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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B02C |
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管理番号 | 1367596 |
審判番号 | 不服2019-13015 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-09-30 |
確定日 | 2020-11-17 |
事件の表示 | 特願2016- 88066「シュレッダ及びこれを用いたシート状物処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 2日出願公開、特開2017-196555、請求項の数(22)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年4月26日の出願であって、平成30年11月13日付けの拒絶理由通知に対し、平成31年1月21日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和1年6月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年9月30日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の拒絶の理由は、平成30年11月13日付け拒絶理由通知書に記載した理由2であり、要するに、平成31年1月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7、10、11、14?17、19?22に係る発明は、以下の引用文献7、4又は5に記載された発明並びに引用文献4、5、7及び8に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという、進歩性欠如に関するものである。 引用文献一覧 4.実願昭60-086958号(実開昭61-204651号)のマイクロフィルム 5.実願昭60-039019号(実開昭61-159046号)のマイクロフィルム 7.特開2002-239405号公報 8.特開昭63-26999号公報 第3 本願発明 本願請求項1?22に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項により特定されるものであるところ、原査定の対象とされた請求項1?7、10、11、14?17、19?22に係る発明(以下、「本願発明1」などとい、これらまとめて「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 一若しくは複数枚のシート状物からなる被細断物が投入される投入口を有するシュレッダ筐体と、 前記投入口に連通して設けられ、前記投入口から投入された前記被細断物を下方に向けて搬入する搬入経路と、 前記搬入経路の途中に設けられ、互いに噛み合うように配置される対構成のカッタ要素を有し、当該対構成のカッタ要素の噛み合い領域に搬入される被細断物を細断する細断機構と、 前記投入口から前記細断機構に至るまでの搬入経路の一部に前記被細断物の搬入方向に交差する幅方向に沿って設けられ、前記搬入経路の前記被細断物の厚さ方向に対応する開口幅を規制する規制部材と、を備え、 前記搬入経路は前記投入口から斜め下方に傾斜して配置されており、 前記規制部材は、前記搬入経路の前記開口幅として予め決められた厚さ寸法の1枚のシート状物が非接触状態で通過可能な隙間を確保し、少なくとも前記被細断物に接触する部位が前記被細断物の搬入方向に沿って曲面を有すると共に、細断可能な最大厚さ以下で前記隙間以上の厚さ寸法の被細断物が搬入されたときには、前記被細断物との接触により当該被細断物の厚さに応じて水平方向よりも斜め上方に向かって退避移動することで前記開口幅を規制することを特徴とするシュレッダ。 