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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1367398
審判番号 不服2019-11671  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-05 
確定日 2020-11-10 
事件の表示 特願2016-554439「ユーザにより生成される仮想部屋ベースのユーザインタフェイス」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月 3日国際公開、WO2015/130475、平成29年 7月13日国内公表、特表2017-519259、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)2月12日(パリ条約による優先権主張 2014年 2月26日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年12月13日付けで手続補正がされ、平成30年8月27日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年11月26日に手続補正がされ、平成31年4月24日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和元年9月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成31年4月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-20に係る発明は、以下の引用文献1-2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2012-529147号公報
2.国際公開第2013/137191号

第3 本願発明
本願請求項1-17に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明17」という。)は、令和元年9月5日になされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-17に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である(補正箇所に下線を付した)。

「【請求項1】
建造物の物理的な部屋内の1つ以上の装置を制御する仮想部屋ベースのユーザインタフェイスの仮想部屋を生成する方法であって、
該物理的な部屋内の該1つ以上の装置により提供される1つ以上のサービスを選択するようモバイル装置のユーザに指示し、該1つ以上の装置の各々が該装置に対応するサービスを提供するものであり、
前記物理的な部屋の複数のイメージを前記モバイル装置上で取得し、該複数のイメージの各々が実質的に同じ視点を共有するものであり、
前記モバイル装置上で該複数のイメージを位置合わせして、位置合わせされたイメージスタックを生成し、
前記モバイル装置上で1つ以上のヒットボックスを指定し、該1つ以上のヒットボックスの各々が、前記1つ以上の装置のうちの1つと一致するものであり、
前記モバイル装置上で前記位置合わせされたイメージスタック及び前記指定された1つ以上のヒットボックスに基づいて仮想部屋を生成し、該仮想部屋が、前記物理的な部屋内の前記1つ以上の装置を制御するためにユーザが使用することが可能なものであり、及び前記物理的な部屋内の前記1つ以上の装置により生じる変化を反映するように動的に更新される視覚的外観を有するものである、
仮想部屋ベースのユーザインタフェイスの仮想部屋を生成する方法。
【請求項2】
前記仮想部屋が、前記物理的な部屋のフォト・リアリスティックな描写を提供し、該物理的な部屋の該フォト・リアリスティックな描写が、前記1つ以上の装置のフォト・リアリスティックな描写を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の装置の前記フォト・リアリスティックな描写の各々が、それぞれの装置の現在の状態を描写する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のイメージが、前記1つ以上のサービスの全てが非アクティブ状態にある全てオフのイメージと、単一のサービスがアクティブ状態にあり他のあらゆるサービスが非アクティブ状態にある1つ以上のサービス固有イメージとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記物理的な部屋の前記複数のイメージを前記モバイル装置上で取得することが、前記複数のイメージの各々を前記モバイル装置のカメラを使用してキャプチャすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のイメージの各々を前記モバイル装置のカメラを使用してキャプチャすることが、前記物理的な部屋内のサービスを非アクティブ化し、次いで一度に1つのサービスを順次アクティブ化する間に行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記物理的な部屋の前記複数のイメージを前記モバイル装置上で取得することが、イメージライブラリ内の以前にキャプチャしたイメージを割り当てることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のイメージを位置合わせすることが、
該複数のイメージのうちの第1のイメージを該複数のイメージのうちの少なくとも1つの第2のイメージ上に重ねて表示し、及び、
該第1のイメージ及び該第2のイメージの特徴を一致させるようユーザ入力に応じて該第1のイメージ及び該第2のイメージを調節することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記モバイル装置上で前記1つ以上のヒットボックスを指定することが、前記位置合わせされたイメージスタックに関する入力に基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記生成された仮想部屋をテストし、及び、
該テストに応じて、該生成された仮想部屋を完成させ、又は、前記サービスの前記選択、前記イメージの取得、前記イメージの前記位置合わせ、前記ヒットボックスの前記指定、もしくは前記仮想部屋の前記生成のうちの1つ以上を繰り返して該仮想部屋を改良することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
建造物の物理的な部屋内の1つ以上の装置を制御する仮想部屋ベースのユーザインタフェイスの仮想部屋を生成するモバイル装置であって、
タッチセンサ式表示画面と、
カメラと、
コンフィギュレーションアプリケーションを格納するよう構成されたメモリと、
該コンフィギュレーションアプリケーションを実行するよう構成されたプロセッサとを備えており、該コンフィギュレーションアプリケーションが、その実行時に、
前記物理的な部屋内の前記1つ以上の装置により提供される1つ以上のサービスを選択するよう前記モバイル装置のユーザに指示し、
該コンフィギュレーションアプリケーションがホームオートメーション又は装置制御システムに前記サービスを非アクティブ化させ、次いで一度に1つのサービスを順次アクティブ化させる間に、該モバイル装置の前記カメラを用いて前記物理的な部屋の複数のイメージをキャプチャし、該複数のイメージの各々が実質的に同じ視点を共有するものであり、
該複数のイメージを位置合わせして、位置合わせされたイメージスタックを生成し、
前記モバイル装置の前記タッチセンサ式表示画面上の入力に応じて1つ以上のヒットボックスを指定し、該1つ以上のヒットボックスの各々が、前記1つ以上の装置のうちの1つと一致するものであり、及び、
前記位置合わせされたイメージスタック及び前記指定された1つ以上のヒットボックスに基づいて、前記物理的な部屋内の前記1つ以上の装置を制御するためにユーザが使用することが可能な仮想部屋を生成するよう動作するものである、モバイル装置。
【請求項12】
前記仮想部屋が、前記物理的な部屋のフォト・リアリスティックな描写を提供し、該物理的な部屋の該フォト・リアリスティックな描写が、前記1つ以上の装置のフォト・リアリスティックな描写を含む、請求項11に記載のモバイル装置。
【請求項13】 前記1つ以上の装置の前記フォト・リアリスティックな描写の各々が、それぞれの装置の現在の状態を描写するものである、請求項12に記載のモバイル装置。
【請求項14】 前記複数のイメージが、前記物理的な部屋内で提供される前記1つ以上のサービスの全てが非アクティブ状態にある全てオフのイメージと、前記1つ以上のサービスのうちの単一のサービスがアクティブ状態にあり他のあらゆるサービスが非アクティブ状態にある1つ以上のサービス固有イメージとを含む、請求項11に記載のモバイル装置。
【請求項15】 前記コンフィギュレーションアプリケーションが、その実行時に、前記複数のイメージのうちの第1のイメージを該複数のイメージのうちの少なくとも1つの第2のイメージ上に重ねて前記タッチセンサ式表示画面上に表示し、及び、該タッチセンサ式表示画面上のユーザからのタッチ入力に応じて、該第1のイメージ及び該第2のイメージの特徴を一致させるよう該第1のイメージ及び該第2のイメージを調節するよう更に動作する、請求項11に記載のモバイル装置。
【請求項16】 前記コンフィギュレーションアプリケーションが、その実行時に、前記タッチセンサ式表示画面上のユーザからのタッチ入力に基づいて複数の前記ヒットボックスを指定するよう更に動作する、請求項11に記載のモバイル装置。
【請求項17】 前記コンフィギュレーションアプリケーションが、その実行時に、前記生成された仮想部屋をテストし、及び該生成された仮想部屋を完成させ、又は該生成された仮想部屋を改良するための動作を繰り返すよう更に動作する、請求項11に記載のモバイル装置。」

