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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1367545 |
審判番号 | 不服2018-8388 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-06-19 |
確定日 | 2020-10-20 |
事件の表示 | 特願2016- 9646「シャットダウン後にワイヤレス装置の位置を決定する装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日出願公開、特開2016- 67058〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年4月22日に出願した特願2013-101661号(パリ条約による優先権主張 2012年4月23日 米国)の一部を平成28年1月21日に新たな特許出願としたものであって、平成29年2月15日付けで拒絶理由が通知され、同年8月2日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成30年2月14日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年6月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、その後、当審において令和1年6月28日付けで拒絶理由が通知され、同年12月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は、令和1年12月25日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】ワイヤレスデータ処理装置の位置を自動的に送信するためのコンピュータで具現化される方法において、 入力されたセキュリティコードを受け付け、当該入力されたセキュリティコードが正しく入力されたか否かを判定し、前記セキュリティコードが所定回数不正確にエンターされたことを決定し、当該決定に基づいてワイヤレスデータ処理装置のセキュリティ特徴をアクチベートすることを備え、当該ワイヤレスデータ処理装置のセキュリティ特徴は、 前記ワイヤレスデータ処理装置をパワーダウン状態にシャットダウンすることであって、予め設定された頻度を有するタイマーがシャットダウン後にパワーオン状態に留まる、ことと、 前記予め設定されたタイマーが満了することに応答して、前記ワイヤレスデータ処理装置の現在位置を決定し送信するために必要とされるコンポーネントを含む前記ワイヤレスデータ処理装置又はその一部分を前記パワーダウン状態から自動的に一時的に限定された容量でパワーアップすることと、 1つ以上の指定の位置決定技術を使用して前記ワイヤレスデータ処理装置の現在位置を決定することと、 1つ以上の指定の通信チャンネルを経て前記ワイヤレスデータ処理装置の現在位置を送信することと、 前記現在位置が送信された後に前記ワイヤレスデータ処理装置をパワーダウンし、前記タイマーをリセットすることと、 を備えた方法。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概略は以下のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1ないし18に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開2006-304175号公報 引用文献2:特開2004-356992号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由で引用された特開2006-304175号公報(平成18年11月2日出願公開、以下、「引用例1」という。)には、「携帯通信端末、携帯通信端末の制御方法及び制御プログラム、通信システム」に関連して、図面とともに以下の技術事項が記載されている。 (1)「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 ところで、例えば、携帯電話端末自体が盗まれたり、カーセキュリティ部品用の携帯電話端末が自動車と共に盗難されたり、当該携帯電話端末を所持している人が誘拐,拉致等されたような場合、犯罪者は、それら携帯電話端末の電源を切る(OFFする)ことにより、上記位置情報による位置検索が出来ないようにすると考えられる。