【請求項2】 一若しくは複数枚のシート状物からなる被細断物が投入される投入口を有するシュレッダ筐体と、 前記投入口に連通して設けられ、前記投入口から投入された前記被細断物を下方に向けて搬入する搬入経路と、 前記搬入経路の途中に設けられ、互いに噛み合うように配置される対構成のカッタ要素を有し、当該対構成のカッタ要素の噛み合い領域に搬入される被細断物を細断する細断機構と、 前記投入口から前記細断機構に至るまでの搬入経路の一部に前記被細断物の搬入方向に交差する幅方向に沿って設けられ、前記搬入経路の前記被細断物の厚さ方向に対応する開口幅を規制する規制部材と、を備え、 前記搬入経路は前記投入口から略鉛直下方に向かって配置されており、 前記規制部材は、前記搬入経路の前記開口幅として予め決められた厚さ寸法の1枚のシート状物が非接触状態で通過可能な隙間を確保し、少なくとも前記被細断物に接触する部位が前記被細断物の搬入方向に沿って曲面を有すると共に、細断可能な最大厚さ以下で前記隙間以上の厚さ寸法の被細断物が搬入されたときには、前記被細断物との接触により当該被細断物の厚さに応じて前記被細断物の搬入方向に対して略直交する水平方向若しくは当該水平方向よりも斜め上方に向かって退避移動することで前記開口幅を規制することを特徴とするシュレッダ。 【請求項3】 請求項1に記載のシュレッダにおいて、 前記規制部材は、前記被細断物が接触したときに前記被細断物の搬入方向に対して略直交する方向に向かって退避移動可能であることを特徴とするシュレッダ。 【請求項4】 請求項1又は2に記載のシュレッダにおいて、 前記規制部材は、前記被細断物が接触したときに前記被細断物の搬入方向に沿って移動可能であることを特徴とするシュレッダ。 【請求項5】 請求項4に記載のシュレッダにおいて、 前記規制部材は、前記搬入経路に搬入された被細断物との接触に追従して回転するロールであることを特徴とするシュレッダ。 【請求項6】 請求項1又は2に記載のシュレッダにおいて、 前記規制部材は、前記投入口から前記細断機構に至るまでの搬入経路のうち前記細断機構寄りに設けられていることを特徴とするシュレッダ。 【請求項7】 請求項1又は2に記載のシュレッダにおいて、 前記シュレッダ筐体はその頂部に断面略V字状の凹所を有すると共に、この凹所の底に前記投入口を有しており、 前記規制部材は、前記凹所のうち前記投入口に面した箇所に設けられていることを特徴とするシュレッダ。 【請求項10】 請求項1又は2に記載のシュレッダにおいて、 前記規制部材の両端支持部を進退可能に支持する支持機構が設けられ、 前記規制部材は、支持機構の進出位置に支持されたときに前記搬入経路の開口幅として前記隙間を確保することを特徴とするシュレッダ。 【請求項11】 請求項1に記載のシュレッダにおいて、 前記規制部材は、前記搬入経路の下側を区画する下側区画部材を対向部材として一つ設けられていることを特徴とするシュレッダ。 【請求項14】 請求項1又は2に記載のシュレッダにおいて、 前記規制部材は、前記搬入経路に搬入される被細断物を挟み込むように対構成にて対向配置されていることを特徴とするシュレッダ。 【請求項15】 請求項1又は2に記載のシュレッダにおいて、 前記搬入経路は前記規制部材に対向する部位に対向部材を有しており、 当該対向部材は前記被細断物の他方の面に接触するように配置される案内規制部材を備え、 前記案内規制部材は、少なくとも前記被細断物に接触する部位が前記被細断物の搬入方向に沿って曲面を有することを特徴とするシュレッダ。 【請求項16】 請求項15に記載のシュレッダにおいて、 前記案内規制部材は前記被細断物が接触したときに前記被細断物の搬入方向に沿って移動可能であることを特徴とするシュレッダ。 【請求項17】 請求項1又は2に記載のシュレッダにおいて、 前記規制部材の両端支持部を進退可能に支持する支持機構が設けられ、 前記支持機構は、前記規制部材の退避方向とは反対側の方向に向けて前記規制部材が付勢される付勢部材を有することを特徴とするシュレッダ。 【請求項19】 請求項1又は2に記載のシュレッダにおいて、 前記規制部材を進退可能に支持する支持機構が設けられ、 前記支持機構は、前記規制部材を支点を中心に揺動可能に支持することを特徴とするシュレッダ。 【請求項20】 請求項1又は2に記載のシュレッダにおいて、 前記規制部材は、被細断物との接触に追従して回転する導電性ロールを有し、前記導電性ロールの周面に導電性繊維を設けたことを特徴とするシュレッダ。 【請求項21】 請求項1又は2に記載のシュレッダにおいて、 前記規制部材が退避移動したときに、前記被細断物の細断可能な最大厚さに相当する予め決められた許容値を超えた状況が検出可能な検出器を備えることを特徴とするシュレッダ。 