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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1367617
審判番号 不服2019-10641  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-09 
確定日 2020-11-17 
事件の表示 特願2015- 31434「表示装置、表示制御方法および表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月 9日出願公開、特開2016-105264、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月20日(優先権主張 平成26年11月19日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 1月15日 :手続補正書の提出
平成30年10月29日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月25日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 5月13日付け:拒絶査定(原査定)
令和 元年 8月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 元年10月 1日付け:前置報告書

第2 原査定及び前置報告書の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし9、12及び13に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、また、本願請求項10及び11に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
なお、令和元年10月1日付け前置報告書においては、周知技術を示す文献として以下の引用文献4ないし6が提示されるととともに、令和元年8月9日に提出された手続補正書による手続補正(審判請求時の補正)は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものであり、当該補正後の請求項1ないし11に係る発明は、以下の引用文献1ないし6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条2項の規定により独立して特許を受けることができない、とされている。

<引用文献一覧>
1 取扱説明書 Offirio EB-1410WT [オンライン],日本,2012年,第1,9,20,63-90,216頁,[検索日2018年10月26日],URL,http://www2.epson.jp/support/manual/data/elp/eb1410wt/U_GUIDE_1410WT2.PDF
2 特開2014-174931号公報
3 特開2001-067183号公報
4 特開2000-3252号公報
5 特開平2-89112号公報
6 特開2014-21945号公報

第3 審判請求時の補正の適否
1 補正事項
審判請求時の補正は、以下の補正事項を含むものである。なお、「/」は改行を示す。
(1)補正事項1
補正前の請求項1(補正後の請求項1)の冒頭に、「表示装置であって、」を付加する補正。
(2)補正事項2
補正前の請求項1に記載の「前記検出部によって前記第1指示体が検出された場合、前記第1指示体の位置を表す情報の供給先を前記生成部に指定し、前記検出部によって前記第2指示体が検出された場合、前記第2指示体の位置を表す情報の供給先を前記生成部または前記画像供給装置のいずれかに指定する指定部」を、補正後の請求項1において、「前記検出部によって当該指示体が検出された場合、前記表示装置が動作する動作モードと検出された当該指示体に応じて、当該指示体の位置を表す情報の供給先を前記生成部に指定する描画モードまたは前記供給先を前記画像供給装置に指定するマウスモードのいずれかに指定する指定部」とするとともに、「前記指定部は、/ 前記動作モードが第1動作モードである場合に、前記第1指示体については前記描画モードに指定し、前記第2指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定し、/ 前記動作モードが第2動作モードである場合に、前記第1指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定し、前記第2指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定する」との事項を付加する補正。
(3)補正事項3
補正前の請求項1に記載の「前記第1指示体の位置を表す情報を前記生成部に供給する一方、前記第2指示体の位置を表す情報を該指定された供給先に供給する制御部」を、補正後の請求項1において、「当該指示体の位置を表す情報を該指定された供給先に供給する制御部」とする補正。
(4)補正事項4
補正前の請求項5を削除する補正。
(5)補正事項5
補正前の請求項7を削除する補正。
(6)補正事項6
補正前の請求項12に記載の「前記第1指示体が検出された場合、前記第1指示体の位置を表す情報の供給先を自装置の制御部に指定し、前記第2指示体が検出された場合、前記第2指示体の位置を表す情報の供給先を前記制御部または前記画像供給装置に指定するステップ」を、補正後の請求項10において、「当該指示体が検出された場合、動作モードと検出された当該指示体に応じて、当該指示体の位置を表す情報の供給先を前記生成部に指定する描画モードまたは前記供給先を前記画像供給装置に指定するマウスモードのいずれかに指定するステップ」とするとともに、「前記指定するステップは、/ 前記動作モードが第1動作モードである場合に、前記第1指示体については前記描画モードに指定し、前記第2指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定し、/ 前記動作モードが第2動作モードである場合に、前記第1指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定し、前記第2指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定する」との事項を付加する補正。
(7)補正事項7
補正前の請求項12に記載の「前記第1指示体の位置を表す情報を前記制御部に供給する一方、前記第2指示体の位置を表す情報を該指定された供給先に供給するステップ」を、補正後の請求項10において、「当該指示体の位置を表す情報を該指定された供給先に供給するステップ」とする補正。
(8)補正事項8
補正前の請求項13(補正後の請求項11)の冒頭に「表示システムであって、」を付加する補正。
(9)補正事項9
補正前の請求項13に記載の「前記検出部によって前記第1指示体が検出された場合、前記第1指示体の位置を表す情報の供給先を前記生成部に指定し、前記検出部によって前記第2指示体が検出された場合、前記第2指示体の位置を表す情報の供給先を前記生成部または前記画像供給装置のいずれかに指定する指定部」を、補正後の請求項11において、「前記検出部によって当該指示体が検出された場合、前記表示システムが動作する動作モードと検出された当該指示体に応じて、当該指示体の位置を表す情報の供給先を前記生成部に指定する描画モードまたは前記供給先を前記画像供給装置に指定するマウスモードのいずれかに指定する指定部」とするとともに、「前記指定部は、/ 前記動作モードが第1動作モードである場合に、前記第1指示体については前記描画モードに指定し、前記第2指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定し、/ 前記動作モードが第2動作モードである場合に、前記第1指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定し、前記第2指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定する」との事項を付加する補正。
(10)補正事項10
補正前の請求項13に記載の「前記第1指示体の位置を表す情報を前記生成部に供給する一方、前記第2指示体の位置を表す情報を該指定された供給先に供給する制御部」を、補正後の請求項11において、「当該指示体の位置を表す情報を該指定された供給先に供給する制御部」とする補正。

