット,または別の適切なネットワークにアクセスすると仮定する。このローミング・アクセスは,基地局100が,訪問されるネットワークの所有者によって動作させられるチャネルを提供することを意味しており,このチャネルは,それぞれのネットワーク・トンネルを経由して訪問されたコア・ルータ120から適切なホーム・コア・ルータ131,132へとルーティングされる。
(中略)
【0034】
図2は,図1のうちの1つに類似したモバイル・ネットワークを示すものであり,このモバイル・ネットワークにおいては,この場合にも一般性を失うことなく,3つのユーザ装置31,32,33が,基地局500によってサーブされるモバイル・ネットワークにおける訪問する加入者として示される。
【0035】
基地局500は,本発明の原理に従って動作して,仮想化されたやり方で,基地局500によってサーブされるエリアにおいて,それぞれの加入者のホーム・ネットワーク・プロバイダのローカル・サービスを提供する。仮想プロバイダ131,132,133としての機能を果たすホーム・オペレータの対応するコア・ネットワーク・ルータは,基地局500の物理レイヤ・サービスを使用して,ネットワークの中に存在する仮想コア120からローミング・ユーザのユーザ装置31,32,33に対して通信データを中継する。
【0036】
図2は,仮想コア120と,基地局500によって提供されるリソースとの間の責任の正確な分担に関して,または仮想コア120のロケーションに関して制限するように意図されるものではない。とりわけ,下記で,より詳細に説明されている本発明の実施形態は,仮想プロバイダによって動作させられ,また基地局500に存在する完全な仮想マシンの存在を提供し,様々な基地局機能にアクセスしている。本発明の他の実施形態は,ユーザ装置31,32,33に対してプロバイダ情報と同期情報とをブロードキャストするための,また仮想オペレータ131,132,133に対して仮想化された物理レイヤ機能,すなわち,低減された仮想マシンを提供するための役割をただ担っている基地局500を提供している。当業者なら,異なった責任の分担もまた適用され得ることを理解すべきである。
(中略)
【0040】
有利な代替的実施形態においては,使用されるサブバンドにもかかわらず,基地局が,ユーザ装置31,32,33からのネットワーク選択メッセージを受信することを可能にする広帯域無線が,使用されることもある。仮想化された基地局500は,選択されたホーム・オペレータについての適切な帯域を調べ,またその無線をその帯域に合わせて,選択されたホーム・オペレータの仮想サービスを提供する。ユーザ装置31,32,33は,周波数間のハンドオーバーを用いて適切な帯域へとリダイレクトされる。
(中略)
【0044】
仮想サービス・プロバイダは,仮想化された基地局に接続されるときに,セルラー方式プロトコル・スタック(無線アクセス・ネットワークおよびコア・ネットワーク)の大部分を提供する必要がある。ブロードキャスト・チャネルの管理以外のあらゆるものが,物理基地局においてインスタンス化される仮想マシン(このようにして仮想基地局を作る),仮想基地局ルータから,物理的無線ネットワーク制御装置(RNC),SGSN,GGSN,およびMSC,を有するより伝統的な展開において,または仮想化された無線アクセス・ネットワーク(RAN)および仮想化されたコア・ネットワーク(CN)においてさえのいずれかで仮想化される可能性があり,また動作することができる。
【0045】
特に,後者は,仮想化可能な基地局と組み合わされるときに,完全に仮想セルラー方式オペレータ・ネットワークを可能にし,それによって(仮想)セルラー方式サービス・プロバイダは,セルラー方式サービスを提供するどのような物理要素も必要としない。vBSRアプローチは,拡散符号とパワーとについてのすべてのネゴシエーションが,基地局の内部で進むことができ,また本発明のある種の実施形態におけるブロードキャスト・チャネルに対する変更を除いて,仮想基地局の原理を設計するために,さらなる標準化が必要とされないという議論の余地がない利点を有する。
(中略)
【0055】
以下で,本発明者等は,この仮想化が,実現され得る例示の一方法について説明する。
【0056】
第1のステップ610において,RAN所有者は,そのブロードキャスト制御チャネル(BCCH:Broadcast Control CHannel)をブロードキャストし,またローミング・サービス利用者は,BCCHを見出すこと,および復号すること,ならびにRAN所有者に対して逆方向アクセス・チャネル(RACH:Reverse Access CHannel)の上でUL-DCCH(アップリンク専用制御チャネル(Uplink Dedicated Control Channel))-要求を送信することにより,基地局/RNCに接続する。
【0057】
UL-DCCH-要求の内部に埋め込んで,ローミング・サービス利用者は,そのホーム・ネットワーク・パラメータをRAN所有者に対して送信し,またホーム・オペレータは,これらのホーム・ネットワーク・パラメータに基づいてRAN所有者によって識別される。これらのパラメータは,ユーザ装置の一時的な,または全面的な識別情報(TMSIおよび/またはIMSI)とすることができる。それゆえに,本実施形態においては,本発明に従って,仮想ネットワーク・プロバイダを選択することを可能にする,ユーザ装置の特別な適応は,必要にならない。UL-DCCH-要求は,第2のステップ620において,RAN所有者によって受信される。
(中略)
【0061】
RAN所有者は,次いで,ホーム・オペレータが,基地局/RNC-すなわち,RAN-においてその仮想ドメインの上にそのRANプロトコル・プロセッサ(UMTS,少なくともRRC,PDCP,RLCおよびMACであるが,SGSNおよびGGSNとすることもできるものについての)を実装する(populate)ことを可能にする(645)ことになる。ホーム・オペレータは,それが好きな任意の形態でこれを実装することができ,またカスタマイゼーションが,ここでは重要になっており,また仮想プロトコル・スタックに追加して,サービスは,PBX,SIP,CDN,またはローミング・ユーザ装置に対して仮想サービスを提供することが必要とされる一般的に任意のサービス・プロバイダにより提供されたサービスを含んでいることに注意すべきである。
(中略)
【0067】
仮想化された基地局は,現在の解決法と比べられるときに,IPアドレス管理を異なるように取り扱う必要がある。以前には,明示的なGTP,または他のタイプのトンネルが,基地局と,RANと,コア・ネットワーク機能との間で確立されるが,仮想化された基地局を用いて,ホーム・オペレータは,この場合にもトンネルにより,プロトコル・スタックの仮想インスタンスをそのホーム・ネットワークに接続するように決定することができ,そこでは,ホーム・オペレータは,仮想化された基地局の内部のSGSNなどのコア機能のうちのいくつかを含めて,すべての機能を実行することができる。ホーム・オペレータはまた,仮想基地局の近くにある(マイクロ)データ・センターの上でHA/GGSN/PDNを開始することもでき,またローカル・トラフィックが,局所に留まることを暗に示す。ホーム・オペレータは,仮想化されたRANそれ自体の内部にHA/GGSN/PDN機能をさらに含むことができる。