第4 引用文献、引用発明
1.引用文献1について
(1)引用文献1記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面ともに、次の事項が記載されている(下線は、強調のために当審で付加したものである。以下、同様。)。

「【0017】 図4は、複数の装置に対して相互接続された例示的なプログラム可能なマルチメディアコントローラ400のブロック図である。用語「プログラム可能なマルチメディアコントローラ」は、様々な電気装置及び電子装置(オーディオ、ビデオ、電話、データ、セキュリティ、モータ駆動、暖房・換気・空調(HVAC)、エネルギー管理、及び/又はその他の種類の装置等)を制御し、それらの間でデータを交換し、及び/又はかかる装置と協働することができる装置として広く解釈されるべきである。」

「【0024】 プログラム可能なマルチメディアコントローラ400はまた、1つ又は2つ以上のモバイル装置460を介してユーザ入力を受信することが可能である。本書で用いる用語「モバイル装置」とは、身につけて運ばれるよう構成された電子装置(Apple Inc.から入手できるiPhone(登録商標)マルチメディアフォンやResearch In Motion Limitedから入手できるBlackberry(登録商標)装置等のマルチメディアスマートフォン、Apple Inc.から入手できるiPad(登録商標)タブレット等の多目的タブレットコンピューティング装置、Apple Inc.から入手できるiPod touch(登録商標)等の機能強化された携帯型メディアプレーヤ、PDA(Personal Digital Assistant)、電子ブックリーダなどを含む)を称するものである。かかるモバイル装置は、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400と直接通信することが可能であり、又は様々な無線、セル方式、及び/又は有線ネットワーク(図示せず)を介して間接的に通信することが可能である。」

「【0028】 好適な実施形態では、該新規の仮想部屋ベースのユーザインタフェイスは、制御装置450、モバイル装置460、フロントパネルディスプレイ465、又はタッチスクリーンを有する他の装置上に表示され、ユーザは、該インタフェイスの選択部分を、指、スタイラス、又は同様の手段で触れることにより、その選択を行う。別の実施形態では、仮想部屋ベースのユーザインタフェイスはタッチ認識能力を有さない表示画面上に表示され、ユーザは、何らかの他のタイプのインタフェイス(例えばマウス)を使用して、該ユーザインタフェイスと対話することが可能である。特定の構成では、ユーザは、ハンドヘルド型のボタンを中心としたリモートコントロール装置及び/又は壁取付型のボタンを中心とした制御装置455、環状タッチセンサ457を含むリモートコントロール装置、又はその他の装置を使用して、選択を行うことが可能である。仮想部屋ベースのユーザインタフェイス内でのユーザ選択に応じて、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400は、それに接続された装置へ特定の制御コマンドを発行することが可能である。」

