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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1367852 |
審判番号 | 不服2019-14005 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-10-21 |
確定日 | 2020-11-26 |
事件の表示 | 特願2017-118899「光照射装置、光照射方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月10日出願公開、特開2019- 3107、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年 6月16日の出願であって、平成31年 1月 9日(受付日)に手続補正書及び上申書が提出され、同年 3月 4日付けで拒絶理由が通知され、令和 1年 5月10日(受付日)に意見書が提出され、同年 7月31日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、同年10月21日(受付日)に本件拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 本願発明 本願請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明8」といい、まとめて「本願発明」という。)は、平成31年 1月 9日(受付日)に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 線材を挿入するための挿入路と、 前記挿入路の中心から第一距離だけ偏心した位置を第一焦点とした楕円弧状を有し、前記挿入路に向かう側の面を反射面とするリフレクタと、 前記挿入路に対して、前記リフレクタとは反対側の位置に配置され、前記線材に向けて光を照射する面光源とを備え、 前記挿入路は、前記第一焦点に対して前記面光源側に前記第一距離だけ偏心した位置に配置されることを特徴とする光照射装置。 【請求項2】 前記面光源は、楕円弧状を有する前記リフレクタの第二焦点から、前記第一焦点側に第二距離だけ偏心した位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。 【請求項3】 前記面光源は、複数のLED素子が実装された基板を含んで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光照射装置。 【請求項4】 前記面光源から放射される光に対する透過性を有した材料で構成され、内部に前記挿入路を形成する挿入部を備え、 前記挿入部の外周が、前記リフレクタの前記反射面に対して、前記リフレクタの楕円弧状の中心に近い側に位置していることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の光照射装置。 【請求項5】 前記リフレクタの前記反射面は、曲面で形成されることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の光照射装置。 【請求項6】 前記リフレクタの前記反射面は、複数の平面が楕円弧状に配置されることで形成されることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の光照射装置。 【請求項7】 光照射装置が線材に向けて光を照射する光照射方法であって、 前記光照射装置は、 楕円弧状を有し内側に向かう面を反射面とするリフレクタと、 前記線材に向けて光を照射する面光源とを備え、 前記光照射方法は、 前記線材の中心位置が、前記リフレクタの前記反射面の第一焦点から前記面光源側に向かって第一距離だけ偏心するように、前記リフレクタの前記反射面の内側の領域に前記線材を挿入する工程と、 前記線材に対して前記リフレクタとは反対側の位置に配置された前記面光源から前記線材に向けて光を照射する工程とを含むことを特徴とする光照射方法。 【請求項8】 前記面光源は、楕円弧状を有する前記リフレクタの第二焦点から、前記第一焦点側に第二距離だけ偏心した位置に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の光照射方法。」 第3 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明1、7は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明2、8は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明3?5は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明6は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 なお、原査定においては、仮に、引用文献1に記載される発明に面発光の光源を採用すると、光ファイバ全体に対して均一に紫外線を照射する効果が得られず、逆効果になるのであれば、本願発明において樹脂を硬化させることができるか否かが明らかでない旨の注釈がある。 