【図1】


【図2】




上記の記載,並びに当業者の技術常識を考慮すると,

(1)【0040】には,基地局は,ユーザ装置からネットワーク選択メッセージを受信し,仮想化された基地局が,選択されたホーム・オペレータの仮想サービスを提供することが記載されている。また,【0056】,【0057】には,基地局/RNCは,ローミング・サービス利用者のユーザ装置が送信するUL-DCCH-要求に埋め込まれたホーム・ネットワーク・パラメータに基づいて,ホーム・オペレータを識別し,仮想ネットワーク・プロバイダを選択することが記載されているといえる。
また,【0040】,【0056】,【0057】の上記記載から,基地局及びRNCは,ユーザ装置が送信するUL-DCCH-要求に埋め込まれたホーム・ネットワーク・パラメータに基づいて,ホーム・オペレータとユーザ装置にサービスを提供するためのホーム・ネットワークを識別して選択していることは自明である。
よって,引用例5には「基地局及びRNCは,ユーザ装置が送信するUL-DCCH-要求に埋め込まれたホーム・ネットワーク・パラメータに基づいて,ホーム・オペレータとユーザ装置に仮想サービスを提供するためのホーム・ネットワークとを識別して選択すること」が記載されていると認める。

(2)【0028】によれば,RAN所有者は基地局及びRNCを所有し,ホーム・オペレータは,RAN所有者のインフラストラクチャ,すなわち基地局及びRNCを用いてユーザに仮想サービスを提供しているといえる。
また,【0061】,及び【0067】の「ホーム・オペレータは,仮想化された基地局の内部のSGSNなどのコア機能のうちのいくつかを含めて,すべての機能を実行することができる。(中略)ホーム・オペレータは,仮想化されたRANそれ自体の内部にHA/GGSN/PDN機能をさらに含むことができる。」との記載によれば,RAN所有者の基地局及びRNCにおいて仮想化されたRAN及び仮想化されたSGSN,GGSN,すなわち仮想化されたコアネットワークノードを実装することができ,ホーム・オペレータは,仮想化されたRAN及び仮想化されたSGSN,GGSN,すなわち仮想化されたコアネットワークノードを用いてユーザ装置に対して仮想サービスを提供するといえる。
よって,引用例5には「RAN所有者は基地局及びRNCを所有し,RAN所有者の基地局及びRNCにおいて仮想化されたRAN及び仮想化されたコアネットワークノードを実装することができ,ホーム・オペレータは,仮想化されたRAN及び仮想化されたコアネットワークノードを用いてユーザ装置に対して仮想サービスを提供する」ことが記載されていると認める。

(3)【0035】,【0036】,及び【0067】の「ホーム・オペレータは,仮想化された基地局の内部のSGSNなどのコア機能のうちのいくつかを含めて,すべての機能を実行することができる。ホーム・オペレータはまた,仮想基地局の近くにある(マイクロ)データ・センターの上でHA/GGSN/PDNを開始することもでき,(中略)ホーム・オペレータは,仮想化されたRANそれ自体の内部にHA/GGSN/PDN機能をさらに含むことができる。」との記載によれば,仮想化されたコアネットワークノードが実装される基地局及びRNCによって提供されるリソースの分担は変更されうるものといえる。
よって,引用例5には,「仮想化されたコアネットワークノードが実装される基地局及びRNCによって提供されるリソースの分担は変更されうるものである」ことが記載されていると認める。

(4)【0067】の「仮想化された基地局を用いて,ホーム・オペレータは,この場合にもトンネルにより,プロトコル・スタックの仮想インスタンスをそのホーム・ネットワークに接続するように決定する」との記載によれば,仮想化された基地局は,トンネルによりホーム・ネットワークに接続することは明らかである。
よって,引用例5には「仮想化された基地局は,トンネルによりホーム・ネットワークに接続する」ことが記載されていると認める。