「【0036】 かかるプログラム可能なマルチメディアコントローラ400又はその他のプラットフォームは、新規の仮想部屋ベースのユーザインタフェイスをサポートすることが可能である。一実施形態では、該仮想部屋ベースのユーザインタフェイスは、複数の仮想部屋インタフェイス環境(以下「仮想部屋」と称す)を含む。各仮想部屋は、住居その他の建築物内の異なる物理的な一部屋(又は物理的な一部屋の一部)に対応するものである。場合によっては、複数の仮想部屋は、物理的な一部屋の(例えば該物理的な一部屋全体を網羅する)複数の異なる部分に対応することが可能である。各仮想部屋は、物理的な一部屋の複数の境界(又は該物理的な一部屋の一部)の実質的にフォト・リアリスティックな描写、例えば、該部屋を画定する壁、天井、床等の描写を含むことが可能であり、該物理的な一部屋(又は該物理的な一部屋の一部)内にある家具の少なくとも一部、例えば、該物理的な一部屋内にあるソファー、椅子、ベッド、壁掛等を示すことが可能であり、及び該物理的な一部屋(又は該物理的な一部屋の一部)内にあるプログラム可能なマルチメディアコントローラによる(直接的又は間接的な)制御下にある装置、例えば照明設備を示すことが可能である。」

「【0041】 例えば、ユーザは、仮想部屋内の照明設備の実質的にフォト・リアリスティックな視覚的な描写を選択する(例えば該描写にタッチし又は該描写上でクリックする)ことにより、特定の照明設備を選択し作動させることが可能である。例えば、ユーザは、ランプ640及びシャンデリア662の実質的にフォト・リアリスティックな視覚的な描写を選択する(例えば、該描写にタッチし又は該描写上でクリックする)ことが可能である。これに応じて、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400は、1つ又は2つ以上の電子照明コントローラ490へ制御コマンドを送って、ランプ640及びシャンデリア662への送電手段と直列に配線されたリレーを該コントローラに作動させることが可能である。更に、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400は、点灯中のかかる特定の照明設備と共に物理的な部屋の実質的にフォト・リアリスティックな描写を示すように仮想部屋を更新させることが可能である。」

「【0057】 図11は、仮想部屋ベースのユーザインタフェイスを使用して物理的な部屋内の装置を制御するための例示的な一連のステップ1100のフローチャートである。ステップ1110で、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400が、該物理的な部屋(又は該物理的な部屋の一部)の実質的にフォト・リアリスティックな描写、及び該物理的な部屋内の装置(例えば照明設備)の実質的にフォト・リアリスティックな描写を含む、仮想部屋を描画する。ステップ1120で、描画された仮想部屋が、制御装置450のディスプレイ画面、モバイル装置460、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400のフロントパネルディスプレイ465、テレビ440、又は代替的には他の装置上に表示される。ステップ1130で、マルチメディアコントローラ400が、ユーザからの選択(例えば、タッチ選択、ボタン押下、環状タッチセンサ入力等)を受信する。該選択は、仮想部屋内の装置(例えば特定の照明設備)の特定の実質的にフォト・リアリスティックな視覚的描写を指示するものである。
【0058】 ステップ1140で、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400は、物理的な部屋内の該装置へ、又は該装置に接続された中間コントローラへ、制御コマンドを送って、該装置の状態を変更させる。例えば、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400は、1つ又は2つ以上の電子照明コントローラ490へ制御コマンドを送って、該選択された照明設備への送電手段と直列に配線されたリレー492をかかるコントローラに作動させることが可能である。ステップ1150で、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400は、仮想部屋の外観を更新させ、ステップ1010へ戻り、該仮想部屋及び該仮想部屋内の装置の視覚的描写を描画して、更新された状態(例えば、作動された照明設備)を示す。
【0059】 物理的な部屋の実質的にフォト・リアリスティックな描写、及び該物理的な部屋内の装置の実質的にフォト・リアリスティックな描写を含む、仮想部屋は、図11のステップ1110において様々な任意の異なる態様で描画することが可能である。一実施形態では、システムコンフィギュレーション中に、インストーラが、所定の場所から物理的な部屋の複数のイメージを捕捉する(例えばディジタルスチル写真を撮る)ことが可能であり、該部屋の各イメージは、異なる潜在的状態にあるときに捕捉される。例えば、第1のイメージを、照明設備が全く作動していない状態で物理的な部屋から捕捉し、第2のイメージを、第1の照明設備が作動している状態で物理的な部屋から捕捉し、第3のイメージを、第2の照明設備が作動している状態で物理的な部屋から捕捉し、第4のイメージを、第1の照明設備及び第2の照明設備が作動している状態で物理的な部屋から捕捉する、といった具合で、考え得るあらゆる組み合わせが捕捉されるようにすることが可能である。該イメージは、それらイメージ間で特徴の場所が一致するよう相関づけを行って、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400又はその他の装置上のライブラリに格納することが可能である。かかる一実施形態では、描画ステップ1110は、単純に、適当な状態の装置と共に物理的な部屋を示す該物理的な部屋の適当な格納済みイメージへのアクセスを伴うものとなる。
【0060】 しかし、かかる技術は、特定の用途では実施可能であるが、部屋内の装置の数が増えるにつれて、考え得る各状態の該部屋を表現するために必要となる予め記録されたイメージの数が指数関数的に増加することになる。n個の装置を有する部屋は、その各装置が二値(例えば、オン又はオフ)しか有さない場合、該装置の考え得る組み合わせの全てを表現するために2n個の予め記録されたイメージを必要とする。3つ以上の考え得る状態(例えば、一定範囲の調光設定)を有する装置を導入する場合には、必要となる予め記録されたイメージの数が更に増加することになる。したがって、より少数の予め記録されたイメージから部屋の追加の状態を導出することができる技術を用いることが望ましい。
【0061】 好適な実施形態では、物理的な部屋の実質的にフォト・リアリスティックな描写と、該物理的な部屋内の装置の実質的にフォト・リアリスティックな描写とを含む仮想部屋は、図11のステップ1110で、限られた数の予め記録されたイメージ(例えば該物理的な部屋の限られた数のディジタルスチル写真)から描画される。システムコンフィギュレーション中に、インストーラが、装置が全く作動していない状態の部屋のイメージ、並びに該部屋内の各装置が単独で(すなわち該部屋内の他の装置が作動していない状態で)作動している状態の該部屋のイメージを所定の場所から捕捉する。例えば、照明設備が全く作動していない状態の物理的な部屋から第1のイメージを捕捉し、第1の照明設備のみが(好適には最大照度で)作動している状態の物理的な部屋から第2のイメージを捕捉し、第2の照明設備のみが(好適には最大照度で)作動している状態の物理的な部屋から第3のイメージを捕捉し、第3の照明設備のみが(好適には最大照度で)作動している状態の物理的な部屋から第4のイメージを捕捉する、といったことが可能である。n個の装置を有する部屋の場合、n+1個のイメージを捕捉することが可能である。該n+1個のイメージは、それらイメージ間で特徴の場所が一致するよう相関付けを行って、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400又はその他の装置上のライブラリに格納することが可能である。次いで、新規のミキシング技術に従って、該部屋の考え得る状態の全てを、前記n+1個の予め記録されたイメージから、その表示を行う際に生成することが可能である。」