2 補正の適否(特許法第17条の2第3項ないし第5項)
以下、上記各補正事項に係る補正が、特許法第17条の2第3項から第5項までの要件に適合しているか否かについて検討する。
(1)補正事項1、8について
補正事項1は、冒頭に「表示装置であって、」との確認的な限定を付すものであるから、限定的減縮を目的としたものである。
また、補正事項1は、新規事項を追加するものではなく、また、シフト補正にも該当しない。
補正事項8についても同様である。

(2)補正事項2、6及び9について
補正事項2は、「表示装置」に関して、「表示装置が動作する動作モード」、及び、その「動作モード」として「第1動作モード」と「第2動作モード」があることを限定し、「指定部」の機能として、「指示体の位置を表す情報の供給先」を「生成部」に指定することを「描画モード」を指定することに、また、前記「供給先」を「画像供給装置」に指定することを「マウスモード」に指定することに言い替えるとともに、補正前は実質的に「第1動作モード」における機能についてのみ特定されていたものを、「第2動作モード」である場合の動作について限定するものであるから、限定的減縮を目的としたものである。
また、これらの事項は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)(明細書の【0047】ないし【0053】、図5、図6)に記載されているから、補正事項2は、新規事項を追加するものではない。
また、補正事項2は、シフト補正にも当たらない。
補正事項6及び9についても同様である。

(3)補正事項3、7及び10について
補正事項3は、補正前の請求項1においては、「指定部」に関して(補正後の請求項1に記載の)「第1動作モード」に対応する事項しか特定されていなかったために、「第1指示体の位置を表す情報」を「生成部に供給する」ものに特定されていたものを、「第2動作モード」に対応する事項が付加されたことにより、「第1指示体の位置を表す情報」と「第2指示体の位置を表す情報」とをまとめて「当該指示体の位置を表す情報」としたものである。
よって、補正事項3は、補正事項2に伴って表現を改めたものと認められるから、全体としてみれば、限定的減縮を目的としたものである。
また、この補正は、新規事項の追加又はシフト補正には当たらない。
補正事項7及び10についても同様である。

(4)補正事項4及び5について
補正事項4及び5は、請求項の削除を目的としたものであり、また、新規事項の追加又はシフト補正には当たらない。

(5)小括
以上より、補正事項1ないし10、すなわち、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第5項までの要件に適合している。

3 補正の適否(特許法第17条の2第6項;独立特許要件)
前記2より、補正後の請求項1ないし11に係る審判請求時の補正(補正事項1ないし3及び6ないし10)は、限定的減縮を目的としたものであるので、本願請求項1ないし11に係る発明が、独立して特許を受けることができるものであるか否か(独立特許要件)について検討する。