以上を総合すると,引用例5には以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

「 基地局及びRNCは,ユーザ装置が送信するUL-DCCH-要求に埋め込まれたホーム・ネットワーク・パラメータに基づいて,ホーム・オペレータとユーザ装置に仮想サービスを提供するためのホーム・ネットワークとを識別して選択し,
ここで,RAN所有者は基地局及びRNCを所有し,RAN所有者の基地局及びRNCにおいて仮想化されたRAN及び仮想化されたコアネットワークノードを実装することができ,ホーム・オペレータは,仮想化されたRAN及び仮想化されたコアネットワークノードを用いてユーザ装置に対して仮想サービスを提供するものであり,
更に,仮想化されたコアネットワークノードが実装される基地局及びRNCによって提供されるリソースの分担は変更されうるものであり,
仮想化された基地局は,トンネルによりホーム・ネットワークに接続する,
方法。」

2 引用発明2
当審拒絶理由に引用された特表2014-534676号公報(以下,「引用例3」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「【0017】
1)3gpp TS23.251において規定されたものなどのMOCN(マルチプル・オペレータ・コア・ネットワーク)。この種の配備においては,
〇 サービス・プロバイダが,RANを別のPLMNに単に委譲する(RAN共有)フルPLMN(full PLMN)である。この配備において,当該サービス・プロバイダは,「コア・オペレータ」とも呼ばれる。
○ コア・オペレータの身元が,(コアPLMN-Idに基づいて)UE上に表示される。
○ RANが,どのPLMNに当該RANが応対しているかを認識しており,すなわち,サービス・プロバイダ毎のサービスの分離/課金が可能である。
■ 無線にアクセスする際に,UEは,関連するRRC(無線リソース制御)を介してRANに対し,当該UEがどのコア・オペレータにアクセスすること望んでいるかを教える。この特徴は,UEからのサポートを必要とする(LTEについては義務付けられている)
■ たとえばRAN(たとえばENB)において,コア・オペレータ毎(QCI毎)の最小,最大(%)リソースを規定する構成パラメータが存在する。これらは,コア・オペレータとの協定に基づいて,アクセス(RAN)オペレータによって構成される。
■ この配備に関する問題とは,RANが,コアPLMN毎にCDR(課金記録)を維持するという煩雑なタスクを有することである
〇 各コアは,それ自体が所有するポリシー(HOポリシーについてのRANの制御,ローミング権,…)を執行する
〇 このことは,図2に描写されている

【図2】




上記の記載,並びに当業者の技術常識を考慮すると,

(1)図2から,第1のネットワーク,すなわちPLMN1と第2のネットワーク,すなわちPLMN2に接続するRANが,第2のネットワークのネットワークノード(MME,SGW)と端末とを第1のネットワークを介さずに接続させることが見てとれ,このことは,【0017】の記載とも整合する。
よって,引用例3には「第1のネットワークと第2のネットワークに接続するRANが第2のネットワークのネットワークノードと端末とを第1のネットワークを介さずに接続させる」ことが記載されていると認める。