【請求項22】 シート状物を処理する処理部と、 前記処理部による処理が適正になされないシート状物を被細断物として細断する請求項1乃至21のいずれかに記載のシュレッダと、を備えていることを特徴とするシート状物処理装置。」 第4 各引用文献の記載事項 1 引用文献7の記載事項 原査定の理由に引用された引用文献7には、次の事項が記載されている。 (1) 「【請求項1】シュレッダーの被細断物投入口において、フロントシュートカバーとリアエンドカバーで構成される投入通路を細断刃の細断可能枚数の厚味より大きく設定すると共に、該投入通路に通路を通過する被細断物の厚味を検知する検知機構を設け、所定の厚味以上の被細断物が通過した場合に細断刃の駆動モーターを停止するようにしたことを特徴とするシュレッダーの被細断物投入口。 【請求項2】検知機構は、断面略コの字状の筒状部材からなる厚味制限筒体であって、投入口側板間に架設した支軸に回動可能に軸支し、コイルバネによってフロントシュートカバー側に付勢すると共にリアエンドカバーで回動を規制して投入通路の大きさが細断可能枚数となるようにしたものである請求項1に記載のシュレッダーの被細断物投入口。 【請求項3】厚味制限筒体の後壁に近接してマイクロスイッチを設け、該厚味制限筒体の回動によってマイクロスイッチが作動して細断刃の駆動モーターを停止するようにした請求項1または請求項2に記載のシュレッダーの被細断物投入口。」 (2) 「【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、紙束の細断時に所定枚数以上の紙が供給されて紙詰まりが発生することを防止するため、細断刃に一定量以上の紙が供給されないようにすることを目的とすると共に、紙詰まり時の逆転排出動作の際にはカバーを手動で開ける手間を省き、逆転排出動作をスムーズにし、さらに、細断刃の駆動モーターの逆転排出動作時間を必要最低限にして電力エネルギーの浪費を抑制することを目的としたものである。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明は、シュレッダーの被細断物投入口において、フロントシュートカバーとリアエンドカバーで構成される投入通路を細断刃の細断可能枚数の厚味より大きく設定すると共に、該投入通路に通路を通過する被細断物の厚味を検知する検知機構を設け、所定の厚味以上の被細断物が通過した場合に細断刃の駆動モーターを停止するようにするという手段を採用した。 【0009】該検知機構によって、細断刃の細断可能枚数以上の紙束が投入されると、直ちに細断刃の駆動モーターが停止するので、細断を開始することが無く、駆動モーターに過負荷がかかることを確実に回避できるものである。 【0010】そして、この検知機構は、断面略コの字状の筒状部材からなる厚味制限筒体であって、投入口側板間に架設した支軸に回動可能に軸支し、コイルバネによってフロントシュートカバー側に付勢すると共にリアエンドカバーで回動を規制して投入通路の大きさが細断可能枚数となるようにしたものである。 【0011】厚味制限筒体によって投入通路の高さを規制しているので、所定枚数以下の紙束は容易に通過して細断されると共に、細断可能枚数以上の紙束が通過する際には、紙束が厚味制限筒体を押し上げることになり、駆動モーターが停止されるものである。 【0012】このため、厚味制限筒体の後壁に近接してマイクロスイッチを設け、該厚味制限筒体の回動によってマイクロスイッチが作動して細断刃の駆動モーターを停止するようにした。 【0013】所定厚さ以上の紙束が通過すると、厚味制限筒体が押し上げられ、その回動によってマイクロスイッチが作動するので、細断刃の駆動モーターを直ちに停止できるものである。」 (3) 「【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明にかかるシュレッダーの被細断物投入口について、好ましい実施の形態を図面に従って説明する。図1は本発明装置を備えたシュレッダーの一部省略側面断面図、図2はその部分拡大図である。また図3は投入口の平面図である。さらに図4、図5は動作説明図である。 【0015】各図において、1はフロントシュートカバー、2はリアエンドカバーで、両者と左右の投入口側板3、3とでホッパー状の投入口4を構成している。