また、携帯電話端末を所持している人が例えば行方不明になってしまったような場合において、その人が故意若しくは誤って携帯電話端末の電源を切ってしまったような場合にも、位置情報が得られなくなるため、その人を捜索するのが困難になってしまう。 【0008】 上述のように、携帯電話端末の電源が切られてしまった場合には、何らかの理由で当該携帯電話端末の電源が再びONされるまで、その携帯電話端末の位置検索を行うことが出来なくなり、犯罪捜査が遅延してしまったり、行方不明者の捜索が困難になってしまうことになる。 【0009】 本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、携帯電話端末等の携帯通信端末において、例えば第三者によりその電源が切られた場合でも、その位置検索が可能な携帯通信端末と、携帯通信端末の制御方法及び制御プログラム、その携帯通信端末を含む通信システムを提供することを目的とする。」 (2)「【0020】 〔本実施形態の携帯電話端末の概要〕 本実施形態において、上記携帯電話端末8は、上記管理者専用の端末である場合の他、その管理者の管理下にある人、すなわち例えば親が管理者(保護者)である場合の子供や、逆に子供が管理者である場合の老齢の親等が使用する端末、或いは、管理者が所有する自動車にセキュリティ部品として搭載される端末などである。本実施形態では、上記携帯電話端末8の使用者が管理者とは異なる場合を例に挙げて説明を進めることにする。 【0021】 また、本実施形態において、上記携帯電話端末8は、例えばGPS等による測位機能を備えており、管理者がパーソナルコンピュータ1を用いてその端末8の位置検索を行える機能を備えている。 【0022】 また、本実施形態の携帯電話端末8は、電源OFFボタンが押されて電源が切れる(電源OFFとなる)際に、予め登録されている所定の認証情報の入力がなされない限り、完全に電源をOFFすることができない機能を備えている。すなわち、本実施形態の携帯電話端末8は、所定の認証情報の入力がなされない状態で電源OFFボタンが押下された場合、例えばディスプレイ表示やキー照明,着信ランプの点灯、キー操作音や着信音の出力、バイブレータの振動など、外部から見て当該端末8が動作していること(つまり電源ON状態であること)を認識可能な全ての機能についてはOFF状態にする一方で、外部から見て動作しているかどうか判らない機能、特に、位置検索に必要な各GPS測位機能と、電話や電子メールの送受信,ウェブアクセスを行うための情報通信に必要な通信機能、上記通信機能やGPS測位機能を一定時間毎にON/OFFさせるタイマー動作を必要に応じて行うための時間計測機能、管理者側からインターネット2等を介して送られてくる制御情報を上記通信機能を介して受信した時に、その制御情報に応じて当該携帯電話端末8の各機能(この場合は外部から動作状態を認識できない機能)を制御するための制御機能等は、ON状態を維持するようになされている。その他にも、例えばBrew(Binary runtime environment for wireless)機能、Java(登録商標)機能等も、外部から見て動作しているかどうか判らない状態で動作可能となされている。なお、以下の説明では、上述したように、電源OFFボタンを押して電源を切る際に所定の認証情報の入力がなされず、外部から見て当該端末8が動作していることを認識可能な全ての機能がOFF状態となされ、一方、GPS測位機能、通信機能、時間計測機能、制御機能等についてはON状態を維持している状態を、特に「見掛け上の電源OFF状態」と呼ぶことにする。」 (3)「【0024】 また、本実施形態の携帯電話端末8は、例えば「見掛け上の電源OFF状態」である場合において、上記端末が移動させられたことをGPS測位機能にて検出した時や、基地局エリアが切り替わった時、管理者側からインターネット2を介して位置検索制御がなれた時、上記時間計測機能によるタイマー設定時間になった時には、外部から見て動作しているかどうか判らない状態で、上記GPS測位機能にて検出した現在位置情報或いは先に測位して内部メモリ等に保存しておいた位置情報を、予め決められている所定の相手先、すなわち例えば管理者のパーソナルコンピュータ1や携帯電話端末、携帯電話システムの通信事業会社の所定端末等に宛てて、上記通信機能により送信する機能を備えている。」 (4)「【0048】 上記制御部10は、通信回路11における通信の制御、音声処理部24や画像処理部25の制御、LED22、バイブレータ24、カメラ部26、認証部28等の各制御の他、本実施形態の携帯電話端末の各構成要素の制御や各種演算処理を行う。