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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1367583
審判番号 不服2020-9912  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-15 
確定日 2020-11-24 
事件の表示 特願2015-194528「X線CT装置及び画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日出願公開、特開2017- 64125、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、平成27年(2015年)9月30日の出願であって、平成30年9月4日に審査請求がなされ、令和元年6月13日付けで拒絶理由が通知され、同年8月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月27日付けで最後の拒絶理由が通知され、令和2年1月28日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年4月16日付けで補正の却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶査定されたところ、同年7月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に同日付けで提出された手続補正書により手続補正がなされ、同年8月13日に前置報告がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年4月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし8に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2015-510157号公報
2.特開平8-166995号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1及び8に「前記関心領域内においては拡大再構成を行う(再構成条件)」及び「前記関心領域内で拡大再構成が行われたCT画像を含む(CT画像)」という事項を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか、また、「前記関心領域内においては拡大再構成を行う(再構成条件)」及び「前記関心領域内で拡大再構成が行われたCT画像を含む(CT画像)」という事項は、当初明細書の段落【0066】及び【図7】に記載されているから、当該補正は新規事項を追加するものではないかについて検討すると、補正後の請求項1及び8では構築部が「CT画像の読影傾向に基づいて、関心領域の内外で異なる再構成条件を構築する構築部」から「CT画像の読影傾向に基づいて、関心領域の内外で異なる再構成条件であって、前記関心領域内においては拡大再構成を行う再構成条件を構築する構築部」となり、画像生成部が「前記構築部が構築した再構成条件に基づいて、前記関心領域の内外で再構成条件を異ならせない場合より少ない枚数のCT画像を生成する画像生成部」から「前記構築部が構築した再構成条件に基づいて、前記関心領域の内外で再構成条件を異ならせない場合より少ない枚数のCT画像であって、前記関心領域内で拡大再構成が行われたCT画像を含むCT画像を生成する画像生成部」と変更されることから、「前記関心領域内においては拡大再構成を行う(再構成条件)」及び「前記関心領域内で拡大再構成が行われたCT画像を含む(CT画像)」という事項を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、当初明細書の段落【0066】及び【図7】に関心領域RB2及び関心領域内のRA3において拡大再構成を行うことは開示されているから、「前記関心領域内においては拡大再構成を行う(再構成条件)」及び「前記関心領域内で拡大再構成が行われたCT画像を含む(CT画像)」という事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-4に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1ないし8に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明2」という。)は、令和2年7月15日提出の手続補正書により手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1及び8は以下のとおりである。(下線は補正箇所を表す。)
「【請求項1】
CT画像の読影傾向に基づいて、関心領域の内外で異なる再構成条件であって、前記関心領域内においては拡大再構成を行う再構成条件を構築する構築部と、
前記構築部が構築した再構成条件に基づいて、前記関心領域の内外で再構成条件を異ならせない場合より少ない枚数のCT画像であって、前記関心領域内で拡大再構成が行われたCT画像を含むCT画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成したCT画像を表示するよう制御する表示制御部と、
を備える、X線CT装置。」
「【請求項8】
CT画像の読影傾向に基づいて、関心領域の内外で異なる再構成条件であって、かつ、前記関心領域内においては拡大再構成を行う再構成条件を構築する構築部と、
前記構築部が構築した再構成条件に基づいて、前記関心領域の内外で再構成条件を異ならせない場合より少ない枚数のCT画像であって、前記関心領域内で拡大再構成が行われたCT画像を含むCT画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成したCT画像を表示するよう制御する表示制御部と、
を備える、画像処理装置。」

なお、本願発明2ないし7の概要は以下のとおりである。
本願発明2ないし7は、本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同じ。)
(1)「【0001】
以下は、医療技術、医用撮像技術、撮像に基づく医療診断及び治療技術、医用画像再構成技術、及びこれらの関連技術に関する。」

(2)「【0018】
図1を参照して、開示に係る幾つかの撮像システム及び方法を説明する。図1は、2つの撮像装置10、12、収集撮像データセットストレージ14、及び電子プロセッサ16によって表される撮像施設を図式的に示している。電子プロセッサ16は、ここに開示される手法に従って撮像データを再構成して再構成画像を生成するように構成される。例示の撮像装置10、12は何れも、例えば単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)データなどの、放射線撮像データを収集するガンマカメラである。ガンマカメラ10は、操作式検出器ヘッドを回転可能に支持する回転ガントリーを採用しており、その一方で、ガンマカメラ12は、ガントリーを用いずに関節式ロボットアーム上に搭載された検出器ヘッドを採用している。ガンマカメラ10は、例えば、BrightView(登録商標)SPECTシステムとして具現化されることができ、ガンマカメラ12は、例えば、SKYLight(登録商標)核カメラとして具現化されることができる(どちらもオランダ国アインドーフェンのコーニンクレッカフィリップスNV社から入手可能)。より一般的には、撮像装置10、12は、例えば1つ以上の磁気共鳴(MR)スキャナ、1つ以上の透過型コンピュータ断層撮影(CT)スキャナ、(図示のように)1つ以上のSPECTスキャナ、又は1つ以上の陽電子放出型断層撮影(PET)スキャナなどの、1つ以上の撮像様式を収集する撮像装置として具現化されることができる。一般に、撮像装置10、12は、全てが同一の製造者からのものであってもよいし、異なる製造者からの撮像システムを含んでいてもよい。また、撮像施設の撮像装置の数は、わずか1台の撮像装置とすることができ、上限はない。2つの例示的な撮像装置10、12が一緒に示されているが、複数の撮像装置が複数の異なる部屋又はさらには複数の異なる建物の中に配置されることも企図される。」