引用文献1:特開平5-254894号公報 引用文献2:特開2016-210668号公報 引用文献3:特表2004-506932号公報 引用文献4:特開2003-89555号公報 引用文献5:特表2016-534967号公報 第4 原査定についての当審の判断 1 各引用文献の記載事項等 (1)引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載される発明 (ア)引用文献1には、以下(1a)?(1f)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「…」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 (1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 紫外線を反射する楕円形のミラー1内の2つの焦点F_(1)F_(2)のうち一方の焦点F_(1)の位置に紫外線を発するランプ2を配置し他方の焦点F_(2)の位置に石英パイプ3内を通る線状体4を配置し、ランプ2からの紫外線を直接及びミラー1で反射させて集光し線状体4に照射して、線状体4の表面のUV樹脂を硬化させる紫外線照射装置において、線状体4側の焦点F_(2)上にあった紫外線の集光位置を線状体4よりもランプ2と反対側へ相対的にずらしたことを特徴とする紫外線照射装置。 【請求項2】 線状体4を同線状体4側の焦点F_(2)の位置よりもランプ2側にずらすことにより、紫外線の集光位置を線状体4よりも相対的にランプ2と反対側へずらすようにしたことを特徴とする請求項1の紫外線照射装置。」 (1b)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は光ファイバ心線などの線状体に塗布されている紫外線硬化型樹脂(UV樹脂)をUVランプ等から発する紫外線を照射して硬化させる紫外線照射装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】UV樹脂を硬化させる紫外線照射装置として従来は図4に示すようなものがあった。これは楕円形のミラー1内の2つの焦点F_(1)F_(2)のうち一方の焦点F_(1)の位置にランプ2を配置し、他方の焦点F_(2)の位置に石英パイプ3を配置し、同石英パイプ3の中心にUV樹脂が塗布されている線状体4を通し、ランプ2から発する紫外線Aが直接及びミラー1の一点で反射して線状体4の表面に垂直に照射するようにしたものである。この場合、ランプ2からは360度いずれの方向にも紫外線Aが発するので、理論上は線状体4の表面の360度いずれの方向にも一様に紫外線Aが照射されることになる。」 (1c)「【0013】 【作用】本発明の紫外線照射装置はミラー1で反射される紫外線の焦点F_(1)F_(2)のうち線状体4側の紫外線の集光位置をランプ2と相対的に反対側にずらものであるため、本発明の紫外線照射装置における線状体4にあっては、ランプ2側を向いた面が受ける照度は図7の照度分布Dの曲線のQ点が示す値となり、その反対側の面が受ける照度は照度分布Eの曲線のS点が示す値となり、その差(Q-S)は従来の装置における差(P-R)より小さくなる。 【0014】本発明の紫外線照射装置にあっては図7が示すように、線状体4の受ける絶対照度は従来よりも低下するが、線状体4のランプ2側及びその反対側の2点の照度QとSの差(Q-S)が、従来装置における照度差(P-R)よりも小さくなるため、本発明の紫外線照射装置により線状体4の表面に紫外線を照射した場合、同表面の全周に従来よりも均一に紫外線が照射され、同表面に塗布されているUV樹脂の硬度差が小さくなり、線状体の全周のUV樹脂が一様な硬度になる。」 (1d)「【図1】 」 (1e)「【図4】 」 (1f)「【図7】 」 (イ)前記(ア)(1a)、(1d)によれば、引用文献1には「紫外線照射装置」が記載されており、当該「紫外線照射装置」は、紫外線を反射する楕円形のミラー内の2つの焦点のうち一方の焦点の位置に紫外線を発するランプを配置し他方の焦点の位置に石英パイプ内を通る線状体を配置し、ランプからの紫外線を直接及びミラーで反射させて集光し線状体に照射して、線状体の表面のUV樹脂を硬化させる紫外線照射装置において、線状体側の焦点上にあった紫外線の集光位置を線状体よりもランプと反対側へ相対的にずらしたものであって、線状体を同線状体側の焦点の位置よりもランプ側にずらすことにより、紫外線の集光位置を線状体よりも相対的にランプと反対側へずらすようにしたものである。 更に、前記(ア)(1c)、(1f)によれば、前記「紫外線照射装置」においては、線状体のランプ側及びその反対側の2点の照度の差が、従来装置における照度差よりも小さくなるため、同表面の全周に従来よりも均一に紫外線が照射され、同表面に塗布されているUV樹脂の硬度差が小さくなり、線状体の全周のUV樹脂が一様な硬度になるものである。 (ウ)前記(イ)によれば、引用文献1には以下の発明が記載されているといえる。 「紫外線を反射する楕円形のミラー内の2つの焦点のうち一方の焦点の位置に紫外線を発するランプを配置し他方の焦点の位置に石英パイプ内を通る線状体を配置し、ランプからの紫外線を直接及びミラーで反射させて集光し線状体に照射して、線状体の表面のUV樹脂を硬化させる紫外線照射装置において、 線状体を同線状体側の焦点の位置よりもランプ側にずらすことにより、線状体側の焦点上にあった紫外線の集光位置を線状体よりもランプと反対側へ相対的にずらした紫外線照射装置であって、 線状体のランプ側及びその反対側の2点の照度の差が、従来装置における照度差よりも小さくなるため、同表面の全周に従来よりも均一に紫外線が照射され、同表面に塗布されているUV樹脂の硬度差が小さくなり、線状体の全周のUV樹脂が一様な硬度になる、紫外線照射装置。」