(1)本願発明
本願請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、審判請求時の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
表示装置であって、
画像供給装置から第1画像を取得する取得部と、
指示体を検出し、当該指示体の位置、および当該指示体が第1指示体か第2指示体かを特定する検出部と、
生成部と、
表示部と、
前記検出部によって当該指示体が検出された場合、前記表示装置が動作する動作モードと検出された当該指示体に応じて、当該指示体の位置を表す情報の供給先を前記生成部に指定する描画モードまたは前記供給先を前記画像供給装置に指定するマウスモードのいずれかに指定する指定部と、
当該指示体の位置を表す情報を該指定された供給先に供給する制御部と
を有し、
前記生成部は、前記第1画像と前記制御部から供給された指示体の位置を表す情報に基づいた第2画像とを重ねた第3画像を生成し、
前記表示部は、前記第3画像を表示し、
前記指定部は、
前記動作モードが第1動作モードである場合に、前記第1指示体については前記描画モードに指定し、前記第2指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定し、
前記動作モードが第2動作モードである場合に、前記第1指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定し、前記第2指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定する表示装置。
【請求項2】
前記第2指示体の位置を表す情報の供給先の指定は、前記第2指示体を用いて表示面上の位置を指定することによって行われる
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2指示体の位置を表す情報の供給先が前記生成部に設定されている場合において、
該特定された第2指示体の位置が表示面上の所定領域の内部である場合、前記制御部は当該位置を表す情報を前記生成部に供給し、
前記生成部は、該供給された情報に基づいて前記第2画像の属性を決定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記属性を指定するための画像オブジェクトを表示し、前記特定された第2指示体の位置に基づいて、当該画像オブジェクトの位置または大きさの変更、消去、消去された画像オブジェクトの再表示のうち少なくともいずれか一つを実行する
ことを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記指定部において供給先が変更されると、所定期間、指定されている供給先を示す画像オブジェクトを表示する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の表示装置。
【請求項6】
前記指定部にて、前記第1指示体の位置を表す情報の供給先および前記第2指示体の位置を表す情報の供給先がともに前記生成部に指定されている場合において、
前記生成部は、第1の画像オブジェクトおよび第2の画像オブジェクトを含む前記第3画像を生成し、前記第1指示体によって指定された前記第1の画像オブジェクト内の位置に基づいて、前記第1指示体の位置に基づいて生成される第2画像の属性を指定し、前記第2指示体によって指定された前記第2の画像オブジェクト内の位置に基づいて、前記第2指示体の位置に基づいて生成される第2画像の属性を指定する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の表示装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2指示体を用いた所定の操作を受け付けると、表示されている第2画像を表すデータを前記画像供給装置に送信する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1指示体および前記第2指示体はそれぞれ異なる色に着色されており、
前記検出部は、指示体の色に基づいて当該指示体が前記第1指示体であるか前記第2指示体であるか特定する
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記指示体の形状が、第1端および第2端を有しており、
前記検出部は、前記第1端を前記第1指示体として、前記第2端を前記第2指示体として特定する
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項10】
画像供給装置から第1画像を取得する取得するステップと、
指示体を検出し、当該指示体の位置、および当該指示体が第1指示体か第2指示体かを特定するステップと、
当該指示体が検出された場合、動作モードと検出された当該指示体に応じて、当該指示体の位置を表す情報の供給先を前記生成部に指定する描画モードまたは前記供給先を前記画像供給装置に指定するマウスモードのいずれかに指定するステップと、
当該指示体の位置を表す情報を該指定された供給先に供給するステップと、
前記第1指示体または前記第2指示体の位置を表す情報が前記制御部に供給された場合、前記第1画像と前記第1指示体または前記第2指示体の位置を表す情報に基づいた第2画像とを重ねた第3画像を生成するステップと、
を有し、
前記指定するステップは、
前記動作モードが第1動作モードである場合に、前記第1指示体については前記描画モードに指定し、前記第2指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定し、
前記動作モードが第2動作モードである場合に、前記第1指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定し、前記第2指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定する表示制御方法。
【請求項11】
表示システムであって、
画像供給部と、
画像供給装置から第1画像を取得する取得部と、
指示体を検出し、当該指示体の位置、および当該指示体が第1指示体か第2指示体かを特定する検出部と、
生成部と、
表示部と、
前記検出部によって当該指示体が検出された場合、前記表示システムが動作する動作モードと検出された当該指示体に応じて、当該指示体の位置を表す情報の供給先を前記生成部に指定する描画モードまたは前記供給先を前記画像供給装置に指定するマウスモードのいずれかに指定する指定部と、
当該指示体の位置を表す情報を該指定された供給先に供給する制御部と
を有し、
前記生成部は、前記第1画像と前記制御部から供給された指示体の位置を表す情報に基づいた第2画像とを重ねた第3画像を生成し、
前記表示部は、前記第3画像を表示し、
前記指定部は、
前記動作モードが第1動作モードである場合に、前記第1指示体については前記描画モードに指定し、前記第2指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定し、
前記動作モードが第2動作モードである場合に、前記第1指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定し、前記第2指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定する表示システム。」