以上を総合すると,引用例3には以下の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認める。

「 第1のネットワークと第2のネットワークに接続するRANが第2のネットワークのネットワークノードと端末とを第1のネットワークを介さずに接続させる方法。」

3 引用発明3
当審拒絶理由に引用された特開2003-141676号公報(以下,「引用例6」という。)には,以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「【0077】図1に示すように,本実施形態の自動誘導システム100は,車両101に搭載されたナビゲーション装置110と,運転者による操作を行わずに車両の走行制御が行われる自動走行区間を管理する自動走行管理センターに固定設置された管理サーバ装置130と,から構成されるようになっており,管理サーバ装置130とナビゲーション装置110は,公衆電話網回線やインターネットなどの移動体通信網102によって通信回線を確立してナビゲーション装置110と,管理サーバ装置130を互いに接続するようになっている。
(中略)
【0080】このため,本実施形態では,ナビゲーション装置110によって取得した車両101の位置情報および経路情報を管理サーバ装置130に送信し,当該位置情報および経路情報に基づいて当該管理サーバ装置130によって自動走行区間の進入する地点(開始地点(以下,単に進入地点という)),退出する地点(終了地点(以下,単に退出地点という))および自動走行区間経路を算出し各車両101を登録および退出時に登録解除を行うようになっている。
【0081】具体的には,ナビゲーション装置110は,当該ナビゲーション装置110が搭載された車両101が到達すべき目的地を示す情報(以下,目的地情報という)とGPS(Global Positioning System)データを受信して取得された自車位置の位置情報および車速パルス,加速度センサ,振動センサ,ジャイロなどによって所得された車両のデータ,すなわち,移動体データに基づいて当該目的地までの経路探索を行うとともに,当該車両101のナビゲーションを行うようになっており,経路探索結果において目的地までの経路に自動走行区間が選択された場合に,当該取得された位置情報および経路探索結果を示す経路情報を予め設定された地点に到達したときに管理サーバ装置130に通信回線によって送信するようになっている。
【0082】また,管理サーバ装置130は,図示しない所定の自動走行区間における各車両の走行制御,自動走行区間に進入する車両の登録および自動走行区間から退出する車両の登録解除を行うようになっているとともに,当該ナビゲーション装置110が搭載された車両101の位置情報および経路情報を取得するようになっており,この取得した位置情報および経路情報に基づいて自動走行区間に進入する地点および退出する地点,並びに,自動走行区間の走行する経路(以下,自動走行経路という)を設定するようになっている。
(中略)
【0086】ナビゲーション装置110は,図2に示すように,アンテナATに接続され,GPSデータを受信するGPS受信部111と,車両の走行速度および加速度を感知する速度・加速度センサ部112と,車両の方位角を感知する方位角センサ部113と,VICS情報を受信するVICS情報受信部114と,地図情報を記憶する地図情報記憶部115と,操作部116と,地図情報および車両の位置を表示する表示部117と,誘導を行う音声を出力する音声案内部118と,システム全体を制御するシステム制御部119と,アンテナATに接続され,管理サーバ装置130と通信を行う通信部120とにより構成されている。
(中略)
【0106】通信部120は,移動体通信網102を介して管理サーバ装置130と通信を行うようになっており,当該車両の位置情報,経路情報および識別情報を,移動体通信網102を介して管理サーバ装置130に送信するようになっている。
(中略)
【0108】管理サーバ装置130は,ナビゲーション装置110と通信を行う無線通信部131と,自動走行区間における各車両101のなどの情報を受信する有線通信部132と,各車両101の自動走行に関するデータが格納されているデータベース133と,自動走行区間の情報が記録されている自動走行区間情報記録部134,自動走行経路における各車両101の走行制御および自動走行における総括制御を行うシステム制御部135とから構成されている。
(中略)
【0110】無線通信部131は,移動体通信網102を介してナビゲーション装置110と通信を行うようになっており,当該ナビゲーション装置110から送信された車両101の位置情報,経路情報および識別情報を受信してシステム制御部135に出力するようになっている。
(中略)
【0116】システム制御部135は,各ナビゲーション装置110から送信された各車両101の識別情報および経路情報が入力されるようになっており,各車両101毎に,位置情報および経路情報に基づいて自動走行区間における進入地点および退出地点を設定するとともに,それに伴う自動走行を行う走行経路を算出して各車両101毎にデータを生成してデータベース133に出力するようになっている。
【0117】また,システム制御部135は,各車両101が進入地点に到達したときに,当該車両101の識別情報を取得してデータベース133における各車両101のデータと照合し,この各車両101のデータに基づいて各車両101の自動走行を図示しない当該車両101に搭載された自動走行装置とによって自動走行を制御するようになっている。
【0118】またさらに,システム制御部135は,自動走行区間における各進入地点および退出地点では,各車両101から送信された進入地点に到達した旨の情報(自動走行開始確認情報)および退出地点に到達した旨の情報(自動走行終了確認情報)を受信するようになっており,これらの情報を受信した場合に自動走行を開始,終了するようになっている。
(中略)
【0130】次いで,ナビゲーション装置110において以下に示す処理を行う。
(中略)
【0133】次いで,システム制御部119によって当該車両101が自動走行区間の進入地点に到達したか否かを常時判断し(ステップS17),自動走行区間に到達したと判断されたときは,通信部120によって管理サーバ装置130と通信回線を確立して自動走行区間に到達した旨,すなわち,自動走行開始を要求する旨(以下,自動走行開始要求情報という)を当該車両101の識別情報とともに送信し,自動走行開始確認情報の受信を待機する(ステップS18)。
【0134】具体的には,システム制御部119における自動走行区間の進入地点に当該車両101が到達したか否かの判断は,ナビゲーション装置110において,経路探索時に予め自動走行区間に進入する地点情報を格納しておき,取得した位置情報に基づいて当該車両101が格納された地点に到達したか否かを判断することによって行う。
(中略)
【0136】次いで,管理サーバ装置130において以下に示す処理を行う。
【0137】まず,システム制御部135によって,ナビゲーション装置110から送信された自動走行開始要求情報および識別情報が受信されたか否かを常時判断し(ステップS34),自動走行開始要求情報が受信された場合は,システム制御部135によって自動走行制御を開始するとともに,自動走行開始確認情報をナビゲーション装置110に送信する(ステップS35)。
(中略)
【0139】最後に,ナビゲーション装置110において,予め設定された時間内にシステム制御部119によって自動走行開始確認情報または手動登録要求情報を受信した否かを判断し,自動走行開始確認情報を受信した場合は,図示しない自動走行装置に自動走行を開始させるよう制御し,以下,自動走行が開始される(ステップS20)。ただし,自動走行経路における進入地点において,各車両101を認識する識別端末装置によって進入地点に当該車両101が到達していることを認識できているものとする。」

上記の記載,並びに当業者の技術常識を考慮すると,

(1)【0077】によれば,車両に搭載されたナビゲーション装置と管理サーバ装置を用いて車両の走行制御を行う方法において,管理サーバ装置とナビゲーション装置は,公衆電話網回線やインターネットを含む移動体通信網によって通信回線を確立し接続することが記載されているといえる。
よって,引用例6には「車両に搭載されたナビゲーション装置と管理サーバ装置を用いて車両の走行制御を行う方法において,
管理サーバ装置とナビゲーション装置は,公衆電話網回線やインターネットを含む移動体通信網によって通信回線を確立し接続すること」が記載されていると認める。

