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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G03F |
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管理番号 | 1367682 |
審判番号 | 不服2020-1685 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-02-06 |
確定日 | 2020-11-17 |
事件の表示 | 特願2015- 82037「ネガ型レジストパターン形成方法及び上層膜形成用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日出願公開、特開2016-200761、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続等の経緯 特願2015-82037号(以下「本件出願」という。)は、平成27年4月13日にされた特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 平成30年11月12日付け:拒絶理由通知書 平成31年 1月18日提出:意見書・手続補正書 令和 元年 5月 9日付け:拒絶理由通知書 令和 元年 6月28日提出:意見書・手続補正書 令和 元年11月 7日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和 2年 2月 6日提出:審判請求書 2 原査定の概要 原査定の拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項6?8、10?12、14?15に係る発明(令和元年6月28日にした手続補正後のもの)は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記の引用文献に記載された発明と同一であるか、又は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項3号に該当するか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 引用文献1:特開2014-215549号公報 3 本願発明 本件出願の請求項1?請求項15に係る発明は、令和元年6月28日にした手続補正(以下「本件補正」という。)後の特許請求の範囲の請求項1?請求項15に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。 「 【請求項1】 レジスト膜を形成する工程、 上記レジスト膜の一方の面に上層膜形成用組成物により上層膜を形成する工程、 上記上層膜が形成されたレジスト膜を液浸露光する工程、及び 有機溶媒を含有する現像液で上記液浸露光されたレジスト膜を現像する工程 を備え、 上記上層膜形成用組成物が、 異なる重合体中に、脂環構造を含む第1構造単位を有する第1重合体と、下記式(2)で表される基を含む構造単位(II-1)及びフッ素化アルキル基を含む構造単位(II-2)を有する第2重合体とを含む重合体成分、及び 溶媒 を含有し、 上記重合体成分中のフッ素原子含有率が2質量%以上15質量%以下であるネガ型レジストパターン形成方法。 【化1】 (式(2)中、R^(A)は、水素原子又は炭素数1?20の1価の有機基である。R^(B)及びR^(C)は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1?20のフッ素化アルキル基である。) 【請求項2】 上記構造単位(II-2)が下記式(3)で表される請求項1に記載のネガ型レジストパターン形成方法。 【化2】 (式(3)中、R^(H)は、水素原子、メチル基、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。R^(I)は、1価のフッ素化アルキル基である。) 【請求項3】 上記第2重合体に対する上記第1重合体の質量比が、10/90以上95/5以下である請求項1又は請求項2に記載のネガ型レジストパターン形成方法。 【請求項4】 上記脂環構造が多環構造である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のネガ型レジストパターン形成方法。 【請求項5】 上記重合体成分を構成する全構造単位に対する上記第1構造単位の含有割合が、20モル%以上95モル%以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のネガ型レジストパターン形成方法。 【請求項6】 レジスト膜を形成する工程、 上記レジスト膜の一方の面に上層膜形成用組成物により上層膜を形成する工程、 上記上層膜が形成されたレジスト膜を液浸露光する工程、及び 有機溶媒を含有する現像液で上記液浸露光されたレジスト膜を現像する工程 を備え、 上記上層膜形成用組成物が、 同一の重合体中に、脂環構造を含む第1構造単位と、上記第1構造単位以外のフッ素原子を含む第2構造単位とを有する重合体成分、及び 溶媒 を含有し、 上記重合体成分中のフッ素原子含有率が2質量%以上30質量%以下であり、 上記脂環構造が多環構造であり、 上記第2構造単位が下記式(2)で表される基を含み、 上記重合体成分を構成する全構造単位に対する上記第1構造単位の含有割合が、40モル%以上95モル%以下であるネガ型レジストパターン形成方法。 【化3】 (式(2)中、R^(A)は、水素原子又は炭素数1?20の1価の有機基である。R^(B)及びR^(C)は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1?20のフッ素化アルキル基である。) 【請求項7】 上記重合体成分中のフッ素原子含有率が25質量%以下である請求項6に記載のネガ型レジストパターン形成方法。 【請求項8】 上記第1構造単位が下記式(1-1)又は(1-2)で表される請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のネガ型レジストパターン形成方法。 【化4】 (式(1-1)中、R^(1)は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Lは、単結合又は炭素数1?20の2価の有機基である。R2は、置換又は非置換の環員数3?20の1価の脂環式炭化水素基である。 式(1-2)中、R^(1’)は、水素原子又はメチル基である。Y^(1)、Y^(2)及びY^(3)は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1?20の1価の有機基である。aは、1?4の整数である。aが2以上の場合、複数のY^(1)は同一でも異なっていてもよく、複数のY^(2)は同一でも異なっていてもよい。L’は、単結合又は炭素数1?20の2価の有機基である。