(2)引用文献、引用発明等
ア 引用文献1
(ア)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。

a 「

」(第9頁)

b 「

」(第9頁)

c 「

」(第64頁)

d 「

」(第69頁)

e 「

」(85頁)

f 「

」(88頁)

g 「

」(88頁)

引用文献1は、そのタイトルからして、「Offirio EB-1410WT」なる製品の取扱説明書であるから、「Offirio EB-1410WT」(以下、「本製品」と省略して記載する場合がある。)について記載されていると認められる。
上記aより、本製品は、「電子ペン」(Easy Interactive Pen)を使用して、「投写した画面に描画する」、「投写した画面からマウス操作をする」といった「インタラクティブ機能」を備えている。
上記bより、本製品は、ネットワーク上のコンピューターと接続してコンピューターの画面を投写する機能を備えている。
上記cより、本製品は、前記「インタラクティブ機能」として「3つのモード」を備え、そのうちの1つは、「PCレスインタラクティブ」モードであり、他の1つは、「マウス操作」モードである。また、上記aと上記cの表の「説明」の欄を参酌すると、「PCレスインタラクティブ」モードは、投写したコンピューターの画面上に文字や図形の描画を行うモードであり、「マウス操作」モードは、電子ペンを使用して、コンピューターのマウスを操作するモードである。
上記dより、本製品は、Easy Interactive Pen(電子ペン)を2人同時に使用できるように構成されている。
上記eより、本製品は、マウス操作中は描画できないように構成されている。
上記fより、本製品は、Easy Interactive Pen(電子ペン)で、投写画上でペンモードアイコンを押すことにより、PCインタラクティブでの描画(「PCレスインタラクティブ」モード)とマウス操作(「マウス操作」モード)とを切り替える機能を備えている。

(イ)引用発明
前記(ア)より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 Offirio EB-1410WTであって、
ネットワーク上のコンピューターと接続してコンピューターの画面を投写する機能と、
電子ペンを使用したインタラクティブ機能とを有し、
インタラクティブ機能は、電子ペンを使用して投写したコンピューターの画面上に文字や図形の描画を行う「PCレスインタラクティブ」モードと、コンピューターのマウスを操作する「マウス操作」モードとを含み、
投写画上でペンモードアイコンを押すことにより、「PCレスインタラクティブ」モードと「マウス操作」モードとを切り替える機能を備え
電子ペンを2人同時に使用できるように構成され、
マウス操作中は描画できないように構成されている、
Offirio EB-1410WT。」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の【0005】及び【0006】に記載の技術事項からして、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

「 電子ホワイトボードにおいて、複数の利用者によって複数のペン型入力器が用いられて描画が行われる場合に対応するものであって、
自器の識別データを夫々有し、描画に係る指示を行なう複数の描画器から、該指示を受け付け、該指示に基づいて画像が表示される表示画面を有する描画装置において、前記表示画面上の各描画器の位置を検出し、検出した描画器の位置に基づき、描画に係る設定を受け付ける設定受付画像を、描画器の数だけ表示することにより、複数の描画器が用いられる場合に対して対応できるうえで、描画を行うにあたり、各利用者の利便性を高めることができる描画装置。」

ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の【請求項1】及び【0001】に記載の技術事項からして、引用文献3には、次の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