(2)【0080】,【0081】によれば,ナビゲーション装置は,車両の位置情報を取得し,取得した位置情報に基づき経路探索を行い,取得された位置情報及び経路探索結果を示す経路情報を管理サーバ装置に送信することが記載されているといえる。
また,【0080】,【0082】によれば,管理サーバ装置は,ナビゲーション装置から取得した位置情報及び経路情報に基づいて自動走行区間に進入する地点及び退出する地点,並びに自動走行経路を設定することが記載されているといえる。
よって,引用例6には「ナビゲーション装置は,車両の位置情報を取得し,取得した位置情報に基づき経路探索を行い,取得された位置情報及び経路探索結果を示す経路情報を管理サーバ装置に送信し,管理サーバ装置は,ナビゲーション装置から取得した位置情報及び経路情報に基づいて自動走行区間に進入する地点及び退出する地点,並びに自動走行経路を設定すること」が記載されていると認める。

(3)【0130】,【0133】,【0134】,【0139】によれば,ナビゲーション装置は,取得した位置情報に基づいて車両が自動走行区間に進入する地点に到達したか否かを判断し,当該地点に到達したと判断した場合,自動走行開始要求情報を管理サーバ装置に送信し,管理サーバ装置から自動走行開始確認情報を受信すると,自動走行装置に自動走行を開始させることが記載されているといえる。
また,【0136】,【0137】によれば,管理サーバ装置は,ナビゲーション装置から送信された自動走行開始要求情報を受信すると,自動走行開始確認情報をナビゲーション装置に送信することが記載されているといえる。
よって,引用例6には「ナビゲーション装置は,取得した位置情報に基づいて車両が自動走行区間に進入する地点に到達したか否かを判断し,当該地点に到達したと判断した場合,自動走行開始要求情報を管理サーバ装置に送信し,管理サーバ装置から自動走行開始確認情報を受信すると,自動走行装置に自動走行を開始させ,管理サーバ装置は,ナビゲーション装置から送信された自動走行開始要求情報を受信すると,自動走行開始確認情報をナビゲーション装置に送信すること」が記載されていると認める。

以上を総合すると,引用例6には以下の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認める。

「 車両に搭載されたナビゲーション装置と管理サーバ装置を用いて車両の走行制御を行う方法において,
管理サーバ装置とナビゲーション装置は,公衆電話網回線やインターネットを含む移動体通信網によって通信回線を確立し接続し,
ナビゲーション装置は,車両の位置情報を取得し,取得した位置情報に基づき経路探索を行い,取得された位置情報及び経路探索結果を示す経路情報を管理サーバ装置に送信し,管理サーバ装置は,ナビゲーション装置から取得した位置情報及び経路情報に基づいて自動走行区間に進入する地点及び退出する地点,並びに自動走行経路を設定し,
更に,ナビゲーション装置は,取得した位置情報に基づいて車両が自動走行区間に進入する地点に到達したか否かを判断し,当該地点に到達したと判断した場合,自動走行開始要求情報を管理サーバ装置に送信し,管理サーバ装置から自動走行開始確認情報を受信すると,自動走行装置に自動走行を開始させ,管理サーバ装置は,ナビゲーション装置から送信された自動走行開始要求情報を受信すると,自動走行開始確認情報をナビゲーション装置に送信する,
方法。」

第5 対比・判断
本願発明と引用発明1とを対比すると,

1 引用発明1の「ユーザ装置」は,本願発明の「端末」に相当する。

また,本願発明の「ネットワークノード」と引用発明1の「基地局及びRNC」は,通信に関して所定の信号処理を実行する装置である点で共通する。
更に,引用発明1の「ホーム・オペレータ」は,「RAN所有者」が所有する「基地局及びRNC」において仮想化されたRAN及び仮想化されたコアネットワークノードを用いてユーザ装置に対して仮想サービスを提供するものであるから,引用発明1の「RAN所有者」は「基地局及びRNC」を「ホーム・オペレータ」に貸し出しているのは明らかである。そうすると,本願発明の「第1のオペレータ」と,引用発明1の「RAN所有者」は,通信に関して所定の信号処理を実行する装置を貸し出す者である点で共通する。また,本願発明の「第2のオペレータ」と,引用発明1の「ホーム・オペレータ」は,通信に関して所定の信号処理を実行する装置を貸し出される者である点で共通する。

更に,引用発明1の「仮想サービス」は,通信に関するサービスであることは明らかであり,また,「RAN所有者」の「基地局及びRNC」において「仮想化されたRAN及び仮想化されたコアネットワークノード」を用いてユーザ装置に対して提供されるものである。そうすると,本願発明の「通信サービス」と引用発明1の「仮想サービス」は,双方とも,装置を貸し出す者から装置を貸し出される者に貸し出され所定の信号処理を実行する装置を利用して提供される通信サービスである点で共通する。

また,引用発明1の「ホーム・ネットワーク」は,「ユーザ装置に仮想サービスを提供するため」のネットワークであるところ,引用発明1の「ホーム・オペレータ」は,「ホーム・ネットワーク・パラメータ」に基づいて識別される者であり,かつ「仮想化されたRAN及び仮想化されたコアネットワークノードを用いてユーザ装置に対して仮想サービスを提供するもの」である。してみると,引用発明1の「ホーム・ネットワーク」が,「仮想化されたコアネットワークノード」により形成され,「ホーム・オペレータ」が管理するネットワークであることは自明である。そうすると,本願発明の「第2のネットワーク」と引用発明1の「ホーム・ネットワーク」は,双方とも装置を貸し出される者が管理する「ネットワーク」である点で共通する。