また、制御部10は、メモリ15に記憶されている本実施形態にかかるプログラムコードにもとづいて、前述した各機能を実行するための処理や制御を行う。」 (5)「【0050】 〔電源OFFボタンの押下操作時の制御〕 図3には、電源OFFボタンが操作されて電源OFFの指示がなされた時の、上記制御部10の処理及び制御のフローチャートを示す。 【0051】 図3において、制御部10は、ステップS1の処理として、電源OFFボタンが押下操作されたか否か見ており、電源OFFボタンが押下操作されていない時には、ステップS2にて通常の待ち受けモードを維持する。一方、電源OFFボタンが押下操作された場合、制御部10は、ステップS3へ処理を進める。 【0052】 ステップS3の処理に進むと、制御部10は、上記電源OFFボタンが押下操作される前か若しくは後の所定時間内に、前述した暗証番号の入力や生体認証デバイスを用いた認証等による所定の認証情報の入力がなされているか否かの判定を行い、認証情報の入力がなされている時にはステップS10にて完全に電源をOFFさせる。一方、認証情報の入力がなされていない場合、制御部10は、ステップS4へ処理を進める。 【0053】 ステップS4の処理に進むと、制御部10は、「見掛け上の電源OFF状態」へ当該端末の動作モード(以下、「見掛け上の電源OFFモード」と表記する)を遷移させると共に、外部から見て当該端末が動作しているかどうか判らない状態で、必要に応じて例えば現在位置の測位とその位置情報等の送信を行う動作モード(以下、「シークレット動作モード」と表記する)へ当該端末の動作モードを遷移させる。 【0054】 またこの時、制御部10は、ステップS5の処理として、タイマー動作の設定がなされているか否か判定し、タイマー動作の設定がなされている時には、ステップS6にて、当該端末の動作モードをタイマー動作モードに遷移させる。すなわちこの場合、上記「シークレット動作モード」において、上記位置検索や位置情報の送信の機能を通常はOFFさせておき、タイマー設定されている一定時間毎に、それら位置検索や位置情報の送信の機能をONさせて、位置検索の実行と位置情報の送信とを行う。一方、ステップS5にてタイマー動作の設定がなされていない場合、制御部10は、ステップS7へ処理を進める。 【0055】 ステップS7の処理に進むと、制御部10は、パワーマネージメントIC17からバッテリー18の残容量情報を取得し、バッテリー18の残容量が所定の閾値以下になるか否か判断し、バッテリー残量が所定閾値以下になる虞があるときには、ステップS6へ処理を進め、当該端末の動作モードを上記タイマー動作モードに遷移させる。一方、バッテリー残量が充分残っている場合、制御部10は、ステップS8へ処理を進める。」 (6)「【0071】 〔シークレット動作モードとタイマー動作モードの関係〕 本実施形態の携帯電話端末は、動作モードが「シークレット動作モード」になっており、さらに「タイマー動作モード」になっているか否かでその動作が異なる。 【0072】 図5には、「シークレット動作モード」と「タイマー動作モード」の関係に応じた制御部10の処理及び制御のフローチャートを示す。なお、この図5のフローチャートは、「シークレット動作モード」は、当該端末が「見掛け上の電源OFFモード」と電源ON状態の何れであっても適用される。 【0073】 図5において、制御部10は、当該端末の動作モードが「シークレット動作モード」である時、ステップS31の処理として、現在の動作モードが「タイマー動作モード」であるか否か判定し、「タイマー動作モード」になっていない時にはステップS35へ処理を進め、「タイマー動作モード」になっている時にはステップS32へ処理を進める。 【0074】 ステップS32の処理に進むと、制御部10は、時計部16からの時間情報により、タイマー設定時間になったか否か判断し、タイマー設定時間になっていない時には処理を戻し、タイマー設定時間になった時にはステップS33へ処理を進める。 【0075】 ステップS33の処理に進むと、制御部10は、GPS部27に対して測位を行わせ、次いで、ステップS34にてその位置情報を通信回路11から送信させると共に、当該端末に宛てた電子メール等の情報が有る場合にはその情報受信を行う。」 (7)「【0080】 また、本実施形態の携帯電話端末によれば、タイマー動作の設定が可能となされているため、例えば一日に一回だけ動作させるようなことが可能となり、再充電が出来ないような状況に置かれている場合であっても、バッテリーの残量の減少を少なくすることができ、情報通信が可能な期間を延ばすことができる。