「 所定の形状の筐体と、
この筐体内側に形成され、所定の色が付された指示物体の挿入を受け付ける座標入力領域と、
前記筐体に所定の間隔で配置される複数のカラー撮像素子を有して前記座標入力領域全体を撮像する画像入力手段と、
前記座標入力領域に前記指示物体が存在しない状態で前記画像入力手段により撮像された基準画像を記憶する基準画像記憶手段と、
前記座標入力領域に挿入された前記指示物体を前記画像入力手段により撮像した撮影画像からその指示物体の被写体像のみの画像を前記基準画像記憶手段に記憶された前記基準画像に基づいて抽出する画像抽出手段と、
この画像抽出手段により抽出された前記被写体像の各カラー撮像素子上の結像位置に基づいて挿入された前記指示物体によって指示された座標情報を検出する座標情報検出手段と、
前記画像抽出手段により抽出された前記被写体像に基づいて挿入された前記指示物体の色情報を検出する色情報検出手段と、を備える座標入力/検出装置(電子黒板システム)。」

エ 引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4の【請求項1】及び【請求項3】に記載の技術事項からして、引用文献4には、次の事項(以下、「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。

「 ペンによって入力フィールド内に手書き入力を行い、または画面上のオブジェクトをペンタッチして指示を入力するペン入力情報処理装置において、
同一入力画面にペン入力するための複数個のペンと、
前記複数個のペンを個々に識別するためのペン識別情報を生成するペン識別情報生成手段と、
前記画面上のオブジェクト毎にペンタッチによる指示入力の許可、不許可の値を、前記ペン識別情報毎に設定する手段と、
前記画面上のオブジェクトにペンタッチによる指示入力をされた時に、当該ペンの前記ペン識別情報と当該オブジェクトの前記ペンタッチ許可または不許可の設定値とから当該ペンタッチによる指示入力が有効か無効かを決定し、有効の場合のみ当該入力をオペレーティングシステムまたは後続アプリケーションソフトウェアに伝える手段と、を有することを特徴とするペン入力情報処理装置。」

オ 引用文献5
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5の第3頁左下欄第3行?第4頁左上欄第13行に記載の技術事項からして、引用文献5には、次の事項(以下、「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。

「 2つの電子ペンに同時に入力がなされる手書きタブレットにおいて、
オペレータの電子ペン7_(1)及び顧客の電子ペン7_(2)のそれぞれは、予めペン番号が設定されており、どちら側の電子ペンからの入力であるかを識別できるようになっており、
電子ペン7_(1)と電子ペン7_(2)によって入力されたストロークは同時にディスプレイに表示されるが、電子ペン7_(1)によって手書き文字入力領域にデータを入力した場合は、文字認識が行われるが、電子ペン7_(2)によってデータ入力を行っても文字認識が行われない、
手書きタブレット。」

カ 引用文献6
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6の【要約】に記載の技術事項からして、引用文献6には、次の事項(以下、「引用文献6記載事項」という。)が記載されている。

「 表示画面上の予め定められた特定領域が操作されると、当該操作が専用ペンにより行われたか否かを判断し、専用ペンにより操作された場合は、予め定められた特定処理を実行し、指により操作された場合は、当該操作を無効にする情報処理装置。」

(3)本願発明1
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明の「Offirio EB-1410WT」は、「コンピューターの画面を投写する機能」や、「投写したコンピューターの画面上に文字や図形の描画を行う」機能を備えているから、「表示装置」といい得るものである。
よって、引用発明の「Offirio EB-1410WT」と、本願発明1の「表示装置」とは、後述する相違点を除き、「表示装置」である点において一致している。

(イ)引用発明の「Offirio EB-1410WT」は、「ネットワーク上のコンピューターと接続してコンピューターの画面を投写する機能」を備えるから、「コンピューター」からネットワークを介して、投写する「画面」を取得しており、その取得のための「取得部」を備えている。また、逆の見方をすると、「コンピューター」は、画像である「画面」を「Offirio EB-1410WT」に供給する「画像供給装置」といい得るものである。また、投写する「画面」を「第1画像」と称することは任意である。
そうすると、引用発明は、本願発明1の「画像供給装置から第1画像を取得する取得部」との構成を備える。