更に,引用発明1の「ホーム・ネットワーク・パラメータ」は,「ホーム・ネットワーク・パラメータ」に基づいて識別される「ホーム・ネットワーク」によって通信を行うという「ユーザ装置」の属性を示すものであるから,引用発明1は,「ユーザ装置」の属性を示す「ホーム・ネットワーク・パラメータ」に基づいてネットワークを識別して選択するものである。また,引用発明1において「ユーザ装置」によって選択されうるネットワークが複数存在しうることは自明である。そうすると,本願発明と引用発明1は,「端末の属性に基づいて」,「装置を貸し出される者が管理するネットワークとを含む複数のネットワークのうち,当該端末に対応するネットワークを識別する」点で共通する。

したがって,本願発明の「端末の属性に基づいて,第1のオペレータが管理する第1のネットワークと,前記第1のオペレータから第2のオペレータに貸し出され所定の信号処理を実行するネットワークノードを利用して通信サービスを提供する,第2のオペレータが管理する第2のネットワークとを含む複数のネットワークのうち,当該端末に対応するネットワークを識別する第1のステップ」は,引用発明1の「基地局及びRNCは,ユーザ装置が送信するUL-DCCH-要求に埋め込まれたホーム・ネットワーク・パラメータに基づいて,ホーム・オペレータとユーザ装置に仮想サービスを提供するためのホーム・ネットワークとを識別して選択し,
ここで,RAN所有者は基地局及びRNCを所有し,RAN所有者の基地局及びRNCにおいて仮想化されたRAN及び仮想化されたコアネットワークノードを実装することができ,ホーム・オペレータは,仮想化されたRAN及び仮想化されたコアネットワークノードを用いてユーザ装置に対して仮想サービスを提供するものであり」と,「端末の属性に基づいて,装置を貸し出す者から装置を貸し出される者に貸し出され所定の信号処理を実行する装置を利用して通信サービスを提供する,装置を貸し出される者が管理するネットワークを含む複数のネットワークのうち,当該端末に対応するネットワークを識別する」点で共通する。

2 引用発明1の「ユーザ端末」は,「ホーム・ネットワーク」により「仮想サービス」を提供されるものであるから,「ユーザ端末」が「ホーム・ネットワーク」の加入者端末であることは自明である。そして,引用発明は「仮想化された基地局は,トンネルによりホーム・ネットワークに接続する」ものであるから,「ホーム・ネットワーク」のノードと「ユーザ端末」が「仮想化された基地局」を介して接続していることは明らかである。
よって,本願発明の「前記第2のネットワークの加入者端末に対して,識別された前記第2のネットワークにおいて前記所定の信号処理を実行するネットワークノードと,前記第2のネットワークの加入者端末とを前記第1のネットワークを介さずに接続させる第2のステップ」と,引用発明1の「仮想化された基地局は,トンネルによりホーム・ネットワークに接続する」は,「前記ネットワークの加入者端末に対して,識別された前記ネットワークにおいて所定の信号処理を実行するネットワークノードと,前記ネットワークの加入者端末とを接続させる」点で共通する。

3 引用発明1の「ユーザ装置」が送信する「ホーム・ネットワーク・パラメータ」に基づいて識別される「ホーム・ネットワーク」は,「ホーム・オペレータ」が管理するネットワークであることは自明である。
よって,本願発明の「前記第2のオペレータの加入者端末に対して,前記第2のオペレータが管理する前記第2のネットワークを識別可能であり」と,引用発明1の「基地局及びRNCは,ユーザ装置が送信するUL-DCCH-要求に埋め込まれたホーム・ネットワーク・パラメータに基づいて,ユーザ装置に仮想サービスを提供するためのホーム・ネットワークを識別して選択し」は,「前記装置を貸し出される者の加入者端末に対して,前記装置を貸し出される者が管理する前記ネットワークを識別可能である」との点で共通する。

以上を総合すると,本願発明と引用発明1とは,以下の点で一致し,また,相違している。

(一致点)
「 端末の属性に基づいて,装置を貸し出す者から装置を貸し出される者に貸し出され所定の信号処理を実行する装置を利用して通信サービスを提供する,装置を貸し出される者が管理するネットワークを含む複数のネットワークのうち,当該端末に対応するネットワークを識別し,
前記ネットワークの加入者端末に対して,識別された前記ネットワークにおいて所定の信号処理を実行するネットワークノードと,前記ネットワークの加入者端末とを接続させ,
前記装置を貸し出される者の加入者端末に対して,前記装置を貸し出される者が管理する前記ネットワークを識別可能である
方法。」

(相違点1)
「装置を貸し出す者から装置を貸し出される者に貸し出され所定の信号処理を実行する装置」に関し,本願発明は「ネットワークノード」であるのに対し,引用発明1は「基地局及びRNC」である点。

(相違点2)
「前記所定の信号処理を実行するネットワークノードと,前記ネットワークの加入者端末とを接続させ」ることに関し,本願発明は,「前記所定の信号処理を実行するネットワークノード」,すなわち「前記第1のオペレータから第2のオペレータに貸し出され所定の信号処理を実行するネットワークノード」と,「前記第2のネットワークの加入者端末」とを「前記第1のネットワークを介さずに接続させる」ものであるのに対し,引用発明1にはそのようなことは特定されていない点。

(相違点3)
「装置を貸し出す者」に関し,本願発明は「第1のオペレータ」であり,「第1のオペレータ」は「第1のネットワーク」を管理するものであるのに対し,引用発明1の「RAN所有者」にはそのような特定がされていない点。