(以下、「引用1発明」という。) 「紫外線を反射する楕円形のミラー内の2つの焦点のうち一方の焦点の位置に紫外線を発するランプを配置し他方の焦点の位置に石英パイプ内を通る線状体を配置し、ランプからの紫外線を直接及びミラーで反射させて集光し線状体に照射して、線状体の表面のUV樹脂を硬化させる紫外線照射装置において、 線状体を同線状体側の焦点の位置よりもランプ側にずらすことにより、線状体側の焦点上にあった紫外線の集光位置を線状体よりもランプと反対側へ相対的にずらした紫外線照射装置による紫外線照射方法であって、 線状体のランプ側及びその反対側の2点の照度の差が、従来装置における照度差よりも小さくなるため、同表面の全周に従来よりも均一に紫外線が照射され、同表面に塗布されているUV樹脂の硬度差が小さくなり、線状体の全周のUV樹脂が一様な硬度になる、紫外線照射方法。」(以下、「引用1’発明」という。) (2)引用文献2の記載事項 引用文献2には、以下(2a)?(2d)の記載がある。 (2a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも、面発光である光源部と、高速で線引きされる石英ファイバを中心にして概ね360度の反射板からなる反射部と、その反射部の一部に光源部から発せられた光を導入する導光部を有してなる光ファイバ製造用紫外線照射装置。」 (2b)「【0004】 本発明は、面発光の光源から発せられた光を効率良く石英ファイバに照射することができる光ファイバ製造用紫外線照射装置を提供することを目的とする。」 (2c)「【0010】 本発明の光ファイバ製造用紫外線照射装置は、少なくとも、光源部、反射部、導光部を有してなるものである。 光源部では、LED等の面発光の光源により紫外線が照射される。… 【0011】 反射部は、高速で線引きされる石英ファイバを中心にして概ね360度の反射板からなるもので、反射部と導光部の接続部には、入射口があり、ここから、光が反射部へと導入される。入射口の形状は、導光部からの光を導入できれば良く、スリット形状のほか、任意の窓形状などいずれでも良い。ここで、概ね360度とは、厳密な角度で規定されるものではないが、上限は、導光部に占められる角度を除いた残り全周であることが好ましく、下限は、300度以上が好ましく、315度以上がさらに好ましく、330度以上が好ましい。 反射部では、導光部から入射口を通して導入された紫外線を、直接又は反射して、中心の石英ファイバに照射する。反射部の形状は、光の反射効率が良いことから、円柱状が好ましい。… 反射部の中心には、石英ファイバが位置するが、その外周囲には、石英管等で製造された透明な光ファイバカバーが設置されていても良い。」 (2d)「【図1】 」 2 対比・判断 (1)本願発明1について (1-1)対比 (ア)本願発明1と引用1発明とを対比すると、引用1発明における「線状体」、「石英パイプ」、「楕円形のミラー」、「ランプ」は、それぞれ、本願発明1における「線材」、「線材を挿入するための挿入路」、「前記挿入路の中心から第一距離だけ偏心した位置を第一焦点とした楕円弧状を有し、前記挿入路に向かう側の面を反射面とするリフレクタ」、「前記挿入路に対して、前記リフレクタとは反対側の位置に配置され、前記線材に向けて光を照射する」「光源」に相当する。 また、引用1発明において、「線状体を同線状体側の焦点の位置よりもランプ側にずらすことにより、線状体側の焦点上にあった紫外線の集光位置を線状体よりもランプと反対側へ相対的にずらした」ことは、本願発明1において、「前記挿入路は、前記第一焦点に対して前記」「光源側に前記第一距離だけ偏心した位置に配置される」ことに相当する。 (イ)すると、本願発明1と引用1発明とは、 「線材を挿入するための挿入路と、 前記挿入路の中心から第一距離だけ偏心した位置を第一焦点とした楕円弧状を有し、前記挿入路に向かう側の面を反射面とするリフレクタと、 前記挿入路に対して、前記リフレクタとは反対側の位置に配置され、前記線材に向けて光を照射する光源とを備え、 前記挿入路は、前記第一焦点に対して前記光源側に前記第一距離だけ偏心した位置に配置される光照射装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:本願発明1は、「光源」が「面光源」である、との発明特定事項を有するのに対して、引用1発明は前記発明特定事項を有しない点。 (1-2)判断 (ア)以下、前記(1-1)(イ)の相違点1について検討すると、前記1(1)(ア)(1b)?(1f)によれば、従来の「紫外線照射装置」は、楕円弧状の「リフレクタ」内の2つの焦点のうち一方の焦点の位置に「光源」を配置し、他方の焦点の位置に「挿入路」を配置し、同「挿入路」の中心にUV樹脂が塗布されている「線材」を通し、「光源」から発する紫外線が直接及び「リフレクタ」の一点で反射して「線材」の表面に垂直に照射するようにしたものであって、「光源」からは360度いずれの方向にも紫外線が発するものであり、そのような従来装置は、「線材」の「光源」側を向いた面が受ける照度及びその反対側の面が受ける照度の差が大きかったのであるが、引用1発明は、「線材」を同「線材」側の焦点の位置よりも「光源」側にずらすことにより、紫外線の集光位置を「線材」よりも相対的に「光源」と反対側へずらすことで、従来よりも前記照度の差を小さくするものである。 