R^(2’)は、置換又は非置換の環員数3?20の1価の脂環式炭化水素基である。) 【請求項9】 上記式(1-1)におけるR^(2)及び上記式(1-2)におけるR^(2’)の脂環式炭化水素基が非置換である請求項8に記載のネガ型レジストパターン形成方法。 【請求項10】 上記溶媒が、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、環状エーテル系溶媒、アルコール系溶媒又はこれらの組み合わせからなる請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のネガ型レジストパターン形成方法。 【請求項11】 上記現像工程で用いられる現像液の有機溶媒が、エステル系溶媒、ケトン系溶媒又はこれらの組み合わせを含む請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のネガ型レジストパターン形成方法。 【請求項12】 上記液浸露光工程後、上記現像工程と同時又はその前に、上記上層膜を除去する工程をさらに備える請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のネガ型レジストパターン形成方法。 【請求項13】 有機溶媒を含有する現像液を用いるネガ型レジストパターン形成方法に用いられる上層膜形成用組成物であって、 異なる重合体中に、脂環構造を含む第1構造単位を有する第1重合体と、下記式(2)で表される基を含む構造単位(II-1)及びフッ素化アルキル基を含む構造単位(II-2)を有する第2重合体とを含む重合体成分、及び 溶媒 を含有し、 上記重合体成分中のフッ素原子含有率が2質量%以上15質量%以下であることを特徴とする上層膜形成用組成物。 【化5】 (式(2)中、R^(A)は、水素原子又は炭素数1?20の1価の有機基である。R^(B)及びR^(C)は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1?20のフッ素化アルキル基である。) 【請求項14】 有機溶媒を含有する現像液を用いるネガ型レジストパターン形成方法に用いられる上層膜形成用組成物であって、 同一の重合体中に、脂環構造を含む第1構造単位と、上記第1構造単位以外のフッ素原子を含む第2構造単位とを有する重合体成分、及び 溶媒 を含有し、 上記重合体成分中のフッ素原子含有率が2質量%以上30質量%以下であり、 上記脂環構造が多環構造であり、 上記第2構造単位が下記式(2)で表される基を含み、 上記重合体成分を構成する全構造単位に対する上記第1構造単位の含有割合が、40モル%以上95モル%以下であることを特徴とする上層膜形成用組成物。 【化6】 (式(2)中、R^(A)は、水素原子又は炭素数1?20の1価の有機基である。R^(B)及びR^(C)は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1?20のフッ素化アルキル基である。) 【請求項15】 上記現像液の有機溶媒が、エステル系溶媒、ケトン系溶媒又はこれらの組み合わせを含む請求項13又は請求項14に記載の上層膜形成用組成物。」 第2 当合議体の判断 1 引用文献の記載及び引用発明 (1)引用文献1について 原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2014-215549号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に係り、特に、異なるカチオンを有する2種以上の光酸発生剤を含む感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。 また、本発明は、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法にも関する。 【背景技術】 【0002】 従来より、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。 近年、集積回路の高集積化に伴い、より超微細パターン形成が要求されており、その対策として、例えば、特許文献1では新規な光酸発生剤を含む組成物を使用する方法が提案されている。特に、特許文献1においては、2種の光酸発生剤を含む組成物を用いた態様が具体的に開示されている。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 一方、パターン形成に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(レジスト膜形成用組成物)は、通常、購入後、所定時間保管した後、使用される。そのため、保管後においても、所望の効果が得られることが求められる。 本発明者らは、特許文献1に具体的に開示されている2種の光酸発生剤を含む組成物を所定時間保管した後、その特性を評価した所、パターン形成時において現像欠陥が生じやすく、LWR(line width roughness)も大きくなることを知見した。 【0005】 本発明は、上記実情に鑑みて、長期保管後も現像欠陥が生じにくく、LWRの劣化も抑制される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供することを目的とする。 また、本発明は、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法を提供することも目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは、従来技術の問題点について鋭意検討した結果、所定のカチオンを含む2種の光酸発生剤を含む感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を使用することにより、上記課題を解決できることを見出した。 すなわち、以下の構成により上記目的を達成することができることを見出した。 【0007】 (1) 少なくとも2種の光酸発生剤(A)、及び、酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂(B)を含有し、 光酸発生剤が、後述する一般式(A-1)で表される光酸発生剤、及び、後述する一般式(A-2)で表される光酸発生剤を少なくとも含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (2) Z^(1)及びZ^(2)のうち、一方は一般式(C-1)又は(C-2)で表されるカチオンであり、他方は一般式(C-3)で表されるカチオンである、(1)に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (3) 一般式(A-1)中のA^(1)及び一般式(A-2)中のA^(2)が、両方とも一般式(B-1)で表されるアニオンである、(1)または(2)に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (4) 光酸発生剤の総含有量が、組成物中の全固形分に対して、12?30質量%である、(1)?