(ウ)引用発明の「Offirio EB-1410WT」は、「電子ペンを2人同時に使用できるように構成され」ているが、「電子ペン」は、「指示体」といい得るものであって、「電子ペンを2人同時に使用」する場合は、2本の電子ペン、すなわち、2つの「指示体」が使用されることになる。
これら「指示体」を「第1指示体」、「第2指示体」と称することは任意である。
なお、本願発明1は、「当該指示体が第1指示体か第2指示体かを特定する」機能を備えているから、「第1指示体」と「第2指示体」とが用いられるものと理解することができる。
また、引用発明の「電子ペンを使用して投写したコンピューターの画面上に文字や図形の描画を行う」は、「電子ペン」に係る技術常識を考慮すれば、「電子ペン」が指し示す位置を検出して文字や図形の描画を行うものと理解することができ、また、引用発明の「Offirio EB-1410WT」は、そのような検出のための「検出部」を備えているといえる。
よって、引用発明と本願発明1の「指示体を検出し、当該指示体の位置、および当該指示体が第1指示体か第2指示体かを特定する検出部」とは、「第1指示体と第2指示体とが用いられ、指示体を検出し、当該指示体の位置を特定する検出部」を備える点において共通する。

(エ)引用発明において、「電子ペンを使用して投写したコンピューターの画面上に文字や図形の描画を行う」場合、「Offirio EB-1410WT」は、「コンピュータの画面」(第1画像)に、電子ペンによって描画される文字や図形に相当する画像(「第2画像」と称することは任意。)とを重ねた新たな画像(「第3画像」と称することは任意。)を生成して投写するものと理解することができる。
そして、「Offirio EB-1410WT」は、そのような生成のための「生成部」を備えているといえる。
よって、引用発明は、本願発明1の「生成部」に相当する手段を備えている。

(オ)前記(エ)より、引用発明は、新たな画像(第3画像)を投写、すなわち表示する「表示部」を備えている。
よって、引用発明は、本願発明1の「表示部」に相当する手段を備えている。

(カ)引用発明は、「投写画上でペンモードアイコンを押すことにより、『PCレスインタラクティブ』モードと『マウス操作』モードとを切り替える機能」を備える一方、「マウス操作中は描画できないように構成されている」との構成を備えていることから、「電子ペンを使用したインタラクティブ機能」において、「『PCレスインタラクティブ』モード」と「『マウス操作』モード」は排他的であり、「Offirio EB-1410WT」においては、電子ペンが使用されるとき、すなわち、電子ペンの位置が検出された場合には、設定に基づいて、前記のいずれか一方のモードを指定しているといえ、その指定のための「指定部」を備えているといえる。
また、前記(エ)より、「電子ペンを使用して投写したコンピューターの画面上に文字や図形の描画を行う『PCレスインタラクティブ』モード」においては、「生成部」に相当する機能部に電子ペンの指し示す位置を供給しているといえる。
そうすると、引用発明の「『PCレスインタラクティブ』モード」は、本願発明1の「当該指示体の位置を表す情報の供給先を前記生成部に指定する描画モード」に相当する。
また、引用発明の「コンピューターのマウスを操作する『マウス操作』モード」は、コンピューターのマウスを操作するために、電子ペンの指し示す位置を表す情報をコンピューターに供給しているといえる。
そうすると、引用発明の「『マウス操作』モード」は、本願発明1の「前記供給先を前記画像供給装置に指定するマウスモード」に相当する。
以上より、引用発明と本願発明1の「前記検出部によって当該指示体が検出された場合、前記表示装置が動作する動作モードと検出された当該指示体に応じて、当該指示体の位置を表す情報の供給先を前記生成部に指定する描画モードまたは前記供給先を前記画像供給装置に指定するマウスモードのいずれかに指定する指定部」とは、「前記検出部によって当該指示体が検出された場合、当該指示体の位置を表す情報の供給先を前記生成部に指定する描画モードまたは前記供給先を前記画像供給装置に指定するマウスモードのいずれかに指定する指定部」との構成を備える点において共通する。

(キ)前記(カ)より、引用発明は、電子ペン(指示体)の位置を表す情報を指定された供給先に供給する機能を有し、そのための「制御部」を備えていることは明らかである。
よって、引用発明は、本願発明1の「当該指示体の位置を表す情報を該指定された供給先に供給する制御部」を備える。

(ク)前記(エ)より、引用発明は、本願発明1の「前記生成部は、前記第1画像と前記制御部から供給された指示体の位置を表す情報に基づいた第2画像とを重ねた第3画像を生成し」との構成を備える。