さらに、本実施形態の携帯電話端末によれば、例えば「見掛け上の電源OFF状態」から認証無しに電源ONされた場合に、バッテリー残量が充分に残っていても、ディスプレイ上にバッテリー残量エンプティ表示を行うことで、バッテリー切れで使えなくなるという心理的な圧力を第三者に与えることで当該第三者に対して電源OFF操作を促すことができ、それによってもバッテリー残量の減少を抑えることが可能となる。」 2 引用発明 引用文献1には、「携帯電話端末自体が盗まれたり、カーセキュリティ部品用の携帯電話端末が自動車と共に盗難されたり、当該携帯電話端末を所持している人が誘拐,拉致等されたような場合」や、「携帯電話端末を所持している人が例えば行方不明になってしまったような場合」において、「携帯電話端末の電源が切られてしまった場合」でも、「その位置検索が可能な」「携帯電話端末」の「制御方法」を提供することを目的とする(【0007】?【0009】)、次の発明が記載されているといえる。 「所定の認証情報の入力がなされない状態で電源OFFボタンが押下された場合に、「見掛け上の電源OFF状態」となる機能、及び、タイマー動作の設定がなされている時には、「見掛け上の電源OFF状態」である場合において、時間計測機能によるタイマー設定時間になった時には、外部から見て動作しているかどうか判らない状態で、GPS測位機能にて検出した現在位置情報或いは先に測位して内部メモリ等に保存しておいた位置情報を、予め決められている所定の相手先、すなわち例えば管理者のパーソナルコンピュータ1や携帯電話端末、携帯電話システムの通信事業会社の所定端末等に宛てて、通信機能により送信する機能を備えた携帯電話端末において、制御部10がプログラムコードにもとづいて、前述した各機能を実行するための処理や制御を行う、方法であって(【0022】、【0024】、【0048】、【0054】)、 「見掛け上の電源OFF状態」とは、携帯電話端末が、所定の認証情報の入力がなされない状態で電源OFFボタンが押下された場合、例えばディスプレイ表示やキー照明,着信ランプの点灯、キー操作音や着信音の出力、バイブレータの振動など、外部から見て当該端末8が動作していること(つまり電源ON状態であること)を認識可能な全ての機能についてはOFF状態にする一方で、外部から見て動作しているかどうか判らない機能、特に、位置検索に必要な各GPS測位機能と、電話や電子メールの送受信,ウェブアクセスを行うための情報通信に必要な通信機能、上記通信機能やGPS測位機能を一定時間毎にON/OFFさせるタイマー動作を必要に応じて行うための時間計測機能等は、ON状態を維持するようになされている状態であり(【0022】)、 「見掛け上の電源OFFモード」とは、当該端末が「見掛け上の電源OFF状態」の動作モードであり(【0053】)、 「シークレット動作モード」とは、外部から見て当該端末が動作しているかどうか判らない状態で、必要に応じて例えば現在位置の測位とその位置情報等の送信を行う動作モードであり、「シークレット動作モード」は、当該端末が「見掛け上の電源OFFモード」と電源ON状態の何れであっても適用され(【0053】、【0072】)、 電源OFFボタンが押下操作された場合、上記電源OFFボタンが押下操作される前か若しくは後の所定時間内に、暗証番号の入力や生体認証デバイスを用いた認証等による所定の認証情報の入力がなされているか否かの判定を行い、認証情報の入力がなされている時には完全に電源をOFFさせ、認証情報の入力がなされていない場合、「見掛け上の電源OFFモード」へ当該端末の動作モードを遷移させると共に、「シークレット動作モード」へ当該端末の動作モードを遷移させ、またこの時、タイマー動作の設定がなされているか否か判定し、タイマー動作の設定がなされている時には、当該端末の動作モードをタイマー動作モードに遷移させ(【0051】?【0054】)、 「タイマー動作モード」とは、「シークレット動作モード」において、上記位置検索や位置情報の送信の機能を通常はOFFさせておき、タイマー設定されている一定時間毎に、それら位置検索や位置情報の送信の機能をONさせて、位置検索の実行と位置情報の送信とを行う動作モードであり、タイマー動作の設定が可能となされているため、例えば一日に一回だけ動作させるようなことが可能となり、再充電が出来ないような状況に置かれている場合であっても、バッテリーの残量の減少を少なくすることができ、情報通信が可能な期間を延ばすことができ(【0054】、【0080】)、 動作モードが「シークレット動作モード」になっており、さらに「タイマー動作モード」になっている時には、時計部16からの時間情報により、タイマー設定時間になったか否か判断し、タイマー設定時間になった時には、GPS部27に対して測位を行わせ、次いで、その位置情報を通信回路11から送信させる(【0071】?