(3)のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (5) 一般式(C-1)又は(C-2)で表されるカチオンを有する光酸発生剤の含有量が、組成物中の全固形分に対して、6?25質量%である、(1)?(4)のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (6) 一般式(C-1)又は(C-2)で表されるカチオンを有する光酸発生剤の合計質量W1と、一般式(C-3)で表されるカチオンを有する光酸発生剤の質量W2との混合比(W1/W2)が1.0?9.0である、(1)?(5)のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (7) pが1である、(1)?(6)のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (8) qが2である、(1)?(7)のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (9) Yが置換又は無置換のアダマンチル基である、(1)?(8)のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (10) L^(2)が*^(1)-OCO-*^(2)基(*^(1)で(CR^(1)R^(2))qと結合し、*^(2)でYと結合する)である、(1)?(9)のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (11) L^(1)が単結合である、(1)?(10)のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (12) L^(1)が*^(1)-COO-*^(2)基(*^(1)で(CQ^(1)Q^(2))pと結合し、*^(2)で(CR^(1)R^(2))qと結合する)である、(1)?(10)のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (13) 樹脂(B)が、後述する一般式(nI)又は(nII)で表される繰り返し単位を有する、(1)?(12)のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (14) (1)?(13)のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を含む膜を形成する膜形成工程と、 膜に活性光線又は放射線を照射する露光工程と、 現像液を用いて活性光線又は放射線を照射した膜を現像する現像工程とを備える、パターン形成方法。 (15) 現像工程が、有機溶剤を含む現像液により現像を行う工程を含む、(14)に記載のパターン形成方法。 (16) 有機溶剤を含む現像液により現像を行う工程を含むパターン形成方法に使用される、(1)?(13)のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。」 ウ 「【発明の効果】 【0008】 本発明によれば、長期保管後も現像欠陥が生じにくく、LWRの劣化も抑制される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供することができる。 また、本発明によれば、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法を提供することができる。 【0011】 本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の特徴点としては、特定のカチオンを含む2種以上の光酸発生剤を使用している点が挙げられる。本発明者らは、従来技術の問題点について鋭意検討を行った結果、長期保管中における光酸発生剤の結晶化が上記問題の原因であることを知見している。つまり、組成物を長期保管すると、組成物中における光酸発生剤が結晶化して凝集するため、上記現像欠陥の発生や、LWRの劣化を引き起こすことを知見している。そこで、本発明者らは、特定のカチオンを含む2種以上の光酸発生剤を用いることにより、組成物の長期保管中に光酸発生剤の結晶化が抑制され、結果として所望の効果が得られることを見出している。 【0012】 本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以後、単に「組成物」とも称する)には、少なくとも2種の光酸発生剤(A)、及び、酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂(B)が含有される。 以下では、まず、組成物中に含まれる各成分について詳述する。 【0013】 <光酸発生剤(A)> 本発明の組成物中には、少なくとも2種の光酸発生剤(A)が含まれ、一般式(A-1)で表される光酸発生剤、及び、一般式(A-2)で表される光酸発生剤が少なくとも含まれる。なお、後述するように、一般式(A-1)で表される光酸発生剤、及び、一般式(A-2)で表される光酸発生剤は、少なくともカチオン部分の構造が異なる。 以下では、まず、以下の式で表される光酸発生剤について詳述する。 ・・・中略・・・ 【0081】 <酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂(B)> 本発明の組成物は、酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」又は「樹脂(B)」ともいう。)を含有する。 酸分解性樹脂は、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する。 樹脂(B)は、好ましくはアルカリ現像液に不溶又は難溶性である。 酸分解性基は、アルカリ可溶性基を酸の作用により分解し脱離する基で保護された構造を有することが好ましい。 ・・・中略・・・ 【0140】 <その他の成分> 組成物には、上記光酸発生剤(A)及び樹脂(B)以外の成分が含まれていてもよい。 以下に、任意の成分について詳述する。 【0141】 (酸拡散制御剤) 本発明の組成物は、酸拡散制御剤を含有することが好ましい。酸拡散制御剤は、光酸発生剤等から発生する酸をトラップするクエンチャーとして作用するものである。酸拡散制御剤としては、塩基性化合物、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物、光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩を使用することができる。」 エ 「【0189】 (疎水性樹脂(D)) 本発明の組成物は、特に液浸露光に適用する際、疎水性樹脂(以下、「疎水性樹脂(D)」又は単に「樹脂(D)」ともいう)を含有してもよい。なお、疎水性樹脂(D)は樹脂(B)とは異なることが好ましい。 これにより、膜表層に疎水性樹脂(D)が偏在化し、液浸媒体が水の場合、水に対するレジスト膜表面の静的/動的な接触角を向上させ、液浸液追随性を向上させることができる。 疎水性樹脂(D)は前述のように界面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくても良い。 【0190】 疎水性樹脂(D)は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“珪素原子”、及び、“樹脂の側鎖部分に含有されたCH_(3)部分構造”のいずれか1種以上を有することが好ましく、2種以上を有することが更に好ましい。 疎水性樹脂(D)が、フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合、疎水性樹脂(D)に於ける上記フッ素原子及び/又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。 【0191】 疎水性樹脂(D)がフッ素原子を含んでいる場合、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。 フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1?10、より好ましくは炭素数1?4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。 フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環又は多環のシクロアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。 フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。 【0192】 フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、及びフッ素原子を有するアリール基として、好ましくは、下記一般式(F2)?(F4)で表される基を挙げることができるが、本発明は、これに限定されるものではない。 【0193】 【化43】 【0194】 一般式(F2)?(F4)中、 R_(57)?R_(68)は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基(直鎖若しくは分岐)を表す。但し、R_(57)?R_(61)の少なくとも1つ、R_(62)?R_(64)の少なくとも1つ、及びR_(65)?R_(68)の少なくとも1つは、それぞれ独立に、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1?4)を表す。 R_(57)?R_(61)及びR_(65)?R_(67)は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R_(62)、R_(63)及びR_(68)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1?4)が好ましく、炭素数1?4のパーフルオロアルキル基であることが更に好ましい。R_(62)とR_(63)は、互いに連結して環を形成してもよい。 【0195】 一般式(F2)で表される基の具体例としては、例えば、p-フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。 一般式(F3)で表される基の具体例としては、米国特許出願公開2012/0251948号明細書の段落[0500]に例示されたものを挙げることができる。 一般式(F4)で表される基の具体例としては、例えば、-C(CF_(3))_(2)OH、-C(C_(2)F_(5))_(2)OH、-C(CF_(3))(CH_(3))OH、-CH(CF_(3))OH等が挙げられ、-C(CF_(3))_(2)OHが好ましい。 フッ素原子を含む部分構造は、主鎖に直接結合してもよく、更に、アルキレン基、フェニレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びウレイレン結合よりなる群から選択される基、或いはこれらの2つ以上を組み合わせた基を介して主鎖に結合してもよい。 ・・・中略・・・ 【0199】 また、上記したように、疎水性樹脂(D)は、側鎖部分にCH_(3)部分構造を含むことも好ましい。 ここで、疎水性樹脂(D)中の側鎖部分が有するCH_(3)部分構造(以下、単に「側鎖CH_(3)部分構造」ともいう)には、エチル基、プロピル基等が有するCH_(3)部分構造を包含するものである。 一方、疎水性樹脂(D)の主鎖に直接結合しているメチル基(例えば、メタクリル酸構造を有する繰り返し単位のα-メチル基)は、主鎖の影響により疎水性樹脂(D)の表面偏在化への寄与が小さいため、本発明におけるCH_(3)部分構造に包含されないものとする。 ・・・中略・・・ 【0203】 疎水性樹脂(D)は、側鎖部分にCH_(3)部分構造を有する繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましく、このような繰り返し単位として、下記一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、下記一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)を有していることがより好ましい。 【0204】 以下、一般式(II)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。 【0205】 【化46】 【0206】 上記一般式(II)中、X_(b1)は水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、R_(2)は1つ以上のCH_(3)部分構造を有する、酸に対して安定な有機基を表す。ここで、酸に対して安定な有機基は、より具体的には、樹脂(B)において説明した“酸分解性基”を有さない有機基であることが好ましい。 ・・・中略・・・ 【0212】 以下、一般式(III)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。 【0213】 【化48】 【0214】 上記一般式(III)中、X_(b2)は水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、R_(3)は1つ以上のCH_(3)部分構造を有する、酸に対して安定な有機基を表し、nは1から5の整数を表す。 X_(b2)のアルキル基は、炭素数1?4のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基等が挙げられるが、水素原子であることが好ましい。X_(b2)は、水素原子であることが好ましい。 ・・・中略・・・ 【0222】 また、疎水性樹脂(D)は、(i)フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合においても、(ii)側鎖部分にCH_(3)部分構造を含む場合においても、下記(x)?