(ケ)前記(エ)及び(オ)より、引用発明は、本願発明1の「前記表示部は、前記第3画像を表示し」との構成を備える。

イ 一致点・相違点
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「 表示装置であって、
画像供給装置から第1画像を取得する取得部と、
第1指示体と第2指示体とが用いられ、指示体を検出し、当該指示体の位置を特定する検出部と、
生成部と、
表示部と、
前記検出部によって当該指示体が検出された場合、当該指示体の位置を表す情報の供給先を前記生成部に指定する描画モードまたは前記供給先を前記画像供給装置に指定するマウスモードのいずれかに指定する指定部と、
当該指示体の位置を表す情報を該指定された供給先に供給する制御部と
を有し、
前記生成部は、前記第1画像と前記制御部から供給された指示体の位置を表す情報に基づいた第2画像とを重ねた第3画像を生成し、
前記表示部は、前記第3画像を表示する、表示装置。」

[相違点]
<相違点1>
「検出部」が、本願発明1は、「当該指示体が第1指示体か第2指示体かを特定する」機能を備えるのに対し、引用発明はそのような機能を特定していない点。

<相違点2>
「指定部」による「描画モード」又は「マウスモード」のいずれかの「指定」が、本願発明1は、「前記表示装置が動作する動作モードと検出された当該指示体に応じて」なされるとともに、具体的には、「前記動作モードが第1動作モードである場合に、前記第1指示体については前記描画モードに指定し、前記第2指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定し、/ 前記動作モードが第2動作モードである場合に、前記第1指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定し、前記第2指示体については前記描画モードまたは前記マウスモードのいずれかに指定する」という構成を備えるのに対し、引用発明は、「表示装置が動作する動作モード」並びに「第1動作モード」及び「第2動作モード」といったモードがなく、「『PCレスインタラクティブ』モード」と「『マウス操作』モード」のいずれかの指定は、投写画上でペンモードアイコンを押すことによる設定によりなされており、前記のような「動作モード」と「指示体」に応じてなされていない点。

ウ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本願発明1の「前記表示装置が動作する動作モードと検出された当該指示体に応じて、描画モードまたは…マウスモードのいずれかに指定する指定部」という構成(以下、「相違点構成」という。)は、引用文献2ないし6には記載されておらず、また、本願優先日前において周知技術であったともいえない。
なお、引用文献4記載事項ないし引用文献6記載事項からすると、2つの指示体のそれぞれに個別に異なる入力モードを指定でき、指示体の位置が検出された場合に指示体に応じて入力モードを指定することは、本願優先日前において周知技術であったと認められる。
しかしながら、表示装置が「動作モード」を備え、「動作モード」と「指示体」とに応じて、モードを指定するという技術思想は、いずれの引用文献にも記載されておらず、本願優先日前における、表示装置における技術常識又は周知技術を勘案しても、自明なものということはできない。

エ 小括
したがって、本願発明1は、原査定に引用された引用文献1ないし3に記載された発明及び前置報告書において新たに引用された引用文献4ないし6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
また、他に本願発明1を拒絶すべき理由を発見しない。

(4)本願発明2ないし9
本願発明2ないし9も、上記相違点構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、原査定において引用された引用文献1ないし3に記載された発明及び前置報告書において新たに引用された引用文献4ないし6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また、他に本願発明2ないし9を拒絶すべき理由を発見しない。

(5)本願発明10及び11
本願発明10は本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明11は本願発明1に対応するシステムの発明であり、上記相違点構成に相当する構成を備えるものであるから、当業者であっても、原査定において引用された引用文献1ないし3に記載された発明及び前置報告書において新たに引用された引用文献4ないし6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また、他に本願発明10及び11を拒絶すべき理由を発見しない。

(6)小括
以上のとおり、本願発明1ないし11は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第6項に適合するものである。

4 審判請求時の補正の適否についてのまとめ
以上のとおり、審判請求時の補正は適法になされたものである。

第4 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし11は上記相違点構成を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし3に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の拒絶の理由を維持することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-10-30 
出願番号 特願2015-31434(P2015-31434)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅原 浩二  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 林 毅
野崎 大進
発明の名称 表示装置、表示制御方法および表示システム  
代理人 仲井 智至  
代理人 松岡 宏紀  
代理人 渡辺 和昭  

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