(2)引用発明
したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「「プログラム可能なマルチメディアコントローラ」は、様々な電気装置及び電子装置(オーディオ、ビデオ、電話、データ、セキュリティ、モータ駆動、暖房・換気・空調(HVAC)、エネルギー管理、及び/又はその他の種類の装置等)を制御し、それらの間でデータを交換し、及び/又はかかる装置と協働することができる装置(段落【0017】)であり、
プログラム可能なマルチメディアコントローラ400はまた、1つ又は2つ以上のモバイル装置460を介してユーザ入力を受信することが可能であり、
「モバイル装置」とは、身につけて運ばれるよう構成された電子装置(Apple Inc.から入手できるiPhone(登録商標)マルチメディアフォンやResearch In Motion Limitedから入手できるBlackberry(登録商標)装置等のマルチメディアスマートフォン、Apple Inc.から入手できるiPad(登録商標)タブレット等の多目的タブレットコンピューティング装置、Apple Inc.から入手できるiPod touch(登録商標)等の機能強化された携帯型メディアプレーヤ、PDA(Personal Digital Assistant)、電子ブックリーダなどを含む)を称するものであ(段落【0024】)り、
仮想部屋ベースのユーザインタフェイスは、モバイル装置460上に表示され、ユーザは、該インタフェイスの選択部分を、指、スタイラス、又は同様の手段で触れることにより、その選択を行い(段落【0028】)、
プログラム可能なマルチメディアコントローラ400又はその他のプラットフォームは、仮想部屋ベースのユーザインタフェイスをサポートし、各仮想部屋は、住居その他の建築物内の異なる物理的な一部屋(又は物理的な一部屋の一部)に対応するものであり、該物理的な一部屋(又は該物理的な一部屋の一部)内にあるプログラム可能なマルチメディアコントローラによる(直接的又は間接的な)制御下にある装置、例えば照明設備を示し(段落【0036】)、
ユーザは、仮想部屋内の照明設備の実質的にフォト・リアリスティックな視覚的な描写を選択する(例えば該描写にタッチし又は該描写上でクリックする)ことにより、特定の照明設備を選択し作動させ(段落【0041】)、
仮想部屋ベースのユーザインタフェイスを使用して物理的な部屋内の装置を制御するために、
プログラム可能なマルチメディアコントローラ400が、該物理的な部屋(又は該物理的な部屋の一部)の実質的にフォト・リアリスティックな描写、及び該物理的な部屋内の装置(例えば照明設備)の実質的にフォト・リアリスティックな描写を含む、仮想部屋を描画し、描画された仮想部屋が、モバイル装置460上に表示され、マルチメディアコントローラ400が、ユーザからの選択(例えば、タッチ選択、ボタン押下、環状タッチセンサ入力等)を受信し、該選択は、仮想部屋内の装置(例えば特定の照明設備)の特定の実質的にフォト・リアリスティックな視覚的描写を指示(段落【0057】)し、
プログラム可能なマルチメディアコントローラ400は、物理的な部屋内の該装置へ制御コマンドを送って、該装置の状態を変更させ、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400は、仮想部屋の外観を更新させ、該仮想部屋及び該仮想部屋内の装置の視覚的描写を描画して、更新された状態(例えば、作動された照明設備)を示し(段落【0058】)、
システムコンフィギュレーション中に、インストーラが、所定の場所から物理的な部屋の複数のイメージを捕捉する(例えばディジタルスチル写真を撮る)ことが可能であり、該部屋の各イメージは、異なる潜在的状態にあるときに捕捉され、第1のイメージを、照明設備が全く作動していない状態で物理的な部屋から捕捉し、第2のイメージを、第1の照明設備が作動している状態で物理的な部屋から捕捉し、第3のイメージを、第2の照明設備が作動している状態で物理的な部屋から捕捉し、第4のイメージを、第1の照明設備及び第2の照明設備が作動している状態で物理的な部屋から捕捉する、といった具合で、考え得るあらゆる組み合わせが捕捉され、該イメージは、それらイメージ間で特徴の場所が一致するよう相関づけを行って、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400又はその他の装置上のライブラリに格納し、適当な状態の装置と共に物理的な部屋を示す該物理的な部屋の適当な格納済みイメージへのアクセスを伴(段落【0059】)い、
限られた数の予め記録されたイメージ(例えば該物理的な部屋の限られた数のディジタルスチル写真)から描画され、新規のミキシング技術に従って、該部屋の考え得る状態の全てを、前記n+1個の予め記録されたイメージから、その表示を行う際に生成する(段落【0061】)、
仮想部屋ベースのユーザインタフェイスの仮想部屋の描画方法。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、以下の記載がある。
「[0014]
[第1実施形態]
[構成]
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態の遠隔指示システム1の構成を示すブロック図である。遠隔指示システム1は、通信装置10、記憶装置20、通信回線2、指示装置30、移動装置40、エアコン4及びテレビ5を備える。記憶装置20及び通信回線2は部屋3の外(つまり室外)の設備であり、指示装置30、移動装置40、エアコン4及びテレビ5は部屋3の内部(つまり室内)に設置されている設備である。通信回線2は、移動体通信網又はインターネット等を含むものである。通信装置10、記憶装置20及び指示装置30は、通信回線2を介して互いに通信する。通信装置10は、ユーザが所持する装置であり、本実施形態においては、ユーザとともに部屋3の外部(つまり室外)に所在しているものとする。遠隔指示システム1は、通信装置10を所持するユーザが、エアコン4及びテレビ5の動作を室外、すなわち遠隔から指示するためのシステムである。この際、指示装置30および移動装置40は、ユーザの指示を中継する中継装置として機能する。」