【0075】)、 方法」 3 引用文献2の記載事項及び引用発明2 原査定の拒絶の理由で引用された特開2004-356922号公報(平成16年12月16日出願公開、以下、「引用例2」という。)には、「移動通信端末」に関連して、図面とともに以下の技術事項が記載されている。 (1)「【0002】 【従来の技術】 従来より、子供や老人が外出するときに携帯電話機を持たせ、保護者が必要な時に連絡を取ってその居場所や状況を確認することが多くなっている。このような場合、保護者側が常に連絡を取れる状態にするためには、子供や老人が持つ携帯電話機の電源が常に入っていることが必要であり、電源が不慮及び故意の電源キー操作によりオフされることは望ましくない。」 (2)「【0007】 本発明は上記の問題を解決するためのもので、移動通信端末の電源オフが不慮及び故意に行われることを防止し、保護者が移動通信端末を持つ子供や老人の状況確認をより確実に行えるようにすることを目的としている。」 (3)「【0015】 次に、上記構成による動作について説明する。 携帯電話機1において、予めパスワードをキー操作部17の特定のキー操作により設定しておく。設定されたパスワードのデータは不揮発性メモリ16に格納されて登録される。CPU11は、キー操作部17で操作者(ここでは例えば子供、老人又は第三者)による電源キー17aの電源オフ操作がなされたことを検出すると、図3にも示すように表示部18のLCD上の表示により操作者に対してパスワードの入力を要求する。CPU11は入力されたパスワードと不揮発性メモリ16に格納されているパスワードとを比較し、一致した場合は携帯電話機1の電源オフ処理を行う。 (4)「【0018】 また、携帯電話機1が位置検出部21のGPS等による位置検出機能、及び移動通信網上のサーバ7へのアクセス機能を持つ場合には、誤ったパスワードの入力が特定の回数行われたときに、携帯電話機1はその位置情報と時刻情報を通信部12からサーバ7へアップロードする。サーバ7は受信した位置情報を地図情報や住所に変換して、時刻情報及び不正な電源オフ操作が行われたことを伝えるメッセージと共に、予め登録された保護者の携帯電話機1やパソコン等の情報端末のアドレスへ電子メールを送信する。」 (5)「【0025】 【発明の効果】 以上説明したように本発明によれば、不慮及び故意の電源キー操作により携帯電話機の電源がオフされ、保護者等が移動通信端末を携帯する子供や老人の状況を把握できなくなることを防止することができる。 【0026】 また、不正な電源オフ操作が行われた場合に、自動発呼や電子メールにより保護者の電話機や情報端末等に通知することで保護者等に注意を喚起することができる。 また、電池残量が低下したことを通知できなくなる前に通知することで、保護者等から移動通信端末に対して充電の指示や状況確認をすることができる。 さらに、不正な電源オフ操作が行われたときの位置情報を保護者等に通知することができる。」 上記(1)?(5)によれば、「携帯電話機」の「電源オフ操作がなされたことを検出すると」、「操作者に対してパスワードの入力を要求」し(【0015】)、不正な電源オフ操作が行われたときの位置情報を保護者等に通知(【0026】)する方法において、「誤ったパスワードの入力が特定の回数行われた」(【0018】)ときの「位置情報」を「不正な電源オフ操作が行われたときの位置情報」として通知しているから、「誤ったパスワードの入力が特定の回数行われた」ことに基づいて「不正な電源オフ操作が行われた」と判断しているといえる。 したがって、引用文献2には、「移動通信端末の電源オフが不慮及び故意に行われることを防止し、保護者が移動通信端末を持つ子供や老人の状況確認をより確実に行えるようにすることを目的」とした、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。 「携帯電話機の電源オフ操作がなされたことを検出すると、操作者に対してパスワードの入力を要求し、不正な電源オフ操作が行われたときの位置情報を保護者等に通知する方法において、誤ったパスワードの入力が特定の回数行われたことに基づいて不正な電源オフ操作が行われたと判断する」。 第5 対比 本願発明と、引用発明1とを対比すると、以下のとおりである。 (1)引用発明1の「携帯電話端末」は、「電話や電子メールの送受信,ウェブアクセスを行うための情報通信」を行うから、本願発明の「ワイヤレスデータ処理装置」に対応し、引用発明1は、「携帯電話端末」の「位置情報」を「予め決められている所定の相手先」に宛てて「通信機能により送信する機能」を、「制御部10」によって「プログラムコードにもとづいて」「実行するための処理や制御を行う方法」であるから、本願発明と引用発明1とは、「ワイヤレスデータ処理装置の位置を自動的に送信するためのコンピュータで具現化される方法」である点で共通するといえる。 (2)引用発明1の「携帯電話端末」は、次の(i)?(iii)の機能を有する。 (i)「ディスプレイ表示やキー照明,着信ランプの点灯、キー操作音や着信音の出力、バイブレータの振動など、外部から見て当該端末8が動作していること(つまり電源ON状態であること)を認識可能な全ての機能」(以下、(i)「電源ON状態であることを認識可能な全ての機能」ともいう。)、 (ii)「位置検索に必要な各GPS測位機能」や「電話や電子メールの送受信,ウェブアクセスを行うための情報通信に必要な通信機能」(以下、(ii)「通信機能やGPS測位機能」ともいう。)、 (iii)「通信機能やGPS測位機能を一定時間毎にON/OFFさせるタイマー動作を必要に応じて行うための時間計測機能」(以下、(iii)「時間計測機能」ともいう。) また、上記(i)?(iii)の各機能のON/OFFに関連して、次のa?dの状態が存在するといえる(当審作成の以下の表も参照。)。 状態a (i)「電源ON状態であることを認識可能な全ての機能」、(ii)「通信機能やGPS測位機能」及び(iii)「時間計測機能」が全てONである「電源ON状態」 状態b (i)「電源ON状態であることを認識可能な全ての機能」がOFF、(ii)「通信機能やGPS測位機能」及び(iii)「時間計測機能」がONの状態 状態c (i)「電源ON状態であることを認識可能な全ての機能」及び(ii)「通信機能やGPS測位機能」がOFF、(iii)「時間計測機能」がONの状態 状態d (i)「電源ON状態であることを認識可能な全ての機能」、(ii)「通信機能やGPS測位機能」及び(iii)「時間計測機能」を含め、「完全に電源をOFF」にした状態 ここで、引用発明1は、「タイマー動作の設定が可能となされているため、例えば一日に一回だけ動作させるようなことが可能となり、再充電が出来ないような状況に置かれている場合であっても、バッテリーの残量の減少を少なくすることができ、情報通信が可能な期間を延ばすことができ」るものであるから、上記状態c(「通信機能やGPS測位機能」がOFF)よりも上記状態b(同機能がON)の方が、供給される電力が大きいことは明らかである。また、状態bでは、(i)の「ディスプレイ表示やキー照明,着信ランプの点灯、キー操作音や着信音の出力、バイブレータの振動など」はOFFのままであるから、状態aより供給される電力は小さいといえる。 (3)引用発明1は、上記状態aにおいて「電源OFFボタンが押下操作された場合」に、「暗証番号の入力や生体認証デバイスを用いた認証等による所定の認証情報の入力がなされているか否かの判定を行い」、「認証情報の入力がなされていない場合」であって、「上記通信機能やGPS測位機能を一定時間毎にON/OFFさせるタイマー動作」の設定がなされている時には、状態aから状態cとなる。 次に、時計部16からの時間情報により、タイマー設定時間になったか否かを判断し、タイマー設定時間になると上記状態bとなって、GPS部による測位を行い、その位置情報を送信し、タイマー設定時間毎にこの動作を繰り返すといえる(状態a→状態c→状態b→状態c→状態b→・・・・)。 そうすると、状態aから状態cになっても(iii)「時間計測機能」はONのままであり、「タイマー設定時間毎」に状態cと状態bとを繰り返すから、状態cでは、「予め設定された頻度を有するタイマー」が「パワーオン状態に留まる」といえる。よって、引用発明1で状態aから状態cになることは、本願発明の「前記ワイヤレスデータ処理装置をパワーダウン状態にシャットダウンすることであって、予め設定された頻度を有するタイマーがシャットダウン後にパワーオン状態に留まる」ことに相当するといえる。 (4)引用発明1は、上記状態cから、タイマー設定時間になってGPS部による測位と位置情報を送信する状態bになると、(ii)「通信機能やGPS測位機能」はONになるものの、(i)の「ディスプレイ表示やキー照明,着信ランプの点灯、キー操作音や着信音の出力、バイブレータの振動など」はOFFのままである。すなわち、上記状態bは、「前記ワイヤレスデータ処理装置の現在位置を決定し送信するために必要とされるコンポーネントを含む前記ワイヤレスデータ処理装置又はその一部分」が、「パワーダウン状態」(状態c)から、状態aよりも「限定された容量でパワーアップ」した状態といえる。 そして、「位置情報」の送信が終わるとまた状態cに戻り、タイマー設定時間毎にこの動作を繰り返すから、状態bに「限定された容量でパワーアップ」することは、「前記予め設定されたタイマーが満了することに応答して」、「自動的に一時的に」行われるといえる。 よって、本願発明と引用発明1とは、「前記予め設定されたタイマーが満了することに応答して、前記ワイヤレスデータ処理装置の現在位置を決定し送信するために必要とされるコンポーネントを含む前記ワイヤレスデータ処理装置又はその一部分を前記パワーダウン状態から自動的に一時的に限定された容量でパワーアップする」点で一致する。 (5)引用発明1において、上記状態bで、「GPS部による測位を行い」、「その位置情報」を「予め決められている所定の相手先、すなわち例えば管理者のパーソナルコンピュータ1や携帯電話端末、携帯電話システムの通信事業会社の所定端末等に宛てて」、「電話や電子メールの送受信,ウェブアクセスを行うための情報通信に必要な通信機能」により「送信」することは、本願発明の「1つ以上の指定の位置決定技術を使用して前記ワイヤレスデータ処理装置の現在位置を決定することと」、「1つ以上の指定の通信チャンネルを経て前記ワイヤレスデータ処理装置の現在位置を送信することと」に相当する。 (6)引用発明1の「タイマー動作モード」では、「タイマー設定時間毎」に「タイマー動作」を繰り返すから、状態bで「位置情報を通信回路11から送信」した後は、状態cとなり、再び「時計部16からの時間情報により、タイマー設定時間になったか否かを判断」するといえ、「タイマーをリセット」することに他ならないから、本願発明の「前記現在位置が送信された後に前記ワイヤレスデータ処理装置をパワーダウンし、前記タイマーをリセットすること」に相当する。 (7)上記(3)?(6)より、本願発明と引用発明1とは、「前記ワイヤレスデータ処理装置をパワーダウン状態にシャットダウンすることであって、予め設定された頻度を有するタイマーがシャットダウン後にパワーオン状態に留まる、ことと、 前記予め設定されたタイマーが満了することに応答して、前記ワイヤレスデータ処理装置の現在位置を決定し送信するために必要とされるコンポーネントを含む前記ワイヤレスデータ処理装置又はその一部分を前記パワーダウン状態から自動的に一時的に限定された容量でパワーアップすることと、 1つ以上の指定の位置決定技術を使用して前記ワイヤレスデータ処理装置の現在位置を決定することと、 1つ以上の指定の通信チャンネルを経て前記ワイヤレスデータ処理装置の現在位置を送信することと、 前記現在位置が送信された後に前記ワイヤレスデータ処理装置をパワーダウンし、前記タイマーをリセットすることと、」を備える点で一致するといえる。 (8)上記(7)で一致するとした引用発明1の動作は、『「携帯電話端末自体が盗まれたり、カーセキュリティ部品用の携帯電話端末が自動車と共に盗難されたり、当該携帯電話端末を所持している人が誘拐,拉致等されたような場合」や、「携帯電話端末を所持している人が例えば行方不明になってしまったような場合」において、「携帯電話端末の電源が切られてしまった場合」でも、「その位置検索が可能な」「携帯電話端末」の「制御方法」を提供すること』を目的(上記「第4」「2 引用発明」参照)として行われるものであるから、「ワイヤレスデータ処理装置のセキュリティ特徴」といえる。 そして、引用発明1において、「認証情報」として入力される「暗証番号」は、本願発明の「セキュリティコード」に相当し、引用発明1では、「暗証番号の入力や生体認証デバイスを用いた認証等による所定の認証情報の入力がなされているか否かの判定を行い」、「認証情報の入力がなされていない場合」に、「見かけ上の電源OFFモード」に遷移するとともに「シークレット動作モード」に遷移し、さらに、「上記通信機能やGPS測位機能を一定時間毎にON/OFFさせるタイマー動作」の設定がなされている時に、「タイマー動作モード」に遷移するところ、「見かけ上の電源OFFモード」及び「シークレット動作モード」への遷移は自動的に行われるから、本願発明と引用発明1とは、「入力されたセキュリティコードを受け付け、当該入力されたセキュリティコードが正しく入力されたか否かを判定し、前記セキュリティコードが不正確にエンターされたことを決定し、当該決定に基づいてワイヤレスデータ処理装置のセキュリティ特徴をアクチベートする」点で共通するといえる。 