(3)「【0022】
目的の画像受領者は、物理的なプリント出力も意図されるが、例えば電子的な画像として、再構成画像を受領する。電子的な画像の場合、目的の画像受領者(例えば、医師又は放射線医)は典型的に、キーボード42又はその他1つ以上の入力装置(例えば、マウス若しくはその他のポインティング装置)とディスプレイ44又はその他1つ以上の出力装置(例えば、ハードコピーを生成するプリンタ)とを有するコンピュータ又はワークステーション40によって好適に実装される受領者画像表示・レビューモジュール36を介して画像を眺める。一般に、表示/レビューモジュール36は、デスクトップ型コンピュータ、ノートブック型コンピュータ、ネットワークベースのサーバコンピュータと通信可能な“ダム”端末、又はグラフィック処理ユニット(GPU)などとして、様々に具現化されることができる。典型的に、ディスプレイ44は、再構成画像の高品質表示を提供することができる高解像度のカラーあるいはモノクロのグラフィックディスプレイであり、場合により、例えば拡大若しくはズーム、様々な疑似カラー描写、画像フィルタリング、スライス若しくは領域の抽出(3次元すなわちボリューム画像、又はマルチスライス画像の場合)、又はシネマチック(CINE)シーケンス表示(時間次元を有する画像群の場合)などの機能を含む。目的の画像受領者は典型的に、表示された画像を用いて医学的な結論を引き出したりその他の医学的処理を行ったりする者である医師又は放射線医である。受領者画像表示・レビューモジュール36は、図1においては、再構成システムを実装するコンピュータ20とは異なるコンピュータ又はワークステーション40によって実装されるものとして示されているが、これら2つの電子プロセッサ20、40が単一のコンピュータ又はその他の単一の電子プロセッサとして具現化されることも企図される。」

(4)「【0024】
先述のように、ここでは、異なる目的の画像受領者(例えば、異なる医師又は放射線医)は、使用すべき“最良”の画像再構成パラメータ値に関して異なる嗜好を有し得ることが認識される。例えば、一人の画像受領者は、強いフィルタリングによってもたらされる滑らかな画像を、強いフィルタリングによる細かいディテール若しくは鮮明さの幾らかの喪失、又はより低い解像度という犠牲を伴ってでも好むことがある、他方で、別の画像受領者は、その逆、すなわち、細かいディテール及び鮮明さ並びに最大の画像解像度の保持を、より高いノイズ若しくは潜在的なアーチファクト又はその他などの犠牲を伴ってでも好むことがある。更なる別の画像受領者は、より古い撮像システムによって生成された画像を読み取ることに自身のキャリアの殆どを費やしてきた者であり、得られる再構成画像が、より新しい撮像システムを用いて達成可能なもの(例えば、より高い画像解像度、より高いSNR、又はその他が可能であり得る)より客観的に良くない場合であっても、その古いシステムを再現するパラメータ値を用いて再構成された画像を好むことがある。ここでは、医学的な見地から、目的の画像受領者に該受領者によって好まれる特性を有する再構成画像を提供することが、たとえ、その再構成画像が電子プロセッサ16を操作して画像再構成を実行する技師によって好ましくないものであったとしても、有利であると認識される。
【0025】
この目的のため、電子プロセッサ16によって実装される画像再構成設定モジュール50が、再構成設定処理を実行する。設定モジュール50は、再構成すべき撮像データセットと、使用すべき再構成アルゴリズム(再構成モジュール30が複数の異なる再構成アルゴリズムを使用することができる場合)とを特定する。これらの特定処理は、自動化されてもよいし、電子プロセッサ16を操作して画像再構成を実行する技師によって提供される特定入力を利用してもよい。さらに、設定モジュール50は、その撮像施設によってサービス提供される様々な画像受領者に関する画像受領者再構成プロファイルを格納するデータベース52にアクセスする。各々の画像受領者再構成プロファイルは、対応する画像受領者によって好まれる画像再構成パラメータ値を含んでいる。データベース52にその値が格納されるパラメータは(以下に限られないが)、反復回数(例えば反復式順/逆投影再構成などの反復再構成アルゴリズムの場合)、ピクセル若しくはボクセルのサイズ、緩和因子(リラクゼーションファクタ)、画像フィルタパラメータ(例えば、フィルタ順序、遮断周波数、等々)、動き補償に関するパラメータ、又は画像トランケーションなどを含み得る。各プロファイルは、それぞれの画像受領者用であり、一般に、他の画像受領者のそれとは異なるパラメータ値を含んでいる。目的の画像受領者に関する画像受領者再構成プロファイルをデータベース52から取り出し、取り出した画像受領者再構成プロファイルの画像再構成パラメータ値を用いて医用撮像データを再構成して再構成画像を生成することにより、その再構成画像は目的の画像受領者の嗜好に従っているということになる。
【0026】
画像受領者は典型的に、自身が好む画像再構成パラメータ値を直接的に指定するのに十分なほどに画像再構成アルゴリズムについて知識豊富ではないことがある医師又は放射線医である。従って、電子プロセッサ16によって実装されるフィードバック収集モジュール54が、目的の画像受領者からの画像品質嗜好に関する間接的なフィードバックを収集し、電子プロセッサ16によって実装されるプロファイル更新モジュール56が、このフィードバックに基づいてパラメータの更新値(又は複数のパラメータの更新値)を決定するとともに、更新された1つ以上のパラメータ値を用いてデータベース52内のプロファイルを更新する。」

(5)「【図1】



上記引用文献1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「医用画像再構成技術を備えた撮像システムにおいて、
1つ以上の透過型コンピュータ断層撮影(CT)スキャナである2つの撮像装置10、12と、収集撮像データセットストレージ14と、電子プロセッサ16とからなり、
電子プロセッサ16は、撮像データを再構成して再構成画像を生成するように構成されるものであり、
電子プロセッサ16によって実装されるフィードバック収集モジュール54が、目的の画像受領者からの画像品質嗜好に関する間接的なフィードバックを収集し、電子プロセッサ16によって実装されるプロファイル更新モジュール56が、このフィードバックに基づいてパラメータの更新値(又は複数のパラメータの更新値)を決定するとともに、更新された1つ以上のパラメータ値を用いてデータベース52内のプロファイルを更新し、
目的の画像受領者に関する画像受領者再構成プロファイルをデータベース52から取り出し、取り出した画像受領者再構成プロファイルの画像再構成パラメータ値を用いて、電子プロセッサ16によって実装される画像再構成設定モジュール50が、再構成設定処理を実行することにより医用撮像データを再構成して再構成画像を生成することにより、目的の画像受領者に該受領者によって好まれる特性を有する再構成画像を提供するものであり、
その再構成画像は目的の画像受領者の嗜好に従っているということになり、
データベース52にその値が格納されるパラメータは(以下に限られないが)、反復回数(例えば反復式順/逆投影再構成などの反復再構成アルゴリズムの場合)、ピクセル若しくはボクセルのサイズ、緩和因子(リラクゼーションファクタ)、画像フィルタパラメータ(例えば、フィルタ順序、遮断周波数、等々)、動き補償に関するパラメータ、又は画像トランケーションなどを含み得るものであり、
目的の画像受領者(例えば、医師又は放射線医)は典型的に、キーボード42又はその他1つ以上の入力装置(例えば、マウス若しくはその他のポインティング装置)とディスプレイ44又はその他1つ以上の出力装置(例えば、ハードコピーを生成するプリンタ)とを有するコンピュータ又はワークステーション40によって好適に実装される受領者画像表示・レビューモジュール36を介して画像を眺めるものである、
撮像システム。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医師等の医用画像の診断(読影)を支援するための情報を提供する医用診断支援システムに係り、特に、複数枚の断層像を効率よく読影することを可能にした医用診断支援システムに関する。」

(2)「【0072】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
【0073】(第1実施例)図1は、CT装置を用いて撮影した多数枚のCT画像の読影を支援する医用診断支援システムである。
【0074】このCT装置を用いた医用診断支援システムは、ヘリカルスキャン方式により、被検者(患者)の肺野全体等を撮影するCT装置1と、CT装置1で取得された投影データの読影(診断)を支援するための診断支援システム部2とを備えている。また、この診断支援システム部2は、疑似スキャノグラム像作成用の疑似スキャノグラム作成装置3と、CT画像をコンピュータで解析するCAD装置4とを備えている。」

(3)「【0078】診断支援システム部2は、データ収集装置9で処理された投影データ(生データ)を記憶する生データ記憶装置13と、投影データに対し、所要のスライスピッチ及び所要のマトリクスサイズでコンボリューション演算、バックプロジェクション演算を含む再構成演算を行なって画像を再構成する(以下、再構成された画像を再構成画像という)再構成演算装置14と、再構成画像と後述する擬似スキャノグラム像とを記憶する画像記憶装置15と、再構成画像に対し必要に応じて所望の画像処理を施す画像処理装置16と、再構成画像、擬似スキャノグラム像、異常陰影検出結果等をモニタに表示する表示装置17と、モニタの画面のハードコピーを撮るハードコピー装置18と、医師の所見記入用のレポート等を印刷する印刷装置19とを備えている。また、診断支援システム部2は、X線管7に接続され、X線の曝射タイミング、線量等を制御するX線制御装置20と、架台駆動装置10に接続され、架台5の回転駆動を制御する架台制御装置21と、寝台駆動装置13に接続され、天板11aのスライド駆動を制御する寝台制御装置22とを備えている。」

(4)「【0093】また、主制御装置23のメモリ23bには、予め入力装置24を介して医師により設定された医師対応表データが記憶されている。この医師対応表データとは、医師の読影におけるCAD参照方法、再構成画像(各スライス画像)を表示する際における表示条件等各種条件、方法等であり、予め複数登録された医師のID番号に対応して適宜設定されている。主制御装置23のCPU23aは、医師の読影の際に、メモリ23bに記憶された医師対応表データを参照し、設定されたCAD参照方法、表示条件等の各種条件に基づいて対応する各構成要素を制御するようになっている。」

(5)「【0129】最初のステップA1であるCADの判定に基づくシステムの動作を図11及び図12を用いて説明する。
【0130】主制御装置23のCPU23aは、生データ記憶装置13に記憶された投影データを予め定められた細かいスライスピッチ(例えば2mm)で再構成する指令を再構成演算装置14に送る(図11、ステップ201)。
【0131】再構成演算装置14は、その指令に応じて細かいスライスピッチの画像Iia(ia=1?m )を再構成する(ステップ201a)。
【0132】そして、CPU23aは、CAD装置4に異常陰影検出指令を送り、待機状態に入る(ステップ202)。
【0133】一方、CAD装置4は、異常陰影検出処理指令が送られると、画像再構成されたIia(ia=1?m )に対し、メモリに記憶されたアルゴリズムに従って異常陰影検出処理を施す(図12、ステップ301)。
【0134】続いてCAD装置4は、異常陰影が検出されたか否かの判定を行ない(ステップ302)、検出された場合(ステップ302の判断の結果、YES)、その異常陰影が検出されたスライス位置や異常陰影の位置等を含む情報(異常陰影検出情報)をCPU23aに送り(ステップ303)、処理を停止する。また、異常陰影が検出されなかった場合(ステップ302の判断の結果、NO)、異常陰影が検出されなかった旨を表す情報(異常陰影非検出情報)をCPU23aに送り(ステップ304)、処理を停止する。
【0135】一方、CPU23aは、CAD装置4から異常陰影検出情報あるいは異常陰影非検出情報が入力されると待機状態から抜け、ステップ203において、異常陰影検出情報が入力されたか否か判断する。
【0136】異常陰影検出情報が入力されていると、ステップ203の判断はYESとなり、ステップ204において、その異常陰影検出情報から異常陰影を含むスライス及びその前後(Slice Of Interest: SOIと称する)について他のスライスとスライスピッチを変えた再構成画像を作成する指令を再構成演算装置14に送る。例えば、SOIでは、1mmあるいは2mmのように細かいピッチ、その他では10mmと粗いピッチにするような指令を行なう。なお、ステップ204の処理では、SOIはズーミング再構成を行なってその領域あたりの画素を細かくして再構成し、異常陰影を含む部分を拡大することもできる。
【0137】再構成演算装置14は、主制御装置23からの指令を受けて、生データ記憶装置13に記憶された投影データを、上記指定されたスライスピッチにより再構成演算し、画像データIib(ib= 1?m)を再構成する(ステップ204a)。この再構成画像データIibは、画像記憶装置15に記憶される。」