(相違点4)
「装置を貸し出される者が管理するネットワーク」に関し,本願発明は装置を貸し出される者が「第2のオペレータ」であり,装置を貸し出される者が管理するネットワークが「第2のオペレータが管理する第2のネットワーク」であるのに対し,引用発明1の「ホーム・オペレータ」及び「ホーム・ネットワーク」にはそのような特定がされていない点。

(相違点5)
「複数のネットワーク」に関し,本願発明は「第1のオペレータが管理する第1のネットワーク」を含むのに対し,引用発明1はそのような特定がされていない点。

(相違点6)
「通信サービス」に関し,本願発明は「前記通信サービスは,前記第2のオペレータの加入者端末の位置情報に基づく前記第2のオペレータの加入者端末が移動するための制御データを提供するサービスである」と特定されているのに対し,引用発明1の「仮想サービス」はそのような特定がされていない点。

上記の各相違点について検討する。

(相違点1,2,3,4,5について)
引用発明1は「仮想化されたコアネットワークノードが実装される基地局及びRNCによって提供されるリソースの分担は変更されうるもの」であるところ,仮想化技術において,どの機能をどの装置上に実装するかは,当該機能及び装置の特性に応じて任意に選択しうる事項である。そして,モバイルネットワークオペレータ(MNO)がモバイル仮想ネットワークオペレータ(MVNO)に通信サービスを提供するための基地局やコアネットワークノードを貸し出すことは,本願の出願日時点で広く行われている事項である。そうすると,引用発明1の「仮想化されたコアネットワークノード」を「RAN所有者の基地局及びRNC」において実装することに代えて,MNOが貸し出したコアネットワークノードにおいて実装することは,当業者であれば適宜なし得る事項に過ぎない。

また,上記「第4 引用発明」の「2 引用発明2」で認定したとおり,「 第1のネットワークと第2のネットワークに接続するRANが第2のネットワークのネットワークノードと端末とを第1のネットワークを介さずに接続させる方法。」との引用発明2が公知であるところ,引用発明1の「仮想化されたコアネットワークノード」を,MNOが貸し出したコアネットワークノードにおいて実装するにあたり,「仮想化されたコアネットワークノード」と引用発明1の「ユーザ装置」とを,他のコアネットワークを介さずに接続するようにすることは,技術の具体的な適用に伴う設計変更にすぎない。

また,引用発明1の「仮想化されたコアネットワークノード」を,「RAN所有者の基地局及びRNC」において実装することに代えて,MNOが貸し出したコアネットワークノードにおいて実装する場合,モバイルネットワークオペレータ(MNO)がコアネットワークノードを貸し出していることは自明である。
してみると,引用発明1の「仮想化されたコアネットワークノード」を,「RAN所有者の基地局及びRNC」において実装することに代えて,MNOが貸し出したコアネットワークノードにおいて実装する場合,引用発明1において,「RAN所有者」が「RAN所有者の基地局及びRNC」を貸し出すことに代えて,モバイルネットワークオペレータ(MNO)であるところの「第1のオペレータ」が,コアネットワークノードを貸し出すようにすることは,技術の具体的な適用に伴う設計変更にすぎない。
更に,MNOが,自らが管理するコアネットワークを有することは明らかであるから,MNOであるところの「第1のオペレータ」が管理するコアネットワークを「第1のネットワーク」として採用することは,当業者が適宜なし得ることである。

また,引用発明1の「仮想化されたコアネットワークノード」を,「RAN所有者の基地局及びRNC」に代えて,MNOが貸し出したコアネットワークノードにおいて実装するにあたり,引用発明1において,「ホーム・オペレータ」が,「RAN所有者の基地局及びRNC」の貸し出しを受けることに代えて,モバイル仮想ネットワークオペレータ(MVNO)であるところの「第2のオペレータ」が,MNOからコアネットワークノードの貸し出しを受けることとし,更に,「ホーム・オペレータ」が管理する「ホーム・ネットワーク」に代えて,「第2のオペレータが管理する第2のネットワーク」を採用することは,技術の具体的な適用に伴う設計変更にすぎない。

また,基地局に接続する端末に関して,基地局が,MNOのネットワークを含む複数のネットワークから端末に対応するネットワークを識別することは一般的に行われている事項に過ぎないから,引用発明1の「ユーザ端末」に関して,MNOであるところの「第1のオペレータ」が管理する「第1のネットワーク」を含めた複数のネットワークから,「ユーザ端末」が対応するネットワークを識別するようにすることは,当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

したがって,引用発明1において,「端末の属性に基づいて,第1のオペレータが管理する第1のネットワークと,前記第1のオペレータから第2のオペレータに貸し出され所定の信号処理を実行するネットワークノードを利用して通信サービスを提供する,第2のオペレータが管理する第2のネットワークとを含む複数のネットワークのうち,当該端末に対応するネットワークを識別する第1のステップと,
前記第2のネットワークの加入者端末に対して,識別された前記第2のネットワークにおいて前記所定の信号処理を実行するネットワークノードと,前記第2のネットワークの加入者端末とを前記第1のネットワークを介さずに接続させる第2のステップと,を含み,
前記第1のステップにおいて,前記第2のオペレータの加入者端末に対して,前記第2のオペレータが管理する前記第2のネットワークを識別可能であり」を採用することは,当業者が容易に想到しうることである。