(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有していてもよい。 (x)酸基、 (y)ラクトン構造を有する基、酸無水物基、又は酸イミド基、 (z)酸の作用により分解する基 ・・・中略・・・ 【0231】 疎水性樹脂(D)は、更に、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有していてもよい。 【0232】 【化52】 ・・・中略・・・ 【0245】 以下に疎水性樹脂(D)の具体例を示す。また、下記表に、各樹脂における繰り返し単位のモル比(各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量、分散度を示す。 【0246】 【化55】 【0247】 【化56】 【0248】 【化57】 【0249】 【表1】 ・・・中略・・・ 【0253】 (溶剤) 組成物は、溶剤を含有していてもよい。 組成物を調製する際に使用することができる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4?10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4?10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。 これらの溶剤の具体例は、米国特許出願公開2008/0187860号明細書の段落[0441]?[0455]に記載のものを挙げることができる。 ・・・中略・・・ 【0265】 <パターン形成方法> 次に、本発明に係るパターン形成方法について説明する。 本発明のパターン形成方法は特に制限されないが、 (ア)上記組成物を含む膜(以後、レジスト膜とも称する)を形成する膜形成工程、 (イ)該膜に活性光線又は放射線を照射する露光工程、及び (ウ)現像液を用いて上記活性光線又は放射線を照射した膜を現像する現像工程、 を少なくとも含むことが好ましい。 【0266】 上記工程(イ)における露光は、液浸露光であってもよい。 本発明のパターン形成方法は、(イ)露光工程の後に、(エ)加熱工程を含むことが好ましい。 本発明のパターン形成方法は、(イ)露光工程を、複数回含んでいてもよい。 本発明のパターン形成方法は、(エ)加熱工程を、複数回含んでいてもよい。 ・・・中略・・・ 【0273】 本発明における組成物を用いて形成した膜(レジスト膜)の後退接触角は温度23±3℃、湿度45±5%において70°以上であることが好ましく、液浸媒体を介して露光する場合に好適であり、75°以上であることがより好ましく、75?85°であることが更に好ましい。 【0274】 後退接触角が小さすぎると、液浸媒体を介して露光する場合に好適に用いることができず、かつ水残り(ウォーターマーク)欠陥低減の効果を十分に発揮することができない。好ましい後退接触角を実現する為には、疎水性樹脂(D)を組成物に含ませることが好ましい。あるいは、レジスト膜の上に、疎水性の樹脂組成物によるコーティング層(いわゆる「トップコート」)を形成することにより後退接触角を向上させてもよい。 【0275】 液浸露光工程に於いては、露光ヘッドが高速でウェハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウェハ上を動く必要があるので、動的な状態におけるレジスト膜に対する液浸液の接触角が重要になり、液滴が残存することなく、露光ヘッドの高速なスキャンに追随する性能がレジストには求められる。 【0276】 本発明において膜を形成する基板は特に限定されるものではなく、シリコン、SiN、SiO_(2)やSiN等の無機基板、SOG等の塗布系無機基板等、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造工程、更にはその他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程で一般的に用いられる基板を用いることができる。更に、必要に応じて、レジスト膜と基板の間に反射防止膜を形成させてもよい。反射防止膜としては、公知の有機系、無機系の反射防止膜を適宜用いることができる。 【0277】 本発明の組成物を用いて形成されたレジスト膜を現像する工程において使用する現像液は特に限定しないが、例えば、アルカリ現像液又は有機溶剤を含有する現像液(以下、有機系現像液とも言う)を用いることができる。 【0278】 本発明のパターン形成方法が、アルカリ現像液を用いて現像する工程を有する場合、使用可能なアルカリ現像液は特に限定されないが、一般的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%質量の水溶液が望ましい。また、アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。 アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1?20質量%である。 アルカリ現像液のpHは、通常10.0?15.0である。 アルカリ現像の後に行うリンス処理におけるリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。 また、現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。 【0279】 本発明のパターン形成方法が、有機溶剤を含有する現像液を用いて現像する工程を有する場合、当該現像液(以下、有機系現像液とも言う)としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。 ・・・中略・・・ 【0289】 現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。 【0290】 上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液をレジスト膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は好ましくは2mL/sec/mm^(2)以下、より好ましくは1.5mL/sec/mm^(2)以下、更に好ましくは1mL/sec/mm^(2)以下である。流速の下限は特に無いが、スループットを考慮すると0.2mL/sec/mm^(2)以上が好ましい。 吐出される現像液の吐出圧を上記の範囲とすることにより、現像後のレジスト残渣に由来するパターンの欠陥を著しく低減することができる。 【0291】 このメカニズムの詳細は定かではないが、恐らくは、吐出圧を上記範囲とすることで、現像液がレジスト膜に与える圧力が小さくなり、レジスト膜・レジストパターンが不用意に削られたり崩れたりすることが抑制されるためと考えられる。 なお、現像液の吐出圧(mL/sec/mm^(2))は、現像装置中の現像ノズル出口における値である。 