以上より、本願発明と引用発明1とは、以下の点で一致し、相違する。 (一致点) 「ワイヤレスデータ処理装置の位置を自動的に送信するためのコンピュータで具現化される方法において、 入力されたセキュリティコードを受け付け、当該入力されたセキュリティコードが正しく入力されたか否かを判定し、前記セキュリティコードが不正確にエンターされたことを決定し、当該決定に基づいてワイヤレスデータ処理装置のセキュリティ特徴をアクチベートすることを備え、当該ワイヤレスデータ処理装置のセキュリティ特徴は、 前記ワイヤレスデータ処理装置をパワーダウン状態にシャットダウンすることであって、予め設定された頻度を有するタイマーがシャットダウン後にパワーオン状態に留まる、ことと、 前記予め設定されたタイマーが満了することに応答して、前記ワイヤレスデータ処理装置の現在位置を決定し送信するために必要とされるコンポーネントを含む前記ワイヤレスデータ処理装置又はその一部分を前記パワーダウン状態から自動的に一時的に限定された容量でパワーアップすることと、 1つ以上の指定の位置決定技術を使用して前記ワイヤレスデータ処理装置の現在位置を決定することと、 1つ以上の指定の通信チャンネルを経て前記ワイヤレスデータ処理装置の現在位置を送信することと、 前記現在位置が送信された後に前記ワイヤレスデータ処理装置をパワーダウンし、前記タイマーをリセットすることと、 を備えた方法。」 (相違点) 「セキュリティコードが不正確にエンターされたことを決定し、当該決定に基づいてワイヤレスデータ処理装置のセキュリティ特徴をアクチベートする」際に、本願発明では「所定回数」不正確にエンターされたことを決定し、当該決定に基づいてセキュリティ特徴をアクチベートするのに対して、引用発明1では、「所定回数」不正確にエンターされたことを決定することについて特定がない点。 第6 判断 暗証番号の入力による認証を行う際に、正当なユーザであっても入力ミスがあり得ることを考慮して、誤った暗証番号が所定回数入力されたときに、正当な認証情報の入力がなされていないと判断することは、例示するまでもなく常套技術であり、かつ、上記「第4」「3」のとおり、「携帯電話機の電源オフ操作がなされたことを検出すると、操作者に対してパスワードの入力を要求し、不正な電源オフ操作が行われたときの位置情報を保護者等に通知する方法において、誤ったパスワードの入力が特定の回数行われたことに基づいて不正な電源オフ操作が行われたと判断する」(引用発明2)ことも公知である。 また、引用発明1は、携帯電話端末を所持している人が例えば行方不明になってしまったような場合において、携帯電話端末の電源が切られてしまった場合でも、その位置検索が可能な携帯電話端末の制御方法を提供することを目的とするものであり(上記「第4」「2」)、引用発明2は、「移動通信端末の電源オフが不慮及び故意に行われることを防止し、保護者が移動通信端末を持つ子供や老人の状況確認をより確実に行えるようにすることを目的」とするものであるから(上記「第4」「3」)、引用発明1と引用発明2とは、解決しようとする課題が共通するといえる。 そうすると、引用発明1において、上記引用発明2を適用して、誤った「暗証番号の入力」が特定の回数行われたことに基づいて「所定の認証情報が入力なされていない」と判断し、タイマー動作モードに遷移すること(請求項1の「前記セキュリティコードが所定回数不正確にエンターされたことを決定し、当該決定に基づいてワイヤレスデータ処理装置のセキュリティ特徴をアクチベートすること」に相当。)は、当業者が容易に想到し得たことである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-05-15 |
結審通知日 | 2020-05-18 |
審決日 | 2020-06-02 |
出願番号 | 特願2016-9646(P2016-9646) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 永田 義仁 |
特許庁審判長 |
北岡 浩 |
特許庁審判官 |
山中 実 中野 浩昌 |
発明の名称 | シャットダウン後にワイヤレス装置の位置を決定する装置及び方法 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 弟子丸 健 |
代理人 | 那須 威夫 |