(相違点6について)
引用発明3の「ナビゲーション装置」は,「自動走行開始確認情報を受信すると,自動走行装置に自動走行を開始させ」るものであるから,引用発明3の「自動走行開始確認情報」は,ナビゲーション装置を搭載した車両が移動するための制御データであるといえる。
また,引用発明3の「ナビゲーション装置」は,「取得した位置情報に基づいて車両が自動走行区間に進入する地点に到達したか否かを判断し,当該地点に到達したと判断した場合,自動走行開始要求情報を管理サーバ装置に送信し,管理サーバ装置から自動走行開始確認情報を受信」するものであるから,引用発明3の「自動走行開始確認情報」は,車両の位置情報,すなわちナビゲーション装置が取得した位置情報に基づき,管理サーバ装置から提供される制御データであるといえる。更に言えば,引用発明3の「管理サーバ装置」は,「ナビゲーション装置から取得した位置情報及び経路情報に基づいて自動走行区間に進入する地点及び退出する地点,並びに自動走行経路を設定」するものであるところ,「自動走行開始確認情報」は,「自動走行区間に進入する地点」に関連する情報であることは明らかであるから,「自動走行区間に進入する地点」に関連する「自動走行開始確認情報」は,「自動走行区間に進入する地点」を設定する時点の「ナビゲーション装置から取得した位置情報」に基づく制御データといえる。
更に,引用発明3は「管理サーバ装置とナビゲーション装置」が「公衆電話網回線やインターネットを含む移動体通信網によって通信回線を確立し接続」するものであるから,引用発明3の「自動走行開始確認情報」,すなわち「ナビゲーション装置」が取得した位置情報に基づき,ナビゲーション装置を搭載した車両が移動するための制御データが,「管理サーバ装置」から「公衆電話網回線」のコアネットワークノードを介して「ナビゲーション装置」に送信されることは自明である。
そして,引用発明3は,「ナビゲーション装置」を所有するユーザに,車両の「走行制御」,「自動走行」に関するサービスを提供するものであるところ,引用発明1において,引用発明3の当該サービスを,引用発明1の「ユーザ装置」に提供される「仮想サービス」として採用することは,当業者にとって格別困難なことでは無い。
よって,引用発明1において,「前記通信サービスは,前記第2のオペレータの加入者端末の位置情報に基づく前記第2のオペレータの加入者端末が移動するための制御データを提供するサービスである」を採用することは,当業者が容易に想到しうることである。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明1-3に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。
したがって,本願発明は,引用例5,3,6に記載された発明に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

[請求人の主張について]
請求人は,令和2年6月19日に提出された意見書の「(3)」において「本願請求項1,請求項8,請求項9及び請求項16に係る発明によれば,新たなトラフィックオフロード技術を提供することができるという,当初明細書の段落0013に記載の顕著な効果を奏します(第1の効果)。
またかかる特徴によれば,大量のトラフィックを例えばMVNOネットワークで処理することにより,レガシーネットワークの負荷が低減できる,という当初明細書の段落0078に記載の顕著な効果を奏します(第2の効果)。」と主張している。
しかしながら,引用例5の【0003】には「MVNO」について言及があるところ,引用例5に記載された引用発明1が,レガシーネットワークからみて,トラフィックオフロードや負荷の低減に寄与することは明らかである。

また,請求人は,意見書の「(3)」において「なおここでの自動運転の制御データは,例えば,別の端末の位置情報そのものも含みます(自動運転の「ダイナミックマップ」)。位置情報を例えば100msごとにネットワーク経由で交換することで,衝突を防ぐことも可能にすることができます。」と主張している。
しかしながら,本願発明には,「制御データ」が,別の端末の位置情報や自動運転の「ダイナミックマップ」であることは特定されていない。また,本願発明には,位置情報を100msごとにネットワーク経由で交換することを特定する事項は記載されていない。したがって,請求人の上記主張は本願発明に関する主張ではない。

更に,請求人は,意見書の「(4)」において「ご引用の,引用文献5,引用文献3及び引用文献6,や引用文献7は,本願請求項1,請求項8,請求項9及び請求項16に係る発明のような,請求項1等の「第2のオペレータの加入者端末」から受信した通信データが解析され,通信データに基づいて提供する所定のサービスに関するデータが端末1B(現在の請求項1等の「第2のオペレータの加入者端末」)に送信される動作について,関知しておらず,記載は見当たりません。」と主張している。
しかしながら,本願発明には,「第2のオペレータの加入者端末」から受信した「通信データ」を「解析」すること,及び「通信データに基づいて提供する所定のサービスに関するデータ」が「第2のオペレータの加入者端末」に「送信」されることを特定する事項は記載されていない。したがって,請求人の上記主張は本願発明に関する主張ではない。
更に言えば,請求人の上記主張が,本願発明の「前記通信サービスは,前記第2のオペレータの加入者端末の位置情報に基づく前記第2のオペレータの加入者端末が移動するための制御データを提供するサービスである」との事項に関する主張であると解したとしても,(相違点6について)において検討したとおり,本願発明の上記事項は,引用発明に基づいて当業者が容易に想到しうる事項である。

よって,請求人の上記の各主張を採用することは出来ない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例5,3,6に記載された発明に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-08-05 
結審通知日 2020-08-11 
審決日 2020-08-26 
出願番号 特願2015-19889(P2015-19889)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04W)
P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 浩兵  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 相澤 祐介
畑中 博幸
発明の名称 通信装置、通信システム、通信方法及びプログラム  
代理人 下坂 直樹  
代理人 机 昌彦  

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