現像液の吐出圧を調整する方法としては、例えば、ポンプなどで吐出圧を調整する方法や、加圧タンクからの供給で圧力を調整することで変える方法などを挙げることができる。 また、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。 【0292】 有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後には、リンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。 有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。 炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものを挙げることができる。 ・・・中略・・・ 【0298】 本発明のパターン形成方法は、アルカリ現像液を用いて現像を行う工程(アルカリ現像工程)、及び、有機溶剤を含む現像を用いて現像を行う工程(有機溶剤現像工程)の両方を組み合わせて使用することができる。これにより、より微細なパターンを形成することができる。 本発明において、有機溶剤現像工程によって露光強度の弱い部分が除去されるが、更にアルカリ現像工程を行うことによって露光強度の強い部分も除去される。このように現像を複数回行う多重現像プロセスにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターンとして残存させることができるため、通常より微細なパターンを形成できる(特開2008-292975号公報の段落[0077]と同様のメカニズム)。 アルカリ現像工程は、有機溶剤現像の前後どちらでも行うことができるが、有機溶剤現像工程の前に行うことがより好ましい。 【0299】 また、本発明は、上記した本発明のネガ型パターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及び、この製造方法により製造された電子デバイスにも関する。 本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載されるものである。」 オ 「【実施例】 【0300】 以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0301】 <1.光酸発生剤の合成> 実施例及び比較例で用いた光酸発生剤(A-1?A-23)を、以下の表3に示す。 なお、これらの光酸発生剤は、特開2009-167156、特開2011-16794、特開2011-251961、特開2011-13479、特開2010-44374の記載を参考に合成した。 【0302】 【表3】 【0303】 < 感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の調製> 下記表1に示す成分を溶剤に溶解させ、それぞれについて固形分濃度4質量%の溶液を調製し、これを0.05μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過して感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、レジスト組成物ともいう)を調製した。このレジスト組成物を、室温暗所に1ヶ月保管した後、下記の方法で評価し、結果を表1に示した。 表1における溶剤について、表中の数字は質量比である。 なお、表1において、レジスト組成物が疎水性樹脂(HR)を含有している場合、その使用形態を「添加」と標記した。レジスト組成物が疎水性樹脂(HR)を含有せず、膜を形成後、その上層に疎水性樹脂(HR)を含有するトップコート保護膜を形成させた場合、その使用形態を「TC」と標記した。 【0304】 【表4】 【0305】 【表5】 【0306】 【表6】 【0307】 【表7】 【0308】 上記表1中で使用した各種成分を以下にまとめて示す。 下記の各樹脂A?Hについて、繰り返し単位の組成比はモル比である。 また、表1中の疎水性樹脂に関しては、上述した明細書中で例示した疎水性樹脂の番号を示す。 【0309】 【化60】 【0310】 〔塩基性化合物〕 DIA:2,6-ジイソプロピルアニリン TEA:トリエタノールアミン DBA:N,N-ジブチルアニリン PBI:2-フェニルベンズイミダゾール PEA:N-フェニルジエタノールアミン 【0311】 〔酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物〕 【0312】 【化61】 【0313】 〔界面活性剤〕 W-1:メガファックF176(DIC(株)製)(フッ素系) W-2:メガファックR08(DIC(株)製)(フッ素及びシリコン系) W-3:PF6320(OMNOVA Solutions Inc.製)(フッ素系) W-4:トロイゾルS-366(トロイケミカル(株)製) 【0314】 〔溶剤〕 A1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA) A2:シクロヘキサノン A3:γ?ブチロラクトン B1:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) B2:乳酸エチル 【0315】 <評価> (パターン形成) 12インチのシリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29SR(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、膜厚98nmの反射防止膜を形成した。その上に、上記で調製したレジスト組成物を塗布し、95℃で、60秒間ベークを行い、膜厚120nmのレジスト膜を形成した。トップコートを用いる場合は、更にトップコート用樹脂をデカン/オクタノール(質量比9/1)に溶解させた3質量%の溶液を前述で得られたレジスト膜上に塗布し、85℃で、60秒間ベークを行い、膜厚50nmのトップコート層を形成した。 これに対し、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製 XT1700i、NA1.20、C-Quad、アウターシグマ0.981、インナーシグマ0.895、XY偏向)を用い、線幅48nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを通して露光した。液浸液としては、超純水を使用した。その後、90℃で60秒間加熱した後、酢酸ブチルで30秒間パドルして現像し、純水でパドルしてリンスした後、スピン乾燥してパターンを形成した。 【0316】 (LWR評価) 上記で得られたライン/スペース=1/1のラインパターン(ArF液浸露光:線幅48nm)について、走査型顕微鏡(日立社製S9380)で観察した。ラインパターンの長手方向のエッジ2μmの範囲について、線幅を50ポイント測定し、その測定ばらつきについて標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。 