すると、引用1発明は、360度いずれの方向にも紫外線が発する「光源」と楕円弧状の「リフレクタ」とを組み合わせた「紫外線照射装置」において、紫外線の集光位置を「線材」よりも相対的に「光源」と反対側へずらすことで、前記照度の差を小さくしたものといえる。 (イ)これに対して、「面光源」は360度いずれの方向にも紫外線が発するものではなく、360度いずれの方向にも紫外線が発する「光源」とは紫外線の照射方向や照度分布が異なることが強く推認され、360度いずれの方向にも紫外線が発する「光源」と楕円弧状の「リフレクタ」とを組み合わせた「紫外線照射装置」において前記照度の差を小さくしようとする引用1発明において、360度いずれの方向にも紫外線が発する「光源」を、紫外線の照射方向や照度分布が異なることが強く推認される「面光源」に変更することは、そもそも想定されない。 (ウ)また、本願明細書には、以下の記載がある。 「【0003】 従来、この光源としては、水銀ランプが利用されていたが、近年の固体光源素子の技術革新に伴い、水銀ランプに代えてLED素子を利用することが検討されている。しかし、線材の径は、一般的に0.1mm?1.0mm程度と極めて細いため、LED素子から放射される光を効率的に照射させることが困難であった。…」 「【0010】 本発明者らの鋭意研究によれば、挿入路の中心位置(すなわち線材の中心位置)を、楕円弧状の反射面を有するリフレクタの第一焦点に対して光源側に偏心するように配置した場合、リフレクタの第一焦点を線材の中心と一致させた場合よりも、線材に対して照射される光量が増加することが確認された。…」 「【発明の効果】 【0018】 本発明の光照射装置によれば、簡易的な構成の下で、高効率で線材に対して光を照射することができる。」 そして、前記本願明細書の記載によれば、本願発明は、「線材」に対して照射される光量が増加することで、高効率で「線材」に対して光を照射できる、という作用・効果を奏し、これにより、光ファイバの素線の径は極めて細いため、LED素子から放射させる光を効率的に照射させることが困難である、という課題を解決するものである。 (エ)一方、前記1(2)(2a)?(2d)によれば、引用文献2には「光ファイバ製造用紫外線照射装置」が記載されており、当該「光ファイバ製造用紫外線照射装置」は、少なくとも、面発光である光源部と、高速で線引きされる石英ファイバを中心にして概ね360度の反射板からなる反射部と、その反射部の一部に光源部から発せられた光を導入する導光部を有してなるものである。 すなわち、前記「光ファイバ製造用紫外線照射装置」は、面発光の光源から発せられた光を効率良く石英ファイバに照射することができるものであって、光源部では、LED等の面発光の光源により紫外線が照射され、反射部は、高速で線引きされる石英ファイバを中心にして概ね360度の反射板からなるものであり、ここで、概ね360度とは、上限は、導光部に占められる角度を除いた残り全周であることが好ましく、下限は、300度以上が好ましいものであり、反射部では、導光部から入射口を通して導入された紫外線を、直接又は反射して、中心の石英ファイバに照射するものであり、反射部の形状は、光の反射効率が良いことから、円柱状が好ましいものである。 (オ)そして、面発光の光源は「面光源」といえ、このことと前記(エ)によれば、引用文献2には、「面光源」と、円柱状が好ましい概ね360度の反射板からなる「反射部」とを組み合わせた「光ファイバ製造用紫外線照射装置」により、「面光源」から発せられた光を、「反射部」の中心の石英ファイバに効率良く照射できることが開示されているといえる。 (カ)ところが、引用文献2には、「面光源」と楕円弧状の「リフレクタ」を組み合わせることで、「面光源」から発せられた光を効率よく石英ファイバに照射することが記載されるものではない。 そして、円柱状が好ましい概ね360度の反射板からなる「反射部」と、楕円弧状の「リフレクタ」とでは、紫外線の反射方向や照度分布が異なることが強く推認されるから、楕円弧状の「リフレクタ」を備える引用1発明において、「光源」を「面光源」に変更したとき、円柱状が好ましい概ね360度の反射板からなる「反射部」の場合と同様に、「線材」に光を効率よく照射することができるとは考え難い。 そうすると、仮に、前記(オ)の引用文献2の開示事項に基づいて、引用1発明において、「光源」を引用文献2に記載される「面光源」に変更したとしても、そこから進んで、「線材」に対して照射される光量が増加することで、高効率で「線材」に対して光を照射できる、という前記(ウ)の作用・効果を当業者が予測することは困難である。 (キ)前記(イ)、(カ)によれば、引用1発明において、「光源」を「面光源」として、前記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を有するものとすることを、引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえないから、本願発明1を、引用1発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (ク)なお、原査定における、本願発明において樹脂を硬化させることができるか否かが明らかでない旨の注釈について検討しておくと、本願発明は、「線材」に対して照射される光量が増加することで、高効率で「線材」に対して光を照射できる、という作用・効果を奏し、これにより、光ファイバの素線の径は極めて細いため、LED素子から放射させる光を効率的に照射させることが困難である、という課題を解決するものであることは、前記(ウ)に記載のとおりである。 