(6)「【図1】



(7)「【図11】



上記引用文献2の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「CT装置を用いて撮影した多数枚のCT画像の読影を支援する医用診断支援システムにおいて、
このCT装置を用いた医用診断支援システムは、ヘリカルスキャン方式により、被検者(患者)の肺野全体等を撮影するCT装置1と、CT装置1で取得された投影データの読影(診断)を支援するための診断支援システム部2とを備え、この診断支援システム部2は、疑似スキャノグラム像作成用の疑似スキャノグラム作成装置3と、CT画像をコンピュータで解析するCAD装置4とを備えており、
診断支援システム部2は、データ収集装置9で処理された投影データ(生データ)を記憶する生データ記憶装置13と、投影データに対し、所要のスライスピッチ及び所要のマトリクスサイズでコンボリューション演算、バックプロジェクション演算を含む再構成演算を行なって画像を再構成する(以下、再構成された画像を再構成画像という)再構成演算装置14と、再構成画像と後述する擬似スキャノグラム像とを記憶する画像記憶装置15と、再構成画像に対し必要に応じて所望の画像処理を施す画像処理装置16と、再構成画像、擬似スキャノグラム像、異常陰影検出結果等をモニタに表示する表示装置17と、モニタの画面のハードコピーを撮るハードコピー装置18と、医師の所見記入用のレポート等を印刷する印刷装置19とを備えており、
主制御装置23のメモリ23bには、予め入力装置24を介して医師により設定された医師対応表データが記憶されており、この医師対応表データは、医師の読影におけるCAD参照方法、再構成画像(各スライス画像)を表示する際における表示条件等各種条件、方法等であり、予め複数登録された医師のID番号に対応して適宜設定されており、
主制御装置23のCPU23aは、医師の読影の際に、メモリ23bに記憶された医師対応表データを参照し、設定されたCAD参照方法、表示条件等の各種条件に基づいて対応する各構成要素を制御するようになっており、
システムの動作は、
主制御装置23のCPU23aは、生データ記憶装置13に記憶された投影データを予め定められた細かいスライスピッチ(例えば2mm)で再構成する指令を再構成演算装置14に送り、再構成演算装置14は、その指令に応じて細かいスライスピッチの画像Iia(ia=1?m )を再構成し、そして、CPU23aは、CAD装置4に異常陰影検出指令を送り、待機状態に入り、CAD装置4は、異常陰影検出処理指令が送られると、画像再構成されたIia(ia=1?m )に対し、メモリに記憶されたアルゴリズムに従って異常陰影検出処理を施し、続いてCAD装置4は、異常陰影が検出されたか否かの判定を行ない、検出された場合はその異常陰影が検出されたスライス位置や異常陰影の位置等を含む情報(異常陰影検出情報)をCPU23aに送ったあと処理を停止し、一方、異常陰影が検出されなかった場合は、異常陰影が検出されなかった旨を表す情報(異常陰影非検出情報)をCPU23aに送ったあと処理を停止し、一方、CPU23aは、CAD装置4から異常陰影検出情報あるいは異常陰影非検出情報が入力されると待機状態から抜け、異常陰影検出情報が入力されたか否か判断し、異常陰影検出情報が入力されていると、その異常陰影検出情報から異常陰影を含むスライス及びその前後(Slice Of Interest: SOIと称する)について他のスライスとスライスピッチを変えた再構成画像を作成する指令を再構成演算装置14に送り、その指令は例えば、SOIでは、1mmあるいは2mmのように細かいピッチ、その他では10mmと粗いピッチにするような指令や、SOIはズーミング再構成を行なってその領域あたりの画素を細かくして再構成し、異常陰影を含む部分を拡大する指令であり、再構成演算装置14は、主制御装置23からの指令を受けて、生データ記憶装置13に記憶された投影データを、上記指定されたスライスピッチにより再構成演算し、画像データIib(ib= 1?m)を再構成し、この再構成画像データIibは、画像記憶装置15に記憶される、
という動作である、医用診断支援システム。」

3.国際公開第2014/167463号について
令和2年4月16日付け補正の却下の決定において、引用文献3として引用された国際公開第2014/167463号(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(仮訳は、引用文献3のファミリー出願の公表特許公報である特表2016-514614号公報の対応部分から引用した。)
ア「The user, via the console 112 interface, can accept, reject and/or change a recommended acquisition and/or reconstruction parameter. Parameters can be changed via a graphical drop down menu with predetermined parameter values, a dial, a slider, and/or other graphical control, a keyboard input, voice recognition, and/or other input. Likewise, the image quality index can be changed through such controls. In this instance, a change in the image quality index will include display of a change in any acquisition and/or reconstruction parameters.」(明細書第7頁第31行-第8頁第3行)
(当審仮訳:ユーザは、コンソール112インタフェースを介して、推奨された収集及び/又は再構成パラメータを受け入れ、拒絶、及び/又は変更できる。パラメータは、所定パラメータ値を有するグラフィカルなドロップダウンメニュー、ダイヤル、スライダー、及び/又はその他のグラフィカルコントロール、キーボード入力、音声認識、その他の入力を介して変更できる。同様に、画質インデックスはかかるコントロールを通して変更できる。この例では、画質インデックスにおける変化は、いずれかの収集及び/又は再構成パラメータにおける変化の表示を含む。)