【0317】 (現像欠陥評価) ケー・エル・エー・テンコール社製の欠陥検査装置KLA2360(商品名)を用い、欠陥検査装置のピクセルサイズを0.16μmに、また閾値を20に設定して、ランダムモードで測定し、比較イメージとピクセル単位の重ね合わせによって生じる差異から抽出される画像欠陥を検出して、単位面積(1cm^(2))あたりの現像欠陥数を算出し、以下の基準で4段階にて評価した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。 A:0.2個/cm^(2)未満 B:0.2個/cm^(2)以上0.5個/cm^(2)未満 C:0.5個/cm^(2)以上1.0個/cm^(2)未満 D:1.0個/cm^(2)以上 【0318】 表1に示すように、本発明の組成物を用いた場合、長期保管後であっても現像欠陥の発生が抑制され、LWRの劣化も抑制されていた。 特に、2種のカチオン中のアニオンが共に、一般式(B-1)で表される実施例はすべて、現像欠陥が「A」であった。 また、実施例9、32及び33と、他の実施例との比較から分かるように、2種の光酸発生剤中のカチオンとして一般式(C-3)で表されるカチオンと、一般式(C-1)又は一般式(C-2)で表されるカチオンとを使用した場合、LWRがより小さく、優れた結果が得られた。 また、樹脂(B)として一般式(nI)又は(nII)で表される繰り返し単位を有する「H」を使用した場合は、実施例28と実施例34との比較からも分かるように、LWRがより小さく、優れた結果が得られた。 一方、特許文献1の実施例欄に記載される比較例1では、現像結果が多く、かつ、LWRも大きかった。また、カチオンの種類が同じである比較例3や、所定の光酸発生剤が使用されていない比較例4においても、比較例1と同様に、現像結果が多く、かつ、LWRも大きかった。」 カ 上記ア?オによれば、引用文献1の【0300】?【0318】には、実施例24として、「シリコンウエハー上に」、「レジスト膜を形成し」、更に「トップコート層を形成し」、「ArFエキシマレーザー液浸スキャナーを用い、露光し」、「酢酸ブチルで現像し」た「レジストパターン形成方法」が記載されている。そして、引用文献1の【0303】?【0306】から、「トップコート層」は、「HR-50」からなる「疎水性樹脂」を含有すると理解される。ここで、「HR-50」の化学構造及び繰り返し単位のモル比は、それぞれ引用文献1の【0248】【化57】及び【0249】【表1】に記載されたものである。 くわえて、引用文献1の【0001】及び【0008】には、当該文献において「本発明」とされる発明の技術分野及び発明の効果が記載されている。 以上勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (イ)引用発明 「シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29SRを塗布し、反射防止膜を形成し、その上に、調製したレジスト組成物を塗布し、レジスト膜を形成し、更にトップコート用樹脂をデカン/オクタノール(質量比9/1)に溶解させた3質量%の溶液をレジスト膜上に塗布し、トップコート層を形成し、ArFエキシマレーザー液浸スキャナーを用い、露光し、90℃で60秒間加熱した後、酢酸ブチルで30秒間パドルして現像し、純水でパドルしてリンスした後、スピン乾燥して形成したレジストパターン形成方法であって、 トップコート層は、疎水性樹脂(HR-50) を繰り返し単位のモル比(50/50)で含有し、 感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に係り、特に、異なるカチオンを有する2種以上の光酸発生剤を含む感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用い、 長期保管後も現像欠陥が生じにくく、LWRの劣化も抑制されるネガ型パターン形成方法。」 2 対比及び判断 (1)対比 本件補正後の請求項6に係る発明(以下「本願発明6」という。)と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 ア レジスト膜を形成する工程 引用発明の「シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29SRを塗布し、反射防止膜を形成し、その上に、調製したレジスト組成物を塗布し、レジスト膜を形成」する工程は、技術的にみて、本願発明6の「レジスト膜を形成する工程」に相当する。 イ 上層膜形成用組成物により上層膜を形成する工程 引用発明の「トップコート用樹脂」は、「HR-50」を含み、「HR-50」は、化学構造からみて、「HR-50」のフッ素原子を含まない構造単位は、本願発明6の「脂環構造を含む第1構造単位」に相当し、「HR-50」のフッ素原子を含む構造単位は、本願発明6の「第1構造単位以外のフッ素原子を含む第2構造単位」に相当する。そうすると、引用発明の「HR-50」は、本願発明6の「同一の重合体中に、脂環構造を含む第1構造単位と、上記第1構造単位以外のフッ素原子を含む第2構造単位とを有する重合体成分」に相当する。また、引用発明の「HR-50」は、その化学構造から、本願発明6の「上記第2構造単位が下記式(2)で表される基を含み」という要件を満たす。さらに、引用発明の「HR-50」の「繰り返し単位のモル比」は、「50/50」であるから、本願発明6の「上記重合体成分を構成する全構造単位に対する上記第1構造単位の含有割合が、40モル%以上95モル%以下である」という要件を満たす。 さらに、引用発明の「トップコート用樹脂をデカン/オクタノール(質量比9/1)に溶解させた3質量%の溶液」は、「レジスト膜上に塗布」するものであるから、本願発明6の「上層膜形成用組成物」に相当し、「同一の重合体中に、脂環構造を含む第1構造単位と、上記第1構造単位以外のフッ素原子を含む第2構造単位とを有する重合体成分、及び溶媒を含有」するという要件を満たす。 そうしてみると、引用発明の「トップコート用樹脂をデカン/オクタノール(質量比9/1)に溶解させた3質量%の溶液をレジスト膜上に塗布し、トップコート層を形成」する工程は、本願発明6の「上記レジスト膜の一方の面に上層膜形成用組成物により上層膜を形成する工程」に相当する。 ウ 液浸露光する工程、現像する工程 引用発明は、 「シリコンウエハー上に」「反射防止膜を形成し、その上に、」「レジスト膜を形成し、更に」「、トップコート層を形成し、ArFエキシマレーザー液浸スキャナーを用い、露光し、」「酢酸ブチルで30秒間パドルして現像」しており、上記露光工程ないし現像工程からみて、引用発明は、本願発明6の「上記上層膜が形成されたレジスト膜を液浸露光する工程、及び有機溶媒を含有する現像液で上記液浸露光されたレジスト膜を現像する工程」を具備する。 エ ネガ型レジストパターン形成方法 引用発明の「ネガ型パターン形成方法」は、技術的にみて、本願発明6の「ネガ型レジストパターン形成方法」に相当する。 (2) 引用発明との一致点及び相違点 ア 一致点 本願発明6と引用発明は、次の構成で一致する。 「 レジスト膜を形成する工程、 上記レジスト膜の一方の面に上層膜形成用組成物により上層膜を形成する工程、 上記上層膜が形成されたレジスト膜を液浸露光する工程、及び 有機溶媒を含有する現像液で上記液浸露光されたレジスト膜を現像する工程 を備え、 上記上層膜形成用組成物が、 同一の重合体中に、脂環構造を含む第1構造単位と、上記第1構造単位以外のフッ素原子を含む第2構造単位とを有する重合体成分、及び 溶媒 を含有し、 上記第2構造単位が下記式(2)で表される基を含み、 上記重合体成分を構成する全構造単位に対する上記第1構造単位の含有割合が、40モル%以上95モル%以下であるネガ型レジストパターン形成方法。 【化3】 (式(2)中、RAは、水素原子又は炭素数1?20の1価の有機基である。RB及びRCは、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1?20のフッ素化アルキル基である。」 イ 相違点 本願発明6と引用発明は、次の点で相違する。 (相違点1) 本願発明6は、「重合体成分中のフッ素原子含有率が2質量%以上30質量%以下であ」るのに対し、引用発明は、「HR-50」の化学構造及び各構造単位のモル比から計算すると、重合体成分中のフッ素原子含有率が約31.5%であり、重合体成分中のフッ素原子含有率が2質量%以上30質量%以下でない点。 (相違点2) 本願発明6は、「同一の重合体中に、脂環構造を含む第1構造単位と、上記第1構造単位以外のフッ素原子を含む第2構造単位とを有する重合体成分」であって「上記脂環構造が多環構造であり、上記第2構造単位が下記式(2)で表される基を含」むのに対し、引用発明の「脂環構造を含む第1構造単位」における「脂環構造」が「多環構造」でない点。 (3)判断 事案に鑑みて、上記相違点2について検討する。 ア 引用文献1の記載(段落【0245】?【0246】等)を参酌すると、疎水性樹脂の具体例として、HR-23のように脂環構造が多環構造である繰り返し単位を有する疎水性樹脂は記載されているものの、脂環構造が多環構造である繰り返し単位を有し、かつ、本願発明6の式(2)で表される基を含む構造単位を有する疎水性樹脂は記載されていない。また、脂環構造が多環構造である繰り返し単位と、本願発明6の式(2)で表される基を含む繰り返し単位とを同一の重合体中に有するとすべき動機も、引用文献1には記載されていない。 さらに、レジストパターン形成方法において、脂環構造が多環構造である繰り返し単位と、本願発明6の式(2)で表される基を含む繰り返し単位とを同一の重合体中に有することが、撥水性や欠陥抑制性の観点から好ましいという知見が、本件出願時における当業者の技術常識であったことを示す他の証拠もない。 以上総合すると、引用文献1に脂環構造が多環構造である繰り返し単位を有する疎水性樹脂が記載されているとしても、同一の重合体中に、脂環構造を含む第1構造単位と、上記第1構造単位以外のフッ素原子を含む第2構造単位とを有する重合体成分で、かつ上記脂環構造が多環構造であり、上記第2構造単位が下記式(2)で表される基を含むという、相違点2に係る本願発明の構成に当業者が容易に想到し得たとはいえない。 イ 本願発明6の効果として、本件出願の明細書の【0010】には、本発明のネガ型レジストパターン形成方法によれば、低上層膜表面の撥水性を高めることができ、かつ現像欠陥の少ないレジストパターンを形成することができることが記載されている。そして、この効果は、本件出願の明細書の【0335】【表3】の実施例14及び15と、比較例1?5とを比較すると、後退接触角、剥がれ耐性、ブリッジ欠陥抑制性、断線欠陥抑制性が向上していることからも確認することができる。ここで、同一の重合体中に、脂環構造を含む第1構造単位と、上記第1構造単位以外のフッ素原子を含む第2構造単位とを有する重合体成分で、かつ上記脂環構造が多環構造であり、上記第2構造単位が下記式(2)で表される基を含むという構成が引用文献1に記載されていないことは上記アのとおりであるから、上記効果は、引用発明から当業者が予測し得る効果とはいえない。 ウ 以上ア?イのとおりであるから、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明6は、当業者が引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)請求項7?8、10?12に係る発明について 本件出願の請求項7?8、10?12に係る発明は、いずれも、本願発明6に対してさらに他の発明特定事項を付加した発明であるから、本願発明6における全ての発明特定事項を具備するものである。 そうしてみると、前記(3)で述べたのと同じ理由により、これらの発明も、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 (5)請求項14?15に係る発明について 本件出願の請求項14に係る発明(以下「本願発明14」という。その他の請求項に係る発明についても同様に称する。)も、前記「第1」「3」に記載したとおり、上層膜形成用組成物に関する発明であって、本願発明6と同じ、「同一の重合体中に、脂環構造を含む第1構造単位と、上記第1構造単位以外のフッ素原子を含む第2構造単位とを有する重合体成分、及び溶媒を含有し、上記重合体成分中のフッ素原子含有率が2質量%以上30質量%以下であり、上記脂環構造が多環構造であり、上記第2構造単位が下記式(2)で表される基を含み、上記重合体成分を構成する全構造単位に対する上記第1構造単位の含有割合が、40モル%以上95モル%以下である」という発明特定事項を具備する発明である。また、本願発明15は、本願発明14に対してさらに他の発明特定事項が付加された発明であるから、前記発明特定事項を具備するものである。 そうしてみると、前記(3)で述べたのと同じ理由により、これらの発明も、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 第3 むすび 以上のとおり、本件出願の請求項6?8、10?12、14?15に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。 また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-10-29 |
出願番号 | 特願2015-82037(P2015-82037) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G03F)
P 1 8・ 113- WY (G03F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 高橋 純平 |
特許庁審判長 |
里村 利光 |
特許庁審判官 |
神尾 寧 井口 猶二 |
発明の名称 | ネガ型レジストパターン形成方法及び上層膜形成用組成物 |
代理人 | 天野 一規 |