「[0020]
通信装置10は、例えば、スマートフォンやタブレット端末などであり、ユーザによって操作され、指示装置30と通信を行う通信装置である。通信装置10は、指示装置30に対して、上記の指示信号又は移動信号を発信することを要求する要求データを通信回線2を介して送信する。言い換えると、通信装置10は、指示装置30に対して、制御対象機器又は移動装置40の動作を指示することを要求する要求データを送信する。通信装置10は、このような要求データを送信することで、指示装置30に何らかの動作(この場合指示信号又は移動信号を発信する動作)を行うことを要求する。以下では、このように要求データを送信することを、単に「要求する」という。例えば、通信装置10は、指示装置30に対して、指示装置30が場所B4又はB5まで到達するまで移動装置40が移動する動作を指示することを要求する。場所B4は、上記の範囲A4に含まれ、場所B5は、上記の範囲A5に含まれている。」

「[0022]
以下、上記の各装置のハードウェア構成を説明する。
図2は、通信装置10のハードウェア構成を示す図である。通信装置10は、制御部110と、記憶部120と、通信部130と、音声入出力部140と、タッチスクリーン部150とを備える。記憶部120は、例えばハードディスク等の記憶手段であり、制御部110が制御に用いるデータやプログラムを記憶している。通信部130は、通信回線2に無線で接続し、通信回線2を介して記憶装置20及び指示装置30との間で通信する通信手段である。通信部130は、この通信により、記憶装置20及び指示装置30とデータを送受信する。音声入出力部140は、スピーカ、マイクロフォン及び音声処理回路等を備えており、通話に係る音声の入出力を行う。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などの記憶装置とを備えるコンピュータである。CPUは、RAMをワークエリアとして用いてROMや記憶部120に記憶されたプログラムを実行することによって、通信装置10の各部の動作を制御する。
[0023]
タッチスクリーン部150は、画像を表示するとともにユーザの操作を受け付ける手段であり、表示部151とタッチセンサ152とを備える。表示部151は、表示面を有し、その表示面に画像を表示する。表示部151は、液晶素子や有機EL(electroluminescence)素子によりその表示面に画像を表示する表示パネルと、表示パネルを駆動する駆動回路等とを備える。タッチセンサ152は、前述の表示面と大きさ及び形状が概ね同じであり、その表示面に重ねて設けられている。タッチセンサ152は、例えば、表示面を指し示す指示体との静電結合を利用してその指示体が指し示す位置を検出する静電容量方式のセンサである。タッチセンサ152は、表示面においてユーザが指示した位置(指示位置という)を検出する検出手段として機能する。タッチセンサ152は、検出した位置を示すデータを制御部110に供給する。また、表示面に操作用の画像が表示されている場合、ユーザは、その画像を指し示すことで操作を行う。この場合、タッチセンサ152は、検出した位置が含まれている画像に応じた操作データ、すなわち受け付けた操作に応じた操作データを制御部110に供給する。」

「[0056]
上述したモーション動作処理が行われた後に、図14に示すショートカット対応付け処理が行われることで、コマンドデータがショートカット領域に対応付けられる例について説明する。この例では、ステップS63において、図17(b)に示す撮影画像C3が表示面153に表示されている。ユーザは、この撮影画像C3の或る領域を選択する。
図18は、ショートカット対応付け処理において表示面153に表示される撮影画像の例を示す図である。図18(a)では、ユーザが選択する領域E2を示している。ユーザは、撮影画像C3に映っているテレビ5を目印にして、テレビ5の画面部分を含むように領域E2を選択している。続いて、通信装置10は、図18(b)に示すようなショートカット対応付け画像D22を表示する(ステップS65)。ユーザは、この画像においてコマンド名及びモーション名を示す文字列から、例えば「テレビ電源ON/OFF」という文字列を、領域E2をショートカット領域として対応付けるものとして選択する(ステップS66)。次に、通信装置10は、選択された「テレビ電源ON/OFF」という文字列が示すコマンドのコマンドデータと、領域E2を示すデータとを対応付けて記憶する(ステップS67)。そして、通信装置10は、図18(c)に示すように、この文字列と並べて、領域E2のサムネイルを表示する(ステップS68)。
[0057]
以上のショートカット対応付け処理が行われることにより、上述したコマンド動作処理が実行されるようになる。
図19は、コマンド動作処理の手順を示すシーケンスチャートである。ここでは、モーション動作処理が行われて、移動装置40が場所B5に移動した状態となっている場合を例にとって説明する。まず、図16に示すステップS81、S82、S83の処理がそれぞれ行われ、表示面153に場所B5で撮影された撮影画像が表示される。
[0058]
図20は、コマンド動作処理において表示面153に表示される撮影画像の例を示す図である。図20(a)では、この例におけるステップS83において表示される撮影画像C4が示されている。撮影画像C4には、電源が入っていないテレビ5が映っている。ユーザは、この撮影画像C4を見て、テレビ5の電源が入っていないことを確認し、テレビ5の電源を入れる操作、すなわち領域E2を選択する操作を行う。この図では、領域E2を分かりやすくするため二点鎖線で示しているが、実際には表示されていない。ユーザは、上述したショートカット対応付け処理において、テレビ5の画面部分を含むように領域E2を選択したので、この画面部分を目印にして領域E2を選択する(すなわち領域E2を指し示す)。」







第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
ア 引用発明の「物理的な部屋」、「仮想部屋の描画」は、それぞれ本願発明1の「建造物の物理的な部屋」、「仮想部屋の生成」に相当する。
そして、引用発明の「仮想部屋の描画方法」は、「仮想部屋ベースのユーザインタフェイスを使用して物理的な部屋内の装置を制御するために、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400が、該物理的な部屋(又は該物理的な部屋の一部)の実質的にフォト・リアリスティックな描写、及び該物理的な部屋内の装置(例えば照明設備)の実質的にフォト・リアリスティックな描写を含む、仮想部屋を描画」するものであるから、本願発明1の「建造物の物理的な部屋内の1つ以上の装置を制御する仮想部屋ベースのユーザインタフェイスの仮想部屋を生成する方法」に相当する。

イ 引用発明は、「各仮想部屋は、住居その他の建築物内の異なる物理的な一部屋(又は物理的な一部屋の一部)に対応するものであり」、「仮想部屋ベースのユーザインタフェイスは、モバイル装置460上に表示され、ユーザは、仮想部屋内の照明設備を選択する(例えば該描写にタッチし又は該描写上でクリックする)ことにより、特定の照明設備を選択し作動させ」ているから、「ユーザ」は、「モバイル装置460上に表示」された「仮想部屋内」の「特定の照明装置」を選択し、建築物内の物理的な部屋内の「特定の照明装置」を作動させていると認められる。
ここで、作動される建築物内の物理的な部屋内の「特定の照明装置」は、本願発明1の「該物理的な部屋内の該1つ以上の装置」に相当する。
また、「特定の照明装置」が作動した場合、部屋を明るくするというサービスが提供されていることは自明であるから、「特定の照明装置」を作動させることは、「該1つ以上の装置により提供するものであ」るといえる。
そして、「仮想部屋ベースのユーザインタフェイス」は、「モバイル装置460」上に表示されており、「仮想部屋ベース内の照明設備」の選択をユーザに行わせているから、「該物理的な部屋内の該1つ以上の装置により提供される1つ以上のサービスを選択するようモバイル装置のユーザに指示し」ているといえる。
したがって、引用発明は、「該物理的な部屋内の該1つ以上の装置により提供される1つ以上のサービスを選択するようモバイル装置のユーザに指示し、該1つ以上の装置の各々が該装置に対応するサービスを提供するものであ」ると認められる。
よって、引用発明の「各仮想部屋は、住居その他の建築物内の異なる物理的な一部屋(又は物理的な一部屋の一部)に対応するものであり」、「仮想部屋ベースのユーザインタフェイスは、モバイル装置460上に表示され、ユーザは、仮想部屋内の照明設備を選択する(例えば該描写にタッチし又は該描写上でクリックする)ことにより、特定の照明設備を選択し作動させ」ることは、本願発明1の「該物理的な部屋内の該1つ以上の装置により提供される1つ以上のサービスを選択するようモバイル装置のユーザに指示し、該1つ以上の装置の各々が該装置に対応するサービスを提供するものであ」ることに相当している。

ウ 引用発明は、「インストーラが、所定の場所から物理的な部屋の複数のイメージを捕捉する(例えばディジタルスチル写真を撮る)ことが可能であり、該部屋の各イメージは、異なる潜在的状態にあるときに捕捉され」ており、「物理的な部屋の複数のイメージ」を「インストーラ」が「捕捉」し、該部屋の各イメージは「異なる潜在的状態にあるときに」「所定の場所から」捕捉されたものであると認められる。
ここで、引用発明における「イメージの捕捉」は、本願発明1の「イメージを取得」することに相当する。また、引用発明における「該部屋の各イメージ」は、「所定の場所」から「異なる潜在的状態」にあるときに捕捉されていることから、実質的に同じ視点を共有するものであるといえる。
よって、引用発明の「インストーラが、所定の場所から物理的な部屋の複数のイメージを捕捉する(例えばディジタルスチル写真を撮る)ことが可能であり、該部屋の各イメージは、異なる潜在的状態にあるときに捕捉され」ることは、本願発明1の「前記物理的な部屋の複数のイメージを前記モバイル装置上で取得し、該複数のイメージの各々が実質的に同じ視点を共有するものであ」ることとは、「前記物理的な部屋の複数のイメージを取得し、該複数のイメージの各々が実質的に同じ視点を共有するものであ」る点で共通している。

エ 引用発明の「該イメージは、それらイメージ間で特徴の場所が一致するよう相関づけを行って、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400又はその他の装置上のライブラリに格納」しており、「イメージ間で特徴の場所が一致するよう相関付けを行う」ことは、イメージの位置合わせといえ、相関づけされた「イメージ」はライブラリに格納されているから、該複数のイメージを位置合わせして、位置合わせされたイメージスタックを生成しているといえる。
よって、引用発明の「該イメージは、それらイメージ間で特徴の場所が一致するよう相関づけを行って、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400又はその他の装置上のライブラリに格納」することは、本願発明1の「前記モバイル装置上で該複数のイメージを位置合わせして、位置合わせされたイメージスタックを生成し」ていることとは、「該複数のイメージを位置合わせして、位置合わせされたイメージスタックを生成し」ている点で共通している。

オ 引用発明の「適当な状態の装置と共に物理的な部屋を示す該物理的な部屋の適当な格納済みイメージへのアクセスを伴い、限られた数の予め記録されたイメージ(例えば該物理的な部屋の限られた数のディジタルスチル写真)から描画され、新規のミキシング技術に従って、該部屋の考え得る状態の全てを、前記n+1個の予め記録されたイメージから、その表示を行う際に生成する」しているから、「該物理的な部屋の適当な格納済みイメージ」(位置合わせされたイメージスタック)から「新規のミキシング技術に従って」、「その表示を行う際に生成」しているから、前記位置合わせされたイメージスタックに基づいて仮想部屋を生成しているといえる。
したがって、引用発明の「適当な状態の装置と共に物理的な部屋を示す該物理的な部屋の適当な格納済みイメージへのアクセスを伴い、限られた数の予め記録されたイメージ(例えば該物理的な部屋の限られた数のディジタルスチル写真)から描画され、新規のミキシング技術に従って、該部屋の考え得る状態の全てを、前記n+1個の予め記録されたイメージから、その表示を行う際に生成する」ことと本願発明1の「前記モバイル装置上で前記位置合わせされたイメージスタック及び前記指定された1つ以上のヒットボックスに基づいて仮想部屋を生成し」ていることとは、「前記位置合わせされたイメージスタックに基づいて仮想部屋を生成し」ている点で共通している。

カ 上記「第5 1.(1)ア」で検討したとおり、引用発明の「仮想部屋ベースのユーザインタフェイス」は、「前記物理的な部屋内の前記1つ以上の装置を制御する仮想部屋ベースのユーザインタフェイス」であり、ユーザインタフェイスは、ユーザが使用することが可能なものであることは技術常識であるから、「前記物理的な部屋内の前記1つ以上の装置を制御するためにユーザが使用することが可能なものであ」るといえる。
また、引用発明の「プログラム可能なマルチメディアコントローラ400は、物理的な部屋内の該装置へ制御コマンドを送って、該装置の状態を変更させ、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400は、仮想部屋の外観を更新させ、該仮想部屋及び該仮想部屋内の装置の視覚的描写を描画して、更新された状態(例えば、作動された照明設備)を示し」ており、「前記物理的な部屋内の前記1つ以上の装置により生じる変化を反映するように動的に更新される視覚的外観を有するもの」といえる。
したがって、引用発明の「プログラム可能なマルチメディアコントローラ400は、物理的な部屋内の該装置へ制御コマンドを送って、該装置の状態を変更させ、プログラム可能なマルチメディアコントローラ400は、仮想部屋の外観を更新させ、該仮想部屋及び該仮想部屋内の装置の視覚的描写を描画して、更新された状態(例えば、作動された照明設備)を示し」ていることは、本願発明1の「該仮想部屋が、前記物理的な部屋内の前記1つ以上の装置を制御するためにユーザが使用することが可能なものであり、及び前記物理的な部屋内の前記1つ以上の装置により生じる変化を反映するように動的に更新される視覚的外観を有するものである」ことに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「建造物の物理的な部屋内の1つ以上の装置を制御する仮想部屋ベースのユーザインタフェイスの仮想部屋を生成する方法であって、
該物理的な部屋内の該1つ以上の装置により提供される1つ以上のサービスを選択するようモバイル装置のユーザに指示し、該1つ以上の装置の各々が該装置に対応するサービスを提供するものであり、
前記物理的な部屋の複数のイメージを取得し、該複数のイメージの各々が実質的に同じ視点を共有するものであり、
複数のイメージを位置合わせして、位置合わせされたイメージスタックを生成し、
前記位置合わせされたイメージスタックに基づいて仮想部屋を生成し、該仮想部屋が、前記物理的な部屋内の前記1つ以上の装置を制御するためにユーザが使用することが可能なものであり、及び前記物理的な部屋の前記1つ以上の装置により生じる変化を反映するように動的に更新される視覚的外観を有するものである、
仮想部屋ベースのユーザインタフェイスの仮想部屋を生成する方法。」

[相違点1] 本願発明1は、物理的な部屋の複数のイメージを「前記モバイル装置上」で取得しているのに対し、引用発明は、物理的な部屋の複数のイメージを「インストーラ」で取得している点。