4.特開2014-138909号公報について
令和2年8月13日に作成された前置報告書において、周知技術を示す文献として引用文献3として引用された特開2014-138909号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0018】
再構成モードで拡大再構成(ズーミング再構成)が選択されているとき、スキャンエキスパートシステム43は、スキャン計画画面の断層画像に、拡大再構成の範囲を指定するための円形の関心領域ROIを重ねて表示する。操作者は、関心領域ROIに心臓等の関心臓器が収まるように、入力器39を操作して関心領域ROIを任意に拡大/縮小し、また移動する(S6)。関心領域ROIの設定が完了すると、スキャンエキスパートシステム43は、その関心領域ROIの中心、つまり拡大再構成領域の中心の位置を、断層画像の中心、つまりX線管10の回転中心軸の位置に対して一致させるために必要なXY2方向に関する天板2aの移動距離を計算する(S7)。」

5.特開2007-37782号公報について
令和2年8月13日に作成された前置報告書において、周知技術を示す文献として引用文献4として引用された特開2007-37782号公報(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0022】
なお、この最適位相決定処理における再構成画像は、当該処理で決定された最適位相に従って生成される実際の診断のための再構成画像とは、明らかにマトリクスサイズが小さい。マトリクスサイズが小さいことには、撮影FOVの全域を再構成FOVとする場合においては解像度が低いこと、又は同じ解像度であっても、撮影FOVの後述する一部領域(関心領域ROI)を再構成FOVとして拡大再構成(ズーミング再構成)をすることが含まれる。」

6.特開2002-143150号公報について
令和2年8月13日に作成された前置報告書において、周知技術を示す文献として引用文献5として引用された特開2002-143150号公報(以下「引用文献6」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0009】このようにして生成した3次元画像を精密診断等のために小さな患部の細部を部分的に拡大して見る場合は、上記再構成した3次元画像を表示器に表示し、この表示画像を見て関心領域を設定し、この設定した関心領域内の投影データを拡大再構成して前記関心領域を拡大表示したり、あるいは撮影条件の異なる複数の3次元画像を一度に並べて見るような、3次元画像を縮小する場合にも、投影データから縮小した再構成画像を生成しこれを表示する方法をとっていた。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1を、引用発明1と比較する。
ア 引用発明1の「1つ以上の透過型コンピュータ断層撮影(CT)スキャナである2つの撮像装置10、12」を備えた「医用画像再構成技術を備えた撮像システム」は、本願発明1における「X線CT装置」に相当する。
イ 引用発明1では、「電子プロセッサ16によって実装されるフィードバック収集モジュール54が、目的の画像受領者からの画像品質嗜好に関する間接的なフィードバックを収集し、電子プロセッサ16によって実装されるプロファイル更新モジュール56が、このフィードバックに基づいてパラメータの更新値(又は複数のパラメータの更新値)を決定するとともに、更新された1つ以上のパラメータ値を用いてデータベース52内のプロファイルを更新し、目的の画像受領者に関する画像受領者再構成プロファイルをデータベース52から取り出し、取り出した画像受領者再構成プロファイルの画像再構成パラメータ値を用いて、電子プロセッサ16によって実装される画像再構成設定モジュール50が、再構成設定処理を実行することにより医用撮像データを再構成して再構成画像を生成することにより、目的の画像受領者に該受領者によって好まれる特性を有する再構成画像を提供するもの」であり、「電子プロセッサ16」は「1つ以上の透過型コンピュータ断層撮影(CT)スキャナである2つの撮像装置10、12」を備えた「医用画像再構成技術を備えた撮像システム」が備えるものであることから、引用発明1における「電子プロセッサ16」は「CT画像の読影傾向に基づいて、」「再構成条件を構築する構築部」及び「前記構築部が構築した再構成条件に基づいて、」「CT画像を生成する画像生成部」に相当する。
ウ 引用発明1の「受領者画像表示・レビューモジュール36」は、「目的の画像受領者(例えば、医師又は放射線医)」に「該受領者によって好まれる特性を有する再構成画像を提供するもの」であるから、本願発明1における「前記画像生成部が生成したCT画像を表示するよう制御する表示制御部」に相当する。

すると、本願発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
「CT画像の読影傾向に基づいて、再構成条件を構築する構築部と、
前記構築部が構築した再構成条件に基づいて、CT画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成したCT画像を表示するよう制御する表示制御部と、
を備える、X線CT装置。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
「CT画像の読影傾向に基づいて」「再構成条件を構築する構築部」が、本願発明1では「関心領域の内外で異なる再構成条件であって、前記関心領域内においては拡大再構成を行う」再構成条件を構築するのに対し、引用発明1では再構成条件を決定する再構成パラメータが「(以下に限られないが)、反復回数(例えば反復式順/逆投影再構成などの反復再構成アルゴリズムの場合)、ピクセル若しくはボクセルのサイズ、緩和因子(リラクゼーションファクタ)、画像フィルタパラメータ(例えば、フィルタ順序、遮断周波数、等々)、動き補償に関するパラメータ、又は画像トランケーションなどを含み得るもの」である点。
<相違点2>
「前記構築部が構築した再構成条件に基づいて、」「CT画像を生成する画像生成部」が、本願発明1では「前記関心領域の内外で再構成条件を異ならせない場合より少ない枚数のCT画像であって、前記関心領域内で拡大再構成が行われたCT画像を含むCT画像を生成する」のに対し、引用発明1ではそのような構成を備えていない点。