リアエンドカバー2の下端はフロントシュートカバー1と平行になるように後部方向に折曲して一定高さの投入通路5を形成している。この投入通路5の高さはシュレッダーの被細断紙の細断可能枚数を超える高さに設定されている。リアエンドカバー2の下面には、投入通路5の終端位置に面して投入された紙束の厚味を検知するための厚味制限筒体6が回動可能に設置されている。 【0016】この厚味制限筒体6は、投入口4の開口幅とほぼ同じ長さを有する断面略コの字状の筒形部材で構成され、左右両端には側板6aを有している。また、フロントシュートカバー1と対向する長手方向の角部6b(細断紙と当接する部分)は丸め加工が施してある。この厚味制限筒体6は側板6aの下部で投入口側板3、3間に架設した支軸7によって回動自在に軸支され、角部6bは支軸7を中心に円弧状に回動可能となっている(図4参照)。また、側板6aの上部と投入口側板3のフロントシュートカバー1側にはそれぞれバネ取付軸8、8が取り付けられ、このバネ取付軸8、8間にはコイルバネ9を張設して厚味制限筒体6をフロントシュートカバー1側に常に回動するよう付勢している。 【0017】筒形の厚味制限筒体6は上方を開口し、リアエンドカバー2に面して前壁6cが形成され、反対側には後壁6dが形成されているが、前壁6cはリアエンドカバー2の折曲終端に当接して回動が規制されている。そして、厚味制限筒体6の角部6bと対向するフロントシュートカバー1との間隔がシュレッダーの細断可能枚数と同じになるように位置関係が調整されている。即ち、この間隔で紙束の厚味を検知できることになる。 【0018】また、後壁6dに近接してマイクロスイッチ10が取り付けられ、そのアクチュエータ10aが厚味制限筒体6の回動によってその後壁6dと当接し、マイクロスイッチ10がオン状態となるようになっている。このマイクロスイッチ10はオン状態のときに細断刃の駆動モーターの回転を停止するように接続されている。 【0019】なお、11、11は斜め2段に架設された縦切り用カッター、12は横切り用回転カッター、13は横切り用固定カッター、14は駆動モーター、15はギア群であり、何れもシュレッダーに周知の構成である。16はシュレッダーの筺体、17は屑箱、18は扉である。また、(P)は被細断紙、(Q)は細断屑である。 【0020】次に、上記構成の投入口を有するシュレッダーの動作について説明する。シュレッダーの投入口4のフロントシュートカバー1に被細断紙(P)が供給されると、被細断紙はフロントシュートカバー1とリアエンドカバー2との間から投入通路5に案内される。 【0021】被細断紙(P)が適正な細断枚数の紙束であれば、厚味制限筒体6の下方を通過してそのまま投入通路5から縦切り用カッター11、11の噛合部分に到達し正常に細断される。 【0022】被細断紙が細断能力より多い枚数の紙束の場合、図4に示すように、投入通路5には入るが、フロントシュートカバー1と厚味制限筒体6の間隙をそのまま通過することはできず、紙束の厚味でコイルバネ9の力に抗して厚味制限筒体6を上方に押し上げることになる。すると、厚味制限筒体6は支軸7を中心に上方へ回動してその後壁6dがマイクロスイッチ10のアクチュエータ10aを押してオン状態とし(図4(B)参照)、駆動モーター14の回転が停止する。従って、細断が開始されることはなく、駆動モーターが過負荷となることを防止できる。 【0023】また、適正な枚数の被細断紙(P)が供給された場合でも、供給角度や紙の質によって細断能力を超えて紙詰まりを起こすことがある。この場合、通常は、図示しない紙詰まり検知回路によって細断刃の駆動モーター14は停止して細断を中止すると共に、該駆動モーター14が逆転して紙詰まりを起こした被細断紙を逆の方向へ排出しようとする。このとき、操作者が紙詰まりを起こした紙束の後端を手で持って引き出すことになるが、この紙束の先端は図5(A)に示すように、縦切り用カッターに一部が咬み込まれた結果、その先端がもとの紙束の厚味より膨大化してささくれ立っている。そのため、フロントシュートカバー1と厚味制限筒体6の間隙を通過する際に、厚味制限筒体6を押し上げることになる(同図(B)参照)。この場合も、上記と同様に厚味制限筒体6が支軸7を中心に回動してその後壁6dがマイクロスイッチ10のアクチュエーター10aを押してオン状態とし、駆動モーター14の逆回転が停止される。