[相違点2] 本願発明1は、「前記モバイル装置で」該複数のイメージを位置合わせして、位置合わせされたイメージスタックを生成しているのに対して、引用発明は、「インストーラで」該複数のイメージを位置合わせして、位置合わせされたイメージスタックを生成している点。

[相違点3] 本願発明1は、「前記モバイル装置上で1つ以上のヒットボックスを指定し、該1つ以上のヒットボックスの各々が、前記1つ以上の装置のうちの1つと一致するものであ」るのに対して、引用発明には、そのような構成を備えることが特定されていない点。

[相違点4] 本願発明1は、「前記モバイル装置上で」位置合わせされたイメージスタック「及び前記指定された1つ以上のヒットボックス」に基づいて仮想部屋を生成しているのに対して、引用発明は、「インストーラ上で」位置合わせされたイメージスタックに基づいて仮想部屋を生成している点。

(2)判断
事案に鑑みて、相違点4について先に検討する。
ア 上記「第4 2.」を参照すると、引用文献2には、「エアコン4及びテレビ5は部屋3の内部に設置されている設備であり、
通信装置10を所持するユーザが、エアコン4及びテレビ5の動作を指示するためのシステムであり、
指示装置30および移動装置40は、ユーザの指示を中継する中継装置であり、
通信装置10は、例えば、スマートフォンやタブレット端末などであり、
通信装置10は、タッチスクリーン部150とを備え、
表示面に表示される撮影画像において、テレビ5の画面部分を含むように領域E2を選択し、
「テレビ電源ON/OFF」という文字列を、領域E2をショートカット領域として対応付けるものとして選択し、選択された「テレビ電源ON/OFF」という文字列が示すコマンドのコマンドデータと、領域E2を示すデータとを対応付けて記憶し、
撮影画像C4を見て、テレビ5の電源が入っていないことを確認し、テレビ5の電源を入れる操作、すなわち領域E2を選択する操作を行う」ことが記載されている。
ここで、「タッチスクリーン部150」は、「画像を表示するとともにユーザの操作を受け付ける手段」であるから、「ユーザインターフェイス」といえる。また、「表示面」とは、スマートフォンやタブレット端末である通信装置10の「表示面」であるから、「モバイル装置上の表示面」といえ、「領域E2」は、ユーザがタッチする長方形の領域であるから、「ヒットボックス」といえる。
そして、「テレビ電源ON/OFF」という「コマンド」と「領域E2」とが対応づけられ、テレビ電源ON/OFFというコマンドは表示されたテレビという装置と一致しているから、「ヒットボックス」を指定して、当該ヒットボックスが1つ以上の装置と一致するものであるといえる。
したがって、引用文献2には、「前記モバイル装置上で1つのヒットボックスを指定し、該1つのヒットボックスが、前記1つ以上の装置のうちの1つと一致するものである」ことは記載されていると認められる。
しかしながら、引用文献2は「仮想部屋」を生成するものではなく、本願発明1のように「「前記モバイル装置上で」位置合わせされたイメージスタック「及び前記指定された1つ以上のヒットボックス」に基づいて仮想部屋を生成」していることは、何ら記載も示唆もされていない。

イ 上記ア.において検討したとおり、引用文献2には、「前記モバイル装置上で」位置合わせされたイメージスタック「及び前記指定された1つ以上のヒットボックス」に基づいて仮想部屋を生成することについて記載も示唆もされていない。
そして、上記相違点についての記載も示唆もない、引用発明及び引用文献2をどのように組み合わせても、本願発明1の「前記モバイル装置上で」位置合わせされたイメージスタック「及び前記指定された1つ以上のヒットボックス」に基づいて仮想部屋を生成しているとの構成には至らない。

ウ また、本願発明1のように、「「前記モバイル装置上で」位置合わせされたイメージスタック「及び前記指定された1つ以上のヒットボックス」に基づいて仮想部屋を生成」している点が、周知技術であるとも認められない。

よって、当業者といえども、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、本願発明1のように、「前記モバイル装置上で」位置合わせされたイメージスタック「及び前記指定された1つ以上のヒットボックス」に基づいて仮想部屋を生成している、という構成を容易に想到することはできない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-10について
本願発明2-10は、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明2-10も、本願発明1の上記相違点4に係る「前記モバイル装置上で」位置合わせされたイメージスタック「及び前記指定された1つ以上のヒットボックス」に基づいて仮想部屋を生成しているという構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明11について
本願発明11は、本願発明1に対応するモバイル装置の発明であり、本願発明1の上記相違点4に係る「前記モバイル装置上で」位置合わせされたイメージスタック「及び前記指定された1つ以上のヒットボックス」に基づいて仮想部屋を生成しているという構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明12-17について
本願発明12-17は、本願発明11を減縮した発明であって、本願発明12-17も、本願発明1の上記相違点4に係る「前記モバイル装置上で」位置合わせされたイメージスタック「及び前記指定された1つ以上のヒットボックス」に基づいて仮想部屋を生成しているという構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明11と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
本願発明1?17は、前記「第5」で検討したとおり、当業者であっても、原査定において引用された引用文献1ないし2に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-10-20 
出願番号 特願2016-554439(P2016-554439)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池田 聡史  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 太田 龍一
野崎 大進
発明の名称 ユーザにより生成される仮想部屋ベースのユーザインタフェイス  
代理人 古谷 聡  

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