(2)判断
前記「(1)」で記載した各相違点について判断する。
ア 相違点1について
(ア)引用発明2には「主制御装置23のCPU23aは、生データ記憶装置13に記憶された投影データを予め定められた細かいスライスピッチ(例えば2mm)で再構成する指令を再構成演算装置14に送り、再構成演算装置14は、その指令に応じて細かいスライスピッチの画像Iia(ia=1?m )を再構成し、そして、CPU23aは、CAD装置4に異常陰影検出指令を送り、待機状態に入り、CAD装置4は、異常陰影検出処理指令が送られると、画像再構成されたIia(ia=1?m )に対し、メモリに記憶されたアルゴリズムに従って異常陰影検出処理を施し、続いてCAD装置4は、異常陰影が検出されたか否かの判定を行ない、検出された場合はその異常陰影が検出されたスライス位置や異常陰影の位置等を含む情報(異常陰影検出情報)をCPU23aに送ったあと処理を停止し、一方、異常陰影が検出されなかった場合は、異常陰影が検出されなかった旨を表す情報(異常陰影非検出情報)をCPU23aに送ったあと処理を停止し、一方、CPU23aは、CAD装置4から異常陰影検出情報あるいは異常陰影非検出情報が入力されると待機状態から抜け、異常陰影検出情報が入力されたか否か判断し、異常陰影検出情報が入力されていると、その異常陰影検出情報から異常陰影を含むスライス及びその前後(Slice Of Interest: SOIと称する)について他のスライスとスライスピッチを変えた再構成画像を作成する指令を再構成演算装置14に送り、その指令は例えば、SOIでは、1mmあるいは2mmのように細かいピッチ、その他では10mmと粗いピッチにするような指令や、SOIはズーミング再構成を行なってその領域あたりの画素を細かくして再構成し、異常陰影を含む部分を拡大する指令であり、再構成演算装置14は、主制御装置23からの指令を受けて、生データ記憶装置13に記憶された投影データを、上記指定されたスライスピッチにより再構成演算し、画像データIib(ib= 1?m)を再構成し、この再構成画像データIibは、画像記憶装置15に記憶される、という動作」を行う技術が開示されている。

(イ)上記技術では、「異常陰影を含むスライス及びその前後(Slice Of Interest: SOIと称する)について他のスライスとスライスピッチを変えた再構成画像を作成する指令」及び「SOIはズーミング再構成を行なってその領域あたりの画素を細かくして再構成し、異常陰影を含む部分を拡大する指令」が開示されている。この引用発明2の技術は、「関心領域の内外で異なる再構成条件であって、前記関心領域内においては拡大再構成を行う再構成条件」ではあるが、その再構成条件は、CAD装置4から異常陰影検出情報を受けた場合にCPU23aが設定する再構成条件であることから、「CT画像の読影傾向に基づいて」「再構成条件を構築する」ことは行っていない。よって、上記引用発明2が開示する技術は、上記相違点1に係る構成には相当しない。

(ウ)よって、引用発明2には、上記相違点1に係る構成の技術は開示されていない。

(エ)以上のことから、上記相違点1に係る発明特定事項を引用発明1ないし2から当業者が導き出すことはできない。

(オ)また、引用文献3は上記「第5 3.」より、推奨された再構成条件に関してユーザが受け入れ、拒絶、及び/又は変更できる技術を開示する文献であり、引用文献4ないし6は上記「第5 4.ないし6.」より、再構成条件における拡大再構成が本願出願前に周知であることを示す文献であり、上記相違点1に係る構成の技術についての記載はない。よって、引用文献3ないし6には、上記相違点1に係る構成の技術は開示されていない。