従って、従来のように逆転排出時の駆動モーター14の駆動時間を予め設定する必要が無く、電力の浪費が確実に回避される。」 (4) 図1 「 」 (5) 図4 「 」 2 引用文献4の記載事項 原査定の理由に引用された引用文献4には、「文書細断装置」(考案の名称)に関する次の事項が記載されている。 (1) 実用新案登録請求の範囲 「1. 文書等が投入される投入口を有するケーシング内に、一対の細断用カッターを互いに摺接するように対向配置してなる2つのカッター列が配設されている文書細断装置において、前記投入口の下部は下方に向つて間隔が狭まる略くさび状を形成した一対の案内板によつて構成され、前記一対の案内板の間には、ローラが前記一対の案内板の内面に当接しかつ自転可能に配設されていることを特徴とする文書細断装置。」 (2) 第5頁第11行?第19行 「一対の案内板18a,18bの間には、ローラ16がこの一対の案内板18a,18bの内面に当接しかつ自転可能に配設されている。さらにこのローラ16は軽量の部材で製作されており、投入口13から投入された文書等Pがローラ16を上方へずらしながら、一対の案内板18a,18bのうちの一方、例えば案内板18bとローラ16との間に侵入できるようになっている。」 (3) 第6頁第5行?第10行 「文書細断中、投入口13から投入された文書等Pは、ローラ16を上方に少しずらし、ローラ16と案内板18bとの間に隙間を形成し、この隙間に入り込む。この場合文書Pを軽く上下に動かせば、容易に文書Pをローラ16と案内板18bとの間に入れることができる。」 (4) 第7頁第4行?第16行 「このため、文書等Pはローラ16と案内板16bとの間で挟持され、一対の案内板18a,18bの下方にある2つのカッター列15との間で引張られた状態となり、文書等Pにテンションがかかる。これにより文書等Pのシワ寄りが防止され・・・と温州口13がローラ13によりしゃ断された状態となるので、カッター列15から発生する騒音が、投入口13を通ってケーシング外へ伝播するのを減少させることができる。」(当審注:「・・・」は記載の省略を表す。以下同じである。) 3 引用文献5の記載事項 原査定の理由に引用された引用文献5には、「シュレッダー」(考案の名称)に関する次の事項が記載されている。 (1) 実用新案登録請求の範囲 「寸断すべき紙を投入する投入口をシュレッダー本体に開口し、投入口から挿入した紙を表裏両面から噛み込んで寸断する一対の回転刃を設け、寸断すべき紙の噛み込みと略同時に該紙を寸断するシュレッダーにおいて、前記投入口と回転刃の間で密着しながら紙を回転刃に導入する一対の防音ローラを設けたことを特徴とするシュレッダー。」 (2) 第4頁第8行?第20行 「本考案によれば・・・紙11の変形状態に対応して柔軟材から成る防音ローラ14、15が紙11に密着するので、該紙の波打ち振動に伴う騒音を低減することができることは勿論、紙と防音ローラ14、15間のギャップ及び防音ローラ14、15間のギャップがかなり縮小されることに伴いシュレッダー本体内部で生じる紙の細断音漏れ、駆動部駆動音漏れ等の騒音漏れをかなり低減することができる。」 (3) 第7頁第6行?第14行 「回転刃3、4に紙が噛み込まれて寸断される際には、その紙の後方側で防音ローラ3と4により紙を表裏両面から挟み込むようにして密着するようにしているので、紙がその幅方向に波打ち現象を起こしてもこれに対応して防音ローラ3と4が紙にくまなく接触することにより、その際に紙が波打ちをしようとして発生しようとする振動騒音を大幅に抑制してしまう。」 4 引用文献8の記載事項 原査定の理由に引用された引用文献8には、「帯電除去具」(発明の名称)に関する次の事項が記載されている。 (1) 特許請求の範囲 「絶縁体と導電体とにより構成され10^(8)Ω以下の漏洩抵抗を有する導電性複合繊維からなる植毛層が導電性を有する接着剤層を介して導電性基材の表面に形成されたことを特徴とする帯電除去具」 (2) 第1頁左欄第10?第14行 「本発明は例えば電子複写機、ファクシミリ等の紙送りロールやドラムの清掃ロール、金銭登録機の紙送りロール、あるいは各種OA機器の清掃ブラシ等として用いられる帯電除去具に関するものである。」 第5 引用文献7に記載された発明(引7発明)の認定 1 上記「第4」1(3)の記載事項から把握できる技術的事項は次のとおりである。 (1) 【0015】の記載によれば、引用文献7には、フロントシュートカバー1とリアエンドカバー2とが投入口4を構成するとともに、一定高さの投入通路5を形成し、この投入通路5の高さはシュレッダーの被細断紙の細断可能枚数を超える高さに設定されており、投入通路5の終端位置に面して投入された紙束の厚味を検知するための厚味制限筒体6が回動可能に設置されているシュレッダーが記載されているといえる。 (2) 【0016】の記載によれば、引用文献7には、厚味制限筒体6は、投入口4の開口幅とほぼ同じ長さを有する断面略コの字状の筒形部材で構成され、細断紙と当接する部分は丸め加工が施され、コイルバネ9により、フロントシュートカバー1側に常に回動するよう付勢されていることが記載されているといえる。 (3) 【0017】の記載によれば、引用文献7には、厚味制限筒体6の角部6bと対向するフロントシュートカバー1との間隔がシュレッダーの細断可能枚数と同じになるように位置関係が調整されていることが記載されているといえる。 (4) 【0018】の記載によれば、引用文献7には、厚味制限筒体6の回動によってマイクロスイッチ10がオン状態となり、細断刃の駆動モーターの回転を停止することが記載されているといえる。 (5) 【0019】の記載によれば、引用文献7には、シュレッダーが、斜め2段に架設された縦切り用カッター11、11、横切り用回転カッター12、横切り用固定カッター13、シュレッダーの筺体16を備えることが、記載されているといえる。 (6) 【0020】?【0022】によれば、引用文献7には、シュレッダーの動作について、シュレッダーの投入口4に供給された被細断紙(P)は、投入通路5に案内され、被細断紙(P)が適正な細断枚数の紙束であれば、厚味制限筒体6の下方を通過してそのまま投入通路5から縦切り用カッター11、11の噛合部分に到達し正常に細断され、被細断紙が細断能力より多い枚数の紙束の場合、投入通路5には入るが、フロントシュートカバー1と厚味制限筒体6の間隙をそのまま通過することはできず、紙束の厚味でコイルバネ9の力に抗して厚味制限筒体6を上方に押し上げ、マイクロスイッチ10のアクチュエータ10aを押してオン状態とし、駆動モーター14の回転が停止することが、記載されているといえる。 2 上記「第4」1(4)の図1によれば、投入通路は前記投入口から斜め下方に傾斜して配置されていることが看取できる。 3 上記1、2によれば、引用文献7には次の発明(以下、「引7発明」という。)が記載されているといえる。 「投入口4を構成するとともに、投入口4から斜め下方に傾斜して配置される一定高さの投入通路5を形成する、フロントシュートカバー1及びリアエンドカバー2を有し、 この投入通路5の高さはシュレッダーの被細断紙の細断可能枚数を超える高さに設定され、 投入通路5の終端位置に投入された紙束の厚味を検知するための厚味制限筒体6が回動可能に設置され、 厚味制限筒体6は、投入口4の開口幅とほぼ同じ長さを有する断面略コの字状の筒形部材で構成され、細断紙と当接する部分は丸め加工が施され、コイルバネ9により、フロントシュートカバー1側に常に回動するよう付勢され、 厚味制限筒体6の角部6bと対向するフロントシュートカバー1との間隔がシュレッダーの細断可能枚数と同じになるように位置関係が調整され、 厚味制限筒体6の回動によってマイクロスイッチ10がオン状態となり、細断刃の駆動モーターの回転が停止し、 斜め2段に架設された縦切り用カッター11、11、横切り用回転カッター12、横切り用固定カッター13、シュレッダーの筺体16を備えたシュレッダーであって、 シュレッダーの投入口4に供給された被細断紙(P)は、投入通路5に案内され、被細断紙(P)が適正な細断枚数の紙束であれば、厚味制限筒体6の下方を通過してそのまま投入通路5から縦切り用カッター11、11の噛合部分に到達し正常に細断され、被細断紙が細断能力より多い枚数の紙束の場合、投入通路5には入るが、フロントシュートカバー1と厚味制限筒体6の間隙をそのまま通過することはできず、紙束の厚味でコイルバネ9の力に抗して厚味制限筒体6を上方に押し上げ、マイクロスイッチ10のアクチュエータ10aを押してオン状態とし、駆動モーター14の回転が停止する、 シュレッダー。」 第6 引7発明を主たる引用発明とした進歩性についての検討 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引7発明とを対比する。 