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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05B
管理番号 1367850
審判番号 不服2020-2318  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-20 
確定日 2020-11-26 
事件の表示 特願2016- 56715号「LED点灯装置および照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月28日出願公開、特開2017-174532号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月22日の出願であって、令和1年6月18日付けで拒絶理由が通知され、同年8月19日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月18日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、令和2年2月20日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


<刊行物等一覧>
引用文献1.特開2010-92990号公報
引用文献2.特開2000-260590号公報

第3 本願発明
本願請求項1及び2に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、令和1年8月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
直流電源または交流電源を整流する整流回路と;
この整流回路の出力電圧を所定の直流電圧に変換する電力変換回路と;
前記整流回路の入力端子間に接続された第1のバリスタと;
前記整流回路の出力端子間に接続され、前記電力変換回路の出力端子間に接続されるLEDの順方向電圧と前記整流回路の出力電圧との合計電圧以上のバリスタ電圧を有する第2のバリスタと;
を具備し、
前記第2のバリスタのバリスタ電圧は、前記第1のバリスタのバリスタ電圧の1.21倍を上回るとともに2.5倍以下であることを特徴とするLED点灯装置。
【請求項2】
LEDと;
このLEDを配設する装置本体と;
前記LEDを点灯する請求項1記載のLED点灯装置と;
を具備していることを特徴とする照明装置。」

第4 引用文献の記載事項等
1 引用文献1
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与。以下同様。)。
(1a)「【0032】
図3に示すように、駆動回路100はベース10に内蔵され、固定カバー80の接続ピン86に連結されて、蛍光灯フレームのソケットから電源を受け、これを静電源化してLEDモジュール50に供給してLED51を点灯させる。
【0033】
前記駆動回路100は、既に設置されている水銀放電管蛍光灯フレームの両側ソケットのいずれかから電源が入力されてもLEDモジュール50を点灯させることができるので、LED蛍光灯をフレームに設置するとき、その装着方向を考慮する必要がなくて消費者の便宜性を増進させ、入力電源の過電圧及び過電流を遮断し、外部から導入されるサージ電圧及びノイズを除去し、いつも一定大きさの安定的な静電流をLEDモジュールに供給して、LEDモジュールが一定照度を持ち、ちらつきなしに点灯できるようにする両方向入力電源処理が可能になる。
【0034】
図7に示すように、本発明の駆動回路100は、第1電源入力部110、第2電源入力部120、駆動部130、及びフィードバック部140を含んでなる。
前記第1電源入力部110及び第2電源入力部120はそれぞれ両側固定カバー80の接続ピン86に電気的に連結され、蛍光灯フレームのソケットに連結されることにより、安定器を介して交流電源を受け、異常的な入力電源は遮断して平滑化し直流化して前記駆動部130に直流電源を供給する。」

(1b)「【0036】
前記第1電源入力部110及び第2電源入力部120は、それぞれ保護部111、121、ノイズ除去部113、123、及び平滑部115、125を含んでなる。
【0037】
前記保護部111、121は、前記ソケット3に連結される電源入力端に並列で連結されているバリスタZNR11、ZNR21と、電源入力端に直列で連結されているヒューズF11、F21と、NTC抵抗NTC11、NTC21とを含んでなる。
前記バリスタZNR11、ZNR21は、入力電源の過電圧又は外部から流入されるサージ電圧を遮断し、前記ヒューズF11、F21は、過電流の入力の際、これを遮断し、前記NTC抵抗NTC11、NTC21は、サージ電流を遮断して異常的な電源の入力を防止することで、駆動回路100及びLEDモジュール50を保護する。
【0038】
前記ノイズ除去部113、123は、前記保護部111、121に並列で連結されているキャパシタC11、C12、C21、C22で構成される。図面に示されていないが、前記ノイズ除去部113、123は、前記キャパシタC11、C12、C21、C22の出力端に、かつ前記保護部111、121に並列で連結されるインダクタをさらに含むことができる。
前記ノイズ除去部113、123のキャパシタ(インダクタを含むことができる)は外部から流入されるサージ及びノイズを除去して出力する。
【0039】
前記平滑部115、125は、前記ノイズ除去部113、123から入力される電源を平滑化し直流化して前記駆動部130に供給する。
前記平滑部115、125は、前記ノイズ除去部113、123の出力電源を電波整流するブリッジダイオードD11?D14、D21?D24と、整流された電源を平滑化する抵抗ZNR12、R11、R12、ZNR22、R21、R22及びキャパシタC13、C14、C23、C14とを含んでなる。
【0040】
前記駆動部130は、インダクタL31、トランジスタQ、静電源供給部132、コイルL32、制御部131、及び利得補償部133を含んでなる。
前記インダクタL31は、前記平滑部115、125の出力電源によって電流が一時的に充電され、トランジスタQのスイッチングによって充電された電流を放電して、前記平滑部115、125の出力電源を昇圧又は降圧して前記静電源供給部132に供給する。
前記トランジスタQは、前記制御部131からパルス信号を受信してスイッチングして前記インダクタL31に電流を充電又は放電させる。
前記トランジスタQは電界効果トランジスタFETを使用し、そのゲート端子は前記制御部131に連結されて、スイッチングのためのパルス信号を受信し、ドレイン端子は前記インダクタL31の出力端に連結されてインダクタを充放電させ、ソース端子には抵抗R35、R36及びキャパシタC35で構成された利得補償部133が連結されてトランジスタQのスイッチング動作を安定化させ、高周波帯域での利得を補償する。前記利得補償部133の抵抗R35、R36はスイッチング動作を安定化させ、前記キャパシタC35は高周波帯域で利得補償する役目をする。
【0041】
前記静電源供給部132は、前記インダクタL31を通じて昇圧又は降圧された電源を平滑化し直流化して、負荷側のLEDモジュール50に静電源(静電圧又は静電流)を供給する。
前記静電源供給部132は、前記インダクタL31を通過した電源を整流するダイオードD31と、前記ダイオードD31によって整流された電源を平滑で直流化するキャパシタC36とを含んでなる。」

(1c)【図7】は次のとおりである。


(1d)【図8】は次のとおりである。

(2)認定事項
ア 記載事項(1d)の【図8】の「平滑部125」の一番下に記載されるダイオードに符号が付されていないが、記載事項(1c)の段落【0039】の「前記平滑部115、125は、前記ノイズ除去部113、123の出力電源を電波整流するブリッジダイオードD11?D14、D21?D24と、・・・とを含んでなる。」との記載からみて、符号「D24」の記載漏れであることは明らかである。

イ 記載事項(1b)の段落【0039】に「整流された電源を平滑化する抵抗ZNR12、R11、R12、ZNR22、R21、R22及びキャパシタC13、C14、C23、C14とを含んでなる。」と記載されているが、「ZNR」について、同【0037】に「バリスタZNR11、ZNR21」と記載され、記載事項(1d)の【図8】に図示される「ZNR12」と「ZNR22」の配線記号をみても、いずれもバリスタを表すものとして記載されている。
そうすると、上記段落【0039】の「抵抗ZNR12・・・ZNR22」という記載は誤記であるか、あるいは、バリスタと通常の抵抗も含めた上位概念として「抵抗」と表記したものであって、「ZNR12」及び「ZNR22」はともに「バリスタ」であるものと認める。

ウ 上記ア、イを踏まえると、記載事項(1d)の【図8】の「平滑部115」及び「平滑部125」の配線の記載と、記載事項(1b)の段落【0039】の記載から次の事項が認定できる。
「前記平滑部115、125は、前記ノイズ除去部113、123の出力電源を電波整流するブリッジダイオードD11?D14、D21?D24と、整流された電源を平滑化するバリスタZNR12、抵抗R11、R12、バリスタZNR22、抵抗R21、R22及びキャパシタC13、C14、C23、C14とを含んでなり、
ブリッジダイオードD11及びD13のカソードに対し、バリスタZNR12、抵抗R11、抵抗R12とそれに直列に接続されたキャパシタ13、キャパシタ14が並列に接続され、かつ、並列に接続する配線のうちの駆動部130に配線されない方の配線は接地され、
ブリッジダイオードD21及びD23のカソードに対し、バリスタZNR22、抵抗R21、抵抗R22とそれに直列に接続されたキャパシタ13とが並列に接続され、かつ、並列に接続する配線のうちの駆動部130に配線されない方の配線は接地されている」こと。

(3)引用発明
上記(1)、(2)より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「 蛍光灯フレームのソケットから電源を受け、これを静電源化してLEDモジュール50に供給してLED51を点灯させる駆動回路100であって、
前記駆動回路100は、第1電源入力部110、第2電源入力部120、駆動部130、及びフィードバック部140を含んでなり、
前記駆動部130は、インダクタL31、トランジスタQ、静電源供給部132、コイルL32、制御部131、及び利得補償部133を含んでなり、
前記インダクタL31は、前記平滑部115、125の出力電源によって電流が一時的に充電され、トランジスタQのスイッチングによって充電された電流を放電して、前記平滑部115、125の出力電源を昇圧又は降圧して前記静電源供給部132に供給し、
前記静電源供給部132は、前記インダクタL31を通じて昇圧又は降圧された電源を平滑化し直流化して、負荷側のLEDモジュール50に静電源(静電圧又は静電流)を供給し、
前記第1電源入力部110及び第2電源入力部120はそれぞれ両側固定カバー80の接続ピン86に電気的に連結され、蛍光灯フレームのソケットに連結されることにより、安定器を介して交流電源を受け、異常的な入力電源は遮断して平滑化し直流化して前記駆動部130に直流電源を供給するものであり、
前記第1電源入力部110及び第2電源入力部120は、それぞれ保護部111、121、ノイズ除去部113、123、及び平滑部115、125を含んでなり、
前記保護部111、121は、前記ソケット3に連結される電源入力端に並列で連結されているバリスタZNR11、ZNR21と、電源入力端に直列で連結されているヒューズF11、F21と、NTC抵抗NTC11、NTC21とを含んでなり、
前記バリスタZNR11、ZNR21は、入力電源の過電圧又は外部から流入されるサージ電圧を遮断し、前記ヒューズF11、F21は、過電流の入力の際、これを遮断し、前記NTC抵抗NTC11、NTC21は、サージ電流を遮断して異常的な電源の入力を防止することで、駆動回路100及びLEDモジュール50を保護するものであり、
前記平滑部115、125は、前記ノイズ除去部113、123から入力される電源を平滑化し直流化して前記駆動部130に供給するものであり、
前記平滑部115、125は、前記ノイズ除去部113、123の出力電源を電波整流するブリッジダイオードD11?D14、D21?D24と、整流された電源を平滑化するバリスタZNR12、抵抗R11、R12、バリスタZNR22、抵抗R21、R22及びキャパシタC13、C14、C23、C14とを含んでなり、
ブリッジダイオードD11及びD13のカソードに対し、バリスタZNR12、抵抗R11、抵抗R12とそれに直列に接続されたキャパシタ13、キャパシタ14が並列に接続され、かつ、並列に接続する配線のうちの駆動部130に配線されない方の配線は接地され、
ブリッジダイオードD21及びD23のカソードに対し、バリスタZNR22、抵抗R21、抵抗R22とそれに直列に接続されたキャパシタ13とが並列に接続され、かつ、並列に接続する配線のうちの駆動部130に配線されない方の配線は接地されている駆動回路100。」

2 引用文献2
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】E26口金を有するカバーと;入力電圧を整流する整流装置および整流装置の出力電圧を高周波電圧に変換する高周波変換装置を有し、主としてカバー内に配置された高周波点灯装置と;カバーに支持され、高周波点灯装置にて付勢される定格25W以下のけい光ランプと;を備え、E26受金に装着されて商用電源電圧で定格点灯される電球形けい光ランプであって、前記高周波点灯装置は、整流装置の入力端間および出力端間の少なくとも一方にバリスタを有し、かつ、このバリスタのバリスタ電圧を、E26口金を有する水銀ランプ、ナトリウムランプ等の定格40W以上の高輝度放電灯を点灯する昇圧形安定器の定格二次電圧より大きくしたことを特徴とする電球形けい光ランプ。」

(2b)「【0006】本発明は、HID用の照明装置の受金に誤装着されたとしても、バリスタが導通して電流が流れ続けることによる発熱、周囲部品の溶融、焼損を防止でき、したがって、耐電圧の低い安価の部品を用いて構成し得る電球形けい光ランプ、およびこの電球形けい光ランプを用いた照明装置を提供することを目的とする。」

(2c)「【0024】ここで、上記整流装置8の入力端間に設けられたバリスタ11のバリスタ電圧は、270V以上に設定されている。また、バリスタ11として整流装置8の出力端間に設けてもよく、この場合、バリスタ11のバリスタ電圧は390V以上とする。」

(2d)「【0028】つぎに、本実施形態の電球形けい光ランプを、E26口金を有する40W水銀ランプ(東芝ライテック(株)製HF40X)を点灯するための昇圧形の低力率形安定器(東芝ライテック(株)製04HT-1013LW)の出力を供給する受口に誤って装着した場合を説明する。
【0029】この場合には、整流装置8は同様に整流し、また、平滑用のコンデンサ13も平滑して、あるリップルを持った電圧を高周波変換装置14に供給する。高周波変換装置14は初期には、上記と同様に作動してけい光ランプ19を点灯するが、40W水銀ランプを点灯するための安定器の出力は高周波変換装置14にとっては過入力である。したがって、高周波変換装置14の構成部品の内、容量的に余裕がない部品たとえばFET15、16が破壊する。高周波変換装置14の部品の破壊により短絡モードとなれば、電流ヒューズ9が溶断するから、さらに問題が発展することはない。また、高周波変換装置14の部品の破壊により開放モードとなっても、バリスタ11のバリスタ電圧を40W水銀ランプの安定器の出力電圧より大きくしてあるから、バリスタ11に電流が流れることがない。したがって、従来技術のように、バリスタ11に電流が流れ続けることによりバリスタ11が発熱して、カバー1等の周辺部品を溶融変形させたり、焼損させたりすることがない。」

(2e)【図1】は次のとおりである。


(2)認定事項
記載事項(2a)の「整流装置の入力端間および出力端間の少なくとも一方にバリスタを有し」との記載から、入力端間および出力端間の両方にバリスタを設ける場合も想定されているといえる。そして、その場合において、記載事項(2c)より、前者のバリスタ電圧は270V以上であり、後者は390V以上であることも認定できる。

(3)引用文献2に記載された技術的事項
上記(1)、(2)より、引用文献2には次の技術的事項(以下「引用文献2技術」という。)が記載されているものと認める。
「E26口金を有するカバーと;入力電圧を整流する整流装置および整流装置の出力電圧を高周波電圧に変換する高周波変換装置を有し、主としてカバー内に配置された高周波点灯装置と;カバーに支持され、高周波点灯装置にて付勢される定格25W以下のけい光ランプと;を備え、E26受金に装着されて商用電源電圧で定格点灯される電球形けい光ランプであって、前記高周波点灯装置は、整流装置の入力端間および出力端間のそれぞれにバリスタを有し、かつ、それぞれのバリスタのバリスタ電圧を、E26口金を有する水銀ランプ、ナトリウムランプ等の定格40W以上の高輝度放電灯を点灯する昇圧形安定器の定格二次電圧より大きい270V以上と390V以上とした電球形蛍光ランプに用いられる高周波点灯装置」に係る技術。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 後者の「ブリッジダイオードD11?D14、D21?D24」は、前者の「整流回路」に相当し、以下同様に、「バリスタZNR11、ZNR21」は、「第1のバリスタ」に、「バリスタZNR12」、「バリスタZNR22」は、「第2のバリスタ」にそれぞれ相当する。

イ 上記アを踏まえると、後者の「安定器を介して交流電源を受け、異常的な入力電源は遮断して平滑化し直流化して前記駆動部130に直流電源を供給するものであ」る「前記第1電源入力部110及び第2電源入力部120」に含まれる「前記平滑部115、125」に更に含まれる「前記ノイズ除去部113、123の出力電源を電波整流するブリッジダイオードD11?D14、D21?D24」は、前者の「直流電源または交流電源を整流する整流回路」に相当するといえる。

ウ 上記イを踏まえると、後者の「インダクタL31、トランジスタQ、静電源供給部132、コイルL32、制御部131、及び利得補償部133を含んでなり、前記インダクタL31は、前記平滑部115、125の出力電源によって電流が一時的に充電され、トランジスタQのスイッチングによって充電された電流を放電して、前記平滑部115、125の出力電源を昇圧又は降圧して前記静電源供給部132に供給し、前記静電源供給部132は、前記インダクタL31を通じて昇圧又は降圧された電源を平滑化し直流化して、負荷側のLEDモジュール50に静電源(静電圧又は静電流)を供給」するという事項を有する「駆動部130」は、前者の「この整流回路の出力電圧を所定の直流電圧に変換する電力変換回路」に相当するといえる。

エ 後者の「前記ソケット3に連結される電源入力端に並列で連結されているバリスタZNR11、ZNR21」という事項の「前記ソケット3に連結される電源入力端」は「入力端子」といえ、そこに「並列で連結されている」ということは、当該「電源入力端」間に接続されているといえるものである。
そうすると、上記アを踏まえると、後者の上記事項と、前者の「前記整流回路の入力端子間に接続された第1のバリスタ」とは、「入力端子間に接続された第1のバリスタ」である点で共通するといえる。

オ 上記ア、イを踏まえると、後者の
「ブリッジダイオードD11及びD13のカソードに対し、バリスタZNR12、抵抗R11、抵抗R12とそれに直列に接続されたキャパシタ13、キャパシタ14が並列に接続され、かつ、並列に接続する配線のうちの駆動部130に配線されない方の配線は接地され、
ブリッジダイオードD21及びD23のカソードに対し、バリスタZNR22、抵抗R21、抵抗R22とそれに直列に接続されたキャパシタ13とが並列に接続され、かつ、並列に接続する配線のうちの駆動部130に配線されない方の配線は接地されている」
ということと、前者の
「前記整流回路の出力端子間に接続され、前記電力変換回路の出力端子間に接続されるLEDの順方向電圧と前記整流回路の出力電圧との合計電圧以上のバリスタ電圧を有する第2のバリスタ」
とは、「前記整流回路に接続された第2のバリスタ」である点で共通するといえる。

カ 後者の「蛍光灯フレームのソケットから電源を受け、これを静電源化してLEDモジュール50に供給してLED51を点灯させる駆動回路100」は、前者の「LED点灯装置」に相当する。

キ 以上のことより、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点〕
「直流電源または交流電源を整流する整流回路と;
この整流回路の出力電圧を所定の直流電圧に変換する電力変換回路と;
入力端子間に接続された第1のバリスタと;
前記整流回路に接続された第2のバリスタと;
を具備するLED点灯装置。」

〔相違点1〕
「第1のバリスタ」が接続される「入力端子間」について、本願発明1が、「前記整流回路の入力端子間」であるのに対し、引用発明は、「前記ソケット3に連結される電源入力端」間であって、「ブリッジダイオードD11?D14、D21?D24」(整流回路)の入力端子間ではない点。

〔相違点2〕
「第2のバリスタ」の接続態様について、本願発明1が、「前記整流回路の出力端子間に接続され」るものであるのに対し、引用発明は、「ブリッジダイオードD11及びD13のカソードに対し、バリスタZNR12、抵抗R11、抵抗R12とそれに直列に接続されたキャパシタ13、キャパシタ14が並列に接続され、かつ、並列に接続する配線のうちの駆動部130に配線されない方の配線は接地され、ブリッジダイオードD21及びD23のカソードに対し、バリスタZNR22、抵抗R21、抵抗R22とそれに直列に接続されたキャパシタ13とが並列に接続され、かつ、並列に接続する配線のうちの駆動部130に配線されない方の配線は接地されている」というものであって、「ブリッジダイオードD11?D14、D21?D24」(整流回路)の出力端子間ではない点。

〔相違点3〕
「第2のバリスタ」のバリスタ電圧について、本願発明1が、「前記電力変換回路の出力端子間に接続されるLEDの順方向電圧と前記整流回路の出力電圧との合計電圧以上のバリスタ電圧を有する」ものであり、「前記第2のバリスタのバリスタ電圧は、前記第1のバリスタのバリスタ電圧の1.21倍を上回るとともに2.5倍以下である」のに対し、引用発明は、「バリスタZNR12」、「バリスタZNR22」(第2のバリスタ)のバリスタ電圧に係る事項が特定されていない点。

(2)判断
事案に鑑み、上記相違点3について検討する。
まず、引用文献2技術について検討すると、引用文献2技術は、「整流装置の入力端間および出力端間のそれぞれにバリスタ」を設け、それぞれ、「入力端間のバリスタ」(第1のバリスタ)のバリスタ電圧を270V以上とし、「出力端間のバリスタ」(第2のバリスタ)のバリスタ電圧を390V以上にしているものである。
しかしながら、引用文献2技術は、「HID用の照明装置の受金に誤装着されたとしても、バリスタが導通して電流が流れ続けることによる発熱、周囲部品の溶融、焼損を防止でき」(記載事項(2b))ることを課題としているものであり、そのために「それぞれのバリスタのバリスタ電圧を、E26口金を有する水銀ランプ、ナトリウムランプ等の定格40W以上の高輝度放電灯を点灯する昇圧形安定器の定格二次電圧より大きい」ものとしているものである。
一方、引用文献1には、当該課題と共通ないし類似する課題が記載ないし示唆されてはおらず、LEDの駆動回路であるところの引用発明に、電球型蛍光ランプの高周波点灯装置であるところの引用文献2技術を適用する動機付けがあるとはいえない。
また、本願発明1の「第2のバリスタ」が「前記電力変換回路の出力端子間に接続されるLEDの順方向電圧と前記整流回路の出力電圧との合計電圧以上のバリスタ電圧を有する」という事項に対応する事項を、引用文献2技術の「出力端間のバリスタ」(第2のバリスタ)は有していない(引用文献2技術の出力端間のバリスタのバリスタ電圧は390V以上であるが、本願発明1の上記「合計電圧」により決定されたものではなく、LEDの順方向電圧や整流回路の出力電圧は、照明装置によって異なるものである。)。
したがって、引用発明に引用文献2技術を適用する動機付けがあるとはいえず、仮に適用したとしても、上記相違点3に係る本願発明1の事項を有するものには至らない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1、2は、引用発明及び引用文献2技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-11-10 
出願番号 特願2016-56715(P2016-56715)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野木 新治  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 藤井 昇
一ノ瀬 覚
発明の名称 LED点灯装置および照明装置  
代理人 河野 仁志  

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