(カ)以上のことから、上記相違点1に係る発明特定事項を引用発明1ないし2及び引用文献3ないし6に記載された技術から当業者が導き出すことはできない。

イ 相違点2について
(ア)引用発明2には、上記「ア(ア)」に示したように「予め定められた細かいスライスピッチ(例えば2mm)で再構成する指令を再構成演算装置14に送り、再構成演算装置14は、その指令に応じて細かいスライスピッチの画像Iia(ia=1?m )を再構成し、」「CAD装置4は、異常陰影検出処理指令が送られると、画像再構成されたIia(ia=1?m )に対し、メモリに記憶されたアルゴリズムに従って異常陰影検出処理を施し、続いてCAD装置4は、異常陰影が検出されたか否かの判定を行ない、検出された場合はその異常陰影が検出されたスライス位置や異常陰影の位置等を含む情報(異常陰影検出情報)をCPU23aに送ったあと処理を停止し、一方、異常陰影が検出されなかった場合は、異常陰影が検出されなかった旨を表す情報(異常陰影非検出情報)をCPU23aに送ったあと処理を停止し、一方、CPU23aは、CAD装置4から異常陰影検出情報あるいは異常陰影非検出情報が入力されると待機状態から抜け、異常陰影検出情報が入力されたか否か判断し、異常陰影検出情報が入力されていると、その異常陰影検出情報から異常陰影を含むスライス及びその前後(Slice Of Interest: SOIと称する)について他のスライスとスライスピッチを変えた再構成画像を作成する指令を再構成演算装置14に送り、その指令は例えば、SOIでは、1mmあるいは2mmのように細かいピッチ、その他では10mmと粗いピッチにするような指令や、SOIはズーミング再構成を行なってその領域あたりの画素を細かくして再構成し、異常陰影を含む部分を拡大する指令」であり、「再構成演算装置14は、主制御装置23からの指令を受けて、生データ記憶装置13に記憶された投影データを、上記指定されたスライスピッチにより再構成演算し、画像データIib(ib= 1?m)を再構成し、この再構成画像データIibは、画像記憶装置15に記憶される、という動作」を行う技術が開示されている。

(イ)上記「(ア)」より、引用発明2では、まず予め定められた細かいスライスピッチ(例えば2mm)で画像Iia(ia=1?m )を再構成し、その画像を用いてCAD装置で異常陰影の有無を判定し、異常陰影があった場合に異常陰影を含むスライス及びその前後(Slice Of Interest: SOIと称する)について他のスライスとスライスピッチを変えた、SOIでは、1mmあるいは2mmのように細かいピッチ、その他では10mmと粗いピッチにするような指令やSOIはズーミング再構成を行なってその領域あたりの画素を細かくして再構成し、異常陰影を含む部分を拡大する指令で再構成演算して、画像データIib(ib= 1?m)を再構成するものであるから、再構成する枚数は、細かいスライスピッチ(例えば2mm)で再構成された画像IiaとSOIでは、1mmあるいは2mmのように細かいピッチ、その他では10mmと粗いピッチにするような指令やSOIはズーミング再構成を行なってその領域あたりの画素を細かくして再構成し、異常陰影を含む部分を拡大する指令で再構成された画像データIibが生成されることが分かる。これより、引用発明2では画像は画像Iiaと画像データIibが生成されるので、SOI領域の内外で再構成条件を異ならせない場合(画像Iiaのみ)より画像データIib分多くCT画像を生成している。

(ウ)よって、引用発明2には、上記相違点2に係る構成について記載されているとは言えず、上記相違点2に係る構成の技術は開示されていない。

(エ)以上のことから、上記相違点2に係る発明特定事項を引用発明1ないし2から当業者が導き出すことはできない。

(オ)また、引用文献3は上記「第5 3.」より、推奨された再構成条件に関してユーザが受け入れ、拒絶、及び/又は変更できる技術を開示する文献であり、引用文献4ないし6は上記「第5 4.ないし6.」より、再構成条件における拡大再構成が本願出願前に周知であることを示す文献であり、上記相違点2に係る構成の技術についての記載はない。よって、引用文献3ないし6には、上記相違点2に係る構成の技術は開示されていない。

(カ)以上のことから、上記相違点2に係る発明特定事項を引用発明1ないし2及び引用文献3ないし6に記載された技術から当業者が導き出すことはできない。

(3)小括
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1ないし2に基づいて、または引用発明1ないし2及び引用文献3ないし6に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7も、本願発明1の上記相違点1及び2に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1ないし2に基づいて、または引用発明1ないし2及び引用文献3ないし6に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明8について
本願発明8は、本願発明1の末尾の「X線CT装置」を「画像処理装置」に変更した発明であることから、本願発明8も、本願発明1の上記相違点1及び2に係る発明特定事項を備えるものとなるので、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1ないし2に基づいて、または引用発明1ないし2及び引用文献3ないし6に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし8は「CT画像の読影傾向に基づいて、関心領域の内外で異なる再構成条件であって、前記関心領域内においては拡大再構成を行う再構成条件を構築する構築部」と、「前記構築部が構築した再構成条件に基づいて、前記関心領域の内外で再構成条件を異ならせない場合より少ない枚数のCT画像であって、前記関心領域内で拡大再構成が行われたCT画像を含むCT画像を生成する画像生成部」という事項を有するものとなっており、上記「第6」での検討のとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-11-04 
出願番号 特願2015-194528(P2015-194528)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
P 1 8・ 575- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 磯野 光司
伊藤 幸仙
発明の名称 X線CT装置及び画像処理装置  
代理人 特許業務法人虎ノ門知的財産事務所  

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