ア 引7発明における「投入口4」は、本願発明1における「一若しくは複数枚のシート状物からなる被細断物が投入される投入口」に相当する。 イ 引7発明における「シュレッダーの筐体16」は、本願発明1における「シュレッダ筐体」に相当する。 ウ 引7発明における「投入口4から斜め下方に傾斜して配置される一定高さの投入通路5」は、本願発明1における「前記投入口に連通して設けられ、前記投入口から投入された前記被細断物を下方に向けて搬入する搬入経路」及び「前記搬入経路は前記投入口から斜め下方に傾斜して配置されており」に相当する。 エ 引7発明における「斜め2段に架設された縦切り用カッター11、11、横切り用回転カッター12、横切り用固定カッター13」及び「厚味制限筒体6の下方を通過してそのまま投入通路5から縦切り用カッター11、11の噛合部分に到達し正常に細断され」は、本願発明1における「前記搬入経路の途中に設けられ、互いに噛み合うように配置される対構成のカッタ要素を有し、当該対構成のカッタ要素の噛み合い領域に搬入される被細断物を細断する細断機構」に相当する。 オ 引7発明における「厚味制限筒体」は、「投入通路5の終端位置」に設置され、「投入口4の開口幅とほぼ同じ長さを有する断面略コの字状の筒形部材で構成」され、「厚味制限筒体6の角部6bと対向するフロントシュートカバー1との間隔がシュレッダーの細断可能枚数と同じになるように位置関係が調整され」、「細断紙と当接する部分は丸め加工が施され」たものであり、本願発明1における「前記投入口から前記細断機構に至るまでの搬入経路の一部に前記被細断物の搬入方向に交差する幅方向に沿って設けられ、前記搬入経路の前記被細断物の厚さ方向に対応する開口幅を規制し」、「少なくとも前記被細断物に接触する部位が前記被細断物の搬入方向に沿って曲面を有する」、「規制部材」に相当する。 カ 引7発明は、「被細断紙(P)が適正な細断枚数の紙束であれば、厚味制限筒体6の下方を通過してそのまま投入通路5から縦切り用カッター11、11の噛合部分に到達し正常に細断され」るものであるから、引7発明における「厚味制限筒体」は、「1枚のシート状物が非接触状態で通過可能な隙間」を確保しているといえる。 キ 上記ア?カによれば、本願発明1と引7発明とを対比すると、両発明は次の一致点及び相違点を有するものと認められる。 <一致点> 「一若しくは複数枚のシート状物からなる被細断物が投入される投入口を有するシュレッダ筐体と、 前記投入口に連通して設けられ、前記投入口から投入された前記被細断物を下方に向けて搬入する搬入経路と、 前記搬入経路の途中に設けられ、互いに噛み合うように配置される対構成のカッタ要素を有し、当該対構成のカッタ要素の噛み合い領域に搬入される被細断物を細断する細断機構と、 前記投入口から前記細断機構に至るまでの搬入経路の一部に前記被細断物の搬入方向に交差する幅方向に沿って設けられ、前記搬入経路の前記被細断物の厚さ方向に対応する開口幅を規制する規制部材と、を備え、 前記搬入経路は前記投入口から斜め下方に傾斜して配置されており、 前記規制部材は、前記搬入経路の前記開口幅として予め決められた厚さ寸法の1枚のシート状物が非接触状態で通過可能な隙間を確保し、少なくとも前記被細断物に接触する部位が前記被細断物の搬入方向に沿って曲面を有することを特徴とするシュレッダ。」 <相違点> 「規制部材」が被細断物と接触する場合について、本願発明は「細断可能な最大厚さ以下で前記隙間以上の厚さ寸法の被細断物が搬入されたときには、前記被細断物との接触により当該被細断物の厚さに応じて水平方向よりも斜め上方に向かって退避移動することで前記開口幅を規制する」のに対し、引7発明は、「被細断紙(P)が適正な細断枚数の紙束であれば、厚味制限筒体6の下方を通過してそのまま投入通路5から縦切り用カッター11、11の噛合部分に到達し正常に細断され、被細断紙が細断能力より多い枚数の紙束の場合、投入通路5には入るが、フロントシュートカバー1と厚味制限筒体6の間隙をそのまま通過することはできず、紙束の厚味でコイルバネ9の力に抗して厚味制限筒体6を上方に押し上げ、マイクロスイッチ10のアクチュエータ10aを押してオン状態とし、駆動モーター14の回転が停止する」点。 (2)相違点についての検討 ア 引7発明において、相違点に係る「細断可能な最大厚さ以下で前記隙間以上の厚さ寸法」の紙束が投入された場合に、当該紙束が「厚味制限筒体6」と接触し、「厚味制限筒体6を上方に押し上げ、マイクロスイッチ10のアクチュエータ10aを押してオン状態とし、駆動モーター14の回転が停止する」ような位置関係に調整することの容易想到性について検討する。 イ 引7発明は、「被細断紙(P)が適正な細断枚数の紙束であれば、厚味制限筒体6の下方を通過し」、「被細断紙が細断能力より多い枚数の紙束の場合」は、「厚味制限筒体6を上方に押し上げ、マイクロスイッチ10のアクチュエータ10aを押してオン状態とし、駆動モーター14の回転が停止」するという手段により、上記「第4」1(2)の【0007】に記載の「紙束の細断時に所定枚数以上の紙が供給されて紙詰まりが発生することを防止するため、細断刃に一定量以上の紙が供給されないようにする」という課題を解決するものである。 当該課題からすれば、引7発明において、相違点に係る「細断可能な最大厚さ以下で前記隙間以上の厚さ寸法」の紙束が投入された場合に、当該紙束と「厚味制限筒体6」とが接触するような位置関係に調整し、駆動モーター14の回転を停止させることは、想定外の事項といわざるを得ない。そればかりか、適正な細断枚数の紙束であるにも関わらず駆動モーター14の回転を停止させることとなるため、結果的に不要に細断効率を低下させることも明らかである。 更に、上記「第4」2?4の引用文献4、5、8の記載事項をみても、そこには、上記「隙間」を確保する「規制部材」に関する記載はなく、当然ながら当該位置関係の調整に関する記載もない。 したがって、引7発明においてそのような位置関係に調整することは、当業者といえども容易に想起し得るものであるとはいい難い。 ウ 以上のとおりであるから、当業者が引用文献7に記載された発明並びに引用文献4、5、7及び8に記載された技術的事項に基いて、相違点に係る本願発明1の構成を、当業者が容易に想到することができたものとは認められない。 よって、本願発明1が進歩性を欠如するということはできない 2 本願発明2?7、10、11、14?17、19?22について 本願発明2と引7発明との間には、上記1(1)キの相違点と同様の相違点が存するし、本願発明3?7、10、11、14?17、19?22は、本願発明1又は2を直接的又は間接的に引用するものであるから、これら発明についても本願発明1と同様、進歩性を欠如するということはできない。 第7 引用文献4又は5に記載された発明を主たる引用発明とした進歩性についての検討 引用文献4、5には、本願発明に係る「前記搬入経路の前記開口幅として予め決められた厚さ寸法の1枚のシート状物が非接触状態で通過可能な隙間を確保」し、「細断可能な最大厚さ以下で前記隙間以上の厚さ寸法の被細断物が搬入されたときには、前記被細断物との接触により当該被細断物の厚さに応じて水平方向よりも斜め上方に向かって退避移動することで前記開口幅を規制」する「規制部材」について、何らの記載も示唆もされていない。 そして、そのような「規制部材」については、上記「第6」1(2)イのとおり、引用文献7にも記載されていない。 したがって、引用文献4又は5に着目し、それらに記載された発明を主たる引用発明として考えても、当該引用発明並びに引用文献4、5、7及び8に記載された技術的事項に基いて、本願発明を当業者が容易に想到することができたものとは認められない。 よって、本願発明1?7、10、11、14?17、19?22が進歩性を欠如するということはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に、原査定の対象とされていない請求項に係る発明を含め、本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-10-27 |
出願番号 | 特願2016-88066(P2016-88066) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B02C)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小久保 勝伊 |
特許庁審判長 |
日比野 隆治 |
特許庁審判官 |
村岡 一磨 金 公彦 |
発明の名称 | シュレッダ及びこれを用いたシート状物処理装置 |
代理人 | 小泉 雅裕 |