そして、本願明細書の【0044】?【0050】、【図8】によれば、本願発明においては、比較例に比べて「線材」に対して照射される光量が増加することが看取されるから、仮に、引用1発明に「面発光」の光源を採用すると、「線材」全体に対して均一に紫外線を照射する効果が得られないとしても、「線材」に対して照射される光量が増加する本願発明は、高効率で「線材」に対して光を照射でき、樹脂を硬化させることができるというべきであるので、原査定における前記注釈は妥当でない。 (2)本願発明2?6について (ア)本願発明2?6は、いずれも、本願発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本願発明2?6と引用1発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記(1)(1-1)(イ)の相違点1の点で相違する。 そして、引用1発明において、「光源」を「面光源」として、前記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を有するものとすることを、引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえないことは、前記(1)(1-2)(キ)に記載のとおりであって、このことは、引用文献3?5の記載事項に左右されるものでもない。 (イ)したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明2を、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、本願発明3?5を、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、本願発明6を、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (3)本願発明7について (ア)前記(1)(1-1)(ア)に記載したのと同様にして、本願発明7と引用1’発明とを対比すると、本願発明7と引用1’発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 相違点1’:本願発明7は、「光源」が「面光源」である、との発明特定事項を有するのに対して、引用1’発明は前記発明特定事項を有しない点。 (イ)以下、前記(ア)の相違点1’について検討すると、前記相違点1’は前記相違点1と同じものであり、引用1発明において、「光源」を「面光源」として、前記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を有するものとすることを、前記引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえないことは前記(1)(1-2)(キ)に記載のとおりである。 してみれば、同様の理由により、引用1’発明において、「光源」を「面光源」として、前記相違点1’に係る本願発明7の発明特定事項を有するものとすることを、引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえないから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明7を、引用1’発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (4)本願発明8について (ア)本願発明8は、本願発明7を引用するものであって、本願発明8と引用1’発明とを対比した場合、少なくとも前記(3)(ア)の相違点1’の点で相違する。 そして、引用1’発明において、「光源」を「面光源」として、前記相違点1’に係る本願発明7の発明特定事項を有するものとすることを、引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえないことは、前記(3)(イ)に記載のとおりであって、このことは、引用文献3の記載事項に左右されるものでもない。 (イ)したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明8を、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (5)小括 したがって、前記「第3」の原査定の理由はいずれも理由がない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明1?8は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-11-10 |
出願番号 | 特願2017-118899(P2017-118899) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉川 潤 |
特許庁審判長 |
日比野 隆治 |
特許庁審判官 |
金 公彦 村岡 一磨 |
発明の名称 | 光照射装置、光照射方法 |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |